Macroeconomics
マクロ経済学
1
イントロダクション
• マクロ経済学とは、所得の成長、物価の変化、失業率など、全体としての
経済を研究する学問領域である
• 経済のパフォーマンスを測定する重要なマクロ経済変数
– 実質 GDP:経済の構成員の物価水準で調整した総所得を測る
– インフレ率:物価がどのくらいのスピードで上昇しているかを測る
– 失業率:職を失っている労働力の割合を測る
• 経済モデル
– モデル:諸変数の間の関係を数学的に表す経済学の分析道具
– 内生変数:モデルで説明しようとしている変数
– 外生変数:モデルで所与とされている変数
• 価格の硬直性
– 長期的には価格は伸縮的で、それぞれの市場で需要と供給が一致する
ように決まる
– 短期的には価格は硬直的で、需要と供給は必ずしも一致しない
2
データ
2.1
国内総生産
• 定義
– GDP とは、ある経済(国)で一定期間内(四半期、年)に行われた経
済活動よって産み出された生産物の量を金銭価値(円やドル)で表し
たもの
– 三面等価原則:
総生産(GDP)= 総支出額 = 総所得額
∗ 生産された財・サービスは誰かによって購入される:総生産 = 総支出
∗ 財・サービスへの支出は誰かの所得になる:総支出 = 総所得
– GDP および多くの関連統計の計測を行う会計体系を、国民経済計算と
いう
– ストックとフロー
∗ フローとは、一定の単位時間あたりで測られた量
∗ ストックとは、時間を指定せずに定義できる量で、(多くの場合)
フローの蓄積・積分となる
• GDP 算出上のルール
– 様々な財・サービスの総価値を計算するにあたって、市場価格を価値
の尺度として用いる
– 中古品
∗ 中古品の販売は所有者の移転なので、GDP には含まれない
– 在庫の取り扱い
∗ 企業が生産物の在庫を増やしたときは、GDP を増加させる(在庫
投資)
∗ 在庫の販売は、中古品の場合と同様に GDP を変化させない
– 中間財と付加価値
∗ 中間財の価値は最終財に含まれている
∗ GDP は、最終的な財・サービスの価値により計算される
∗ GDP は、各生産段階での付加価値の合計と見ることもできる
付加価値 = 生産物の価格 − 中間財への支出額
GDP = 各生産段階での付加価値の合計
= 最終的な財・サービスの価値の合計
– 帰属計算
∗ 市場で取引されていない財・サービスについては、可能なら市場
価値を推定して計算する
∗ 推定を帰属計算といい、推定値を帰属価値と呼ぶ
∗ 例:住宅サービス
· 借家に住む人が払う家賃は GDP に含まれるが、持ち家の人に
ついても、家賃を推定し GDP に含めている(持ち家の人は自
分に対して家賃を払っているとしている)
∗ 公共サービス
· 公共サービスの価値は、そのコスト(給料など)を用いて推
定され、GDP に加えられている
– 帰属計算されていないもの
∗ 耐久消費財(自動車・家電など)の使用料
∗ 家庭で生産される財・サービス(料理・家事など)の価値
∗ 地下経済
– GDP の限界
∗ GDP は、所得の測度であり、社会厚生の測度ではない
· 例:公害
· 例:GDP の増加と、労働時間の増加
∗ GDP は、主に市場を通じた経済活動のみを含んでいる
· 経済活動で市場を通じるものの割合は,国ごとに大きく異る
• 支出の構成要素
– GDP は以下の 4 種類の支出の合計に等しい
Y = C + I + G + NX
∗ 消費 C :家計による財・サービスの購入
∗ 投資 I :将来の財・サービス産出に用いられる財の購入
· 将来の生産において利用される新しい物的な資本をうみだす
こと(既存の資産を異なる個人間で再分配するだけの購入行
動は、投資ではない)
∗ 政府購入 G:政府による財・サービスの購入
∗ 準輸出 N X :輸出 − 輸入
• 他の所得概念
– 国民総生産(GNP)
GNP = GDP + 海外からの要素所得受取 − 海外への要素所得支払い
∗ 1993SNA の導入以降、GNP という概念は、GNI というほぼ同様
の概念に置き換えられた
– 国民純生産(NNP)
NNP = GNP − 減価償却
∗ 減価償却:工場・設備・住宅等の資本ストックの一定期間の摩耗分
– 粗(gross)
:減価償却を含むこと
– 純(net)
:減価償却を含まないこと
• 実質 GDP と名目 GDP
– GDP は市場価格を用いて財・サービスの価値を表すが、市場価格は時
間を通じて変化する
– 価格の変化の影響を除いて、GDP を定義したい
∗ 名目 GDP:財・サービスの価値を現在の価格で測った GDP
∗ 実質 GDP:財・サービスの価値を固定の価格で測った GDP
– 実質 GDP の作り方
∗ 基準年を決める
∗ 基準年の価格を用いて各期の GDP を計算する
∗ 例(みかんとりんごの経済)
:基準年を s 期としたときの t 期にお
ける名目 GDP と実質 GDP
名目 GDPt = PA,t QA,t + PO,t QO,t
実質 GDPt = PA,s QA,t + PO,s QO,t
· PF,t :t 期のみかん(F = O)
・りんご(F = A)の価格
· QF,t :t 期のみかん(F = O)
・りんご(F = A)の生産量
• GDP デフレーター:名目 GDP の実質 GDP に対する比率
GDP デフレーター =
名目 GDP
実質 GDP
– GDP デフレーターは一般物価水準の尺度の一つ
• 実質 GDP の基準年・連鎖方式
– 異なる財の価格が同率(相対価格が一定)で変化するなら、基準年を
いつにとるかは問題ではない
– 実際には、相対価格は時間を通じて大きく変化しうる
• 連鎖方式
– かつては、基準年を数年に一度更新する方式(日本では 5 年に 1 度)
が取られていたが、現在では連鎖方式という方式が採用されている
– 連鎖方式では、固定した基準年は設けない
∗ 例:2015 年の名目 GDP を参照年とする
· 参照年の名目 GDP = 参照年の実質 GDP
· 2016 年の実質 GDP は、2015 年と 2016 年の価格を用いて導
出した成長率の幾何平均によりきめる
L2016,2015 = 2015 年の価格を用いた実質 GDP 成長率
∑
Pi,2015 Qi,2016
= ∑i
i Pi,2015 Qi,2015
P2016,2015 = 2016 年の価格を用いた実質 GDP 成長率
∑
Pi,2016 Qi,2016
= ∑i
i Pi,2016 Qi,2015
√
実質 GDP2016 = 実質 GDP2015 × L2016,2015 P2016,2015
· 2017 年以降の実質 GDP についても同様に決める
2.2
価格指数
• 価格指数
– 価格指数:物価水準の尺度
– 価格指数の作り方
∗ 対象とする財・サービスの組み合わせ(バスケット)を決める(バ
スケットは固定の場合と変動の場合がある)
· ラスパイレス指数:固定バスケットを用いた価格指数
· パーシェ指数:可変バスケットを用いた価格指数
∗ 基準年 s を決める
∗ t 年における物価指数は
物価指数 (t) =
t 年のバスケットの t 年の価格で評価した値段
t 年のバスケットの s 年の価格で評価した値段
– 価格指数の例(バスケットが異なる)
∗ 消費者物価指数(CPI)
∗ GDP デフレーター
∗ PCE デフレーター
– インフレーション(率)とは、CPI などの価格指数上昇(率)のこと
∗ コア・インフレーション:食品やエネルギー関連の製品を除いて
測定された価格指数の上昇(率)
• 消費者物価指数(CPI)
– CPI は、固定バスケットを用いた価格指数(ラスパイレス指数)
– CPI のバスケットに属する財・サービスは、平均的な家計の消費支出
上一定の割合を占める重要なものが選ばれ、家計消費支出割合に基づ
いて指数の計算に用いる各品目のウエイトが決められる
∗ 基準年は、5 年ごとに見直され、バスケットの品目も見直される
– 例:バスケットがりんご 5 個とみかん 2 個で、基準年が s 年である時、
t 年の CPI は、
CPIt =
t 年の価格で評価したバスケットの値段
5PA,t + 2PO,t
=
基準年の価格で評価したバスケットの値段
5PA,s + 2PO,s
• CPI と GDP デフレーターの相違点
– GDP デフレータのバスケットは、当該国で生産されたすべての財・サー
ビスであるのに対して、CPI のほうは消費者に購入される財・サービ
スのみからなる
∗ 企業や政府が購入する財・サービスの価格変化は GDP デフレー
ターには反映されるが、CPI には反映されない
– GDP デフレーターは国内で生産された財が対象だが、CPI は輸入さ
れる財も対象
– CPI はラスパイレス指数だが、GDP デフレーターはパーシェ指数で
ある
∗ CPI のバスケットに含まれる品目とウェイトは固定(見直し期間
まで)だが、GDP デフレータのバスケットは GDP の構成の変化
に応じて毎期変わる
GDP デフレーター =
CPI =
当期バスケットの当期価格
当期バスケットの基準年価格
基準年バスケットの当期価格
基準年バスケットの基準年価格
• ラスパイレス指数とパーシェ指数
– 2010 年
りんご
みかん
生産量
3
2
価格
100
100
りんご
みかん
生産量
1
4
価格
200
100
– 2020 年
– CPI も GDP デフレーターも基準年を 2010 年価格とし、CPI の基準バ
スケットを 2010 年の生産量とすると、
GDP デフレーター2020 =
CPI2020 =
200 · 1 + 100 · 4
= 1.2
100 · 1 + 100 · 4
200 · 3 + 100 · 2
= 1.6
100 · 3 + 100 · 2
– ラスパイレス指数は生計費の増大を過大評価する傾向があり、パーシェ
指数は過小評価する傾向がある
∗ ラスパイレス指数は、固定バスケットを用いているため価格の上
昇がもたらす代替行動を無視している
∗ パーシェ指数は代替行動は考慮に入れているが、それがもたらす
効用水準の低下を無視している
• PCE デフレーター
– PCE は、GDP の支出項目のうち、家計(消費者)によって購入され
る財・サービス
– PCE デフレーターは、PCE に対するデフレーター(名目 PCE と実質
PCE の比率)
– CPI と同様、PCE デフレーターは消費者が購入する財・サービスのみ
を含み、輸入材の価格も含む
– GDP デフレーターと同様、PCE デフレーターはパーシェ指数(可変
バスケット)である
– アメリカや日本では、CPI・GDP デフレーター・PCE デフレーター
は比較的同じような動きを示している
2.3
失業率
• 15 歳以上の人口
– 労働力人口:就業者と失業者の合計
∗ 就業者
· 調査時点において、働いて賃金を受け取っているか、自分で仕
事をしているか、あるいは家族経営で無給で働いている人々、
また、働いてはいないものの、職を持っていて、休暇・病気・
悪天候などの理由で一時的に休んでいる人々も含まれる
∗ 失業者
· 調査時点以前の週間、働くことが可能で、求職をしていたが
雇用されていない人々、また、一時帰休(自宅待機)中で、職
に戻るのを待っている人々も含まれる
– 非労働力人口
∗ 就業者でも失業者でもない人々(フルタイムの学生や主婦、引退
者など)
∗ 就業意欲喪失労働者:働きたいが職探しをやめてしまったような
人々のことで、非労働力に含まれる
• 失業率
失業率 =
失業者数
× 100
労働力人口
• 労働市場参加率
労働市場参加率 =
労働力人口
× 100
15 歳以上の人口
• 失業の重要性
– 活用されるべき生産資源が活用されていない
– 多くの人によって、失業は苦しい経験である
3
国民所得
• 短期と長期
– 短期モデル
∗ 経済に対する様々な外生的ショック
∗ 生産資源の遊休化
∗ 価格硬直性などによる需要と供給の乖離(需要 < 供給)
– 長期モデル
∗ 外生的なショックのない状態
∗ すべての生産資源が有効に活用される
∗ 価格は伸縮的で、需要と供給が一致している
• 古典派モデル
– 古典派モデル:長期経済の分析のための基本モデル
∗ インフレ率、為替レート、失業率、貿易収支、経済成長率などが
長期的にどのように決まるかを分析する
– この章で扱う古典派モデルの特徴
∗ 資本ストックと労働は一定
∗ 全ての市場で需要と供給が一致するように価格が調整される
∗ 全ての市場が完全競争的(プライス・テイカーの仮定:価格は全
ての経済主体にとって所与)
∗ 貨幣・国際貿易は捨象
• この章で分析すること:図 3.1
– 長期的な生産水準(GDP)の決まり方
– 所得分配(労働者・資本所有者・企業所有者)の決まり方
– 生産物の異なる支出(消費・投資・政府支出)への配分の決まり方
– それぞれの市場(生産要素市場・財市場・金融市場)での均衡の決ま
り方
• モデルの分析手順
1. 経済主体の意思決定
– 家計:所得や税を所与として、消費と貯蓄水準を決定する
– 企業:労働と資本の使用量と財の生産量をきめる(企業の収入は、
労働者・資本所有者・企業所有者に分配される)
– 家計と企業:金融市場で資金を調達し投資を行う
– 政府:政府支出と課税額を決める
2. それぞれの市場での需給一致の達成(市場均衡)
– 生産要素市場:労働需要 = 労働供給、資本需要 = 資本供給
– 財市場:財需要 = 財供給
– 金融市場(資金貸付市場)
:資金需要 = 資金供給
3.1
生産関数
• 生産関数:生産量を生産要素の関数で表したもの
– 簡単化の仮定:1 つの企業
• 2 種類の生産要素(資本と労働から 1 種類の財が生産されるとする)
Y = F (K, L)
– Y :生産量、K :資本投入量、L:労働投入量
• 規模に関する収穫
– 規模に関して収穫一定(CRS)(1 次同次)
F (zK, zL) = zF (K, L),
for all z > 0
– 規模に関して収穫逓減
F (zK, zL) < zF (K, L),
for all z > 1
– 規模に関して収穫逓増
F (zK, zL) > zF (K, L),
for all z > 1
• CRS 生産関数
– マクロ経済学では、CRS の仮定を置くことが多い
∗ 理論的根拠:複製
∗ 実証的根拠:マクロデータ
1. 例:コブ・ダグラス生産関数
Y = K α L1−α ,
α ∈ (0, 1)
1
2. 例:代替の弾力性一定の関数(代替の弾力性は 1−ρ
)
1
Y = [ωK ρ + (1 − ω)Lρ ] ρ ,
3.2
ω ∈ (0, 1),
ρ≤1
生産要素市場
• 要素供給
– 古典派モデルでは、生産要素市場の均衡から総供給(GDP)と所得分
配が決まる
∗ 財市場や金融市場は GDP や所得分配に影響を与えない
– 要素価格
∗ R:資本のレンタル料、W :賃金
– 要素供給は外生的に与えられる(非弾力的に与えられる:供給曲線が
垂直)
∗ K̄ :資本の供給量、L̄:労働の供給量
– 要素供給曲線(このモデルでは、要素供給は要素価格に依存しない)
:
3’.12 の図
∗ K = K̄ 、L = L̄
• 要素需要
– F (K, L) という技術を持つ企業が 1 つだけ存在するとする
– 完全競争の仮定より、企業はプライス・テイカー
– 企業の利潤:収入 − 生産要素への支払 = 企業の所有者への支払
利潤 = P Y − RK − W L
= P F (K, L) − RK − W L
∗ P :生産物の価格、Y :生産量、P Y :企業の収入、RK :資本所
有者への支払、W L:労働者への支払
– 利潤最大化問題:
max P F (K, L) − RK − W L
K,L
– 利潤最大化の 1 階条件(2 階の条件は満たされていると仮定)
:
{
P FK (K, L) − R = 0
P FL (K, L) − W = 0
∂F
∗ 資本の限界生産力(MPK)
:FK (K, L) = ∂K
∗ 労働の限界生産力(MPL)
:FL (K, L) = ∂F
∂L
R
– 企業は価格 (P, R, W ) を所与として、MPK と MPL が実質要素価格 P
W
と P が等しくなるまで資本と労働を雇う:3’.15 の図
FK (K, L) =
R
P
FL (K, L) =
W
P
R
∗ W
P :実質賃金、 P :実質レンタル料
∗ 特に、FKK < 0, FLL < 0 と仮定される
• 要素市場均衡:図 3.2
– 要素市場の需給一致条件
∗ 均衡要素投入量:K = K̄, L = L̄
∗ 均衡生産量(GDP)
:Y = F (K̄, L̄)
R
∗ 均衡要素価格(所得分配)
:P
= MPK = FK (K̄, L̄), W
P = MPL =
FL (K̄, L̄)
– 総生産(GDP)
∗ 古典派モデルでは、経済の GDP は要素供給量 K̄, L̄ と生産関数
F のみから決定される
GDP = F (K̄, L̄) = Ȳ
∗ 経済の長期モデルの重要な特徴
· 価格が需給を一致させるように動くので、総生産(総支出・総
所得)は供給側の要因で決まる
– 所得分配
R
K−W
∗ 経済学上の利潤:F (K, L) − P
P L
R
∗ 会計上の利潤:経済学上の利潤 + P K
∗ 総所得は、労働への報酬、資本への報酬、経済学上の利潤に分け
られる
GDP = F (K̄, L̄) = MPL × L̄ + MPK × K̄ + 経済学上の利潤
· MPL × L̄ = FL (L̄, K̄) × L̄:労働への報酬
· MPK × K̄ = FK (L̄, K̄) × K̄ :資本への報酬
∗ 生産関数が CRS であるとすると、オイラーの定理より、
F (K, L) = FK (K, L)K + FL (K, L)L
が成り立つので、
経済学上の利潤 = 0
• 例:コブ・ダグラス生産関数
– コブ・ダグラス生産関数:F (K, L) = AK α L1−α
MPL = (1 − α)AK α L−α = (1 − α)
MPK = αAK α−1 L1−α = α
Y
L
Y
K
– 労働と資本の所得シェア(分配率)は時間を通じて一定になる
労働所得シェア(労働分配率)=
MPL × L
=1−α
Y
資本所得シェア(資本分配率)=
MPK × K
=α
Y
Y
– 実質賃金 W
P は労働生産性 L と比例するので、実質賃金と労働生産性
の成長率は一致する
• 黒死病と実質賃金
– 14 世紀に黒死病の流行により労働者数が大幅に減少すると、実質賃金
が上昇した
– これは標準的な経済理論と整合的:実質賃金は労働の限界生産性で決
まり、労働投入量の減少とともに下落する
• 学歴による賃金格差とスキル偏向的技術進歩
3.3
財需要
• 財・サービスへの需要
– 財・サービスへの需要は 4 項目(消費 C 、投資 I 、政府購入 G、純輸
出 N X )ある
Y = C + I + G + NX
– 閉鎖経済を考え、輸出入を捨象する
Y =C +I +G
• 消費
– 可処分所得:所得から税金を引いたもの
可処分所得 = Y − T
– 家計は以下の消費関数に従い消費量を決めるとする
C = C(Y − T )
– 消費されない部分は貯蓄される
Y − T − C = 民間貯蓄
– 限界消費性向(MPC)
MPC = C ′ (Y − T ) =
dC(Y − T )
≥0
d(Y − T )
• 投資
– 利子率
∗ 名目利子率:通常表示されている利子率
∗ 実質利子率:名目利子率 − インフレ率
– 利子率は投資の機会費用
– 投資関数:実質利子率 r の減少関数
I = I(r),
I ′ (r) < 0
• 政府購入
– 政府購入 G:政府による財・サービスの購入
– T = 租税 − 移転支払い
– 財政政策:G と T は外生的に与えられるとする
G = Ḡ,
3.4
T = T̄
財市場と金融市場の均衡
• 財市場の均衡
– 財・サービスの供給:
Y = Ȳ = F (K̄, L̄)
– 財・サービスへの需要:
Y = C(Y − T ) + I(r) + Ḡ
– 財市場の需給を一定させる価格は実質利子率 r
Ȳ = C(Ȳ − T̄ ) + I(r) + Ḡ
財の供給 = 財の需要
• 金融市場の均衡:図 3.8
– 財市場と金融市場
∗ 財市場:Y = C + I + G
∗ 金融市場:Y − C − G = I
– 金融市場:3.49 の図
資金需要 = 資金供給
– 資金需要:投資 I(r)
– 資金供給:国民貯蓄 S :
S = (Y − T − C) + (T − G) = Y − C − G
∗ 民間貯蓄:Y − T − C
∗ 公的貯蓄:T − G
– このモデルでは国民貯蓄は一定:3.49 の図
S = Ȳ − C̄ − Ḡ = S̄
– 金融市場の需給一致:実質利子率 r によって達成される:図 3.8
I(r) = S̄
– 金融市場と財・サービス市場は表裏一体
Ȳ = C(Ȳ − T̄ ) + I(r) + Ḡ ⇐⇒ S̄ = I(r)
• 財政政策の効果:図 3.9
– 要素市場均衡により GDP は Y = Ȳ = F (K̄, L̄) となるので、財政政
策の効果は金融市場均衡の変化をみればよい
G, T =⇒ Ȳ − C(Ȳ − T ) − G = I(r) =⇒ C, I, r
– 金融市場均衡の変化を見るには、資金供給曲線と資金需要曲線に対す
る効果をみればよい
– 政府支出増加 dG > 0 の効果
∗ 資金供給曲線(国民所得 S )
:dS = −dG < 0 なので左シフト(S
は減少)
∗ 資金需要曲線(投資需要)
:変化なし:I = I(r)
– 減税 dT < 0 の効果
∗ 資金供給曲線(国民所得 S )
:dS = MPC × dT < 0 なので左シフ
ト(S は減少)
∗ 資金需要曲線(投資需要)
:変化なし
– 拡張的財政政策の効果
∗ 政府購入の増加の効果
dG > 0 =⇒ dr > 0,
dI < 0,
dC = dY = 0
∗ 減税の効果
dT < 0 =⇒ dr > 0,
dI < 0,
dC > 0,
dY = 0
∗ クラウディング・アウトとは、拡張的財政政策によって利子率が
上昇するために投資が減少すること
• 投資需要の変化:図 3.10・図 3.11
– 要素市場均衡により GDP は Y = Ȳ = F (K̄, L̄) となるので、投資需
要曲線のシフトの効果は金融市場均衡の変化を見れば良い
I1 (r) → I2 (r) =⇒ Ȳ − C(Ȳ − T ) − G = I(r) =⇒ C, I, r
– 投資需要曲線がシフトしても資金供給曲線(国民貯蓄)はかわらない
4
貨幣システム
4.1
貨幣
• 貨幣とは、取引・決済に即時に使用できる資産のこと
• 貨幣の 3 機能
– 交換手段
– 価値貯蔵手段
– 計算単位
• 流動性:貨幣が他のものと交換される時の容易さのこと
• 貨幣の種類
– 不換紙幣:それ自体に価値を持たないものが貨幣として流通している
もの
– 商品貨幣:金や銀などそれ自体商品として価値を持つ貨幣
– 兌換紙幣:金や銀と決められたレートで兌換可能な紙幣(金本位制など)
• マネーサプライ(貨幣供給量)
:経済で流通している貨幣の総額
• 金融政策:マネーサプライをコントロールすること
• 中央銀行:金融政策を行う機関
• 公開市場操作:中央銀行が国債を売買してマネーサプライをコントロール
すること
– 中央銀行が国債を売却するとマネーサプライは減少し、国債を購入す
るとマネーサプライは増加する
• 貨幣の種類:現金通貨・要求払預金など
4.2
銀行の役割:信用創造
• 銀行の貸し出しによるマネーサプライの増加を信用創造という
• 金融仲介:資金を貸してから借り手に移すこと
• マネーサプライは中央銀行の政策だけでなく、個人や銀行の行動にも影響
を受ける
M =C +D
– マネーサプライ M 、現金通貨 C 、要求払預金 D
– 以下、現金通貨が 1000 ドルある経済を考える
• 銀行が存在しない場合
– D = 0 より、マネーサプライは現金通貨の量と等しい
M = C = 1000
• 100% 準備制度
– 銀行は預金を受け入れ、その一部を貸し出す
– 預金のうち貸し出されない部分は準備と呼ばれ、大部分は中央銀行に
預けられる
– 100% 準備制度:預金は全て準備に回され貸し出されない制度
– 家計が 1000 ドルの通貨を第一銀行に預けた時の第一銀行の貸借対照
表:
負債
資産
準備 1000 ドル 預金 1000 ドル
– C = 0, D = 1000 なので、マネーサプライは M = 1000 のままである
– 100% 準備制度の下では、銀行システムはマネーサプライに影響を与
えない
• 部分準備制度
– 部分準備制度:銀行は預金受け入れ額の一定の割合を準備として保有
し、残りは貸し出しに回す
– 準備・預金比率 rr を 20% とすると、第一銀行は預金 1000 ドルのう
ち、200 ドルを準備に回し、800 ドルを貸し出しに回す
∗ これにより、経済のマネーサプライは 1800 ドルになる
∗ 銀行の貸し出しによるマネーサプライの増加を信用創造と呼ぶ
∗ 第一銀行の貸借対照表:
資産
負債
準備 200 ドル 預金 1000 ドル
貸出 800 ドル
– 800 ドルを貸し入れたものがそれを第二銀行に預金したとすると、第
二銀行はその 20% を準備に回し、残りを貸し出す
∗ 第二銀行の貸借対照表:
資産
負債
準備 160 ドル 預金 800 ドル
貸出 640 ドル
∗ これにより、経済のマネーサプライは 2440 ドルになる
– このプロセスが永遠に続けば、マネーサプライは最大で 5000 ドルに
なる
1000 + 1000 × (1 − rr) + 1000 × (1 − rr)2 + · · · = 1000 ×
• 銀行資本、レバレッジ、資本要件
1
rr
– 銀行の貸借対照表:
資産
負債・資本
準備 200
預金 750
貸出 500
社債 200
有価証券 300 純資産(自己資本) 50
– レバレッジ:資産購入のため、借入を利用すること
∗ レバレッジ率:資本に対する総資産の比率(上の例では、20)
– レバレッジ率が高いと、資産価値の変動リスクに対して脆弱になる
– 銀行の健全性を保つために、自己資本比率規制が行われる(マチュリ
ティ・トランスフォーメーション:短期で借りて長期で貸す)
4.3
中央銀行の役割
• マネーサプライのモデル
– マネーサプライは以下のような中央銀行,銀行,家計の意思決定に依
存して決まる
∗ 中央銀行:マネタリーベース(現金通貨と準備の合計)の決定
∗ 家計:貨幣を現金通貨で保有するか預金で保有するかについての
決定
∗ 銀行:預金を準備として保有するか貸出するかの決定
– 外生変数
∗ マネタリーベース:B = C + R:中央銀行が直接コントロールする
∗ 準備・預金比率 rr:銀行の経営戦略と銀行を規制するルールによっ
て決まる
∗ 現金・預金比率 cr:家計が決める
– 内生変数
∗ マネーサプライ M 、預金額 D、現金通貨 C 、準備 R
– モデル
M =C +D
B =C +R
C
R
cr = , rr =
D
D
– モデルの変形
M=
C
+1
C +D
cr + 1
B = CD R B =
B
C +R
cr + rr
D + D
より、
M = mB,
m≡
cr + 1
cr + rr
cr+1
– 貨幣乗数 m = cr+rr
– 外生変数(B 、rr、cr)のマネーサプライへの影響
∗ 貨幣乗数 m を所与として、マネーサプライはマネタリーベースに
比例する
∗ 準備・預金比率 rr が低いほど、貨幣乗数 m は高まり、所与のマ
ネタリーベースに対してマネーサプライを増加させる
∗ 現金・預金比率 cr が低いほど、貨幣乗数 m は高まり、所与のマ
ネタリーベースに対してマネーサプライを増加させる
• 量的緩和
– 2007 年から 2008 年の金融危機の後、日米ともにマネタリーベースを
急増させた(量的緩和)
– 一方で、マネーサプライの上昇はさほどではなかった
∗ 貨幣乗数が大幅に低下したため
– 貨幣乗数の減少は、準備・預金比率 rr の上昇により生じた
∗ 銀行は貸出ではなく準備にとどめた
• マネーサプライのコントロール問題
– 中央銀行はマネーサプライを完全にはコントロールできない(マネタ
リーベースはコントロールできても、準備・預金比率や現金・預金比
率は銀行や家計の意思決定で決まる)
– 大不況時には、マネタリーベースは増加したにもかかわらず、準備・
預金比率と現金・預金比率が増加した結果(預金保険)、貨幣乗数が大
きく低下し、マネーサプライの減少につながった
• 金融政策の手段
– 中央銀行によるマネタリー・ベースの変化
∗ 公開市場操作・中央銀行貸出など
– 中央銀行による準備・預金比率の変化
∗ 必要準備:中央銀行が民間銀行に課している保有すべき最低準備
預金比率
∗ 超過準備:銀行が持つ必要最低限以上の準備
∗ 準備預金付利:銀行が中央銀行に預け金として準備を保有する時、
その預け金に対して中央銀行がはらう利子
インフレーション
5
• ある財・サービスの価格の上昇は、それで測った貨幣の価値の下落を表す
• 物価水準を P で表し、P が GDP デフレーターだとすると、
名目 GDP = P × 実質 GDP
なので、P を実質 GDP の価格と解釈できる
• P1 を生産物(実質 GDP)で測った貨幣の価値と解釈できる
貨幣の価値 =
1
× 生産物の価値
P
• 物価水準 P の上昇(インフレーション)は、貨幣の実質価値の下落を意味
する
• 貨幣供給:中央銀行が決める
• 貨幣需要
– 貨幣需要が所得の一定割合になる(貨幣数量説)
– 貨幣需要が所得と名目利子率によってきまる(Cagan・IS-LM など)
5.1
貨幣数量説
• 貨幣数量説:名目 GDP がマネーサプライに比例するという仮説
– 貨幣の流通速度 V が一定
V =
PY
名目 GDP
=
M
マネーサプライ
∗ 価格水準 P 、実質 GDPY 、マネーサプライ M
– 数量方程式:価格数量説は、V が時間を通じて一定であると仮定する
PY = V M
• 貨幣需要関数:人々がどれだけ実質貨幣残高を保有したいかを表す関数
– 実質貨幣残高 M
P
– 貨幣数量説は、実質貨幣需要が実質 GDP に比例的であるという仮説
とも解釈できる(貨幣数量節を money demand function として解釈
する)
( )demand
M
= kY
P
– k = V1 とすれば、貨幣需要関数は数量方程式と一致する
• 貨幣、物価、インフレーション
– 古典派モデルと貨幣数量説を仮定すると、
∗ 実質 GDP は、生産技術と要素供給で決まる:Y = Ȳ = F (K̄, L̄)
∗ 名目 GDP と価格水準はマネーサプライによりきまる:P Y = V M
– 数量方程式 P Y = V M を変化率に書き換える
∆Y
∆V
∆M
∆P
+
=
+
P
Y
V
M
– 貨幣数量説の仮定(V = V̄ )のもとで、インフレ率は次のように決まる
∆M
∆Y
∆P
=
−
P
M
Y
∗ 貨幣数量説の下では、
インフレ率 = マネーサプライの成長率 − 実質 GDP 成長率
∗ 貨幣数量説の下では、中央銀行は貨幣供給率のコントロールを通
じて、インフレを完全にコントロールする力を持つ
5.2
貨幣発行収入
• 政府がその支出を賄う方法
1. 個人や法人への課税
2. 国債の発行
3. 貨幣の発行(インフレを起こし、貨幣保有に税金をかける)
• 貨幣発行による政府の収入をシニョリッジという
• t 期における政府の予算制約式:
Pt Gt + (1 + it )Bt−1 = Pt Tt + Bt + Mt − Mt−1
– t 期の物価水準 Pt 、実質政府購入 Gt 、実質ネットの税収 Tt 、t 期の国
債発行額 Bt 、t − 1 期から t 期までの名目利子率、マネーサプライ Mt
• 歴史上、政府財政のシニョリッジへの依存は高率のインフレの原因となって
きた
5.3
インフレーションと利子率
• 名目利子率の決定
– フィッシャー方程式:実質利子率の定義を変形して、
i=r+π
∗ 実質利子率 r、名目利子率 i、インフレ率 π
∗ フィッシャー方程式は実質利子率の定義式だが、以下のように実
質利子率とインフレ率を決める理論と組み合わせれば、名目利子
率を決める理論と解釈することができる
– 古典派モデルと貨幣数量説を仮定する
∗ 古典派モデルでは、金融市場均衡 I(r) = S が満たされるように実
質利子率 r が決まる(金融政策とは無関係)
∗ 貨幣数量説では、マネーサプライと実質 GDP の成長率からイン
∆Y
フレ率 π が決まる(π = ∆M
M − Y )
∗ すると、フィッシャー方程式により、名目利子率が i = r + π に決
まる
– フィッシャー効果:インフレ率の変化が名目利子率を同じだけ変化さ
せること
• 事前的実質利子率
– 貸し借りの契約を結ぶ時点では、将来のインフレ率がどうなるかにつ
いて正確な情報はない
– 期待インフレ率(インフレ率の予想)を Eπ とする
∗ i − Eπ :事前的実質利子率
∗ i − π :事後的実質利子率
– 将来のインフレ率に関する不確実性を考慮すると、フィッシャー方程
式は以下のようになる(r は事前的実質利子率)
i = r + Eπ
5.4
名目利子率と貨幣需要
• 貨幣需要
– (貨幣以外の資産の)名目利子率 i は、貨幣を保有することの機会費用
∗ 貨幣の名目利子率は 0
∗ 実質収益率の差:r − (−π) = i = i − 0
∗ 貨幣と貨幣以外の資産の収益率
貨幣 貨幣以外の資産
差
名目収益率
0
i
i
実質収益率
−π
r
r+π
– 貨幣需要関数:一般には、所得 Y だけでなく貨幣の保有コストである
名目利子率 i にも依存していると考えられる(IS-LM モデル)
( )d
M
= L(i, Y )
P
ここで、
Li (i, Y ) =
∂L(i, Y )
≤ 0,
∂i
LY (i, Y ) =
∂L(i, Y )
≥0
∂Y
– 貨幣需要関数をこのように拡張すると、現在の物価水準は将来の貨幣
供給(の予想)にも依存することになる:図 5.5
M
= L(r + Eπ, Y )
P
∗ 貨幣数量説のもとでは、現在の物価水準は現在のマネーサプライ
と GDP で決まった
∗ M は金融政策、P は今期の価格水準、r と Y は古典派、Eπ は将
来の物価水準
• Cagan Model
– 古典派モデルを仮定すると、r と Y は金融政策と無関係に決まるので、
それらを定数と考えれば、実質貨幣需要 L(r + Eπ, Y ) は期待インフレ
率 Eπ の関数と考えることができる
– インフレ率について完全予見を仮定すると、
Eπ = π
– インフレ率は自然対数を使って、以下のように表せる
πt+1 = ln(Pt+1 ) − ln(Pt )
– したがって、具体的に貨幣需要関数が以下のように表されるとする
Pt
= L(it , Yt ) の具体例)
(M
t
Mt
=
Pt
(
Pt+1
Pt
)−γ
× (定数)
を対数線型化すると、
ln Mt − ln Pt = −γ(ln Pt+1 − ln Pt )
mt − pt = −γ(pt+1 − pt )
∗ mt = ln(Mt ), pt = ln(Pt ), γ < 0 で、γ は定数とする
∗ γ は、貨幣需要の名目利子率に関する弾力性を表している
∗ 貨幣数量説では、γ = 0
– これを、今期の価格水準 pt について解けば
pt =
1
γ
mt +
pt+1
1+γ
1+γ
– pt+1 についても同様に
pt =
1
γ2
γ
m
+
pt+2
mt +
t+1
1+γ
(1 + γ)2
(1 + γ)2
– これを繰り返すと、
pt =
)j
∞ (
1 ∑
γ
mt+j
1 + γ j=0 1 + γ
– 貨幣需要が名目利子率に依存する(γ > 0)ならば、今期の価格水準
pt は現在及びすべての将来のマネーサプライ mt+j (j = 0, 1, . . . ) に依
存することになる
– 不確実性を考慮に入れると
pt =
∞
1 ∑ γ j
) Emt+j
(
1 + γ j=0 1 + γ
∗ t + j 期のマネーサプライの予想値 Emt+j
– 中央銀行が物価水準あるいはインフレ(デフレ)をコントロールする
ためには、人々の将来のマネーサプライに対する期待をコントロール
することが必要であることがわかる
– 金融政策の効果にとって、中央銀行の信頼性が重要であることを示し
ている
• 古典派の 2 分法
– 古典派の 2 分法:実質変数(Y や r など)と名目変数(P や i など)
の理論的分離
– 貨幣の中立性:マネーサプライが実質変数に影響しないこと
– 長期的には、
(少なくとも近似的には)貨幣の中立性が成立していると
考えられている
– 短期モデルでは貨幣の中立性が成り立たない
5.5
ハイパーインフレーション
• ハイパーインフレーション:一ヶ月で 50% を超えるようなインフレーション
– 社会の効率性の低下
• ハイパーインフレーションの直接的な原因はマネーサプライの急激な成長
であるが、それほどのマネーサプライの増加の背後には、ほぼ常に政府の
財政問題がある
開放経済
6
• 開放経済の長期均衡
– 古典派の 2 分法が依然として成立
– 特に、Y = F (K̄, L̄)
• 閉鎖経済:貸付資金市場均衡 S = I(r) より、r が決まる
• 開放経済:
– 新しい変数:純輸出、純資本流出、為替レート(名目・実質)
– 市場:貸付資金市場・外国為替市場
– モデル:小国開放経済モデル・大国開放経済モデル
∗ 自国の利子率の決まり方が異なる
6.1
資本と財の国際的な流れ
• 純輸出
– 国際貿易:輸出 X 、輸入 IM 、純輸出 N X = X − IM
– 国際貿易を考慮すると、消費 C 、投資 I 、政府購入 G は、国内で生産
された財・サービスと輸入された財・サービスの合計となっている
C = Cd + Cf ,
I = Id + If ,
G = Gd + Gf
IM = C f + I f + Gf
– 国内の生産物 Y は、国内で購入されるか外国に購入されるかのいずれ
かなので、
Y = C d + I d + Gd + X
= (C − C f ) + (I − I f ) + (G − Gf ) + X
= C + I + G + NX
– したがって、純輸出額は、産出額から自国支出額を引いたものである
N X = Y − (C + I + G)
• 貿易収支と純資本流出
– 貿易収支:純輸出額 N X のこと
– 純資本流出(対外純投資)
:国民貯蓄と投資額の差 S − I
∗ S > I のときは、自国の貯蓄が投資を上回っており、差額は外国
に貸し付けられている
∗ S < I のときは、自国の貯蓄は投資を下回っており、差額は外国
からの借入れで賄われている
– N X = Y − C − G − I = S − I なので、純資本流出 S − I と貿易収支
N X は常に一致する
S − I = NX
– 貿易黒字・貿易均衡・貿易赤字:
貿易黒字
輸出 > 輸入
純輸出 > 0
Y >C +I +G
貯蓄 > 投資
純資本流出 > 0
6.2
貿易均衡
輸出 = 輸入
純輸出 = 0
Y =C +I +G
貯蓄 = 投資
純資本流出 = 0
貿易赤字
輸出 < 輸入
純輸出 < 0
Y <C +I +G
貯蓄 < 投資
純資本流出 < 0
小国開放経済の貯蓄と投資
• 仮定
– 利子率(資本収益率)
∗ 自国の利子率 r
∗ 世界利子率 r⋆
– 仮定 1:完全な資本移動
∗ 自国と世界の利子率は一致する:r = r⋆
– 仮定 2:小国開放経済
∗ 自国の変数は外国の変数(世界利子率)に影響を与えない
– 以上の 2 つの仮定から、このモデルでは、自国の利子率は外生変数 r⋆
によって決まる
r = r⋆
– 閉鎖経済では r は S = I(r) となるように決まったが、r は外生的に固
定される
• 小国開放経済モデル
– モデル
∗ 生産:Y = Ȳ = F (K̄, L̄)
∗ 消費:C = C(Y − T )
∗ 投資:I = I(r)
∗ 財政政策:G, T
∗ 小国の仮定:r = r⋆
– 財市場均衡あるいは貸付資金市場均衡:図 6.2
N X = (Ȳ − C(Ȳ − T ) − G) − I(r⋆ ) = S̄ − I(r⋆ )
– 小国開放経済モデルでは、世界利子率 r⋆ を所与とする:図 6.2
∗ 純資本流出 S − I ⋆ が決まり、それと一致する水準に貿易収支 N X
が決まる
∗ N X をちょうどその水準になるように決めるのは実質為替レート
の役割
• 政策などの貿易収支への効果
– 初期均衡において貿易収支が均衡しているとする:N X = 0
– 自国の財政政策の効果:G の増加や T の減少(S のシフト)
∗ 自国の拡張的財政政策は国民貯蓄を減少させるため、貿易収支は
赤字になる:図 6.3
NX < 0
– 外国の財政政策の効果:r⋆ の上昇(r⋆ のシフト)
∗ 外国の拡張的財政政策は世界の貯蓄量を減少させ、世界利子率を
上昇させるため、自国の投資需要が減少し、貿易収支は黒字にな
る:図 6.4
NX > 0
– 投資需要のシフト:I(r) のシフト
∗ 所与の利子率 r⋆ のもとでの投資需要が増大するため、貿易収支は
赤字になる:図 6.5
NX < 0
– 短絡的に貿易赤字は悪で、貿易黒字は善と考えるのは誤り
∗ 個人が収入の変動に応じて、貯蓄や借金をするのが合理的である
のと同様に、国も貿易黒字が合理的なときもあれば、貿易赤字が
合理的なときもある
6.3
為替レート
• 閉鎖経済と開放経済
– 閉鎖経済
∗ I = S より、実質利子率 r が決まる
∗ 金融政策により、名目利子率 i が決まる
– 開放経済
∗ N X = S − I より、実質為替レート ϵ が決まる
∗ 金融政策により、名目為替レート e が決まる
• 名目為替レート
– 名目為替レート:2 つの国の通貨の相対価格
– 自国通貨を円として外国通貨をドルとするとき、為替レートには、
1 ドル = x 円 とするか、1 円 = x ドル とするかという 2 通りの表
しかたがあるが、ここでは前者を使う
為替レート = 外国通貨の自国通貨で測った価値
∗ 為替レートの上昇は自国通貨の減価を意味する
• 実質為替レート
– 利子率の場合と同様、為替レートも名目と実質を分けて考える
∗ ここで考える長期モデルでは,為替レートについても古典派の 2
分法が成り立つ
– 実質為替レート:2 国間の財の相対価格
∗ 名目為替レートと同様に、実質為替レートで「自国財で測った外
国財の価値」を表す
外国財の価値
実質為替レート = 名目為替レート ×
自国財の価値
• 実質為替レートの決まり方
– 実際には、各国で複数の財・サービスが生産(消費)されているので、
実質為替レートは 2 国の価格指数を使って表す
実質為替レート = 名目為替レート × 物価水準の比率
ϵ=e×
p⋆
p
– 仮定:貿易収支(純輸出)は実質為替レートの増加関数とする:図 6.7
N X = N X(ϵ)
∗ 実質為替レートが高いときは、相対的に、外国財が高く、自国財
は安いので、自国材への純輸出需要は増大
∗ 実質為替レートが低いときは、相対的に、外国財が安く、自国財
が高いので、自国材への純輸出需要は減少
– 均衡実質為替レート:図 6.8
∗ 小国開放経済の仮定のもと、貿易収支(純輸出)は次式で決定さ
れた
N X = S − I(r⋆ ),
S = Ȳ − C(Ȳ − T ) − G
∗ 純輸出がちょうど、S − I(r⋆ ) になるのは、実質為替レートが調整
される結果であり、その均衡水準は次のように与えられる
N X(ϵ) = S − I(r⋆ )
– 均衡の変化
∗ 自国の拡張的財政政策:図 6.9
· S が低下し、S − I(r) が低下することで、N X(ϵ) は低下し、ϵ
は低下する
∗ 他国の拡張的財政政策:図 6.10
· r⋆ が上昇し、S − I(r) が上昇することで、N X(ϵ) は上昇し、
ϵ は増加する
∗ 投資需要の増加:図 6.11
· I(r⋆ ) が増加し、S − I(r) が低下することで、N X(ϵ) は低下
し、ϵ は減少する
∗ 保護貿易政策:図 6.12
· N X(·) が右シフトするがし、S − I(r) は不変なので、N X(ϵ)
と ϵ は不変である(貿易収支には影響しないが、輸出と輸入
を同額変化させる)
• 名目為替レートの決まり方
– 実質為替レートは N X(ϵ) = S − I(r⋆ ) できまるので、それを所与とし
て、名目為替レート e は次式で決まる
e=ϵ×
P
P⋆
∗ P と P ⋆ は、2 国の金融政策で決まる
∗ ϵ は、S − I = N X(ϵ) より、古典派モデルから決まる
– 変化率で表すと、
名目為替レートの変化率 = 実質為替レートの変化率+インフレ率の差
e の変化率 = ϵ の変化率 + (π − π ⋆ )
∗ 実質為替レートの変動を所与とすると、自国のインフレ率が高い
ほど名目為替レートは上昇(自国通貨は減価)する
• 購買力平価(PPP)
– 一物一価の法則:同じ財は同じ価格で売買されること
– 購買力平価:一物一価の法則の国際市場への適用
– 購買力平価のもとでは、純輸出曲線 N X(ϵ) は、水平に(近く)なる:
6.35 の図
∗ 貯蓄や投資の変化は実質為替レートや名目為替レートにほとんど
影響を与えない
∗ 名目為替レートの変化は物価水準の変化に起因する
– 購買力平価が実際には成立していないと考えられる理由
∗ 国際的に取引が困難な財・サービス(非貿易財)が存在する
∗ 貿易可能な財でも完全に代替的とは限らない
6.4
大国開放経済
• 純資本流出曲線
– 今までに考えたケース:6.38 の図
∗ 閉鎖経済:純資本流出(CF )は、0 で一定
∗ 完全資本移動を伴う小国開放経済:実質利子率は r⋆ で固定
– 大国開放経済:6.39 の図
∗ ここでは、純資本流出(CF )は、自国利子率 r の減少関数とする
CF = CF (r)
∗ 純資本流出曲線が水平にならない理由
· 大国経済の場合、自国の資本流出が世界利子率に影響しうる
· 資本移動が完全ではない
• 大国開放経済モデル:図 6.19
– 国民貯蓄:
S̄ = Ȳ − C(Ȳ − T ) − G
– 資金貸付市場(r が決まり、CF (r) が決まる)
:図 6.17
S̄ = I(r) + CF (r)
– 外国為替市場(CF (r) の下で、ϵ が決まり、N X(ϵ) が決まる)
:図 6.18
N X(ϵ) = CF (r)
– 名目為替レート:
e=ϵ
P
P⋆
– r と ϵ は内生関数である
• 均衡の変化
– 大国開放経済における国民貯蓄の減少:図 6.20
∗ S の減少により、r が増加し、CF (r) は減少する。CF (r) の減少
により、ϵ は減少し、N X(ϵ) は減少する
– 大国開放経済における投資需要の増大:図 6.21
∗ I(·) の右シフトにより、r が増加し、CF (r) は減少する。CF (r)
の減少により、ϵ は減少し、N X(ϵ) は減少する
– 大国開放経済における輸入制限:図 6.22
∗ S と I(·) は不変であるので、r と CF (r) も不変である。ϵ は減少
するが、N X(ϵ) は不変である
– 大国開放経済における純資本流出の減少:図 6.23
∗ CF (·) の左シフトにより、r が減少し、CF (r) は減少する。CF (r)
の減少により、ϵ は減少し、N X(ϵ) は減少する
労働市場
7
• 長期的な失業率の水準:自然失業率
• 長期的に失業率が存在する主な理由
– 摩擦的失業:職探しに時間がかかることに起因する失業
– 構造的失業:長期的にも実質賃金が労働市場の需給一致水準より高く
留まることで起こる失業
7.1
離職、就職と自然失業率
• 労働力
L=E+U
– 労働力 L、就業者 E 、失業者 U
– 離職率 s、就職率 f とすると、離職者数が sE 、就職者数が f U となる
– sE > f U なら失業者は増加し、sE < f U なら失業者は減少する
• 労働市場の長期均衡
– 労働市場の長期均衡において、失業率が一定となるとすると(定常
状態)、
f U = sE = s(L − U )
– 失業率 U
L の長期的な水準(自然失業率)は、離職率と就職率で決まる
s
1
U
=
=
L
s+f
1 + fs
7.2
職探しと摩擦的失業
• 摩擦的失業:現実の経済では様々な理由で労働者が産業間や企業間を移動
することが不可欠であるが、その際職探しに時間がかかることで起こる失
業のこと
• 公共政策と摩擦的失業:公共職業安定所・職業再訓練プログラム、失業保険
7.3
実質賃金の硬直性と構造的失業
• 構造的失業:7.13 の図
– 長期的にも存在する実質賃金の硬直性(需給一致水準まで下がらない
こと)により発生する失業
• 最低賃金法
• 労働組合と団体交渉
– 労働組合は既に雇用されている労働者の利益を最大にすべく行動し、
失業者や将来労働市場に参入する若者の利益を十分に考慮しないため、
賃金が需給一致水準よりも高めに設定される傾向がある
• 効率賃金仮説
– 様々な理由から、賃金を高めに設定した方が労働者の生産性が高まる
ため、実質賃金は需給一致水準よりも高めに設定される
∗ 貧しい国では、賃金を高くすることで、労働者の栄養状態が改善
し、生産性が上がる
∗ 賃金を高くすることで離職率が低下し、新規雇用や訓練にかかる
費用を節約できる
∗ 逆選択:賃金を高くすることで、能力の高い労働者を集めること
ができる
∗ モラル・ハザード:仕事上の努力の観測が難しい場合、賃金を高め
に設定し、解雇の機会費用を上げることで、努力のインセンティ
ブとすることができる
7.4
労働市場の経験:アメリカ
• 失業の原因が摩擦的失業なのか構造的失業なのかによって、失業期間の長
短が左右される
• アメリカでは、失業件数のほとんどは短期間に終了するが、失業期間総数
のほとんどは長期失業者で占められる(自然失業率を低下させることを目
指すなら、長期失業者を減らすような政策をとる必要がある)
7.5
労働市場の経験:ヨーロッパ
• ヨーロッパでの失業率上昇の主な理由
– 経済政策:失業者への手厚い給付
– 技術革新:スキル偏向的技術進歩による未熟練労働者への需要の減少
• アメリカでは、スキル偏向的技術進歩は未熟練労働者の相対的な賃金低下
をもたらしたが、ヨーロッパでは、手厚い社会保障のため未熟練労働者は
失業を選択した
• ヨーロッパ諸国でも失業率の違いが大きい
– 失業率の違いの大部分が長期失業者の相違によっている
– 失業保険の補償率が高く、給付期間が長いほど、失業率が高く、長期
の失業が多い傾向にある
– 職業訓練などの積極的労働市場政策への政府支出は失業を減らす傾向
にある
• 各国の一人あたり労働時間の違いの説明:就労者の労働時間の違い・就労
者と人口の比率の違い
8
景気変動へのイントロダクション
8.1
イントロダクション
• 失業とオークンの法則
– 労働市場と景気循環
∗ どの景気後退期にも失業率が高まる
– オークンの法則:失業率と実質 GDP との間の負の相関関係
∗ アメリカ
実質 GDP 変化率 = 3% − 2 × 失業率の変化
8.2
マクロ経済学における時間的視野
• 長期モデル
– 長期モデルまとめ
∗ 財政政策 G, T 、金融政策 M
∗ 生産要素市場:
L = L̄,
K = K̄,
Y = Ȳ = F (K̄, L̄)
∗ 財市場・貸付資金市場:
S = Ȳ − C(Ȳ − T ) − G = I(r) =⇒ r, I
∗ 貨幣市場
1. 貨幣数量説
M
= k Ȳ =⇒ P
P
2. 一般形
M
= L(i, Y ) =⇒ P,
P
i=r+π
– 長期モデルの特徴
∗ 完全伸縮価格:すべての市場で需給が一致するように価格が調整
される
∗ 古典派の 2 分法・貨幣の中立性
· 総生産 Y は、供給側の条件のみによって決定される
· 需要サイドは、総生産に影響を与えない
∗ セイの法則:供給が需要を生み出す
∗ 経済の短期的な変動を考えるには適さない
• 短期と長期との相違
– 短期と長期では、価格の伸縮性の違いがある
∗ 長期:価格は伸縮的であって、需給の変化に対応できる(古典派)
∗ 価格の多くは硬直的である
• 短期モデル
– 価格硬直性の下では、需要が供給を決める
– 景気変動の発生のメカニズム
∗ 供給サイドだけでなく、需要サイドの変動が総生産の変動の原因
となる
– 安定化政策
∗ 財政政策や金融政策を用いて、景気変動の影響を緩和することが
可能になる
• この章でやること
– 総需要ー総供給モデルの導入
– 総需要(AD)
:財・サービスに対する経済全体の需要
∗ 価格水準 P の減少曲線
– 総供給(AS)
:財・サービスに対する経済全体の供給
∗ 短期供給曲線(SRAS)と長期供給曲線(LRAS)に区別される
– 均衡
∗ 短期均衡:総需要曲線と短期供給曲線の交点
∗ 長期均衡:総需要曲線と長期供給曲線の交点
– 安定化政策
• 総需要曲線の導出
– この章
∗ 貨幣数量説 M
P = kY に基づき、総需要はマネーサプライのみで決
まる
– 次章(ケインズの IS-LM モデル)
∗ より一般の貨幣需要関数 M
P = L(i, Y ) を考察し、総需要はマネー
サプライだけでなく、消費需要、投資需要、政府購入など多くの
要因に依存する
8.3
総需要曲線
• 総需要曲線(AD)
:生産物への総需要 Y と一般物価水準 P との右下がりの
関係:図 8.5
• この章では、貨幣数量説を仮定する
– 貨幣需要関数
M
= kY
P
– 総需要曲線
Y =
1M
k P
• 金融政策と総需要曲線
– 中央銀行がマネーサプライを変化させると、総需要曲線はシフトする:
8.22 の図
∗ マネーサプライの減少は総需要曲線を左シフトさせる
∗ マネーサプライの増加は総需要曲線を右シフトさせる
8.4
総供給
• 総供給曲線(AS)
:財・サービスの供給量と一般物価水準の関係
– 短期供給曲線と長期供給曲線の区別:価格伸縮性の違いに起因
• 長期総供給曲線(LRAS)
:図 8.7
– 長期モデルによって導かれる総供給曲線
– 長期的には財・サービスの供給量は物価水準 P と独立に決まる
Y = F (K̄, L̄) = Ȳ
∗ Ȳ は、完全雇用生産量や自然率生産量などと呼ばれる
∗ 自然:価格が伸縮的だった場合
– 総需要曲線のシフトと長期均衡:図 8.8
• 短期総供給曲線(SRAS)
:図 8.9
– 価格は短期的に完全固定されているとする
– 所与の物価 P のもとで、企業は需要量に応じて、生産を決める
– 所与の価格 P で水平線になる
– 総需要曲線のシフトと短期均衡:図 8.10
• 長期均衡:図 8.11
– 短期均衡から長期均衡への変化(総需要の減少)
:図 8.12
8.5
安定化政策
• 経済の変動を引き起こすような外性的な変化(ショック)
– 需要ショック:総需要曲線をシフトさせるようなショック:図 8.13
– 供給ショック:総供給曲線をシフトさせるようなショック:図 8.14
• 安定化政策:短期的な経済変動を安定化させるための経済政策
– 不利な供給ショックに対する受容的対応:図 8.15
∗ 不利な供給ショックにより、短期供給曲線が上方シフトしても、中
央銀行がシフトを受容して総需要を拡大すれば、物価水準は高い
ままだが、生産量は変化しない
9
IS-LM モデル
9.1
イントロダクション
• 貨幣数量説に基づいた貨幣需要関数 M
P = kY の下では、総需要は P を所与
としてマネーサプライ M のみできまる
– 総需要に影響を与えるのは金融政策だけで、財政政策には依存しない
• IS-LM モデル:貨幣需要を所得だけでなく、名目利子率の関数と考える
M
= L(r + π, Y )
P
– 総需要は以下の順で決まる
1. 硬直価格 P, π = 0・金融政策 M ・財政政策 G, T
2. LM 曲線 M
P = L(r + π, Y )・IS 曲線 I(r) = S
d
3. 総需要 Y ・実質利子率 r
– IS 曲線:財市場(貸付資金市場)の均衡条件(所得と利子率の関係)
– LM 曲線:貨幣市場の均衡条件(所得と利子率の関係)
9.2
IS 曲線:財市場均衡
• IS 曲線の導出
– IS 曲線:財政政策 (G, T ) を所与とした時の、財市場(貸付資金市場)
の均衡を満たす (Y, r) の組み合わせ
Y − C(Y − T ) − G = I(r)
∗ IS 曲線は減少関数(右下りの曲線)になる:9.5 の図
∗ 理由
· 貯蓄 S = Y − C(Y − T ) − G(= I(r)) は、Y の増加関数
· Y が増えると、貯蓄が増加し、貸付資金市場における資金供
給が増える
· 貸付資金市場を均衡させる利子率 r が低下する
– IS 曲線の傾き
∗ 財市場(貸付資金市場)の均衡条件
Y − C(Y − T ) − G = I(r)
∗ これを Y と r に関して全微分する
(1 − M P C)dY − I ′ (r)dr = 0
dr
1 − MPC
=
<0
dY
I ′ (r)
MPC =
dC
∈ (0, 1),
dY
I ′ (r) =
dI
<0
dr
∗ IS 曲線の傾き
· IS 曲線の傾きは負
· 限界消費性向 M P C が大きいと、IS 曲線は水平に近づく
· 投資の利子率への反応 I ′ (r) の大きさが大きいと、IS 曲線は水
平に近づく
• 財政政策と IS 曲線のシフト:9.9 の図
– 政府購入
∗ G の変化が IS 曲線をどうシフトさせるかをみるために、実質利子
率 r を固定して、G の変化が財市場を均衡させる総需要(所得)
Y にどう影響するかをみる
∗ r を固定して、貸付資金市場均衡条件 Y = C(Y − T ) + G + I(r)
を Y と G で全微分すると、
(1 − M P C)dY − dG = 0
dY
1
=
>1
dG
1 − MPC
dG
∗ 政府購入が dG 変化する時、各 r において、総需要 Y は 1−M
PC だ
dG
け上昇するので、IS 曲線は水平方向に 1−M P C だけ右シフトする
∗ 政府購入乗数: 1−M1 P C
– 租税の変化
∗ r を固定して、貸付資金市場均衡条件 Y = C(Y − T ) + G + I(r)
を Y と T で全微分すると、
dY − M P C × dY + M P C × dT = 0
dY
MPC
=−
dT
1 − MPC
MP C
∗ 税を dT だけ変化させた時、IS 曲線は水平方向に −dT × 1−M
PC
だけシフトする
MP C
∗ 租税乗数: 1−M
P C (政府購入乗数より M P C だけ小さい)
∗ 財市場均衡条件 Y = C(Y − T ) + G + I(r) より、G は直接 Y を増
加させるのに対して、T の Y への効果は家計の消費支出 C(Y − T )
を通じた間接的なものである
9.3
LM 曲線:貨幣市場均衡
• LM 曲線
– LM 曲線の導出:図 9.11
∗ 短期の仮定:物価水準 P は固定、よってインフレ率はゼロ π = 0
· 名目利子率と実質利子率は等しい r = i
∗ 貨幣市場均衡条件は
M
= L(i, Y ) = L(r, Y )
P
であり、これを満たす Y と r の組み合わせを LM 曲線と呼ぶ
∗ LM 曲線は増加関数(右上がり)である:9.12 の図
· 実質貨幣需要関数は所得 Y に関して増加し、利子 r に関して
減少する
· 所得 Y が上がると実質貨幣需要が増大するが、それは、所与
の実質貨幣残高 M
P の下で、貨幣市場を均衡させる利子率 r を
上昇させる
– LM 曲線の傾き
∗ 貨幣市場均衡条件 M
P = L(r, Y ) を r と Y で微分すると
Lr dr + LY dY = 0
Lr =
∂L(r, Y )
∂L(r, Y )
< 0, LY =
>0
∂r
∂Y
LY
dr
=−
>0
dY
Lr
∗ LM 曲線の性質
· 右上がりの曲線
· 貨幣需要の利子への反応 Lr の絶対値が小さいと水平に近づく
· 貨幣需要の所得への反応 LY の絶対値が大きいと垂直に近づく
∗ 貨幣数量説の下では、Lr = 0 なので、LM 曲線が垂直になる
• マネーサプライと LM 曲線:9.15 の図
– Y を固定して M を増やした時、貨幣市場均衡を満たす利子率 r は減
少する
1
dr
=
<0
dM
P Lr
∗ 理由:所与の Y の下で、貨幣需要は r の減少関数なので、貨幣供
給を増やせば、貨幣市場を均衡させる金利は低下する
M
– Y, P を固定して、貨幣需要が上昇したとき、LM 曲線は左シフトする:
9.15 の図
• 貨幣市場均衡
– 短期と長期の違い
∗ 長期均衡:貨幣供給成長率の上昇により、インフレ率が上昇し、名
目金利が上昇する
∗ 短期均衡:貨幣供給の上昇により、
(名目兼実質)金利が低下する
– 貨幣数量説との関係
∗ 貨幣数量説は L(r, Y ) が r に依存しないケースなので、LM 曲線が
垂直になるケースであると解釈できる
9.4
短期均衡
• 均衡
– IS: Y = C(Y − T ) + G + I(r)
– LM: M
P = L(r, Y )
• 例:消費 C = a + b(Y − T )、投資 I = c − dr、貨幣需要 L(r, Y ) = eY − f r
d
1
b
– IS 曲線:Y = a+c
1−b − 1−b r + 1−b G − 1−b T
– LM 曲線:r = fe Y − f1 M
P
e
dr
| は 1−b
– IS 曲線と LM 曲線の傾きの絶対値 | dY
d と f となる
1
b
– 政府購入乗数と租税乗数は、 1−b
と 1−b
となる
– MPC が小さいまたは投資の r への反応が小さい時、IS 曲線はより垂
直になる
– 貨幣需要の Y への反応が大きいまたは r への反応が小さい時、LM 曲
線はより垂直になる
9.5
短期変動
• 財政政策
– 政府購入増加の効果:9.21 の図
∆G
∗ IS 曲線が 1−M
P C 右シフトすると、所得が上昇し、利子率が上昇
し、消費は増加し、投資は減少する
∗ r の上昇による投資の減少をクラウディングアウトという
– 減税の効果:9.22 の図
MP C
∗ IS 曲線が ∆T 1−M
P C 右シフトすると、所得が上昇し、利子率が
上昇し、消費は増加し、投資は減少する
• 金融政策
– マネーサプライ増加の効果:9.24 の図
∗ LM 曲線が下シフトすると、利子率が低下し、所得が増加し、消
費は増加し、投資は増加する
• 金融政策と財政政策の相互作用
– 増税に対する経済の反応
∗ 中央銀行がマネーサプライを一定に保つケース:9.26 の図
· 増税は IS 曲線を左シフトさせるが、LM 曲線は同じ位置に留
まるので、利子率は減少し、所得は減少する
∗ 中央銀行が利子率を一定に保つケース:9.27 の図
· 増税は IS 曲線を左シフトさせ、中央銀行はマネーサプライを
減少させ、LM 曲線は上シフトするので、利子率は一定で、所
得は減少する
∗ 中央銀行が所得を一定に保つケース:9.28 の図
· 増税は IS 曲線を左シフトさせ、中央銀行はマネーサプライを
減少させ、LM 曲線は下シフトするので、利子率は減少し、所
得は一定である
– ショック
∗ IS 曲線へのショック
· 消費関数 C(Y − T ) や投資関数 I(r) の外生的な変動
· アニマル・スピリッツ
∗ LM 曲線へのショック
· 貨幣需要関数 L(i, Y ) の外生的な変動
– 金融政策の手段:利子率とマネーサプライ
∗ 中央銀行の政策手段として報道どうされるのは、マネーサプライ
ではなく金利である
∗ 中央銀行による政策金利のコントロールは、公開市場操作のマネー
サプライのコントロールによっている
∗ 金利を政策手段として用いるのが適している理由の一つは LM 曲
線へのショック(貨幣需要へのショック)が IS 曲線へのショック
よりも頻繁に起こっているためである
· 利子率を決められた値にコントロールするようにマネーサプ
ライを調整すれば、LM 曲線へのショックは相殺される
· 貨幣需要の変化の影響は、貨幣供給の変化によって相殺できる
• 総需要曲線
– IS-LM で決まる Y は所与の価格 P の下での総需要であり、異なる P
に対応する Y を求める
– IS-LM モデルにおいて、価格減少が総需要の増大をまねく仕組み
∗ P の減少により、 M
P が上昇し、LM 曲線が右シフトして、Y が上
昇する
∗ 総需要曲線はこの P と Y の関係をまとめたものである(右下がり)
– 金融政策と総需要曲線:9.33 の図
∗ 金融の拡張(M の上昇)は LM 曲線を下シフトさせ、どのような
価格水準においても総需要を増加させる(AD の右シフト)
– 財政政策と総需要曲線:9.34 の図
∗ 財政の拡張(G の増加や T の減少)は IS 曲線を右シフトさせ、
どのような価格水準においても総需要を増加させる(AD の右シ
フト)
– 短期均衡と長期均衡:9.35 の図
∗ IS-LM
· P が減少すると、LM 曲線が右シフトし、Y が増加し、長期
均衡となる
∗ AS-AD
· P が減少すると、SRAS が下シフトし、Y が増加し、長期均
衡となる
9.6
大恐慌
• 支出仮説:IS 曲線へのショック
– 大恐慌の主な原因は、財・サービスへの支出の外生的な減少
– 支出の減少の要因:株式市場の暴落・住宅投資の落ち込み・銀行の倒
産・財政政策
• 貨幣仮説:LM 曲線へのショック
– 大恐慌の主な原因は、マネーサプライの大幅な減少
∗ ほとんどの経済の下降はマネーサプライの縮小が原因
∗ 大恐慌は金融政策の失敗が原因
– 貨幣仮説の問題点
∗ 実質貨幣残高の動き:実質貨幣残高は若干増加している
∗ 利子率の動き:名目利子率は持続的に低下した
• 貨幣仮説再論:物価下落の影響
– デフレーションには、経済を安定化する効果と不安定化する効果がある
– デフレーションの安定化効果
∗ IS-LM 曲線
· 物価水準 P が下落すると、実質貨幣残高 M
P が増加し、LM 曲
線が拡張方向にシフトし、所得 Y が増加する
∗ ピグー効果:消費を Y と M
P の増加関数と仮定する:9.41 の図
(
)
M
C = C Y − T,
P
· 物価水準 P が下落すると、実質貨幣残高が増加し、IS 曲線が
拡張方向にシフトし、所得が増加する
– デフレーションの不安定化効果
∗ デットデフレーション理論
· 予期しない物価水準の低下によって、借りてから貸し手への実
質的な富の移転が生じて、経済全体の総支出の減退をまねく
∗ 予想されるデフレーションの影響:期待インフレ率の変化は IS 曲
線をシフトさせる:図 10.8
· IS-LM(期待インフレ率 Eπ と事前的実質利子率 i − Eπ )
Y = C(Y − T ) + I(i − Eπ) + G,
M
= L(i, Y )
P
· 企業のデフレ予想により、Eπ が減少することで、IS 曲線が左
シフトし、所得が減少し、貨幣需要が減少し、名目利子率が
低下する
· 名目利子率の低下はデフレ予想より小さいので、実質利子率
は上昇する
• 流動性の罠
– 名目利子率には下限が存在する
∗ 貨幣の利子率がゼロであるため、ゼロを下回ることができない
– 流動性の罠
∗ 名目利子率がゼロの下限にまで下落してしまい、金利を低下させ
る余地がなくなってしまった状態
∗ 総需要、生産、雇用は低水準で罠にはまったような状態になる
– 流動性の罠はゼロの下限の問題と呼ばれることもある
– 厳密には名目利子率の加減はゼロではない(現金を貯蔵することにコ
ストがかかる)
• 非伝統的金融政策
– 現時点の名目利子率がゼロまで下がったとしても、金融政策によって
経済を刺激する余地は残されている
– 非伝統的金融政策
∗ フォワード・ガイダンス:将来の金融行動を公表する政策
∗ 量的緩和:公開市場操作よりも多くの種類の金融証券を用いること
10
開放経済の短期モデル
10.1
マンデル・フレミング・モデル
• マンデル・フレミング・モデル
– 短期の仮定:P, P ⋆ は固定・π = π ⋆ = 0, i = r, e = ϵ
∗ 実質為替レート ϵ
P⋆
P
∗ ϵ が上昇すると、国内財が割安になるので、N X(ϵ) は上昇する
ϵ=e
– マンデル・フレミング・モデル:IS-LM と小国開放経済と完全な資本
移動
∗ IS:Y = C(Y − T ) + I(r) + G + N X(e)
∗ LM: M
P = L(r, Y )
∗ 小国:r = r⋆
– 小国の仮定を代入して、マンデル・フレミング・モデルをえる
∗ IS:財市場均衡を満たす Y と e の組み合わせを示す
Y = C(Y − T ) + I(r⋆ ) + G + N X(e)
· 実質為替レート ϵ が上昇すると、国内財が割安になるので、
N X(ϵ) は上昇し、総需要 Y は上昇する
∗ LM:貨幣市場均衡を満たす Y と e の組み合わせを示す
M
= L(r⋆ , Y )
P
de
PC
– IS 曲線: dY
= 1−M
> 0 より、右上がりの曲線:10.4 の図
N X′
∗ e が上昇すると、自国財が割安になるので、N X が上昇し、総需
要 Y は上昇する
– LM 曲線:e に依存しないので、垂直な直線:10.4 の図
10.2
変動相場制下の小国開放経済
• 変動相場制:為替レートは市場で自由に変動させる制度
• 財政政策の効果:IS 曲線の右シフト:10.8 の図
– dG > 0 =⇒ de < 0, dY = 0 =⇒ dC = 0, dI = 0, dN X < 0
• 金融政策の効果:LM 曲線の右シフト:10.9 の図
– dM > 0 =⇒ de > 0, dY > 0 =⇒ dC > 0, dI = 0, dN X > 0
• 貿易政策の効果:NX 曲線のシフトによる IS 曲線の右シフト:10.10 の図
– de < 0, dY = 0 =⇒ dC = 0, dI = 0, dN X = 0
10.3
固定相場制下の小国開放経済
• 固定相場制:為替レートが固定された水準に維持されるよう自国通貨の供
給を調整する制度
• 固定相場制ではどのようにマネーサプライが決まるか:図 11.7
• 財政政策:10.14 の図
dG > 0 =⇒ de = 0, dY > 0, =⇒ dC > 0, dI = 0, dN X = 0
• 金融政策:10.15 の図
– 固定相場制のもとでは、マネーサプライは為替レートを維持する水準
に決まるため、中央銀行はマネーサプライを自由に変化させられない
– 固定相場制の国が実行できる金融政策:為替レートが固定される水準
を変更すること:10.16 の図
∗ 為替レートの切下げ:e の上昇
· LM 曲線を右方にシフトさせ、純輸出を増やし、所得を増大さ
せる
∗ 為替レートの切上げ:e の下落
· LM 曲線を左方にシフトさせ、純輸出を減らし、所得を減少さ
せる
• 為替レートの切下げと大恐慌からの回復
– 大恐慌への各国政府の対応の違い
∗ 従来の金と通貨の交換レートを維持した国:長期の経済活動の停滞
∗ 通貨に対する金の量を切り下げた国:恐慌からすみやかに回復
• 貿易政策:10.18 の図
de = 0, dY > 0 =⇒ dC > 0, dI = 0, dN X > 0
• マンデル・フレミング・モデルの政策効果のまとめ
変動相場制
固定相場制
Y
e
NX
Y
e
財政政策
0
下落
下落 上昇
0
金融政策 上昇
上昇
上昇
0
0
輸入制限
0
下落
0
上昇
0
10.4
NX
0
0
上昇
利子率格差
• カントリーリスクによる利子率格差
– カントリーリスクにより、特に発展途上国の利子率は世界利子率より
も高くなる傾向がある
r = r⋆ + θ
∗ θ はリスクプレミアム
– カントリーリスクを考慮したマンデル・フレミング・モデル
∗ IS:Y = C(Y − T ) + I(r⋆ + θ) + G + N X(e)
⋆
∗ LM: M
P = L(r + θ, Y )
– リスクプレミアム θ が上昇し、国内利子率 r が上昇:10.22 の図
∗ 投資が減少するため、IS 曲線が左方にシフトする
∗ 貨幣需要が減少し、LM 曲線が右方にシフトする
∗ 所得の増加と為替レートの上昇(自国通貨の減価)
• リスクプレミアムの上昇
– カントリーリスクの増大による所得の増加が生じる可能性は低いと考
えられる理由
∗ リスクプレミアム θ の上昇に対して、マネーサプライ M を減少
させる
∗ 自国通貨の減価が輸入品価格の上昇をもたらし、物価水準 P の上
昇をもたらす
∗ リスクプレミアム θ を高める出来事が起こると、その国の居住者
は貨幣需要を増大させる
∗ これらは、LM 曲線を左方にシフトさせて、自国通貨の減価を緩
和し、同時に所得を減少させる
– カントリーリスクの上昇が望ましくない理由
∗ 短期:通貨の減価をもたらし、
(上記の3つの経路を通じて)所得
を減少させる
∗ 長期:利子率の上昇は投資を減少させるので、資本蓄積を減らし
経済成長を阻害する
10.5
変動相場制と固定相場制
• それぞれの為替相場制度への賛成論と反対論
– 変動相場制
∗ 賛成論:金融政策の立案者は、雇用や物価の安定など他の目標を
追求できる
∗ 反対論:為替レートの不確実性は国際貿易を困難にする
– 固定相場制
∗ 賛成論:一国の金融当局に自己規律を課して、マネーサプライの
過度の増大を防ぐ
∗ 反対論:金融政策は為替レートを公表値に維持するという単一の
目標にしか使えない
– ユーロ
∗ 通貨同盟:固定相場制の最も極端な形
∗ 共通通貨(ユーロ)導入の代償は、その国独自の金融政策を実施
できないこと
• 国際金融のトリレンマ
– 一国が、自由な資本移動・固定相場制・独立した金融政策のすべてを
同時に実現することはできない
∗ 選択肢 1:資本の自由な移動を認め、独立した金融政策を行うこ
と(アメリカ)
∗ 選択肢 2:資本の自由な移動を認め、固定相場制を維持すること
(香港)
∗ 選択肢 3:国内外への資本の国際的な流出入を制限することで為
替レートを固定し、独立した金融政策を行うこと(中国)
10.6
マンデル・フレミング・モデルにおける総需要曲線
• 名目為替レートと実質為替レートを区別したマンデル・フレミング・モデ
ルの式
Y = C(Y − T ) + I(r⋆ ) + G + N X(ϵ)
M
= L(r⋆ , Y )
P
– 純輸出は実質為替レート ϵ に依存する(今までは、価格を固定してい
たので、e = ϵ としていたが、ここでは、AD 曲線を求めるために P を
動かすので、N X を ϵ の関数に戻す)
• 総需要の理論としてのマンデル・フレミング・モデル:図 11.13
– P が下がると、 M
P が上昇し、LM 曲線が右シフトするので、Y と e が
上昇する
• 小国開放経済の短期均衡と長期均衡:図 11.14
10.7
大国開放経済の短期モデル
• 大国開放経済の短期モデル
Y = C(Y − T ) + I(r) + G + N X(e)
M
= L(r, Y )
P
N X(e) = CF (r)
– IS
Y = C(Y − T ) + I(r) + G + CF (r)
– LM
M
= L(r, Y )
P
– この 2 式で (r, Y ) が決まり、それを CF (r) = N X(e) に代入すれば、
e, N X が決まる.
• 均衡:10.34 の図
• 財政政策:10.35 の図
– 拡張的な財政政策は、利子率を引き上げ、純資本流出を減少させ、為
替レートを下落させて、純輸出を減少させる
• 金融政策:10.36 の図
– 拡張的な金融政策は、利子率を低下させて、純資本流出を増加させ、
為替レートを上昇させて、純輸出を増加させる
• 大国開放経済の短期モデルにおける政策の効果
– 拡張的な財政政策の効果
∗ 所得を増加させる
∗ 所得への影響は閉鎖経済の場合よりも小さい
∗ 利子率が上昇すると、純資本流出が減少し、自国通貨が増価し、純
輸出は減少することが財政政策乗数をさらに減少させる
– 拡張的な金融政策の効果
∗ 閉鎖経済と同じく、利子率を低下させ、投資を刺激する
∗ 小国開放経済と同じく、自国通貨を減価させ、純輸出を刺激する
∗ 所得を高める
11
インフレと失業の短期的トレードオフ
• ここまでは短期的には物価は完全に固定され、短期供給曲線は水平である
と仮定してきた
– そのようなモデルではインフレを分析することができない
• 価格は部分的に硬直的であると仮定すると、短期総供給曲線は以下のよう
な式で表せる:11.2 の図
Y = Ȳ + α(P − EP )
– 産出量 Y 、自然率産出量(長期水準)Ȳ 、物価水準 P 、期待物価水準
EP
• この総供給曲線を使うと、フィリップス曲線などについての議論が理解で
きる
11.1
総供給曲線
• 企業の価格設定行動
– ここでは各企業は price taker ではなく、ある程度の価格支配力を持つ
とする
– p をある企業の生産物の価格として、その企業の利潤を最大にする価
格が次式で与えられるとする
p = P + a(Y − Ȳ )
– 2 種類の企業
1. 伸縮価格企業:価格を自由に変えられる企業(割合 1 − s) で、上
の式に従って価格 p を決める
2. 硬直価格企業:実際の Y や P が分かる前に価格を設定しなければ
ならない(割合 s)
– 硬直価格企業の価格設定:上の式が「平均的に」成り立つように p を
設定する
p = EP + a(EY − E Ȳ )
– EY = E Ȳ と仮定すれば、
p = EP
• 総供給曲線の導出
– 一般物価水準は、
P = sEP + (1 − s)[P + a(Y − Ȳ )]
(
)
1−s
P = EP +
a (Y − Ȳ )
s
– 上の式から短期総供給曲線が得られる:11.5 の図
Y = Ȳ + α(P − EP ),
α=
s
a
1−s
– 同様の総供給曲線は価格硬直性でなく、情報の不完全性に注目しても
導くことができる
∗ s が上昇すると、α が上昇し、総供給曲線は水平に近づく
• 短期総供給曲線:11.6 の図
• 総需要のシフトの効果:短期と長期:11.7 の図
11.2
インフレーション、失業とフィリップス曲線
• Phillips (1958):イギリスのデータで失業率と名目賃金の上昇率の間の負の
相関を発見した
• フィリップス曲線の導出
– フィリップス曲線
π = Eπ − β(u − un ) + v
∗ インフレ率 π 、期待インフレ率 Eπ 、失業率 u、自然失業率 un 、供
給ショック v
– 総供給曲線に外生的なショック v を加えた式を考える
P = EP +
1
(Y − Ȳ ) + v
α
両辺から P−1 を引いて π = P − P−1 , Eπ = EP − P−1 とおけば、
π = Eπ +
1
(Y − Ȳ ) + v
α
オークンの法則を使って、以下の式を代入すればフィリップス曲線を
得る
1
(Y − Ȳ ) = −β(u − un )
α
• フィリップス曲線の含意
– 適応的期待 Eπ = n − 1 を仮定すると、フィリップス曲線は、
π = π−1 − β(u − un ) + v
このとき、自然失業率 un はインフレ非加速的失業率と呼ばれる
– 適応的期待のもとで、インフレ率は慣性をもつ
– 第 2 項 β(u − un ) は、循環的失業(自然失業率からの乖離)がインフ
レの変動要因となることを示す
∗ 総需要の増大は失業を低下させるとともにインフレ率を引き上げる
– 第 3 項の v は供給ショックによるインフレ率の変動を示している
• インフレと失業の短期的トレードオフ:11.12 の図
– 政策変更が期待インフレ率に影響しないとすると、Eπ と v を所与と
して、政策により上の直線上にあるインフレ率と失業率の組み合わせ
を選ぶことができる
• 短期的トレードオフのシフト:11.13 の図
– インフレ期待は時間とともに調整され、長期的にはインフレ率と期待
インフレ率は一致するものと考えられる
– 長期的には古典派の二分法が成立し、失業率は自然失業率と一致し、イ
ンフレと失業のトレードオフは短期的にしか成り立たない:11.13 の図
∗ 長期
V = 0,
π = Eπ
π = Eπ − β(u − un ) → u = un
• ディスインフレーションと犠牲率
– 犠牲率:インフレ率を 1% さげるのに、実質 GDP を何 % 失う必要が
あるかを示す数値(標準的な推定値は 5%)
• 合理的期待
– 今までの議論では、インフレ期待に関して適応的期待を仮定してきた
∗ 将来のインフレ率に関する予想は過去のインフレ率によって与え
られた
– 合理的期待:人々が将来の予想を行う際には、政府の制作に関する情
報を含む利用可能なすべての情報を最適に利用する
– 合理的期待のもとでは、政策担当者が信頼できる限りにおいて、犠牲
率は非常に小さくなりうる:11.15 の図
• 履歴現象
– これまでの議論は、自然率仮説に基づいていた
∗ 総需要の変動は短期においてのみ、生産と雇用に影響を与える
∗ 長期においては、経済は古典派モデルで記述される産出・雇用・失
業の水準に復帰する
– 履歴現象:短期の変動が長期的な影響をもつ
∗ 例:短期的に失業率が上昇すると、長期的な失業率の上昇をもた
らしうる
∗ 履歴現象のもとでは,自然率仮説は成り立たない
12
経済成長 1
12.1
経済成長に関する基本的な事実
• 先進国における経済成長・経済成長の波及・長期的な経済成長率の違い
• アメリカの経済成長
– アメリカの一人当たり GDP 成長率は年率約 2% で安定
– 資本・生産比率 K
Y も一定
– GDP における投資シェア YI も一定
– GDP における資本所得シェア
R
KP
LW
P
Y と労働所得シェア Y
も一定
• 経済成長の波及
– 豊かな国と貧しい国の間の所得格差は大きい
– アメリカに追いついた国と追いついていない国(経済成長の収束)
12.2
所得の長期理論:復習
• 仮定
– 完全競争と伸縮的な価格
∗ 生産と所得は生産要素の供給と生産技術(生産関数)によって決
まる
– 労働者の数 = 人口(GDP per capita = GDP per worker)
– F (K, L):収穫一定の生産関数(以下が満たされる)
zF (K, L) = F (zK, zL),
for all z ≥ 0, K ≥ 0, L ≥ 0
– 労働者一人あたりの生産量は、資本労働比率の関数となる
(
)
( )
Y
F (K, L)
K
K
=
=F
,1 ≡ f
L
L
L
L
• 収穫一定の生産関数の例
– Cobb-Douglas Function
f (K, L) = AK α L1−α
∗ A > 0, 0 < α < 1
∗ 完全競争の下で、α は資本所得のシェア、1 − α は労働所得のシェ
アとなる
( )α
( ) ( )α
Y
K α L1−α
K
K
K
=A
=A
=⇒ f
=
L
L
L
L
L
– 価格の弾力性一定の関数
ϵ−1
ϵ−1
ϵ
F (K, L) = {aK K ϵ + aL L ϵ } ϵ−1
∗ 0 < aK , aL < 1, ϵ ≥ 0 で、ϵ は代替の弾力性を表す
• 要素市場
– 生産要素の総供給量
∗ K :資本の総供給量、L:労働の総供給量
– 要素価格(生産物価格 P = 1)
∗ W :賃金率、R:資本の実質レンタル料
– すべての企業は同一の収穫一定の生産技術 F (K, L) を持つ
– 代表的な企業の利潤最大化問題:max F (K, L) − RK − W L
– 利潤最大化の一階条件(FOCs)
:FK (K, L) = R, FL (K, L) = W
• 要素市場価格・均衡生産量・所得分配
– 要素市場均衡条件:K = K,
L=L
– 均衡要素価格:R = FK (K, L),
FL (K, L)
– 均衡生産量:Y = F (K, L)
– 所得シェア
FK K
∗ 資本シェア: RK
Y = Y
∗ 労働シェア: WYL = FYL L
WL
∗ 利潤シェア: 1 − RK
Y − Y =0
• 均衡所得:例
– 生産要素の総供給量 K, L とし、生産関数を F (K, L) = AK α L1−α と
する
∗ GDP:Y = AK α L1−α
α
∗ GDP per worker: YL = A( K
L)
∗ 均衡要素価格:R = αAK α−1 L1−α = αA
( )α
α)AK α L−α = (1 − α)A K
L
( K )α−1
L
, W = (1 −
– 所得シェア
∗ 資本シェア: RK
Y =α
∗ 労働シェア: WYL = 1 − α
WL
∗ 利潤シェア:1 − RK
Y − Y =0
• 経済成長の源泉
– 収穫一定の生産関数の下で、 YL = F ( K
L , 1) なので、経済成長(一人当
たり所得の上昇)には二つの要因がある:12.25 の図
1. 資本蓄積:労働者一人当たりの資本 K
L の上昇
2. 技術進歩:生産関数 F の上シフト
• 資本貯蓄
– 資本ストックの上昇は投資によって起こる
– 投資の水準は貯蓄によって決まる(S = I )
– 資本蓄積のプロセス
貯蓄
投資
生産
今期の所得 −−→ 金融市場 −−→ 資本蓄積 −−→ 次期の所得
– 新古典派経済成長理論(ソローモデル)
1. 基本モデル(人口成長や技術進歩のないケース)
2. 人口成長の導入
3. 技術進歩の導入
12.3
ソローモデル(ベースライン)
• 金融市場の均衡
– 人口成長も技術進歩もないものとする
∗ この仮定の下で、労働者一人当たりの資本や生産を分析する
∗ このとき、経済成長は資本蓄積のみによって起こる
– 生産関数と貯蓄 = 投資と貯蓄率一定から、k の動きを見る
1. 生産関数
– 生産関数(収穫一定)F (K, L)
∗ 資本ストック:K 、労働供給量(一定)
:L、GDP:Y = F (K, L)
– 労働者一人あたりの変数(小文字の変数で労働者一人当たりの値
を表す)
Y
y≡
= 労働者一人当たり GDP
L
K
k≡
= 労働者一人当たり資本
L
(
)
K
F (K, L)
=F
, 1 = F (k, 1) = 労働者一人当たり生産量
f (k) ≡
L
L
– 資本の限界生産性 MPK(限界生産性は逓減)
{ ( )}′
( )
K
1
K
MPK ≡ FK (K, L) = Lf
= L f′
= f ′ (k)
L
L
L
– 労働の限界生産性 MPL(限界生産性は逓減)
MPL ≡ FL (K, L) = f (k) − f ′ (k)k
F (K, L) = FK (K, L)K + FL (K, L)L
⇐⇒ FL (K, L) =
K
F (K, L)
− FK (K, L) = f (k) − f ′ (k)k
L
L
2. 貯蓄と投資
– 仮定:政府支出 = 税 = 0、一人当たり可処分所得 = y
– 仮定:貯蓄率一定
∗ s:貯蓄率(外生)
∗ c = (1 − s)y :一人当たり消費
∗ sy = sf (k):一人当たり貯蓄
– 金融市場均衡:投資 = 貯蓄
i = sy = sf (k)
– 同時に財市場も均衡している
y = c + i = (1 − s)y + i
3. 資本蓄積
– 資本ストックは投資により増大する
– 資本減耗:資本ストックが時間を通じて劣化していくこと
∗ 資本減耗率 δ
∗ 資本ストックは毎期一定の割合 δ で減耗していく
– 資本蓄積(総量と一人当たり)
資本の変化 = 投資 − 減耗
∆K = I − δK
(∆k = i − δk)
∗ ∆ は時間を通じた変化を表す(離散時間と連続時間)
∆Kt = Kt − Kt−1
or
∆Kt = K̇t =
• モデル
– ソローモデル(ベースライン)
∗ GDP
Y = F (K, L)
∗ 資本蓄積
∆K = I − δK
∗ 投資
I = sY
dKt
dt
– 一人当たり変数で書いたソローモデル
∗ GDP
y = f (k)
∗ 資本蓄積
∆k = i − δk
∗ 投資
i = sy
– 一人当たりの資本の蓄積に関する方程式
∆k = sf (k) − δk
– k のダイナミクス:12.36 の図・12.37 の図
> 0, if sf (k) > δk
∆k
= 0, if sf (k) = δk
< 0, if sf (k) < δk
– ∆K = 0 となる状態を定常状態といい、定常状態における一人当たり
資本 k ⋆ は次式の解になる
sf (k ⋆ ) − δk ⋆ = 0
– 一人当たり資本ストックのダイナミクスは次のようにも記述できる:
12.38 の図
k < k ⋆ =⇒ ∆K = sf (k) − δk > 0
k > k ⋆ =⇒ ∆K = sf (k) − δk < 0
– 一人当たり生産(所得)のダイナミクス
∆y ≈ MPK × ∆k
y = f (k) →
dyt
dkt
= f ′ (kt )
dt
dt
– 長期的な所得水準
∗ 長期とは、定常状態における状態を意味する
∗ 定常状態において、
一人当たり資本 = k ⋆ ,
一人当たり所得 = y ⋆ ≡ f (k ⋆ )
∗ 長期成長
· ベースライン(人口成長と技術進歩なし)では、長期的には
経済成長は 0 となる
∗ 収束:どの水準の資本ストック k > 0 から出発しても、長期的に
は定常状態の所得水準 y ⋆ に収束する
∗ 長期的な経済成長は技術進歩があって初めて可能になる
– 微分方程式を使った定式化
∗ ソローモデル(GDP・資本の変化・投資)
y(t) = f (k(t))
k̇(t) = i(t) − δk(y)
i(t) = sy(t)
∗ 整理すると、
k̇(t) ≡
dk(t)
dt
k̇(t) = sf (k(t)) − δk(t)
∗ 一人当たり所得のダイナミクス
˙
ẏ(t) = f ′ (k(t))k(t)
1
2
– 例:生産関数 Y = K 3 L 3
1
∗ 一人当たり生産量:y = YL = k 3
∗ 資本ストックのダイナミクス
1
∆k = sk 3 − δk
∗ 定常状態
k⋆ =
( s ) 32
δ
,
y⋆ =
( s ) 12
δ
– 資本の破壊
∗ 定常状態にあった経済が資本ストック K の多くを失ったとしても
(K, k, y の低下)、時間と共に元の定常状態の水準に戻る(例:第
二次世界大戦後のドイツや日本)
• 貯蓄率・資本減耗率の効果、条件付収束
– 貯蓄率 s1 の経済が定常状態にあるとする
s1 f (k1⋆ ) = δk1⋆
– 貯蓄率が s1 から s2 に増加したとすると、新しい定常状態での一人当
たりの資本 k2⋆ は以下で与えられる
s2 f (k2⋆ ) = δk2⋆
∗ s が上がると、i が上がり、k と y があがる:12.46 の図
∗ 定常状態の消費は必ずしも増えない
c⋆ = (1 − s)f (k ⋆ )
– 資本減耗率の効果:12.48 の図
∗ δ が上がると、k ⋆ と y ⋆ と c⋆ が下がる
∗ ソローモデルにおいて、σ の上昇と人口成長率の上昇は同じ効果
を持つ
– 条件付き収束
∗ ソローモデルによれば、共通のパラメータ(s と δ )と共通の生産
関数 f を持つ国は共通の定常状態に収束する(条件付き収束)
∗ 共通の定常状態を持つ国の間では、一人当たり資本の少ない国の
方が成長率が高い
∗ 異なる定常状態を持つ国の間では、貧しい国が早く成長するとは
限らない
12.4
資本の黄金律水準
• 最良の定常状態はどこか(政府が政策などを通じて、貯蓄率 s に影響を与
えられるとする)
• どの定常状態が最良なのかは基準による
– 一人当たり消費量 c⋆ が最大となる定常状態を最良と仮定する
– そのような定常状態における k を一人当たり資本黄金律水準と言い、
∗
で表す
kG
• 黄金律水準の導出:図 1.6
– 定常状態における一人当たり消費量(sf (k ⋆ ) = δk ⋆ )
c⋆ = y ⋆ − i⋆ = f (k ⋆ ) − sf (k ⋆ ) = f (k ⋆ ) − δk ⋆
⋆
は以下の問題の解となる:12.53 の図
– kG
max
f (k ⋆ ) − δk ⋆
⋆
k
–
⋆
は MPK が減耗率 δ と等しくなる水準となる
一解条件から、kG
⋆
f ′ (kG
)=δ
⋆
– sG で黄金律水準 kG
を導く貯蓄率とすると、
sG =
⋆
⋆
⋆
)kG
δkG
f ′ (kG
=
= 資本所得シェア
⋆
⋆
f (kG )
f (kG )
∗ Cobb-Douglas:y = k α =⇒ sG = α
• 例:図 1.8・図 1.9
1
2
– 生産関数 Y = K 3 L 3
1
– 一人当たり生産関数 y = k 3
– 黄金律水準
3
1 ⋆ −2
⋆
= (3δ)− 2 ,
(k ) 3 = δ, kG
3 G
2
sG = δkG3 =
1
3
12.5
人口成長
• モデル
– 人口成長率 n
L(t) = (1 + n)L(t − 1) = (1 + n)t L(0)
– 人口成長のあるソローモデル
∗ GDP
Y = F (K, L)
∗ 資本蓄積
∆K = I − δK
∗ 投資
I = sY
– 一人当たり変数に直したソローモデル
∗ GDP
y = f (k)
∗ 資本蓄積
∆k = i − (δ + n)k
∗ 投資
i = sy
– ∆k についての方程式の導出
K
K + ∆K
−
L(1 + n)
L
K + I − δK
−k
=
L(1 + n)
1
=
(i − δk − nk)
1+n
≈ i − δk − nk
∆k =
∗ 補足(k̇ = dk
dt などとする)
k=
K
,
L
K̇ = I − δK
K̇
IL
=
−δ
K
LK
k̇
K̇
L̇
K̇
IL
=⇒ =
− ,
k=
k − δk
k
K
L
K
LK
K̇
K̇
=⇒ k̇ = k − nk,
k = i − δk
K
K
=⇒ k̇ = i − δk − nk
=⇒ ln k = ln K − ln L,
– ソローモデルを一人当たり資本 k のみの式で表せば、
∆k = sf (k) − (δ + n)k
– 定常状態における k を k ⋆ と表すと
sf (k ⋆ ) = (n + δ)k ⋆
– 定常状態において、一人当たり所得は y = y ⋆ = f (k ⋆ ) で一定:図 2.1
∗ 長期的には、一人当たり所得の成長率は 0 となる
∗ 定常状態で、経済全体の GDP は人口成長率と同じ率 n で成長する
– 人口成長率は、減耗率 δ と同様に、定常状態における一人当たり所得
y ⋆ に負の影響を与える
• 資本の黄金律水準
– 一人当たり消費 c⋆ が最大となる定常状態における、一人当たり資本を
⋆
黄金律水準と呼び、kG
で表す
⋆
は以下の問題の解となる
– 黄金律水準 kG
c⋆ = f (k ⋆ ) − (δ + n)k ⋆
max
⋆
k
⋆
MPK = f ′ (kG
)=δ+n
⋆
– 黄金律水準 kG
を導く貯蓄率 sG
sG =
⋆
⋆
⋆
(δ + n)kG
)kG
f ′ (kG
=
= 資本所得シェア
⋆
⋆
f (kG )
f (kG )
1
2
1
• 例:生産関数 F (K, L) = K 3 L 3 , f (k) = k 3
– 一人当たり資本 k の従う方程式
1
∆k = sk 3 − (δ + n)k
– 定常状態における一人当たり資本と所得
k⋆ = (
3
s
)2 ,
δ+n
y⋆ = (
1
s
)2
δ+n
– 一人当たり資本の黄金律水準とそれに対応する貯蓄率
⋆
kG
= {s(δ + n)}− 2 ,
3
2
⋆ 3
sG = (δ + n)(kG
) =
• 微分方程式を用いた定式化
– 人口成長
L̇(t) = nL(t),
L(t) = ent L(0)
1
3
– ln k(t) = ln K(t) − ln L(t) より、
K̇(t) L̇(t)
I(t)
i(t)
k̇(t)
=
−
=
− (δ + n) =
− (δ + n)
k(t)
K(t) L(t)
K(t)
k(t)
k̇(t) = i(t) − (δ + n)k(t)
– k の従う微分方程式
k̇(t) = sf (k(t)) − (δ + n)k(t)
12.6
技術進歩
• 技術進歩
– 経済成長の源泉には、生産要素(K や L)の増加と技術進歩があるが、
前者だけでは長期的な成長にはつながらない
Y
– 技術進歩:インプット K
L とアウトプット L の関係の上方シフト
– 技術進歩の定式化の方法
1. 全要素生産性の上昇:Y = AF (K, L)
2. 資本増大的技術進歩:Y = F (ZK, L)
3. 労働増大的技術進歩:Y = F (K, EL)
– 労働増大的技術進歩を考える
– Cob-Douglas Case
∗ 上記の三つの定式化は同値
F (K, EL) = K α (EL)1−α = E 1−αF (K,L)
F (ZK, L) = (ZK)α L1−α = Z α F (K, L)
– E のことを労働増大的単位で測った全要素生産性ということもある
• 労働増大的技術進歩
– 生産関数
Y = F (K, L × E)
∗ E :労働の効率性
∗ E × L:効率性で測った労働投入量
∗ F は K と LE に関して収穫一定
– 一人当たり生産量
Y
=F
L
(
K
,E
L
)
– g :技術進歩、n:人口成長率
∆E
= g,
E
∆L
= n,
L
∆EL
=n+g
EL
• ソローモデル
– 効率性単位の変数
∗ 技術進歩があるケースでは、小文字の変数で、労働者一人当たり
ではなく、労働の効率性 1 単位当たりの量を表す
k≡
K
,
LE
y≡
Y
LE
∗ 効率性 1 単位当たりの生産
y = f (k) ≡
F (K, LE)
= F (k, 1)
LE
∗ 効率性単位で変数を表すことで、同じやり方でモデルを分析できる
∗ 技術進歩のある場合、労働者一人当たりの変数は次のようになる
( YL , K
L は、定常状態で E と同じ率 g で成長する)
Y
= yE
L
K
= kE
L
– モデル
∗ ソローモデル
· 生産
Y = F (K, LE)
· 資本蓄積
∆K = I − δK
· 投資
I = sY
∗ 効率性 1 単位当たりでの表現
· 生産
y = f (k)
· 資本蓄積
∆k = i − (δ + n + g)k
· 投資
i = sy
∗ 効率性 1 単位当たりの資本のダイナミクス
∆k = sf (k) − (δ + n + g)k
– 定常状態:12.79 の図
∗ 定常状態:∆k = 0
∗ k ⋆ :定常状態における効率性 1 単位当たりの資本
sf (k ⋆ ) = (δ + n + g)k ⋆
∗ y ⋆ :定常状態における効率性 1 単位当たりの生産量
y = f (k ⋆ )
– ダイナミクス:12.80 の図
∗ k や y のダイナミクスは技術進歩のないケースと同様(変数の単
位は違う)
∗ 定常状態への収束:任意の効率性単位の資本 k から出発して、定
常状態に収束する
– 長期的な経済成長
∗ 技術進歩がある時、定常状態で一定になるのは、効率性単位で測っ
た変数(k や y )
· 定常状態において、一人当たりで測った変数は技術進歩率 g で
成長する
∗ 定常状態における成長率
定常状態成長率
変数
K
k = EL
0
Y
y = EL
Y
L = yE
0
g
Y = yEL
n+g
– 資本の黄金律水準
∗ 黄金律定常水準:効率性単位当たりの消費を最大にする定常状態
max
c⋆ = f (k ⋆ ) − sf (k ⋆ ) = f (k ⋆ ) − (δ + n + g)k ⋆
⋆
k
⋆
MPK = f ′ (kG
)=δ+n+g
∗ 黄金律を達成する貯蓄率
sG =
⋆ ⋆
⋆
f ′ (kG
kG )
(δ) + n + g)kG
=
= 資本所得シェア
⋆
⋆)
f (kG )
f (kG
13
経済成長 2
13.1
復習:ソローモデル
• 長期的な成長率
変数
定常状態成長率
K
k = EL
Y
y = EL
Y
L = yE
0
g
Y = yEL
n+g
所得水準への効果
0
g
Growth Effect
s
Level Effect
δ
Level Effect
n
Level Effect
• 例1
1
2
– 生産関数:F (K, LE) = K 3 (LE) 3 ,
1
f (k) = k 3
– 効率性単位の資本 k のダイナミクス
1
∆k = sk 3 − (δ + n + g)k
– 定常状態における k と y
k⋆ = (
3
s
)2 ,
δ+n+g
y⋆ = (
1
s
)2
δ+n+g
– 黄金律水準の効率性単位資本と黄金律を達成する貯蓄率
⋆
kG
= {3(δ + n + g)}− 2 ,
3
2
⋆ 3
sG = (δ + n + g)(kG
) =
⋆
⋆
)
)(kG
1
f ′ (kG
=
⋆)
f (kG
3
• 例2
– 定常状態にある経済で以下が成り立っているとする
∗ n = 0.01, g = 0.02
k
∗ 資本生産比率 K
Y = y = 2.5
δk
∗ 資本減耗 δK
Y = y = 0.1
MPK×k
∗ 資本所得のシェア RK
= 0.3
Y =
y
– このとき、この経済が黄金律定常状態にあるか(M P K と δ + n + g
のどちらが大きいか)
δ=
0.3 = MPK ×
δk
0.1y
=
= 0.04
k
2.5y
k
⋆
=⇒ MPK = 0.12 > 0.07 = δ + n + g =⇒ k ⋆ < kG
y
• 例3
– ある経済が定常状態にあり、以下の事実が観測されている
1. GDPY の成長率は、3%(n + g = 3%)
2. 資本減耗率 δ は、5%
3. 資本生産比率 K
Y は、2.5
4. 資本所得シェア MPK × K
Y は、24%
– 以下を求めたい
1. 資本の限界性
MPK ×
K
= 0.24,
Y
K
= 2.5 =⇒ MPK = 0.096
Y
2. 貯蓄率
s = (n + g + δ)
k
= 0.08 × 2.5 = 0.2
y
3. 黄金律定常状態における資本の限界性
MPKG = n + g + δ = 0.08
4. 黄金律定常状態の資本の所得シェアが 24% であるとして、黄金律
定常状態での資本生産比率
MPKG ×
K
K
= 0.24 =⇒
=3
Y
Y
5. 黄金律を達成する貯蓄率
sG = 0.24
13.2
成長会計*
13.3
開発会計*
13.4
制度*
13.5
マルサスの罠*
14
消費
14.1
ケインズの消費関数
• ケインズの消費関数
– 仮定
1. 限界消費性向(MPC)が 0 と 1 の間にある
2. 平均消費性向(APC)が所得の減少関数である
3. 消費の主要な決定要因は所得であり、利子率はあまり重要ではない
– 例:14.5 の図
C = C + cY,
C > 0,
0 < c < 1,
C
C
=
+c
Y
Y
∗ 消費:C 、可処分所得:Y 、消費関数の切片:C > 0、MPCc
∗ 平均消費性向(APC)は所得 Y が上昇すると、減少する
• 実証研究・消費の謎
– 消費の謎:14.7 の図
∗ 短期消費関数(家計データや短期のマクロ時系列データ)にはケ
インズの消費関数がよく当てはまる
∗ 長期消費関数(長期の消費のマクロ時系列データ)にはケインズ
の消費関数が当てはまらない(平均消費性向 YC はほぼ一定で、所
得の減少関数とはなっていない)
– フィッシャーによる異時点間の消費選択の理論とモジリアーニ・フリー
ドマンの議論
14.2
2 期間の消費問題
• ラグランジュ乗数法
– 効用最大化問題
max u(x1 , x2 ) s.t.
x1 ,x2
p 1 x 1 + p2 x 2 = I
– λ:ラグランジュ乗数(所得の限界効用:価格を効用単位に変換する)
– ラグランジアン
L = u(x1 , x2 ) + λ(I − p1 x1 − p2 x2 )
– 一階条件(FOCs)
∂L
= u1 (x⋆1 , x⋆2 ) − λp1 = 0
∂x1
∂L
= u2 (x⋆1 , x⋆2 ) − λp2 = 0
∂x2
∂L
= p1 x⋆1 + p2 x⋆2 − I = 0
∂λ
– 効用最大化の条件:14.8 の図
p1
dx2
u1 (x1 , x2 )
=−
=
p2
dx1
u2 (x1 , x2 )
市場における相対価格 = 主観的な相対価格
• 消費者
– 消費者の仮定
∗ t = 0, 1 の 2 期間生きる消費者を考える
∗ 1 種類の消費財を各期に消費するとし、各期の消費財を二ュメレー
ルとする(それぞれの期の消費財の価格を 1 とする)
∗ a0 :0 期の期首に保有する資産
∗ ct :t 期における消費
∗ yt :消費財の単位で測った t 期の所得
∗ at+1 :t 期に行った貯蓄
∗ Rt+1:t 期から t + 1 期にかけての粗実質利子率(= 1+ 純利子率)
– フローの予算制約式(各期の資金の流れを記述する会計式)
∗ 各期のフローの予算制約式
c 0 + a 1 = y0 + a o
c 1 + a 2 = y 1 + R1 a 1
∗ 消費者は 0 期には借金をする(a1 ≤ 0)ことができるが、最終期
には負債を残せない(a2 ≥ 0)ので、以下を選ぶ
a2 = 0
∗ a2 = 0 を代入すると、フローの予算制約式は
c 0 + a 1 = y0 + a o
c 1 = y 1 + R1 a 1
– 効用最大化問題
∗ 効用関数
U (c0 , c1 ) = u(c0 ) + βu(c1 )
· β ∈ (0, 1):割引因子
· u(c):フローの効用関数で、u′ (c) > 0, u′′ (c) < 0 を満たす
∗ 効用最大化問題
max u(c0 ) + βu(c1 )
c0 ,c1 ,a1
s.t. c0 + a1 = y0 + a0
c 1 = y1 + R1 a 1
∗ 以下、a0 = 0 とする(y0 を a0 を含んだものと定義し直せば一般
性は失わない)
14.2.1
第 1 のアプローチ
• フローの予算制約を書き換える
c 0 = y0 − a 1
c 1 = y 1 + R1 a 1
• これを効用最大化問題に代入すると、1 変数 a1 を制約なしで選択する問題
となる
max u(y0 − a1 ) + βu(y1 + R1 a1 )
a1
• 一階条件:14.15 の図
u′ (y0 − a⋆1 ) = R1 βu′ (y1 + R1 a⋆1 )
– 最適な資産保有量 a⋆ はこの解で得られる
– a⋆ は正(貯蓄)にも負(借金)にもなりうる
– a1 についての一階条件はオイラー方程式と呼ばれる
∗ 左辺(u′ (y0 − a⋆1 ) = u′ (c⋆0 ))
:a1 の限界費用
∗ 右辺(R1 βu′ (y1 + R1 a⋆1 ) = R1 βu′ (c⋆1 ))
:a1 の限界便益
• 例:u(c) = ln(c) とする
– a1 についての一階条件(オイラー方程式)
1
1
= βR1
y0 − a1⋆
y1 + R1 a⋆1
– 最適な貯蓄 a⋆1
a⋆1 =
1
(βR1 y0 − y1 )
(1 + β)R1
– 最適な消費量 c⋆0 , c⋆1
)
1
y0 +
y1
R1
(
)
1
R1 β
⋆
⋆
c 1 = y 1 + R1 a 1 =
y0 +
y1
1+β
R1
c⋆0 = y0 − a⋆1 =
14.2.2
1
1+β
(
第 2 のアプローチ
• t = 0, 1 のフローの予算制約を使ってラグランジアンを構築する(以下の順)
L = u(c0 ) + βu(c1 ) + λ0 (y0 − c0 − a1 ) + λ1 (y1 + R1 a1 − c1 )
• 一階条件
∂L
= u′ (c0 ) − λ0 = 0
∂c0
∂L
= βu′ (c1 ) − λ1 = 0
∂c1
∂L
= −λ0 + R1 λ1 = 0
∂a1
∂L
= y0 − c 0 − a 1 = 0
∂λ0
∂L
= y 1 + R1 a 1 − c 1 = 0
∂λ1
• ラグランジュ乗数
– λ0 :y0 の限界効用
– λ1 :y1 の t = 0 で測った限界効用
• (c⋆0 , c⋆1 , a⋆1 ) は以下の方程式の解となる
– オイラー方程式
u′ (c⋆0 ) = βu′ (c⋆1 )R1
– 0 期のフローの予算制約
y0 = c⋆0 + a⋆1
– 1 期のフローの予算制約
y1 + R1 a⋆1 = c⋆1
• オイラー方程式から、以下の性質が導かれる
βR1 =
u′ (c⋆0 )
u′ (c⋆1 )
c⋆1 ⋛ c⋆0 ⇐⇒ R1 ⋛
1
β
• 所得の限界効用
– 効用最大化問題の解を ct (y0 , y1 , R1 ) (t = 0, 1) と表す
– 間接効用関数 v(y0 , y1 , R1 )
v(y0 , y1 , R1 ) ≡ u[c0 (y0 , y1 , R1 )] + βu[c1 (y0 , y1 , R1 )]
– 包絡線定理から
∂v
= λ0 ,
∂y0
∂v
= λ1
∂y1
– λt は、t 期における所得の限界効用を表す
• 例:u(c) = ln(c) とする
– 最適な c0 , c1 , a1 は以下の方程式の解となる
βR1
1
= ⋆
c⋆0
c1
y0 = c⋆0 + a⋆1
y1 + R1 a⋆1 = c⋆1
– 最適な貯蓄 a⋆1 と消費量 c⋆0 , c⋆1
1
(βR1 y0 − y1 )
(1 + β)R1
(
)
1
1
y0 +
y1
c⋆0 = y0 − a⋆1 =
1+β
R1
(
)
R1 β
1
⋆
⋆
c 1 = y 1 + R1 a 1 =
y0 +
y1
1+β
R1
a⋆1 =
14.2.3
第 3 のアプローチ
• 生涯予算制約(現在価値予算制約)
– t = 1 のフローの予算制約を変形して、t = 0 のフローの予算制約式に
代入する
1
(c1 − y1 )
a1 =
R1
1
1
c 1 = y0 +
y1
c0 +
R1
R1
• 生涯予算制約(c0 , c1 に対する制約)を使った効用最大化問題
max
c0 ,c1
s.t.
c0 +
u(c0 ) + βu(c1 )
1
1
c 1 = Y 0 ≡ y0 +
y1
R1
R1
消費の割引現在価値 = 所得の割引現在価値
• 生涯予算制約の下で、異時点間の効用最大化問題は、静的な効用最大化問
題と同型になる
max u(x1 , x2 )
x1 ,x2
s.t.
p 1 x 1 + p2 x 2 = I
– ここで、p1 = 1, p2 = R11 , I = Y0
– R11 :t = 1 の消費財 c1 と t = 0 の消費財 c2 の間の相対価格
– Y0 :生涯資産(t = 0 の時点で評価した今期と将来の所得の割引現在
価値の合計)
– c0 + R11 c1 :消費の割引現在価値の合計
• ラグランジアンと一階条件
{
}
1
1
L = u(c0 ) + βu(c1 ) + µ y0 +
y1 − c 0 −
c1
R1
R1
∂L
= u′ (c0 ) − µ = 0
∂c0
∂L
1
= βu′ (c1 ) −
µ=0
∂c1
R1
∂L
1
= Y0 − c 0 −
c1 = 0
∂µ
R1
βu′ (c⋆ )
– オイラー方程式 u′ (c⋆1) = R11 は、限界代替率 = 相対価格 を表して
0
いる
∗ 左辺:c0 の c1 に対する限界代替率
∗ 右辺:c1 の c0 に対する相対価格
• 最適解 (c⋆0 , c⋆1 ):14.26 の図
– 限界代替率 = 相対価格
βu′ (c⋆1 )
1
=
u′ (c⋆0 )
R1
– 生涯予算制約
c⋆0 +
1 ⋆
c = Y0
R1 1
• 各期の所得と貯蓄:14.27 の図
– 各期の所得が A = (y0A , y1A ) の場合
∗ t = 0 で貯蓄をする
a1 = y0A − c⋆0 > 0
∗ t = 1 の消費はその期の所得より大きい
c⋆1 = y1A + R1 a⋆1 > y1A
– 各期の所得が B = (y0B , y1B ) の場合
∗ t = 0 で借金をする
a1 = y0B − c⋆0 < 0
∗ t = 1 の消費はその期の所得より小さい
c⋆1 = y1B + R1 a⋆1 < y1B
• 恒常所得仮説(フリードマン)
– 最適解 (c⋆0 , c⋆1 ) は、次の方程式の解
1
βu′ (c⋆1 )
=
⋆
′
u (c0 )
R1
c⋆0 +
1 ⋆
c = Y0
R1 1
– (c⋆0 , c⋆1 ) は (R1 , Y ) の関数となる
– R1 と Y0 が与えられれば、(y0 , y1 ) の組合わせは関係ない
– 短期(Y0 が一定)
:y0 が上がると、平均消費性向 yc00 は下がる
– 長期(Y0 が aY0 に変化)
:平均消費性向 yc00 は一定
• 所得の上昇の効果:14.29 の図
– c0 と c1 は正常財なので、y0 や y1 の上昇により、c⋆0 と c⋆1 はどちらも
増える
• 利子率の上昇の効果:14.30 の図
– R1 の上昇は所得ベクトル A を中心として、生涯予算制約線を時計回
りに回転させるので、上昇の前に貯蓄していた人は効用が上がり、借
金をしていた人は効用が下がる
• 正常財であること
– 効用最大化の一階条件
u′ (c0 ) − βR1 u′ (c1 ) = 0,
c0 +
1
c1 = Y0
R1
– R1 を固定して、全微分する
{
u′′ (c0 )dc0 − βR1 u′′ (c1 )dc1 = 0
dc0 + R11 dc1 = dY0
( ′′
u (c0 )
⇐⇒
1
−βRu′′ (c1 )
1
R1
)(
dc0
dc1
)
(
=
0
dY0
)
– u′′ < 0 なので、c0 , c1 はともに正常財である
(
dc0
dc1
)
}−1 (
)
{ ′′
u (c0 )
βRu′′ (c1 )
′′
+ βR1 u (c1 )
dY0
=
u′′ (c0 )
R1
• 例:u(c) = ln(c) とする
– ラグランジアン
{
c1
L = ln(c0 ) + β ln(c1 ) + µ Y0 − c0 −
R1
– 一階条件
}
1
βu′ (c⋆1 )
=
=⇒ c1 = βR1 c0
u′ (c⋆0 )
R1
– 生涯予算制約と最適な消費と貯蓄
c⋆0 =
1
Y0
1+β
c⋆1 =
βR1
Y0
1+β
a⋆1 = y0 − c⋆0 =
14.2.4
β
1
y1
1 + β R1
借入制約
• 借入制約
a1 ≥ a
(a ≤ 0)
• 消費者の問題
max
(c0 ,c1 ,a1 )
s.t.
u(c0 ) + βu(c1 )
c 0 + a 1 = y0
c 1 = y 1 + R1 a 1
a1 ≥ a
• 第 3 のアプローチは使えないので、c0 , c1 を消去する(第 1 のアプローチ)
max
a1 ≥a
u(y0 − a1 ) + βu(y1 + R1 a1 )
• 解(â1 で、借入制約がない時の最適貯蓄額を表す)
:14.36 の図
{
â1 (â1 ≥ a)
a⋆1 =
a (â1 ≤ a)
• â1 ≤ a の場合は、借入制約がバインドする:14.38 の図
a⋆1 = a,
c⋆0 = y0 − a,
c⋆1 = y1 + R1 a
u′ (c⋆0 ) > βR1 u′ (c⋆1 )
– 消費者の選択は、(y0 , y1 ) に依存する
– 消費者の選択が、R1 と Y0 のみに依存するという恒常所得仮説は成り
立たない
– 借入制約がバインドしている消費者は、そうでない消費者に比べて限
界消費性向が高い
• 例
– セットアップ
∗ フロー効用関数:u(c)
∗ 所得:(y0 , y1 )
∗ 金利と割引因子:R1 = β = 1
– 借入制約がない場合の効用最大化問題の解(a⋆1 は正にも負にもなり
うる)
1
c⋆0 = c⋆1 = (y0 + y1 )
2
1
⋆
a1 = (y0 − y1 )
2
– 借入制約
a1 ≥ a ≡ 0
– 最適消費・貯蓄
1. y0 > y1 のときは、借入制約はバインドしない
c⋆0 = c⋆1 =
1
(y0 + y1 ),
2
a⋆1 =
1
(y0 − y1 )
2
2. y0 < y1 のときは、借入制約がバインドする
c⋆0 = y0 ,
14.3
c⋆1 = y1 ,
a⋆1 = 0
多期間のケース
• 消費者の効用最大化問題
– 消費者
∗ t = 0, · · · , T の T + 1 期間生きる
∗ ct :t 期における消費量(各期において消費財は二ュメレールと
する)
∗ yt :消費財の量で測った t 期の所得
∗ at+1 :t 期の貯蓄
∗ ā0 :金融資産の初期保有量(0 と仮定する)
∗ Rt :t − 1 期から t 期にかけての粗実質利子率
∗ 各 t = 0, 1, · · · , T 期におけるフローの予算制約
ct + at+1 = Rt at + yt
∗ 最終の T 期には、借金ができない(aT +1 ≥ 0)と仮定すると、消
費者は最終期に貯蓄をする理由がない
aT +1 = 0
– 消費者は以下の問題を解くように、c0 , · · · , cT と a1 , · · · , aT +1 を選ぶ
max
T
∑
β t u(ct )
t=0
ct + at+1 = Rt at + yt ,
s.t.
a0 = ā0 = 0
aT +1 = 0
14.3.1
t = 0, 1, · · · , T
第 1 のアプローチ
• フロー予算制約式を ct について解いて、効用関数に代入する
max
a1 ,··· ,aT
T
∑
β t u(Rt at + yt − at+1 )
t=0
s.t.
a0 = aT +1 = 0
• at の選択を考え、at の一階条件(オイラー方程式)を求める
β t−1 u′ (Rt−1 at−1 + yt−1 − at ) − β t u′ (Rt at + yt − at+1 )Rt = 0
• この条件が全ての a⋆t (t = 1, · · · , T ) について成り立つ
β t−1 u′ (Rt−1 a⋆t−1 + yt−1 − a⋆t ) − β t u′ (Rt a⋆t + yt − a⋆t+1 )Rt = 0
a⋆0 = a⋆T +1 = 0
• オイラー方程式
u′ (c⋆t+1 )
1
=
u′ (c⋆t )
βRt+1
c⋆t+1 ⋛ c⋆t ⇐⇒ Rt+1 ⋛
1
β
βRt+1 = 1
(for all t) =⇒ c⋆0 = c⋆1 = · · · = c⋆T
βRt+1 > 1
(for all t) =⇒ c⋆0 < c⋆1 < · · · < c⋆T
14.3.2
第 2 のアプローチ
• フローの予算制約を用いて、ラグランジアンを作る(λt は t 期のフローの
予算制約に対応するラグランジュ乗数)
L=
T
∑
β t u(ct ) +
t=0
T
∑
λt (Rt at + yt − ct − at+1 )
t=0
• 一階条件
∂L
= β t u′ (c⋆t ) − λ⋆t = 0 (t = 0, 1, · · · , T )
∂ct
∂L
= −λ⋆t + Rt+1 λ⋆t+1 = 0 (t = 0, 1, · · · , T − 1)
∂at+1
∂L
= Rt a⋆t + yt − c⋆t − a⋆t+1 = 0 (t = 0, 1, · · · , T )
∂λt
• 最初の 2 つの式からオイラー方程式を得る
βu′ (c⋆t+1 )
1
=
u′ (c⋆t )
Rt+1
• 間接効用関数を v(y0 , · · · , yT , R0 , · · · , RT , a0 ) と表すと、以下が成り立つの
で、λt は t 期の所得の限界効用を表す
λt =
∂v
∂yt
– β t u′ (c⋆t ) = λ⋆t の解釈
∗ 左辺:c⋆t を増加させることの効用で測った限界便益
∗ 右辺:c⋆t を増加させることの効用で測った限界費用
– λ⋆t−1 = Rt λ⋆t の解釈
∗ 左辺:a⋆t を増加させることの効用で測った限界費用
∗ 右辺:a⋆t を増加させることの効用で測った限界便益
14.3.3
第 3 のアプローチ
• 生涯予算制約の導出(フローの予算制約式を結合する)
1
(ct − yt )
RT
1
aT −1 =
(cT −1 + aT − yT −1 )
RT −1
1
1
=
(cT −1 − yT −1 ) +
(cT − yT )
RT −1
RT −1 RT
aT =
これを、t = T − 2, T − 3, · · · , 0 と続けていくと、
T
∑
q0,t ct = Y0 ≡
t=0
{
s.t.
q0,t ≡
T
∑
q0,t yt
t=0
1
1
1
R1 × · · · × Rt
(t = 0)
(t = 1, 2, · · · , T )
• 解釈
– 生涯予算制約は、静学的予算制約問題と同型
p1 x 1 + · · · + pn x n = I
∗ xi は ci 、pi は q0,t 、I は Y0 に対応する
∗ q0,t は 0 期の消費財と t 期の消費財の相対価格を示している
• 相対価格としての利子率
– s ≤ t ≤ T に対して、qs,t を定義する
{
1
qs,t, ≡
1
1
Rs+1 × · · · × Rt
(t = s)
(t = s + 1, · · · , T )
– qs,t は s 期の消費財と t 期の消費財の相対価格である
– 実質利子率は異時点間の消費財の相対価格を定義する
– 例:t 期と t + 1 期の消費財の相対価格と t 期と t + 2 期の消費財の相
対価格
1
1
1
, qt,t+2 =
qt,t+1 =
Rt+1
Rt+1 Rt+2
• 効用最大化
– 効用最大化問題
T
∑
max
c0 ,··· ,cT
s.t.
T
∑
β t u(ct )
t=0
q0,t ct = Y0
t=0
∗ 第 2 のアプローチとの比較
· 第 2 のアプローチでは、予算制約は T + 1 個のフローの予算
制約からなる
· 第 3 のアプローチでは、予算制約は 1 個の生涯予算制約から
なる
– ラグランジュ乗数を µ としてラグランジアンを作る
{
}
T
T
∑
∑
t
L=
β u(ct ) + µ Y0 −
q0,t ct
t=0
t=0
– 一階条件(最適消費計画 (c⋆t )Tt=0 )は以下の方程式の解)
∂L
= β t u′ (ct ) − µq0,t = 0
∂ct
T
∂L ∑
=
q0,t ct − Y0 = 0
∂µ
t=0
(t = 0, 1, · · · , T )
∗ ct についての一階条件は静学的な問題の一階条件と同型である
∂u
= µpi
∂xi
• 恒常所得仮説
– 2 期間の時と同様に、このモデルで得られる消費行動は恒常所得仮説
と整合的である
– 最適消費計画 (c⋆t )TT =0 は生涯所得の割引現在価値 Y0 に依存している
が、Y0 を所与とすると所得ベクトル (yt )Tt=0 には依存しない
• 例:u(c) = ln c(第 3 のアプローチを用いる)
– ラグランジアン
L=
T
∑
{
β ln(ct ) + µ Y0 −
t
T
∑
}
q0,t ct
t=0
t=0
– t についての一階条件
1
1
β t ⋆ = µq0,t ⇐⇒ q0,t c⋆t = β t
ct
µ
(t = 0, 1, · · · , T )
– 生涯予算制約に代入する
Y0 =
T
∑
q0,t c⋆t =
t=0
T
∑
1
t=0
µ
βt =
– 最適消費計画
c⋆t =
1 1 − β T +1
1
1−β
Y0
⇐⇒
=
µ 1−β
µ
1 − β T +1
1−β
β t Y0
q0,t 1 − β T +1
1
– 最適消費計画 (c⋆t )Tt=0 を実現するには、消費者は適切に資金保有 (a⋆t )Tt=1
を選ぶ必要がある
– Yt を t 期から T 期までの所得の t 期で評価した割引現在価値とする
(
)
T
T
∑
∑
qt,s cs = Yt + Rt at
Yt ≡
qt,s ys
s=t
s=t
– 最適消費計画 (c⋆t )Tt=0 を実現する資産保有計画 (a⋆t )Tt=0
( T
)
1 ∑
⋆
⋆
qt,s cs − Yt
at =
Rt s=t
=
T
∑
qt−1,s c⋆s − qt−1,t Yt
s=t
=
=
14.4
T
∑
1
q0.t−1 s=t
q0,s c⋆s − qt−1,t Yt
T
∑
1−β
β s Y0 − qt−1,t Yt
q0,t−1 s=t 1 − β T +1
1
消費平準化
• 仮定
– u(c) は u′ > 0 と u′′ < 0 を満たす
– 利子率
Rt = β −1
q0,t =
– 生涯予算制約
T
∑
(for all t)
1
1
× ··· ×
= βt
R1
Rt
β t c t = Y0 ≡
t=0
T
∑
β t yt
t=0
– µ:生涯予算制約のラグランジュ乗数
• ct に関する一階条件より、最適消費は時間を通じて一定(c⋆ で表す)
β t u′ (c⋆t ) = µβ t ⇐⇒ u′ (c⋆t ) = µ
c⋆t = c⋆
(for all t = 0, 1, · · · , T )
(for all t = 0, 1, · · · , T )
• c⋆ の値は生涯予算制約で決まる
T
∑
T =0
β t c⋆ = Y0 =⇒ c⋆ =
1−β
Y0
1 − β T +1
14.4.1
所得の一時的変動
• 所得が次のように変動するとする
{
yH
(t = 0, 2, · · · , T − 1)
yt =
yL
(t = 1, 3, · · · , T )
– yH > yL とし、T を奇数とする
• 生涯予算制約
Y0 = yH + βyL + β 2 yH + · · · + β T −1 yH + β T yL
T −1
T −1
= {1 + β 2 + · · · + (β 2 ) 2 }yH + β{1 + β 2 + · · · + (β 2 ) 2 }yL
T −1
=
1 − β 2 +1
(yH + βyL )
1 − β2
=
1−β 2
(yH + βyL )
1 − β2
T +1
• 最適消費計画 c⋆t = c⋆
c⋆ =
1
β
1−β
Y0 =
yH +
yL
T
+1
1−β
1+β
1+β
• 最適資産保有量 (a⋆t )Tt=0
a⋆t =
T
∑
qt−1,s c⋆s − qt−1,t Yt
s=t
=
T
∑
β s+1−t c⋆ − βYt
s=t
1 − β T +1−t 1 − β
Y0 − βYt
1−β
1 − β T +1
{
}
1 − β T +1−t
=β
Y
−
Y
0
t
1 − β T +1
=β
• 偶数期 t = 0, 2, · · · , T − 1 と奇数期 t = 1, 3, · · · , T における所得の割引現
在価値
Yt = yH + βyL + β 2 yH + · · · + β T −1−t yH + β T −t yL
1 − β T +1−t
(yH + βyL )
1 − β2
1 − β T +1−t
=
Y0
1 − β T +1
=
{
}
Yt = yL + β yH + βyL + β 2 yH + · · · + β T −1−(t+1) yH + β T −(t+1) yL
1 − β T −t
(yH + βyL )
1 − β2
1 − β T −t
= yL + β
Y0
1 − β T +1
= yL + β
• 偶数期 t = 0, 2, · · · , T − 1 と奇数期 t = 1, 3, · · · , T における最適資産保有量
{
}
1 − β T +1−t
1 − β T +1−t
a⋆t = β
Y
−
Y
0
0
1 − β T +1
1 − β T +1
=0
{
1 − β T +1−t
1 − β T −t
Y 0 − yL − β
Y0
T
+1
1−β
1 − β T +1
{
}
1−β
=β
Y
−
y
0
L
1 − β T +1
β
(yH − yL )
=
1+β
>0
}
a⋆t = β
• 考察:14.71 の図
β
1
– 消費は恒常所得 1+β
yH + 1+β
yL によって決まる
– 偶数期には、yt が一時的に高いので、消費者は所得の一部を所得に回す
– 奇数期には、yt が一時的に低いので、貯蓄を取り崩して、所得よりも
多く消費する
– 恒常所得仮説は、消費の謎(短期的には APC は所得に関して減少す
るが、長期的には一定)を説明する
14.4.2
ライフサイクル消費
• 仮定
– すべての t について、
Rt = β −1
y0 < y1 < · · · < ym > ym+1 > · · · > yT
• Rt = β −1 より、最適消費量は時間を通じて一定
c⋆t = c⋆
• 最適な消費計画を実現するために、消費者は若い頃借入をし、その後所得
の増加とともに貯蓄を増やし、年をとって所得が下がってから貯蓄を取り
崩す:14.74 の図
• ライフサイクル仮説も消費の謎の説明に使える
14.5
借入制約
• 借入制約
– フロー予算制約
(t = 0, 1, · · · , T, a0 = 0)
ct = at+1 = Rt at + yt
– 借入制約
at ≥ 0
(t = 1, 2, · · · , T + 1)
– 効用最大化問題
max
T
∑
β t u(ct )
t=0
s.t.
ct + at+1 = Rt at + yt
(t = 0, 1, · · · , T )
at ≥ 0
(t = 1, 2, · · · , T )
a0 = 0
• 効用最大化条件
– at の一階条件
−β t u′ (Rt at + yt − at ) + β t+1 Rt+1 u′ (Rt+1 at+1 + yt+1 − at+2 )
−β t u′ (ct ) + β t+1 Rt+1 u′ (ct+1 )
– 各 t について、次のいずれかの条件が成り立つ:14.77 の図
1. 借入制約を見たし、通常のオイラー方程式が満たされる
−β t u′ (ct ) + β t+1 Rt+1 u′ (ct+1 ) = 0
u′ (ct ) = βRt+1 u′ (ct+1 )
at+1 ≥ 0
2. 借入制約がバインドし、オイラー方程式は不等式で満たされる
−β t u′ (ct ) + β t+1 Rt+1 u′ (ct+1 ) < 0
u′ (ct ) > βRt+1 u′ (ct+1 )
at+1 = 0
3. 最終期には、資産を残さない
at+1 = 0
– 初期条件(at = 0)、フロー予算制約、上記の条件をみたす {ct , at } が
借入制約の下での効用最大化問題の解となる
– ラグランジアン
L=
T
∑
β t u(ct ) +
t=0
T
∑
λt (Rt at + yt − ct − at+1 ) +
t=0
T
∑
µt at+1
t=0
– 一階(クーンタッカー)条件(t = 0, 1, · · · , T − 1 について)
∂L
= β t u′ (ct ) − λt = 0 (t = 0, 1, · · · , T )
∂ct
∂L
= −λt + Rt+1 λt+1 + µt = 0 (t = 0, 1, · · · , T − 1)
∂at+1
∂h
µt
= µt at+1 = 0
∂µt
−λT + µT = 0
µt ≥ 0, at+1 ≥ 0 (t = 0, 1, · · · , T )
14.5.1
三期間モデルの例
• 仮定
T = 2,
β = 1,
t = 0, 1, · · · , T
Rt = 1,
• 生涯予算制約
c 0 + c 1 + c2 = Y0
• 借入制約がない場合は、消費は一定となる
Y0
y 0 + y 1 + y2
=
3
3
a3 = 0
y0 + y1 − 2y2
a 2 = c 2 − y2 =
3
2y0 − y1 − y2
a 1 = y0 − c 0 =
3
at =
• 解法
1. まず、借入制約がない問題を解き、最適解が借入制約を満たすか確認
する
2. 満たさない場合、「予想と確認」で最適解を求める
• 例 1:y0 ≥ y1 ≥ y2
– 借入制約なしで問題を解く
ct =
a1 =
2y0 − y1 − y2
≥ 0,
3
y 0 + y 1 + y2
3
a2 =
y0 + y1 − 2y2
≥ 0,
3
a3 = 0
– at ≥ 0 が全ての t について、満たされるので、借入制約はバインドせ
ず、借入制約の下でも、これが効用最大化問題の解となる
• 例 2:y0 < y1 < y2
– 借入制約なしで問題を解くと、借入制約をみたさない
ct =
a1 =
2y0 − y1 − y2
< 0,
3
y 0 + y 1 + y2
3
a2 =
y0 + y1 − 2y2
< 0,
3
a3 = 0
– 予想
c t = yt ,
a 1 = a2 = a3 = 0
– 確認:この消費・資産の組み合わせは、効用最大化の条件を満たす
u′ (ct ) > u′ (ct+1 ) (t = 1, 2)
at+1 = 0
(t = 0, 1, 2)
• 例 3:y0 = y2 < y1
– 借入制約なしで問題を解くと、借入制約をみたさない
ct =
a1 =
2y0 − y1 − y2
< 0,
3
y0 + y 1 + y2
3
a2 =
y0 + y1 − 2y2
> 0,
3
a3 = 0
– 予想
c 0 = y0 ,
c 1 = c2 =
y1 + y2
,
2
a1 = 0,
a2 =
y1 − y2
> 0,
2
a3 = 0
– 確認:この消費・資産の組み合わせは、効用最大化の条件を満たす
u′ (c0 ) > u′ (c1 ), a1 = 0
′
(t = 0)
′
u (c1 ) = u (c2 ), a2 > 0 (t = 1)
a3 = 0
(t = 2)
• 例 4:y1 < y0 = y2
– 借入制約なしで問題を解くと、借入制約をみたさない
ct =
a1 =
2y0 − y1 − y2
> 0,
3
y 0 + y 1 + y2
3
a2 =
y0 + y1 − 2y2
< 0,
3
a3 = 0
– 予想
c0 = c1 =
y 0 + y1
,
2
c 2 = y2
a1 =
y0 − y1
> 0,
2
a 2 = a3 = 0
– 確認:この消費・資産の組み合わせは、効用最大化の条件を満たす
u′ (c0 ) = u′ (c1 ), a1 > 0 (t = 0)
14.6
(省略)
u′ (c1 ) > u′ (c2 ), a2 = 0
(t = 1)
a3 = 0
(t = 2)
景気循環を取り除くことの経済厚生上の効果
15
競争均衡
15.1
純粋交換経済
• モデル
– 個人:i = 1, 2, · · · , I
– 期間:t = 0, 1, · · · , T
– 1 種類の消費財(二ュメレール)が各期に取引されていて、各期の消
費財はその期にしか消費できない
– yti :t 期の個人 i の所得(消費財の endowments)
– yt :t 期における経済全体に存在する財の量
yt ≡
I
∑
yti
i=1
– 個人 i の効用関数
T
∑
β t ui (cit )
t=0
i
∗ フローの効用関数 u (c) は個人間で異なる可能性を考慮している
が、割引因子 β は共通と仮定している
∗ 全ての c > 0 について、以下を仮定
uic (c) ≡
dui
> 0,
dc
uicc (c) ≡
d2 ui
<0
dc2
– 個人 i のフローの予算制約
cit + qt,t+1 ait+1 = ait + yti
(t = 0, 1, · · · , T )
ai0 = 0
∗ 金融資産として、割引債を使っている
· 割引債:来期に 1 単位の財を支払う契約
· qt,t+1 :t 期に取引されている割引債の価格(収益率 1q )
∗ 前回の講義でのフローの予算制約との比較
(t = 0, 1, · · · , T )
cit + bit+1 = Rt bit + yti
· この二つの定式は同値(以下のように変換)
Rt+1 =
1
qt,t+1
,
ait = Rt bit
∗ 個人は最終期には負債を残すことはできないと仮定すると、個人
は最終期の貯蓄額を 0 にする
aiT +1 ≥ 0 =⇒ aiT +1 = 0
– 生涯予算制約
T
∑
{
q0,t =
(q0,t · cit ) = Y0i ≡
t=0
T
∑
(q0,t · yti )
t=0
1
q0,1 × q1,2 × · · · × qt−1,t
(t = 0)
(t = 1, 2, · · · , T )
(q0,t+1 = q0,t · qt,t+1 )
• 効用最大化問題
– ラグランジアン
L=
T
∑
{
t i
β u (cit ) + µi
Y0i −
t=0
T
∑
}
(q0,t · cit )
t=0
– 一階条件
∂L
= β t uic (cit ) − µi q0,t = 0
∂cit
β t+1 uic (cit+1 )
q0,t+1
1
=
= qt,t+1 =
i
t
i
q0,t
Rt+1
β uc (ct )
T
∑
∂L
i
(q0,t · cit ) = 0
=
Y
−
0
∂µit
t=0
• 定義:競争均衡(全ての経済主体はプライステイカー)
– 各個人 i の初期資産保有量 ai0 = 0 を所与として、競争均衡は以下の条
−1
i
)Tt=0 (i = 1, 2, · · · , I) と価格 (q̂t,t+1 )Tt=0
で与
件を満たす配分 (ĉit , ât+1
えられる
−1
1. 各 i = 1, 2, · · · , I について、価格 (q̂t,t+1 )Tt=0
を所与として、配分
i i
T
(ĉt , ât+1 )t=0 は各個人 i の効用最大化問題の解となっている
2. 全ての市場(財市場と金融市場)で需給が一致する
I
∑
ĉit = yt
(t = 0, 1, · · · , T ),
i=1
I
∑
âit+1 = 0
(t = 0, 1, · · · , T )
i=1
• 補足
– このモデルの競争均衡は、ミクロの静学的モデルの競争均衡と同じ性
質を持っている
– 例:ワルラスの法則が成り立つ
∗ 全ての個人のフローの予算制約と資産市場の需給一致条件が成り
立てば、各期 t において以下が成り立ち、財市場の需給一致が導
かれる
I
∑
i=1
cit =
I
∑
(yti + ait − qt,t+1 · ait+1 ) =
i=1
I
∑
yti = yt
i=1
– 例:厚生経済学の基本定理が成り立つ
1. 全ての競争均衡における配分はパレート最適である(MRS が全て
の人で一致する)
β t uic (ĉit ) = µ̂i q̂0,t
(t = 0, 1, · · · , T )
β t+1 ujc (cjt+1 )
β t+1 uic (cit+1 )
=⇒
=
β t uic (cit )
β t ujc (cjt )
2. 全てのパレート最適な配分は、endowments を再配分することで、
競争均衡として達成できる
• 限界効用の比率
−1
– 競争均衡が、(q̂t,t+1 )Tt=0
, (ĉit , âit+1 )Tt=0 (i = 1, 2, · · · , I) で与えられると
する
∗ µ̂i :各個人 i の効用最大化問題における生涯予算制約のラグラン
ジュ乗数
– 競争均衡において、個人間の限界効用の比は時間を通じて一定になる
∗ 各 i について、(ĉit )Tt=0 は一階条件をみたすので、任意の i, j につ
いて、以下の関係が成り立つ
(t = 0, 1, · · · , T )
β t uic (ĉit ) = µ̂i q̂0,t
uic (ĉit )
ujc (ĉjt )
=
µ̂i
µ̂j
(t = 0, 1, · · · , T )
• 例 1:Constant Aggregate Output(総供給一定)
– 経済全体の endowments が時間を通じて一定と仮定する
yt ≡
I
∑
yti = y
i=1
∗ 個々人の所得 yti は変動して良い
– 全ての個人 i の消費が一定である
ĉit = ĉi
(t = 0, 1, · · · , T )
∗ (証明)個人 i = 1 と個人 j = 2, 3, · · · , I の限界効用は
ujc (ĉjt ) = u1c (ĉ1t )
µ̂j
µ̂1
(t = 0, 1, · · · , T )
となるので、個人 j = 1, 2, · · · , I の均衡消費量は
[
]
j
j
j −1
1 1 µ̂
ĉt = (uc )
uc (ĉt ) 1
µ̂
であり、これを各期 t の財市場の需給一致条件に代入すると、
I
∑
cjt = yt
j=1
(
)
µ̂j
(ujc )−1 u1c (ĉ1t ) 1 = yt = y
µ̂
j=1
I
∑
となり、この式を解けば、ĉ1t は時間を通じて一定であり、全ての
個人 i の消費が一定であることがわかる
– ci0 に関する一階条件から、均衡価格 q̂0,t を求める
uic (ĉi0 ) = q̂0,0 µ̂i = µ̂i
1 t i i
ui (ĉi )
β uc (ĉt ) = β t ic it = β t
i
µ̂
uc (ĉ0 )
q̂0,t =
– 個人 i の生涯予算制約を用いて、ĉi を求める
T
∑
q̂0,t yti =
T
∑
t=0
q̂0,t ĉit
t=0
=
T
∑
β t ĉi
(∵ q̂0,t = β t , ∀t
ĉit = ĉi )
t=0
これより、
ĉi =
T
1−β ∑ t i
β yt
1 − β T +1 t=0
– 資産保有量 âit を求める
ât =
T
∑
s=t
=
T (
∑
s=t
=
(q̂t,s · ĉs ) −
T
∑
s=t
T
∑
(q̂t,s · ysi )
s=t
q̂(0, s)
· ĉs
q̂(0, t)
(β s−t · ĉs ) −
)
−
T
∑
(q̂t,s · ysi )
s=t
T
∑
s=t
(q̂t,s · ysi )
これより、
âit =
=
T
1 − β T −t+1 i ∑ s−t i
β ys
ĉ −
1−β
t=s
T
T
1 − β T −t+1 ∑ s i ∑ s−t i
β
y
−
β ys
s
1 − β T +1 s=0
s=t
– まとめ(財の総量 yt が一定の場合の競争均衡)
∀t,
q̂t,t+1 =
q̂0,t+1
=β
q̂0,t
T
1−β ∑ t i
β yt
1 − β T +1 t=0
∀t, ∀i,
ĉit =
∀t, ∀i,
T
T
1 − β T −t+1 ∑ s i ∑ s−t i
i
β ys −
β ys
ât =
1 − β T +1 s=0
s=t
• 例 2:Isoelastic Utility(弾力性一定の効用関数)
– 財の総量 yt が変動すると仮定する
– 全ての個人が次式のような同一のフロー効用関数を持つと仮定する
{
1
c1−γ (γ > 0, γ ̸= 1)
u(c) = 1−γ
ln(c)
(γ = 1)
∗ ロピタルの法則より、各 c > 0 において、
c1−γ − 1
= ln(c)
γ→1 1 − γ
lim
∗ 限界効用の弾力性
−
u′′ (c)c
= −γ
u′ (c)
– 各個人 i は財の総供給量 yt の一定の割合 αi を消費する
∗ 個人 i = j と個人 i = 1 の効用最大化の一階条件から、比率は時
間に依存しない
( )−γ
( j )− γ1
µ̂j
µ̂
ujc (ĉjt )
µ̂j
ĉjt
j
=⇒
=
⇐⇒
ĉ
=
=
ĉ1t
t
u1c (ĉ1t )
µ̂1
ĉ1t
µ̂1
µ̂1
∗ t 期の財市場の需給一致条件から
I
I ( j )− γ
∑
∑
µ̂
cjt =
ĉ1t = yt ⇐⇒ ĉ1t = α1 yt
1
µ̂
j=1
j=1
1
· α1 は以下のように定義される定数
−1
1
I ( j )− γ1
∑
(µ̂1 )− γ
µ̂
α1 ≡
=
∑I
1
µ̂1
(µ̂j )− γ
j=1
j=1
∗ 他の i についての同様にして、
ĉit = αi yt
· αi は以下のように定義される
(µ̂i )− γ
α i ≡ ∑I
1
j −γ
j=1 (µ̂ )
1
– 個人 i の効用最大化問題の一階条件より、均衡価格 q̂0,t を求まる
q̂0,t =
−γ
β t uc (ĉit )
t yt
=
β
uc (ĉi0 )
y0−γ
– 均衡価格を使って個人 i の生涯予算を評価すると、均衡における αi が
求まる
∑T
T
T
T
∑
∑
∑
q̂0,t yti
q0,t cit =
q̂0,t αi yt =
q̂0,t yti ⇐⇒ αi = ∑t=0
T
t=0
t=0
t=0
t=0 q̂0,t yt
– まとめ(isoelastic utility の場合の競争均衡)
∀t,
y −γ
q̂t,t+1 = β t+1
yt−γ
∀t, ∀i,
ĉit = αi yt
∀t, ∀i,
âit =
T
∑
s=t
q̂t,s αi ys −
T
∑
q̂t,s ysi
s=t
∗ ここで、αi , q̂t,s は以下を満たす
∑T
q̂0,t yti
i
α = ∑t=0
T
t=0 q̂0,t yt
y −γ
q̂t,s = β s−t s−γ (t ≤ s)
yt
15.2
生産経済*
15.3
投資と貯蓄*
15.4
技術進歩と女性の労働供給*
16
財政政策
16.1
イントロダクション*
16.2
リカードの等価性
• 政府が支出をファイナンスする二つの方法
– T + 1 期間モデル:t = 0, 1, · · · , T
– 次の効用関数を持つ代表的個人を考える
T
∑
β t u(ct , nt )
t=0
– フローの予算制約
ct + qt,t+1 at+1 = πt + wt nt + at − τt
(t = 0, 1, · · · , T )
∗ τt :t 期の一括税
1
∗ qt,t+1 = Rt+1
∗ πt :企業の利潤
– 企業については、収穫一定の生産関数を仮定するので、均衡において
は、以下が成り立つ
πt = 0
– 代表的個人の初期資産
a 0 = B0
– aT +1 ≥ 0 と仮定すると、以下が成り立つ
aT +1 = 0
– 生涯予算制約
T
∑
t=0
{
q0,t =
q0,t ct = a0 +
T
∑
q0,t (wt nt − τt )
t=0
1
q0,1 · q0,2 · · · qt−1,t
(t = 0)
(t = 1, 2, · · · , T )
– 効用最大化問題
∗ 効用最大化問題のラグランジアン
{
}
T
T
∑
∑
L=
β t u(ct , nt ) + λ a0 +
q0,t (wt nt − τt − ct )
t=0
t=0
∗ 一階条件
∂L
= β t uc (ct , nt ) − λq0,t = 0
∂ct
∂L
= β t un (ct , nt ) + λq0,t wt = 0
∂nt
T
∑
∂L
= a0 +
q0,t (wt nt − τt − ct ) = 0
∂λ
t=0
– 代表的企業の生産関数
Yt = Nt
∗ Yt :生産量、Nt :労働投入量
– 利潤最大化問題
πt = max Nt − wt Nt
Nt
∗ 一階条件
wt = 1
· wt > 1 なら、Nt = 0 で、wt < 1 なら、Nt = ∞
∗ 均衡での利潤
π̂t = 0
– Gt :t 期に政府が購入しなければならない財の量
– 政府は、初期負債 B0 と支出の時系列 (Gt )Tt=0 を所与とし、一括税
(τt )Tt=0 と負債 (Bt+1 )Tt=0 を選ぶ
– 一括税 (τt )Tt=0 と負債 (Bt+1 )Tt=0 は政府のフローの予算制約を満たさな
ければならない
Gt + Bt = τt + qt,t+1 Bt+1
∗ Bt:t − 1 期に発行した国債、Bt+1:t 期に発行する国債、qt,t+1:
国債の価格
– 最終期には、政府負債の購入者もいなくなるので、以下を満たす
BT +1 = 0
• 財政政策
– 政府支出 (Gt )Tt=0 と初期負債 B0 を所与として、財政政策 (τt , Bt+1 )Tt=0
が、全ての期間の政府のフロー予算制約を満たし、最終期の負債が
BT +1 = 0 を満たすとき、それは実行可能であるという
– 政府の生涯予算制約
T
∑
t=0
q0,t Gt + B0 =
T
∑
t=0
qo,t τt
– ある税金の時系列 (τ̂t )Tt=0 が政府の生涯予算制約をみたすなら、財政政
策 (τ̂t , B̂t+1 )Tt=0 が上の意味で実現可能となる負債の時系列 (B̂t+1 )Tt=0
が存在する
∗ (証明)B0 を所与として、(τ̂t )Tt=0 が政府の生涯予算制約を満たす
として、各 t = 1, 2, · · · , T について、B̂t を以下のように定義する
B̂t ≡
T
∑
qt,s (τ̂s − Gs )
s=t
ここで、以下が成り立つ
qt,s =
q0,s
q0,t
(s = t, t + 1, · · · , T )
B̂T +1 = 0
よって、(τ̂t , B̂t+1 )Tt=0 は政府のフロー予算制約を満たし、B̂T +1 = 0
もみたすので、実行可能な財政政策である(従って、政府の生涯
予算制約を考えれば十分である)
• 定義(競争均衡):政府支出 (Gt )Tt=0 と初期負債 B0 を所与とし、代表的
個人の初期資産を a0 = B0 とすると、競争均衡は以下の条件を満たす配分
−1
(ĉt , n̂t , ât+1 , N̂t , Ŷt )Tt=0 、財政政策 (τ̂t , B̂t+1 )Tt=0 、価格 {(ŵt )Tt=0 , (q̂t,t+1 )Tt=0
}
の組み合わせで与えられる
−1
1. 価格 {(ŵt )Tt=0 , (q̂t,t+1 )Tt=0
} と税率 (τ̂t )Tt=0 を所与として、(ĉt , n̂t , ât+1 )Tt=0
は、代表的個人の効用最大化問題を解く
2. 価格 (ŵt )Tt=0 を所与として、(N̂t , Ŷt )Tt=0 は、代表的企業の利潤最大化
問題を解く
3. 財政政策 (τ̂t , B̂t+1 )Tt=0 は実現可能
4. 全ての市場で需給が一致する
∀t, Ŷt = ĉt + Gt ,
∀t, Ŷt = N̂t = n̂t
∀t, B̂t+1 = ât+1
• 競争均衡
– 企業の利潤最大化問題の一階条件から、以下が成り立つ
ŵt = 1
(t = 0, 1, · · · , T )
– 効用最大化と財市場の均衡条件から、以下が成り立つ
{
β t uc (ĉt , n̂t )
= λq0,t
−un (ĉt , n̂t )
=⇒
= ŵt = 1
t
uc (ĉt , n̂t )
−β un (ĉt , n̂t ) = λq0,t wt
{
Yt
Yt
= c t + Gt
=⇒ n̂t = ĉt + Gt
= nt
– 消費者の効用最大化問題から、以下が成り立つ
{
β t+1 uc (ĉt+1 , n̂t+1 ) = λq̂0,t+1
βuc (ĉt+1 , n̂t+1 )
q̂0,t+1
=
=⇒ q̂t,t+1 =
q̂0,t
uc (ĉt , n̂t )
β t uc (ĉt , n̂t )
= λq̂0,t
• リカードの等価性
– 競争均衡の消費、生産、労働供給、価格 (ĉt , n̂t , N̂t , Ŷt , ŵt , q̂t,t+1 )Tt=0 は
財政政策 (B̂t+1 , τ̂t )Tt=0 に影響を受けないことがわかるので、他の実行
可能な財政政策 (B̌t+1 , τ̌t )Tt=0 に変えたとしても、競争均衡の消費や生
産は変わらない
∗ 消費者の行動で影響を受けるのは、(at+1 )Tt=0 のみで、均衡におい
ては、at+1 = Bt+1 (t = 0, · · · , T )
– このモデルでは、政府支出を「今期の税収で賄う」方法と「課税を先
送りして借金で補う」方法の間には実質的な違いはない(リカードの
等価性)
∗ 企業の問題は、財政政策と無関係に表される
max Yt − wt Nt
Nt
s.t. Yt = Nt
∗ 代表的個人の生涯予算制約は、財政政策と無関係に定式化できる
T
∑
q0,t ct = a0 +
t=0
T
∑
q0,t (wt nt − τt )
t=0
= a0 +
T
∑
q0,t wt nt −
t=0
= a0 +
T
∑
T
∑
q0,t τt
t=0
(
q0,t wt nt −
B0 +
t=0
=
T
∑
T
∑
)
q0,t Gt
t=0
q0,t (wt nt − Gt ) + (a0 − B0 )
t=0
=
T
∑
q0,t (wt nt − Gt )
t=0
• リカードの等価性のための仮定
– 個人の合理性・税金が一括税の形・代表的個人の仮定(世代重複モデ
ル・借入制約モデルなどでは、一般的にリカードの等価性は成り立た
ない)
16.3
ラッファーカーブ*
16.4
Prescott (2023):労働供給の国際比較*
16.5
日本の財政問題*
17
世代重複モデル*
0
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