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量子可积系统入门:理论物理学

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ISSN0386‑8257
臨時別冊・数理科学
I S G Cラ イ ブ 部
2 8
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ses
For S 母nior & G r a d u a t e C o u 「
量子可積分系入門
Lectures on Q u a n t u m Integrable Systems
白石潤ー著
サイエンス社
別冊・数理科学
現代数理物理の展開
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本体 1895 円
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序論
物理から見た数学
II.
和達三樹
弦理論と幾何学
非可換幾何学と弦理論
加藤光裕
ゲージ理論・超弦想論とコホモロジー
菅野浩明
超弦理論と数学の発展
綿村
哲
細野
忍
手
口
弘
時空の新しい描像
弦理論とミラー対称 1::ニの幾何学
III.
IV.
v.
可積分系
1 次元 l/r2 模型
樋上
Seiberg Witten 理論と可積分系
量子 Calogero 模型
高|崎金久
1主
量子可積分系
高|崎金久
共形場理論
数理物理におけるモジュラ一関数入門
梁
成吉
M 理論と無限次元対称性
松尾
泰
臨界現象と共形場理論
!||上則雄
経路積分による量子化と共形場理論
江口
{
散
場の量子論とゲージ理論
ゲージ場の量子論
卜フーフ卜の寄与, B R S 不変性,閉じ込め
代数的場の量子論の新しい展開
VI.
三郎
セクタ一理論と b r a i d 統計
近藤慶一
i可 東 泰 之
構成的場の理論の軌跡と展望
伊東恵一
くりこみ群
渡辺
I口
量子群と量子力学
量子群と 1 次元量子スピン系
加藤晃史
磁場中の電子系と量子群
初貝安弘
量子化の数理
荒木不二洋
作用素環と量子 Galois 群
河東泰之
ユニタリ非同値問題と代数的場の量子論の誕生
荒木不二洋
量子力学の数学的構造
量子的代数の表現と物理
新井朝雄
VII. 統計物理学とその周辺
Asymptotic Bethe Ansatz と分数排他統計
川上則雄
ランダム行列とその周辺
白井朋之
自然現象と大偏差統計
藤坂博一
統計的に独立なゆらぎから強相関ゆらぎへ
ソフトマテリアルの数理
)||勝年洋
1 次元界面成長模型の数理
笹本智弘
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サイ工ンスネ土
数理科学特集一覧
63 年
/ 7 〜9 7 年
/ 12 省 略
1998 年
/ 1 ニューロサイエンス最前線
/2 場の量子論
/3 数値解析:新手法の開発と進展
/4 自然がうみだす多様な散逸構造
別冊一素粒子
/5 現代物理学への道のり
/6 特異点
/7 代数幾何の様々な顔
/8 重力の魅力
/9 モデルとモデリング
/10 量子コンピュータ
別冊現代の数理物理
/11 数式処理とその周辺
/12 類体論の 100 年
1999 年
/ 1 多彩な光
/2 素粒子物理の新展開
/3 跡公式
/4 現代物理学の展望と未来
別冊場の理論
/5 今日の応用数理
/6 ゲノム解析
/7 計算幾何の拡がり
/8 ハミルトン力学系の展開
/9 超離散
/10 複雑系科学の形成
別冊重力理論
/11 無限と連続
/12 知識情報処理の統計力学的
アプローチ
2000 年
/ 1 保型関数
/2 双対性(デユアリティ)
/3 生命現象の基本原理
/4 量子論と相対論
別冊量子カオスの物理と数理
/5 力〈ちから〉
/6 最新脳のモデルと数理
/7 分子コンピューティング
/8 非線形科学と微分方程式
/9 暗号の数理
/10 脳と心の量子論
別冊数論の歩み
/11 数理物理における
代数解析的方法
/12 20 世紀科学革命の基礎
2001 年
/ 1 時間とは何か
/2 微分幾何の新世紀
/3 物質とは何か
/4 場の量子論の新たな方向
別冊量子力学の発展
/5 電磁気学と現代物理学
/6 量子情報と量子コンピュータ
/7 スピンはさらにめぐる
/8 ゲノムサイエンスの新地平
/9 点,粒子,場
/10 ヒッグスの謎
別冊生命情報科学の拡がり
/11 空間概念と物理学
/12 数学による物理の表現
2002 年
/ 1 〈システム〉という見方
/2 ナノスケールの物理世界へ
/3 物理定数のプロフィール
/4 M 理論とは何か
別冊現代物理と現代幾何
/5 物理学とポテンシャル
/6 D N A :紐の物理
/7 波動関数のミステリー
/8 熱力学の多彩な展開
/9 真空:その真実と物理{象に迫る
/10 エコノフィジックス最前線
別冊脳情報数理科学の発展
/11 エキゾチックな量子の世界
/12 数理工学の地平
初03 年
/ 1 保存則とは何か
/2 素粒子的宇宙論の新展開
/3 量子力学とカオス
/4 <波〉の魅力と数理
別冊量子情報科学とその展開
/5 <質量〉とは何か
/6 トポロジーの新世紀
/7 昆の世界
/8 虚数のプロフィル
/9 差分学の世紀
/10 アインシュタインの
物理学的世界観
別冊現代数理物理の展開
/11 量子情報科学の新時代
/12 エネルギーとは何か
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学習院大学成文堂
S G C ライブラリー 2 8
量子可積分系入門
Lectures on Q u a n t u m Integrable Systems
白石潤一著
サイ工ンスネ土
S G C ライブラリ
(The Library for Senior & Graduate Courses)
近年,特に大学理工系の大学院の充実はめざましいものがあります.しかしながら
学部上級課程並びに大学院課程の学術的テキスト・参考書はきわめて少ないのが現
状であります.本ライブラリはこれらの状況を踏まえ,広く研究者をも対象とし,
数理科学諸分野および諸分野の相互に関連する領域から,現代的テーマやトピック
スを順次とりあげ,時代の要請に応える魅力的なライブラリを構築してゆこうとす
るものです.
装丁の色調は,
数学・応用数理・統計系(黄緑),物理学系(黄色),情報科学系(桃色),
脳科学・生命科学系(樺色),数理工学系(紫),経済学等社会科学系(水色)
と大別し, i斬次各分野の今日的主要テーマの網羅・集成をはかつてまいります.
1
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15
カオスと量子物理学
中村勝弘著
本体 1857 円
量子力学とは何か
高林武彦著
本体 1857 円
シュレーディンガ一方程式
仲滋文著
本体 1790 円
量子コンビュータの基礎
細谷暁夫著
本体 1857 円
有限体と符号理論
内田輿二著
本体 1667 円
デリパティブの数理
三浦良造著
本体 1333 円
複雑系経済学とその周辺
西村和雄編著
本体 1762 円
差分方程式講義
広田良吾著
本体 1857 円
生命をつくる
中野馨著
本体 1524 円
計算物理入門
上田額著
本体 1381 円
工コノミックゲームセオリー
船木由喜彦著
本体 1429 円
演習場の量子論
柏太郎著
本体 1886 円
複雑系脳理論
津田一郎著
本体 1429 円
探索のアルゴリズムと技法
伊庭斉志、著
本体 1695 円
はじめての逆問題
チャールズ w. グロエッチュ著
大西和条・田沼一実・山本昌宏訳
本体 1886 円
表紙デザイン:長谷部貴志
1 6 有限要素法による構造解析事例集
白鳥正樹・三好俊郎編著
本体 1429 円
1 7 基礎からの力学系
小室元政著
本体 1886 円
1 8 独立成分分析
甘利俊一・村田昇共編著
本体 1667 円
1 9 時系列解析入門
宮野尚哉著
本体 1429 円
2 0 物理数学ノート
佐藤光著
本体 1819 円
21 数学の未解決問題
上野健爾・高橋陽一郎・中島啓共編
本体 1886 円
2 2 量子論の基礎
清水明著
本体 1819 円
2 3 微分幾何講義
二木昭人著
本体 1857 円
2 4 脳の謎に挑む
茂木健一郎編著
本体 1829 円
2 5 量子場脳理論入門
高橋康監修保江邦夫著
本体 1876 円
2 6 脳型コンビュータの実現に向けて
甘利俊一編著
本体 1857 円
2 7 ガ口ア理論
中野伸著
本体 1790 円
2 8 量子可積分系入門
白石潤ー著
本体 1876 円
サイエンス社のホームページのご案内
http://www.saiensu.co.j
ご意見.ご「要望は sk@saiensu.co.jp ま
で
.
まえがき
本書は量子力学の可積分系についての入門書です.量子可積分模型について学び,それを扱う基
礎的な技術に親しんでもらおうと考えています.私は子供のころ,近所の山に行き秘密基地をつくっ
て良く遊んだものです.色々な木の実を集めたり,川遊び、をしたり,見張り台に登ったり,茂みの
中のトンネルをくぐり抜けたりして日暮れ近くまで遊び,お腹を空かせて,夕焼けを眺めながら友
達と家路を急ぐ毎日でした.今の私にとって,量子可積分模型は不思議に満ちあふれた秘密基地で
す.あの頃とは時間と場所が違うだけで,風景はなにも変わっていません.
まず,第 l 章では,皆さんにいろいろな色や形をした木の実を集めてもらいます.ニュートンの
運動方程式から出発して古典力学の枠組みや解析力学を復習した後,古典可積分系の重要なクラス
である古典カロジェロ・モーザ一系について色々な角度からアプローチしてみます.カロジェロ・
モーザ一系の運動方程式の積分を実行することが,ある場合には巧妙な変数変換によって,もしく
は,エルミート行列の固有値問題を解くことによって達成されることを調べてみましょう.運動方
程式が解きうることの理由を追求すれば,そこにはおのずと古典力学の可積分性という概念が見え
てきます.ラックス形式といっ巧妙な方法を用いてカロジェロ・モーザ一系が可積分性を持つこと
を証明してみます.
第 2 章では, f号、たちの泳ぐ川で遊びましょう.量子力学の初歩を復習し,電子の波動方程式に親
しみます.そして,量子可積分模型の最も基本的な例であるカロジェロ・サザ、ランド模型を調べま
す.これらの模型の励起状態の記述には,なぜ、か魚の群れを描いたような面白い図形がとても役に
たちます.各図形にはシューア対称多項式やジャック対称多項式と呼ばれる対称多項式が行儀よく
対応させられますが,このような対称多項式によって全てのエネルギー固有関数を厳密に扱うこと
ができるのです.相互作用を持つ量子多体系が対称、多項式の理論だけで完全に解かれてしまうとい
うことは,まさに驚くべきことです.このような奇跡的に良く解ける量子力学の模型を調べるため
に,ジャック対称、多項式の理論を学び\量子可積分性の意味,相関関数の計算法等について考えま
しょう.
第 3 章においては,第 1 章と第 2 章では断片的に扱われた可換な保存量とその固有関数系ーすな
わち量子可積分系の基礎ーについて総まとめを行ないます.ここでは,マクドナルド対称多項式の
理論を用いて,カロジェロ・サザランド模型の可換な保存量とその固有関数系について,一段高い
立場から捉えてみましょう.ただし,木登りには危険が付き物ですから,滑り落ちないように注意
深く登ってください.見張り台からの素晴らしい眺めが我々を待っています.
最後の章では,カロジェロ・サザランド模型とピラソロ代数と呼ばれる無限次元リ一代数との関
連,最近の話題,及ぴ,未解決の問題等について触れてみます.我々は,カロジ、エロ・サザランド模
型から出発して,量子可積分系の不思議な関連を追いかけます.カロジェロ・サザランド模型が一
本当の理由はよく解りませんが
無限自由度の量子可積分系に現れる「ピラソロ代数」と密接に関
係するという謎に焦点を当ててみます.この不思議な接点の類似をマクドナルド対称多項式の場合
に期待することもできて,それは「変形ピラソロ代数」の誕生を意味します.その次に,二次元の
古典統計力学の可解格子模型を取り上げて,そこで成長する変形ピラソロ代数の姿を見せたい,と
執筆の初期の段階では考えていました.可解格子模型の研究において,変形ピラソロ代数は我々の
予想、を全く裏切る意外なところに出没するので,変形ピラソロ代数に導かれて複雑な迷路を手探り
で進むような気がしてきます.しかしながら,古典統計力学における変形ビラソロ代数の役割を記
述するにはかなりの準備が必要で、予定の紙数を越えることになりますので,物理に関連する話題は
思いきって省略することにしました.
本書は,東大,駒場で、行った解析力学,量子可積分系についての講義,及び\立教大でのカロジェ
ロ・サザランド模型,ジャック対称多項式,マクドナルド対称、多項式と(変形)ピラソロ代数につ
いての講義ノート等を整理して出来たものです.立教大学で講義をさせて頂くにあたってお世話に
なった山田裕二さんに感謝の気持ちを捧げたいと思います.この本には,栗田英資さん,小竹悟さ
ん,久保晴信さん,松尾泰さんとの共同研究で得られた結果を多数引用させて頂きました.ここに
改めて感謝の意を表したいと思います.原稿を注意深く読んで、貴重な意見を下さった,井上玲さん,
坂本玲峰さん,竹野内晃さん,西i畢道知さん,西野晃徳さん,原祐次さん,山田崇さんにはこの場
を借りてお礼申し上げます.とりわけ,坂本玲峰さんには計算の詳細まで読んでいただき,説明の
不足や証明の不備,私の勘違い等について数えきれないほどの御指摘をいただきました.毎日の生
活と研究を支えてくれている私の両親,朝彦,多重子と妻子,京子,空大に感謝します.最後にな
りましたが,執筆の機会を頂き,また私の遅筆を最後まで辛抱強く待ち続けて下さったサイエンス
社の編集部の方々に深くお礼を申し上げます.
2003 年 7 月
白石潤ー
ii
まえがき
目次
1
第 1 章木の実あつめ ー古典可積分系
1.1
1.2
古典力学:すずめの学校................................
1.1.1 ニュートンの運動方程式:尽きぬ泉 • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
2
1.1.2
エネルギー保存の法則.............................
3
1.1.3
調和振動子:パネ...............................
4
1.1.4
斥力の例....................................
5
解析力学.. ・・・−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− • • • • •
1.2.1 ラグランジュの運動方程式................ • • • • • • • • •
6
6
1.2.2
1.2.3
1.3
ハミルトン形式................................ 10
線形な多自由度の系..................... • • • • • • • • 14
カロジェロ・モーザ一系................................ 17
1.3.1 三粒子の場合 . • • . • . • . • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 18
1.3.3
ラックス形式:紡ぎ歌............................. 23
L = L M 一M L の証明と可積分な模型のクラス.......... • • • • 26
1.3.4
包合の関係:みな仲良し
1.3.2
••••.••••••••.••••.••••••.•
29
運動方程式の求積: u(x) = l/x2 の場合...................
量子可積分性へ向けて... • • • • • • • • • • • • • • • • . • • . • • • . • • . • •
31
1.3.5
1.4
33
量子論におけるラックス形式:別の道.............・−−−一−
まとめ....................目....................
39
保存量の別の表現:険しい山道.......
1.4.2
41
43
第 2 章川遊びー量子 可積分系
2.1
33
••••••••• •••••••
1.4.1
1.5
2
量子力学の基礎事項..................................
2.1.1 調和振動子の量子化..............................
44
44
2.1.2
波動関数:エルミート多項式...............
••••••••
46
2.1.3
ロドリゲスの公式とエルミート多項式の母関数................
相関関数...................... ••••••••• ••••
48
2.1.4
2.1.5
2.1.6
50
円周上の自由電子:めだか • • • • • • • • . • • • . • • • • • • • • • • • • • 51
−一− 53
N 電子の波動関数:めだかの学校 ................
54
2.1.8
パーティション,ヤング図形:めだかのお遊技................
シューア対称、多項式..............................
2.1.9
密度相関関数
•••••••••••••••••••.••••••••••.••
59
2.1.7
56
2.2
2.3
2.4
カロジェロ・サザランド模型.............................
64
2.2.1
カロジェロ・サザランド模型のハミルトニアン................
64
2.2.2
基底状態...................
2.2.3
基底状態の規格化の吟味
••.••••••.••••••• .••••••••.
69
2.2.4
励起状態へ向けて...............................
70
2.2.5
励起状態の準粒子解釈.............................
72
2.2.6
ジャック対称多項式の具体例.......
•••••••••••••••••
74
2.2.7
モノミアル対称多項式とパーティションの順序................
79
2.2.8
ジヤツク対称多項式..............................
83
2.2.9
シューア対称多項式:楽しい遠足.......................
85
• • • • • • • • • • • • • • • • 66
2.2.10 密度相関関数 ••.••••••• ' • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 88
保存量と波動関数:補足................................ 90
2.3.1
保存量の可換性:ダンクル作用素.......................
90
2.3.2
ジャック多項式の表示公式..........................
91
まとめ.........................................
93
第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
3.1
3.2
3.3
3.4
iv
95
無限変数の対称多項式:対称関数...............
• • • • • • • • • • • 95
3.1.1
シューア対称関数:内積と直交性.......................
96
3.1.2
ジヤツク対称関数:内積のか変形......................
99
3.1.3
マクドナルド対称関数:内積の (
q, t)ー変形......
存在定理......................
••••••••••• 102
••••••••••••••••• 105
3.2.1
対称関数の基底. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 105
3.2.2
線形自己共役作用素. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 108
3.2.3
マクドナルドの差分作用素.......
3.2.4
上三角性. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 111
3.2.5
自己共役性. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 113
3.2.6
固有関数. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 114
3.2.7
可換性...................
3.2.8
確認事項. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 118
3.2.9
コストカ多項式. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 119
対称関数の自由場表示........
• • • • • • • • • • • • • • • •
• • • • • • • • • • • • • • • •
• • • • • • • • • • • • •
• 109
117
• ••••••••• 120
3.3.1
自由場. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 121
3.3.2
マクドナルド差分作用素の自由場表示 .••.••••••.•••••• ••. 123
3.3.3
マクドナルド対称関数の積分表示:具体例. . . . . . . . . . . . . . . . . . 126
3.3.4
積分表示:パーテイションが一般の場合. . . . . . . . . . . . . . . . . . . 132
まとめ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ' ••••••••••••••• 134
目次
第 4 章不思議な出会い
4.1
自由場とピラソロ代数. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 135
4.1.2
自 由 場 . . . . . . . . . ・ 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 . 135
ウイックの定理................ − − 一 一 一 − − 一 一 . 138
4.1.3
作用素積展開
4.1.4
補足:自由場の力学........................
4.1.1
4.2
••••••••••• .•••.••.•••. •••••••••• 140
4.2.2
4.2.3
•••••••••••• •••••••••••• •.•.••••.••• • 145
共形変換.... •••••••••••• •••••••••••• •.••••• 146
共形不変性. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 147
ピラソロ代数 • • ••••••••••• .••••••.•••• ••.••.• 149
4.2.5
ヤコビ律と中心拡大. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 150
最高ウエイト表現. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 151
4.2.6
最高ウエイト表現の基底
4.2.7
特異ベクトル
4.2.4
4.2.8
4.2.9
•••••••••••• •••.••.••••• ••• 152
••.•••.••••• •••••••••••• ••••••••• 154
カッツ行列式 •••••••••••• ••••••.•••.• ••••••••. 156
カッツ行列式の因数分解 • • • • • • • • • • • • • • • • • • •••••••• 159
4.2.10 特異ベクトルの公式の例
4.4
••••• 142
ピラソロ代数
4.2.1
4.3
135
ビラソ口代数
••••••••••.• .•.••.•••.•• ••• 160
ピラソロ代数の自由場表示 •••••••••••• ••.••••••••. •••••. 163
4.3.1 自由場. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 163
• . • • . • • • . • . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 164
4.3.2
フオツク空間
4.3.3
特異ベクトルの自由場表示:秘密のトンネル......
•••••••••• 167
変形ピラソロ代数. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 171
4.4.1 定義. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 171
4.4.2
4.4.3
4.4.4
4.4.5
4.5
ヤコビ律と構造関数. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 173
補足:変形ピラソロ代数の極限等. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 178
最高ウエイト表現. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 181
カッツ行列式 •••••••••••. ••••••.••••• ••••••••• 182
変形ビラソロ代数の自由場表示. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 186
4.5.1 自由場................................ •••• 186
4.5.2
フォック空間
. .
. . . • . . • . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 188
マクドナルドの差分作用素と変形ピラソロ代数. . . . . . . . . . . . . . . . 190
まとめ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 192
4.5.3
4.6
参考文献
194
索引
199
v
第 1章
木の実あつめ−古典可積分系
夜空の星の不思議さに魅せられたのがそもそもの始まりです.やがて,身の回
りの出来事まで微積分学で精密に予言できるような体系として完成されたニュー
トン力学は,途方もなく大きな固に例えることができるでしょう.この国には,
人々がくつろぐことのできる,色とりどりの花と美しい緑にあふれた広場があ
ります.子供達はかくれんぼやおにごっこなどで遊び回り,タコあげやコマま
わしに夢中です.一人の子供が川の吊り橋を慎重に渡っていると,その隣を勢
いよく走り抜ける子供がいます.縄や格子の遊び道具をみんなで揺らして遊び
ます.大人たちは木陰でのんびりと過ごしたり,池に石を投げて水面にできる
波を楽しみます.ある人は泳ぎ,またある人は魚釣りをするでしょう.
ある日,デリケートで一風変わったコマにうち興じる女性が登場しました.
オイラーのコマやラグランジュのコマといった伝統的なコマについで見つけら
れたこの新手の可積分コマは彼女の名前をとってコワレフスカヤのコマと呼ば
れます.それからしばらく経って,戸田格子という可積分格子が発見されまし
た.運河を進む孤立した波に興味をそそられ,それをどこまでもおいかけたス
コット・ラッセル卿の好奇心は讃えられるべきですし,浅い水の波をあらわす
コルテヴェーグ・ド・フリースのすばらしい波動方程式にしたがって,たくさ
んのソリトンを魔法のように生み出してみせる手品はとてもみごとです.我々
の憩いの場であるこの広場はこのようにして造られてきたものです.もちろん,
これからもいろいろな不思議で、可積分な話が生まれていくことでしょう.可積
分タコあげか,可積分おにごっこか,はたして次はどのような遊びが不思議を
紡ぎ出すのでしょうか?
この章では,古典力学の可積分模型の例としてカロジェロ・モーザー模型を
とりあげようと思います.これは,一次元の空間を運動する斥力の相互作用を
持つ多粒子の問題です.戸田格子の発見の直後に見つかった古典力学の可積分
模型です.これから我々は,カロジ、エロ・モーザー模型に導かれて量子可積分系
の野山を散策することになりますが,まずはしばらく古典論の範囲にとどまっ
て,色々な形の美しい木の実をあつめてみましょう.
1.1 古典力学:すずめの学校
1.1.1
ニュートンの運動方程式:尽きぬ泉
一次元の空間を運動するー粒子の運動方程式を積分する方法を思い出してみ
ましょう.教養学部の講義で学んだ懐かしい話題です.後に我々は少し手ごわ
い模型の場合に,運動方程式の積分を実行しようと考えているので,そのため
の準備運動と思ってください.
簡単のために,力は座標にのみ依存するものとしましょう.質点の座標を x,
質量を m ,質点に作用する力を F(x )と表せば,ニュートンの運動方程式は
m
ぺ
今
= F(x)
dt'2
と与えられます.これがまさに古典力学の源流となる方程式です[ l[
〜
]3].
力が働かない場合, F(x) = 0 即 ち 合 = 0 となりますこの微分方程式の解
x = vt + xo
(1.2)
は,質点が等速運動することを表します.よって,ガリレイの慣性の法則は運
動方程式からの帰結となります.
図 1.1
ピサの斜塔.
もし,ピサの斜塔から球を落下させることを考えるならば,球にかかる重力
F(z) =一m g を考えることになります.ここに, g は地球の表面近くにおける
重力加速度を表す定数で, g = 9.8 m/s2 という値を持ちます.この場合の運動
方 程 式 問 会 = 一m g を解けば,
2 第 l 章木の実あつめー古典可積分系
"
1
+vat 十 Zo
z = ‑2gt"
(1.3)
を得ます.この結果は質量刑には依存しないことに注意してください.ピサの
vo = 0 )でそっと手を離せば 3.4
斜塔の高さ zo は約 5 5 m ですから,初速度零 (
秒ほどで地面に到達する計算になります.これは,直感と矛盾しない数字です.
重い玉と軽い玉が同時に着地するという日常的な感覚を裏切る結論は,ガリレ
イのような考察を経ないでも運動方程式と万有引力の法則からあっさり導くこ
とができます.
エネルギ一保存の法則
1.1.2
一次元の運動において,
J
内) = ‑
F(x )の積分
−
(1.4)
F(x
は力 F(x )のポテンシャルです.即ち,力はポテンシャルの微分によって
dU(x)
F(x) =
(1.5)
と表すことができます.ポテンシャル力による運動なので,エネルギー
=竺 l判 2 + U(x)
(1.6)
2 ¥ dt J
が保存します:
dE
(1.7)
dt
つまり,運動方程式の解 x = x(t)の上では
dE
批
d2 白
一
付
2 石 +Uk 吋
0 州 ︶ F 件a 1 批
m
1 一
i d 一一−
仰︑
1
1 説
\ 一
/
tM
矧片
d
/
dt
(1.8)
4
n
E 式
運動方
=L
+
庁
ι
O
となり,エネルギー E は一定値をとります.
エネルギー E を持つ軌道上での速度は,式( 1.6 )より位置 z を用いて
(1.9)
と表すことができます.ただし,根号内が負であることは許されないので,古
典軌道は E 三 U(x )の範囲に生じなければなりません.この一階の微分方程式
は変数分離によってただちに積分できますから,
1.1
古典力学:すずめの学校 3
4
7む n
4
p 2
2
1
4−
L可
z
G︐
z
1
t
︵i1 −un︑
ノ
と,時間を位置の関数として求めることができます.両辺に,この関数の逆関
数をほど ζしてやれば位置を時間の関数として表すことができて,それが一自
由度の問題の解答を与えます.
1.1.3 調和振動子:パネ
調和振動子を扱ってみましょっ.フックの法則に従う理想的なパネは,伸び
に比例した力を与えます.比例定数(パネ定数)を k とすれば,運動方程式は
mii
‑kx
(Lil)
I
です.ここでは,時間についての微分をゐぅム・・・等とニュートンに倣って書き
ました.以下では,ライプニッツの記号 dx/dt, d2x/必死・・・とニュートンの記
号のうち便利な方を適宜用いることにします.
調和振動子のポテンシャルエネルギーは
U(x)
=
シ
(1.12)
2
ですから,
よー= arcsin 与
A
w t + 8 = I du −;=
Jo ‑ v' A:; ‑ y2
ここに, S は断定数,また, w =
(1.13)
lf,A =押 と お き ま し た こ の 逆 関
数をとれば
x(t) = Asin(wt + 8)
(1.14)
となります.でも,調和振動子をこのように解くのは少し大袈裟です.
F=‑kx
図 1.2 調和振動子.
4
第 1 章木の実あつめー古典可積分系
1.1.4 斥力の例
調和振動子は引力の例でしたので,斥力の例も考えてみましょう.話が簡単
な方がよいので,積分したり逆関数をとったりする際に,初等関数だけですむ
例はないものでしょうか?積分の公式集を使ってそういう例をいくつか見つけ
ることができます.以下の例はそのうちの一つです.
ポテンシャルカす
I
l
l
1
1
1
一
o ー
︑ −− d d
U l︐︐Z
q
h
(1.15)
斗
り れる 場 ム
え 戸
口 カ
で与 ︑
J
品
作
町=2
︵ hU︶
叶
1
E
ム Eよ
円
.
と書けるように,原点近くで強く,遠方で減少する斥力です.ここに, g は斥
力の強さを表す定数です.(重力加速度ではありません.)これが自然界にある
力かどうか,ここでは構わないでおきましょう.時刻 t = O で,質点が最も原
点に接近して x(O)
易で
=長訂o となるとしましょう 運動方程式の積分は容
ザ 午〆
ル
t=
(1.17)
2(E
となり,これを z について解けば
I
(1.18)
m E
と求めることができます.よって,軌道は x‑t 平面上の双曲線になります.原
点付近で斥力によって反射され,また,遠方では等速運動に漸近するという期
待通りの振るまいを確認することができました.
l
x
Xo
図 1.3
斥力ポテンシャル U(x) = g2 会中の運動.
1.1
古典力学:すずめの学校 5
1.2 解析力学
1.2.1
ラグランジュの運動方程式
運動方程式を座標系に依存しない形に書くというラグランジ、ユの素晴らしい
考えは,我々に多くの利益をもたらしてくれます.
ラグランジアンとは, N 個の一般座標 qi と一般化された速度成分ふを用
いて,
L(q, q) = (運動エネルギー)−(ポテンシャルエネルギー)
(1.19)
と定められる関数です.このとき,質点系の運動方程式は,座標の選びかたに
依らないで
d θL θL
dt θqi θqi
‑
‑
(i=l,2,・
・
・
,N)
(1.20)
と書けます.これはラグランジュの運動方程式と呼ばれます.もちろんこれは
ニュートンの運動方程式と等価です.我々は,考える問題に応じて上手い座標
を選びますが,そのとき直交座標における運動方程式までいちいち立ち戻らな
くて済むことが利点です.
問 題 f.1
調和振動子に対するラグランジアンが L(x,x) =警が−
えられること,また,ラグランジュの運動方程式として
mx = ‑ k x が得られ
ることを確認せよ.
問題 1.
.2
作用関数を S = ftt12 Ldt と定める.このとき,ラグランジュの運動
方程式( 1.20 )は,最小作用の原理,即ち, S が経路の微少変分 q(t) + 8q(t )に
関して不変になるための条件として得られることを示せ.
ラグランジュの運動方程式の例題として,一様重力中の単振り子を考えてみ
ましょう.質量刑の質点が長さ l の軽い棒の一端に固定されており,もう一方
の端は運動を妨げないよう工夫がされて支持台に固定されているとします.こ
こでは簡単のために振動は鉛直面内を運動する場合を考えましょう.
この場合,一披座標は,振り子の鉛直親からの振れ角 O で,ラグランジア
ンは
L(B, B)
…−
m g l cos e
(1 刈
と与えられます.ここに, g は重力加速度です.よって,ラグランジュの運動
方程式
6 第 1 章木の実あつめ一古典可積分系
万
Q
(1.22)
ハ n
σ+ ニ
7 nσ 一
一u
Q
U
L
J
乞 41 旦
品
寸宇
2
す
ou
,
,
一
m g
図 1.4 単振り子.
もし,振り子の振幅が非常に小さければ,。の高次の項は無視することがで
きて,
j
。
?
一
トinB 〜
ー
=
(1.23)
となり, w 2 = g/l の調和振動子で近似されます.このことは,振れ幅の小さ
い単振り子の振動の周期が振幅にほとんど依存しないことをうまく説明してい
ます.
問題 1.3
フーコーが地球の自転を証明するために用いた長さ l = 6 7 m の振
り子の周期を求めよ.
エネルギ
−E を mgl で割ったもの
土 iJ2 ‑ cosB
Iニ
2g
(1.24)
は保存量です.(確認して下さい.)保存量があるので運動方程式の階数を一つ
減らすことができて,。についての 1 階の微分方程式
。
=
(1.25)
を得ます.運動は
I+cosB>O
(1.26)
なる範囲に生じます.往復運動は− 1 < I < 1 に対応し, I > 1 の場合は回転
運動を表します.また, I = ‑ 1 の場合は B = O に静止, l = l の場合は無限
の時間を要して逆立ちの静止に至ります.
1.2 解析力学 7
式
( 1.25 )を積分すると
t ‑ to = l e
=
kfg 1012
や
(1.27)
0
となります.ここに
k = 1 /三一> 0
I +1
(1.28)
とおきました.これはヤコビの楕円関数を用いて
=
。2arcsinsn
(1.29)
と解くことができます.ここに現れた関数回はヤコビの楕円関数と呼ばれる関
数で,可積分模型の公園を散策しようとする我々にとっては,欠かせない大切
な関数です.
ヤコビの sn 関数は
U
=
1伊平頁
(1.30)
1 ‑ k2x2)
の逆関数
z = sn(u,k)
(1.31)
と定められます.このように定められた sn 関数は,複素 u 平面上の二重周期
関数となるという顕著な性質を持ちます.また,楕円テータ関数等を用いれば,
sn 関数等の楕円関数を直接定義することができますが,それは先の話題に取っ
ておいて,ここでは先を急ぐことにしましょう.
式
( 1.30 )を変数変換すれば
sn(u, k)
u
図 1.5
8 第 1 章木の実あつめー古典可積分系
ヤコビの sn 関数.
rsin
dα
fp
《
I ゾ1 ‑ k2 sin2α = Iん
U= ん
伊
<官')
')、(
1.32)
となりますから,単振り子の積分に必要な関数。(u )は,ヤコビの sn 関数を用
いて
(1.33)
少= arcsins叫 u,k)
と求めることができます.
例 1..4 ( Y 字振り子)
Y の字状に結んだひもに重りを吊るしたものは Y 字振
り子と呼ばれます(図 1.6). y 字振り子の運動を考えるには,重りの座標を
ー (l1 + l2 cos¢) cos B)
う
(x, y, z) = ((li + l2 cos¢) sin B, l2 sin ゅ
(1.34)
と選ぶと便利です.このとき,
運動エ︑ルギ = m
一
ポテン不ヤル 別
シ
エ
J
Z +1
内
+
ヂ
内
=
y
山
バ
(1.35)
の
・
ヶ4
μ
(1.36)
一 m
から,ラグランジアン
L =
((山2 co
山
手2) + m g (
唱
2iJ2 +
2 cos
が得られます.
問題…l.. p Y 字振り子の運動方程式を求めよ.必要ならば線形近似を用いて,
運動の様子を調べよ . Y 字振り子の運動方程式は可積分であるか?
z
y
x
図 1.6 y 字振り子.
1.2 解析力学 9
1.2.2 ハミルトン形式
ラグランジュのやり方も素晴らしいのですが,ハミルトンによる記述もまた
美しいものです.特に,様々の物理量の時間微分が,代数的な手続きによって
みごとに計算される過程をみてみましょう.後で考えるようなもっと本格的な
模型の例もそうですが,保存量が多数ある場合は素朴に考えたり素手で計算し
たりするだけでは先に進むことが難しくなってきます.こういう場合に力を発
揮するのがハミルトン形式です.
一般座標( q1, q2 ,
・
・
. ,qN )を用いてラグランジアンが
L(q, q) =運動項
=
ポテンシャル項
K(q, q) ‑ U(q)
(1.38)
と与えられるとします. この系は次のような保存量
(1.39)
= 0
を持ちます.
問題 f
ラグランジュの運動方程式を用いて上のことを確認せよ.
もし運動項が弘について二次の斉次式ならば
乞τ
θK
ァ仇= 2 K
i
(1 紛
)
aqi
となりますから, この保存量は系の全エネルギー
E = K(q,q) + U(q)
(1.41)
に他なりません.
さて,運動量を
(i=l,2,・ ‑,N)
aq包
(1.42)
によって定めます. (q1 .
,
・
・ ,qN,Ql ,
・
・
. ,<'JN )から( q1γ ・
−
, qN,Pl γ ・
−
, P N )に
変数をルジャンドル変換すると,
N
‑ L(q, q)
(1.43)
=運動項+ポテンシャル項
という表式を得ることができます.この H(q,p)のことをハミルトニアンと呼
びます.ハミルトニアンはエネルギーを表しますが,次に述べるように運動方
程式の記述にも用いられます.
10
第 1章
木の実あつめー古典可積分系
r
ニュートンの運動方程式は二階の微分方程式ですが,座標と運動量を用いて
,
;
一
θH
ー布
W
,N)
−
・
(i = 1, 2 ,
禦
仇=−Oqi
(1.44)
のように,一階の連立微分方程式に書くことができます.このように表示され
た運動方程式はハミルトンの運動方程式と呼ばれます.
例 1.'i'
一次元一粒子の場合を考えます.ラグランジアンを
)
(1 必
♂
)
‑U(
い) =
L(
とすれば,運動量は
p =
δ m " =…
(1.46)
‑ .
となり,ハミルトニアン
H(x,p)
ヰ
=
(1.47)
p2 十 U(x)
を得ます.ハミルトンの運動方程式は
ρ=
{ : :
p,
z
η
(1.48)
dU(x)
p =一一石一= F(x),
となりますが,これはもちろんニュートンの運動方程式 mx = F(x)と同じも
のです.
ここで,時間微分を表現するためのおまじない,即ち,ポアソン括弧{,}
を導入しましょう. f,g が qi と Pi の関数であるときに, f と g のポアソン括
弧を
θ
N一
Z aq一
f
J
出
好θ
一 一
伽 仇
(1.49)
と定義します.
例 j̲.8. ー自由度の場合は
fθg of θg
δ
θq θp θp θq
{f,g} = 一 一 一 一 一
(1.50)
ですから,
1.2 解析力学 11
{p,q} = ‑1,
{q p} = 1
ぅ
{pn, q} = 叩n‑l,
{qn,p} =ηqn‑l
{f(p), q} = ‑f'(p),
{f(q),p} = J'(q),
(1.51)
等となります.
ド
。
この記法に従うと,ハミルトンの運動方程式を
=
{ qi,H},
i
(i = 1, 2,
・
・
・
,N)
(1.52)
= {Pi,H},
と書くことができます.このことから,時間 t には陽に依存しない任意の Qi,Pi
の関数 f(q,p)の時間微分が
ftt(州 = {f(q,p), H }
とコンパクトに書けることとなります.関数 f が時間に陽に依存する場合は
竺
J(q,p,t) =
dt
(1.54)
θ
t
と書けます.実際,式( 1.54 )の左辺からスタートすれば,
左辺=
=
併
ふ θ f θf.
f(x,p, t) + ) :‑q・ + ‑ p i
合 θq包 包 θPi
θ
t
ふ θf θH θf θH
f(x,p, t) + γ 一 一 一 一 一
乞 θQi θ'Pi θ'Pi θq包 =右辺
(1.55)
と右辺に到達することができます.
ここでポアソン括弧の性質をまとめておきましょう.
任意の関数 f = f(q,p), g = g(q,p)
等と数 αJ に対して
{f,g} =一 {
g,f},
(反対称性) (1.56)
{f α
g1 + ,8g2} =α{
f,g1} +β
{f,g2},
(線形性)
(1.57)
(ライプニッツ則)
(1.58)
ぅ
{f,gh} = {f,g}h+g{f,h},
{f, {g, h}} + {g, {h, f}} + {h, {f,g}} = 0,
(ヤコビ律)
(1.59)
が成立する.
多自由度の力学系の運動方程式を解く場合には,十分多くの保存量を探すこと
が大切です.その際,長い計算を強いられる我々にとって,代数的に整備され
たハミルトン形式は本当にありがたいものです.
保存量について,簡単な例で考えてみましょう.三次元の空間において,
12 第 1 章木の実あつめー古典可積分系
r = (x,y,z)の向きを持ち原点からの距離 r =ゾジ+ y2 + z2 のみに依存
する力
(1.60)
F =
すなわち中心力に従って運動する一つの質点をとりあげてみます.中心力は必
ずポテンシヤル力ですから,
θzU(r))
,
yU(r)
θ
,
xU(r)
(θ
F =ー
(1.61)
が存在します.このとき,運動量ベクトル
と書けるようなポテンシャル U(r)
乱土),ハミルトニアンは
は P = (Px,Py ぅPz) = m ( x ,
(
本(p; + + p;) + uけ
(1.62)
H =
となります.
中心力による運動においては,角運動量
M = r ×P = (YPz ‑ Zpy,ZPx ‑xpz,XPy ‑ypx)
(1.63)
が保存します.なぜならば,
M
竺
dt
土p × p + r × F = O
=十× P 十 T ×ρ=
(1.64)
m
となるからです.このことをポアソン括弧で表現すると,
{ M x , H } = {My,H} = {Mz,H} = 0
(1.65)
となります.
問題 t.9. ポアソン括弧
{Px,x} = ‑1,
{Px,Y} = 0,
{py,x}=O,
{py,y}=
{Pz x} = 0
{Px,z} = 0
1,
う
(1.66)
{py,z}=O ぅ
{Pz,z}=‑l,
pz,Y}=O,
{
/3=x,y z)
α,
(
β}= 0
={α,
{po:,Pβ}
ぅ
ぅ
ぅ
を用いて式( 1.65 )を導け.
方程式( 1.63 )より,中心力による運動は力の中心を含み角運動量ベクトルに
垂直な面内に制限されることになります.とても美しい土星の輪は,土星の中
心を含む面上にあります.この輸は多くの粒子から成り立っているそうですが,
すべての粒子が同じ面内を運動しているということは,みな同じ向きの角運動
量を持っているということになります.どうしてそうなっているのでしょうか?
土星の輸の起源は不思議です.
三つの保存量 M x , M y , M z の聞のポアソン括弧を調べると,
1.2 解析力学 13
{ M x , M y } = Mz,
(1.67)
{My,Mz} = Mx,
(1.68)
{Mz,Mx} = M yぅ
(1.69)
という面白い関係が現れます.(式( 1.66 )を用いて確認して下さい.)このよう
な関係のことは,ポアソン代数と呼ばれます.我々の可積分の庭園には,何千
種もの美しいポアソン代数の草花が暮らしています.
いくつかの量 Ii,I2 ,
−
・
. ,Ik が,すべての組について {
Ii,Ij} = 0 を満たすと
き,これらは包合の関係にあると呼ばれます.互いに独立な関数であってしか
も包合の関係にあるような保存量が,考えている力学系の自由度の数だけちょ
うど存在する場合には,この系の運動方程式は原理的に積分できるものとなる
ことが知られています.これはリューピルの可積分性と呼ばれます[ 1[
ト6 ]. 関
数の独立 について,微積分または解析の詳しい入門書には,「関数関係」の項
目で書かれているので併せて参照のこと.
(
ア
+
村
;
中心力においては,三つの量
2
ル
|
2
+ U(r),
= M'; + M ; + M ; ,
(1. 70)
M
が包合の関係にあることを示せ.(よって可積分です.
・(ケアラー問題) 附 ) = − 叫 並 の 場 合 に 運 動 方 程 式 を 積 分
せよ.
1.2.3 線形な多自由度の系
多数の質点が相互作用しながら時開発展する場合を考えてみましょう.最も
簡単なものは線形なパネで、結合された
1
N
, .2
N
H =
‑ Qi+i)2
(1.71)
(ただし, Q N + l = Q1)
という模型です.このハミルトニアンと正準変数に対するポアソン括弧
{qk ,
の
} = 0,
{Pk,pz} = 0,
が系の時開発展を記述します.
1 4 第 1 章木の実あつめー古典可積分系
{pk, qz} = ‑ok,z,
(1. 72)
国 1.7 連成パネの系.
この場合のハミルトン方程式は線形の微分方程式
q=p,
ρ=一w 2
(1. 73)
。 。
。 。
。
。
。
。 。
2
‑1
T
i
2
‑1
1
2
1
‑1
(1.74)
q
‑1
‑1
2
1
‑1
2
となり,次のようなフーリエ変換による対角化が有効です.以下,簡単のため
N = 2 M + 1)のみを考えます.新しい座標と運動量
に粒子数が奇数の場合 (
Qk =
方言洋 %
・
・
( k = ‑ M , ‑ M + l,
Tl
.Lk
,M )
(1.75)
1 ;..., ーとi 2 . k i ̲
y
=荷台
E
川
を考えましょう.任意の整数 k, l に対して
止洋 呼
li = ok,l
(1.76)
M 竺妥三 kiQk
Z一
−
/
..、
pk
e
Mヤ
ム
一
(1. 77)
kie
が成立することを使うと,
1
一
一
山
1
一
一
州
f
2
1.
一一方ー削
と逆向きに解くことができます.新しい座標,運動量に関してポアソン括弧を
計算すると,
{Qk,Qi} = 0,
{Pk, P i } = 0,
九+l,O
{Pk, Qi} =一
(1. 78)
となります. よって,座標変換
(1. 79)
{q1, ・,q2M+1,P1 ,・・ ,P2M+i}
Q M , Q ‑ M + l , ... 'QM, P M , P M ー l,・・・ぅ p ̲ M }
→{
はポアソン括弧を保つ変換,即ち,正準変換です.
ハミルトニアンはこの正準変換によって
1.2 解析力学 1 5
ぷ
(I
w(k)2
¥
ラ
: 12,PkP‑k +ーす−
QkQ‑k
H =
),
k = ‑ M 、
(1.80)
/
πk
w(k) = 2 w sin 一 = 2wsin −一一
2 M + l
(1.81)
と表現されますから,ハミルトンの運動方程式
(一
(
k = ‑ M , ‑ M + I,
・・
,M )
内
p k = 一w(k)2Qk,
(1.82)
を得ます.すなわち, N ( = 2 M + 1)個の独立な調和振動子型の運動方程式に
分解されたわけです.ただし, w(O) = 0 であるので, k = O の場合はパネ定数
が零になり k 手O の場合とは様子が異ります.よって,運動方程式の一般解を
Q o = A o + Bot,
(1.83)
Q k = Akev'=Iw(k)t 十 Bke‑v'=Iw(k)t'
(k 手
。
)
(1.84)
と求めることができます.ここに, A k , B k は(複素の)積分定数です.これを
式( 1.77)に代入して座標仇を求めると,
qi =
Ao +Bot
ー
マ
「
(1.85)
k 手0
y
となります.この式が実数の値をとることを要請すると,
Ao, B o は実数,かつ, Bj. = A ̲ k
(k ヂ0)
(1.86)
でなければなりません.これら未知の積分定数は, 2 N 個の初期値 qi(O),Pi(O)
によって決定されることになります.
運動方程式が解ければそれでよいわけですが,念のために包合の関係にある
N 個の保存量をつくって可積分性を吟味しておきましょう.まず,
向
( 去(
k=
P ‑ k + 何 ω附
会(九十日w(k)Qk),
(1.87)
石k =
ここに, k =土I,
士2, ... )
土M
とおきます.そうすれば,ハミルトニアンの表式とポアソン括弧
•
H =;
庁+
16 第 l 章木の実あつめー古典可積分系
M
(
; 山+否ー刈,
α
(1.88)
α1} =
αk ,
{
vコw(k)九
(1.89)
+l,O ぅ
αk,az}=O,
{
(1.90)
{k,az} =ゾコw(k)8k+z,o,
否
(1.91)
を得ることができます.ここで,ハミルトニアンを構成する 2 M 十 1 個の量を
い
j斤' h =
L k = a̲kak
α叫
(k = は , M)(l.92)
と書けば,これらが保存量であること,
Ik = { h H } = O
竺
dt
(1.93)
ぅ
および,包合の関係にあること
(1.94)
{Ik,!1} = 0
を確認することができます.
1.3 カロジェ口・モーザ一系
一般に多数の質点が相互作用しながら時開発展する系の運動方程式を積分する
ことは非常に困難です.多くの場合は,三体問題のように,運動方程式を求積す
卜6]
ることは原理的に不可能になるでしょう.そこで,我々は可積分な力学系(4[
を手に入れたくなりますが,多自由度の力学系で可積分であるものを探し出す
こともまた大変なことです.可積分模型は,探究する人だけが発見できる宝も
のです.素晴らしい発想によって道を切り開いた先人たちに感謝しましょう.
1889 年に発見されたコワレフスカヤのコマ[ 71 以来,有限自由度の可積分力
学系の発見には空白の期聞がしばらく続きました.この空白を打ち破ったのは
1967 年の戸田格子と呼ばれる非線形格子の発見でした[8 ]. それとほぼ同時に発
見された,カロジェロ・モーザ一系と呼ばれる力学系をとりあげてみましょう.
これは,距離の二乗に反比例するような斥力ポテンシャルをもっ模型で, 1969
年にカロジエロによって発見された模型です[9], [10]. また,モーザーは 1975 年
にこの模型の可積分性を研究しました( 11].
カロジェロ・モーザ一系のハミルトニアンは
互いに強い斥力を及ぼす
//一ーェミ\ーメご==てナ\\
・
…
ー
…
同
…
・
・
ー
・
ー
・
・
悶
・
・
ー
・
ー
・ ー
・
ー
ー
・ ..凶
・
・
・
・
吋
一 ー
−
−
−
−
−
−
−
一
町
ー
ー
ー
ー
・
・
ー
ー
・
ー
・
・
・
ー
ー
ー
同
図 1.8
カロジェロ・モーザ一系.
1.3 カロジェロ・モーザ一系 17
H
N
Z
M
+3
円
AD
芝
川
(1.95)
と与えられます. lE 準変数に対するポアソン括弧{Pi, Pj}
= 0, {qi, qj}
0, {pi, qj} = ‑8i,j を用いれば,運動方程式
i
r
. 一一 Ez
−z
︑
−
︿
E
︽
︑一
︾
H﹃
一 pz
J
(i = 1,2 ,
・
・
, N ) (1.96)
E 仇=
E
l
t
ム. J
jヲ
(6i)
(町一町) 3
J
を得ます.これは非線形微分方程式ですから,求積は一筋縄ではいかなくなり
ます.以下,しばらくの間,カロジェロ・モーザ一系の可積分性および運動方
程式の求積法について考えます.
ここで少し,次章の目的である量子カロジェロ・モーザ一系について触れて
おくべきでしょう.カロジェロ・モーザー系は量子化後も可積分であることが知
られています.具体的には,十分多くの保存量が構成され,全てのエネルギー
固有値と固有関数,さまざまな相関関数等を求めることができます.この意味
で量子可積分系の代表的なメンバーに数えられています.
カロジェロ・モーザ一系の量子力学のもう一つの魅力はーむしろ,それこそ
が私にとって無限の価値があることですが
そこには不思議な抜け道があって,
そのトンネルをくぐり抜けると,まったく別の国や,全然知らない世界へ飛び
出すことができるのです.私がみなさんに紹介したいのはまさにこの「不思議
な抜け道J についての話ですが,もう少し可積分な力学系の日常を見ておきま
しょう.
1.3.1 三粒子の場合
二粒子の場合,重心の自由運動を分離して相対運動を考えると,それは 1.1.4
節で考えた斥力の例に帰着します.これはもう調べ終わったことですから,次
に三粒子の場合を考えましょう.この問題は 1866 年にヤコビによって解かれ
ました.以下,いかにもヤコピらしい華麗な技を楽しむことにします[ロ], [13).
三粒子の場合,包合の関係にある三つの保存量が存在すれば運動方程式を積
分できますから,全運動量 P = p i + P 2 + p 3 とハミルトニアン H に加えて第
三番目の保存量 M
を見つけることが目標です.ここでは,うまい座標変換を
工夫して強引に保存量 M を取り出してみます.その座標における運動方程式
を考えるために, まずラグランジアンから始めることにしましょう.
18
第 1 章 木の実あつめー古典可積分系
L(x,x) =
92t;
ピ平
(1.97)
P = 0)とし,次のような座標変換を考え
簡単のため重心が原点に静止する (
ます:
+
+
X 1 ‑
= 0
X z = V 宮T 山
ψ,
(1.98)
これは,
X i =
)
号
刊
‑j'{rcos (
包
1
+
斗
= ゆs
(i = 1,2,3)
(i = 1, 2, 3)
(i ‑ 1)
(1.99)
(1.100)
とも書けます.(ただし, X 4 = X 1 と読むこととする.)
まず運動項を計算しましょう.微分の式
−
)
号
刊
(
) ︑ ︶
)
号
刊
(
︐
︐ti i ハ
Uー
噌
r¥tsin
E
E
と,三角関数の恒等式
=
)
号
(刊
ψ
(1.102)
=
0
ぅ
を用いれば,
"P"'"
" 1 " ‑1r"'<
、
"
"
運動項=一(巧十巧
2
" 2
ノ
.;十巧)=一戸+
'
(1.103)
となることがわかります.次に,ポテンシャル項について調べると,
1
9g2
1
空て「
ポテンシャル項= g " γ 一 一 一 一 一 = 一 一τ一
"
"
n
i
会j (xi X j )2 2r2 s 3cp
(1.104)
となることがわかります.ここで,恒等式
ー
−
ψ+得) ‑ sin2 3ψ
tsin2 (
と
(1.105)
を用いました.よって,ラグランジアンは
1.3 カロジェロ・モーザ一系 19
1
i
唱
9
q
G
t
i
っ
do
・っ
L 一一 ム
一 +4 ω
2 9
つ
一
一
一
T−−
2一
d一
ψ
n −
i
−
F
一F
円
η
4
q
L
(1.106)
Q
o
と書けます. よって, ラグランジュの運動方程式は
9g2
ョ
1
r ‑ r1.1:r ‑ −
−
;
;
−
一
一
一
言
一
一
一
=U
A
r6 sin" 3ψ
(1.107)
司
2 .
9g2 3 cos3ψ ハ
2r千φ+
戸ψーーすで寸一一= 0
T
sin" 3'P
− ハ︶
︵
u︒
t
E
i
︒
と導かれます.
それでは,この運動方程式の保存量を見つけてみましょう.まず,エネルギー
n
4
1
E
血
1 n︐ ・Gq 9do
i
ょT つ
一
十
十
q
n
つ
一一 血
a︐q
Q 一
一
一
︐−
−
T−
2 ω 2一
u
OV
n −
−
1
(1.109)
一
一
伊
は保存量になります.実際,
dE
.9g2
1
べ 9g2 3cos3ψ
= rr + rrψ + r ψ'P ‑ r ___,,− でーす一一一 ψ−
−
−
−
−
;
,
−
−
−
ー
ァτ一
一
dt
r6 sin 3ψ
T ゐ sm"3ψ
(1.110)
(子ーが一害品;)
¥
r‑
0ψ ノ
= 0
と確かめることができます.もう一つ保存量をみつけることができます. これ
は方程式( 1.108 )の左辺に積分因子 r 2 φを掛けたものの積分として得られます:
M=f 川 りの−宅割
T
t 噌︑
r︐E4
t ム −i i︐
r
︑.
1 4 ・2
9g2
1
r 'P +
一一一ーす一一
=
2 sin;: 3ψ
運動方程式を用いて零になる式を積分したものなので,もちろん保存量 l官= 0
となります.
これまで,ラグランジ、ユ形式を用いて運動方程式とその保存量を議論してき
ましたが,ハミルトン形式を用いてそれを整理してみましょう.運動量は
Pr 三三運動項=千
or
(1.112)
p'P 三 三 運 動 項 = 内
巴
Oψ
−
と定められますから,ハミルトニアンはルジヤンドル変換 H = p r手+p'P φ L
によって,
20
第 1章
木の実あつめ
古典可積分系
1
n
= 乙
H
1
+τ M ,
(1.113)
F
ただし,
計
山
Qυ
ー
ム
一2
M 一
一
つ
白 一
一 q P V +一
川
fH
(1.114)
と求められます.
ハミルトン形式の利点は,物理量の時開発展の計算をポアソン括弧で処理で
きることです.ポアソン括弧
θf θg θf θg θf θg θf θg
一一一一
{f,g} = 一 一 + 一 一 一 一 θ
ψ
δ'P r T θp伊 δ
ャ θp伊
フ
θT opr θ
(1 115)
を用いれば,ハミルトンの運動方程式
(1.116)
手= {r,H} = P r ,
M
M
ι={pri H } = {Pr う戸}= 2戸
(1.117)
や={ cp,H }=占p'P,
(1.118)
9 3g2 cos3ψ
M
マ τー ー
=τ
}
τ
H } = {p'P ,
ψ,
p:̲, = {
r"L. sin" 3ψ
r"L.
(1.119)
を得ることができます.もちろんこれはラグランジユの運動方程式( 1.107),
(1.108 )と同じものです.
このような代数的な操作によってハミルトニアン H と M が保存量であること
を確認することが容易にできます.実際,ポアソン括弧の性質(式( 1.56) (1.59))
を用いて計算してみると,
!!:̲H = {H,H} = 0,
dt
r
d
(1.120)
l n
1
1
=0
十戸 l什
M , 2 p;
言M = { M , H}= ↑
︐
︶
1 ︐
ム
l︐−
i i ヮ司
︑
︑
となります.
古典軌道の上での保存量 H , M を定数 E , B 2 に置きましょう:
H = E
M=B2.
う
(1.122)
これで,運動方程式は二つの微分方程式に
E =
(1.123)
T
:t,
1 2
2
B" =
'
2 P
9
g2
2 sin"L. 3ψ
(1.124)
1.3
カロジェロ・モーザ一系 21
と分離することができました.あとはこれを求積していけばよいわけです.
まず,第一の微分方程式
1 ,.
B2
士ご戸+ ‑‑‑‑;:;‑=E
(1.125)
は
, 1.1.4 節で調べた形のものです.これを解くと,
r(t)
=作い +
号
o)2
(1.126)
となります.次に,第二の微分方程式
1 4 ・2 9 g 2
B 2 = ‑ r cp +一一ーす一一
2
2
3ψ
(1.127)
に,上で求めた r(t)を代入して変数分離法を試みると
J
+
2E(t ‑
e; = J戸き品
(1.128)
を得ます.左辺はすぐに求積できて,
"2E
辺 = 一 一 a r c t a n ‑ ( t ‑ to )
+ 積分定数
0 B
B
(1.129)
となります.右辺もすこし工夫すればすぐ求積できます.
竺竺竺
右辺={
J
v12BJ1 一 義 − co:内
1 1
f
d X
一 一 一 一 一
−3ゾ
三B J Jτ=支z
=−;志…
(1.130)
x +積分定数
ただしここで
(1.131)
とおきました.以上のことを合わせますと
、'JR
1
一一− arctan ニニー (
t‑ to) =一一一− arcsinX +積分定数 (1.132)
d 三B
B
3if三
B
となります. これを X について解けば
(
in γ一 山n
22 第 1 章 木の実あつめー古典可積分系
字(t‑ to )
(1.133)
ただし, γは積分定数です.さらに,これを ψ について解けば
(
]
)
)
日
字
[H o刊 …
…
;
=
)
州
3
1.13
が得られます.式( 1.99 )に( 1.126)と( 1.134)を代入したものが最終結果です.
これを用いて図 1.9 に解の例をプロットしました.
x
図 1.9 三粒子の場合の例.
1.3.2
ラックス形式:紡ぎ歌
一般の N 粒子の場合にカロジ、エロ・モーザ一系の可積分性を調べてみましょ
う.自由度と同じ数だけ,即ち N 個の保存量を探さねばなりませんが,三粒子
の場合にやってみた座標変換に頼る方法では不自由です.実は,もっと代数的
に洗練された方法がありますので,それを紹介します.
古典可積分系において,十分多くの保存量を紡ぎ出すために語り継がれた紡
の
ぎ歌があります.それは 1968 年,コルテヴェーグ・ド・フリース方程式[ 14]
研究においてラックスが発見した方法です[ 15J. この方法によってモーザーはカ
ロジェロ・モーザ一系等の可積分性を調べました 1111. ラックス形式による記述
, N 行 N 列の反エルミート行列 M
はまず N 行 N 列のエルミート行列 L と
を導入することからはじまります.カロジェロ・モーザ一系の場合, L と M の
行列要素は
I Pi
(i = j)
(1.135)
Lj = {
i ‑=I= j〕
〔
1.3 カロジェロ・モーザー系 23
Ir y'‑lg
' >:
M.3 = {
..,
,
..ノ
‑ Xk):;
(i = j)
(1.136)
| ゾ− lg̲̲l̲̲̲寸 (i 手j)
l
(xi‑Xj)
v
と定められます.行列 L の行列要素は運動量と座標の関数で与えられています
から,その時開発展はハミルトン形式を用いて
.dt
!:̲ LiiJ = {Lij,
H}
J
(1.137)
と書けます.ここに, H は式( 1.95 )で定められる N 粒子のハミルトニアンで
す.実は,この時開発展を行列 L と M を用いて別の形に書き表すことができ
て,カロジェロ・モーザ一系の可積分性はそれによって巧みに紡ぎ出されます.
ラックス形式の要となる方程式は,
.!!:̲L=LM 一M L
dt
(1.138)
という美しい方程式です.念のため成分をあらわに書けば
.
N
長Lij = {Lij, H } =
玄 L;kMkj
ι
M .包
(1.139)
k=l
となっています.方程式( 1.138)の証明は少し長くなりますので次節に先送り
しておいて,まず保存量の構成について調べておきましょう.
実は,行列 L のべき乗のトレース
Ik = trLk
(1.140)
が独立な保存量を生成します.つまり, h I2γ ・
,・I N は互いに独立な関数で
う
あって,
.!!:̲h=O
dt
(1.141)
を満足します.この保存則は,ラックス方程式( 1.138)を用いて,
d ι
−
ι=
d
dt
‑trL"'
dt
=昨Lk勺 L L L k勺 . + Lk L)
1
((L M 一M L ) L k
=む
1
+ L ( L M 一M L ) L k 2
・
+
=位
24
(
L k M 一M L k )
第 1 章木の実あつめー古典可積分系
+ L円 L M 一M L ) )
(1.142)
と導くことができます.ここで,行列のトレースの性質七r A B = t r B A を用い
ました.
例を少し見ておきましょう.まず二粒子の場合を考えますと,ラックス行列は
L = (
り
よ
2:) H g (
(1.143)
+
となります.ここで, X12 = X1 ‑ X z という記法を用いました.したがって,保
存量は
Ii= P = P1 + P2
ぅ
(1.144)
L12
p + 2g2 二
i +§
ん= 2 H = P
市
(1.145)
と計算されます.明らかに Ii とんは独立です.念のために注意しておきます
が,二変数の場合に h,f4 ぅ・・・等の量は新しい保存量をつくることがありませ
, 214 =
ん.実際, 2fa = 3I2li ‑ If や
+ 2I2Ir ‑ It 等が確かめられます.
次に,三変数の場合について保存量を計算すれば:
Ii= P = P1 + P2 + Ps,
"
I2 = 2 H = p f +
"
(1.146)
1 ¥
1
|
+ τ一+ τ一
一
,
,
−
+ P3"+ 2g4 II −−−
Xfa ノ
Xfa
1
η
(1.147)
¥Xj'.z
2 ( P1 + P2
¥ x12
fs = P f + P2 十 月 十 3g (
P1 + Ps
P2 + Ps ¥
ls
X'.fa
山
ノ
(1.148)
を得ます.これら三つの量は独立です.
a うんを計算してみよ.
四変数の場合に Ii ぅfz, I
問題 1.12
それでは,一般の N 粒子の場合を考えましょう.まず,運動量の k 乗の和
N
.・N )
,
(k = 1,2γ
乞
日
(1.149)
は互いに独立な関数となります.また,保存量 h を調べると,
N
r
l
(1.150)
P +
乞
M
という形をしていることがわかります.従って,
(1.151)
IN は互いに独立
,
I1, I2γ ・
となります.これで,ラックスの紡ぎ歌 L = L M
M L から N 個の独立な保
存量 h を取り出すことができました.
1.3
カロジェロ・モーザ一系 25
L = L M ‑ M L の証明と可積分な模型のクラス
1.3.3
先程保留しておいた方程式( 1.138)の証明にとりかかりましょう.ついでに,
ハミルトニアン( 1.95 )を含むような可積分模型のクラスについて調べておきた
いと思います. まず,改めて,
•
N
(1.152)
iく3
i=l
(i = j)
I Pi
L・
j =
(1.153)
l H g (xi‑Xj)
(i ヂj)
り
fH
Mij =
g l::w(xi
k(財)
ね
)
(i = j)
(1.154)
l ‑ H g y (町一円)
(i ヂj)
と定めます. ただし,
−
(x) = u(x),
(
り x) = り (
x),
w(‑x) = w(x),
y(‑x) = y(x),
匂
(1.155)
と仮定しておきます.
計算の詳細は読者にゆだねますが,次のような結果を得ることができます.
ん = {Lii,H} = g 2 L
u'(xk 一向),
(1.156)
k(
手i)
L°
ij = {Lij, H } = H g (Pi ‑ Pj )ザ(
xi
( L M 一M L )
日=
(i 手j),
町
)
v(xk ‑ xi )υ
(
xk 一向),
2g2 L
(1.157)
(1.158)
k(
出
)
( L M 一M L )
η = ゾコg (Pi ‑ Pj) y(xi ‑ Xj)
+g2 L
(1.159)
( v(x包− Xk) y(Xk ‑ Xj) ‑ y (
町 − xk) v(xk ‑ Xj)
k(
ヲ
正
包
,h ) ¥
〆
十 EES l Z L
ω
−
︑
白
山
Z ︑
−l
包
ノ
ω︵
zk
︑
z ︶︑り︑Z
4
J
2
1
J
ノ
\
1
/
ta
︑
e
包
︑EEE
︐
z Jノ
勾
(i‑:f=j).
﹄
J
ノ
したカ古って, ラックス方程式 L = L M ‑ M L を得るためには
イ(
x) = ‑2v(x )υ
(
x),
り
(
x) = ‑y(x),
(
りα)州) ‑ y (
α)v (
β)+(ω(
α)
一 ω(
β))巾+ β)=。
26 第 1 章 木の実あつめ 古典可積分系
(1.160)
︵it i uhn i︶
唱
市
(1.162)
という三つの条件が必要となります.
問題 1.13
以上のことを確認せよ.
まず,最初の二式から u'(x) = 2v'(x)v(x )となるので,これを積分して
u(x) = v(x)2 +定数
(1.163)
という関係を得ます.また,三番目の式から u を消去すれば
α)一州))巾吋 )
β)=(ω(
' )v (
β)‑ v(α
りα)v' (
(
(1.164)
となります.ここで, u と ω の原点付近での展開を
りx) =
(
+
銑
伽
さ
+
(1.165)
1X2
(1.166)
叫x) = 会 +
を (3 = 0 で展開すると, 3 の
と仮定しましょう.実は,この展開と式( 1.164)
‑2, ‑ 1 乗の係数は消えて条件を生みませんが, F の零乗の係数が消えるため
には
1 v" (x)
i + bo
(x) = 一 一 + α
(x)
(1.167)
i + bo が気にかかりますが,方程式( 1.164)に
となることが必要です.定数 α
関数 ω は引き算で、入っていますので,この定数はなんであっても構いません.
以下簡単のために bo =一α1 としましょう.
問題 .1.14
関数 w(x )についての条件式( 1.167)を導け.
以上のことより, L = L M ‑ M L が成立するためにはり(x )が関数方程式
β)
α)v' ((3 )ーが(α)v (
v(
=;(鴇一帯)川)
(1.168)
を満たす必要があります.この解法を述べるのはやや手聞がかかりますからー
この関数方程式の
我々は量子可積分模型までたどり着かねばならないので
解を挙げることにとどめておきます.(文献[ 1 6)を参照.)結論:ポテンシャル
u(x)とり(x )を次のいずれか
1.3 カロジェロ・モーザー系 27
1
1
u(x) = τ,
り(
x) =一,
x
x
α2
α
三角関数解
u(x) = ‑‑:‑nτ一ぅ
り(
x) =−−:−一一ぅ
Slllα
z
s1 ax
α2
α
双曲線関数解 u(x) =
2
山)=一一一,
sinh αz
sinh αz
α2
α
楕円関数解
u(x) =
2(
αx, k)' v(x) = sn (
αx, k )
有理関数解
によって定め, y(x) =
(1.169)
内),的) =
L = L M 一 M L が成立します.ここでは,簡単のために式( 1.163 )の定数を零
に選びました* l).
問題 L 1 5
上の四つの例が方程式( 1.168 )を満たすことを確認せよ.ポテン
シャルが楕円関数の場 合は,公式
sn2 (x, k) + cn2 (x, k) = 1,
k2sn2 (
久 k)+dn2(x,k)=l,
(1.170)
sn (x + y, k)
sn (x, k )
叩 (
y, k)dn (y, k) + sn (y, k)cn (x, k)dn (x, k)
1 ‑ k2sn2 (x, k)sn2 (y, k)
三
sn(x,k) =的, k)dn ( 州
d
en (x, k)dn (x, k)
sn (x, k)
1
d x sn (x, k)
(1.171)
(1.172)
(1.173)
(1.174)
を用いてみよ.
補足しておきますが, 二体の相互作用が
←シハ
u(
2
(1.175)
と与えられる場合も可 積分になることが知ら れています.この場合 に可積分性
を示すためには上で紹 介したラックスの方法 をすこし拡張して取り 扱う必要が
生じますが,ここではその詳細についてはふれないでおきます.
1)
ホ
ポテンシャルが楕円関数で与えられる場合は式( 1.163 )の定数を適当に選ぶことによっ
てワイエルシュトラスのペ一関数を用いて u ( x ) = a 2 /ρ(
αx )と書かれることが多い.
2 8 第 1 章木の実あつめ
古典可積分系
1.3.4 包合の関係:みな仲良し
カロジェロ・モーザ一系がリューピルの意味で可積分であることを言うため
には,最後に,保存量 Ik が包合の関係にあること,即ち,任意のたう l に対し
て{ h,!1} = 0 を示さねばなりません.だんだん技術的な要求度が高くなって
きました.モーザーが与えた証明[ 1 1 ]も捨て難いのですが,もうすこし整備し
た形で述べます(文献[ 1 6]とその参考文献を参照).
まず,行列 L の固有値はカロジェロ・モーザー系の保存量であることを議論
.・ 1 入N とすれば,保存量は
入2 ,
しておきましょう.行列 L の固有値を入l ,
,N )
(k = 1, 2γ ・
h = trLk
(1.176)
と書くことができます. これを九について解 けば,九を h の関数
,N )
(k = 1, 2γ ・
入k =入k(li ぅh γ. . J N )
(1.177)
とみなすことができます.保存量の関数はまた保存量ですから,
(1.178)
入 N はみな保存量
入2, ...,
行列 L の固有値入 I ,
となります.
次に,九が包合の関係にあること,即ち, L の任意の二つの固有値入と μ
に対してポアソン括弧
=
}
μ
{A ,
)=
ま
ま
ー
ま
含
(
会
(1.179)
0
が成立することを証明しましょう.
2γ ・1ψN )をそれぞれ長さ 1 に規
I ,ψ
ψ
) ψ= t (
・ 1 ゆN ,
ゆ2,
ゆI,
まず,ゆ= t (
格化された固有値入, μの固有ベクトルとしましょう.すなわち,
(1.180)
L ゆ=入仇
μ
Lψ =ψ
(1.181)
う
(帥) = L<fid>i = 1,
(1.182)
ψ)=乞石川i = 1
ψ,
(
(1.183)
とします.もちろんし)はエルミート内積を意味します.
まず,固有ベクトルの性質を調べておきましょう.定義をそのまま書けば
9 L 山 一的)ゆ =入九
Pkc/>k + 日
k
1
(1.184)
l(f‑k)
k 十 日g
Pk'¢
l ニ附,
L v(xk ‑ xz )ψ
(1.185)
l(f‑k)
1.3
カロジェロ・モーザー系 2 9
となります.このことから,
H g 乞 v(xk ‑ x1)R1k = ( 入 一 例k,
仇
+
(1.186)
H g L 巾 k ‑ x1)R1m = 入 仇 一 μ
ψk ¢m
(1.187)
l(
手k)
等を導くことができます.ここで
Rk1 =仇ψ1‑¢1ψk
(1.188)
と定めました.反対称性 Rk1 = ‑ R i k に注意してください.また,もっと巧妙
な量
ψkゆ1Rk1 一ψkゆ1Rk1
(1.189)
が添字 k と l について反対称であることもわかります.
問題1
ユ6 上のことを確認せよ.
規格化された固有ベクトルゆによって入=(ゅう L ゆ)と書けることから,
…
v(
'
(1.190)
1) 附 − ¢1¢k) 似
が成立することがわかります.以上で,ポアソン括弧の計算の準備が整いました.
固有値入と μのポアソン括弧を計算しますと,
{
入
,μ
}
=H
g L(
ゆ 山 花1‑ "ifk</>kRk1) v'(xk
x1)
(1.192)
k,I
を得ることができます.ここで式(1.186)とその共役を用いると,
{
入
, μ}
=6:L
(1.193)
(恥
と変形することができます.ここで,可積分性から導かれる関係式(1.164)
を
使い,上式右辺を
去
五
(
山
−
x1 )
一 w(x1 ‑ Xm))v(xk
Xm)Rk1R1m
= 6 : L w(
… )υ(
x k ‑ X m ) 向 山1R1k)
(1.194)
k I m
と書き改めることができます.最後に,式( 1.189)及び式(1.187)とその共役
を用いて m に関する和を計算をすれば,
3 0 第 1 章木の実あつめ
古典可積分系
}
μ
,
入
{
=‑vコ L w(xk ‑
(1.195)
g
k,l
となります.ところが,右辺の和の中身は式( 1.189 )と w ( ‑ x ) = w ( x )より
添字の入れ換えに関して反対称 ですから和をとれば零になりま す.すなわち
} = 0 が示されました.以上のことをまとめて,保存量入k は包合の関係
μ
,
入
{
にあること,
{入わん}= 0
が示されました.保存量 h は固有値九で式( 1.176 )のように表されますから,
h,Il} = 0 となります.
保存量 h もみな仲良く包合の関係 {
1.3.5 運動方程式の求積: u(x) = 1/x2 の場合
カロジェロ・モーザ一系が可積分系であることを見てきました.最後に, N
粒子の場合の運動方程式の解を書き下してみましょう.リュービルの可積分性
の意味することををそのまま用いて運動方程式を積分することは難しいのです
が,ポテンシャルが u(x) = l/x2 の場合には幸いにも,射影法と呼ばれる次の
z及
2 / sin2α
ようなうまい方法が知られています[同.ポテンシャルが u(x) = α
2 / sinh2αz の場合にも同様の方法が知られていますが,それにつ
び u(x) = α
いては省略しておきます.
N 行 N 列のエルミート行列 X が自由運動の運動方程式
(1.197)
X = O
を満たしているとすると,解は時間によらないエルミート行列 A , B を用いて
X(t) = A t + B
(1.198)
と書けます.ユニタリ一行列 U でこの X を対角化して
X(t) = U(t)Q(t)U(t)‑1,
(1.199)
・ ,XN)
Q(t) = diag(x1,x2γ ・
(1.200)
と書いておきます
. x を時間で微分すると,
(1.201)
\
A = X = U L U一
ここに
L = Q + [M,Q],
M = u‑1(;
となります.ここで u u 1 + uu"‑1 = o より u"‑1 =
(1.202)
u‑iuu i となること
を用いました.もう一度時間で微分すると
0 = 尤 = u(t+ [M,LJ)u
1,
よって
L=[L,M]
(1.203)
1.3 カロジェロ・モーザ一系 31
とラックスの方程式と同じものが現れます.
実は,行列 X の固有値 X1, X2 ,
・,
・X N の運動を,ポテンシャルが有理関数
u(x) = 1/x2 の N 粒子カロジェロ・モーザ一系によって与えることができま
す.式( 1.136 )で定められるカロジェロ・モーザ一系のラックス行列 L , M は
L = L M ‑ M L を満たし,かつ,上の( 1.202)と同じ関係式
L = diag(p1,p2, ・・・,PN) + [M, Q]
(1.204)
を満たします.(計算して確認してください.)よって,カロジェロ・モーザ一
系の M から M
= u‑1!
( によって定められる U を用いれば, X = U Q u ‑ 1 は
自由運動することになります.すなわち,有理関数型のカロジェロ・モーザー
系の座標が,自由運動するエルミート行列 X の固有値引ぅ X2γ ・
,
・X N に翻訳
されました.ここで,簡単のために U(O) = E とすると, A = L(O), B = Q(O)
となるので,まとめて:
有理型ポテンシャル u(x) = 1/x2 の場合,カロジェロ・モーザー系の運動
方程式の解町 (
t),x2(t)・
・
・
, XN(t)は N × N 行列
L(O)t + Q(O)
(1.205)
の固有値で与えられる.
この公式を用いて四粒子の場合の解の例を図 1.10 にプロットしました.
運動量の保存則について補足します.図 1.9 や図 1.10 を見れば,カロジェロ・
モーザ一系における運動量保存則の特徴がわかります.保存量 Ik を用いてこ
の現象を説明することができます.簡単のために三粒子の場合を考えましょう.
粒子が十分離れて運動しているときは,ポテンシャルの効果は無視できて,ほ
とんど自由な運動とみなしてさしっかえありません.そうすると,十分過去に
遡れば
I =
h
+p
= PI,in +
r
h
+p
= PLn+
(1.206)
+
+P3,
I2 = PI,out + P§
,out 十 Plouわ
ら= Ptout +
(1.207)
+Plaut>
となります.この関係式( 1.206), (1.207)と五, I2, l3 の保存則から, pι
in と
Pi,out は三つの方程式で結ばれることがわかります.その方程式を満足するた
32
第 1 章木の実あつめー古典可積分系
x
図 1.10 四粒子の場合の例.
めには,入射粒子の漸近的運動量 { p l ,in' P2,in' P3,in }が集合として出射粒子の
Pi ,out' P2,out' P3,out }にちょうど一致しなければなりません.も
漸近的運動量 {
カロジェロ・モーザ一系に
し始め, Pl,in > P2,in > P3,in であったとすれば
おいては各粒子は他の粒子を追いこすことができませんからー衝突の度に運動
量を交換して,最終的には Pl,out = P3,in, P2,out = P2,in, P3,out = Pl,in となり
ます.解のグラフを見れば,このような保存則を具体的に確認することができ
ます.一般に, N 個の粒子の場合も同様な保存則が成立します[ 11], [13] ̲
問 題 1.17
N 粒子の場合, Pl,in >白川>・・・> P N , i n とすれば, Pl,out =
PN,in, P2,out
・ ,pN,out = Pl,in となることを示せ.
= P N ‑ 1 , i n γ・
1.4 量子可積分性へ向けて
カロジェロ・モーザ一系が量子化の後にも保存量を十分多く持つことを述べ
て,次章への橋渡しにしたいと思います.ただし,シュレディンガ一方程式を
解く方法についてはまだ議論を始めないでおきましょう.以下章末まで多少難
しいと感じる部分があっても気楽に読み進んで下さい.今後の議論へのよい動
機付けになると思います.
1.4.1 保存量の別の表現:険しい山道
この節では我々は思いのほか険しく急な山道を辿ります.さきほど議論した
ラックスの方法から続く量子化の道ですが,その良い面が失われるような少し
寂しい山道です.しかし,この方法には別の優れた点があり,それは我々を量
子可積分系まで導いてくれます.本節では, 1975 年にカロジェロ・マルキオロ・
1.4
量子可積分性へ向けて 3 3
ラニスコがみつけたこの量子化の方法を学ぶことにしましょう( 18), 四
(I,
まず,古典論において保存量の別の表現を考えます.行列 L の固有値が保存
量であることから,次のような量 J 1 , h γ ・
,
・ J N も保存量になります:
det (L 一
入E )三(一入)
N +(
一
入
) N ‑ 1 Ji +・・・+(一入)
JN‑1 + J N .
(1.208)
以下では,記述を簡単にするために,ポテンシャルが有理関数型になる場合
J
(1.209)
(均一円) 2 ‑ x;j
を考えます.三角関数型,双曲線関数型,楕円関数型のいずれの場合も考え方
は同じです.
まず二粒子の場合に計算すれば,
J1
= P1 十P2
(1.210)
ぅ
ゐ= P 1 P 2 ‑ 9 2
去
(1.211)
""12
となり,三粒子ならば
J1
= Pl + P 2 + P3,
(1.212)
ゐ= P 1 P 2 + P1P3 +
Xfa
¥ Xi:2
X
(1.213)
ノ
ゐ= P1P2P3 ‑ 9 2 (
与+与+与}
¥ Xi:2
(1.214)
Xz3 ノ
Xfa
を得ます.
問題 1.18
四粒子の場合に
2 { p3p4 . P 2 P 4
P2P3
P1P4
P1P3
P1P2 ¥
J4 ニ P1P2P3P4 ‑ g‑ \ τ一+ τ一+寸ー+三吉一十三子+三子 l
T
\ゐ
12
¥
¥ Xi2X34
XfaXz4
X13
X
4
X
+
十
..,
,
.− l
Xl:4Xz3 ノ
X24
j
X34 ノ
(1.215)
となることを確認せよ.
少数変数の場合にみを Ik で書くこと,またその逆を試せ.
カロジ、エロ達はなぜ Jk という保存量を考えたのでしょうか?その理由は,量
子論における可積分性を吟味するとき,それが正しい出発点を与えるからです.
以下,量子化の後にもみが保存量であることを調べます.
カロジ、エロ・モーザ一系の量子化を考えましょう.古典力学系を正準量子化
することは,すなわち座標と運動量との聞に正準交換関係
34
第 1 章木の実あつめー古典可積分系
(1.216)
[pi,xj] = ‑ H M i , j ,
[xi, Xj] = 0
[pi,Pj] = 0,
を与えることです.ここに, h はプランク定数です.また,量子化された系に
おいて,作用素 C の時開発展はハミルトニアン H を用いて
1
(1.217)
H
一
何
と書かれることを思い出しておきましょう.カロジェロ達は量子論におけるハ
ミルトニアンとラックスの行列を,古典論と全く同じ表式
NP + Z −−
Z
H
り
同
Z
(1.218)
Z
(i = j)
I Pi
(1.219)
L,j = <
l Aポ可
(i 手j)
一̲ l ̲ ̲一方
:
− lg )
(
、 l広4 一X k
イ
←
,
晶
Iゾ
.
(i = j)
v
M j = <仰、ア ノ
(1.220)
包
̲ ̲ L ̲寸 (i チj)
Il ‑ v ‑ 1 g(山一円
j
v
としました.そうするとラックス方程式に少し量子補正が生じて,行列 L の時
開発展が
d
1
(1.221)
[L,H] = L M ‑ M L 十九×おつり
ー
デ
=
‑ L =「
− 1n
dt
、
となります.もしくは,このおつりを打ち消すように工夫して
1
ι
d
:(L川 1kj + MkjLik ‑ MikLkj
‑dt Lij =一
L...‑1
2)
LkjMik)
(1.222)
k=l
と書くこともできます.いずれにしても,ここで古典論に対してラックス方程
式から保存量を構成するための議論は破綻してしまします.なぜなら,量子化
によって行列 L と M の要素は必ずしも可換ではなくなるからです.実際,式
(1.222 )を用いて,量子論の場合に行列 L のべき乗のトレースで保存量を構成
するのには無理があります.(確認して下さい.)したがって,保存量をみつけ
るにはもっとうまい方法を考えねばなりません.
この事態はみを用いることで解決されます.実は, Jk を定める式( 1.208)は
量子化の後もそのまま用いることができるのです.このことを議論してみましょ
う.まず,行列式 det(L 一入E )の各項は可換な物理量の積で構成されています.
(Pi1 一入)を
・
・
)・
入
(Pi2 一
)
入
何故なら,行列式 det(L 一入E )において,(Pi1 一
1.4 量子可積分性へ向けて 35
因子として持つ項は町 1 • Xi2 ,
・
・
・ ,Xi1 を含むことができないからです.よって,
量子化の際に積の順序からくる不定性は行列式 det(L 一入E )には生じません.
従って,その入に関する展開係数であるみも互いに可換な量の積の和で与え
られます.(上の例で確認してください.)一方, h の各項は必ずしも可換な作
用素の積でできてはいないので量子化の際に不定性が生じてしまいます.
古典論における保存量 Jk は量子化しでも同じ表式を持つことが示されまし
た.これが量子論における保存量をあたえるのではという期待はまさに正しい
予想です.実際,我々はハミルトニアン( 1.218 )で与えられる量子カロジェロ・
モーザー系の保存量がみで与えられるということ,即ち,
[H, Jk] = 0
(k = 1,2, ・
・
・
,N)
(1.223)
を示すことができます.以下このことについて議論します.
実は,交換関係( 1.223)全てを示す必要はなく,ただ一つの交換関係
[H,JN ]
=
。
(1.224)
が満足されたならば,その他の交換関係
[H,Jk] = 0
(k = 3, 4, ・
・
・
, N ‑ 1)
(1.225)
は次の三つの性質
N
Jk] =月九 (
N ー k + l)Jk‑1,
(1.226)
i=l
N
[Lxi,H] =河川,
(1.227)
i=l
N
l乞Pi, Jk] = [J1 刈 = 0
(1.228)
i=l
から導くことができます.この第一式( 1.226 )は[2::;':1 Xi, det(L 一入E)] =
‑V'コ1if>. det(L 一入E )
,第二式( 1.227)は直接の計算,第三式( 1.228 )はポテ
ンシャルの並進不変性から示すことができます.
問題 1.• 2 0
これを確認せよ.
ここで,ヤコビの恒等式
N
N
N
[H,[Lxi ,
み]]+[玄 Xi, [九 H J ] + [ 州H, L Xi]] = 0
包=
1
包=
1
(1.229)
i=l
と上の三式( 1.226), (1.227)
ぅ
( 1.228 )を用いれば,
[H,Jk] = 0 が[H,Jk‑1] = 0 を意味する
36
第 1 章木の実あつめ
古典可積分系
(1.230)
ことがわかります.よって,交換関係( 1.223 )は[H,JN] = 0 に帰着します.
交換関係[H,JN] = 0 について具体例で確認してみましょう.二粒子の場合
は 簡 単 で す ポ テ ン シ ャ ル が 並 進 不 変 な の で ト 十 九 左 ト o で す よって
. また
仇+ p2, J2] = o
"
"
)+
pf +必
H =三(
" 1
仲12
1
η
h
(1.231)
.,
ですから,
[H, J2] =
nr( 山2)2 一J2, J2] = 0
(1.232)
となります.
次に,三粒子の場合を見てみましょう.
+
=
…
−
ベ
=
g2
う
)
之
+
去
+
去
ベ
+
]
)
是
+
表
+
老
(
[
+去
P1P2
+g2
+g2
之
)
之
一
倍
十
去
)
之
一
去
(
(
一 九
)
之
)
ま
ー
之
(
+
2g4J=I
= 0
と
となります.なぜならば,最初の三項の括弧の中身は二粒子の場合の[H,J2 ]
同じになっているので消え,最後の長い項は少し計算すれば実際に零になって
いることが確認できるからです.
ここで,最後のやや複雑な式が零になることは計算によるのだというふうに
述べましたが,実はこれはすでに零になるべくしてなっています.この項はす
べて可換な作用素の積でできていますから, Jil頁序による不定性が生じることは
なく,古典論においてポアソン括弧を計算する場合に現れる式とまったく同じ
式になっています.しかるに,古典論の計算から零になることが示されている
のですから,量子論においてもそうなるのです.
最後に,四粒子の場合も見ておきましょう. [H,J4 ]において, go と g6 の係
数が消えていることはあきらかです.まず, g2 の係数ですが,
1.4 量子可積分性へ向けて
37
/ i EF n
η
﹄ −
﹄Ba J
十 4n6
Ep
A
p
q EEEa
\ a
L
1
1
−
−
咽
︐
1 ﹃
一
品
E
E
E
B
E
E
−
E
+
﹂
﹁
t
i
t
﹁ \
I
l
l
i
−
1
−
一
p azAp aq 212 AD oqp 4
L 命
i
−
−
噌
(1.234)
−
E
t
E
J
/
という項を出発点として変数を順次とりかえてできる計六項からなる対称式に
なります.もちろんこれも二粒子と同じ理由で零になっています.次に, g4 の
係数は
(1.235)
‑ [之, p1p2
を対称化して得られます.第一項はやはり零になっていて,第二項の交換子
2日
n(( え + 芝 ) − ( 三 + 孝 ) ) 之
(1.236)
を対称化したものを計算すれば零であることが確認できます.もちろん計算を
やり直す必要はなく,先程とおなじ理由で,各項が可換な作用素のみを含むこ
とと古典論における保存量の計算から導かれることです.
さて,粒子数一般の場合にどのように議論できるか考えましょう.そのため
に,次の公式が役に立ちます[20).
公式 :L21
I
,. T 「
θθl
…
detL = J N = exp I ‑a.. ちーデ一一一一ー l 'IJ1 'IJ? • • • 'DN
"
"
\
"
'
会 jXむθ'Pi θ'Pi j r
riv・
(1.237)
この証明は省略します.これを用いて,最初の二つの変数 X1, X2,P1,P2 に着目
すると,
(
,. 1 ¥
J N = Ai2 ( P1P2 ‑ g"‑::2 I+ B1P1 + B2P2 + C12
¥
X12 ノ
(1.238)
と書けます.ここに, A 山 B1, B2, C12 は P1,P2 も ま も 含 ま な 川 う な も の
です.そうすれば [
H , J N]
において,非可換な作用素が同居する A12 に比例す
る項は二粒子の場合の計算同様に零となり,可換な作用素の積のみからなる項
の和
[ H,州= 2月九( B 2 ‑ B 1 )之+対称化
(1.239)
が残ります.これは古典論において零になっているので量子論においてもそう
なります.
もう少し準備すれば量子論における保存量の可換性 [
Jk, Jt] = 0 を吟味する
ことも可能ですが,ここではこれ以上進まずにおきましょう.この節のはじめ
に,この方法のことを寂しい道と形容しましたが,それは保存則 [
H,Jk] = 0
の吟味が古典論におけるラックスの方法からはかなり離れているという意味で
38 第 1 章木の実あつめー古典可積分系
あって,ここで考えたように必ずしもラックス形式にこだわる必要はありませ
ん.実際,この節のやり方は量子カロジェロ・モーザー模型のクラスに対して
一般的に応用できる強力な方法です.
1.4.2 量子論におけるラックス形式:別の道
前節の方法は,ラックス形式の利点を完全に生かしたものではありませんで
した.では,量子論の場合,古典可積分系のラックス形式に良く似た保存量の
取り扱い方はないのでしょうか?実は,ほんの少し発想を転換すればそれを見
つけることができます.この方法は 1993 年に宇治野・和達・樋上によって発見
されました(211.
量子論におけるハミルトニアンのポテンシャル項は九による量子補正を受け
たもの,
N
•
Lu(xi
H =
(1.240)
)
町
iくj
i=l
また, ラックスの行列を古典論と同じ表式
(i = j)
/
L
1
1
J
一一 ︐
︑
t
l︑
約
一
日 uz
r yCig L
M,j =
(1.241)
(i =F j)
z
w(xi ‑ X k )
(i = j)
(1.242)
予針)
k(
(i 手j)
均一円)
y C i g y(
とおいてみます.ここに,関数 u,v,w,y は 1.3.3 節で求められた,有理関数,
三角関数,双曲線開数,楕円関数解のいずれかとします.そうするとうまく
1
d
‑ L =づ弓ァ[L,H] = L M
、−1n
dt
(1.243)
M L
, まとまることがわかります.
と
問 題 1.22
性質 w'(x) = u'(x )を確認せよ. これを用いて上のことを示せ.
さて,式( 1.243 )を用いて保存量の構成にとりかかりましょう.量子論では,
L の成分と M の成分は必ずしも可換ではありませんから, trLk が保存量にな
ると結論することはできません.なぜならトレースに関する性質 trAB = trBA
が成立するためには,行列 A , B の成分が可換でなければならないからです.し
かしながら,幸いにも行列 M についてのうまい性質
1.4
量子可積分性へ向けて 3 9
N
N
k=l
k=l
L Mゅ =L:Mυ =0
(i=l,2,・・・,N)
(1.244)
つまり,任意の一行あるいは一列について総和すれば零になる性質が我々を救っ
てくれます.
結論から述べますと次のようになります:
ハミルトニアン( 1.240 )で定められる量子力学的カロジェロ・モーザ一系に
おいて,式( 1.241 )で与えられる行列 L のべき乗の成分の総和が保存量
N
九
=
玄 (Lk)i,j
(1.245)
を与える.すなわち,
[H,Ik] = 0
7
(1.246)
:
誠 む れ一
一 一
一 一 一−
ま
M
ず
こM 地 明 みれ 川
−
ジ
ル
シV d K
κ
ぜ
﹄
一L = れ M L
説
な
法 す−
ま
τ
J
(1.247)
左辺
= L L k 1 + LLLk‑2 +・・・+ Lk 2 L L + Lk‑l t
(1.248)
= ( L M 一M L ) L k 1 + L ( L M ‑ ML)Lk‑2 +・・・+ Lk 1 ( L M ‑ M L )
= L k M 一M L k =右辺
となるからです.よって,行列 M についての性質( 1.244)より
‑
工Ik =
dt
N
̲ ̲ ̲ : ̲ [ ) , (Lk )
ゅ
HJ
N
Z
M
A n
l
一
刊
︒
M
(1.249)
体
となります.
後は,保存量 Ik が互いに可換であること
。
=
[h,Iz]
(1.250)
を示せば,古典可積分系と同じ状況になりますが,少し考えるとこれはなかな
か手ごわい問題であることに気がつくでしょう.古典論の場合にも,保存量が
包合の関係にあることの証明はかなり準備のいることでした.ポテンシャルが
40 第 1 章木の実あつめ 古典可積分系
u(x) = 1/x2 の場合のカロジェロ・モーザー模型については,ラックス形式の
量子類似に則って保存量の可換性を議論することが研究されています.しかし,
他の場合についてはまだ解決されていないようです.
1.5 まとめ
本章では,量子可積分系への入り口としてカロジェロ・モーザー模型という古
典可積分系を導入し,古典可積分性および運動方程式の求積法について議論し
て来ました.また,カロジ、エロ・モーザ一系の量子化と保存量の構成について二
つの方法を紹介しました.しかし,我々は量子論において保存量が互いに可換
であることをまだ示していませんし,シュレディンガ一方程式の解法について
も考えなければなりません.これらを解決するためにも,いったんここで章を
zの
2 / sin2α
改めたいと思います.次章では,とりわけ親しみゃすい u(x) =α
量子カロジェロ・モーザ一系について波動関数の性質を中心に議論します.こ
れはカロジェロ・サザランド模型と呼ばれる模型で,量子可積分系の中で最も
研究が進められているものの一つです.第 3 章では,カロジェロ・サザランド
模型の量子可積分性を一本章で議論した二つの方法を用いるのではなく一一
段高い立場から捉えてみます.
1.5
まとめ 4 1
演習問題
1.1
いろいろなポテンシャルに対して一自由度の運動方程式を積分せよ.
1.2 可積分ではない力学系の例を見つけられるか?
1.3
オイラーのコマ,ラグランジュのコ マ,そしてコワレフスカヤのコマに ついて
調べよ.
1.4
カロジェロ・モーザ一系は一次元の 可積分系だが,高次元の可積分系は 存在す
るだろうか?
1.5 戸田格子とカロジェロ・モーザー系の関係を調べよ.
1.6 太陽と水星の距離を 4 とするとき,その他の惑星軌道半径の近似値を 4 + 3 X 2n
と与えるボーデの法則
太陽
水星
金星
地球
火星
小惑星
木星
土屋
4
7
10
16
28
52
100
はニュートン力学でうまく説明されるだろうか?
1.7 木星の大赤斑はなぜ、安定なのだろうか?
。
。
@
.
.
.
.
。 ..
.
.
.
.
・
.
−・
.
.
ー
.
ー
・
.
.
.
...−
−
一
.
−
.
.
一−
−−
・・
.ー
e
鍾事診
図 1.11
42
第 1章
木の実あつめー古典可積分系
我々の太陽系.
第 2 章
川遊び −量子 可積分 系
私達はあたたかい太陽の恵みによって楽しく暮らすことができます.また,エ
レクトロニクス技術の発達は生活をたいへん豊かにしてくれました.こういう
ことに感謝をしたいと思います.量子力学を考えるとき,我々がまず念頭にお
くのは電子や光子のことです.身のまわりのどこにでも存在する電子がどのよ
うな振る舞いをするのか,光がどのように吸収放出されるのか等を知りたくて
量子力学を研究します.そこには,金属や半導体の電気伝導や,鉄やニッケル
等の磁性のことに興味を持った人々がたどった確かな足跡があります.もちろ
ん,陽子,中性子,湯川の中間子等他の微視的な粒子も全て量子力学に従って
運動していますが,それらは,もっとエネルギーの高い領域での興味深い物理
学となります.
現実の世界は相互作用する量子力学系ですが,相互作用のある系の量子力学
を厳密に扱うことは難しい問題です.それで,近似的な手法を使いますが,う
まく本質をとらえた場合にはその物理現象をみごとに説明することができます.
一方,相互作用が強い場合には摂動展開によっては決して捕らえられないよう
な非摂動的な効果があるので,違う方法を考える必要があります.とはいえ,現
在の我々の技術では,相互作用を非摂動的に取り扱おうとしても,よほどうま
い状況でなければ手も足も出ないというのが実情です.まず厳密に解けるよう
な「おもちゃの模型」に対して非摂動的な取り扱いを研究するということが今
の我々にとって最初の一歩となります.
私たちは第 l 章において,カロジェロ・モーザ一系という可積分な古典力学
系から量子可積分系へたどり着くための道を歩き,十分多くの保存量を持つ量
子力学の系に至りました.しかし,保存量の存在は,シュレディンガ一方程式
を解く上においてどういう役割をはたすのでしょうか?古典力学における可積
分性と比較すると,残念ながら我々は量子力学の可積分性についてまだ多くを
長日っているわけで、はありません.そういう揮沌とした状況ですが,幸運に恵ま
れて,厳密に解くことができる模型が存在します.この章では,その代表例で
あるカロジェロ・サザランド模型をとりあげます.
2.1 量子力学の基礎事項
カロジェロ・サザランド模型を考える前に,調和振動子と自由電子の量子力
学を取り上げてウォーミングアップしましょう.
2.1.1 調和振動子の量子化
調和振動子の量子化には,量子力学の基本を見ることができます.そこには,
ガウス分布関数 e d やエルミート多項式と呼ばれる直交多項式 H n ( x )
が登場
します.
調和振動子のハミルトニアンは
1 " k 。
H = ‑ p"
'十 「
2m
2
(2.1)
です.正準交換関係
,
』q]
三 pq
仰
=− R
n , 仇 p] = [q, q] = 0,
(2.2)
ここに,九= 1.054 × 1 0 ‑ 3 4 J. s はプランク定数を 2πで割ったもの
を満たす運動量演算子 p は座標表示において
(2.3)
と微分演算子で表示されます.ハミルトニアン( 2.1 )において運動量を( 2.3 )式
のように微分演算子に置き換えることが量子化と呼ばれる操作です.量子化さ
れたハミルトニアンの固有値が観測されるエネルギーのスペクトルを与えます.
座標表示では,系のとりうるエネルギー値 E を求める問題,すなわちハミル
トニアン H の固有値問題は,シュレディンガー方程式
(川三手+
Hψ
(
= E ψq)
(2.4)
と書くことができます. ψ(
q )は波動関数と呼ばれます.星の運動から剛体の運
動の様子まで余すところなく記述するニュートンの運動方程式は,光子や電子
などの活躍するミクロの世界では国王の座をシュレディンガ一方程式に譲るこ
とになります[ 2 2[
卜2 4 ] .
調和振動子のエネルギー固有状態を求めるためのうまいトリックがあります.
生成・消滅演算子を用いる方法です.これは,昇降演算子法と呼ばれることも
あります.以下では簡単のため単位をとりなおして,質量: m = l ,パネ定数:
k = l ,また,プランク定数: 1i = 1 としましょう.つまり, H = む2 +
44
第 2 章川遊びー量子可積分系
‑ A となります. ここで,生成・消滅演算子 d ,αを
[p,qJ =
(2.5)
α
)
五
(+
方
=
)
何
方 (q +
=
(2.6)
q
と定めますと,これらは交換関係
[ 山 仰 )
I
を満たすことがわかります.交換関係が定数で与えられるこのような代数はハ
イゼンベルグ代数と呼ばれます.簡単な代数ですが,なかなか奥が深いもので
す.相互作用を持つ系のハミルトニアンを生成・消滅演算子で表現する方法で
ある第二量子化は,摂動計算のための重要な出発点です.また,量子可積分模
型のうちいくつかはーその非線形性にもかかわらず一生成・消滅演算子によ
る表示を持ち,それによって厳密な結果を得ることができます.
調和振動子のハミルトニアンを α,α↑を用いて表せば
=α↑α十
H
ノキ す
と書 +
L
A
F
j
(2.8)
まず,ハミルトニアンの基底状態を求めましょう.基底状態 IO)
(2.9)
H I D ) = EolO)
t
E
A
*︶
士l レ ︑
そうすれば,
円
存在ー
たシ
守
カ
−
v ふ ノ 一−
︸
︑
レ
レ
一
一
一
一
− 一
一
一
−
﹁
一
A
F
I
l
l
αIO)= 0
−
一
−一
(2.10)
−
でなければならないことがわかります.このような論法も量子力学によくみら
れる重要な事柄ですので,労力をいとわずに,思い出すことにしましょう.
、
,
,
ー
、
IO)へのハミルトニアンの作用をみてやると
こで,状態 α
IO)
Hα
︵qA −ai︶
噌
E
−ム
となり, もし αIO)= 0 でなければそれはエネルギー固有値 E o ‑ 1 の固有状態
*1)
以下,必要に応じて状態ベクトルに対するデイラックのブラ・ケット表示を使うことに
O)に対する波動関数が,位置演算子の固
します.デイラックの記法に従うと,基底状態 I
o(q) = (qlO )と表現されます.
有状態 lq )との内積を用いて ψ
2.1 量子力学の基礎事項 4 5
となり, IO)が基底状態であることに反することになります.よって αIO)= 0
でなくてはなりません.ハミルトニアンは式(2.8)で与えられますから,基底
状態のエネルギーは Eo =
励起状態は基底状態 IO)に生成演算子 α↑をたくさん掛けることによってっく
り出されます.実際,
H ( a)
↑nlO) =
(n+
(2.12)
となります.ポテンシャルに束縛された粒子に対して離散的なエネルギースペ
クトルが得られることが量子力学の特徴ですが,調和振動子においては,それ
が行儀よく
En=n +
(n = 川 , 3ぅ ) 仰 )
と等間隔になっています.また,内積を 1 に規格化するために固有状態(α
trio)
を 1/ゾ可で、割っておくのが便利です.ここに励起状態の性質をまとめておきま
しょう:
1
川三 J U
町r︒ Jf M門
一
仰︐ 叫 川
日
U
(nl = よ ( 帆
(2.14)
Vn!
(2.15)
−
叫
(2.16)
問題 2/1. 交換関係( 2.7)を用いて α(
α↑
r10) = n (
α↑
r‑110)を示せ.これを
用いて上の性質を確認せよ.
2.1.2 波動関数:エルミー卜多項式
座標表示に移って,エネルギー固有状態の波動関数を求めてみましょう.ま
。
ず,基底状態の波動関数(qlO)
三 ψ(
q )は,消滅演算子に関する性質
a'l/Jo(q
(2.17)
を満たさねばなりません.この微分方程式
。
ψb(q) = ‑ qψ(
q)
(2.18)
を変数分離して解けば基底状態の波動関数
ψo(q) =π一1/4eー
さq2
(2.19)
を得ることができます.ここで,規格化の定数 π−
1/4 は次のような意味で選ん
であります.基底状態においては,粒子の存在確率密度,すなわち,波動関数
の絶対値の二乗がガウス分布
46
第 2 章川遊びー量子可積分 系
|州)12
表
=
(2.20)
Eイ
になります.これを q の全範囲について積分すれば 1 になり,この規格化の下
では座標軸上のどこかにはかならずーっ粒子を見つけられることを意味します.
n(q )を調べてみましょう.基底状態に生成演算子を
次に励起状態(qjn)三 ψ
次々と作用させてみますと,
q2'
i(q) = ate‑!q2 = h q e を
1/4ψ
π
t2 e !q2 = (2q2 ‑ l)e‑!q2
2(q) =α
l/4v0,ψ
π
う
訂ψ3(q) =α↑3e‑!q2 = q(2q2 ‑ 3)e‑!q2'
1/4 ゾ
π
(2.21)
ド1
J・
ア れふ
乞 一般l U v
﹂
一 一 一 一一
等と 喜 けます
−で 一 一一一
て
−
一
−一
−
一
定 議 弘2
刊布川
(2.22)
↑の定義から, Hn(q )は q の η 次多項式
と Hn(q)を定めるとき,生成演算子 α
であることがわかります.この多項式 Hn(q )が満たす直交関係式を調べましょ
う.恒等演算子
1 =
柚
州
1二
(2.23)
lη)= bm,n に差し込めば
を,波動関数の直交性(m
加納 =
1二
=1二
dq 雨
=おか
)
問
e‑q2 Hm(q)Hn(q) = 8m,n
という関係を得ることができます.よって,式( 2.22 )によって定められる多項
式 Hn(q)を直交多項式と解釈することができます.この直交多項式 Hn(q)は
エルミート多項式と呼ばれます.
直交多項式としてのエルミート多項式の性質を整理しておきましょう:
命題 2.3
エルミート多項式 Hn(x )は z の η 次多項式で,直交性
二e‑x2 H 州 H 州 = bn,m J1f2nn!
j白
(2.25)
を持つものとして一意的に定められる.ただし, Hn(x)の最高次の係数は
正とする.
2.1 量子力学の基礎事項 4 7
ここに,エルミート多項式の重み関数 e ‑ x 2 は基底状態、の波動関数の二乗に由
来することに注意しておきます.この命題は,グラム・シュミットの直交化法
を用いて証明することができます.このように,波動関数を直交性によって特
徴付けるという考え方は後々重要な役割をはたします.
問題 2.4
ガウス分布に関する積分
f。
o 1 2 n x2
(2n ‑ 1)(2n ‑ 3 )
・
・
・ 3 ・ly'7f
I α z x e‑
=
I
2n
J ‑ 0 0
(2.26)
を求めよ.また,これと直交性を用いて一つまり式( 2.22 )を用いないでーエ
ルミート多項式 Hn(x)を計算せよ.その結果と,式( 2.22 )を用いて求めたも
のが一致することを確認せよ.
励起状態の波動関数の規格化定数には三つの要素 η,
! ..;
否
, 2n が含まれてい
ます.これらの由来を切り離すことはもちろんできませんが,直感的には次の
ように考えておいてもよいでしょう.
生成消滅演算子の
基底状態からの寄与
交換関係から
(ガウス積分)
η!
J石
エルミート多項式から
2n
後で,カロジェロ・サザランド模型の波動関数について内積を調べますが,そ
れもやはり三つの要素から成り立っています.
調和振動子のエネルギー固有状態の波動関数についてまとめておきます:
ψn(q) = ‑r==7与=
=
; Hn(q)e き
q2
ν
7rよ&乙 '71 !
2.1.3
(2.27)
口ドリゲスの公式とエルミー卜多項式の母関数
前節では,生成演算子を用いてエルミート多項式 Hn(q)を定め,その直交多
項式としての性質を議論しました.この節では,式( 2.22 )を少し簡易化するこ
とでエルミート多項式を表示するロドリゲスの公式を導き,それを用いてエル
ミート多項式の母関数を調べます.
エルミート多項式は次のような明示的公式を持ちます:
命題 2.5
エルミート多項式 Hn(q )はロドリゲスの公式
ノ,、 n
Hn(q) = (‑l)neq2 \
会 e‑q
)
によって表示される.
48
第 2 章川遊びー量子可積分系
(2.28)
実際,微分作用素 d/dq と生成演算子 d を結ぶ式
=
dq
:̲
£
(
¥
:̲ ‑ q = ‑../2α↑
)= £
dq
)
qe
dq
(2.29)
を用いれば,定義式( 2.22 )を用いて
トげ
=
(2.30)
= Hn(q)
=
となることを確認できます.
このエルミート多項式の母関数については興味深いことがたくさんあります.
まず公式をながめてみましょう.
2 6 エルミート多項式は母関数
公式
占
山
2
ニ
f;fi
(2.31)
帥)
を持つ.また,それの二変数の類似
n
c
。
Z
2 ..−−「
(2.32)
ム − ' n = O 2nn!
ヨ
VIτ
‑
v
も成立する.
ロドリゲスの公式を用いてこれらを証明することができます.まず,テイラー
展開可能な任意の関数 f(x )に対して,
)
♂十 α
ε 岩 f(x) = f (
α
(2.33)
となることを思い出しておいて下さい.これを用いれば,
主
fiHn(x)
主if(一
=
巴
=εx2e一U 去
2
(2.34)
Z
= e x 2 ー (x一宮) 2 = e2xy‑y2
となり,式( 2.31 )が示されました.
次に式(2.32 )を考えましょう.まず,右辺は
e ん
2
乞 f;;iHn(x削 y) = e出 〆 イ
二
) 2 e差是希 e‑y2
藷
x+き
e一(
(2.35)
) 2 e̲Y2
昔
= e一(x+き
二
) 2 e̲Y2
希
(
e‑x2 e M 希ε 手
2.1 量子力学の基礎事項 4 9
となります.ここでは,式( 2.33 )を用いて微分演算子をどんどん右へ持って
いって一番右まで行ったら零に置くという操作を繰り返しました.よって,式
(2.32 )の両辺に e x 2 e x z 藷を左から掛けたもの
e‑4 (岩)九−y 2
vl‑z'..l
(2.36)
が示されればよいことになります.まず,テイラー展開の公式
与 i
ぶ
(1 ‑ z 2 )一
弓ー=、
、
n!(2n + 2k)!
白 4k(n + k)!(2n)!k!
2k
(2.37)
を用いれば,式(2.36)の左辺は
子 一
(
左辺 一
1
1
ry2n
ー 十
, 一 一
(2.38)
Jfて三宮店。 η !(1 ‑ z 2 ) n
=主主(川
となります.一方,式( 2.36 )の右辺を計算すれば
右 辺 = 主 主 げ 古z2k (
fu
r k
2k
(2.39)
=i三;(一r d円三)!日川内
2 n =左辺
となりますから,これで式( 2.32 )の証明は完了しました.
2.1.4 相関関数
波動関数を書いただけでは興味のある物理量を知ることはできません.相関
関数をいろいろ計算してようやく物理現象を理解できるようになります.実は,
波動関数の性質をうまく用いて相関関数の計算を達成することができます.そ
のために,波動関数の母関数を用いることはうまいやり方の一つです.
エルミート多項式の母関数を用いた議論でもっとも有名なものは,ガウス分
布で与えられる波束の時開発展に関するものでしょう.時刻 t = O での波束を,
基底状態の波動関数を αだけ平行移動したもの
ψ(q, t = 0) =πl / 4 e ‑ ( q 口
) /2
2
(2.40)
としましょう.この波動関数のエネルギー固有状態での展開は,母関数( 2.31)
で x = q,y =α/2 とおいたものを用いて
ψ(
υ =0) =
予
て
ι
=a v
50
第 2 章川遊びー量子可積分系
弓e一 白2
乙
, Tl !
&
(2.41)
と求めることができます.時刻 t での波動関数は,もう一度母関数を用いるこ
とで
q,O)
(
q, t) = e‑v'寸 前ψ
ψ(
。
。
=π一1/4
= 7r 1/4ε (q
一臼
一
一
cost)2/2
2 t + 4白 qsin t一 白 2 sin 2t)/ 4
(
F τ
となります.よって,時刻 t における存在確率密度は
q, t)l2
ψ(
|
去
=
但
e (q‑acosげ
となり,存在確率密度が最大値をとる点 q ニ αc o日t は,古典論から得られるも
のと同じ振動数で単振動することがわかります.ここまで計算がうまくいくの
は奇跡的でさえあります.
問題 2.7
上の計算を確認せよ.
母関数が役に立つもう一つの例として,プロパゲーター K(q', t'; q, t)を求め
てみましょう.これも,母関数の公式(2.32 )を用いれば
K ( q, t'; q, t)
イ le 一♂I H (ピ− t) lq)
(
三
(nlq)
I)
t)η
=乞(イ le 一 日H (ピ−
(2.44)
n
去
=
e一 山2;2 一何(
雨 万 州γ−t)
p
( 日t) 糾
'n(t' ‑
q2 ) 叫 ん ) ‑ 2q'
q))
と計算できます.
問題 2.8 状態 In)における存在確率密度は, 演算子 lq) (qi の行列要素
q, t) =
ψn(q )と表すことができる.密度演算子を ρ(
n(q)
lq)(qln) = ψ
η
(
q, t)JO)を計
'ρ(
q', t)
ev'コHtlq)(ql 巴ーゾゴH t と定めるとき,密度相関関数(OIρ(
算せよ.
2.1.5
円周上の自由電子:めだか
相互作用を持つ多粒子系を考える前に,まず円周上の自由電子の運動を考え
ましょう.簡単のためスピンの自由度は考えに入れないでおきます.
自由電子の運動量とハミルトニアンは
2.1
量子力学の基礎事項目
P=‑H8 元
N
H 一 1
A
(2.45)
すθ2
(2 必
)
一一
一一2 台付?
です.これらの電子は周長 L の円周上に並んで、いるとします.この問題は,相
互作用がないので一体の問題に帰着されます.まず一体の作用素
f
‑
v
θ
→
ム
(2.47)
θ仇
1 θ2
2 8qf
H i =一 一 「
(2.48)
の対角化を行います.粒子数 N の偶奇によって,波動関数の境界条件を ψ
(
q+
L) = 一
()
N ψ
1(
q )のように調節しておきましょう.そうすれば,一体の波動
関数を
同
=
(
写
)
与
( 川,
(2.50)
こ こ に , ぃ 戸 手 qi'
(2.51)
r
=
E〆
ま
品
た K
(2.49)
ム
N カ奇数の場ロ
ム
ε︑ z + 士
− N カ偶数の場ロ
E
E
J
B
E
E
︑z
・
(2.52)
Z
と求めることができます.古典論のエネルギー志p2 と同様,エネルギーは波
数の二乗がに比例しますが,境界条件のために離散的な値のみが許されます.
一粒子の波動関数の直交性を確認しておきましょう:
k
図 2.1
52
第 2 章川遊びー量子可積分系
ー電子のエネルギースペクトル.
(2.53)
Jk,k
2.1.6 N 電子の波動関数:めだかの学校
N 電子の波動関数を考えましょう.電子はフェルミ統計に従う粒子ですから,
パウリの排他律により一つの一粒子状態に二つ以上の電子を詰められません.
また,同種粒子は区別できませんから,波数を入れ換えても同じ状態になりま
す.よって,次のように順序付けられた波数
ki > k2 >
・
・
・ > kN,
(2.54)
で全ての N 粒子状態を数え上げることができます.粒子の入れ換えに関する反
対称性を考えれば,波数 k = (k1, k2 ,
.・
・ ,kN )を持つ波動関数は,スレータ一
行列式と呼ばれる次の式
kN
ki
Xl
X1
k2
X 2
ψk(q1 ,・・. , q N ) = ..j苅
ki
X N
k2
X N
(2.55)
x';;
によって表すことができます.この波動関数 ψ
k(q1 γ. . ' q N )
は,正しい統計性
ψk(q1, ... 'qi ,・・. 'qj, ... ' q N ) = −
ψk(q1, .. ぅqj ぅ・・・うのう・・・ ,q N ) (2.56)
を持ち,運動量とエネルギーの固有値は
九
=
(
¥
)
む
Pψk = p k ψk,
(2.57)
t,kz
Hψk = E kψk,
(2.58)
ぅ
で与えられます.
例として,最もエネルギーの低い状態を考えてみましょう.エネルギーの低
い状態を得るには,各んをできるだけ小さくなるように,しかも条件( 2.54)
を満たすようにせねばなりません.その結果,原点対称になるようにすき間な
くきっちり詰めた状態,
k1
N ‑ 1
N
3
N ‑ 5
k 3 = 2一 γ ・
" kN =
N ‑ 1
(2.59)
すなわち,
2.1
量子力学の基礎事項
53
k;4 二一N一一
+l
•
2一一− i
(2.60)
が最低エネルギーの状態となります.(なぜそれでよいか考えて下さい.)
一般に,波数んを表すためには分数を用いる必要がありますが,各んの基底
状態の波数( 2.60 )からのずれは必ず整数になりますから,それを用いて記述す
るのが便利です.条件(2.54 )を満たす波数 k = (k1,k2,・・・,kN )を整数のパラ
入2 ,
.・ 1 入N )
メーターで表現するために,整数 l と非負整数の非増加列入=(入 I ,
lε
z,
入1 と入2 三・・・と入N ー 1 :
:
:
:
:
入N
ニ
0,
(2.61)
を用意します.そうすれば,式
ん= ki(l
,ぃ
(2.62)
によって全ての固有状態を,もれなくしかも重複なくパラメトライズすること
ができます.ここで,各ん +z は,最低エネルギーの状態 ki = 平 − i を基準
にして,各波数んがどれだけずM
いるかを表します.特に, l は ん が 一 与l
からどれだけずれたかを表現します.次節において,イメージしやすい模式的
な表現を用いてこの波数の記述法について説明します.
ここで,次のようなことに注意しておきます.整数 l を走らせるとき状態を
二重に勘定しないように,条件( 2.61 )において入N = 0 としてあります.一方,
h
と−与よを満たす特定の励起状態の集合を考える場合,すなわち,整数 l
を l と 0 の範囲に限って考えるならば, l を入に吸い込んでおいて,
l = 0,
入1 :
:
:
:
:
入2 三・・・と入N 三 0,
(2.63)
とパラメトライズしなおすとより便利です.この場合は,
(N + 1
¥
ki = ki (
入)=ん+ト
−
γ i)
(2.64)
と書きましょう.
組(
l,入)(もしくは入)によってパラメトライズされた波数 k =
(んうんい・ • ,kN)
を k(l ,入)(もしくは k (
入))と記し,その波数をもっ状態のエネルギー固有値を
Ek(!,>.) (もしくは E k (
入))と書くことにします.
2.1.7 パーティション可ヤング図形:めだかのお遊技
前節で,自由電子系の波動関数を記述するために用意した非負整数の非増加
入2,
.・ 1 入N )はパーティションもしくは分割と呼ばれます.ここで,
列入= (.X1 ,
パーティションを扱うために便利な記法をいくつか用意しておきましょう.パー
5 4 第 2 章川遊ぴー量子可積分系
ティション入に対ーして,
(2.65)
|入|=乞入z
と書きます.パーティション入に対して,入包が零でない t の総数を£(入)と書
いて入の長さと呼びます.また,入に対して,
入3 ニ t となる j の数)
m i = (
(2.66)
と定めるとき,
)
・
・
入= (lm12m2 ・
(2.67)
という記法が便利な場合があります.こういう書き方も許しておきましょう.例
えば,
入= (3,3,2,2,2,1) = (12332) = (32231)
(2.68)
ここで,最後のように入れ替えて書いても同じパーティションを意味すること
にします.
入2γ ・・)に対して箱をならべたものを対応させるこ
パーテイション入=(入l ,
とができます.並べ方は,第 i 行には箱をん個ならべて,各行の左端をそろえ
ておきます.例えば,
入= (5,3,3,2,1,1) = (5 32 212) =
|I= 15
入
(2.69)
)= 6
入
(
£
等となります.このやりかたは非増加な非負整数列を表現する印象的な方法で
す.このような図形はヤング図形と呼ばれます.
それでは,図形的な表示を用いて電子の波動関数を調べてみましょう.基底
状態で、はフェルミ波数 kp =与で定まるフェルミ面まできっちり電子が詰
まった状態
」1
ル= N ャ
一
(2.70)
一
2
で与えられました.例として, N = 5 の場合に基底状態の波数を模式的に書け
ば,仲良く寄り添って泳ぐめだか達のように
‑kp
kp
(2.71)
となります.ここに,黒丸は電子がいる状態,白丸は空の状態を示します.式
2.1 量子力学の基礎事項 5 5
(2.63)を用いて表される励起状態の例を用いて,模式図とヤング図形の対応を
確認しておきましょう山.元気に遊び回るめだかの姿を思い浮かべて下さい.
‑kF
kF
仁
口
kF
(2.72)
・・ ・
kF
・・・O O O O O e e o
0 0 0 0 ・
.
.
」
(
・
・
・
・
・伊
‑kF
・
・0 0 0 0 0
O
kF
C
0
0
2.74)
0 ・
.
.
このように,右から数えて i 番目の電子はヤング図形の z行目のますの数に応
じて右に移動します.特に,図( 2.73)はー電子・一正孔の励起状態を表してい
ます.一般に,かぎ型のヤング図形
入=(η1 m ) =
(2.75)
は一電子・一正孔の励起状態に対応します.
2.1.8
シューア対称多項式
。はファンデルモ
波動関数を調べてみましょう.まず,基底状態の波動関数 ψ
ンド行列式* 3 )で書けるため
ψ
o ‑ ..f1NI.
・
)
与I
N
II x,
1
,
N
Xl
2
X O
N
2
X O
X2
1
2
(2. 76)
i
N
X N
1
N 2
X N
XO
N
同様な図形が,あるゲームに関連して佐藤幹夫によって導入され( 1968 年),マヤ図形
と呼ばれました.
*3) この公式は,ヨーロッパにおける発見よりずっと以前, 1690 年に発行された井関知辰
の「算法発揮j に記載されています.また,ファンデルモンド行列式という名前は 1772
年のファンデルモンドの論文等にちなんでコーシーによって与えられましたが,ヨーロッ
パで実際に発見されたのはどうもファンデルモンド以降のようです.(デユドネ「数学史
1700 1900 IJ (岩波書店, 1985 )の 65 ページ参照. ) 18 世紀は様々な行列式の公式が発
見された時代でした.
*2)
56
第 2 章川遊びー量子可積分系
と差積で書くことができます.次に,励起状態を与えるスレーター行列式
/
品
川ふ
品
γ
\
7
1
I
E
t
ー
t
i
一
−
z
s
−
川 −
/
\
入
N
︒
1
q
z︑
ム十N L
z
+
N
a
z 1N
λ
z2
A
古
勺
2
H
一一
︑
八
入+
N
Z1
+
N
入
中
川
a
(2. 77)
包
x 入1 + N ー 1
N
市
入N
.,,N
.,,N
についてすこし工夫しておきたいと思います.パーテイシヨン入と
o= ( N ‑
1, N ‑ 2, ・
・
・
, 1, 0 )に対して,行列式
|
三
x λ1 + N
1
λ1 + N
X2
1
x入
2+N‑2
1
日
Eλ N
1
x λ2 + N 2
2
x λN
2
Z入
2 + N 2
N
N
Z入
N
向+入 (
x)
Z入
1十 N
N
1
1
(2. 78)
は叫についての完全反対称な多項式ですから,差積向 (
x) = rri<j (
山
町)
できっかり割り切れ,その商は対称多項式となります.また,それがい|次の
斉次対称、多項式であることは明らかです.それによって対称多項式むを次のよ
うに定義しましょう:
定 義 2:9
対称多項式 S 入(
x )を
︑
Z
中
山
一
ι一五T 入
一 α
一
一1
I
Q
U A
(2.79)
一
一
α 件1
u
Z 入1 + N ー 1
1
..v1
x 入1 + N
X 入2 + N
2
1
・
7
2
..v1
1
x 入N
2
2
rri くj ( x i 一町)
x 入1 + N ‑ l
N
品
入
2+N‑2
'
"
'N
亀
・
・
・
市
入
N
'
山
N
の割算を実行して得られる斉次|入|次対称多項式
と定める.
この対称多項式 S 入はシューア対称多項式と呼ばれます[2 5 ]
〜
[28J. ただし,変数の
数より長いパーテイション f (
入
) > N に 対 し て は ね = 0 と約束します. N = 3
の場合,定義に従って計算すれば
+ X2 十X3
S(12)(X1, X 2 , X 3 ) = X 1 X 2 + X 1 X 3 + X 2 X 3
S(21)(X1,X2,X3) = (X1 十 x2)(x1 + X 3 ) ( x 2 + x 3 )
S(1)(X1, X 2 , X 3 ) =
X1
ぅ
ぅ
(2.80)
(2.81)
(2.82)
等の例が得られます.
2.1 量子力学の基礎事項 57
問題 2.10
N = 2,3,4 について,シューア対称多項式の例をできるだけたく
さん計算せよ.
我々は,自由電子系に対する任意の励起状態をシューア対称多項式によって記
述する方法を手に入れました:
•
x)
;ね (
g ( x ; ‑ x)
( q1, ・ ,qN)
仇
.)' ,(x)ψo
(i;rx
波動関数の直交性について吟味しておきましょう.スレータ一行列式による
表示(2.55)より,波動関数は直交性
1L 守 宅ψ
L1 ・
・
札 , qN)'l/Jk1(q1,
k(
,qN)=Ok',k
(2.
多項式 f,g に対する内積を
定義 2.11
1L 守宅耳仲号)耳( 府抑)
訂 ・
=
L
!‑ u
・i
1L 今
・
Xi ‑ X j
(1 ‑ X i X J l 阿 g(x),
=
と定めましょう.そうすれば,波動関数の表示式( 2.83 )より,シューア対称多
項式の直交性
命題 a.12
入μ,
,
(x))'.v = o
x), sμ
(sλ(
(2.86)
を導くことができます.ここで,この内積の記号には対称多項式業界のならわ
' とプライムを付けました.後で,プライムを付けない別の内
しに従ってし) N
積も登場します.エルミート多項式が直交多項式として特徴付けられたのと同
様
以下で繰り返し議論するようにーシューア対称多項式も内積( 2.85 )に関
する直交多項式系の理論の枠内で捉えることができます.
問 題 2.13
58
具体例を用いてシューア対称多項式の直交性( 2.86)を確認せよ.
第 2 章川遊びー量子可積分系
複素共役をとると忌= X i l となることに注意すれば,内積の定義式( 2.85 )の
安1;;; は引について定数項を取り出す演算とみなすことが
積分 foL 争 = f 2 ;
できることに注意するがよい.
2.1.9 密度相関関数
シューア対称多項式の性質を用いることで相関関数の計算がうまく進むこと
を見てみましょう.シューア対称多項式を具体的に書き下す方法はいろいろあ
りますが,ここでは次のような例を紹介します.まず,べき和対称、多項式を
N
Pn =
と定義します.べき和対称多項式に対して運動量演算子と同じ記号を用います
が,混同しないよう注意して下さい.
後述するシューア対称多項式の理論[27], [28 ]によれば,次のような表示の具体
例が得られます:
公 式 仏1 4
N 変数( N = l , 2 , 3 ,・一)のシューア多項式むを,ベき和多項
式で表す式,
(2.87)
S(1) = P1,
1 。
1
(2.88)
S(2) = 2 P 2 + 2P1'
1 n
1
‑ 2 p 2 + 2pj',
8(12) =
1
1
1
(2.89)
両p"{,
S(3) = 3 P 3 + 2P2P1 十
1
1
(2.91)
0
S(21) = ‑ 3 p 3 + 3P"{,
1
1
S(13) = 3 P 3
(2.90)
1 。
}
2P仇 十 6 ,
(2.92)
等が成立する.
この公式は,べき和対称多項式 P n を用いてシューア多項式 S 入を変数の数 N に
よらない形に表現できるとても便利なものです.実は,行列式( 2.79 )による定
義(これはもちろん N に依存します)の他にも,無限個の変数の極限 N
→∞
において(すなわち N に依存しないように)シューア多項式を定義することが
できます.第 3 章ではこれについて考えます.
問題 2.15
N
= 1,2,3,4 の場合に定義( 2.79 )にしたがって計算して上の公
式を確認せよ.
逆に,ベき和多項式をシューア多項式で書くこともできます.上の公式より
2.1 量子力学の基礎事項 59
Pl = S(l)l
P 2 = S(2) ‑ 8(12),
p 3 = 8(3)
8(2 1)十 8(13ぅ
)
を得ますが,この表示の構造は読み取りやすいことに気がつくはずです. 一般
には次のようになります.(文献[27)48 ページ参照.)
命題 2.16
べき和多項式をかぎ型のヤング図形に対応するシューア多項
式の和で表す式,
Pn
=
乞
( )1 B((n‑l) ll)
(n = 1,2,3 ・
・
−
)
(2.93)
が成立する.
この命題の証明は省略します.
ベき和対称多項式 P n は,以下で見るようにデルタ関数を通して密度演算子
と関係します.周期的なデルタ関数を
=
三
(
ミ)
8(q ‑
(2.94)
k
ここに, x = e 2
三 q' X i = e 2
:=:Iq;
と定めれば,境界条件 f(q + L) = f(q )を満たす任意の関数に対して
!
:
空
8(q
(2.95)
州)=州
が成立します.実際, j(q) = L . k E Z
作
b(q
qi)f(q) =
1L tr
t
巴平均一 q;) fze 半
lq
(2.96)
= f(qi)
となります.
それで、は,命題 2.16 を用いて密度演算子の相関関数の計算を実行してみま
しょう.以下この節の終わりまで,多少難しく感じる部分があっても,気楽に
読み進んで下さい.座標 q における電子の存在確率密度を表す演算子は
•
N
i'{; 8(q qi)
であり, これを積分したものは電子の密度
60
第2章
川遊びー量子可積分系
(2.97)
ミ
昨
主 o(q 一
主
j;
(2.98)
を表しています.以下,存在確率密度の揺らぎを表す演算子
•
..
N
o o N
q i2=o(q 一色)ーを = i2= 乞(xix‑n + x;nxn)
噌
ρ()三
=
±
L(PnX‑n +
の期待値を調べます.ここで,揺らぎの部分を取り出したのは計算を少し簡単
にするためです.
の基底状態 IO )における期待値が零になる
q)
まず小手調べに,密度揺らぎ ρ(
q)IO) = o を確認しましょう.ここに, JO)とは座標表示すると基底
こと( OIρ (
。
q )と得られる状態です.完全系
状態の波動関数が(q1,q2,・ . ,qNJO) =ψ(
1=
1L 今 今
1L ・
Jq1,
,qN)(q1
, qNI
(2.99)
が座標について対角化されていることと,シューア対称多項
を差し込み, p(q)
式の直交性(2.86)を用いれば
1L
1L 今
L・
志1
×
±
N!
2 子耳(五号)耳(♂包一 X j )
+
(2.100)
1L
‑ Xj)
乞
i乏
×
1 ( 咋 ( 川 IL) x‑n + 存 日 xn)
)1((1,s((n‑l)ll ) 山 内 …
。
性
茎
直
と期待通り零になることが確認できます.
ここで行った計算を少し反省しておきましょう.基底状態を密度演算子で叩
q)JO)の波動関数は
いた状態 ρ(
q)JO)
・qNJ ρ(
,,
(q1・
2.1
量子力学の基礎事項 6 1
xn)
と書けます.ここに現れるシューア多項式にはかぎ型のヤング図形のみが現れ
ることに注意して下さい.すなわち, 2.1.7 節で注意したように,この展開の各
波動関数はー電子・一正孔の励起状態を表します.ただし, S(
(口 −
l) 11 )
ψ
。は k p
5コ
ロ
可ψ。は −k p の左側に電子が励起し
の右側に電子が励起している状態,可
た状態を表します.すなわち,基底状態を密度演算子で叩くと必ずー電子・一
正孔の状態に励起されることになるわけです.第二量子化の言葉では密度演算
子は p =ψ
↑ψと書かれますから,基底状態への密度演算子の作用がー電子・一
正孔の励起状態を得ることは自ずから明らかです.
密度の揺らぎを表す演算子の時開発展は ρ(
q,t) = e‑1コmp(q)e‑vコHt です
(ハイゼンベルグ表示).さて,密度揺らぎの相闘を表す量
(OIρ(
qヘt')p(q, t)IO)
(2.101)
を調べましょう.まず,状態 ρ(
q, t)IO )の波動関数は
(q1, ・
・
・
, qNIP(q, t)IO)
=
(q1,
,qNle.;=IHtp(q)e F 加 IO)
=:i;I:I)
一
) (s((n
•
cxi
(2.102)
n‑1
1
ψ
o x‑n 十 布 石l)'l/Jo xn)e日 (E k ( ) 帥
l) 1i )
λ
n = l l=O
ここに,入=((n‑l)11)
と求められます.ここに, E k (
入)は波数を( 2.63 )を用いて表示した場合のエネ
ルギーを表します.(密度演算子の基底状態への作用によって励起されるー電
子・一正孔の励起状態は,式( 2.63 )を用いて表示するのが適切です.)密度演
算子で励起された中間状態が,命題 2.16 によってエネルギー固有状態
ちシューア多項式
すなわ
で展開されているからハミルトニアンの作用を計算できた
ことを十分に吟味して下さい.また,(OIρ(
q', t')lq1 ,
.・
. 'qN )も同様に計算でき
ます.
先程と同様式( 2.101 )に完全系(2.99 )を差し込んで,シューア多項式の直交
性(2.86 )を使いますと,
(2.103)
入=((η
−l) 11 )は|入 I> o, e(入)三 N なるかぎ型のヤング図形,
>.' = ((n' ‑ l') 11 )も同様,
とするとき,
(OIρ(
q', t)
'ρ(
q, t)IO)
62
第 2 章川遊びー量子可積分系
1L 警警(
L1 ・
・
=
(
, qNI ρq,t)IO)
,q N ) (q1, ・・
q', t')lq1,
OIρ(
l{ L τ τi j(弘一号 )ij(xi‑Xj)
{L
dq1
I
=万1 n
dqN
i く3
iくj
ω υ U u
i
ε
l' (
()
一
×
j乞(一) s x‑n +苛 xn)e
去 ε (一)件
=
×
l( 入
何
E k (入)一 E 口
(
巴 y C l ( E k (λ)一 E o
l,
×(s
(
)e
(x/x')i 川+(ピ'/ x)I l
(
去ε
=
入
入
)山 )
Ek(>.)‑Eo(
円 (
になることに注意してください.結果をまとめておきましょう:
命題 2.17
j
i1 n
1 r 円ハ
f F
sQ
仲︐
j t︑引 りo ︑
&ι
︐
﹄
2
一一 一
P
れ
ド
﹃
/
︐
灯
ヵ
針
︐
︑
く 叩 ︑Q f
一
E
川 .
J U l
︑ 4Y 4 −一 叩
a
t\ L
−
ヤ
の川 ン
八 z型
h﹀︒
l
町 町入 N
h
α
\
/
︑
八tG
︑
︑A
I
l
a
q −
ノ
ρ
レ
日
一 E
・
侃
入
E nu
V
同
リ
l
u
︑
代4
︑ −
︑
l
量子力学において,実験で直接観測できる量を計算することは,相関関数の
計算に帰着させられるわけですから,理論家の努力は相関関数を如何に計算す
るかということに向けられます.相互作用を持つ系の場合,相関関数の計算を
厳密に行うことは一般にとても困難で、,たいていは摂動論によって近似的に計
算することで満足するしかありません.厳密で解析的な結果を期待できるのは,
可積分な系に対してだけでしょう.そうして得られた結果からは,摂動論では
決して見えないような効果,つまり非摂動的効果を調べることができますし,
日頃安易な議論で通り過ぎたために勘違いしている我々をいましめてくれるか
も知れません.このような意味で,量子可積分系を調べることは価値があるこ
とです.
問題 2.18
N = 1)の場合のプロパゲーターは
一粒子 (
乞 eーとF i ‑ n ( q−q)e‑vCIH 守)ヤ(t'‑t)
(q', t'lq, t) =
(2.106)
nEZ
となることを確認せよ.(これは楕円テータ関数そのものである.
2.1 量子力学の基礎事項 6 3
2.2 カロジェ口・サザランド模型
第 l 章では,カロジェロ・モーザー系は古典力学系として可積分であること
を見てきました.そして,カロジェロ・モーザー系は量子化した後も十分多く
の保存量 Ik をもっていることを調べました.さらに,保存量 h が互いに交換
することを調べるには,それらを同時対角化できることを示せばよいのですが,
そのためにはまずハミルトニアンの固有値,固有状態についてよく理解してお
く必要があります.
量子力学の系が十分多くの互いに可換な保存量を持つ場合,古典可積分系と
のアナロジーで「量子可積分」と呼ぶことがあります.しかし,量子可積分系
がどのような意味で解ける模型であるのかまだよく理解されていません.つま
り,上の意味で量子可積分な系であっても,そのシュレディンガー方程式が解
かれているものも,まだ解かれていないものもあるのです.量子カロジェロ・
モーザ一系に,その両方の例を見ることができます.ポテンシャルが三角関数
の場合は任意のエネルギー固有関数を書き下すことができますが,ポテンシヤ
ルが楕円関数の場合は今のところハミルトニアンの対角化が思うようにできま
せん.古典論においてはリュービル可積分性から運動方程式を原理的には解き
うるわけですが,量子可積分性の条件からハミルトニアンを対角化する原理は
まだ導かれていないのです.量子カロジェロ・モーザ一系の中で,ポテンシャ
ルが三角関数の場合はサザランドによって 1972 年に調べられましたので,特
にカロジェロ・サザランド模型と呼ばれます[ 29]' [30]. 以下ではこの模型につい
て考えます.ポテンシャルが楕円関数の場合は,今後のみなさんの活躍によっ
て解かれるのを待っています.
2.2.1
カロジェロ・サザランド模型のハミルトニアン
カロジェロ・サザランド模型は,周の長さが L の円周上に, N 個の量子力
学的粒子を乗せて, sin‑2 型の相互作用のポテンシャルを与えて定められます.
粒子が円周上に束縛されているので,離散エネルギースベクトルのみを持ちま
す.運動量演算子とハミルトニアンは
N
P =LPi,
Hes=
(2.107)
N
i=l
(y )2
1
L 2P;
iくj sin2
f (Qi ‑ Qj)
(2.108)
と書けます.ここに, Qi(O 壬 Qi 三L )は t 番目の粒子の座標, Pi =一 円 え
は 4 番目の粒子の運動量, βは結合定数です.
前章で見たように,古典論において 92 と書かれた結合定数は量子論では
6 4 第 2 章 川遊び量子可積分系
g(g 十九)と量子補正するのが自然です.カロジ、エロ・サザ、ランド模型では g = ‑/3
と書くことが多いので,ここでもそうしましょう.さらに,今九二 1 としてい
/3 ‑ 1)と書かれています.結合定数がこ
ますからポテンシャル項の係数は β(
のような量子補正を受けることの,物理的な理由を考えることもできます.古
典論においては結合定数を負にできないことが念頭にあるのでそれをポと書
きます.なぜ、なら,− 1/r2 の引力ポテンシャルに従う一次元の運動は不安定で,
粒子は有限の時間で衝突してそこで理論が破綻するからです.ところが,量子
論の場合には,十分弱いー 1/r2 の引力ポテンシャルであれば量子力学的な不確
定性が勝って系が安定となり得ます.つまり,結合定数が少しだけ負になるこ
と一つまり /3(/3 ‑ 1) >ー 1/4ーは量子力学的には許されています.
ポテンシャル項について,幾何学的な解釈を与えましょう.第 z番目の粒子
と3 番目の粒子との問の「弦距離j を求めてみますと
(
sin
z
仰 9)
(qi ‑ qj )
となりますから,相互作用を表す項は
玄
仰 − 1)
(2.110)
1
Zく3
という幾何学的な意味を持つことがわかります.
.. N ‑ 1
,.
ー
.
一
一
−
.
N
弓
:
:
;
ヤ
j
図 2.2
1
カロジェロ・サザランド模型.
カロジェロ・サザランド模型の相互作用は, 1/r2 型のポテンシャルを持って
いるため,現実の電子聞のクーロン相互作用( 1/r のポテンシャル)とは異なり
ます.それゆえ,非現実的な模型であるのかもしれませんが,これは可積分性
のために払わなくてはならない代償です.カロジェロ・サザランド模型には著
しい可解性を見ることができます.実際,基底状態は初等的な方法で調べるこ
とができ,対称、多項式の理論を用いると全ての励起状態を取り扱うことができ
ます.
2.2
カロジェロ・サザランド模型 6 5
2.2.2 基底状態
基底状態について調べましょう.まず大雑把に感じをつかんでみます.粒子
t と粒子 j が接近すると,斥力の相互作用が効いて存在確率密度が減少するは
ずです.他の粒子の寄与は無視できると仮定すれば,
ψ〜(
qi ‑ qj )
β
(qi → qj のとき)
iー
i ︶
︵4q −
寸
E
よ
という振る舞いをすることがわかります.実際, このとき運動項は
+ PJ )
句− qj )
β = 一 仰 一 川 一 qj )(3‑2
(2.112)
となって,ポテンシャル項とつり合います.この漸近的なふるまいに注意して,
サザランドは厳密な基底状態の波動関数が
\
︑
〆
r
t
f
t
E
1
1\ 同
H
Q
U
π仇
n一
q
L
月
U
﹁
B
E
︐
q︑
J E
︐
J
f
I
(2.113)
︐
/
となることをエイヤッと念力でみつけました[2 9]. 以下,記法をできるだけ自由
電子の場合と同じにしたいので,基底状態 ψ
。に対して次のような規格化を採
用することにします:
ψ
o(q1,
,qN)
u
=布円中(
=
ホ
(
干
)
一
β宇
討i n i
ij(xi‑Xj)
β
(2.114)
ここに, Xi =戸 手 釣 で す これが本当に基底状態であることは,以下に述
べるように初等的な計算で確認することができます.また,この規格化の意味
については次節で調べます.
この節における我々の目標を掲げておきましょう:
命題 2;19
模型の基底状態は
(
向
,qN)
q1,
=方(山中(耳目
in i(qi
ー
む
ト
であり,そのエネルギー固有値は
十 N N
N 一
︑
︐ 一
ノ
一
L
︑
︑
一一
π1
R 〆
μ
t
.
︐
E
(2.116)
また, ψ
。は座標の差のみに依存するので並進不変であり,運動量固有値は零
=
。0
Pψ
6 6 第 2 章 川遊びー量子可積分系
(2.117)
です.
. , q N )は,領域
o(q1γ ・
ここで二つ注意しておきます.第一に,ここに定めた ψ
(2.118)
qi > q2 >・・・> q N
での波動関数とします.その他の領域での値は粒子の統計性に合うように符号
を調節すれば得られます.例えば,フアルミ統計にしたがう粒子の場合
−
β 1
..,‑,‑
I
7f
1..‑r
日sin こ(qi ‑ qj) (2.119)
β山 戸 1 fsin ‑ (qi ‑ qy) I
元青( 2 J = l)
I
L
l.l..l.
I
,,N N ‑ 1 )
、
VI
.l..l.
iく3
I
.く J
'
. ‑
と書くことができます.
第二に,波動関数仇は,斥力の相互作用によって粒子の座標が一致する場
。よりも節
所で節を持ちますが,それ以外の場所では零になりません.また, ψ
。は基底状態です.
の少ない波動関数は相互作用と矛盾します.よって, ψ
。がハミルトニアンの固有状態であることを調べます.
以下,関数 ψ
次の式が成り立つ.
補題 2.20
=
2132 GJ2 工吋 (qi 一的) c寸 (qi ‑ qk)'l/Jo
ヲ出.J.k (ヲ向)
j(
'"
れ
只;
if 玄
β一 川
+β(
‑/32(N ‑ 1)
i
予科)一一
j(
L ロ
止、仇
(2.120)
ヨJ
(z) 2 ψo
。が sin の積の β乗であることに注意すれば,一回目の微分は容易に
まず, ψ
できて
− =何一)〉
)
二
千
θqi
(1f¥
ψo
¥LJ 1
qi
cos 告(
)
む
l.J
,,
(2.121)
の)
sin f (qi ー
となります.二回目の微分をしますと
θ2
2 (町 2
t
一的) ¥
cos !f;(q包
I
一
= W l ) I 久 sin
f (qi 一的)/
(2.122)
¥LJ
/7f¥2
「
−
...−
1
.
抽 sin2 f (qi ‑ qj) '1‑'0
} j)
川£
と二つの項に分かれますが,ここで右辺の最初の項に工夫を加えておきましょ
う.和の二乗を展開すれば
(i,;
0
一的))'ー εc o s 2 f(q; ‑ qj)
co' J;(q,
n2 I;(q; ‑ qj)
‑
n f(qi ‑ qj)
・
(2.123)
j(‑fi)
2.2 カロジェロ・サザランド模型 67
+2
、 i
cos (qi ‑ qj) c凶 7£
(qi ‑ qk)
が付(肖)凶n £
7 (qi ‑ qj) sin £
7 (qi qk)
ゃ
となりますから,これを用いて整理をすれば補題 2.20 を得ることができます.
次に,補題 2.20 で得られた二階微分を t について足し上げなければなりませ
ん.そこで必要になるのが次の公式です.
任意の B1 ヲB2 ,
・
・
. '()N について
補題.2.21
きε
−
〜
叫
九
) = ̲N ( N
cot(Bi ‑ Bj) cot( Bi
i = l j(;'i),k (ヲ出)
j くk
が成立する.
まず,
‑ 1 = cot(B1 ‑ B2) cot(B1 ‑ 03)
(2.125)
。
+cot( B2 ‑ B1) cot(B2
3) + cot(B3 ‑ Bi) cot(B3 ‑ B2)
が成り立つことは,三角関数の加法公式を用いれば簡単に確認できます.適当
に和の記号を書き換えることによって
N
2: 玄 cot(Bi ‑ Bj) cot)(( Bk)
包−
包=
l j(;'i),k (ヲ出)
3 くk
到
(I,;,+
cot(Bi 一
吟
) cot
,I,;, (cot伶 一 削 cot(
+cot 的一仇) cot
L (‑1) = ‑ N ( N 一l)(N 一2)
zくj<k
が得られますが,これがまさに示さねばならないことでした.
補題 2.20, 2.21 を用いると H e s の ψ
。への作用を簡単に求めることができ
ます.
一
川if Lz s出 1
2:
H e s拘 =
+/
3(
β
くJ
(i)" 8
《
= ‑;32
N
第 2 章川遊びー量子可積分系
oψ
cotL(qi ‑ qj)cotL (
仇 − qk)
シ
+2 N ( N 一1) (ifψ
o
68
ψo
D
(2.127)
= (32 (π\z ( N ( N 一 仰 一 2)
I
I
¥LJ
日
I¥
6
N ( N 一り
0
十一一一一一 lψ
J
2
= (32 ( 2 ( N + l ) N ( N ‑ 1 )
ρ ψ 0・
)
l
¥LJ
これで命題 2.19 の証明が終わりました.
カロジェロ・サザランド模型の基底状態について,我々は計算上では纏認で
きるとしても,なぜそうなっているのかということについて,その本当の意味
をまだ理解していないのかも知れません.実際,ポテンシャルが楕円関数の場
合の基底状態は今後の課題として残されています.ひらめきから生まれたもの
を理屈でうまく説明することは難しいものです.
2.2.3 基底状態の規格化の吟昧
前節で,我々はカロジェロ・サザランド模型の基底状態を求めました.その
際,自由電子と似た記法を選ぴ,
(q1,
仇
.,q N )
与i
c町 −x〆 (2.128)
=方{ IT 叶 . r
i
\ 一β
I
‑
くj
I
・‑ ・・¥ i
という規格化を採用しました.この基底状態の波動関数のノルムについて調べ
ておきましょう.
(O[O)は,完全系
基底状態を[ O)と書きましょう.基底状態のノルム C N 三
・ ,qN[O)を用いて,
・
・
(2.99 )を差し込めば波動関数 ψ (q1,q2 ,
。
=
C N
=
(0¥0)
三
β)
CN (
1L 空 宇 恥
L1 ・
・
=
(2.129)
o
{
1
N! J
...
dX N
dx1
{
J 21円
T
T
2πゾコX N
X1
と求められます.ここに, X i についての積分路は単位円[ xi[= 1 で与えられる
ものとします.
(3 = 1 に対応)に基底状態のノルムが
我々は,自由電子の場合 (
(2.130)
CN(f3=1)=1
となるように規格化しましたが,結合定数 βが一般の場合はそうではありませ
ん.簡単のために,結合定数 βが整数の場合を考えましょう. βが整数の場合
には, C N は叫についてのローラン多項式から定数項をとることで得られます.
例えば, N = 2 の場合
/
t ー
1 i
1\
1
・
︑
\
1 1 t
1 i
1
−
一
Z J 1
Zi
/
守
n
4
︑
\
z一︐− 111 一 z +っ z 4
♂唱 /
一
一
1 一
Z−
Z
q
i
唱
E
A
q
︐
a
内
−
官
(2.131)
i
(2.132)
2.2
カロジェロ・サザランド模型 6 9
(1 ‑
(1 ‑
= . .‑
+ 20 ‑
+. ,
(2.133)
等となりますから Cz = (吹けとなるこ とが予想されま す ここに,(;:,) =
n C m は組み合わせの数です.一般に, N 変数で F が整数の場合には波動関数
のノルムが次のように与えられることが知られています(3 吋証明については文
献
(2 8)のイントロダクションおよび(3 2 )参照.):
N 変数で, β=1,2,3 ・・・の場合,
命 題 2.22
州
=
旬((3)
問 題 2.23
(2.134)
= 2,3,4 ,β=1,2,3,4 の場合について,命題 2.22 を確認せよ.
N
また, P が一般の場合にはガンマ関数を用いて書けます(η が整数のとき
r (η 十 1) =η!となることを思い出して下さい):
命 題 2:2.4
N 変数で, βが一般の場合,
.f:!r
C N(
β)=川
r(if3)
(2.135)
となる.
命題 2.22, 2.24 の証明は省略します.
2.2.4 励起状態ヘ向けて
調和振動子の場合は,基底状態はガウス分布 e
! q 2 で,励起状態はそれにエ
ルミート多項式を掛けた形
Hn(q)e ーが
(2.136)
に表すことができました.円周上の自由電子の波動関数も,差積で与えられる
基底状態にシューア対称、多項式を掛けた形
‑ Xj )ね (
x)
(2.137)
に書けました.カロジェロ・サザ、ランド模型についてもこれと全く同じことが
起きます.つまり,任意の励起状態の波動関数が,ある対称、多項式 P 入を用いて
(If
70
xi)
第 2 章川遊びー量子 可積分系
‑ Xj )
β的 )
(2.138)
と書けます.以下,この多項式 P 入を調べましょう.
ψ。という形に仮定して,これに対して H e s の
励起状態の波動関数を P ( x)
作用を調べてみます.
。
ψ
H e s × P(x )
I
I
1
¥
舟2
={一;写(詰tP(x))
(2. 附
町(x))) +EoP(x)
毛
(
l
)2
吠
[(
地r ψ0 t
=
P(x)
0
ψ
十 EoP(x) ・
ここで,第二項については和の中身を対称化して書き換えておきました.即ち,
L ャ cos I;(qi 叫) θ ー や 山 + 札 。
一一
‑ Xj 一
会JXi一
θq 一
匂) 一
2π fjj sin I;(qi 一
包
xi + x 1
θ
l て 「 X ート化
θ
1
ー」町一一
〉ム
一十一
)
一
=
X‑; ‑ Xi θ'x‑;
←
2ィ
δ町
←, Xi‑ ‑‑ X2 x −
2ィ
,「
−
;
‑
Z ヂJ
T 「
X;
包
+ X 内/
包ヂ3
‑
・
−
;
(添字を交換して平均)
J
Z ヂ3
θ θ \
‑ X j { £)
(2. 凶)
‑ ,
と整えてあります.
実は,ここに現れた P(x)に作用するハミルトニアン
はとても良い性質を持っています.それを箇条書きしてみましょう:
① ハミルトニアン Hβ は対称、多項式の成す空間の上に閉じて作用する.
② Hβ を三角化するような基底が見つかる.
③ 固有関数のさまざまな性質が具体的に調べられる.
以下,このような性質について調べますが,ここに今後の目標を掲げておき
ます:
ハミルトニアン Hf3 は変数町に ついての N 変数対称多項式の空間に作用
2.2
カロジェロ・サザランド模型 71
し,その固有値,固有関数はパーテイション入により
Hβ
Pλ (
x1, ・
・
・
,xN) = E>‑.P(
入x1,・ ・,xN),
(2.142)
N
E 入=玄(入?+ β(
N
+1
(2.143)
2i )
ん
)
,
i=l
とパラメトライズされる.
ここに現れた対 称多項式 P (
入x1,・
・
・
,XN )はジャック対称多項式と呼ばれま
す但3] (27], (34]. ジャック対称多項式には結合定数 βがパラメーターとして入って
います.特に, β = 1 とすれば相互作用項が消えて Hes が自由電子のハミル
トニアンとなるのに応じてジヤツク対称多項式はシューア対称多項式に退化し
ます.
式( 2.138 )で与えられる波動関数の運動量およびエネルギー固有値も同様に
計算できます.ただし,パラメーター l に注意して下さい.ここに,固有関数
と固有値についてまとめておきます:
カロジェロ・サザランド模型の波動関数
f
t
S
E
I
︑ μn T
︑
山
/
B
E
E
S
H
H z −︐
U z z
z
の運動量およびエネルギー固有値は
山
V
−
\
Pψ =
F
R
ru
及
川
Z
(2.144)
向
(¥) (叫|ゅう
/口\ 2 (
(印+引|入|十 f.)..
(2.145)
2
/3',!,
( N 十 l)N(N‑1)¥
12
)
(2.146)
である.
問題 2.25 上のことを確認せよ.
2.2.5 励起状態の準粒子解釈
ジヤツク多項式 Pλ と固有値引については,以下の節で具体例を用いて調
べます.その前に,ここではまずカロジェロ・サザランド模型の波動関数の準
粒子解釈について議論しておきましょう(文献( 3 6卜
(4 0]およびそのレフアレンス
参照).
自由電子の波動関数が波数表示されたように,実はカロジ、エロ・サザランド模
型の場合も波数表示が役に立ちます.もし,波数 k = k(l ,
入
) = (k1,k2,・
・
・
,kN)
を結合定数 βに応じて
72
第 2 章川遊びー量子 可積分系
ki = ki(l, .A) =ん+ z+,e
中 )i
(
(2.147)
と定めるならば,式( 2.143)で与えられるカロジェロ・サザランド模型の励起
状態について自由電子の場合と類似の準粒子描像が得られることを議論しま
しょう.
式( 2.116 ))が「基底状態の波数」
まず,基底状態のエネルギー固有値 Ea (
ん= ,8
−)i
干
(
(2.148)
で次のように与えられることがわかります:
−)i
午
開会?=;閉会 (
= ,82
(if
(N
(2.149)
2
2
+円(N ‑1) = 凸
同様に,ハミルトニアン Hβ の固有値の式( 2.143 )から,カロジェロ・サザラ
) J による表示
入
ンド模型の励起状態のエネルギー固有値(2.146 )の「波数 k(l ,
命題 2.26
ベ
(2.150)
仇 (l
Pψk(l,>‑.) = 九(l,>−.) 仇(!,>−.)ぅ九(!,>−.) =
( 27f \
ι
r;) 2‑; ki(l, >.), (2.151)
.
/ 凸 ,
2 N
) = E k川
H e叫 (l入
(2.152)
を得ることができます.波数を式( 2.147)でパラメトライズするとき,励起状
態を重複して数えないためには入N = 0 とすること,もしくは,特定の励起状
入N 三0 とすることが便利で、あること等の注意は
態に着目する場合には l = O ぅ
自由電子の場合と同様です.
問題 2.27
式( 2.143 )からエネルギー固有値の波数表示( 2.152 )を導け.
波数た( lぅ入)による運動量とエネルギーの表示式( 2.151), (2.152)はあたか
も自由電子の場合の表式のように見えます.しかし,結合定数グのために,波
数 k(l ぅ入)の振る舞いは自由電子とは少し異なり,ある排他性をもった準粒子で
8 = 1 2 ぅ払・・・とします. ,8 が
記述されます.簡単のために結合定数は自然数 ,
う
有理数の場合も少し考えると同様に議論できることがわかります.まず,基底
2.2 カロジェロ・サザランド模型 73
状態
/
\
1
N +
1
(2.153)
aμ 一一
1
1
ノ
2
では, k p = β(
N ‑ 2)/2 から −
kp まで 3 個おきに準粒子が詰まります.例え
I
I
I
−
\
K
ば
, N
= 5,{3 = 2 の場合には
・
・
・
・
・
‑kp
・
・0 0 0 0 0
0
kp
0
0
0
(2.154)
0 0 0 0 0・
.
のように図示できます.ここに,黒丸は準粒子の占有状態を表します.この図
より,準粒子は自分の席とその両隣に他の準粒子が占有することを許さない性
質を持つことがわかります.これは相互作用の影響だと解釈できます.カロジェ
−1 個の両隣りに及ぶ排他性を
ロ・サザランド模型の準粒子は,このように β
持つことを特徴とします.一方で,運動量とエネルギーが式( 2.151), (2.152)
で与えられるという自由粒子に似た性質も持ち合わせています.
励起状態は,例えば l = O ,入=(4,2,1 )の場合
・
・・・・
‑kp
・・・0 0 0 0 0 0
kp
(2.155)
0 0 0 0 0 0 0 O・
・
・
となります.この例では,フェルミ面の外に準粒子を一つ励起し,フェルミ面
の内部に準正孔が二つ(つまり β個)できています.結合定数 βが自然数のと
き,一般に次のような太いかぎ型のパーテイシヨン
入=(入l ,
入2 ,
・
・
・
ぅ
入N),
入2 三β,
(2.156)
日
が一準粒子・ β準正孔の励起状態を表します.結合定数 9 が有理数の場合もほ
ぼ同様に議論できます.
問題払2 8
カロジェロ・サザランド模型の幾つかの励起状態について上のよ
うな図を描き,準粒子の排他性と励起状態の準粒子・準正孔解釈を吟味せよ.
2.2.6 ジャック対称多項式の具体例
第 2.2.4 節で述べた Hβ の性質①,②,③を確認するために,二変数と三変
7 4 第 2 章川遊びー量子可積分系
数の場合の例について H β の対角化を実行してみましょう.
まず,二変数の場合,任意の対称多項式は,
e(入)壬 2 となるパーテイション
入= (i,j )に対して定まる対称式
m 入= m(i,j) =
I
(i > j の場合)
I xix;
(i = j の場合)
(2.157)
れる対称多項式 m 入= ffi(i,j )はモノミアル対称多項式と呼ばれます.
ハミルトニアン H β のモノミアル対称多項式への作用を調べましょう.まず,
第一項については
+
(
( = 川)
ト
)
法
(
mci
i,j)
(2.158)
となります. また,第二項の作用は
‑ x 2 I k ) m(i,J)
= (i ‑
(2.159)
‑
"'1 ‑ "'2
=
+
+
(i
+
・
・
= (i ‑ j)(m(i,J) + 2 m c包− 1,J+l) + 2m(i
十・−)
2什 2 )
と計算することができます.よって, Hf3 は対称多項式の空間に閉じて作用す
ることが確認できました.さらに, Hf3 の作用は対称多項式の次数を変えない
ので一定の次数の対称多項式が成す部分空間に閉じて作用します.モノミアル
対称多項式 m 入に Hf3 が作用するとき,どのようなパーティションが生ずるか
を模式的に書けば,
(2.160)
入
一→ I I I II I I
LJ
十
田E
十
圧F
等となります.即ち,二つの行が次第に平均されて, 同じ長さになるか一つ違
うところで止まるような和に表されます.
パーティションに対して順序を
(i,j) > (i‑1,j+l) > (i‑2,j+2) >. 一
(2.161)
と定めると, Hβffi(i,j )に現れるモノミアル対称多項式は全て m(i,J )と同じで
あるかそれより順序の低いものである,と表現できます.この性質により, つ
まい基底を選べば H β の表現行列を三角行列で表現できます.
2.2 カロジェロ・サザランド模型 7 5
し
ギ
右
羽
︑ h ιい 刻
す
ト
矧こH
て lLF 手
i−t 一 防 求対イトj 竹
以
ヨ噴
Ll aJ
つ
し
︐
d万
・
内
ふ
︑ +政 竹
ゐ
︵=
つ
\
均rfi
\ 2
っ
\
﹃ 川
内
I︵
︐
︑
i
治 ︑
q n
問 W L1
sm
的−
A
︵
︵
︶
4 3
o
.
唱
n!
︑
−
︑
J
州
n
︵
m4
4
均\
︵
︶
h
︑︑ f
/ q
|
u
/
︑
5
的tIm O
E
l E
n
+
︵
4
0
︶
︑
l
3
r
l
A
1 m wm 同︵
i
z i
1o
つ
A
︐
−
m Amο︐ 一l\
t −
n
l
2/
︵
A
1︵ /
I −4 μ
/一
−
1
9
Jo︶
山
︑
m ︑
\
m 1
/
\ /9
\
0+
/
一
︑
i
っ
t﹄
1 r
+ dq 5
m ︐l 一l
6
E
i
E
l
同
4
例
−
l
リ 位\
l
l
E
− t
ロ︑
−
ノ
ー /
\
\
F / つ
p
:
l
:
ー
ー
ー
ー
f
iλ
lイ
a
vl
1
7勾
a
EI
El
El
EaE
噌
1
旬
i
1
i
T
J
内
/
I
s
i
−
−
\
︐1
勾
\
刊
σ|
l
/
ム
唱
l
l
G
=
川
(
)
|
町.2) (
1 0 + 2β
4β
等となります.ここで, m(l,o) = m ( l ) , m(z,o) = m ( z )等と書きました.モノ
ミアル対称多項式を上で定めた順序でならべて得られる基底に関して,ハミル
トニアン Hβ は三角行列として表現されますから,対角要素はハミルトニアン
の固有値です.つまり,固有方程式を解くという手続きを経ずに固有値が求まっ
てしまいました.カロジェロ・サザランド模型はとても良く解ける模型です.
対角化の際,
P 入=m 入+それより低い順序のモノミアル
(2.166)
と規格化して求れば,二変数の場合の固有関数は
P(l)(x) = m(1)>
P(2)(x)
= m(2)
P(1,1) (x)
(2.167)
+
古
川
、
(2.168)
1〕
= m(l,1)>
(2.169)
3(3
.L‑'(3) 例 ニ m ( 3 )
P(2,1)(x)
+五百 m (糾う
(2.170)
= m(2,1)
(2.171)
4(3
6β (
1 十 β)
P(4)(x) = m ( 4 ) + 3+""",Bm(3,1 )十( 2 +β
(
)3 +β)m(2,2),
P(3,l)(x)
= m (り ) 十 三ιm ( 2 , 2 ) ,
1 +β
p (羽 (
)x) = m(2,2)>
(2.172)
(2.173)
(2.174)
等と求まります.これが二変数の場合のジャック対称多項式の具体例です.固
有値が式( 2.143 )で与えられることに注意して下さい.
76 第 2 章川遊びー量 子可積分系
次に,三変数の場合をみてみましょう.任意の対称多項式はパーティション
入= (i,j, k )に対応するモノミアル対称多項式
3
4z 3 4 d
x'i
m 入=
ん
叫Z 3 K
24 3
+
z一 +いb 3 3・中山+LJ
4C 川 K + 2
3
一
+
・
山
岨Z
中
川
3
一+ x{
一
+ x{
d
3
14
4 Z3
町 一C
︐
(i>j>k)
(i>j=k)
k・
Z 舵も 3
I
k'
もも
r1 X 2 X 3 十 X 1 X 2 X 3 十 X { X 2 X 3
日
(2.175)
(i=j>k)
(i=j=k)
の線形結合で表すことができます.
ハミルトニアン H p は二変数に作用する微分作用素
去
)
(2.176)
‑ X 2
を含んでいますが,これの
+ x{
(2.177)
への作用を調べると,二変数の場合と同様 t と j を平均していくような項の和
に書けることがわかります.また,これらはみな同次式です.ハミルトニアン
H p の作用はこれを対称化することで理解できます.その結果, Hβ のモノミア
ル対称多項式 m(i,j,k )への作用は, i, j, k のうち二つを任意に選んでそのペ
アについて平均するようなモノミアル対称多項式の和に書けることになります.
H p の作用を模式的に書けば,
入 = げ よl
+廿U よ l
(2.178)
+出」
:
±
出
+
Ill
十曲
+
等となります.
4、さいパーテイションに立すして順序を
)
(2) > (12う
(2.179)
(3) > (21) > (13),
(2.180)
と定めておけば Hβ の表現行列が三角行列になることがわかります:
2.2
カロジェロ・サザランド模型 7 7
(
的
1) (I
(
的(
い
)
=
(
町
((
I町1
,1)) (:; +
:
的
(
町
(3)1
m (')町
m
4β
2)
(m(e)I 町(2
2,8
F
+""")) (
(2.183)
(2.184)
2β
+ l τ/ J m ( l ,
り
(2.185)
P(l,l)(x) = m ( l リ
,
P(3)(x) = m ( 3 ) +
(2.182)
6P
P(l)(x) = m (
め
P(2)(x) = m ( 2 )
(2.181)
(2.186)
3
β P
2士
否
問
(2,1 )十 f
1
じ
q
I β
l
刑
(
ffi υ
,
1り
6β
1+2β
(2.187)
P(2,i)(x) = m ( 川 + 一 − m(1,1,1ぅ
)
(2.188)
p(l ,川 (
x) = m(1,1 リ
,
(2.189)
等と求まります.この場合も,固有値は式( 2.143)によって与えられます.
三変数の場合にも,いくつかの箇所を除けば二変数の場合と全く同じ表式が
得られたことに注意して下さい.ただし,式( 2.187), (2.188 )において ffi(l,1,1)
を含む箇所だけが新しく生じています.三変数のモノミアル対称多項式におい
て X 3 = 0 と制限すれば二変数のモノミアル対称多項式が
町 ) ( 山 川 ) lx3=0 = 川 丸 山1, x 2 )
(k > 0 の場合)
ffi(i,j,k) ( 川
(2.190)
(2.191)
と得られます.上の例において,ハミルトニアン Hβ の固有関数 Pλ (
x )も同様
な制限の関係
,
山
北
==
(
礼
司
=0
恥)(X 1
P川
x1,X2,X
0
P(i,j)(X1, X2),
(k > 0 の場合)
(2.192)
(2.193)
をもつことが確認できます.この入れ子構造を十分吟味してください.実は,変
数が N = 2, 3, 4, 5, ・・
・と増えても同様に制限の関係
7 8 第 2 章川遊びー量子 可積分系
・XN‑1)
,
入x 1 , X 2 ぅ・
= P(
・xN)I
・,
入x 1 , X 2 ,
P(
(2.194)
I X N = U
ぅ XN) = Q とし
X2γ ・
入x 1 ぅ
が成り立ちます.ただし,£(入) > N の場合は P (
ます.
問題 2.29 四変数の場合に Hβ の作用が三角行列になるような基底を探し,表
現行列を求めよ.また,固有関数を求めよ.また,三変数への制限を行え.
2.2.7 モノミアル対称多項式とパーティションの順序
・X n に対するモノミアル対称多項式を定めましょう[27], [28].整
,
変数 X1, X 2 γ ・
数係数の η 変数多項式全体は足し算と掛け算について閉じているので環を成し
と記すことにし
, X n]
ます.この整数係数 η 変数多項式環のことを Z[x1, X2, ・・・
ます.この上には,対称群 Sn が,変数 X i の置換として作用します.対材、群
・ xn]の元を対称多項式と呼びます.対称多項
・,
Sn の作用で不変な Z[x1, x2, ・
の部分環を成しますが,それを
, X n]
式全体は Z[x1, X2, ・・・
(2.195)
, X n ] 8η
・
A n = Z[x1, X2, ・・
と書くことにしましょう.
.. 'αn )に対して
2γ
I ,α
任意の非負整数列 α=(α
(2.196)
・X n
= X 1 1 X 20 2 ・
日
X
)
(モノミア jレ
X
λ
(2.197)
入
・X n
・
= X 1入 x2・
2
1
ム
が対応します.これによってモノミアル対称多項式を次のように定義しましょう.
定 義 2i30
=
=
m入
パーティション入に対して,モノミアル対称、多項式は
x
=
2
換
置
る
な
.入の異
α
(2.198)
白
と定義される.
この和は,異なる置換にわたるものですから,同じ項が重複して現れないこと
を注意しておきます.
モノミアル対称、多項式は整数係数の対称多項式の成す空間の基底を成します.
すなわち:
2.2 カロジェロ・サザランド模型 79
命題 2.31 C(
入)三 η を満たすパーテイシヨン入に対するモノミアル対称
多項式 m 入全体は, A n の Z −基底になる.
変数の数の異なるモノミアル対称、多項式に対して,変数の制限による対応を
考えましょう.いま, m 三 η としますと, X n + l γ ・
,
・X m をゼロに送ることに
よって,線形写像
Pm,n: A m 一
→ An,
m(
入x1・
, ・
,xm)I
(2.199)
̲= m (
入x1 ,
・
・
. 'Xn),
I X n + 1
=
・
・
・
=X m = U
(2.200)
が与えられます.この線形写像 ρm n の作用の具体例をみますと
ρ
3,1m(1)(x1,X2,x3) = ( x 1 + x 2 + x 3 ) [
= X 1 =m(l)(xi) ぅ
( 2.201)
ρ
3,1m(2)(x1,x2,x3) =
= x i =m(2)(x1), (2.202)
lx2,x3 ー
→0
l x 2 , X 3 一一歩O
ρ
3,1 m(12 ) ( 九 山3) =
(X1X2 + X 向 付 拘 )
Ix一 円
(2.2附
等となります.また,この写像は積の構造を保つ,すなわち,
ρm , n (
間 入 m μ) = (
ρm , n m入(
)P m , n m μ)
(2.204)
が満たされることがわかります.これは,変数の制限と積の順序が交換できる
ことから従います.具体例としては,
(m(1)(x1,X2,x3))2 =
(x1+x2+x3)2
生三(x1 +x2)2 = (m(1)(x1,x2))2
等が挙げられます.まとめますと,線形写像 ρm n は環準同型写像となります.
入れ子の構造を無限に遡って,対称、多項式の変数を無限個に増やすことは思
いがけない発見を生み,新しい世界への抜け道となります.量子可積分系の広
場にある不思議なトンネルとでも言うべきでしょう.上で考えた環準同型を無
限に遡って定義されるもの,(すなわち,射影極限)
A 三 limAn
(2.205)
を考えましょう . A は対称関数環と呼ばれます.無限変数なので多項式と言う
のは少し変ですから, A の元を対称関数と呼びましょう.射影極限として得ら
れる対称関数という呼び名はさも厳めしいものですが,ひらたく言えば A の元
を可算無限個の変数の対材、式とみなすことができます.例えば
m(l) =
80
l引
ン
第 2 章川遊びー量子可積分系
m (子)=乞
XiXj
(2.206)
等となります.次章以降では主にこのような無限変数の対称多項式について考
察します.
次に,パーテイション入の順序について考えます[ 27), [28].
定 義 2.32
パーテイション入, μの聞の半順序を
J かつ,
入三 μ件|入 I= Jμ
(2.207)
r
・ +μ
・
・
i+
全ての r 2: 1 に対してん+・・・+んと μ
と定める.
この半順序をドミナンス半順序と呼びます叫).
問題 2.33
壬 6 の全てのパーテイションに対して順序
|
入
|
(2) > (12),
(2.208)
(3) > (21) > (13),
(2.209)
(4) > (31) > (22) > (212) > (14),
(2.210)
)
(5) > (41) > (32) > (312) > (221) > (213) > (15ぅ
(2.211)
(6)>(51)>(4 2)
> (412) >
> (32) >
(321)
> (313) >
> (23) >
)
(2212)>(214) >(16ぅ
(2.212)
を吟味せよ.また,入から任意に二行入μ 入j を選んでそれらの長さを平均して
いくとき,ドミナンス半順序に関して低いもののみを得ること,また,ドミナ
ンス半順序に関して順序のつかないものは決して得られないことを確認せよ.
問題 2.34
一般に, N 変数のモノミアル対称多項式 m 入に Hf3 を作用させた
ものは,ドミナンス半順序に関して低いもののみを用いて
孔
吋
ヤ
μ
m
(2.213)
凶
のように表されることを示せ.
ここで,モノミアル対称多項式 m 入に対して,ドミナンス半順序を与えてお
きたい理由を考えてみましょう.そのために,|入|三 6 に対してハミルトニアン
Hβ の固有値 Q を書き上げてみれば,
*4)
半順序とは,必ずしも全ての要素の聞にIJ[買序が定められてはいないような順序のこと
です.式( 2.212 )をみると順序が枝わかれしている様子がよくわかります.
2.2 カロジェロ・サザランド模型 8 1
入
E入
1
1+β (
N‑1)
入
E入
6
36+6β(
N‑1)
2
4+2β (
N‑1)
入
E入
51
26+2β (
3N‑4)
12
2+2β(
N
2)
5
25+5β (
N‑1)
42
20+2β (
3N‑5)
3
9+3β (
N‑1)
41
17+β(
5N‑7)
412
18+6β (
N‑2)
21
5+β(
3 N 5)
32
13+β(
5N‑9)
32
18+6β (
N‑2)
13
3+3β(
N
3)
312
11 +β(
5N‑ll)
321
14+2β (
3N‑7)
4
16+4β (
N‑1)
221
9+β(
5N‑13)
313
12+6β(
N‑3)
31
10+2β (
2N‑3)
213
7+β(
5N‑17)
23
12+6β (
N‑3)
22
8+4β (
N‑2)
15
5+5β (
N‑5)
2 2 1 2 10+2β (
3N‑10)
212
6+2β (
2N‑5)
3N‑13)
2 1 4 8+2β (
14
4+4β (
N
16
4)
(2.214)
6+6,13(N‑6)
となります.ここで,ドミナンス半順序が枝別れしている場所( 4 1 2 ) ,
( 3 13),
(32 )
と
(23 )において固有値が縮退していることに注意してください.このよ
うに,エネルギーが縮退する場合が生じるためハミルトニアン Hβ を三角化す
る基底の選び方についての議論が必要なのです.
式( 2 . 1 4 3 )で定まる引に対して,入> μならば E>. > Eμ であるこ
とを示せ.
縮退からくる困難を回避するための考え方はいくつかあります.一つ目は,
上で具体的に調べてきたように,モノミアル対称多項式をドミナンス半順序で
並べた基底でハミルトニアン Hβ が三角化されることを用いる方法です.次に,
ハミルトニアン Hβ と交換する互いに可換な作用素を用いて固有空間の分解を
進める方法も考えられます.つまり,十分多くの保存量を構成しておいてそれ
らの同時対角化を議論します.もう一つの考え方は, H,13 にパラメーターを加
えて拡張し,その固有値が縮退しないような状況を実現しておくという方法で
す.ジャック多項式を拡張することで得られるこの理論はマクドナルドによっ
て発見されました.この拡張された対称多項式の理論は我々に多くの実りをも
たらしてくれます.実際,そこには,カロジェロ・サザランド模型のような N
体の量子力学系をはなれて,二次元古典可解格子模型と呼ばれる可積分世界を
旅するためのキーワードが隠されています.このマクドナルド対称多項式が次
章のテーマです.
ハミルトニアン Hβ の三角化についての結論をまとめておきましょう.ドミ
ナンス半順序によってモノミアル対称多項式を並べて得られる基底によって,ハ
ミルトニアン Hβ の表現行列が三角化できます.さらに,ドミナンス半順序と
矛盾しないどのような全順序(例えば辞書式順序)で考えても最終的にはジャ
ツク多項式が得られることも示されます.
82
第 2 章川遊びー量子可積分系
2.2.8 ジャック対称多項式
さきほどジャック対称多項式の具体例をいくつか計算しましたが,ここで存
在定理を見ておきます(文献 1211p.387,文献[3 4]イントロダクション参照).
r
ハミルトニアン
定理 2.36
Hβ
Xj‑k) ,(2.215)
吠
(
言
=
x )が存在して,しか
に対して,次の二条件を満たす N 変数対称多項式 Pλ (
も一意的に決まる.
x) =
(i)凡 (
L U>‑,μ((3)mμ(x),
)= 1,
U 入,入(β
(2.216)
,入
;
<
μ
(2.217)
x) =
(ii) H f 3 Pλ(
また,固有値 引は
N
E
)
ん
入=玄(入; + jJ(N + 1 ‑ 2i )
(2.218)
i=l
と表される.
x )をモノミアル対称多項式で展開する際の係数 U>‑,μ ((3 )は変数の
ここで, Pλ (
数 N に依存しないことに注意して下さい.ただし, Hβ の固有値 Eλ は N に依
x )はジヤツク対称多項式と呼ばれます.二
存しています.この対称多項式 P 入(
および三変数の場合についてこの定理が成り立つことは 2.2.6 節で見ましたが,
N 一般での証明(のあらまし)が第 3 章のテーマです.
ジャック対称多項式に対する内積を考えましょう.カロジェロ・サザランド
模型の基底状態に対して
o
高ψ
合 IJ(l ‑ Xixj1 )
=
(2.219)
β
手3
土
となるので,これを重み関数として N 変数対称多項式 f と g の内積を
定義 2.37
(2.220)
(!, g)'rv
=土¢・
N!J
J 2π日 X 1
2π
A x N
Xixj 吠
と定めます.ここに,積分路は条件|町 I= 1 で定められます.このとき,ジヤ
ツク多項式はこの内積に関して互いに直交します.すなわち,
題 2.38 入 内 の と き
命
|
2.2 カロジェロ・サザランド模型 83
竺
斗
= 0
となります.前節で注意したように,エネルギー固有値に縮退があって,その
固有空間の分解には議論のいるところですが,そういうことをきちんと調べれ
ば直交性( 2.221 )に至るわけです.
問題 2.39
内積の定義 2.37 において,結合定数 が自然数の場合 (
(3
1, 2, 3 ,. 一),被積分関数は変数 z についてのローラン多項式になり,各 X i につ
いての積分は町の零次の係数をひろうことに対応する.このことに注意して,
結合定数が自然数の場合に,直交性( 2.221 )をいくつかの具体例について確か
めよ.
問題 2.40
K チk'の場合,波動関数の直交性
f. メ一一一
dx1
dxN
仙= 0
コ
2 πJ
X 1
ー
2πH x N
(2.222)
が成り立つことを確認せよ.
そのために,まずパーテイションに関するアーム長,レッグ長と呼ばれる量を導
入します.パーティション入を対角棋に関して転置したものを共役なパーテイ
ションと呼ぴ Y と記します.例えば,
|||||
入= (4, 4, 1)
=I I I I I ,
L」
(2.223)
(2.224)
等となります.
パーテイションをヤング図形で表しておいて,各ます目の座標を (
i,j )と表
示します.このとき,左上のます目の座標を( 1, 1)とし,下がるときに t が増
え,右に行くときに 3 が増えるものとします.たとえば,
s = (3, 2)
(2.225)
となります.
パーテイション入に含まれるます目 s = (i,j )に対して,アーム長 α(
s)
,レツ
84
第 2 章川遊びー量子可積分系
グ長 l( 8 ),余アーム長 a'(s ),余レツグ長 l' (8 )を次のように定めます.
s) =入i ‑ j,
α(
a'(s) = j ‑ 1,
(2.226)
;
入
l(s) =
l'(s) = i ‑ 1,
(2.227)
i,
これらの量の図形的意味は次のように図示できます.
l' (8)
s)
α(
( s)
ゲ
8
(2.228)
= (3, 4)
l(8)
以上でノルムの記述のための準備が整いました[27], [34J.
定理 2.41
ジャック多項式のノルムは次のように書ける.
(2.229)
, P>‑)'tv
(P入
= CN
l!
I]
s モλ
ここで, C N は命題 2.24 であたえられるものとする.
この命題の証明は省略します.ここで,ノルムが三つの量の積で与えられている
ことに注意してください.つまり,調和振動子の場合と同じような三層構造
生成消滅演算子,基底状態,ジャック多項式一ーがあることを示しています.こ
こに,生成消滅演算子と書きましたが,これが対称、多項式に関して何を意味す
るのかについては,次章において説明したいと思います.
2.2.9
シューア対称多項式:楽しい遠足
少し気分を変えるために景色の良いところへ遠足に出てみましょう.ジャッ
す.富士山のように広大な裾野をもっシューア対称多項式は対称、多項式の中で
も最重要級のもので,自由電子の波動関数,対称、群の指標, K d V 方程式をはじ
めとする可積分非線形偏微分方程式のソリトン解,アフィンリ一代数の表現論
等多方面で応用されています.
第 2.2.6 節で求めたジャック多項式の例において β= 1 とすれば
8(1) = ffi(l)>
8(2)
= ffi(2) + ffi(l2ぅ)
(2.230)
(2.231)
2.2 カロジェロ・サザランド模型 8 5
8(12) = ffi(12),
8(3) =
ffi(3) + ffi(21} + ffi(13)>
(2.232)
(2.233)
S(21) = m(21) + 2m(la),
(2.234)
8(13) = ffi(I3)>
(2.235)
となります.実は,この表式は任意の N 変数の場合に正しい式となります.こ
こで,モノミアル対称多項式 m 入をべき和対称多項式 P n で表す式,
m(1) = P1,
(2.236)
m(2) = P2,
(2.237)
1
1η
ffi(12) = ‑ 2 P 2 + 2Pi,
(2.238)
ffi(3) = p3 ぅ
(2.239)
m(21) = ‑p3 + P2P1,
1
1
1
ffi (刊= 3P3 ‑ 2P2P1 +
ず
]
_
,
(2.240)
(2.241)
を用いれば,シューア対称多項式をべき和対称多項式で表す式(2.87)
・
( 2.92)が
得られます.
問題 2.42
上のことを確認せよ.
問題 2.43
四変数,|入 1=4 の場合について
s(4) = m(4) + m(31) + m(22i + m(2i2) + ffi(14),
(2.242)
S(31} = m(31} + m(22) + 2m(2i2) + 3m(l4),
(2.243)
s(22) = m(22) + m(2i2) + 2m(14ぅ
)
(2.244)
s(2i2) = m(212) + 3m(l4),
(2.245)
8(14) = ffi(14),
(2.246)
となることを調べよ.
これらの例から予想されるように,シューア対称多項式をモノミアル対称多
項式で展開する場合その係数は非負整数のみとなります.これは興味深いこと
です.この整数は次のような組み合わせ論的な方法で求めることができます.実
は,パーテイション入のます目に,|μ|=|入|なるパーティション μによって定
まる自然数をあるルールに従って書き入れるやり方の場合の数がこの展開係数
を与えます.そのルールとは, μ= (μ1,μ2 ,・・・)に対して, 1 を μi 個
, 2 を μ2
個等と用いて,右方向には非減少,下方には増加するように書き入れるもので
す.このとき得られた数字付きの図形は,形が入でウエイトが μのタブローと
呼ばれます.
86
第 2 章川遊び量子可積分系
まず具体例で考えましょう.入= (2 )の場合 sc2) = mc2l + m(12 )となります
( 12 )に関してそれぞれの係数を説明しな
ぅ
ので,右辺のパーティション μ= (2 )
ければなりません.パーテイション入= (2)のます目
(2.247)
入=仁口
に,パーテイション μ= (2), (12 )で定まる自然数を書き入れます. μ= (2 )の
場合は
ITDJ
(2.248)
の一通りです.よって係数は 1 となります.また, μ= (12 )の場合も
E回
(2.249)
のみなので,係数 1 を得ます.もう少し複雑な例を取り上げましょう.パーティ
ション入=ゅう 1)に対するシューア多項式の展開 S(31) = m(31 )十 mc22) +
2mc212) + 3m(14 )を考えます.まず, μ= (4)となる場合, 1 を 4 つ書かねば
なりませんが,それは下に増加するルールに反するので不可能です. μ= (31)
の場合
F
(2.250)
のみが可能です. μ= (22 )の場合
rwm
rwm rwm
(2.251)
のみ,μ=( 212 )の場合
(2.252)
の二つが許されます.最後に, μ= (14 )の場合
1112131
片十二上二」
I4 I
ぅ
1112141
I3 I
片干上二」
,
1113141
I2 I
片ドム二」
(2.253)
の三通りが生じます.これらはいずれも正しく係数を説明しています.一般に
次のことが成り立ちます[ 27] (証明は省略).
命 題 2.44
Sλ
=
ヱ
シューア対称多項式のモノミアル対称多項式による展開
K>.,μmμ =
L
(2.254)
K>.,μmμ,
μ (コストカ
μ = 0 である).ここに, Kλ ,
が成立する(μ壬入でなければ Kλ,
数)は,形が入でウエイトが μのタブローの総数である.
2.2
カロジェロ・サザランド模型 8 7
この命題から,シューア多項式をモノミアル対称、多項式で展開したときの係
数は非負整数であること,モノミアル対称多項式をドミナンス半順序に従って
並べた基底に関して K ,
入μ は上三角行列となることがわかります.
問題 2.45
できるだけたくさんの例について命題 2.44 が成立することを確認
せよ
2.2.10 密度相関関数
密度相関関数を調べましょう.自由電子の場合と同様に,密度演算子のジヤ
ツク多項式による展開公式が威力を発揮します.
ジヤツク多項式の例( 2.184)‑(2.189 )に対して,モノミアル対称多項式 m 入を
べき和対称、多項式 Pn で表す式(2.236)
ー
( 2.241 )を用いれば,
P(l)(x) = P1,
ん()x)
(2.255)
=
市P2 +
占Pi,
(2.256)
1
1
P(12)(x) = ‑ 2 P 2 十 2pf,
勺
(2.257)
内)(←( 1+ ,aYc2 +β)
p3 十( 1十 ぷ + β) 附 十
1
P(21)(x) =
,a2
3
‑,B)l'l'
(2.258)
−β
,B
:'I
(2 お 9)
1
1
1
P(la)(x) = 3P3 ‑ 2P2P1 + 5Pf,
(2.260)
を得ます.これより,べき和多項式をジヤツク多項式で表す式の例
P I = P(l)(x),
(2.261)
2β
P2 = P(2)(x) ‑ l τ
73P 戸) (x)ぅ
<
(2.262)
3 β6 , 8 2
p3 = P(3)(x) ‑ 2τ73P(21)(x) + r1, 削 什 l ')(./¥ p (日
)
(x), (2.263)
が得られます.
問題 2.46
上のことを確認せよ.
一般には次のようになります[35]:
定理 2.47
仇=
ジャック対称、多項式によるべき和対称多項式の展開
η
L:ijα
(
)s
l l=ns
入
ヒA
+1
J (a'(s) ‑ ,Bl'(s)) 凡
ハ
s;"(l,1)
(
η = 1, 2,3 ,
・
.)
が成立する.
88 第 2 章川遊び一量子可積分系
(2.264)
この定理の証明は省略します.
問題 2.48
上の例について定理 2.47 を確認せよ.
s)‑(3l'(s)
結合定数が自然数の場合 β=1,2,3, . . . には,式( 2.264 )の因子ゲ (
が s = (2, (3 十 1)で零になるため,太いかぎ型のパーティション( 2.156 )のみ
が和に寄与することに注意してください.
自由電子の場合と同様,密度の揺らぎを表す演算子を
1よ
q) = L
ρ(
1
N
‑ L = L
0 0
L
N
x‑k + x;kxk) (2.265)
k = l i=l
=l
と定め,密度相関関数
(2.266)
p(q, t)IO)
ず)
(Olp(qヘ
を調べましょう.ここに,カロジェロ・サザランド模型の基底状態 IO )は,波
動関数
川
品
川
γ
制
\
1
一
川
1
H
Hソ
U
z
を持つものとします.完全系( 2.99 )を挿入して,べき和対称多項式のジャック
(2.267)
同
多項式による展開( 2.264)と,ジャック多項式の直交性( 2.221 ),ノルムの表式
(2.229)を使うと,
命題 2.49
q ぅt)IO)
'ρ(
qヘt)
(OIρ(
(OIO)
会l>O,ε H
|
入
'5.N sEλ
入)
fl (
's) (3l'(s)
H βN +α(
1 {3(l'(s) + 1)
十
)
s
'
(
α
+
N
誌β
×
(2.268)
×思州− {3l'(s))2 ・cos (空|入l(q' ‑ q))
巴ー何( E k (λ)品)(山)
入)は波数を( 2.147)において l = O として表示したエ
となります.ここに, E k (
卜401.
ネルギー( 2.152 )を表します.この結果はハーによって導かれました[3 8[
問題 2.50
カロジェロ・サザランド模型の密度相関関数が( 2.268)で与えら
れることを確認せよ.
2.2 カロジェロ・サザランド模型 8 9
2.3 保存量と波動関数:補足
これまで,カロジェロ・サザランド模型に対する相関関数の計算法を中心に
述べてきました.そのために必要な定理は,波動関数に関するもの,すなわち,
シューア対称多項式やジャック対称多項式の存在定理,内積の表示公式,そし
ていくつかの組み合わせ論的な性質でした.
次章ではー量子可積分系の不思議な旅を続けるためにージャック対称多項式
の存在定理に焦点を当てますが,本章を終える前に保存量の可換性と波動関数
の構成法について別の角度から眺めておきたいと思います.
2.3.1 保存量の可換性:ダンクル作用素
第 l 章で構成した二通りの保存量の構成と違う方法を紹介します.それは,
ダンクル作用素と呼ばれる微分作用素を用いた強力かつ美しい方法です[41], [42].
変数 Xi についての多項式環に作用する演算子を考えます.ここで考える多
項式環は,対材、多項式環ではなく,普通の多項式環であることに注意してくだ
さい.このように考える範囲を広げておくことによって,対称多項式について
の性質を容易に議論できるようになります.変数 Xi と Xj を交換する作用素を
KiJ ,すなわち,
KiJf(x1, ・・
,xi,・
・
・ ,xj ,
・,
・X N ) = f (
九・・. ,Xj γ ・
,
・Xi ,
・
・ ,XN)
(2.269)
とすると, K i J = Kji, KfJ = 1, KiJ 町 = XiKij 等が成り立ちます.このとき,
ダンクル作用素と呼ばれる微分演算子が
β
「『
•
j(#i)
l
'Vi =
玄+ β )
"
(2.270)
J
と定義されます.ダンクル作用素に関する基本的な性質
['Vi, Y'j] = 0,
ι
1 )−叫
KiJV'J
=
マiKiJ,
['Vi い
,
j (
払1
(2.271)
(2.272)
(2.273)
が成り立ちます.
問題 2.51
上のことを確認せよ.
このような準備によって,ハミルトニアン Hβ は
N
Hβ =Resl:::Dl,
(2.274)
i=l
D i = 臥 勺i
90
第 2 章川遊ぴー量子可積分系
(2.275)
と書けることがわかります.ここで, Res は対称多項式の空間上への制限を表
します.その具体的な表式は,含まれている Kij を全て右へ移動させた後に,
対称多項式の空間上では Kij ‑ 1 = 0 ですから,残る成分を拾うことで得られ
ます.
Di,D1] = βKi1(Di
作用素 D i たちの交換関係 [
D 1 )を用いれば,
min(k,!)
[Df ,巧]= βKij
アl) (2.276)
l二(D j 1Df+l m ̲ v j + l ‑ mD −
m = l
という式を得ることができます.この式の右辺は k, l の入れ換えについて対称
ですから,
(2.277)
[Df, Dj] = [DL Dj]
となります.よって, q のべき乗の和 I:f:1 D f たちが可換になることがわか
ります.これを対称多項式の空間上に制限すると,可換な保存量
N
Lk = R e s 乞 D f
包=
・N),
(j = 1, 2γ ・,
(2.278)
1
(2.279)
[Lk,Li]=O
が得られます.
問題 2.52
Hf3 =おとなること,および,式( 2.276 )を確認せよ.
01Hcsψ。が Hf3 を与えた
実は,ハミルトニアン H e s の基底状態での共役 ψ
。による共役がんを与えることが知ら
ように,第 1 章で求めた保存量 I1 の ψ
れています.
2.3.2 ジャック多項式の表示公式
ダンクル作用素の応用例をもう一つ挙げます.ジャック対称多項式に対する
明示的表示公式をダンクル作用素を用いて得ることができます.この公式はラ
ポワンテ・ヴィネによって導かれたものです( 421.
, N }の部分集合
・
・
・
集合{ 1, 2,
(2.280)
. ., Ji},
J = {J1, J2γ
IJl=i
(2.281)
(J の要素の個数が i),
(2.282)
J1 < J2 <・・・< Ji,
に対ーして
X J
=II
(2.283)
XJk,
D1i + i(3)
・(
・
・
D h + 2,8)
月(
D 1 = (D11 十
(2.284)
2.3 保存量と波動関数:補足 91
と定めましょう.そして,
L
Bt =
(i < N )
X J D J
JC{l,2,・
(2.285)
,N)
とします.以上で準備は完了しました.
定理 2.53
パーティション入=(入 1 ,
入2 ,
・ 1 入N ‑ 1 ) (ただし入 N
= 0)に
対するジヤツク対称多項式は
γ
凡
(x) = c (
B"!if ̲1 )入 N ー1・
・ (Bi )
入r>‑a(Bt) 入1 入2 1
(2.286)
と書ける.この規格化定数は
r
N ‑ 1
C入 =
Ck(
入1,
c叫ん・九+ i),
,
入k+l) =
(2.287)
r
((k + 1 一 仰 + 入z 一入山−. >− k+1, (2.288)
i=l
と与えられる.ここに,ポッホハンマーの記号
(
α)
n =α
(
α+ 1(
)α+ 2)
・
・
−
(α+ n ‑ 1),
(2.289)
(
α)
o = 1,
(2.290)
を用いた.
証明は省略します.
この定理を用いてジャック多項式を具体的に計算することができます.実際
に手で計算するのは大変ですが,マセマテイカやメープル等の数式処理プログ
ラムを活用すれば面白いようにジャック多項式が得られます.皆さんも楽しん
でみて下さい.
問題 2.54
四変数,|入 1 = 4 の場合について
P(4) =
十
4 β 6 β(
1 +β)
m(4) 十 一 − m(31) +
m(22)
3 +β
(
2 +β
(
)3 + (3)
(2.291)
12,32
24β3
(2 +β
(
)3 +β)m(212) + (l +β
(
)2 +β
(
)3 +β)
m(l4),
τ
.
n
'
2β
β(
3 + 5β)
' 12β2
町 1) = m(31 ) 十 立/jm(22 )十
百 円 ( 212 ) 十 匹w
m (門
(2.292)
2 β1 2 β2
l‑'(22) = m(22) + l+"/jm(212) + (l +β(
)1+2{3) m(l4),
(2.293)
12β
(
円212) = m(2 戸 ) 十 一 一 一 m(l4),
ー
1+3,3
(2.294)
円
円
92
第2 章川遊び量子可積分系
(2.295)
)
Pc14) = mc14ヲ
となることを調べよ.
問題 2.55 モノミアル対称、多項式をべき和対称多項式で表す式
ffi(4)
= p4
問( 3 1) =
(2.296)
ぅ
‑ p 4 + p3p1,
1 "
1
(2.297)
(2.298)
mc22) = ‑ 2 p 4 + 2P2,
"
l η1
mc2 12) = P4 ‑ P3P1 ‑ 2P2 + 2P2PJ.,
1 " 1 η1 '
1
1
mc14) = ‑ 4 p 4 + 3 P担 1 +ず2 ‑ 4P2P1 +亙Pi,
(2.299)
(2.300)
を用いて,
6
,.
円4l = (1 + ,6)(1 + 2,6)(1+3,6)p4 +什'
O ¥
8β
/1 ' n 0 ¥ I
唱
i
円川内町
?
2
6β
2
3,6
P2P1
+
)1+3,6) P2 (1+,6)(1+2,6)(1+3β) l
)1 + 2 β(
(
(1 +β
Q3
+ .,
1
(2.301)
1
−β β
門
五河戸時
的 1) =石万戸内+日存
P3Pl
4
,e2
2
,6(3 ‑ ,6)
−p j
一)2ri
一一一
一−P2P1
一一
+一
+β
2(1
1 +一
2
+β)
2(1
(1 −β)
Tl
ペ22) =
I(
(2.302)
‑
2β
P3P1
)1+2β)
(
( 1 +β
‑ 2(1+,6)(1+2,6)P4 一
̲2
,6(1 −β)
2
1 +β十 β2
P ョ十
)1 + 2,6) 凡
(
2(1 + ,6) (1 + 2,6 )辺( 1 十 β
+
,.
1""'(2 12)
4
,e2
)1+2,6)d'
(
2(1 + β
1,6
1
(2.303)
1
?
= 古3j3P4 ‑ 1+3,BP3P1 一夜古研P2
4
引
1‑3β
一一P1
一
一
一
一
+
1
r・
2(1+3β
β 凡
2(1 + 3)
1 '
1
1
1
1
l‑'(14) = ‑ 4 p 4 十 3P3P1 + sP2 4P2PJ: + 24Pi ぅ
内
(2.304)
(2.305)
内
と書けることを確認せよ.
2.4 まとめ
本章では,カロジェロ・サザランド模型の基底状態および任意の励起状態の
波動関数を記述する方法を考えました.励起状態波動関数がジャック多項式で
2.4
まとめ 93
与えられること,および,ジャック多項式の基本的な性質を用いてカロジェロ・
サザランド模型の相関関数を計算する方法を説明しました.ジャック多項式の
存在定理やさまざまな明示的公式の応用を楽しんでいただけたことと思います.
第 l 章でも本章でも保留してしまったカロジェロ・サザランド模型の量子可
積分性の議論を,次章においてー全ての命題を証明してみせるスペースはあり
ませんがー完成させたいと思います.ただし,ジャック多項式をそのまま扱う
のではなく,一段高いところから取り扱います.すなわち,マクドナルドがジヤ
ツク多項式に触発されて到達したある美しい変形理論について述べます.
演習問題
2.1 実験で観測されるどのような量が密度相関関数によって表現されるか考えよ.
ランダウのフェルミ流体理論を用いてカロジェロ・サザランド模型の準粒子の
性質を説明することができるか?
2.2
2.3
カロジェロ・サザランド模型の密度相関関数がうまく計算できるのはなぜか?
2.4 シューア多項式は行列式を用いて定義されたが,一方,ジャック多項式は行列
式ではない方法で定義された.その理由を考えよ.
2.5 量子可積分系において,互いに可換な保存量の果たす役割を考えよ.
9 4 第 2 章川遊びー量子可積分系
第 3 章
木登り −可換 な作用 素と固 有関数
ジャック対材、多項式のことを研究しているとき,マクドナルドは,もっと美
しい世界があることに気がつきました.ジャック対称多項式の範囲に留まるよ
りは,この新しい世界に進んだ方が見通しが良くなります.互いに可換な保存
量,及び\それらを対角化する固有関数の構成について,透徹した議論が展開
されます.それを味わって頂きたいと思います.
この章ではもう一つ,対称、多項式の理論を 1 + 1 次元の量子場の理論に対応さ
せるという,一見奇妙な関係について論じます.この対応を良く調べると,カ
ロジ、エロ・サザランド模型から出発して,全く違った量子可積分模型の世界に達
する不思議な抜け道が見えてきます.これについては次章でお話しますが,こ
の章ではそのための準備をしましょう.
3.1 無限変数の対称多項式:対称関数
前章で考えたジャック対称多項式 Pλ (特に β=1 の場合がシューア対材多項
2.143 )の固有関数として次の二つの条件で定められ
式)はハミルトニアン Hβ (
る対称多項式でした:
① モノミアル対称多項式による展開を持つ:
μ(J)mw
,
P 入 = m 入 十 L uλ(
(3.1)
μ<入
② Hβ の固有関数である:
(3.2)
実は,ハミルトニアンの固有関数系としての定義の他に,直交多項式系として
ジャック対称多項式を定めることもできます.すなわち,ジャック対称、多項式
, N 変数対称多項式の空間に定められた内積
は
(!,
(3.3)
£
−土 cP.
」」.
f(X)g(x) n(l ‑xixi1 )
β
N! J
J 21円 X1 2πH x N
3
に関する直交多項式系として,次の二つの条件で完全に特徴付けられます:
① モノミアル対称多項式による展開を持つ:
Pλ =
mλ+ L:u (β)m w
(3.4)
入μ
μく入
② 内積( 3.3 )に関して直交する:
入
手 μ ならば
= 0.
(3.5)
上の二つの同値な定義のどちらを採用しでも,ジャック対称多項式の展開係数
U 入(
μ(3)が一意的に定まり,しかも N
に依存しないわけです.ただし,変数を
増やせばふやすほど,多くの展開係数円μ(
β)が必要になります.それでは,一
足飛ぴに変数の数を無限に増やした極限で考えればうまい土俵が得られるので
はないでしょうか?この素晴らしいアイデイアを実行するためには,「無限変数
の対称多項式の空間に作用するハミルトニアン」もしくは,「無限変数の対称多
項式の直交性がどのように定められるか J を調べなくてはなりません.以下で
調べるように,ジャック対称多項式の兄貴分であるマクドナルド対称、多項式に
ついても全く同様の事情があります.対称、多項式の無限変数版は対称、関数と呼
ばれますから,この章の役者達は,シューア対称、関数,ジヤツク対称関数,及
び,マクドナルド対称関数となります.この節では,対称、関数に関する事項に
慣れてもらうために,シューア対称関数,ジャック対称、関数,マクドナルド対
称関数それぞれについて,内積と直交性を(証明なしに)紹介し,対称関数の具
体例をいくつか見ておくことにします[27], [28], [34J.
3.1.1
シューア対称関数:内積と直交性
無限変数版の対称、多項式である対称関数に対して内積を考える場合,多重積
分( 3.3 )を用いることは変数が多すぎてできませんが,ベき和対称関数
Pn =
L:xf
(3.6)
を基礎にうまい内積を導入することができます.この考えは,対称関数とハイ
ゼンベルグ代数のある絶妙な対応が基となっています.我々はこれから,この
対応についていろいろな側面から考えることになります.
まず,モノミアル対称関数をべき和対称関数で表現する公式を(とりあえず 3
次まで)用意しましょう:
m(l) =Pi,
96
第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
(3.7)
(3.8)
m ( 2 ) = P2,
1
2
1
2
m(12) =
(3.9)
‑ p 2 十 − pJ:,
m ( 3 ) = p3,
(3.10)
m(21) = ‑p3 十 P2P1,
(3.11)
1
1
1
P 2 P 1 + ‑p'{.
m(13) = p 3 ‑
6
2
3
(3.12)
ここで,両辺は無限変数の多項式であることに注意して下さい.例えば,
m(12) 二 X 1 X 2
+ X 1 X 3 + X 1 X 4 +・・・
.
.
・
+ x 2 X 3 十X 2 X 4 十
十X 3 X 4
+
= ‑
(3.13)
)2
・
・)十;( x 1 + X 2 十 X 3 + ・
1η
1
2
+
・
・
+・
P2
+ ‑p]'.
2
等と確かめることができます.他の例についても確認しておいて下さい.
ベき和関数 P n によって
)
入
(
£
P 入=
ITP入
(3.14)
a
i=l
と定めると,この p 入は有理数係数の対称関数の成す空間,すなわち, A q =
A ⑧z Q の Q 基底になっています.整数係数ではなく,有理数係数で対称、関数
の空間の基底になることに注意して下さい.これを用いて,対称関数の空間上
に次のように内積を定めましょう.
定義 3.1
A q 上の内積を
(3.15)
入μZλ
) = 5r,
Pμ
(pλ ,
により定める.ここに,パーティション入に対して
Zλ =P
i m ;・ mi!,
(3.16)
)
・
・
m 包= m i (入)は,入j = i となる入j の総数,即ち,入= (lm12m2 ・
と定める.
具体的には,
(p1,P1) = 1 う
(3.17)
(p2,p2) = 2,
(3.18)
3.1 無限変数の対称、多項式:対称、関数 97
(pi,Pi) = 2,
(3.19)
(p3,p3) = 3,
(3.20)
(p2Pi,P2P1) = 2,
(3.21)
伊r,Pr) = 6
(3.22)
等となります.
実は,シューア対称関数は次の二つの条件で一意的に定められる対称関数と
して特徴付けられます:
①
モノミアル対称関数を用いて
S 入ニ m 入 + 乞 川 町
(3.23)
と展開される.
定義 3.1 で定められる内積に関して直交関数系を成す:
②
(sλ ,
sμ
) = 0.
入
手 μ ならば
(3.24)
次数 2 の場合に具体的に計算してみましょう.まず,①に従って
8(2) = 町2) 十 川 ( 12) = (1 ‑
(3.25)
P2
1
1 ,.
S(l2) = mc12) = ‑ 2 p 2 + 2P1
(3.26)
とおきます.直交性②から係数 u に対する条件を求めれば,
0 = (s(2)
ペ
ロ
)
)
=
2¥
2/
pi)
22
(3.27)
=ー 1 十 u
となり u = l を得ます.
次数 3 の場合も同様に,
8(3)
= m(3) + v m c 2 1) + w mc13)
= {1 ‑ v + 3) p3 + {v ‑ 2 )P2P1 + 6Pf,
I
W ¥
I
W ¥
7ll
(3.28)
sc2 1) = m c 2 1) + y mc13)
= (‑1 +
u 1‑
p3 + (
1
1
(3.29)
1 。
sc13) = m(l3) =
言p3 ‑ 2P2P1 + 5PJ',
とおいて,直交性を用いればり= l,w = l,y = 2 となります.
98 第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
(3.30)
以上の計算より
S(1) = m(l) = P1,
(3.31)
1
1
S(2) = m(2 )十 m(l2) = 2P2 + 2pf,
(3.32)
1
1
S(12) = m(12) = ‑ 2 P 2 + 2pf,
(3.33)
内
1
1
1
♂f'
S(3) = m(3) + m(2 1) + m(13) = 3P3 + 2P2P1 +
1 つ
1
s(21) = m(21) + 2m(13) = ‑ 3 p 3 + 3Pf,
(3.35)
1 。
1
1
言P3 ‑ 2P2P1 + 5Pf,
S (リ) = m(13) =
(3.36)
0
(3.34)
という公式が得られました.
また,シューア対称、関数のノルムを具体的に計算してみると
=1
・
・
・
川= (s(2), S(2)) = (s(l叩 8(12)) =
(S(l), S (
(3.37)
入 = 1 となることが知られて
入 S)
となることが確認できます.実は,一般に( s,
います.
以上のことをまとめておきましょう.
命 題 3.2
, A q の正規直交基底を成す,即ち
シューア関数 Sλ は
(3.38)
μ・
.,
) = b>
sμ
(sλ ,
べき和対称関数に関して
(3.39)
w(pn) = (‑l)n‑1Pn
と定めることで,対称関数環 A q の自己同型が得られます.ただし, ωは線形
写像であって,対称関数の積 Jg を積 w(f)w(g)に写すものとします.このと
き,美しい関係式
(3.40)
w sλ =sλ
が満たされます.ここに,入F は入の共役です.上の具体例でこれを確認して下
さい.
3.1.2
ジヤック対称関数:内積の β・変形
ジヤツク対称多項式の無限変数版であるジャック対称、関数もある内積に関す
る直交関数系とみなすことができます.
l = A ③z Q ( m と記しましょう.ここで, βで変型さ
β
数の対称関数環を A q (
れた内積を次のように定めます.
3.1 無限変数の対称、多項式:対称関数 9 9
定 義 3.3
A Q(
β)上の内積を
(p入,
pμ
) = 0,
入μ
Z入β−
e(
)
入
により定める.ここに,
(3.41)
Z 入は式( 3.16 )で定められるものとする.
= p 入もシューア対称関数同様,次の二つの条件で一
意的に決定されます:
① モノミアル対称関数を用いて
凡 = m 入 + L : u入μ(
β)
mμ
(3.42)
μく入
と展開される.
② 内積 3.41 に関して直交関数系を成す:
(P,
入 Pμ
) = 0.
入
# μならば
(3.43)
意してください. β−
1 が自然なパラメーターであることについては以下で触れ
ます.
シューア対称関数の場合と同様にこれらの条件を用いて 3 次までのジャック
対称関数を求めると,次のような公式を得ることができます.
Pc1)(x) = p i ,
内2) (x)
(3.44)
=
市P2
1
(3.45)
Pc 門 (
x) = ‑2P2 +
1
'l
(3.46)
P(3)(x) = (l +β
(
)2...1o¥P3+11
+〜
3β
』
3 、/円
l
刀、
P2P1
132
(3.47)
1五
‑ /
3万四i +五五
β
Pc21)(x) =一百五p3 +百
百pf,−
(3.48)
1
1
1
Pc13)(x) = 3P3 ‑ 2P2P1 十 5Pf・
(3.49)
0
問 題 3.4 4 次以下のジャック対称関数を全て計算せよ.
また,シューア対称関数の場合と違って,ノルム (
P ゎ凡)は非自明な式で表
されることが知られています:
100
第 3 章 木登りー可換な作用素と固有関数
命 題 3.5
(s) +βl(s) + 1
T T
) = 8;̲,,,, 11
九
ぅ
(P入
μ μ
(3.50)
/
s) + ;Jl(s) + 3
誌 α(
3 なる例について確認
問題 3.6
せよ.
ジャック対称関数 P 入は正規化されていませんので,双対基底
s)十周(s) +βp (β−l)
Qt/‑')= Q 入 = n α (
(3.51)
誌の)+ βl(s) + 1 入
を導入するのが便利です.そうすればもちろん
(3.52)
入 P,,,) = 8;̲,μ
(Q,
となります.
1 の整数係数多項式になるように規格化された
また,係数が α三 β−
=IT (αα(s) + l(s) α)Q¥"l (3.53)
s) + l(s) +
α(
イ)=日(α
十
s 入
ε
s E入
も便利です.
問題 3.7・ 次の式を確認せよ.ただし α=13‑1 である.
J(l) = P1,
(3.54)
J(2) = αP2 +PI'
(3.55)
J(12) = ‑p2 十 PI,
(3.56)
2P3 + 3αp仇 +Pi,
J(3) = 2α
(3.57)
αー l)p仇 +Pi,
Jc21) =一αp3 + (
(3.58)
Jc13 )二 2p3 ‑ 3p2p1 +Pi,
(3.59)
+ 6αP2PI +PI,
+ (3α −l)P2PI +pf,
2p3p1 +
J(4) = 6α3p4 + 8α
−
α
Jc3 1) = ‑2α2P4 + 2α (
−
α l)p4
Jc22) =一α(
−l)P2Pi +pf,
Jc14) = ‑6p4 +
(3.61)
p3p1 + (1
4α:
(3.62)
α
十2 (
Jc2 12) = 2αp4 ‑
(3.60)
α−3)P2PI +PI,
+(
‑ 6p2pi +pf.
(3.63)
(3.64)
特に,みにおいてば |の係数が 1 となっていることに注意せよ.
3.1 無限変数の対称多項式:対称、関数 101
シューア対称関数の場合と同様に
ω(
Pn) = (‑l)n‑lα'P n
(3.65)
白
と定めれば,
Wa Jia)
i)
(3.66)
が成立します.
ここで,第 2 章 2.2.8 節で用いた内積
(!,
品戸 !
!
い
g(x)
(3.67)
iXj1)
β
との比較をしましょう . N 変数のジヤツク多項式はこの内積に関して直交性,
= 九C N
(3.68)
lI
を満たします.ここに
r一一
J仇
dxrv
r r
= ‑1¢r 千
ι
n
(1‑ X i X j 1 )
β
N!J J 2げ =Ix1 .・一ーと−
2πH x N 出
(3.69)
です.このことからわかるように,この章で導入した内積( 3.41 )と,前章で考
えた内積(3.67 )は
Jim
JV
(3.70)
→∞じN
という関係で結ぼれています.
前章で取り上げた内積の公式( 3.68 )は三つの因子の積に書かれていますが,
それぞれの因子の由来を整理しておきましょう:
べき和関数の内積
Hα(s) + (3l(s) + 1
(
s) + βl(s) + β
ε
s α
入
基底状態
C N
多項式の積分
βN + a'(s)
−βl' (s)
Iλ
I ,BN + a1(s) + 1 ーβ(l'(s) + 1)
sε
3.1.3 マクドナルド対称関数:内積の (
q, t)・変形
内積の変型を進めます.まず, q, t を不定元とし, F = Q ( q , t)を q, t の有
理関数体とし, F 係数の対称関数環を A F = A ⑧z F とします.ここで,次の
ように定めましょう:
102
第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
定義 3.8
A F 上の内積を
n sす
) 1
入
C(
(3.71)
μZ 入
入,
加入品) = 8,
により定義する.
本章では,この内積に関する直交関数系を調べます.この対称関数はマクド
が次
x; q, t)
ナルド対称関数と呼ばれます.我々は,マクドナルド対称関数 P 入(
の二つの条件を満たすものとして一意的に定まることを議論します:
① モノミアル対称関数を用いて
入,,,,( q, t)m,,,
ン
三
x;q, t) = m λ十
(
P入
(3. 72)
μく入
と展開される.
② 内積(3.71 )に関して直交関数系を成す:
正 μ ならば
手
入
(Pλ,P,,,) = 0.
(3.73)
内積( 3.71 )と展開( 3.72 )を用いて 3 次までの例を計算すると次のようにな
ります:
(3.74)
P(l)(x; q, t) = P1,
(1 + q)(l ‑ t) 2
(1 ‑ q)(l + t)
P2 +
P(2J(x; q, t) =
2(1 ーが)
2(1 ーが)
)=
P(l2J(x; qパ
1
(3. 75)
1 "
2P2 + 2pf,
(3.76)
(1 ‑ q3)(1 ‑ t2)
1 1 ーが( 1 ‑ q)(l ‑ q2)
附
p3 +
P(3)(x;q,t) =一一−
2(1 ‑ qt)(l ‑ q2t)
3 1 ‑ t (1 ‑ qt)(l ‑ q2t)
3
(1 ‑ t)2
1 1 q2 1 q3
61‑q
ll‑t2 q ‑ t
11‑t3 1 ‑ q
石2P3 ‑ 2 1士τTてq̲(iP2P1
土
て
P(21J(x; q, t) = ‑31てτ
p
+ 一 一 一1一‑−
q (1‑qt)(l‑q2t) 1'
2 + q + t + 2qt 1 ‑ t 3
一
, pf,
qt"jτ
‑一
1一
6
1 。
1
1
面pf.
P(13)(x;q,t) = 3P3 ‑ 2P2P1 +
(3.77)
(3.78)
i
(3.79)
マクドナルド対称関数についてもノルムの表示式が知られています:
命題 3;9
内積(3.71 )に関して,
T T 1 ̲ qa(s)+ltl(s)
、
日 1 ‑ qa'
x; q, t), P,,,,,(x・ q, t)) = 九
(Pλ(
,
μ
(3.80)
が成立する.
3.1
無限変数の対称多項式:対称、関数 1 0 3
マクドナルド対称関数 P 入(
x; q, t)のデュアル Qλ (
x; q, t)
も
T T 1
qa(s)tl(s)+l
1
̲ n l A L 1 dlo¥
11
Q 入(
x; q, t) =
ε
s入事
(3.81)
p 入(
x;q,t),
(Q入,九) = O>.,μ
,
(3.82)
と定められます.また,ジャック対称関数の場合に倣って
J入(
x; q, t)
(3.83)
= I I ( 1 ‑ q刷
ε
s 入
sモλ
と定めましょう.
問 題 3.10
次の式を確認せよ.
J(l)(x; q, t) = (1 ‑ t)p1,
(3.84)
(1 ‑ q)(l ‑ t2)
(1 + q)(l ‑ t)2 ̲2
J(2)(x;q,t)=
2
P2 十
2
pf,
(3.85)
J(l2)(x; q, t) = ‑
(1‑ t)(l ‑ t2)
2
P2 +
(1 ‑ q)(l ‑ q2)(1 ‑ t3)
J(3)(x; q, t) =
3
(1
t)(l ‑ t2) 2
2
pf,
p3 +
(3.86)
( 1 ‑ t)(l ‑ t2)(1 ‑ q3)
2
+ (1 + q)(l + q + q2)(1‑ t)3 3
6
=‑
J(21) (x; q, t)
(3.87)
1‑'l 1
(1 ‑ t)(l ‑ t3)(1‑ q)
(1‑ t)(l ‑ t2)(q ‑ t)
3
p3 ‑
.
P2P1
+ (1 ‑ t)3(2 + q + t 十 2qt) ̲3
6
J(l')(x;q,t) =
+ (1
P2P1
(3.88)
1‑'l>
(1 ‑ t)(l ‑ t2)(1
3
t3)
p3
(1 ‑ t)(l ‑ t2)(1‑ t3)
,.
t)(l ‑ t2)(1‑ t3) ̲3
6
P2P1
(3.89)
1‑'l ・
最後に,内積の退化のしかたについてまとめておきましょう:
シューア
マクドナルド
H
1 ‑
,.,>.,
(p入品)
,̲. = O)..,μ
,̲. Z入. L lL l ‑今
tハ
z
1
oλ,μZ入β−e(λ)
ジャック
104
(p入,
pμ
) = 0λ,
μZ入
(3.90)
t=qβ q→
(p,
入Pμ
) =
q=t
−
ー
一
一
一
一
一
ー
ー
今
第 3 章木登りー可換な作用 素と固有関数
3.2 存在定理
マクドナルド対称多項式の存在定理を目標とします.以下,マクドナルドの
論法に沿って進んでいきます[ 27J.
3.2.1 対称関数の基底
まずはじめに,内積( 3.71 )に関する正規直交基底に関する性質をうまく表現
することを考えましょう.まず,無限積の記号
q)oo =日( 1
α;
(
(3.91)
aqr)
r=O
を導入しておきます.ここで,不定元の列 X
)
), Y = (y1, Y2γ ・
= (x1, X2, ・・・
に対ーして
txiyj; q)oo
(
円
ぅ y;q パ)=川一一一一ー
♂
(
日
(3.92)
{ } (x包U
と定めます.この II(x, y; q, t)はべき和対称関数でうまく展開することができ
ます.
命題 3.11
q t)のべき和対称関 数仇による展開
;
ν
II(x ,
)
入ν
II(x, y; q, t) = ) :̲ 2 ̲ p ; , ( x ) p(
(3.93)
が成り立つ.
n sす
唱
)
入
(
£
q,t)=z入
九(
h
入
(3.94)
とおきました.これは, q,t に依存する内積( 3.71 )に現れる規格化定数である
ことに注意してください.
証明.
まず,
(3.95)
同め=‑
を用いれば,
附(
日
三
3γ :
t、
(3.96)
=
i,j r:'.".0 叫 2:1
付
号
三
=話 i;
3.2 存在定理 105
叫> l
•
n
となります.よって
山 ; υ)=
(3.97)
=Q 主正コ(可η
r Pn(xYnPn(YYn
=〉;一土一pλ (
x)p入(
y)
ケ Zλ (q, t)
を得ます.ここで,最後に入= (lr12r2 ・・・)を用いてパーテイションに関する
口
和に書き換えました.
内積( 3.71 )に関する直交関数系の性質が集約される次の命題は重要です.
uλ ,m は|入|次斉次対称関数とし, (
u入
)
ぅ (
v入)が A F の F −基
命 題 3.12
底であるとする.このとき,次の二つの条件は同値である.
全ての入, μ に対して( u 入
う
り
μ
) = 0>
.,
μ・
(a)
ε
(b)
包入
(
x)v;..(y) =日 (
x υ
;
q t
(3.98)
(3.99)
入
pHx) = zλ(
q,t)
証明.
= 0>
.,
μ です.基底 u ゎ 引
を
匂入=乞 α
入ρpう
;
匂λ
p
I>
=
λp P p
(3.100)
p
とべき和関数で展開すれば,
(uλ パμ) = 乞 α
入九p
(3.101)
p
と書けます.このとき,条件( a)は
2二α
入pbμ
p =
0>.,μ
(3.102)
p
と同値です.一方,条件(b )は,命題 3.11 より
:L:
>
入(
x)v;..(y) 2
.:::>;(x)pp (ν)
=
と書き換えられます.即ち
2二α p b =九
入
λ
σ
σ
106 第 3 章 木登りー可換な作用素と固有関数
(3.103)
と同値です.正方行列 A , B に関して A B = E と B A = E は同値なので( 3.102)
口
( 3.103 )は同値です.よって条件(a )と( b )は同値.
と
x; qぅt)'
ここで,内積( 3.71 )に関するモノミアル対称関数 m 入の双対基底臥 (
すなわち
x; q, t), m μ) = 8>.,μ
(gλ (
(3.104)
x; q, t)を導入しましょう.まず,
という関係で定められる臥 (
定 義 3.13
対称関数 9n(x; q, t)を,母関数を用いて
(3.105)
9n(x; q, t)
と定義します.さらに,パーテイシヨン入に対して
(3.106)
x; q, t)
x;q,t)=ITgλ(
gλ (
i>l
とおきます.このとき,式( 3.97 )の計算と同じ論法によって
−
土q, t) p>.(x)
9n(x; q, t) = ) : −
ムd Z 入(
(3.107)
l=n
λ
|
となることがわかります.実際,式( 3.97)においてめ=的=・・・= 0 とす
れば
宮町全=耳吋j可仇
(3.108)
x)yn)
(
ι
〜 Pn(xynynrn
)
乏ピ‑;‑f ( 三
=II
n2'.l rn=O
−
=デー土
ケ Zλ (q, t)
川、, /
x)ylλ |
p λ(
となり,式( 3.107)を得ます.このことから,
IT(x, y; q
う
i>l
¥n=O
=2ン入 (x; q, t ) m(入y)
I
(3.109)
が導かれます.よって,命題 3.12 より:
命 題 3.14
x )の双対基底であ
x; q, t)は m 入(
内積(3.71 )に関して, g入(
る.即ち,
‑
(x)) = 8>.,μ
x; q, t), mμ
(g入(
(3.110)
3.2 存在定理 1 0 7
問 題 3.15
定義に従って計算し,
−
1‑t
g1(x;q,t)
= 一 pi,
l‑q
1 1 ‑ t2
1 (1 ‑ t)2 2
g2(x; qパ)=一
p2 +
一
2一
1一
‑−
q2
2 π弓戸P1,
1 1 t3
1 (1 ‑ t)(l
g3(x; q, t) =一一一−p 3 +
3 1 ‑ q3
2
(3.111)
(3.112)
t)2
っP2P1
什
(3.113)
十 1 (1 ‑ t)3 ̲3 、
一
6 (1 ‑ 一
q)3r υ
等となることを確認せよ.
問題 3.16
1入
|
三 3 に対して gλ (
x; q, t)を求め, m 入のベき和による展開( 3.7ー
)
(3.12 )を用いて,内積( 3.110)を確認せよ.
3.2.2 線形自己共役作用素
マクドナルド対称多項式を構成するためには,ジャック多項式のハミルトニ
アン Hβ に相当するある線形自己共役作用素を取り扱わなければなりません.
この節ではそのための準備を行います.
線形作用素の自己共役性について議論しましょう. E : A F −
→ A F を F −線
形作用素とします.このとき,次の命題を得ることができます.
命 題 3.17
次の二条件は同値である.
(a)
E は自己共役即ち,
b︶
︵
全ての f,g εA F に対して (
E f g) = (!, E g )
ぅ
ヲ
(3.114)
ExTI(x,y;q,t) = EyTI(x,y;q,t),
(3.115)
ここに, Ex,Ey はそれぞれ変数 x,y への E の作用を表す.
証明.
まず,モノミアル対称関数を基底として E の行列要素を
内μ
=(E
m,
入m μ)
(3.116)
とおけば,条件(a)は
巴
入μ
=εμ入
(3.117)
と同値です.なぜなら,内積の対称性から,(m ゎ E m μ) = ( E m仲間入)となる
からです.
次に,条件(b )を調べます.まず,命題 3.14 と式(3.116 )より,
E m入 =
108
第 3 章木登り
L:>ル
λ
可換な作用素と固有関数
(3.118)
となります.また,式( 3.109 )より,
IT (川; υ)=
L m入(x)g (y) = 乞 g(入x)川(y)
λ
ですから,条件(b )は
Le μgμ(x)g(入y) =Le入μ9入(x)gμ(Y)
λ
入μ
,
入μ
,
と同値です.これは( 3.117)と同値なので,条件( b )は条件(a)と同値となり
口
ます.
3.2.3 マクドナルドの差分作用素
本節からしばらくのあいだ, η 変数の対材、多項式を考えます. A n , F においては,
巾和対称多項式 P n は独立ではなくなります.実際, n = 2 の場合 P n = xf +x2
,
で
3
つD
p 一一 一
2P A
η
d
B
1
i
寸
よ
︒
(3.119)
1A
P︒
一
円
4
等の関係が成り立ち独立ではありません.よって, n 変数の場合,べき和対称
多項式 P n に対する内積( 3.71 )は無意味になります.この状況を, P n ではなく
x; q, t)を双対基底とするような A n F 上の内積を定めることで回避
m 入と臥(
しましょう.
入 ::; n となるパーテイション入に対
)
実は, n 変数の場合に制限しでも, C(
, Xnj q, t)が A n , F の F −基底を成します.(証明は省略します.)
−
・
・
入x1 ,
する g (
また,
2: g入(x; q, t)m>‑.(Y),
日(川; q,t) =
(3.120)
三n
£λ)
(
う
・ ,yn )
・Xn), y = (y1,・
・,
ここに, x = (x1 ,
が成り立ちますから, A n , F 上の内積を
定義 3.18
,
(x)) = 0>‑.,μ
)mμ
x; q, tぅ
(g入(
(3.121)
によって定めましょう.これで対称、関数環 A F 上の内積( 3.71 )を自然に A n , F
上の内積へ写し取ることができました.
ここで,マクドナルドによって導入された差分作用素を定義します.まず,非
2γ ・1αn )に対して
負整数列 α=(αl ぅα
Z白=
xrl
(3.122)
...
−l , n ‑ 2γ ・.,1, 0 )に対して
η
と記し,パーテイション入と J = (
3.2 存在定理 109
αH λ (
x) = det(x;i+n‑j)
(3.123)
=玄 ε(w)xw 例 入)= S 入(x) IJ(xi
切
Xj)
i<j
εS n
と書きましょう. ε
(
ω)は対称群の元 ωの符号を表します.
定 義 3;19
マクドナルドの差分作用素 Dn(X, q, t)
を
Dn(X, q, t) =αo(x)
巾) x
L
i
山
叫
日
(1 + X t同九,xJ (3.124)
ESn
i=l
と定める.ここに, X は不定元, Tq,x ; は q−差分作用素
(Tq,xJ)(x1 ,
・
,
・ xn) =f(x1,・・・,qxi ,
・
・
・
ぅ Xn)
(3.125)
また, (
w 5)
包
は w 5 の第 t 成分とする . x の各係数をもって
Dn(X,q,t)
(3.126)
r=O
= 1 です.また,
(3.127)
i=l jヲ
正
包
i
となります.なぜならば, XTq,x ;の係数は
仰)一 1 乞 巾)
t(wo);xwo
= a5(x)一丸山句(x) =II 生f
1
w E Sπ
j手i
.
J
(3.128)
命 題 3.20
I を T 個の要素からなる{ 1,2,・
・
・
,n }の部分集合とする.この
とき,
= LA1(x;t)
pr.
(3.129)
帆
と書ける.ここに,
A1(x; t)
二 tr(r‑1)/2
‑‑
.... ‑・・‑・3
ξI
包
山包
j'l̲l
問題 3.21
上の命題を証明せよ.
具体的に書いてみると
110
第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
山
(3.130)
(3.131)
包
正
i=l Jヲ
n;,
i<i
山
t
.#ヲj
,
k
J
,Xkl(3.133)
II 字弓.,zl包 ご1与三i九x;Tq,x1 九
… − ー −
i < j くk
X ; ‑ X t 申,c ‑ ""'l
昨i
l千i
J
手3
Ck
ヲ
内
等となり,とてもきれいな構造を持っていることがわかります.カロジェロ・サ
ザランド模型の場合は可換な作用素を構成することはできても,それらを明示
的に書き下すことが簡単ではなかったことに注意してください.これも,ジヤ
ツク多項式の状況からマクドナルド多項式へ拡張して考えることの利点の一つ
式を同時固有関数として持つことを示します.
3.2.4 上三角性
モノミアル対称多項式を基底とするとき,差分作用素 D ;の上三角性を示す
ことができます.
・ 1 αn )とパー
(α1 ,
まず,補題を二つ用意しましょう.非負整数の列 α =
ティション
o= (n ‑ 1 η −2γ ・.,0 )に対して
ぅ
(3.134)
)αo(x)
x/
x) =α +δ(
8臼 (
と書くとき,
補題 3.22
Dn(X; q, t)m入 =
L n(l+Xtn
(3.135)
異なる置換
が成立します.
証明.
. ' V n )に対して,
.・
1,
(ν
任意の非負整数の列 ν=
(3.136)
Dn(X; q, t)xν
一1 z = 巾 1)
=αo(x)
W 1 εS n
II(1 + Xt(w10
包=
1
となります.ここで, ν=w 2 入とおいて, W z に関する和をとれば
(3.137)
q, t)m入
= a0(x)‑1
2二巾i ) n ( 1 + x t <叫10)iq
叫 1 ,凹 2 E S n
i)xw10+叫
叫 λ)
(
i=l
3.2 存在定理 111
ます.右辺で W 2 = W 1 W とおくと
l二巾i) II (1 + X t n iq 凹ぬ)日
α
o(x)‑1
(
叩 ヲ 凹1
巴S n
包=
1( 山
λ)
l
=玄 II(1 + Xtn‑iq(w州 )sw (x)
(3.138)
入
明
モS n i = l
となります.
口
もう一つ補題を用意します:
補題 3.23
αを入の置換とする.このとき,ある μ(三入)を用いて
sa(x) = 土sμ
(x)
(3.139)
と書けるか,もしくは
s0(x) = 0
(3.140)
となるかのいずれかである.
証明.
行列式の性質より従う.
口
次の具体例で確認しておいて下さい.
問題 3.24
1.
三変数のときに,
入= (1,
) α= (100), (010), (001),
S(o川 (
x) = scool)(x) = 0.
2.
入= (2,
) α= (200), (020), (002),
scoo2)(x) = 0,
sco20i(x) = ‑s(12J(x),
入= (12,
) α= (110), (101), (011),
S(
叩 l)(x) =
scoui(x) = 0.
3. 入= (3,
) α= (300), (030), (003),
S(o3o)(x) = ‑sc21)
S(o03J(x) = S(13J(x),
入= (21ぅ
) α= (210), (201), (021), (120), (102), (012),
0,
S(o21i(x) = ‑sc 門 (
x),
S(120)(x) = 0,
S(102)(x) = ‑S(13J(xぅ
)
8 ( 2 0 り(
x) =
となることを確認せよ.
112 第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
S(o12i(x) = 0,
さて,マクドナルド差分作用素 D ;の上三角性を示しましょう.
An,F に作用する差分作用素 D ;は,モノミア jレ対称多項式を
命題 3.25
基底にとれば,上三角行列で
t)mμ
(3.141)
q , t ) = I : q入itn‑i
cふ(
(3.142)
<5 入
μ
q, t) =
Cλ入(
i=l
となる.
シューア多項式のモノミアル対称多項式による表示の上三角性(命題
3.23 に帰
証明.
着します.固有値( 3.142 )は,補題 3.22 において X の係数を調べれば
(3.143)
i=l
口
となることから得られます.
3.2.5
自己共投性
内積( 3.121 )に関してマクドナルド差分作用素 D ;が自己共役であることを
示します.
一
一
一
一
一
一
一
一
「
命題 3.26
差分作用素 D ;は内積( 3.121 )に関して自己共役である,即
ち,全ての f,g εAn,F, 0 壬T 壬n に関して
(3.144)
g) = (!,
が成り立つ.
証明.
命題 3.17 より
Dn(X; q, t)xII(x, y; q, t) = Dn(X; q, t)yII(x, y; q, t)
(3.145)
を示せばよいことになります.ところが,
II(x,y;q,t) 1Tqx;II(x,y;q,t) =
1 ー均約
凸
11 一一ーで十
1 ‑ txiy1
(3.146)
となり,右辺が q に依存しないので
II(x, y; q, t)
, t)
1 Dn(X; q, t)xII(x, y; q
(3.147)
も q に依存しません.よって,式(3.145 )を示すときに q = t と仮定しでもよ
3.2 存在定理 1 1 3
いことになります.
多項式 f(x)と ω
ε Sn に対して z 叫 t(山内耳,Xi !
= 丸山 (
xw8f )ですから,
xw8
IT (1 + X t
(1 + XTt,xJ(
(
叫 )
i丸山 )
f=
i=l
と書けます.ゆえに
II (1 + XTt,xJ ( )!
Dn(X; t, t)f =α81
向
(3.149)
i=l
となります.特に,シューア対称多項式は, Dn(X;t, t)の固有関数となること
がわかります:
Dn(X; t, t)sλ = α81
II (i XTt,xi)(
十
i=l
=α81
II (1 + XTt,xJ(
i=l
7 n i +X
一一 α0 H
i=l
噌
i
T
L
U
八 +n
︑
八+x
α︑
u
(3.150)
二
日
(1 + Xt>'i+n )s
ー包
入
i=l
ここで,向付が行列式(3.123 )で定められることから Z ,均的+8 = tλ汁 n →α
入+ 8
となることを用いました.
マクドナルド対称関数に対する内積( 3.71 )は q = t のとき内積(3.15)に退
化します.そして,シューア対称関数 S 入は内積( 3.15 )に関して正規直交基底
(sわら) = 0>
.,
μ を成すのでした(命題 3.2 ). 他方,マクドナルドの内積( 3.71)
を η 変数の対称、多項式の空間に自然に制限することで内積( 3.121 )が得られま
した.よって, n 変数のシューア対称多項式 S 入が内積(3.121 )において q = t
としたものに関して正規直交基底( sわら) = 0>
.,
μ を成すことがわかります.
さて, D ;の自己共役性は q = t として考えてよいので,シューア対称多項
式を正規直交基底に選んで調べることができます.上式( 3.150 )より,
(Dn(X ;
い)
s>., Sμ
J = 0>.,μ
IT (1 + Xt>.i+n‑i)
(3.151)
i=l
= 0>.,μ IT (1 + Xtμi+n‑i) = (s>., Dn(X; t, t)sμ
)
i=l
となり, Dn(X;t, t)
が自己共役であることが示されます.
3.2.6
口
固有関数
前節では,有限個の変数の場合に調べましたが,ここでは無限変数の場合,
114
第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
つまり A p を考えます.
An,F → An,F は,制限準同型 ρm , n : Am,F →
‑
E n =
2二t
(3.152)
ーも
i=l
とすることで,制限準同型とのうまい関係
(3.153)
ρn,n 1 O E n = En‑1 Oρn,n 1,
が得られます.
補題 3.22 より
証明.
0 p山
0
一
︑
A
m︑
晶
F
−
円
y
S
n
Z
qa
m ︑入
w A斗
h −
u
同
同
H
Z
日
乞
凶
ヤ
白
山
叫
ρ
山
n
Z
−d
入の
る置換
(3.155)
同
ただし,右辺の S a と間入は η
−1 変数の対称多項式
となります.よって,式( 3.153)が成立するためには
s. ‑m,)
q"・
n,n '
ρ
(3.156)
0
が成立せねばなりません.補題 3.23 から αn > O の場合は ρn,n
iSa
= 0 とな
ることに注意すれば,この条件を
η
−1 変数の場合
乞 S =m 入 と な る
(3.157)
白
αλの
異なる置換
と書くことができます.ところが,これは補題 3.22 における
のです.
xo の係数そのも
口
よって, A p に作用する線形作用素を
E =
E n : A p → Ap,
』
(3.158)
と定義することができます.これまでの議論により,この作用素 E は三つの
性質
① Em
m
乞
凶 μ
(3.159)
3.2 存在定理 1 1 5
② e入入=乞 (
qん − l)t
(3.160)
一包
i>l
③ E は,内積( 3.71 )に関して自己共役,
(3.161)
を持つことがわかります.
マクドナルド対称関数の存在定理は次のように述べられます.
定 理 3.28 (マクドナルド)
パーテイション入に対して,条件
(a)
凡 = 乞 u 入μ
mμ
(b)
μ
:5̲ 入
もし入手 μ ならば (
P 入,九) = 0,
ここに, u 入μ E F, U)..).. = 1 ぅ (3.162)
(3.163)
を満たす対称関数 P 入= P 入(
x; q, t)εA p が存在して,ただ一つに定まる.
作用素 E の固有関数として,対称関数 P 入を構成します.いま, P 入が
証明.
条件(a )
と
J
e
︶
−C
︑
E Pλ =e入 P 入
(3.164)
を満たすとすると,( 3.159)より, v < 入なるパーテイションについて
e)..)..U入ν
= 玄 u 入 山ν
(3.165)
:5̲μ
:5̲ λ
ν
を得ます.即ち,
巴
(λλ −
evv)U>‑.v = 乞 u 山
ν
(3.166)
νくμ三 λ
となります . E の固有値はみな相異なるので, e入
入
ヲ
正 e v v であり,この式は,
U入
ν を ν< μ三入なる uλμ から一意的に決める漸化式となっています.よっ
て,条件( a), (c)を満たす P 入が存在します.
また, E は自己共役ですから
内入 (
P 入,九) = ( E P,
入 Pμ
) = (凡, E 九) = eμμ(Pλ,九)
となり,入手 μならむ入手正 e v v より, (
P 入,九) = 0. よって,条件(b )が成り
立ちます.
最後に,一意性を吟味しましょう.帰納法を用います.あるパーテイション入
に対して, μ<入なる全ての μについて凡が一意的 に定められたとしまし ょ
う.すると,条件( a )から
九 =m 入+
L:>
:λλ
μく入
というかたちに書けますが,九と内積をとると
116 第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
h
一一色と!El
μ 一(九,九)ヲ
λ
口
を得るので, P 入は一意的に決まります.
この存在定理の意味を確認しておきましょう.内積( 3.71 )が与えられれば,
グラム・シュミットの直交化法によって直交基底をつくることができます.例
えば,基底の順序をモノミアル対称関数についての辞書式順序(全順序)によっ
て与え,直交基底 P 入が得られたとします.辞書式全順序はドミナンス半順序
と整合しますから,上に述べた一意性よりこの P 入はマクドナルド対称、関数と
一致します.また,ドミナンス半順序と整合するどのような全順序から出発し
でも同じことです.これが存在定理 3.28 の意味です.
3.2.7 可換性
マクドナルドの差分作用素 D ;が互いに可換であることを調べましょう.ま
x )としましょう,即ち,
x )の双対を Q 入(
ず,内積(3.71 )に関する P 入(
(3.167)
入 Q,,,) = 8>.,μ
(P,
とします.つまり, Q 入=(P ゎ Pλ ) 1 p 入です.
命題 3.29
x; q, t)はマクドナルドの差分作
マクドナルド対称多項式 Pλ (
用素 Dn(X;q ぅt)の固有関数である,
n
L
γ
Dn(X; q, t)Pλ(川 t) =
.
υ)
x;
(1 + Xq>.;tn‑i)P入(
(3.168)
定理 3.28 の条件( a)より, P ゎ Qλ は μ 三入を満たす m μ の和で表さ
れています.また,命題 3.25 より, Dn(X;q ぅt)のモノミアル対称関数への作
証明.
用は上三角となります.このことから,
凡(川 t) =
Dn(X; q, t)
L:v μ(X; q, t)Qμ(x; q, t),
λ
"'5̲ 入
μ
X ; q, t)は上三角行列です.
と書くことができます.つまり,この係数行列りλμ(
X;q,t)
V 入(
μX; q, t) = μ
また, Dn(X;q,t )は自己共役なので(命題 3.26 ),内(
μX; q, t)は対称行列になります.つまり,上三角かつ対称、なので対
となり,内(
X ; q, t)は,補題 3.22 からわかります.
角行列となります.対角成分内入 (
口
; は P 入(x; q, t)によって同時対角化されます
命題 3.29 により,差分作用素 D ,
から,次のことが成り立ちます.
系 3.30
; は互いに可換である,
差分作用素 D ,
= 0,
(1 壬r,s 三n).
(3.169)
3.2 存在定理 117
3.2.8 確認事項
マクドナルド対称多項式は,内積( 3.121 )に関する直交関数系として,もし
くは,差分作用素
t(
D;=
包= 1
¥j 予正包
J
ν
I
の固有関数として,次のように特徴付けられるのでした.
① モノミアル対称多項式による展開を持つ:
P(
入x; q, t) =
L V>‑.,μ(q, t)m山),
りλ,
入
( q,
t) = 1.
(3.171)
μ
5,̲ 入
②
n;P(
入x; q, t) = Eq,t,
入
凡
(x; q, t).
(3.172)
ここに, Eq,t,>‑.
(3.173)
ジャック対称多項式の場合と同様に,多重積分を用いて η 変数対称多項式の
空間上の内積
(f,
一
f
f 一一一一…一
dx1
d中
一一
=百十・・?
一」ー
f(x)g(x )
ム
(x), (3.174)
J
J 2 w .../
コX 1
2πA x n
π (
xifx1; q)oo
」にム(x) = 11
(3.175)
J
(白山, q)oo
を導入することができます[ 271 ,この内積に関して D ;は自己共役となります,
= (f,
の内積( 3.174 )に関する直交多項式系となります.また,ノルムの公式も知ら
れています:
,
r r l ‑ a α (s)+ltl(s) r r
=丸山
)
tl 附 1
111 ー
ふ
s ελA
11.
sε
λ
1 一口イ (s)tn‑l'(s)
J
山 師
Ill.¥
1 '
(3.176)
C n
= (1,
凸(
t; q)oo(qti‑l; q)00
=日
II
(
ti; q)oo(q;
q)oo
(3.177)
です.(定数項 C n については文献[2 7],文献[ 2 8]のイントロダクションを参照.
また,文献[ 3 2]も大変興味深い.)
マクドナルド多項式の極限から,多くの対称多項式を得ることができます.
ここで,代表的な退化の例についてまとめておきます:
118
第3 章木登り
可換な作用素と固有関数
① q = t とおくとシューア対称多項式を得る,
入x).
, t,t) = s(
♂
Pλ (
(3.178)
② t = qβ とおき, F を固定して q → 1 とすると,ジヤツク対称多項式
Pl13) (x)を得る,
x ;日β)= Pl13)(x).
li叫 P 入(
(3.179)
q→ ょ
③ t = l のとき,モノミアル対称多項式を得る,
x).
x;q, 1) = m λ(
P 入(
問 題 3.31
(3.180)
具体例を用いて上の関係を吟味せよ.
=eh, t = eβh
問題 3.32
とおいて h で展開すると,ジヤツク多項式に関する運動量とハミルトニアン
Li
£
む
=
(3.181)
(3.182)
を用いて
+
旦β寸
ヰ
D;, = n + (
(3.183)
と書けることを示せ.
3.2.9
コストカ多項式
を
x; t)
唐突ですが,シューア対称関数 Sλ を用いて,対称関数 S 入(
(3.184)
II(x ,州
入
によって定義しましょう.命題 3.11 を用いて具体的に計算することができます.
たとえば,次数 2 まで見れば
Sc1)(x:
(3.185)
)x:
印(
(3.186)
s(12)(x;t)
而PI,
ポ
示‑:t)P2 +
一
=
(3.187)
3.2 存在定理 119
となります.係数九(0, t)も計算してやれば
Scl)(x; t) = ( 1 ‑ t)p1,
8(2)(り) =
1 ‑ t2
(3.188)
(1
t)2 2
(3.189)
1 ‑ t2
Sc12)
(1 ‑ t)2 2
1 一t3
(1 一t2)(1
8(3(
)川)=一γ P3 +
2
1 ーが
−
8(21 )(吋)=一ーす p3
れ(
)x;t) =
1 ‑ t3
‑
t)
P2P1
(1
t)3 3
(1 ‑ t)3 3
(1 ‑ t2) (1
2
(3.191)
(3.192)
t)
P2P1
(1
t) 3 3
(3.193)
等を得ます.
マクドナルドは対称関数 J入(
x; q, t)と S 入(
x; t)
の聞に次のような驚くほど美
しい関係を見つけました:
Jcl)(x; q, t) = Sci)(x; t),
(3.194)
Jc2)(x; q, t) = Sc2J(x; t) + qS(12)(x; t),
(3.195)
Jc 戸(
)x;q,t) =tSc2)(x;t )
十 Sc12)(x; t)
ぅ
(3.196)
Jc3l (x; q, t) = Sc3J (x; t) + (q + q2)Sc2 i) (x; t) + q3 Sc13J(x; t),
(3.197)
Jc2 i)(x; q, t) = tS(3)(x; t) + (1 + qt)Sc2 i)(x; t) + qS(i3)(x; t), (3.198)
Jc13J(x; q, t) = t3S(3)(x; t) + (t + t2)Sc2 i)(x; t) + Sc13J(x; t),
(3.199)
等.読者の皆さんも式( 3.84 )
ー
(3.89)を用いてマクドナルドの発見を追体験して
みてください.一般に
Jμ
(x;q,t) =
L K (μq, t)S (x; t)
入
入
(3.200)
入
と書けば,係数 K 入
(
μq, t)
が q と t の正整数係数の多項式になることが知られて
います.この Kλμ(q, t)
はコストカ多項式と呼ばれています.特に, q = 0, t = 1
とすれば,命題 2.44 におけるコストカ数になります,つまり K 入
μ
( O, 1) = K 入
μ
です.
コストカ数 K 入
μ は組み合わせ論的な方法で与えられます.また,一変数のコ
ストカ多項式 K 入
(0,t
μ )についても,ラスクー・シユツツェンベルジ、ェー[4 3 ]
や
,
中屋敷・山田[4 4]による組み合わせ論的な記述が知られています.二変数のコ
ストカ多項式 Kλ μ(
q ぅt)について上手い記述法を与えることは今後皆さんが解
明すべき問題として残されています.
3.3 対称関数の自由場表示
対称関数環の内積はべき和対称関数 P n を用いて定められました.実は,こ
120 第 3 章 木 登 り
可換な作用素と固有関数
の内積は無限個の調和振動子を用いてうまく表示されます.ここで扱われる調
和振動子の組は 1 + 1 次元の自由ボゾン場を量子化するときに現れるものなの
で,対称関数環のこのような表示は自由場表示と呼ばれます.(自由ボゾン場の
量子化については次章で議論します.)
対称関数環の自由場表示そのものは,自明な書き換え以外のなにものでもあ
りません.しかし,対称関数環に作用する作用素を効率良く扱うための手段と
]5 3]. 例として,以下にマクドナルドの差分
〜
してはなかなか面白いものです[4 5[
作用素 E の自由場表示を求めてみます.次章では,この考えをさらに進めて,
ピラソロ代数の対称関数環への作用を調べます.
3.3.1
自由場
・を基底に持ちます.無限変数
・
1P>.2 ・
対称関数環 A F は,巾和関数 Pλ =p λ
η 三 1 )はみな独立です.(有限変数のときは独立でな
で考えているので, P n (
いことに注意してください.)
ηεZ両)からな
無限個の独立な調和振動子の生成・消滅演算子の集まり αn (
るハイゼンベルグ代数を考えましょう.今,交換関係
1 一 円 lml
[am, an]= m 亡 材 Om刊
(3.201)
が満たされているとします.場の量子論の用語に従って,このようなハイゼン
ベルグ代数を自由場と呼びましょう.
自由場向の「真空J を,条件
nlO) = 0
α
(3.202)
)
η 三1
(
を満たすべクトルとし,フォック空間を,
(3.203)
IO)
α1,a‑2γ・・ ]
F = F[
と定めます.また,双対な「真空j を
(OIαn = O
(3.204)
(n 三一 1)
を満たすベクトル,双対なフオツク空間を,
]・
・
1, a2, ・
α
F * = (OIF [
(3.205)
とします.(双対な)フオツク空間の元に対して,記法
IO),
lα 一入 2 ・・
= αーλ
IO )
αλ
,
・
・
(OIα入 = (OIα入1α入2 ・
(3.206)
を用いましょう.
3.3 対称、関数の自由場表示 1 2 1
命題 3.33
自由場のフオツク空間について,次のことが言える.
(1 )対称関数環 A p と,自由場 α
n の(双対な)フオツク空間は,写像
l: F
一→ Ap,
α一
入 IO )
←
→ Pλ
♂: F 本一→ Ap,
(3.207)
(OIα入 1‑7 P>‑.
により同型である.
(2 )内積( 3.71 )は, F と F * とのベアリング
(p入,
pμ
) = (OIα入αーμ
IO)
(3.208)
として表現される.
証明.
同型写像をつくります.まず,
(
叫ζ弓刊
V =
(3.209)
とすると,交換関係[V ,
α]
叫 = p n V より
(OIVα一
入 IO)= p (
入OIVIO) = P 入
(3.210)
となります.また,この写像は全単射です.よって,同型 L は( OIV を左から掛
ける演算として実現されます,即ち
L:
α一
入 IO)日(OIVα一
入 IO)=ぬ
(3.211)
となります.次に,
V* = e x p
信号事)
(3.212)
とすると,同型 f についても同様に
l* : (OI 向 日 ( O
Iα入V*IO) = 臥
(3.213)
と
, V*IO)を右から掛ける演算として表すことができます. (2 )については,調
和振動子の場合の生成・消滅演算子の計算と同様です.
問 題 3.• 3‑i
口
上のことを確認せよ.
対称関数環 A p の元 f(x )の同型 L に関する原像を
l(j (
α)
IO))= (OIVJ (
α)
10) = f(x)
122 第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
(3.214)
と同じ記号 f を用いて表すと便利です.例えば,
1 ,.
1
2 三l>
2+ α
)= ‑2α−
)α
m(i2(
(3.215)
1 ,.
1
い
2と
2 −2 + α
)= α
)α
S(2(
(3.216)
とおけば,
IO)= m(i2)(x),
)α)
IO))= (OIVm(12(
α)
l(m(12) (
(3.217)
IO)= S(2)(x),
α)
IO)) = (OIVS(2) (
)α)
l(S(2(
(3.218)
等となります.
n 変数の対称多項式環 An,F の元を得るためには
(3.219)
とおけば,自由場のフオツク空聞から An,F への射影 ρn が
(3.220)
ρn : :F ー→ An,F,
(x1, ・ ,Xn)
p入
と得られます.
3.3.2
マクドナルド差分作用素の自由場表示
まず,補題を用意しましょう.
母関数
乞必 (x:
(3.221)
i=l
r>O
, Xn; 0, t)について,
−
,・
で与えられる対称多項式 gr(X1・
gi (九・, Xn; 0, t) = 1,
(x1,
ゐ
,xn;O,t) = (1
・
(3.222)
−吃叫主子
i=l
ヲz
3正
k
(r と 1)
包
(3.223)
が成り立つ.
部分分数分解
証明.
n
日
出
n
Z
十
同
n
H
州
が成り立つことは,両辺で z‑1 =叫における留数及び z → O における値を比
3.3 対称関数の自由場表示 123
較することでわかります. これより,
∞
ヤ
+ 白
日
n
H
同
n n
Z H
出
餅
口
次に,
補題 3.36
= i + t +. .+ tn 1
も
= l j 手t
"
(3.224)
J
が成り立つ.
証明.
まず,式(3.224)の左辺において九二叫における留数を調べると,全
ての k 手l について零であることがわかります.よって,左辺は定数です.こ
の定数の値を調べるためにわ= tx1, X3 = t2x1 うね= t3x1, . . . を代入すれば,
和の第一項目(i = 1)だけが残って
ト よT
左辺=
tJ
1 ‑ tn
11 Tて百三l = τ
てτ
=右辺
‑
(3.225)
となります.
口
対称多項式 gn(x;q,t)の自由場表示を考えます. gn(x; q, t)の母関数を用い
ると,
ζgn(x; q, t)zn =
耳
告i会
(q'x
(3.226)
となるので, gn(x; q, t)の自由場表示 gn (
α;
q, t)は
/
mz
一
n
uu
n α
n
y
z
n
\
﹄∞
乞 i 一P−h z −tIB
一一 exp 11E 同
唱
i
一
噌
\
n
1
n
(3.227)
/
と母関数表示されます.ここで, go(x; q, t) = 1 となることに注意しておきます.
次の命題が本節の結論です[ 521.
124 第 3 章 木登り
可換な作用素と固有関数
命題 3.3'7 マクドナルドの差分作用素 E の自由場表示 E は
(3.228)
E = 一一一山一一一一
J 2πA z
×
(
exp
exp
と書ける.即ち,図式
ll ll
(3.229)
は可換.又, E は自己共役である.即ち,任意の u(x), v(x )εA F の自由場
表示
りx) = (O!V(x)lv)
(
(3.230)
(Eu(x), v(x)) = (u(x), Ev(x)) = (ulElv).
(3.231)
u(x) = (u!V*(x)IO),
に対して
証明.
まず,簡単のために
Lf;,nzn
( ‑L:.:(1‑ )千
叫
=
tk
¥
n>O
k=l
(3.232)
k )
I
と書くことにしましょう.ここで, fo = 1 に注意してください.すると,式
は
(3.228)
E
一
z
2 πJコ
J一
‑
C 1 )zm
!;,nZ‑n ー
)1
=出乞 9n (;o,r1 )ι
α
と書けます.
マクドナルドの差分作用素 E は
E = limEn,
(3.234)
+‑‑‑
3.3 対称、関数の自由場表示 1 2 5
rntrr 生子
ι=
Tq,x;
i = l jf.i
−
玄
(3.235)
t i
i=l
と定義されましたから,全ての肌 l
u)ε F に対して
ι(OI
=
何
|
叫
(
さ
;
ラ
訴
訟
) Elu)
(3.236)
を示せばよいことになります.
式
( 3.236 )の左辺
×
(
'さ
E日 さ
一
(lο一
加
=le唯弓培?)
n
exp
tk)
(3.237)
ju)
一
+t n
=
山
(
さ fラ
3号
主lx)
占2
ベ
主 fラj;
守
さlx)
凸
2
仇k(X1
= (OI e
う Xn;O,t
と
)l
k
1
品k (
α
=右辺.
これで証明が終わりました.
口
3.3.3 マクドナルド対称関数の積分表示:具体例
多重積分を用いてマクドナルド対称関数の明示的公式を考えてみましょう.
その公式を用いてマクドナルド対称関数の具体例がいくらでも得られるような,
使いやすい公式を目指したいのが人情というものですが,この節での方法は現
126
第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
在のところまだ貫徹されておらず,部分的な結果しか得られていません.その
点さえ了解してもらえば,これまでの結果の良い応用を与えますし,次の章へ
の導入として相応しい話題だと思われますので,簡単に紹介しておきます.
対称関数 9n(x;q,t)はマクドナルド対称関数の
いわば一種にあたります.
これをうまく育ててマクドナルド対称関数をつくりたいと思います.対称関数
9n(x;q,t)の母関数の自由場表示(式( 3.227))を改めて書いてみましょう:
定義 3.38
. ミ1 ー 伊 丹 −
;
I_
q, t)xn = 叫 | 、 、 一 一 二 x n I
α;
x )三) 9n (
ゆ(
J
l‑qn n
T 「
'
.
:
.!
'
:
(3.238)
ここで,式( 3.214 )のような記法を用いたことに注意してください.我々の目
標は,
入2 い・ 1 入n )に対して
パーテイション入=(入I ,
f 2 πJコX1
J
コ
27fV X n
(xn)IO)
¢
・
・
xi) ・
ゆ(
ぅ Xn)
・
・
・
x1,X2 ,
入1 ・ x;;:>‑n fλ(
×x !
(3.239)
. 'Xn )をさがすこと,
Xi, X2γ ・
となるような関数ム (
です.式( 3.239 )にマクドナルド作用素 E を作用させてこのようなムが満た
すべき方程式を導きましょう.
このような自由場の計算にはコツがあります.まず,自由場の積の取扱いの
ために必要な公式を用意しましょう.
命題 3.39
演算子 X , Y の交換子が定数
= α,
[ X , Y]
α:定数
(3.240)
exp X exp Y = e x p αe x p Y e x p X
(3.241)
の場合,
が成り立つ.
証明.
まず,
X Y = α+ Y X ,
(3.242)
X Y 2 = 2 αY + Y 2 X ,
(3.243)
X Y 3 = 3 αy 2 + y 3 x ,
(3.244)
等から推測して,
x y n =ηαy n ー i + y n x
(3.245)
3.3 対称、関数の自由場表示 127
となることを帰納法で証明できます.次に,
x 2 y n = n(n ‑ 1)
α2 y n ‑ 2 + 2η
αy n ‑ i x + ynx2,
(3.246)
X 3 Y n = n(n ‑ l)(n ‑ 2)
α3yn‑3 + 3n (
η ー 1)
α2 y n ‑ 2 x
(3.247)
+ 3 nαy n ‑ 1 x 2 + ynx3,
等となることから,
x
my 時
n
中
山
一一 同
F
u
(3.248)
c αY n x
m
を得ることができます.よって,
expXexpY
(3.249)
=主主品川
(3.250)
nCl mCta/Y叩
l,
(3.251)
(3.252)
(3.253)
= e x p αe x p Y e x p X
(3.254)
となります.
口
もちろん,命題 3.39 は次の有名な定理の特別な場合です.
定理 3AO. (ベーカ一色キャンベル・ハウスドルフ)
exp X exp Y
(3.255)
l川 , X]) +. ・
)
が成り立つ.
ここに,右辺の−−−は帰納的に与えることができる X Y の多重交換子ですが,
う
それについては省略します.
今後,自由場の計算にいつでもすぐ応用できるように次のような補題を用意
しておきましょう.
補題: .3.41
自由場の交換関係を
[
αn ,
αm ]
=η
αnOn+m,O
128 第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
(3.256)
とし, An,Bn,z,w を定数とするとき
守 十 (十午)n
ん
さ
叶
z
p
(3.257)
ベ2咋
w n ) exp
×e
咋
雲
(
n)
が成り立つ.
x )の積にマクドナルドの差分作
それでは,式( 3.238)で定められる母関数。 (
用素 E を作用させるための準備をしましょう.補題 3.41 を用いて次のような
ことを示すことができます:
補題 3.42
(
さ
(
叫
(
さ
ー
位(
)
や
1 ‑ r n)
p
xn) IO)
ゆ(
・
( x2) ・
ゆ
( x1 )
ゆ
×
1‑
刊
附
r n)
・ <f>(xn)IO).
・
・
(x2 )
ゆ
(x1 )
ゆ
×
これは消滅演算子を右へ持っていくことで簡単に計算できます.ただし,真空
IO)の隣では消滅演算子を零におくことができることに注意して下さい.
x )を q−シフトする演算になります.
補題をもう一つ用意します.これはゆ(
補 題 3.43
これで,式( 3.239 )の右辺に E を作用させたものが直ちに計算できます.
ザ トげdx1−•
•N dxコXn
コ
2
(3.260)
‑‑=::..:2̲̲
l
( xn)IO)
ゆ
・
・
( x1) ・
ゆ
, Xn )
, ・
入x1,x2・
.(
・ x:;;:.An f
1・
×x:tλ
̲ J
J
dx1
dxn
1
品一 λ
一
一
JコXn一 一
2π
1
JコX一
‑ J…J2π
f..;:......
T
¥i=l
)
科
予
j(
,xn)
・
・
入x1 ぅX2,・
| ) : r n f(
×
11
T
m
一入n
tx. ‑ X,;
山
Z
3.3 対称、関数の自由場表示 129
一目(
x1,X2,
,Xn
)
ゆ(
x
f f dx1
dxn
一
‑ 1 一J 2…
πゾ一
コX1 一2π一
ゾゴ.
h 1, . •
一入 1
山
一入例
出向
×
(
。
(x1) ・ 仇 ) IO)
×
If>
ー
い H ヂヂ目的 ( 日 ヲみ)|
fλ
Li=l
j(#i)
−守的
2
, J
i,x2,
」
,xn )
仲 1) . 仇)|サ
ここではまず, E に含まれる z についての積分を, z = tx1, tx2, ・・・
, txn, 0 の
留数積分の和に変型し,補題 3.43 を用いました.さらに,最初の和の項につい
て積分変数を町→ q‑1xi と取り換えて,差分演算子を f入の方へ押し付けま
した.
ここで,マクドナルド対称関数の固有値( 3.160 )を思い出せば
EP(
.>α)
IO) = 乞 ( 寸 − 巾−
ip(
入α)
IO)
= (
(3.261)
̲
でしたから,
命題; .s;,44
f入が差分方程式
玄q II
i,x ; 仙 川2,
ん
i=l
j(
予
科
)
.I..
J f
・,xn)
(3.262)
"
=
玄 tlー
い f(
入x1, X2,
,X n )
の解であればマクドナルド対称関数の多重積分表示式( 3.239 )が成立する,
ということになります.以下,この差分方程式の知られている解をいくつか紹
介します.(詳しい議論は省略します.)
まず, n = l ,入ニ(m )の場合, f(
入x1) = 1 は方程式( 3.262 )の解となりま
す.係数まできっちり調べると:
公式 3;45
叶 法γ 刊(x)IO).
九)(α)
I
次に, n = 2 ,入=(入 I ,
入2 )の場合,
130 第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
(3.263)
(3.264)
は方程式( 3.262 )の解となります[4 6). ここに,
J
nxn
ゆl (a, b; q x =子(川) n (川)
¥ c
(3.265)
)
はガウスの超幾何関 数の q−アナログです.この q−超幾何関数 u(x)
仇 ( ? ; 刈 は 2 階の差分方程式
(1‑ c
x(c ー αbqx)D;u + (7 一 +
)1 ‑ b)一( 1
(
(1 一α
1
l ‑ q
¥l‑q
)1 ‑ b )
(
α
(1 −
(1 ‑ q ) 2
−αbq) ¥J
J
"
(3.266)
山 町
̲ f(x) ‑ f(qx)
(1 ‑ q)x
(3.267)
」」に, Dqf(x) =
をみたします . n = 2 の場合には, f入に対する方程式(3.262 )が差分方程式
(3.266)に帰着するわけです.よって,
公式 3.46 式(3.264)で定められる f(>,1,>.2)(X1, X 2 )を用いて
(3.268)
IO)
α)
入i ,>.2) (
Q(
=¢
J J 2πゾ= I x 1 2πA x 2
i,
21
x2 )川(ぬ) IO)
と書ける.
長方形のヤング図形入= (mn )の場合にも方程式(3.262 )の解
f(mn)(Xi,"' Xn) =
x j / X i q)
π (
x 1 γ・ Xn)
1 (txρi ;ぅ∞=ム(
q)oo
(3.269)
(3.175 )参照)をみつけることができますから,
式
(
公式 3,47
f
r
dx1
n
IO)=訂十−チ一一一一…一二二L ー
)α)
CnQ(mn(
J J 2作ゾコ,T,1 2 πJゴXn
(3.270)
公な仰1) . 仇 ) IO).
叩2 ・・X n ) ‑ m U 伝
(
×
n
H
(3.271)
同
3.3 対称関数の自由場表示 131
です.実は,長方形のパーテイションに対するマクドナルド対称関数 P(mn )は
,
変形ピラソロ代数と呼ばれる代数の表現論に関係しています(5 5]. この対応を追
い掛けることが次章のテーマです.
最後に, q = t としてシューア対称関数の場合を見てみましょう.パラメー
ターを q = t と特殊化すると,任意のパーテイション入(ただし f(
入)三 n )に対
して
以 X1,・ .,xn) = 1 g < n
(i‑
(3.272)
は方程式( 3.262 )の解となります.実際,シューア対称関数の次のような表示
が知られています:
公式 3.• 4,S
q = t とした場合,入=(入 i, ‑X2γ ・1 入n )に対して
r
r
dx,
(
入α)
IO )= φ −や一ーニー・・・ー」L ー
J J 2 πJコX 1
×x1λ '
x2入
x;;>‑n 1
2
•
27rVコXn
旦i(ー
ま
い
n
(3.273)
1) . 仇 ) IO).
ただし,固有値が縮退する状況なので,差分方程式を用いた議論だけでは事実
の確認程度にしかならないことに注意してください.
3.3.4 積分表示:パーティションが一般の場合
一般のパーテイションに対しでもマクドナルド対称多項式の多重積分表示を
求めることができます.ただし,方程式( 3.262 )の解 f入を見つけるのではなく
て,マクドナルド対称多項式に対する二種類の内積を使うのが良い方針となり
ます.
前節までは,方程式(3.262 )を導いたり,その解を探したりして,全体とし
て自由場表示についての演習問題という感じでしたが,何故か被積分関数に
II(x,y )に由来するゆ(
x )や
, fcmn) =企(x1, ・
・
・
, Xn )等が登場することを味
わって頂けたと思います.そういうことをあらかじめ念頭に置いて考えれば,以
下のように II(x, y )とム (
x )をたくさん用いることで一般のパーテイションに
対するマクドナルド対称多項式の積分表示を導くことができます.この節では
自由場表示のことを一切忘れて従来の対称多項式の雰囲気にもどってお話しま
しょう.
まず,次のような二種類の演算を導入します:
G m : An,F ー
→ An,F,
f(x )片付i X 2 ・
・ •x n r ・
f(x),
Nn,m: Am,F 一→ An,F,
132
第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
(3.274)
)仰
ν
y)f (
ム(
'!J)
そ 岬 ると
−
一
っ一 − 一
一
A叩 題
3 個
入x1, ・・川口)ぅ( 3.276)
xn) = G m P (
(箱を付ける) P(mn )
・ ,
x 1ぅ
+λ(
入Pλ)
( P,
, Xm),
入x 1 γ ・
= ー ー 一 一 Nn,m P (
,Xn )
・
・
x1,・
(変数を変える) P 入(
ら
..)
( PλぅP ;
(3.277)
)
zγ・
入2 + μ
となります.ここに,パーテイションの和を入+ μ=(入1 十 μ1 ぅ
と定めました.式(3.276)を確認するために D よの固有値を調べておいてくだ
,そして,
x)
入 l p入(
P)
x) = (Pλ,
) Q 入(
,
入ν
x ) P(
さい.また, II(x,y) = 乞 λQ λ (
P 入,九)ら= 0 であることを用いれば式( 3.277)を導くことがで
入ヂ μのとき (
きます.
入2γ ・・)に対するマクドナルド対称多
さて,任意のパーティション入=(入 l ,
項式を表示してみましょう.いま,£(入)= η とするとき,入を次のような入れ
子に分解します:
(1 一入2 ),
入1) = 入
(
(3.278)
入2
(1 一入3 ,
入2) = 入
(
)
入3ぅ
入2
(1 一入4 ,
入3) = 入
(
入3
入4 ぅ
(3.279)
(3.280)
入4),
.
入
n) =
入(
(3.281)
そうすれば,命題 3.49 の二つの演算を繰り返すことによって
入x1,・
P(
・X n ) =
;『( P;..c=J, P λ(m))
II
ら
)
l (P)..(m) P;..(m )
mニ
(3.282)
1
・ G;..2 A 3 N 2 , 1 G入1
入nNn‑1,n 2 ・
x Gん Nn,n 1 Gんー 1 一
1
2 ・
入
となります.この公式は 2.3.2 節でお話ししたジヤツク多項式の明示公式と雰
囲気が似ていると思われるかもしれません.しかし,なぜ似ているのかその理
由はまだわかっていません.
この多重積分( 3.282 )を書き下すために,変数
x<m) = (xim),
,x}:;'l)
( m = 1, 2,
,Xn )とする
・
・
ただし, x(n) = X = (xi, ・
,n),
(3.283)
(3.284)
を用意すれば,
3.3 対称、関数の自由場表示 133
命題賓;Q O
凡(
x1
, Xn) =
立
(
:
:
:
:
〈
?
:
;
し
×
メ
. 111:u
I
伊
(3.285)
(x;
日
× H H Z
U日
+
一
山
町
ムZ
となります[53], [54]. この多重積分によって,マクドナルド対称関数 P 入を,変
形 W 代数(変形ピラソロ代数の拡張)に附随するものとして捉えることができ
ますが,それについては省略したいと思います[56J.
我々の目的は,マクドナルド対称関数のできるだけ明示的な公式を考えるこ
とでしたから,複雑な積分表示は明示的という方針から言えばあまり好ましい
ことではありません.積分表示という方針の上でより明示的な公式を考えるこ
とは今後の課題です.差分作用素を用いた明示的公式としては,第 2 章 2.3.2
節で扱ったダンクル作用素の q−差分版を用いたマクドナルド対称多項式の表示
公式がキリロフ・野海によって導かれています[57].
3.4 まとめ
本章では,マクドナルド対称関数の存在定理について学びました.可換な作
用素の取り扱いとその同時対角化についての洗練された議論ーすなわち,量子
可積分系の基礎
を見ることができました.
さらに,対称関数の自由場による表示について考えました.マクドナルドの
差分作用素の自由場表示式( 3.228 )は意外な程美しい表示になっています.こ
れを用いて,マクドナルド対称関数の多重積分表示を取り扱ってみました.こ
こはまだ未完成の領域ですが,将来,興味を持った読者によって進展が得られ
ることを期待します.
次章では,発想を転換してジヤツク対称関数やマクドナルド対称関数を理解
するための,代数的もしくは幾何学的な道具立てを探す旅に出たいと思います.
演習問題
3.1
ジヤツク対称、多項式及びマクドナルド対称、多項式を明示的に表示する公式につ
いて調べよ.
3.2 ジヤツク対称多項式及びマクドナルド対称、多項式の内積の明示的表示式の導出
法について調べよ.
3.3
r = 2,3,・・・について差分作用素
1 3 4 第 3 章木登りー可換な作用素と固有関数
n,; を自由場表示してみよ.
第 4 章
不思議な出会い−ビラソ口代数
世の中は不思議に満ちています.とりわけ,出会いほど不思議で妙なものは
ありません.量子可積分系においても,我々を驚かせ楽しませてくれる不思議
な出会いがあります.どういうわけか,ジャック対称多項式のことを大変良く
矢日っている他の量子系があります.それはピラソロ代数と呼ばれる無限次元リ一
代数です.ピラソロ代数は,二次元の共形場の理論において主役をつとめる大
切な代数ですが,ピラソロ代数がジャック対称多項式のことを熟知しているこ
とは全く不思議なことです.
同じように,ジャック多項式の兄であるマクドナルド多項式も入り組んだ迷
路を用意して我々が遊びに来るのを楽しみに待っています.また,ピラソロ代数
の弟もこの迷宮の住人で,変形ピラソロ代数という名前で呼ばれています.マ
クドナルド対称関数と変形ピラソロ代数が仲良く遊ぶ姿も眺めてみましょう.
この章では,少し見たところでは何の関係も見当たらないジャック対称関数
およびマクドナルド対称関数とピラソロ代数兄弟の聞がどのような秘密の抜け
道で結ぼれているかについて考えてみます.
4.1 自由場とビラソ口代数
)6 0)に親しむために,まずは自由場の古典お
〜
]66) [58[
〜
とにかくビラソロ代数[6 1[
よぴ、量子力学を使ってしばらく遊んでみましょう.
4.1.1
自由場
我々のおもちゃである自由場向のポアソン括弧は次のように定められます:
川 = 品 川
(4.1)
I
これは,第 l 章 1.2.3 節の線形連成振動子のポアソン括弧( 1.89 )から粒子数無
限大 (
N →∞)で分散 w(k )が線形化される極限 (
w(k)→ k )として得られま
す.すなわち,自由場とは線形連成振動子の連続極限に他なりません.実は,
「自由場の 2 次式j がビラソロ代数の世界を旅するためのキーワードとなりま
す.次のような αn の 2 次式を考えましょう:
ln
;
:
二 L a n ‑ kα k
(4.2)
このんは大変興味深いポアソン代数を成します:
命題 4.1
{ln, lm} = H ( n
m)ln+m・
(4.3)
これがまさに,ピラソロ代数(のポアソン代数版)と呼ばれるものです.計算し
てみると確かに
{ln, lm} =
k αk α m一
1}
α1 +
{αn
仇向}α m斗
=
十
{αn一 わ α1 }附m 一1 +{川
=
i
=日 乞
(η −m ) 山 一 向
=ゾヨ(
n ‑ m)ln+m
となっています.
それでは,ピラソロ代数の生成子んがどのように量子化されるか考えましょ
う.正準量子化とは,正準力学変数に対するポアソン括弧を正準交換関係に置
き換えることでした.今の場合,モードの演算子に対して
[
αn ,
αm ] = non+m,o
(4.4)
という交換関係をもつことを要請することになります.このうち αn (
η と 0)
が
消滅演算子, α n (n と 1)が生成演算子の役割をはたします.自由場の量子力
学的な状態を表す空間,すなわち,フオツク空間は消滅演算子で消される「真
136
第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
空ベクトル」
(4.5)
・
η=0,1,2,3γ )
(
anlO) = 0
に生成演算子を掛けたもので生成されます:
¥
310), .
'α−
O)
. 1I
.:
)α'
210,
( IO,)α−110,)α−
I. (4.6)
j
ベクトル空間
結合全体が成す
l の有限個の線形
フォック空間三|
今後我々の考える場の演算子は,このフォック空間上に定義される線形演算子
です.特に, ln のような無限和を含む式を量子化するときには行列要素が有限
確定値になるように十分注意する必要があります.
演算子から発散を取り除くためのおまじないを考えましょう.
定 義 4.2
正規順序化という操作を,生成演算子を消滅演算子の左へ移動
させることと定め,それを記号:
:で表す,
ことにします.例えば,
1,
3α
4α
= α−
1 :
4α
3α−
:α
2:
1α
:α
2=
1α
1 =α
2α
=α
1 :
2α
:α
(4.7)
等と書くことができます.
さて,生成子 ln は無限和ですから,そのまま量子化すれば発散する量を含む
恐れがあります.実際, lo に相当する演算子は
j
ε
山
k εz
=α6
;
+oo (4.
+ 乞 山k +
k
k=l
k εz
k=l
となってしまいます.ただし, n # O の場合 ln は可換なモードの積ですから不
定性を気にしないですみます:
(4.9)
=
そこで,正規順序化を用いて次のように定義します:
=ε
;
(4.10)
n一 山 ;
:α
Ln
k εZ
正規順序化のおかげで L n のフオツク空間上での各行列要素は全て有限確定に
なります.
この L n は次のような交換関係を満足します:
命題 4.3
η2 ‑ 1)
n(
+m,O ・
[Ln, Lm] = (n ‑ m ) L n + m +一一一一九
12
4.1
(4.11)
自由場とピラソロ代数 1 3 7
演算子 L n が成すこのような代数のことをピラソロ代数と呼ぴます.(以下で考
えるピラソロ代数の一般論に対して,自由場から得られるこの例は「中心電荷
c = l 」という特殊な場合に相当することを注意しておきます.)古典論の場合
と違って,出会均n + m , O というおまけが付いたことに注意して下さい これ
は量子化のために生じたものなので,量子異常項と呼ばれることがあります.
次節でこの交換関係(4.11 )の証明を考えてみましょう.
4.1.2
ウィックの定理
交換関係(4.11 )を示すためには,正規順序化された演算子の積を手際よく正
規iJ関字化してゆく必要があります.この手順は場の理論の基礎的な技術である
ウイツクの定理によって表現することができます[ 67J. 以下,しばらくウイツク
の定理について考えてみましょう.
まず,次のようなことが成立します:
任意の k,l E Z に対して
α
kαz = (OIα的 IO)
+
:α
kαl:
証明.
(4.12)
まず向的手: αkαI :となる場合は次で尽くされます:
n = l , 2 , 3 ぅ・・・に対ーして
α
nα−
n =
[αm α −
n]
十 α−
n αn =η+
:α
nα−
n :,
(4.13)
(OIα
nα−
nlO) = (Ol[an ,
α−
n] IO) = n(OIO) =η
(4.14)
よってこのとき式(4.12 )が成立.次に αkα1 =
: αkαI :となる場合は,同時に
(OIα
kα
zlO) = 0 となることがわかります.
日
以下,式を簡単にするために
(
αkαl )三( OIα同 110)
(4.15)
等と略記します.同様に,
任意の k,l,m川,,.. E Z に対して
αk :αt αm : = (
αkα1 )
αm + (
αk αm )
α
I十
:α
kα
lαm :,
(4.16)
αk :αl αm αn : = (
αkα1:
) αmαn : +
(αk αm:
)α
lα
π : (4.17)
+
(αk αn:
)α
lαm :
+ :αkαtαmαn :,
等が成立することがわかります.これより, h の 3 次式を正規順序化する公式
l
任 意 の 山 ε Z に対して
138 第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
αk αl αm :,
αk + :
(αl αm )
1+
α
αk αm )
αm + (
αkα1 )
αk αI αm = (
(4.18)
が得られます.なぜ、なら,
問
(4.19)
αm =向((仇)十:仇:)
(4.20)
αk αI αm :,
αk + :
(α1 a m )
1+
α
(αk αm )
αm 十
=(αkα1 )
となるからです.また, h の 4 次式を正規順序化する公式
任意の k,l,m,n ε Z に対して
)αlαm)
αk αn(
)αtαn) + (
αk αm(
αm αn ) + (
αkαl) (
αkαlαmαn = (
) αmαn
(αkα1:
+
) αl αm :
(αk αn:
+
π:
lα
)α
(αk αm:
+
kαl :
)α
(αm αn:
十
) αk αm :
(αlαn:
kαn: +
α
Iαm l :
(α
+
(4.21)
: αkαIαmαn :,
十
も同じ手順で得ることができます.一般に, h の高次式を正規順序化する公式
を得ることもできますが省略します.このような自由場の正規順序化を与える
公式のことをウイツクの定理と呼びます.
さて,ピラソロ代数の交換関係の計算に取りかかりましょう.まず,
α仰
+ :山口:)
+ :α仙:) ((aman )
m a n = ( (akat )
(4.22)
に注意すれば,式(4.21 )から
)α1αm)
αk αn(
)αtαn) + (
αk αm(
:αkαI :αmαn : = (
. αI αm :
)
kα叫
(α
lαn : +
)α
(αk αm:
+
) αk αm :
(αtαn:
kαn : +
)α
(αl αm:
+
(4.23)
: αkαlαmαn :,
+
を導くことができます.これより,積 L n L m の正規順序化
ιL m =
=
(4.24)
z
k,lε
l: ((山αm ‑ 1()αka1 )十 (an‑kαl) (αkam‑l)
k,l εZ
kαm‑l:
)α
1:
(αn‑k α
kαl: +
)α
(αn‑k αm ‑ l:
+
:向山サ
1 : +(aka1 )
) αn‑kα
+(仰m ‑ l:
=
0 く k<n
+2ン(n ‑ k):仰向+
k くn
m
+
k :
乞 2k : 向 山+k :)
k>O
4.1
自由場とピラソロ代数 139
=
ゃ (η
J,
−k)k
c
0 くk くn
+;
ε
(
η − k ): 向 山 − k :
k>m
k くn
を得ることができます.従って,
式(4.11 )の左辺= L n L m ‑ L m L n
ゃ (η −
k)k
−un+m,O
= ムノ
_, 一一一
2
J
O くk くn
ー
一一一一一一 On+m,O
ノd J
ム
(4.25)
O くk くm
+ 江(
n
k>m
k くn
−;乞(
m ‑ k):αk a n + m ‑ k :
L ( k ‑ n): 山 一 山 :
k<m
k>n
(
η2 ‑ 1)
1ゃ
= l 2 0 n + m , O + (n ‑ m ) 2
:α
山 +m ‑ k :=式(4.11 )の右辺
L
k εz
となります.
以上,ピラソロ代数の交換関係(4.11 )の自由場による表現法を学びました.
これで大分,自由場の解析にも慣れたことと思います.
4.1.3 作用素積展開
前節では,自由場のモード αn に対するウイツクの定理を用いてピラソロ代
数の交換関係(4.11 )を調べてみましたが,この節では,母関数を導入すること
で計算の簡略化を試みます.
まず,
定義 4.4
仰(
z) = 玄 α
n Z ‑ n l,
(4.26)
n εz
と定めましょう.(この母関数を δゆと書くのはそれなりの理由があるのですが,
それについてはすこし後で考えましょう.)そうすれば,式(4.12 )より母関数
の積の正規順序化の公式
θゆ(
z)
θ
φ(
w ) = (OIθ
φ(
z)
θゆ
(w)IO )
+
: θゆ(
z)
θゆ
(w):
(4.27)
が得られます.右辺の第 1 項を調べてみれば
(
δゆ(
z)
θゆ
(ω))三(OIθゆ(
z)
θゆ
(w)IO)
= 乞 (α
nα−
n)z‑n lwn‑1
140
第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
(4.28)
主n
主
=
い一円
(lzl > lwl の場合)
と面白い有理関数が登場します.
ゆz )の積を正規順序化したもので
(
, L n の母関数は θ
て
さ
( z) :
仰
T(z )三::御( z )
=ε
;
(4.29)
:a k a l : z ‑ k ‑ l z ‑ l ‑ l
z
k,l ε
: ) Z‑n‑2
=
Lnz
と求めることができます.式(4.23 )を母関数で書けば,母関数の積の正規順序
化の公式
(4.30)
ゆw):
(
θ
ゆz)
(
:θ
ゆy )
(
θ
ゆx )
(
θ
:
ゆz))
(
θ
ゆy)
(
(θ
ゆω)
(
θ
ゆx )
(
(θ
+
)
ゆω)
θ(
)
ゆν
(θ(
ゆz)
δ(
ゆx )
(
(δ
=
ゆz) :
(
θ
)
ゆν
(
:θ
)
ゆω)
θ(
ゆx )
(
(θ
十
:
ゆω)
θ(
ゆy)
(
:θ
)
ゆz)
(
θ
ゆx )
(
(θ
+
ゆz) :
(
θ
ゆx )
(
:θ
)
ゆω)
θ(
ゆυ)
(θ(
+
:
ゆω)
θ(
ゆx )
(
:θ
ゆz)
(
θ
ゆy )
(
(θ
+
)
ゆω:
θ(
ゆz)
(
θ
)
ゆν
θ(
ゆx )
(
:θ
+
が得られますが,この式で X =払 Z = W と置けば
(4.31)
ゆz) :
(
θ
ゆz)
(
:θ
ゆx )
(
θ
ゆx )
(
θ
:
ゆz) :
(
θ
ゆx )
(
:θ
ゆz)
(
θ
ゆx )
(
θ
ゆz))2 + 4 (
(
θ
ゆx )
(
θ
= 2(
ゆz) :
(
θ
ゆz)
(
θ
ゆx )
(
θ
ゆx )
(
:δ
+
となります.従って,
・
・
・
+
:
ゆω)
δ(
ゆω)
2(
)θ
z ‑ w:
十(
:
ゆω)
θ(
ゆω)
(
:δ
)=
ゆω:
δ(
ゆz)
(
θ
:
θ切 T(w) + ・ (4.32)
= 2 T ( w ) + ( z ‑ w)
に注意すれば, T(z)の積の正規順序化公式を演算子積展開の形に書き,
命題 4.5
lzl > lwl において
2T(w ) θ T(w)
1/2
一一一+一一一w一+正則
T(z)T(w) =一一一一+一
z
(z w)2
(z‑w)4
凹
(4.33)
が成立する,
4.1 自由場とピラソロ代数 141
とまとめることができます.ただし,ここで「正則J と書いた項を調べてみれば
1
0
正則=: T ( w ) T ( w ):十一: θ句(ω)
θゆ
(ω):+・・・
(4.34)
2
ですから,確かに「 Z
= W の近傍で正則」となる項の和になっています.また,
領域 l
zl < lwl における作用素積展開は式(4.33 )を解析接続して得られるもの
と定められます.
それでは,この作用素積展開からビラソロ代数の交換関係を読み取ってみま
しょう.演算子 L n の母関数は T(z) = L n E Z L n Z n ‑ 2 と定められましたので,
逆に,各モード は積分を用いて
Ln = £
j
(4.35)
−
、1
乙
π
と書けます.よって,演算子積展開(4.33 )を用いて交換関係を計算すれば
[Ln,Lm]
= LnLm ‑LmLn
r ‑ dz
= ¢
r !
¢
ん 2げ
コ J 2げ
コ
r
dw
r
− ¢ − ¢ 一 一 一 日+lzn+1T(w)T(z)
J 2 πJコfc2 2 πJゴ
1
j
j
dz
dw
=
= </>
n+l m + d 1/2
w
(4.36)
2 T ( w) θ
叩 T(w)
コJ 2げ
コ lIwn+l + (z w)(n + l)wn
_
!
!
_三
− </> __!!_竺−
ー
fc3 2 πJ
(z 一w ) 2
n ー1
+一
万一−
n(n+l)w
(z 一w)3
̲ l)wn‑2
+ ... ¥Jw m + l
(
×一
1/2
B w T例
十 2T(w)
「+
一吋
(z 一
切
)4
=
J 2πA
(z 一山j
¥
12
= 会 (η2 一川十m o +( η
z 一ω
+ 2(
η+l)T(w)wn +九 T(w)wn+lJ
J
−m ) L n + m
となり,確かに交換関係(4.11 )を導くことができました.ただしここで,積分
経路 C1,C2,C3 は図 4.1 に示すものとします.
4.1.4 補足:自由場の 力学
第 4.1.1 節では,いきなり自由場のポアソン括弧から話を始めました.また, π
αの
母関数を θ
φ(
z )と書きたかった理由もまだ明らかにしていません.そこで,自由場の
力学についてもう少し述べておいてピラソロ代数の一般論を考えるための前置きとし
ますが,この節を飛ばして読んでも構いません.
自由場の力学(6 7]を記述するための準備は,実は,第 l 章 1.2.3 節の線形連成振動
142
第 4 章不思議な出会 い
ピラソロ代数
1三
C1
図 4.1 積分経路 C1,C2,C3 ・
子の考察のところで済ませているので後は連続極限を考えるだけです.ハミルトニア
ンとポアソン括弧
H =
L:Pr +
千L:(qi −
(4.37)
白+ i)2
i=l
i=l
{Pk,Pt} = 0
{qk,qi} = 0,
pk, qi}= ‑ok,t,
{
う
(4.38)
で定まる系において,
N →∞,
> x,
−
−
子
x),
万q包→ ψ(
ゾ
守一 1,
ω
(4.39)
x )三 8tcp(x),
万Pi → π(
ゾ
で与えられる連続極限によって自由場の古典力学を定義します.ただし,場は空間方
向に周期性 cp(x) = cp(x + 2π)を持つものとします.すなわち,自由場のハミルトニ
アンとポアソン括弧は
H =
2 + (Bx<p) 2) '
訂九(π
(4.40)
y)} = 0,
π(
,
x)
π(
{
) = 0,
}
υ
(
ぅψ
x)
ψ(
{
y)} = ‑ 8 ( x ‑ y)
ψ(
,
x)
π(
{
(4.41)
となります.ここに,デルタ関数は o(x
y) =
: z = k E Z e 竺 #1‑k(x‑y ) と定められま
(
す.したがって,場の時間発展方程式
x) = {
θψ(
(4.42)
i;cp(x)
x), H } =θ
π(
x) = {
&π(
すなわち,零質量のクライン・ゴルドン方程式(一材十呼) ψ=0 が得られます.
また,場 ψぅ付のフーリエ変換によって定められるモード Q k , P k
4.1
自由場とビラソロ代数 143
J
E
E
E k
E b
﹄
J
I
S
E
t
t
f
由
h
一正 b伊
例
巴
知
川
刈
批
一
計
F
A
Q 一t
一 of
R 一
︑ 一−1d
0
r﹄
E
E
p
t
l
i
t
ヤ
河
V2 一 山 uρ 川 ハ
2 一 町 ρ
附
π 一 U
一
h
ML
︑
−
A
U官
凡
δ
4︒
によれば
H
=
L ( P k P ‑ k + 内d
{Qk,Q1}=0,
斗
{Pk,P1}=0,
(4.44)
{Pk,Q1}=‑Dk+l,o
(4必
)
(
寸( − 刊 斗
=方(凡+日叫
と表されます.さらに, k =土l,
土2 ,
土3 ,・・・に対して
P
α
(4.46)
ak
とおけば,ハミルトニアンとポアソン括弧
初+さ(α−kak 吋
H =
(4.47)
k
{
乃
, Q o } =一 1
{
α川}=
(4.48)
vコk8k+t,o, {αk, az} = 0, 否
{k,az} = vコ
k8k+z,o,
(4.49)
が得られます.このポアソン括弧が本章の出発点でした.
さて,ポアソン括弧を交換関係
[Po, Qo] = ‑ R ,
(4.50)
[ak ,
α
d = k8k+1,o,
[
α
k,al]=O, 否
[k, al] = kc¥"k+l,o,
(4.51)
と置き換えて演算子の発散を適宜取り除けば自由場の理論が量子化されるわけです.
場の演算子 φ
(
x )の時間発展(ハイゼンベルグ表示)を求めてみれば
<p(x, t)三 e Fτ
Ht<p(x)e‑Fτ
Ht
一
(4.52)
1 ゃ 1 (ーゾコn(t+x)
= Q o +九t + ょっ正
〉石( e
• ‑
x)
e 何 吋−
l}
n#O
となります.そこで,ゼロモードを二つに分けるために
九
=
方
(αo +ao),
(4.53)
=
方
(Q + Q )
とし,(交換関係は[α
o,Q] = [ao ,
否i= ‑n, rα
o,
否
] = [ao,Q] = O とする)
作) = R
Qo
Q + ao log z ‑
2;
二α ー
ペ
n Z
n手
。
144 第 4 章不思議な出 会いーピラソ ロ代数
(4.54)
I:
事(芝)=何軒両 log:Z ‑
(4.55)
n#O
ド,
王(t‑x)
=
‑Z =巴..;
z = e v'=I(t+x) ヲ
(4.56)
とおけば,自由場 cp(x, t)を
(z) +取引
(り) = ̲ ̲ ! ̲ ̲ (¢
J
v=Iv'2 ¥
(4.57)
ときれいな和に分離することができます.ただし,
ー\
1 (
/ ー \
o )x
o ーα
α
(
lαo logz 十否。 log zJJ = P o t + ‑y'2¥
一一
一
J
\
互
A ゾ
(4.58)
となりますから, α。と否。の固有値が同じになるような部分空間に限って考える必要
があります* 1).
I頂序化を考えることもできます.た
z )の積に対して正規)
x, t)の片割れ φ(
自由場ゆ (
だし, α。は消滅演算子と,思って右へ, Q は生成演算子とみなして左へ移動するものと
します.そうすれば,正規順序化が
(4.59)
:
(ω)
ゆ
z)
(
:φ
+
( w)=log(z ーω)
ゆ
( z)
ゆ
と計算されることになり ます.双方合わせれば自 由場 cp(x, t)の正規順序化の公式
(4.60)
t') :
内 , t)cp(x',t') =
が導かれます.
最後に,前節で自由場 向の母関数を
n 1
z) =芝山−
φ(
δ
(4.61)
nEZ
と書きましたが,こういう記号を用いた理由はもうおわかりでしょう.
4.2 ビラソ口代数
ピラソロ代数は,ベラピン・ポリヤコフ・ザモロチコフによって創始された
〜 J60J や 素 粒 子 の 弦 理 論 等 の 屋 台 骨 と な る 重 要 な 代
二 次 元 の 共 形 場 の 理 論 J66] [58]
数です.長さは変えても角度は保つような変換,即ち,共形変換に対する理論
のふるまいを記述する のがピラソロ代数です .
*1)
x, t)の取る値を半径 R の円周上に「コンパクト化j して考える場合があり
自由場 ψ(
この N εz は
x) + 2πR N (
x + 2'1l") =ψ(
ます.このコンパクト化とは,境界条件を伊(
巻き付き数である)と変更することです.このとき,
V Z
Q + 品 +R N
+
日
一
d
工
叩
︐
〆
t
︑
﹄
+
︑
︑
ノ
︐
t
となるので, cp(x, t)を分離するための条件も適宜変更されます.コンパクト化された自
由場は, c = l の共形対称J性を持つ系を記述する非常に重要な理論で, xxz 量子スピン
[ 60].
〜
鎖や,車月永・ラッテインジャー流体の研究等に幅広く応用されています J58]
4.2
ビラソロ代数
145
4.2.1
共形変換
まず,二次元平面上の共形変換を調べましょう.共形変換とは,長さは変えて
も角度は保つような変換のことです.平面の座標を (
x ぅy )として,この変換を
(x,y )日(ピ ,
y') = (g(x,y),h(x,y))
(4.62)
と記しましょう.ここに, g(x, y),h(x, y )は十分なめらかな関数とします.点
(x, y )を始点として,
(x + .6.x2, y +ムY2),
(x +ムX1,Y +ムY1),
(4.63)
を終点とする二つの微小ベクトルを考えると,これらが成す角度の余弦は
ムXI ムX2 + ̲6.yl ムY2
、
/
( .6.x1)2 + (
ムY1)2y' (
ムx2)2 + (ムめ) 2
(4.64)
となります.微小ベクトルの終点は変換(4.62 )によって
(g(x +ムXi,Y + ムYi), h(x +ムXi,Y +ム仇))
(4.65)
= (g(x, y), h(x, y)) + (ム町θ'x9 +ム鈎θy9,
ムXi δ
xh +ムYi θyh) +
・
・
に写されますから,変換後の余弦はこれから求めることができます.
変換(4.62 )が共形変換になる,すなわち,この変換で余弦が不変になるため
の条件を求めましょう.まず,手頃な場合ムY I = 0 ,
ムX2 = 0 について考えれ
ば,式(4.64)が零になるので,
0 = (
ムX1θx9,
ムX1θx h)・
(
ムY2θy9,
ムY28yh)
(4.66)
=
(θx9θy9 +θxhθ百h )
ムX1 ムY2
を得ます.この条件 θ
x9=
θxhθyh/θy9 の下に,変換された微小ベクトルの
成す角度の余弦を計算すれば
(
δ
'x9 )2 .6.x1 ムX2 + (
θyh)2 ムY1 ムY2
y' (
δx9ムX1)2 + (
θ
百九ムY1)2 ゾ
(θ
x9ムx2)2 + (8yhムY2)2
(4.67)
となります.よって,これと式(4.64)が一致するためには θ
'x h =
士九g でなけ
ればなりません.まとめれば,
(日
h = O
θ
y9 土 θ
xh=O
(4.68)
となります.これはコーシー・リーマンの関係式そのものです.
逆に,コーシー・リーマンの関係式を仮定すれば,変換された微小ベクトル
の成す角度の余弦が式(4.64)で与えられ,変換(4.62 )は共形変換になります.
(確認してください.)よって,二次元の共形変換を与える変換は(反)正則関数
に他ならないことが示されました.
146
第 4 章不思議な出会い
ピラソロ代数
4.2.2 共形不変性
二次元の共形変換の生成元を調べて,それらがどのような交換関係を持っか
調べてみましょう.二次元平面を複素平面(ガウス平面)
{z = x + ゾコy¥x,y εR }
(4.69)
とみなし,共形変換を与える正則関数を
川)+ H
f(z) = g (
h (川)
(4.70)
とすれば,必要に応じて h の符号を取り換えれば,条件(4.68 )より:
命題 4.6
任意の共形変換は正則関数 f (z )によって
(4.71)
z 1‑t f(z)
と表現できる,
ことになります.
それでは,微小な共形変換が成す代数を調べましょう.いま,
の)=乞 ω
叶
(4.72)
1
n
z )が定める無限小共形変換によ
(
を微小な正則関数とするとき, f(z) = z +ε
る正則関数 F(z)の変化を
三F(z) +
oz
−叫
円 F(z + E(z)) = F(z) + γ w
F(z )
ι
nEZ
(4.73)
ηξZ )となります.
zn+l θz(
と書くことができますから,共形変換の生成子は −
z) = Enzn+l で
作用をより具体的に見るために F(z) =玄kαkZ‑k と書いて ε(
変換してみると
zf
F(z )日 F(z + EnZn+l) = F(z) + EnZn+l
<YkZ‑k + ・
)
αk+n)z k + ・ (4. 礼
k + n)
= F(z) + E n 乞(一 (
k
αk + n )と変換されると表現
となるので,各係数が αk 1‑tαk +En( (k + n )
することができます.共形変換の生成子の交換関係を調べると次のようになり
ます:
zn+laz は,交換関係
命題 4.7 共形変換の生成子 ln 三 −
[ln, lm] = (n
(4.75)
m)ln+m
を満たす.
4.2
ピラソロ代数 1 4 7
これがピラソロ代数の最も「原始的な姿J です.(ただし,このんは 4.1.1 節で
考えたものとは違いますので注意してください.)実際,交換関係を計算すれば
左辺= zn+lazzm+l δz ‑ zm+l δzZn+l θ
z
(4. 76)
= ( m ‑ n)zn+m+l ι=右辺
となります.
自由場 αn の量子力学を例に,共形変換とピラソロ代数の関係について考え
てみましょう.自由場の交換関係を[αm αm ] = n<l"n+m,O ,ピラソロ代数の生成
元を L n =
L k :αn‑k αk :とすると
n(
η2 ‑ 1)
[Ln, Lm] = (n ‑ m ) L n + m +一一一一九+m,0
12
(4.77)
が満たされるのでした.ここで,正規順序化に注意して計算すると交換関係
[Ln ,
α
k] = ‑ kαn+k
(4.78)
が得られます.(確認しておいて下さい.)これは先ほどの計算(4.74)における
αn の変換則とやや類似していることがわかります.また,これから自由場内
に対する L n の作用が満たす関係式
[Lm,[Ln ,
α
klJ ‑ [Ln, [Lm, aklJ =一 (
n ‑ m)[Ln+m ,
α
k]
(4.79)
を導くことができます.以上のことから,自由場 α
π の共形変換の法則をピラ
ソロ代数の作用を用いて次のように表現することができます:
命 題 4.8
自由場の微分 θゆ(
z)に対する共形変換則
[Ln ,
θゆ
( z)] = (n + l)znδゆ(
z)十 zn+l θ(
δゆ
( z))
(4.80)
が成立する.
共形場の理論の用語によれば,自由場の微分 θ
ゆ(
z)のこのような性質は,「 θゆ(
z)
はウエイト 1 のプライマリー場として変換される」と表現されます.一般に,
「ウエイト h のプライマリ一場J ef>(z) =乞仇z‑n‑h の変換法則は,
[Ln ,
仇 J = (n(h ‑ 1) ‑ k )
仇 +k
もしくは
[Ln, ef>(z)] = h (
η + l)znef>(z) + zn+l θ
ゆ(
z)
と定められます.よって式(4.74)はウエイト零の例,また自由場の微分 θゆ(
z)
はウエイト l の例となります.
148
第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
4.2.3
ピラソ口代数
この節では,自由場を用いた表示を一旦忘れて,ピラソロ代数の一般論につ
いて考えてみます.ピラソロ代数は,共形変換の生成子の成す代数( 4.75)の拡
張として,次のように定義されます:
定義 4.9
ηεZ ) , c に対して,交換関係
ピラソロ代数は,生成元 L n (
η2 ‑ 1)8n+m,o,
[Ln, Lm] = (n ‑ m ) L n + m +三 η(
12
(4.81)
[c, Ln] = 0,
を与えることで定められる.
ここで,生成元 Ln,C は,前節で考えたような微分演算子や自由場等による具
体的な表現ではなく,抽象的な元だと理解して下さい.
生成元 c についてもう少し説明をするべきでしょう.生成元 c はピラソロ代
数の全ての元と交換しますからこの代数の中心元です.よって,ピラソロ代数
は,代数(4.75)の中心元 c による拡張,即ち,中心拡大です.
ビラソロ代数の既約表現の上において,中心元 c は一定の値をとりますから,
中心元 c の値は既約表現を指定するためのパラメーターとしての役割を果たし
ます.特に,二次元の共形場の理論においては,中心元 c が共形変換に対するア
ノマリーという特別な意味を持ち,共形変換に対する不変性が量子効果によっ
て破れる度合いを表現します.中心元 c は,自由ボゾン場ゆ( z)に対して c = 1,
自由フェルミオンに対して c = 1/2 となるように規格化されています.
ビラソロ代数の交換関係についてヤコビ律が成立します:
命題 4.10
ぅLi, Lm]] = 0.
Li]]+ [Ln[
[Li, [Lm, Lnll + [Lm, [Ln ぅ
(4.82)
証明は次の節で述べます.
交換子が代数の元の線形和(4.81)で与えられ,ヤコビ律が成立するので,
命題 4.11
ピラソロ代数はリ一代数である.ただし,無限個の生成元を持
つので無限次元リー代数である.
ビラソロ代数の生成元 L n は Lo との交換子をとる演算の固有値として
[Lo, Ln] = ‑nLn,
即ち, L n の次数は
−n
(4.83)
と次数付けされます.また,中心元 c の次数は零です.これによって,ピラソ
ロ代数は次数付きのリ一代数となります.ピラソロ代数の表現論を考えるとき,
この次数が役に立ちます.我々は,これから無限次元の表現空間を取り扱うこ
とになりますが,次数によってそれを有限次元の空間の和に分解して考えます.
4.2 ピラソロ代数 149
4.2.4 ヤコビ律と中心拡大
実は,ピラソロ代数は,交換関係(4.75 )の中心拡大であって,かつ,ヤコビ
律を保つような代数の最も一般的なものになっています.すなわち,次のよう
に特徴付けられます:
命題1!4'.12
交換関係(4.75 )で定まる代数の中心拡大であって,最も一般的
なリー代数は,定義 4.9 で与えられるものである.
証明.
まず,中心元を係数とする η の多項式を f(n)とし,
[Ln ぅLm] = (n ‑ m ) L n + m + f(n)8n+m,o
(4.84)
と仮定します.斉次性から,右辺は次数零の場合のみ中心元を含みます.まず,
n と m の入れ換えに関する左辺の反対称性から f(n)は n の奇数次のみ含む多
項式でなければなりません.次に,ヤコビ律が成立するためには,
[Lz, [Lm, Ln]] + [Lm, [Ln,LzlJ + [Ln, [Lz, Lm]]
= ((2m + l)f(l )一( m + 2l )伽) + ( m
(4.85)
りf ( m 什) )8z+m+n,O
が零にならねばなりません.この式(4.85 )の右辺は次のように得られます:
左辺= +[Lz, ( m ‑ n)Lm+n + f(m)8m+n,o]
+[Lm, (n ‑ l)Ln+l + f(
η)
on+z,o]
十[
Ln, (l
m)Lz+m + f (l)oz+m,o]
(4.86)
= ( m ‑ n ) ( l ‑ m 一叫ん+m + n + ( m ‑ n)J(l)8z+m+川
+
(η −l)(m ‑ n ‑ l)Lt+m+口+ (n ‑ l)f(m)8z+m+n,O
+(l ‑ m (
)η −
l ‑ m)Lz+m+n + (l ‑ m ) f (
η)
81+m+n,O =右辺.
式(4.85 )が零になる条件,即ち,関数方程式
(2m + l)f (l )一
(m + 2l)f(m) + ( m ‑ l)f(m + l) = 0
(4.87)
を解くために l = 1 とすれば漸化式
f ( m + 1) =
( m + 2)f(m) ‑ ( 2 m + I)f(I)
m ‑ 1
(4.88)
が得られます.この漸化式より, f(I )と f(2 )から任意の f (n)
が決定されます.
そして,漸化式(4.88 )の一般解として
(
!η)= αη 十 bn3
(4.89)
を得ることができます.そして,これが式(4.87)の解であることは容易に確認
されます.よって,中心元として, α と b の二つが残されました.
−
次に, Lo の定義を変更して係数 αを b まで動かしましょう.すなわち,新
1 5 0 第 4 章不思議な出会い
ピラソロ代数
νいL O を
ー
︷ =
疋ド
O
+
一
一
L ︸パ2
︾
﹂
ぃ︸
﹁れ
?
め
|
F
−L
O
E
(4.90)
叫
u ト
叫
nL
噌
AA n EA
可
U
αη + bn3) =
[Ln, L̲n] = 2nLo + (
η3
+ b(
n),
(4.92)
となります.よって,上のような再定義による自由度を除けば,中心元は b 一
つになります.ここで, b = 台とすれば,交換関係(4.81 )が得られます.即
口
ち,交換関係(4.81 )で定まる中心拡大がもっとも一般的なものです.
4.2.5 最高ウエイ卜表現
IO)= 0 を
調和振動子の状態ベクトルは,消滅演算子で消されるという条件 α
↑を掛けて
満たす基底状態 IO )に,生成演算子 α
IO),
atlo),
(at)2IO),
(at)3IO),
・
・
・
(4.93)
α↑が成
と生成されました.即ち,これらのベクトルで張られる空間の上に, α,
at]= 1 が表現されています.
,
すハイゼンベルグ代数[α
ピラソロ代数に対してこれに類似の表現を考えましょう. Lo の固有値 h の
固有状態であって正モード Ln(n と 1)で消されるという条件,
Lnlh) = 0
場合),
η 三1 の
(
Lolh) = hih),
(4.94)
(4.95)
を満たすべクトル lh)を最高ウエイト h を持つ最高ウエイトベクトルと呼びま
す.このとき,ピラソロ代数の最高ウエイト表現 M ( h)は,最高ウエイトベク
トル lh)に負モード Ln(n 三一 1)を次々掛けて得られる状態で張られるベクト
ル空間
一
一
一
一
一
「
定義 4.13
引 h)
・
M(h) = C[L‑1, L‑2, ・
(4.96)
と定められます.また,ピラソロ代数の中心元 c は M ( h)の上で一定の値をと
ると仮定しましょう.今後,この意味で中心元 c をあたかもパラメーターのご
とく扱うことにします.
最高ウエイト表現 M ( h)は Lo の固有値で分解することができます.例えば,
LoL‑1lh) = (h + l)L ilh),
(4.97)
LoL̲3L̲1L ilh) = (h + 5)L̲3L iL‑1lh),
(4.98)
等となります.
4.2 ピラソロ代数 151
問題 4.14
交換関係(4.81 )を用いて上のことを確認せよ.
ここで,調和振動子とピラソロ代数の対応を表にしておきましょう:
調和振動子
生成演算子
消滅演算子
Iat
α
ピラソロ代数|負モード L n (
η5
i) I正モード Ln(n 三1)
4.2.6 最高ウエイ卜表現の基底
ピラソロ代数の最高ウエイト表現 M ( h)の基底を求めましょう.最高ウエイ
ト表現 M ( h )はおの固有値によって分解されるのですが,ここでは簡単のた
め
, L 。の固有値から h を
ヲ lいた数を次数と呼ぶことにします.調べてみると,
Lo の各固有空間の次元と基底が
次数次元基底
0
1
lh)
(4.99)
1
1
L 1lh)
(4.100)
2
2
L‑2lh), L̲1L‑1lh)
(4.101)
3
3
£
̲3lh), L̲2L‑1lh), L̲1L‑1L‑1lh)
(4.102)
4
5
L̲4ll仏L̲3L‑1 lh), L̲2L‑2Jh),
(4.103)
L 2 L 1L‑1llう
ゅL̲1L‑1L‑1L‑1lh)
等と求められることがわかります.ただし,ここでは
L‑n1 L n2L‑n3 ・
・ lh)
(n i とη2 三 n3 三・・・三 1)
(4.104)
のようなベクトルを基底ベクトルとして採用する方針で進みました.実際,交
換関係( 4.81 )を用いれば,式(4.104 )のような N 次のベクトル全てで M(h)
の次数 N の部分空聞が張られていることを確認することができます.
命題 4 d 5
M ( h )の次数 N の任意のベクトルは,ベクトル
L‑Nlh), L ‑ N + 1 L 1lh), ・
・
・
,
(4.105)
の一次結合として一意的に表すことができる.
例えば,次数 3 では,
L 1 L 2lh) = (L‑2L‑1 + L̲3)lh)
等,というように一意的に並べ替えができます.
152 第 4 章不思議な出会い
ピラソロ代数
(4.106)
問題 4.16
命題 4.15 を証明せよ.
の次数 N の部分空間の次元を調べましょう.そのために言葉を
さて, M ( h)
一つ用意します:
定義 4.17
P ( N)は,自然数 N を重複を許して幾つかの自然数の和に表
す場合の数とする.この P ( N )を N の分割数と呼ぶことにする.
例えば,
P(l) = 1 : 1,
(4.107)
P(2) = 2 : 2 = 1 + 1 ,
(4.108)
P(3) = 3 : 3 = 2 + 1 = 1 + 1 + 1 ,
(4.109)
P(4)=5:4=3十1 = 2 + 2 = 2 + 1十1=1+1+1+1,
(4.110)
P(5) = 7 : 5 = 4 + 1 = 3 + 2 = 3 + 1 + 1
(4.111)
= 2 + 2 + 1 = 2 + 1 + 1 + 1 = 1 + 1 + 1 + 1 十 1,
等です.また, P ( N)は|入 l = N となるパーテイション入の総数とも表現でき
ます.
問題 4.18
できるだけ沢山の N について分割数 P ( N )を計算せよ.
そうすると,命題 4.15 より,
M ( h )の次数 N の部分空間の次元は P ( N)である,
命 題 4.19
ことがわかります.
最高ウエイト表現のデュアルを考えましょう.先ほどと同じく,次の条件
(h!Ln = 0
(n 壬− 1 の場合),
(4.112)
(h!Lo = h(hl,
(4.113)
(hlh) = 1,
(4.114)
を満たすべクトル( hi によって,最高ウエイト表現のデュアル M * ( h)を
定義 4.20
M*(h) = (h!C[L1, L2 γ. . ]
(4.115)
と定めます. M * ( h)も Lo の固有値によって次数付けされます.具体的には,
次数次元基底
0
1
(hi
(4.116)
4.2 ピラソロ代数 153
1
1
(hfL1
(4.117)
2
2
(hf £
2, (hf L1L1
(4.118)
3
3
(hf £
3, (h/L1L2, (h/L1L1L1
(4.119)
4
5
(hfL4, (hfL1L3, (hfL2L2,
(4.120)
(hfL1L1L2(
ぅhfL1L1L1L1
N P ( N ) (h/LN, (h/L1LN h ・
・
, (hfLf 1L2, (hfLf
(4.121)
となります.
4.2.7 特異ベクトル
調和振動子の場合には生成消滅演算子の交換関係[α
,
at]= 1 から定まるベア
リング
t
(0 αm (
α十 fO) = m ! 6m,n
/
(4.122)
が重要な役割を果たしました.これと同様に,最高ウェイト表現 M ( h)とその
デュアル M 本 (
h )の元 Ju)εM ( h)
ヲ
(vfε M * ( h)の聞にはピラソロ代数の交換
関係
c
12
[Ln,Lm] = (
η −m )Ln+m + ‑ n '
(
ポ− 1)
ι+m,o,
(4.123)
から導かれる自然なベアリング(vf 叫が定義できま す.この内積を 調べること
がピラソロ代数の表現論の基礎となります.以下これについて考えます.
最高ウェイト表現 M ( h)とそのデュアル M * ( h)は Lo の作用によって定まる
次数で分解されました.まず,異なる次数のベクトルは直交することを示して
おきましょう.
命 題 4.21
fu)εM ( h)は m 次で(り| ε M (
h )は n 次とするとき,
問予正 η ならば
本
(vfu) = 0
(4.124)
となる.
証明.
条件より
Lofu) = (h + n)fu),
[
り
(L o = (h+m)(v/,
(4.125)
ですから,
(v/Lofu) = (h +η)
(
り Ju) = (h + m)(vfu)
となり, n =/= m の場合はい Ju)= 0 です.
154 第 4 章不思議な出会 い
ピラソロ代数
(4.126)
口
最高ウエイト表現 M ( h)において,次のような特別な振る舞いをするベクト
ルが生じることがあります.
定義 4.22
M ( h)のベクトル|χ)で条件
Loiχ>= (k + h)Iχ)
(4.127)
(たと 1),
全ての η 三1 に対して, Lnl χ)= 0,
(4.128)
を満たすものを,次数 k の特異ベクトルと呼ぶ.
即ち,特異ベクトルとは正モード L 山即ち,消滅演 算子で消される ベクトル
h)に負モード L ̲ n
のことです.特異ベクトル|χ)は,最高ウェイトベクトル l
を掛けたものの線形結合として得られるのですが,一方,条件(4.128 )より特
異ベクトル| χ)に正モード L n を掛けてももと来た道を戻ることができません.
つまり,特異ベクトルは一方通行道路のようなベクトルです.
h )のベアリングに退化が生
実は,特異ベクトルが存在すると, M ( h)と M キ (
じます.
命 題 4.23
特異ベクトル| χ)と任意の(ulε M * ( h)について
(4.129)
( χ)= 0,
叫
が成り立つ.
証明.
まず,条件(4.127)より( hi と特異ベクトル| χ)は次数が異なりますか
らベアリングが消えます.よって, M * ( h)の次数 1 以上の基底
・ Ln3Ln2Ln1
・
(hi・
(4.130)
・・・三 η3 壬n 2 壬ni)
(1 三
とのベアリングを調べれば十分です.消滅演算子 L n が一つ以上あるので条件
(4.128)より
(4.131)
I )= 0
・ Ln3Ln2Ln1χ
・
(hi・
口
となります.
命題 4.23 より, M ( h)と M * ( h)を適当に同一視すれば
命 題 4.24
の部分空間
特異ベクトル|χ)から生成される M ( h )
JIχ)
・
・
C[L‑1, L̲2, ・
(4.132)
は M ( h )と直交する
ことがわかります.特に,空間(4.132)は零ノルムの空間となります.
問題 4.25
命題 4.24 を証明せよ.
4.2 ピラソロ代数 155
以上のことから,特異ベクトル|χ)から生成される M ( h)の部分空間を零ベ
クトルと同一視しでもピラソロ代数の表現論に矛盾が生じないことがわかりま
す.別の言い方をすれば,特異ベクトル|χ)の存在によって最高ウエイト表現
M ( h)は規約ではなくなります.このように,特異ベクトルは最高ウエイト表
現 M ( h )の可約性を調べるときに重要となります.
4.2.8
カッツ行列式
特異ベクトルを見つけるために,カッツ行列式と呼ばれるものを調べましょ
う.次数 k のカツツ行列式 detk を
, M ( h)
の次数 k の基底と, M * ( h)の次数
k の基底とのベアリングを要素とする P ( k )× P ( k )行列の行列式と定めます.
カッツ行列式 d e h が零になる条件を調べることが特異ベクトル探しの第一歩
となります.
以下,具体的に計算してみます.まず,次数 1 におけるカッツ行列式は
det1 三
( hlL1L‑1 lh) = 2h
(4.133)
です.これは,交換関係(4.81 )より
(hlL1L 1lh) = (hl[Li,L‑1]lh)
(4.134)
= (h/2Lo/h) = 2h
と計算されます.
次に,次数 2 でのカッツ行列式は
det.,
三
|
(
州 L2L‑2/h)
ー
(h/L2L‑1L‑1 /h)
I
I (h/L1L1L‑2/h) (h/L1L1L‑1L‑1/h) I
4h+
6h
6h
4h(l+2h)
(4.135)
となります.この行列要素を与える四つのベアリングは次のように言七算できます:
(h/L2L‑2/h) = (h/[L2, L̲2]/h)
(4.136)
= (h/ (4Lo +
会2(22 ‑1)) /的= 4 h +
(h/L2L‑1L‑1lh) = (h/[L2,L‑iJL‑1/h)
(4.137)
= (h/3L1L‑1 lh) = 6h,
(hlL1L1L 2lh) = (h/L1[L1, L 2]/h)
= (hlL13L‑1 lh) = 6h,
(hlL1L1L‑1L‑1 /h) = (h/L1 ([L1, L̲1] + L̲1L1) L‑1 lh)
156
第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
(4.138)
(4.139)
= (hlL12LoL‑1lh) + (hlL1L 1[L1 ぅL‑1Jlh)
= 4h(l + h) + 4h2 = 4h(l + 2h).
次数 3 の場合,基底
L̲3lh),
(4.140)
L̲1L‑1L‑1 lh)
L̲2L‑1lh),
に関するベアリングを計算すれば,カッツ行列式は
6h + 2c
det3 = I lOh
24h
lOh
24h
8h2 + 8h + c h
12h(l + 3h)
12h(l + 3h)
24h(l + h)(l + 2h)
I(4. 叫
となります.すこし長くなりますが,ベアリングの計算を見ておきましょう.
まず,
(4.142)
(hlL3L̲3lh) = (hl[L3, L 3Jlh)
=(hi
小h) = 6h 2c,
(32 一
会
+
仏
(
十
(4.143)
(hlL3L̲2L‑1lh) = (hl[L3,L 2]L‑1lh)
= (hl5L1L‑1lh) = lOh,
(4.144)
3, L i]L iL‑1 lh)
(hlL3L̲1L‑1L‑1 lh) = (hi [£
= (hl4L2L‑1L‑1lh) = 24h
う
となります. (hlL1L2L‑3lh), (hlL1L1L1L 3lh)も同様に計算できます.次に,
(4.145)
(hlL1L2L 2L‑1 lh)
= (hlL1 ([L2 ぅL̲2] + L̲2L2) L ilh)
= (hlL1 (4Lo +
DL
ilh) + (仙 L̲2[L2, L 1]lh)
= (4(1 十九) +
ilh) = 8h2 + 8h + 仇
(4.146)
(hlL1L2L‑1L‑1L‑1lh)
= (hlL1 ([L2, L̲i] + L̲1L2) £̲1L‑1 lh)
= (hlL13L1L‑1L‑1lh) + (hl[L1, L̲1]L2L‑1L‑1lh)
)
6h = 12h(l + 3hぅ
4h(l + 2h) + 2h ・
= 3・
(hlL1L1L1L‑1 L iL‑1 lh)
(4.147)
= (hlL1L1 ([L1, L‑1] + L̲1L1) L 1L 1lh)
= (hlL1L12LoL‑1L 1lh)
4.2 ピラソロ代数 1 5 7
+(hlL1 ([L1, L̲1] + L̲1L1)L1L‑1L‑1lh)
2(hlL1L1LoL‑1L‑1lh)
=
+2(hlL1LoL1L‑1L‑1lh) + 2(hlLoL1L1L‑1L‑1lh)
= 2 ( ( 2 + h ) + ( l 刊 ) + 市 IL1L山
L‑1lh)
= 6(1 十 h )・4h(l + 2h) = 24h(l + h)(l + 2h),
となります. (hlL1L1L1L‑2L‑1lh)についても同様です.
最後に,次数 4 の場合を見ておきましょう.基底
L̲4lh),
L̲2L
L̲3L‑1lh),
i L ‑ 1 lh),
L̲2L‑2lh),
(4.148)
L̲1L‑1L‑1L‑1lh),
に関するベアリングを計算すれば, det4 は次のような 5 × 5 対称行列
diag I8h + 5c, 4h(3 + 3h + c)
…
+
l
2
+ c)(8 + 8h + c),
(4.149)
抗
( 16 + c + 58h
。
*
l4h
。
*
+ I 3(8h + c)
*
*
*
*
30h
。
*
36h
20h(l + 2h)
120h
48h(l + 4h)
*
*
6h(8 十 8h + c)
。
72h(2 + 3h)
48h(l + 2h)
。
*
の行列式となります.紙面の都合で上三角の行列要素は省略しでありますが,
対称行列になるように読んでください.この行列の導出は読者への演習問題と
しておきます.
問題 4.26
行列(4.149)を計算せよ.
これらのカッツ行列式を調べてみると,規則的に因数分解されることがわか
ります.次数が大きくなると,手で扱うことは難しくなりますので,数式処理
プログラムを利用できる読者は計算機で以下の因数分解を行なってみて下さい:
公式 .4.27
det1 = 2h,
det2 = 2h(16h2
det3 = 48h2(16h2
(4.150)
(10 ‑ 2c)h + c),
(10
(4.151)
2c)h + c)(3h2 ‑ (7 ‑ c)h 十 2 + c),
(4.152)
det4 = 384h3(16h2 一
( 10 ‑ 2c)h + c)(3h2 一
( 7 ‑ c)h 十 2 + c)
158 第 4 章不思議な出会いービラソロ代数
( 82 ‑ lOc)h + 66 十 15c)(8h ‑ 1 十 c).
×16h2 一
(
出
公式 4.27 の因数分解を確認せよ.
問題 4.28
カッツ行列式の因数分解
4.2.9
前節で調べたカッツ行列式の因数分解の仕組みを解きあかしてみましょう.そ
のために,カッツ行列式を h についての多項式とみなしてその零点を調べます.
公式 4.27 に掲げた例をみれば,次数を上げるに従って,新しい零点が付け加
わっていることがわかります.また,ある次数で生じた零点は次数を上げると
ともに多重度が増えてゆきます.以下,カッツ行列式を一次の因子に因数分解
する,すなわち,零点の構造を調べることを目標とします.
まず,カッツ行列式の零点の性質を調べてみましょう.まず,次数 1 のカツ
ツ行列式 det1 に現れる零点は
(4.154)
h = O
のみです.次に,次数 2 のカツツ行列式 det2 に新しく現れる因子 16h2 ‑ (10‑
2c)h + c が零になる条件として
(4.155)
H
H
が得られます. 3 次のカッツ行列式 det3 場合 3h2 ‑ (7 ‑ c)h + 2 + c を因子と
して含みますが,これが零となる条件は
h= 7
c)(25 ‑ c)
(4.156)
です.また, 4 次のカッツ行列式 det4 については, 16h2‑(82‑1 0c)h+66+15 c =
O と8h
1 + c = 0 より
h ̲ 4 1 ‑ 5c 土 5y1(1‑ c)(25 ‑ c)ー
,
16
−
h ーとと
−8
(4.157)
(4.158)
を得ます.
ここで,次のようなことに気がつくでしょう:
これら全ての例について,平方根の中が( 1 ‑ c)(25 ‑ c)となっている.
このようなカッツ行列式の零点の性質は,交換関係(4.81 )から導かれるとても
不思議な現象です.
この平方根をうまく表現するために,
女 159
4.2 ピラソロ ft妻
(4.159)
β
と
ノ f ラメトライズして,さらに
九一(βT
r,s
−
s)2 ー
( (3‑1)2
4β
(4.160)
とおきましょう.そうすれば,公式 4.27 に掲げたカッツ行列式の例を
det1 = 2 ・(
h ‑ hi,1),
(4.161)
det2 = 25 ・
h(h ‑ hi,2)(h ‑ h2,1),
(4.162)
det3 = 28 ・
32 ・
h2(h ‑ hi,2)(h ‑ h2,1)(h ‑ hi,3)(h
h3,1),
(4.163)
det4 = 222 ・
32 ・
h3(h ‑ h 口 )
2(h ‑ h2,1)2(h ‑ hi,3)(h ‑ h3,1)
×(
h ‑ hi,4)(h
h4,1)(h ‑ h2,2),
(4.164)
と美しく因数分解することができます.
問題 4.29 上のことを確認せよ.
上のように因数分解されることから,カッツ行列式の一般式を予想すること
も可能となります.また,整数の因子についても具体的な表現法をみつけるこ
とができます.そして,次の公式がカツツによって見い出され[6 3),フェイギン・
フックスによって証明されました{64), {65]:
命題 4.80
d目 N =
次数 N のカツツ行列式は
II 2t
(
λ) Z 入×
|
λl = N
II (h ‑ hr,s)P(N
ー吋)
(4.165)
:
お
と因数分解される.
ここに,入= (lm12m23m3. ・・)はパーテイション, Z 入は式( 3.16 )で定まる整
数,£(入)はパーテイション入の長さ
£
(
入)
=
Lm;,
(4.166)
です.命題 4.30 の証明は文献[回]に再録されています.
4.2.10 特異ベクトルの公式の例
特異ベクトルの実例を計算してみましょう.まず, h = hi,1 では次数 l でカツ
ツ行列式が零になります.このことから, L‑1lh11 )が特異ベクトル,すなわち
160
第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
LnL‑1ihυ)= 0
(4.167)
(n = 1, 2 3, . . )
う
となることがわかります.実は, n
= 2,3,4,・・ ・の場合は自明なので,条
件 L 1 L 1lh1,1) = 0 が成立することを示さねばなりません.このベクトル
L 1 L 1lh1,1 )は次数零ですから L 1 L 1lh1,1) = c1ih1,1 )と書けますが
0 = det1 = (hlL1L 1lh) = c1 倒的= C1
(4.168)
より, C1 = 0 となります.以上まとめて,
h = hi,1 の場合
(4.169)
三 L 1lh1,1)
1,1 )
χ
|
は特異ベクトルである.
次に,次数 2 において最高ウエイト h = h12 の場合を例に考えましょう.ベ
クトル
:̲1) lh1,2)
lx1,2) = (c1L‑2 + £
(4.170)
が特異ベクトルとなるような C1 を探すことが目標です.その条件は
1,2) = 0
Lnl χ
)
−
−
正
(n = 1, 2 ,
(4.171)
ですが, n = 3 4 ・・・の場合は自明に成立しています.よって
う
,
)
1,2) = c2L‑1¥h口
L1 χ
\
1,2) = c3 lh1,2)
L2Iχ
(4.172)
と書いたときに C2 = C3 = 0 となることを示さねばなりません.中心 c の値が
一般の場合には( h1,2 IL1L 1lh1,2 )手 0 ですから次数 1 の空間の内積は退化し
1,2 )が特異ベクトルとなるための条件を
ていません.よって| χ
1,2) = 0 ぅ
C2 = Q 特( h1,2IL1L1Iχ
(4.173)
1,2) = 0,
C3 = 0 仲( h1,2IL2Iχ
(4.174)
と書き換えることができます.これは C1 に関する連立 1 次方程式
( (h1,2
2lh1,2)
(h1,2¥LrL一
J (4.175)
I= I
II
¥ O }
(h1,2ILrL:̲1ih1,2) } ¥ 1 }
1,2 )が存在し,係数が C1 = ‑ 1 /β
ですが,条件 det2 = 0 より特異ベクトル|χ
で与えられることがわかります.以上まとめて,
h = h12 の場合
(4.176)
i,2) = (
χ
|
は特異ベクトルである.
4.2
ピラソロ代数 1 6 1
一般に,次数 k でカッツ行列式 detk に零点が新しく生まれることが,次数
たにおいて特異ベクトルが誕生することを意味します.(なぜそうなるのか考え
て下さい.)命題 4.30 により,カツツ行列式 detN は
(h ‑ hr,s)P(N‑rs)
(4.177)
という因子を持つことになりますが,そのうち,次数 N
l 以下には存在せず
次数 N で初めて現れるものは
(h
ただし,条件 r s = N を満たすもの
hr,s),
(4.178)
となります.すなわち,命題 4.30 から,
命題 4,31
最高ウエイト h = h r S の最高ウエイト表現は次数 rs の特異ベ
クト lレを持つ,
ことが読み取れます.特異ベクトルが生まれる条件が手許にありますから,あ
とは定義 4.22 に従って,最高ウエイト表現 M ( h)に生じる特異ベクトルを求
めることができます.
特異ベクトルの具体例を挙げてみます.
公式 ・
4.32
次数 4 以下について,最高ウエイト h =ん
, s の表現に現れる
次数 rs の特異ベクトル lxr s )は次のように表される:
|
χ
1,1) = L‑1lh1,1),
|
χ
1,2) =
す
( 一+
山
小
L 2
(4.179)
h1,
|
χ
2,1) = (
一/3L一
2 十 L 一lL一1) lh2,1 )
(4.181)
4
η
1 J L 3 一一 L 2 L 1 +
/う/う\
|
χゅ
) = (二|二
¥/3 ¥/3
) 一
β
\
J lh1,3),
(4.182)
一 /
|
χ
3,1) = (2β (
2 βl ) L ̲ 3 ‑ 4βL 2L‑1 +
(1 ーさ+引
L̲4
β (32)
|叫= (
¥ 3/ ¥
3̲ ( 5
3/ ¥
一
竺
)
β/ 一 一
g 2
0
¥
+
(32 ‑ ‑ ‑L‑2L2‑1
2
β
j)lh1,4),
(4.184)
{ 3(1 ‑ /3)2
2(1 ‑ 3/3 +β
2)
|
χ
2,2) = (一一一一一 L 4 ‑
L 3L̲1
l β
−
β
(1 ‑ /32)2 2
2(1 + /32 ) 《
L 2 一一一一一
L̲2L:..1 +
(32
β
−
+ーーす
ベ
−
|
χ4
6/3(1‑4/3+6β2) L ̲ 4
第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
4 ¥
Ilhυ,)
/
初( 5 ‑12β)
L̲3L 1
+ 叫 一 肌 ん 吋 ね 1).
162
(4.185)
州
ここでは,後の公式を整えるために,特異ベクトルを L'.!.1 の係数が l になるよ
うに規格化しました.導出は読者への問題としておきます.
問 題 4.33
公式 4.32 を導け.
4.3 ビラソ口代数の自由場表示
第 4.1 節では自由場を用いて c = l のビラソロ代数を表現しました.ここで
は,これを少し修正して c < l の場合を表現する方法を考えます.
4.3.1
自由場
自由ボゾン場の性質を思い出しましょう:
ε;
o logz −
仲) = Q +α
(4.187)
anZ‑n'
ヲO
n正
= ηOn十m,O ぅ [αn,Q] = On,O ・
αm ]
αn ぅ
[
ただし,簡単のために, 4.1 節の A
(4.188)
Q を改めて Q と書きました.
実は,中心が
(4.189)
c = 1 ‑ 1 2 α6 < 1
と与えられるようなピラソロ代数も自由ボゾン場によって
(4.190)
k εZ
と表現されます(フェイギン・フックス表示) (60], (64J. これを母関数を用いて表
現すれば,
一
一
一
一
一
一
一
一
一
「
c = 1 ‑ 12a6 のピラソロ代数の表現が,自由ボゾン場によって
。"
( z),
( z) +α δ匂
θゆ
ゆz)
)_,:LnZ‑n‑‑;, =一21: θ(
T(z) = ム
T
「 "
(4.191)
n εZ
と与えられる.
証明
まず,
制( z)仰(ω)=&九 log(z ‑ w) + 正 則 = ー 土τ +正則
い−w)
(4.192)
となります.これと自由ボゾン場に対するウイツクの定理を用いれば,
)
(ω.
δゆ
(ω)
: θゆ
:
(z )
θゆ
(z)
:θゆ
)
(ω・
δゆ
(z )
4 :θゆ
2
.+正則
=一一一一+
(z 一w)4
(4.193)
(z ‑ w)2
4.3
ピラソロ代数の自由場表示 1 6 3
2
4:
( θゆ
(ω)
θゆ
(w): +(z ‑ w ):θ
2ゆ
(ω)
θゆ
(ω)
:
)
+\
ノ+正則
(z‑w)4 ・
2
(z 一w)4
( z ‑ w、
内
n
' 4 :θゆ
(ω)
θゆ
(w): , 4 :θ
2ゆ
(ω)
θゆ
(w): ,
+
+
+正則ー
(
z 一w)2
,
z ーw
'
を得ます.また,
2
2θゆ(
z)
(
z ー w)2
:θゆ(
z)
θゆ(
z):がゆ(ω)一 θ 一一一一+正則
一 回
(4.194)
4θゆ(
z)
(z ‑ w)3
=一一一一一+正則
48ゆ
(ω) 4がゆ(ω) 2がゆ(ω)
=一一一一一+一一一一一十一一一一一+正則,
(z ー w)3 (z‑w)2
z 一切
2θゆ
(ω)
がゆ(
z):仰(ω)
θゆ
(ω):= θ一一一一+正則
z(z‑w)2
4θゆ
(ω)
=一一一一+正則,
(z ‑ w)3
がゆ (
z)
θ2ゆ
(ω)= ιθ 一」一一+正則
日
(
z 一w)2
(z 一切) 4
ヲ
となります.以上のことより,作用素積展開
T(z)T(w) =
(1 ‑
(z‑w)4
2T(w )
θT(w)
+一一一一+一一一 +正則,
(z 一w)2
z 一切
(4.195)
を導くことができます.
口
問題 4.35 作用素積展開による上のような議論を用いずに, L n を h で与え
る式(4.190 )と自由場のモードに対する正規順序化のルールを用いてピラソロ
代数の交換関係(4.81 )を示せ.
4.3.2 フォック空間
自由ボゾンのフオツク空間を定めます.まず,真空状態ベクトル IO )は
α
nlO) = 0
(
η 三 0),
(4.196)
を満たすものとします.そうすれば,ゼロモード α
。の固有状態は
|
α)= e QIO),
(4.197)
α
|
。α)= α|
α
,
)
(4.198)
白
と書けます.このとき,フォック空間は
164 第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
定義 A.36
α3 ,
2,
α−
1,
F 白= C[α−
(4.199)
'
JIα)
・
。の作用で次数付け
と定められます.最高ウエイト表現同様,フォック空間も α
されます.具体的に書き下してみれば,
次数次元基底
。
1
α)
|
(4.200)
1
1
11α)
α−
(4.201)
2
2
11α)
1 −
α
)α−
21α,
α−
(4.202)
3
3
1α11α)
1 −
α
)α−
11α,
)α2 α−
31αぅ
α−
(4.203)
4
5
)
21αう
2α−
)α−
11α,
3α−
)α−
41α,
α−
(4.204)
11α)
1α1α−
1 −
α
)α−
11α,
2α1α−
α−
γ. , a
I)
)αN + l α1α
NIα,
N P ( N)α−
(4.205)
となります.
最高ウエイト表現と,フォック空間の対応を調べてみましょう.
命題4.37 最高ウエイトを
h
(−
ト
ニ
(4.206)
)
α 2αoぅ
から
とすれば,自由ボゾン表示(4.190 )によって,最高ウエイト表現 M ( h)
フォック空間 F 白への準同型が得られる.
ベクトル|α)が正モード Ln(n 三1)で消されることは明らかです.また,
証明.
(4.207)
Loiα
口
となります.
以下,低い次数において具体的に対応を見ていきましょう.次数 1 の場合:
公式 4.38
(4.208)
)
11α.
α−
L‑11α)= α
)
+ a ̲ 1 a o + αーが1 + ・
L
ー
−
−…
αo 山 )α 1] 1
.
11α)
(4.209)
4.3 ピラソロ代数の自由場表示 1 6 5
次数 2 では:
公式 4,39
L 一 件 ( (α+α仰 + ト − 1a‑1) α
I,
)
(4.210)
L 山 | α)=(α
α−2 + a 2 a ‑ 1 a i)Iα)
(4.211)
L̲1L‑1Iα)
叶
1 + 1)
α十 一 iI
α)=(α
α−2 + ん − 1)1α)
•
(4.213)
また,次数 3 と次数 4 の場合について結果を書けば次のようになります:
公式 42110
L一
dα)
=
(
(α十 2αo)
L 2L‑1Iα)=(α
α−3 +α(
α+ 仰 − 2a‑1 +
(4.215)
L 1L‑1L‑1Iα)= (2山 + 約 一2
α−1 十 九 山 ι1)1α)
(4.216)
公式必;4,].
L 41α)
=
(
(
o)
α−
4
¥ α+3α
‑
2
I,
)
Jlα
(4.217)
L̲3L‑1Iα)=(αα4 +α(
α+2α
o)
(4.218)
L ̲ 2 L−
州 = (2 (
α+α仇 4 + 山 一 1 + (
α+αo)2a‑2a 2
+
(α+αo)a α
2 −
α
1 −1 +
(4.219)
L̲2L‑1L‑1Iα)= (2α
α−
4 +2α2a̲3a̲1 + 仰 + 山 一2 α2
ゆ 山十三
+α(;+ α2 +α
166
第 4 章不思議な出会い
ピラソロ代数
4
α一 一
(4.220)
L̲1L‑1L‑1L‑1I
3 −1 + 的 一 山
←(6αα− + 的 −α
4
山 十 仇4
+6cia̲2a −
同 − 1a‑1) la).
(4.221)
公式 4.40,4.41 を導け.
問題 4.42
4.3.3 特異ベクトルの自由場表示:秘密のトンネル
ピラソロ代数の特異ベクトルを自由場表示すると,突然そこにはジャック多
項式が出現し,カロジェロ・サザランド模型とピラソロ代数を結ぶトンネルが開
通するのです.これは,まったく不思議な現象としか言い様がありません.こ
の現象を見つけたのは三町・山田です[68J. ここでは,彼等と少し違うやり方で
この秘密のトンネルについて述べてみます.
ピラソロ代数の特異ベクトルを表現するとき, 中心元 c と最高ウエイト h を
c = l
一也三立.
(4.222)
9
(βr‑s)2;(/3‑1)2
h sー
一
(4.223)
う
と書くのが便利でした.これに対応して,フォック空間上では
,
)
方
一
。
(
会
((1 +r)yft‑ (1 +仇)?
方
α =
(4.224)
αa =
(4.225)
r,s
を用いてうまくパラメトライズできます.即ち,
c= 1‑
= 1‑
6(/3‑1)2
(4.226)
(4.227)
ん=
が成立します.
自由場のフォック空間と対称関数の空間は本質的に同じ空間とみなすことが
できますから,この対応を用いてピラソロ代数の特異ベクトルを調べてみましょ
う.フォック空間と対称関数の空間を
制) =(al exp
(崎川
iu),
(4.228)
を用いて同一視します.ここに, P n はべき和対称、関数です.例えば,
4.3 ピラソロ代数の自由場表示 167
中−n
lα)) =
[%Pn,
(4.229)
中−
n α−
mlα)
)=
(4.230)
等となります.
これで,特異ベクトルを自由ボゾンで表示したものを解読するための準備が
整いました.まず,次数 1 の特異ベクトル| χ
1,1) = L‑1lh1,1 )を自由場表示す
れぱ
) αー1 1 αυ )
¥VB −土
VlJJ
lx1,1) = α
1,1α−
11α
1,1) = J2 (
(4.231)
となります.これを対称関数に写せば
パlx1,1)) = (
β−
l)p1 = (
β−
1)
(4.232)
とジャック対称関数で表すことができます.また,
|
χ
1,2) =
(
十
− + Lー
ベ
2
lh1,2)
(4.233)
も自由場表示すれば
((
|
χ
1,2) =
α
1,2 + α山 十 川 | α
1,
(4.234)
+(α
1,2α−
2 +α
i.2α_
:1) Iα
1,2)
=
(
兵
(
β 件
1)
α2 +
山山
一l)J広
−
)
=(β一2
とジャック対称、関数で書けています.
次数 4 まで計算してみると次のようなことがわかります:
公式 4.43
次数 4 以下の特異ベクトルを自由場で表示したものはジャック
対称関数 Ji/3‑1) (
式
( 3.53 ))を用いて次のように書ける:
州 1,1)) =
(4.235)
i(Iχ
1,2 )
)=(β一 仰 − 2)Jg)‑1),
(4.236)
i( I加))=(β
(4.237)
山 1,3)) = ((3 −卯 一 抑 −
(4.238)
一卯β一卯β一川広 1),
168
i(lx3,1)) = (
β
(4.239)
似 1,4)) = ((3‑1(
)β一2)((3 ‑ 3)((3 ‑ 4)Jff)‑l)
(4.240)
第 4 章不思議な出会い
ピラソロ代数
一卯− 2)(2/3 ‑ 1)(2/3 −川広 う)
卯/3 −仰/3 −叫広 1)
l(J 叫) = (/3 ‑ 1)(2/3 −
l(Jχ口))=(β
1
(4.241)
(4.242)
この例においては,特異ベクトルは全てジャック対称関数で与えられること,ま
l l β)のみが現れてい
た,長方形のパーテイシヨンに対するジヤツク対称関数 i (sr)
ることに注意してください.この計算は練習問題としておきます.
問題 4,44
公式 4.32,4 38,4.39,4.40,4.41 を用いて特異ベクトルの計算を実行
目
し,上のことを確認せよ.
このような例から,一般に
予想 4.45
Jgfjl(x)
j)・
川 r,s))=nn(i/3
(4.243)
となることが想像されます.
この係数日:=
1n;=l (i/3 j )についてはまだ証明がありませんが,重要な部
分 l(Jxr,s)) ex Jgfjl(x)は三町
山田によって発見され証明されています何8]:
T s )を自由場表示したものは,
ピラソロ代数の特異ベクトル|χ
定理 4.46
する.
我々が上で採用した特異ベクトルを求める方法は,次数が上がるにつれて計
算が複雑になるので,定理 4.46 を証明するためには適当で、はありません.他の
うまいやり方一スクリーニング作用素というものを用います(69], (70]ーで特異ベ
クトルを構成する必要があるのですが,それについては省略したいと思います.
ただし,特異ベクトルの存在を仮定すれば,そのあとは次のように議論でき
]5 1 ]参照.)ジャック多項式を定めるハミルトニアンは
〜
ます(53]. (文献(39], (48(
r 雲間(吠一味),
時=会(吠
+β
(4.244)
でした. この微分演算子の白出場表示 H13 は次のように得られます(証明略):
命 題 4.47
Hβ =
(
)
f{ 一 一 + V2iJa‑na−…
, n
α
(4.245)
〜αm
( 1 β) +N/3)
(
工
+
ー
η
4.3 ピラソロ代数の自由場表示 1 6 9
とすれば,任意の lu)εF o に対して,
(
却
lu) = (
α
I exp
H,a(al e
(
崎 i叫
ん
lu),
(4.246)
が成立する.ここに, Pn はべき和対称関数を N 変数に制限したもの Pn =
z乙xi とする.
i
実は,ハミルトニアンの自由場表示 Hβ を,ピラソロ代数の自由場表示を用
いて,
L α nan(N(3 + (3 ‑ 1 ‑
ii,a =
n=l
n=l
(4.247)
とうまく書くことができます.ここで,ピラソロ代数の正モード Lη (
η 主 1)
のみが用いられていることに注意してください.よって,特異ベクトルは
H,alXr,s) =
乞 α−nan(Nβ+β 1 ‑
π=l
=rs((N‑r)f3 +
(4.248)
がω
と H,a の固有ベクトルとなります.一方, N 変数のジヤツク対称多項式 P(sr)
に対して
H,aP(sr) = rs((N ‑ r)
β+s ) P(
の
(4.249)
となりますから,特異ベクトル|χ
r,s )とジヤツク多項式 P(sr )が対応すること
が確認できます.
ハミルトニアンの自由場表示 Hβ を用いて特異ベクトル|χ
r,s )
と
ジヤツク多項式 P(sr )の対応を調べる上の議論について,計算の過程を確認せよ.
ピラソロ代数の拡張である W 代数と呼ばれる代数を調べると,それの特異
ベクトルとして(長方形でない)一般のパーテイションに対するジヤツク対称関
数が得られます[53J. これを述べるためには少し準備が必要なので省略しておき
ます.
ジャック対称多項式はカロジェロ・サザランド模型の波動関数でした.とこ
ろが,一見何の関係もないピラソロ代数がジヤツク対称多項式を良く知ってい
るということは一体何を意味しているのでしょうか?もちろんこれは事実とし
て証明されていることですが,もっと深い理解が欲しいところです.私の知っ
ている限りでは,この不可思議な対応を説明するうまいアイデイアはまだ得ら
れていないようです.
170
第 4 章不思議な出会いービラソロ代数
4.4 変形ビラソ口代数
今度はマクドナルド対称関数を特異ベクトルとして持つような代数を調べま
しょう.ピラソロ代数の変型理論とみなすことができるこの代数は,変形ピラ
ソロ代数と呼ばれています(78] (85] (55].
4.4.1
定義
変形ピラソロ代数を導入します.変形ピラソロ代数とは,二つのパラメータ−
q と t を持ち,生成元
(4.250)
(n εZ),
Tn
と,関係式
一 1Trn+l ‑ Trn‑lT:叶 1)
丸
[Tn, Trn] = ‑ '2:,J1 (
l=l
噌
E
よ
−
引
い
一什
一二
1 一P
4
u
一
P
n
p
(4.251)
n z
u n +m nu
で定められる代数です.ここに,簡単のために p = q/t と記しました.構造定
1 は,母関数によって
数!
ル)=え f1zl =叫
=0
f
(
(4.252
(l ‑
I
¥n=l
と与えられます.具体的には, fo = 1,
(1 ‑ q)(I ‑ r 1 )
l+p
( 1 ‑ q 2 ) ( 1 ‑ t 2)
(4.253)
( 1 ‑ q ) 2 ( 1 ‑ t 1)2
、 + ぅ (4.254)
ん = 凸 / 司
2(1 + p)2
ん= ( 1 ‑ q3)(1‑ t 3) + ( 1 ‑ q)(l ‑ q2)(1‑ t 1)(1‑ r 2 )
3(1 + p3)
( 1 ‑ q)3(1‑ r1)3
6(1 + p)3
2(1 + p)(l + p2)
(4.255)
等となります.関係式( 4.251 )は交換子が代数の元の二次式で与えられること
を意味しますから,変形ビラソロ代数はリ一代数ではありません.
変形ピラソロ代数はマクドナルド対称関数と関連する代数構造として栗田・
久保・小竹・白石によって導入されました( 5 5 ]. その少し前に,フレンケル・レ
] 7 3]のある
〜
シェテイキンによってドリンフェルト・神保の量子アフィン代数(7 1 (
特殊な表現論から変形ピラソローポアソン代数(7 8]が導入され,また,ルキアノ
フ・プガイが可解格子模型の立場から変形ピラソロ代数へアプローチしていた
こと(8 5]を注意しておきます.
4.4 変形ピラソロ代数 171
交換関係(4.251 )を母関数を用いて表現してみましょう.まず,母関数
T(z) =玄丸zー
へ
(4.256)
nEZ
を用意します.また,デルタ関数を
o(z) =
玄 Zn,
(4.257)
nEZ
と定めます.自由電子を考えたときにもこのデルタ関数を用いたことを思い出
してください.交換関係( 4.251 )は,ん= 1 に注意すれば
乏点(九−
lTm+l ‑Tm‑lTn+z) =一 (1 一州一戸) (
p n ̲ p ‑ n)
九
+m,o,
1 ‑ p
(4.258)
と書けます.両辺に z1nz2m を掛けて和をとれば
)
き
(T(z1)T(
1
となります.ここで,簡単のため
c
‑
(1‑q)(1‑r1)
1 p
(4.260)
とおきました.
問 題 4.49
上のことを確認せよ.
次節では,このデルタ関数の性質を用いて議論を展開しますから,デルタ関
数の性質について確認しておきましょう:
任意の形式級数 g(z) = L n E Z 9nZn に対して,
命題 4.50
o
g(z) = o
(4.261)
が成り立つ.
証明.
o
g(z)
m ‑ n 9nXn = 0
172 第 4 章不思議な出会いービラソロ代数
g(x).
(4.262)
ヤコビ律と構造関数
4.4.2
変形ピラソロ代数はリー代数ではありません.しかし,ヤコビ律を満たして
いるので結合律を満たすような代数にはなっていることを示しましょう.
先ほどの関係式の定義(4.251)をいったん忘れて, p をパラメーターとし,構
造関数 f (z )を展開
三=f1z1,
f(z) = 1 十
(4.263)
l=l
を持つ未知関数としておいて,交換関係
f
T(z
=f{
{ Z1 ¥ I
¥
− 卜 什 − JI,
JT(z2)T(z1) + c Ijc5 ({ PZ1
¥PZ2/ J
z ¥
L ¥ Z2 J
¥Z2/
(4.264)
を仮定しましょう.この代数が結合代数となるための条件から構造関数(4.252)
が導かれることを議論したいと思います.
関係式(4.264)を満たす生成元 Tn で生成される代数について,結合律
(
(4.265)
(九百)凡=九 r1Tm)
が成立するとは,右辺と左辺それぞれ最初に括弧の中に対して交換関係(4.264)
を用いて計算しでも,両者の結果が一致するということです.実際に計算して
みれば,
左辺=(日)凡=([凡巧]+肌)日
= [[Tk, 11], T m ] + Tm[Tk 11] +11TkTm
ぅ
右辺=九(肌)=九 ([T1 ,凡] +TmT1)
= [Tki [Ti, Tmll + [T1, Tm]Tk +九Tm11
となります.よって,結合律が成り立つ条件
右 辺 左 辺 = [Tk, [Tz, Tm]] ‑ [[Tk, T1], Tm]
(4.266)
+[T1 ヲTm]Tk ‑Tm[Tk, Tz] + n T m T i ‑11TkTm
= [Tk, [11, Tm]] ‑ [[Tk, 11], Tm]
+T1TmTk ‑TmTk11 + TkTmTl ‑11TkTm,
= [Tk, [11, Tm]]+ [Tm, [Tk, 11]] + [11, [Tm, Tk]]
= 0
は,すなわち,ヤコビ律です.
さて,次のようなこ通りの入れ換えを可換にすることを考えましょう:
4.4 変形ビラソロ代数 1 7 3
︐z︑
︐
町×
目
﹄
︑
︐
u︐
−
S
Ja
T(x)T(y)T(z)
f
l
+ T ( x)ふ関数
l
l
1
︐
︐
a 且
︑
E
J ︐
E
×1
︐
ノ 1
︑z ︐
1←
1
1(;)1(;)r閉 山 )
f I:
̲ )T(y)T(x)T(z)
川
‑tT(z)ふ関数
I
l
J ︑
︑ il
z
−
i︑z ノx −
︐︑−︐.. −
J
(
ま
)
×
f
←
︐︐
︐z ︑
J a
a X
︐
・
u−
︑
−
−
−一 ↓
︑
/︑
︐
k IU\
/
E
t z ︑
1
︐ g l z 1f Ii l 引Z T T Z
1
︐
Z
\
︑
z /数
−
−
−
︑
u
一1 ︑
\
δ関
ー
+T ︵
z
︑
δ関数
+T ︵
uJ δ
+T ︵
ー 関数
z︑
ここに,「ふ関数j と書いてあるものは,デルタ関数を含む式のことです.これ
\
〆z︑
z1 T
l ト
/
z T Z
fー
t︑ l
−
/ ︑
−
u +T z 1 ふ関数
︑
fz
ふ関数
+T t﹀
u
︑
r
J E
ノ
ωr
/
f
J
?
﹃
W
O
J
J
を具体的に計算しましょう.まず,左下回りに対しては,
(;) T(x)T(y)T(z)
=
f
→
(
写−
)8 )
五
(]T(z)
出× f (;) f
叫
;
) 8[写
(−
)8 )
二
(]T(z)
= f
f
[
仔−
))
五
(]
叫
;
)
ド
(
写−
))
五
(]
出
f
8
T(y)
8
T(z)
(4.268)
f
刈
;!) [
仔−
))
五
(]
8
T(y)
叫t)1 (;) 8[写
(−
))
長
(]T(z)
8
= f
f
叫
;
)
1 7 4 第 4 章不思議な出会いーピ ラソロ代数
)
長
(]T(x)
(]T (ν)
五
一 o)
)
守
o[(
判 f
0
=f
(]T(z),
品
)
(D T (吋T(z)T(y)
(]T(x)
長
)o)
(−
[ぞ
co
十
)
(]T(x)
三
)o)
仔−
[
ν
T(x)T(z)T (
f
f
=f
T(z)T(x)T(y)
(]T(y)
三
)o)
仔−
[
(]T(x)
三
)o)
仔−
)[
;
叫
)
川
T(z)T (
f
(;) f
(]T(y)
三
) 0)
仔
)f [
;
(
吋
(]T(x)
五
( 0)
守
) 1(;) o[)
:
叫
f
=f
)J
;
川
)J
:
叫
村
同 9)
x)
炉 (
T(z)T (
(]T(z)
二
;) ‑o)
[o (r
)
町
川
品
)o(
(−
o[守
)
仔
1(;)1(;) [
0
(]T(x),
三
)
となります.よって,図式が可換になるためには
))(1(;)1 (;) ‑
仔
−
)
写
) o( (
叩
=
‑1
()
ぞ
− o)
)
守
) (o (
月
+
‑
()
写
)o)
(−
(守
+ T(z) o
(;))
4.4 変形ピラソロ代数
175
とならなくてはなりません.ここで,適宜デルタ関数の性質 8(z) = 8(z‑1 )を
用いて整理しました.即ち,
命題 4 ぷI
交換関係(4.264)で定められる代数がヤコビ律を満足するため
には,構造関数が
0
=叩)仰心) ‑8 (r;)
+町y) (
(4.271)
+ T(z) (
を満足しなくてはならない,
ことがわかりました.ここに,
g(z )三 f(z)f(z/p) ‑ f(l/z)f(p/z),
(4.272)
とおきました.
式(4.271 )の右辺が零になるためには,母関数 T(x),T(y),T(z )
がたがいに
打ち消すことが必要です.そのためには,関数 g(z)
がデルタ関数を含み, T(x)
を T(y )と読みかえられる等ということが生じなければなりません.まず, g(z)
のところに 8(z )を代入してみれば,ちょうどうまく相殺して零になることがわ
かります.また,別の可能性として g(z)に 8(z/p)を用いれば違う組み方で相
殺してまた零になります.デルタ関数を用いたやり方はこの二つ以外に可能性
はありません.
問題 4.52
上のことを確認せよ.
この二つのデルタ関数 8(z )と 8(z/p)の任意の線形結合もやはり g(z )の候補で
す.ところが,式(4.272)から g(p/z) =
g(z)を満たさねばなりませんから,
次のような線形結合
/
︐
/
X
︐
︑
︑
l ︵/
D︶ U︵︶t
一
α
z
t
/
︑ 一 \ z A
f
n EE
uu
J
r
n
λ
U
(4.273)
N
ふ
のみが解となります.
さて, j(O) = 1 であり,また,
f (z )の展開には z の負べきが含まれません
から,式(4.273 )
は
,
C泊
f(z)f(zp) = 1 + α玄(
1‑pn)zn,
(4.274)
n=l
を意味します.この定数は任意ですから,ここで,始めに持っていたパラメー
タ p 以外にもう一つのパラメーター αが入ったことに注意してください.こ
−
176
第 4 章不思議な出会い
ビラソロ代数
の定数は,パラメーター q を用いて
α
︐
E 1
︐
t i
唱
什 4 A︶
い L −
一二
一一 一 − う
ωP
一
︑
t = qp‑1 、
− 1
(4.275)
と書き直しておくのが便利です.そうすれば
(1‑ qz)(l ‑ r1z)
(1 ‑ z)(l ‑ pz)
f(z)f(zp) =
(4.276)
と因数分解することができます.この差分方程式を解けば,
l ‑ q n ) ( l ‑ t n)zn¥
/ぶ (
f(z) = 位Plγ
噌
t
(4.277)
明ー|
n j
l 十 P"
を得ることができます.これが先ほど導入した構造関数(4.252)です.
証明.
IPI < 1 の場合を考えます. f(O) = 1 より
f(z) = f(z)f(pz)‑2̲̲
f(pz)
f(z)f(pz)
=
= f(z)f(pz)
1
f(pz)f(p2z)
・f(p2z)f(p3z)
1
f(p3z)f(p4z)
f(pz)f(p2z)
白1 一 〆包z)(l 一t
(
q
(1 一p2i+l
l p幻 z)
品 ( 1 一qp2iz)(l 一t一γzz)
1
1
(4.278)
f(p2z)
Z
引 よ1
、
h
•
となります.一方,
(4.279)
= 位p
さ ;十3 叶 f)
(
)
三
パ
山 ザ
(
さ
i(ー
1 ‑ (qn
if
=占
)
n(
−
(1
口
です.
卜80] :
以上のことをまとめておきましょう[55], [78[
定義 4.53
変形ピラソロ代数は,無限個の生成元 Tn (n εZ )で生成され
る結合代数であり,生成元の聞の関係式は
4.4 変形ビラソロ代数 177
f
T(z)T(w) ‑ f (;) T(w)T(z)
=
(4.280)
( l ‑ q) ( ト ド ) 判 明
−o(
会
)
!
?
と定められる.ここに,
p = q/t,
(4.281)
T(z) =乞九z n,
(4.282)
nεz
f(z) = ほp ( ;
o(z) =
(1 ‑
Zn) ,
L Zn,
(4.283)
(4.284)
である.
4.4.3 補足:変形ビラ ソ口代数の極限 等
変形ピラソロ代数の表現論を始める前に,特別な極限においてどのように退化する
のか,また,ドリンフェルト・神保の量子群[7 1]
〜
[7 3)や他の量子可積分系[7 4卜
[7 6 ]とど
のように関連するのかを簡単に述べておきます.
ピラソロ代数への極限.
まず,変形ピラソロ代数の関係式
[凡 T m ] = ‑
Lft (九 1Tm+l ‑ T m 1'T.州)
(4.285)
l=l
‑
(1 ‑ q)(l ー「 1)
l
p
(p ‑ P n)6n+m,O,
から,ピラソロ代数の交換関係
[Ln, Lm] = (n ‑ m ) L n + m 十三 n (
η2 ‑ l)on ,
附
12
(4.286)
が得られることを調べましょう.
まず t = qβ とおいて,次のような極限を考えます:
βを固定して, q → 1 とする.
(4.287)
この極限は, q = e h とおいて h → O とすれば得られます.
このとき,変形ピラソロ代数の生成元の h による展開
Tn =ぬ け β(
Ln +旦ゴL̲6 .o
¥
4β
い+
n, }
2
T ( 2 ) (z )ポ十
(4.288)
を仮定します.(この仮定は以下で述べる自由場表示等から正当化されます.)
構造関数 f(x)を h について 4 次まで正しく展開すれば
178 第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
j(z) = ほp
さ
(
+ /3(1 ‑ 3/3
)
)
+
山
)
ず
会(一平+
を得ます.よって,
=
叫
(4.289)
ハ
4
3e 十β2)h4 l3 +つ吉一
・
・
・
l3 ‑ l) +
(
+
川
(4.290)
となります.
また,
β2n
(一一+
−p 一九)= 2βnh2 + (
¥ 6
(1‑q)(l‑C1)
(pη
p
1 ー β)2η3¥
β(
lh4 +・・・(4・291)
J
3
と求めることができます.
関係式の左辺は
(4.292)
・
[Tn,Tm] = [Ln,Lm]/32h4 +
と展開され,右辺は
L
や
一
(1 ‑ q)(l ‑ C 1 )ω一p 勺Dn+
点(丸一ι 刊l 一 凡 z'I',η +z)一
1 一p
η
刑
¥
6(1 一/3)2 ¥
n3 一n (
(
o Iβ ポ+・・・ (4.293)
i九州,
= ( (n ‑ m ) L n + m +一一一( 1 一一一一一一
/
/
β
\
2
¥
となります.よって, U の項を比較すれば
Lm] = (n ‑ m ) L n + m +
[Lη ,
12
‑
(4.294)
l)cln,m,
E
c = l 一旦ゴ
/3
(4.295)
が得られます.
変形ビラソローポアソン代数.
次に
(4.296)
t = qβと書き, q は固定して β→ O
とする極限を調べてみましょう.このとき,構造関数の β による展開
‑ l3n) n ¥
/忌 1 (1 ‑ q‑n)(l
ー |
π l
ー I +β)
1+ q(
)..J.
Iム
J(z) = exp 1
(4.297)
噌 出 三 三 1 ‑ qn n ,
コ一 一
− 一 f…
ド
瓦
l+qη
,
と
4.4 変形ピラソロ代数 1 7 9
̲
( 1 ‑ q)(l ‑ c 1 )
l‑p
( p n ‑ p ‑ n)
=一
βl吋 (
qn ̲ q n) + ..
(4.298)
から,交換関係の βによる展開
[九叫=
t"i' 1 寸 q'
(4.299)
βl叫 (
qπ −q‑n)c5n+m,O +
・
・ ヲ
が得られます.極限 9 → O においては右辺が零となり生成元 T n が可換であることが
わかります(すなわち, [
Tn, Tm] = 0). このとき T n を古典力学の力学変数とみなし
て,ポアソン括弧を
{Tn,Tm }三 一 lim
β→ o β
lnq
Tm]
(4.300)
と定めれば,変形ビラソロ.ポアソン代数
包 i 十 ql
+ (qn ‑ q 明 叩
(4.301)
が得られます.これは,ポアソンピラソロ代数( 4.3 )の q−変形理論としてフレンケル・
レシェティキンによって導入されたものです[7 8]
〜
[80]
分系のベーテ仮設方程式に現れる (
T システムや Y システム等と呼ばれる)一連の構
造と強い類似を示すことが知られています[ 7 7]. この類似は量子可積分系の深い理解を
目指すときに姿を現す美しい対応です.このポアソン構造を応用すれば,例えば,ア
フィン型量子群 Uq(g)の有限次元表現の分類等を議論することができます[81]. 回
[l.
楕円代数.
変形ピラソロ代数の関係式を
S(z/w)T(z)T (w) = T(w)T(z) +デルタ関数
(4.302)
と書いて,このスカラー関数 S(z )を調べてみましょう.楕円テータ関数
8p(x) = (x;p)oo(p/x;p)oo(PiP)oo =乞(一) ηpn(n 1)/2 xn,
(4.303)
nEZ
を用いると,
f(z 1)
ep2(qpz)8p2(q 1p2z)
S(z) =一一一 =
− Z 8P2(qz)8p2(q
f(z)
1pz)
(4.304)
と書けます.
式( 4.303 )より,楕円テータ関数 8p(x)は,擬周期性
8p(px) = ‑x‑18p(x)
(4.305)
を持ちます.これによって,関数 S(z )は
S(p2z) = S ( z )
ヲ
180 第 4 章不思議な出 会いーピラソ ロ代数
S(e2πv'‑Iz) = S(z)
(4.306)
という関係式を満足することがわかります.そこで, P = e r r .,/コr,z =巴2π.;=Tu と書
き,関数 S をあらためて u の関数 S = S ( u)だと思い直せば, S は u −平面上で二重
周期関数,
S(u + T) = S(u)
う
S(u + 1) = S(u)
(4.307)
即ち,楕円関数であることがわかります.
一般に,構造関数が楕円関数で与えられるような代数を楕円代数,もしくは,楕円
型量子群等と呼ぶことがあります.構造関数 f(z )の比 S(z)は楕円関数ですから,変
形ビラソロ代数は楕円代数の例となります.また,ドリンフェルト・神保のアフィン型
量子群 Uq(g)から,一定の処方婆によってある楕円代数を得る手続きが存在し,二次
元の古典統計力学の可解格子模型もしくは一次元の量子スピン鎖模型等[ 7 4)は,量子群
[90J.
から得られるその楕円代数と密接に関係させられることが知られています[86], [88卜
実は,このような枠組みからも変形ピラソロ代数をうまく捉えることが可能です{87).
さらに,可解格子模型において連続極限を考えれば量子サイン・ゴルドン理論等の可積
分な量子場の理論を得ることができますが,変形ピラソロ代数はこのような連続極限
における基本粒子の生成消滅演算子の役割を果たします.実際,この極限において関
S 行列)に退化することが確かめられます[ 76), [91].
が基本粒子の聞の散乱行列 (
数 S(u)
4.4.4 最高ウエイト表 現
変形ピラソロ代 数の最高ウエイ ト表現を調べま しょう.次数付 き最高ウエイ
ト表現 M
入)は,最高ウエイト入を持つ最高ウエイトベクトル
(
(4.308)
九|入)=入|入),
入 = 0
Tnl )
(n 三 1),
(4.309)
に対して
,
)
入
|
]
・
) = C[T‑1, T̲2, T 3ぅ
入
M (
(4.310)
と定義されます. また,ベクトル
,
)
, T̲nkl 入
T‑n1T n2 ・
(4.311)
の次数を
・ + nk,
・
・
次 数 = n1 + n 2 +
(4.312)
と定めましょう.ビラソロ代数の場合には Lo の作用で次数を定めましたが,変
形ピラソロ代数 の九はそのよう な役目を果たし ませんので次数 は上のように
定めておきます.
同様に,デュアル M *(入)を
入 ITo =入(入|,
(
入 IT n = 0
(
(4.313)
)
(n 三 1う
],
T3 γ. ・
M *(入)=(入 IC[Ti, T2 ぅ
(4.314)
(4.315)
4.4 変形ピラソロ代数 1 8 1
と定めます.ピラソロ代数の場合と同様に,(入|入) = 1 とおくことによって
M (
入)と M (
*入)との聞のベアリングが自然に定まります.また,入の値によっ
ては M (
入
)
ぅM (
*入)聞のベアリングが退化することがあって,このとき特異ベ
クトル|χ)
n 三 1 のとき Tnl χ)= 0,
|
χ)の次数三 1,
(4.316)
が現れます.特異ベクトル|χ)は
任意の(ulε M (
*入)に対して(ulχ)= 0,
(4.317)
という性質を持ちます.
4.4.5
カッツ行列式
特異ベクトルを調べるために,カッツ行列式を計算してみましょう.カッツ
行列式の計算を始めると,式が長くなるので,
一
( 1 ‑ q)(l ‑ r1)
dn =
l‑p
(pπ_p‑n),
(4.318)
と定めます.そうすれば,変形ピラソロ代数の交換関係は
l九, T m ] = ‑ l : f 1 (
丸一ι +l‑Tm‑lTn+l) ‑ dnOm+n,O
(4.3 同
ぅ
l=l
と書けます.以下,カッツ行列式を次数 3 まで計算してみましょう.
0 次数 1 におけるカッツ行列式は次のようになります.
公式 4.54
= 勺 引 − t)
〜つ
入
(2 ̲ ( P l
p‑l /
入
( IT1T‑1I 入)=− 2:::!1 入
( l(T1‑1T‑i+1 ー T‑1‑1Ti+1)I )
入 ‑ d1 (
入
|
入
)
=‑Ji 入2 ‑ d i
=
(4.321)
(1‑ q)(l ‑ r1) 2
(1‑ q)(l ‑ r1)
l+p
l‑p
(1 ‑
(J
+t
入ー
( p ‑ p‑l)
‑ t) 入
(2 ー
ゲ/2 十 p‑1/2)2).
O 次数 2 に進みます.まず,補題を用意しましょう.
補題 4.55
九T‑11 入)=入( 1 ‑ fi)T‑11 入
)
,
182
第 4 章不思議な出会い
ピラソロ代数
(4.322)
,
)
れ T‑1 [入)=一(入2 Ji +di) I入
(4.323)
(4.324)
(n と2 の場合).
入 = 0
TnT‑1 [)
これは η > O について
)
入
) ‑ di8n,1 [
入
\
丸一1T‑i+z ‑ T ‑ 1 瓜+ 1)
入 ‑ L.:!1 (
) = T̲1Tn )
入
九 T‑1 [
[
!=1
入
[
) ‑ fiTn‑1To )
入
|
= T̲1 丸
(4.325)
,
)
入
di8n,1 [
となることから f走います.
)
入
内積(入[ T1T‑1 [
補題 4.55 を用いれば,次数 2 のベクトルの内積を次数 1 の
を用いて表すことができます.
命題 4.56
(4.326)
)
入
[ T2T‑2 [
入
(
入212 ‑ d2,
一
)
入
[ T1T‑1 [
入
=‑Ji (
(4.327)
)
入
入 T 2 T 1 T 1[
(
=
)
入
[ T1T1T‑2 [
入
(
[
=一入(ん( 1 ‑ f i )+ん)(入|早川入),
(4.328)
)
入
[ T1T1T‑1T‑1 [
入
(
=−(九( 1 ‑ fi)2 +仇)(入|早川+ ( 1 ‑ h ) (九+ d1)2
証明.
まず,
の
ー
)
入
[
tT‑2+1 ‑T‑2‑1T2+1 )
む−
(
|
入
[ T2T‑2 [入)=− L.:!1 (
入
(
l=l
) ‑ d2 ・ (4.329)
入
[ ToTo [
入
[‑ h(
入
[ T 1 T i)
入
=‑Ji (
,
に
次
)
入
[
(T1‑1T‑2+1 ‑T‑2‑1Ti+1 )
九
|
入
([TiT1T‑2 [入)=−乞!1(
入
l=l
,
)
入
[ T1T‑1To [
入
)‑h(
入
=‑Ji (入|九九T‑1 [
(4お 0)
について,補題 4.55 式(4.322 )を用いることができます.また,
)
入
[ T2T‑1T‑1 [入)=− L.:!1 (入|(九ム+1‑ T‑1‑1T2+1)T‑1 [
入
(
l=l
,
)
入
百 T̲1 [
九
|
入
)‑h(
入
([T1ToT i[
=‑Ji入
(4.331)
も同様です.最後に,
4.4 変形ピラソロ代数 1 8 3
︐−
1
A
︐
よ
︐
︑
E Z tF T T一咽
︑
︑
八
︐
︐
︑
4
T
︐
︑
八E Z 4 一i A
一︑
一 ︑
(4.332)
Z
噌
Lit (入|九(T1‑1T‑i+1 ‑T‑1‑1Ti+1)T‑1I入
)
l=l
‑di 入
(IT1T‑1I )
入
= ‑ J i (入|九九九T‑11入)+( 1
h)
(
入ITiT‑1T1T‑1 I)
入 ‑ di 入
(IT1T 11入
)
に補題 4.55 式(4.322),(4.323 )を用います.
口
上のことを用いてレベル 2 でのカッツ行列式を調べることができます:
公式 4.57
(ぺ日;2))
×(入2
(Pl
(4.333)
〜 吋 2) (入2 一(〆/2q
×(入2 ー い12c1/2 坤 ー l/2tl
叫
ただし,この 2 行 2 列の行列式を手で計算するのは大変なので,数式処理プロ
グラムを用いて因数分解するのがよいでしょう.
0 次数 3 の場合,計算が大分長くなりますのでカッツ行列式の計算結果だけを
掲げておきましょう:
公式 4.58.
<let3 = I
入
(IT{T
= cl‑q)(l
(q + t)
附 日 ) ( 1 ーが) ¥ ( (1 ‑ q3)(1 一♂)
) ¥
(q2 十 t2)
) ¥
(q3 + t3)
×
(
入2
(4.334)
ここに
入
門 8 = q‑sf2trf2 + qsf2t r/2,
(4.335)
とおきました.この因数分解を直接手で計算することはほとんど不可能です.
数式処理プログラムを利用するのがよいと思われます.
184
第 4 章不思議な出会いービラソロ代数
カッツ行列式は一般に次のように書けることが知られています[55], [83]. [84] :
次数 N のカッツ行列式は
定理 4.59
etN
(( (l ̲
且
=
qr)(l ̲ r) ¥ P¥N‑rs) 2
(入ー札)
)
q r + tr
( ‑rs) (4. お 6)
である.
カッツ行列式には,最高ウエイト入の偶数乗しか現れません.これは,関係
式(4.251 )が生成元 T n の二次式であることから次のように説明できます.生成
元の符号を変え T よ=−Tn としても T よは同じ関係式(4.251 )を満たしますか
To に関する最高ウ
入となるので,
もしカッツ行列式が因子入
,s を含むとすれば,入十入r,s も含むことになり
ん
ます.よって,カツツ行列式は(入ーん,s)(入十九,s) =入2
,;
入 s というべアの
みを持ちます.
このカツツ行列式はピラソロ代数の場合と同じ構造を持っていますから,最高
ウエイト入=±入r,s の最高ウエイト表現において,次数 rs の特異ベクトルが存
在することになります.上に注意したことから,最高ウエイトとして入=ん,s
のみを考えてもかまいません.次数 3 以下の特異ベクトルを実際に求めてみれ
ば次のようになります:
最高ウエイト入=入T S をもっ最高ウエイト表現が持つ次数 rs
公式.4.60
の特異ベクトル|χr,s )は
1,1) = T‑1 I入口),
χ
|
¥
/ q一中/ 2(1 ‑ q)2(1 + q)
T̲2 + T̲1T‑1 11 入口),
1,2) = ( ‑
χ
|
J
q十t
¥
( r1q1/2(1 ‑ t)2(1 十 t)
2,1) = ( ‑
χ
|
¥
1,3) =
χ
|
q+ t
¥
T̲2 + T̲1T‑1 J I入山),
J
{ q‑3t(l ‑ q)3(1 + q)2(q2 ‑ t)
(q + t)3(q2 + t2)
I¥
q
×(
q2 ‑ q3 ‑ q4 ‑ 2qt
2q3t
(4お 7)
(4.338)
(4 お 9)
(4.340)
t2 ‑ qt2 ‑ q2t2 + q3t2)T̲3
¥
q‑3/2tl/2(1‑ q)2(1 + q)3(1 + t)
T ̲ 2 T 1 +空 1 11 入1,3),
¥ ?
j
辺
q + t)
( r3q(l ‑ t)3(1 + t)2(t2 ‑ q)
3,1) = I
χ
|
(q+t)3(q2+t2)
¥
(4.341)
(t ‑ t2 ‑ t3 ーが− 2tq ‑ 2t3q ‑ q2 ‑ tq2 ‑ t2q2 + t3q2)T̲3
×
¥
r3/2q1/2(1 ‑ t)2(1 + t)3(1 + q)
T ̲ z T 1 +空 1 )l.¥3,1)
4.4 変形ピラソロ代数 185
等となる.ここで, r:1 の係数が 1 になるような規格化を採用した.
このように,変形ピラソロ代数の特異ベクトルの具体式を求めることはかな
りの計算量を要求するのですが,がんばってこれに挑戦してみてください.
4.5 変形ビラソ口代数の自由場表示
ピラソロ代数が自由場表示を持ったように,変形ビラソロ代数に対しでも自
由場表示を作ることができます[日],[明,[ 79].
4.5.1
自由場
マクドナルド対称関数の自由場表示の際に用いた自由場 αn (
η ε Z剖)と,
ゼロモードの演算子 αo , Q を考えましょう.これらは,交換関係
1 ‑ ,,[n[
(4.342)
[an,Q]
=
シ
叫
ん
(4.343)
を満たすものとします.
ここで,作用素 A 土 (
z)を次のように定義します.
定義,f.l•. 6 1 作用素 A 士(
z)を
A 土(
z)
p
=位
(4.344)
(毛号午 )
叫(若山守ケ
zn
と定める.
自由場の正規順序化とは,生成演算子 α−
n を左へ,消滅演算子 α
n を右へ移
動させることでした.ここでも正規順序化を記号:・・・:で表すことにします.
例としては,
:α
nα−
n:
= α−
nαn
(
η > 0),
叶
:2吟
十 (会
(
十
p
=exp
等と書くことができます.
186
第 4 章不思議な出会いービラソロ代数
(4.345)
問題 4;62
上のことを確認せよ.
z)の作用素積を調べると次のようになります.
補題 3.41 を用いて A 土 (
命題 4.63
w) = f
z)A土(
A 士(
w) = f
A±(z)A干 (
,
:
(川土(ω)
:A土
:A (z)A ω:)
(4.349)
干(
士
(4.348)
実際に計算してこれを確認してみて下さい.
ここで,構造関数 f(z)の性質に関する補題を用意します:
補題 4.64
f(z)に関する式
f (z)f (p土1z) ‑ f(z‑1)f(p干 1z‑1)
=
が成り立つ.
これはヤコビ律を吟味するときに用いた式ですが,大切な式ですから改めて確
(1 ‑ q土 1z)(l‑t干 lz)
士1
f(z)f(p土 .iz) =
.
(1‑z)(l p 土 1 z)
(4.350)
より
f (z)f (p土 1z) ‑ f(z‑1)f(p干1z 1)
(1
=土( 1
q土 1w/z)(l ‑ t干 1w/z)
( 1 ‑ q干 1z/w)(l‑t土 1z/w)
(4.351)
−¥と「1) (O ( ‑J
口
となります.
z)の交換関
, f(z )についての補題 4.64 を用いると作用素 A 土 (
命題 4.63 と
係を導くことができます:
命題 4.65
演算子積
= 0,
(4.352)
4.5 変形ピラソロ代数の自由場表示 187
=土( 1 一州一戸) (8
:A 土(p叩 w ) A芋ゲl/2w) :‑ 8 ヤ土l ; ) )
が成り立つ.
証明.
第一式は命題 4.63 よりただちにわかります.第二式については,
! ( ; ) A士印干円) A 平白土 l/2w )
一
!
(
;
) A 平印叩w ) A土(p'平
f 1/2 z
( (l 一q土1w/z)(l 一t平1w/z)
(1 一q干1z/w)(l 一t土1z/w) ¥
ー
.
‑ ¥ (1 ‑ w/z)(l ‑ p 土 1w/z)
(1 ‑ z/w)(l p 干 1z/w) )
−
×
: A 土(
p 干 i;2z)A平 (
p 士l/2w) :
=土( 1
「
; (8(;)
一
¥g
1)
: A土
(4.354)
ωl/2w)A (p 1/2
平
干
士
口
となります.
この命題より,次の定理を得ます.
定理 4.66
変形ピラソロ代数の生成元 T(z)が
T(z)=A+(p 112z)+A(
一p1/2z),
(4.355)
と自由場で実現される.
証明.
命題 4.65 より,
f (;) T(z)T(w) ‑ f (;) T(w)T(z)
ニ
( 1 ‑ q(トド)
)
8[(
守
)
− 8(*)],
(4.356)
が満たされることがわかります.ここで, 8(w/z )を含む項は相殺して消えるこ
とに注意してください.
口
4.5.2 フォック空間
ピラソロ代数同様,変形ピラソロ代数に対しでもフオツク空間を導入します.
真空 IO)は,条件
αnlO)=O
(
η と 0),
(4.357)
を満たすものとし,さらに
|
α)= e°
'QIO),
(4.358)
と定めます.このとき, β
α
olα)= α|
α)となります.ベクトル|α)に対して,
188 第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
フオツク空間を
F
白 =
IJ ぅ)
・α
α 3γ・
2,
α−
1,
C[α−
(4.359)
と定めます.前節の自由場表現を用いた計算により,
)
,
九同)=伊/ヤ+ p‑1 /ヤ)|α
|α)= 0
九
η と 1).
(
(4.360)
となることがわかります.よって,最高ウエイトを
(4.361)
入=(pl /ヤ+ p‑1 /ヤ)
入)と fey̲ を対応させることができます.特に,
とすれば, M (
t =仏
側2)
を
)
とすれば,特異ベクトルを表現するときに必要なウエイト(式( 4.335 )
門 8 = (pl/2qar,s + p‑1 /ヤロ)
入
(4.363)
とパラメトライズできます.
特異ベクトルの自由場表示を求めましょう. 生成演算子をベき和対材、関数に
読みかえる写像( 3.207)
(|包))=い Jexp
ι
同日り
)
Juぅ
(4.364)
を思い出しておきましょう.(ただし,ゼロモードを忘れるようにするために若
干定義を修正する必要があります.)例えば,
) = Pn,
nl α)
中−
(4.365)
) = PiPiPk,
− −α)
(4.366)
α4α j α kl
l(
等となります.
; 4,.67
式
公
変形ビラソロ代数の特異ベクトル| χr,s )はマクドナルド対称
t)で表される.次数 3 以下について書けば
関数 Jcsr) (x; qぅ
q‑t
(4.367)
1,1)) = ‑‑‑qlJ(l) (x; q, t),
l(I χ
l(I 川)) =
q ‑ t q2 ‑ t
(4.368)
q ‑ t q ‑ t2
l( I加)) = ‑‑‑qt‑‑qt2J(12 )(川 t),
q‑tq2 ‑tq3 ‑ t
(4.369)
q, t),
(4.370)
4.5 変形ビラソロ代数の自由場表示 1 8 9
q
tq
t2q‑t3
i(IX3,1)) =一一 ‑‑‑‑‑::;:2 ‑‑‑::i:3 J(l3) (x; q, t) ,
qt
qt",!.
(4.371)
qt ー
となる.
特異ベクトルの自由場表示を計算するには, T(z)の積を真空に当てたもの
T(z1)T(z2)T(z3)
・
・ |
α)
(4.372)
= 乞 A'1(p一ψz1)A'2(p一 山 z2)A'3 (p一匂/ 2Z3)
向=土
=玄
II 1
|
α
,
)
I )
Z j Zi 一 的
ε
包=士 4くj
×
: A '1 (p •i/2 Z1 )A匂 (
p 叫 2z2)A吋pε
a/2z3 )・・:| α
,
)
を各 Zi についてテイラー展開することによって計算します.ただし,次数が上
がるにつれてこのような計算は急激に難しくなりますので注意してください.
公式 4.67 は,まさにこの本の核心に相当します.カロジェロ系から出発し
て,いろいろな対称多項式の理論,ビラソロ代数の表現論等を旅してきた我々
は,ょうやく変形ピラソロ代数とマクドナルド対称関数が出会うこの不思議な
ところを訪れることができました.上に述べたきれいな結果を導く過程を是非
体験してください.
上の例から, 一般に
予想.
バIXr,s))
=曽早川 μ
となることが期待されます.
(4.373)
)
n;=l 告手についてはま
だ証明がありません.一般に, 次のようなことが知られています(55]:
変形ピラソロ代数の特異ベクトル|χT s )は,長方形のパーテイ
ション (
sr )
に対するマクドナルド対称関数 P(sr) (x; q, t)に比例する.
証明のためには,(スクリーニング作用素と呼ばれるものを用いる)うまいや
り方で特異ベクトルを構成する必要がありますが,それについては省略したい
と思います.
4.5.3 マクドナルドの差分作用素と変形ビラソ口代数
これまで特異ベクトルの具体形を扱ってきましたが,ここでは,マクドナル
ドの差分作用素を用いた別の議論によって定理 4.69 について考えましょう.
まず,特異ベクトルの性質についてまとめておきましょう.最高ウエイト
入=ん,s の最高ウエイト表現において,次数 rs の特異ベクトル|χ
r,s )が存在
します.(存在証明は省略します.)これは
190
第 4 章 不思議な出会いーピラソロ代数
r,s) = 0
Tnl χ
?
)
−
.・
η =1 2 ,
(
(4.374)
ぅ
を満たすのですが,実はさらに,九の固有状態であることもわかります.
s の固有状態である:
, To の固有値ん, −
は
r,s )
特異ベクトル|χ
命題;.4;.70
(4.375)
TolXr,s) =入門− slXr,s)・
これは自明なことではありません.少し準備が必要なので,この命題の証明は
省略します.
前章 3.3.2 節において,マクドナルドの差分作用素 E は
1
r
dz
(4.376)
E =一ーや一一一一
t ‑ 1 J 2πA z
(1月 z‑n)‑1),
さ
ー
叶
(1‑r n)刊
×唱
(
e
と自由場表示されました.これと,変形ピラソロ代数の生成元 T(z )とは次の
ような関係で結ぼれていることがわかります.
いま
玄 ψ−nZn
z) =
ψ(
(4.377)
n=O
竹一
"
1/2
j ーむと竺白川/斗 l
…
J,
"I
n
αo
n ーβ
"
1十pn n
とおくと,次のような表示が得られます.
命題益;11
己
0] −
α
̲ P Iq‑2f3
−
川
名
[
出
=
証明.
出
]
p l q 2(3αo
(4.378)
口
計算だけなので省略します.
この命題から直ちに次のようなことがわかります:
r,s )は, E
変形ピラソロ代数の特異ベクトル|χ
の固有値
l:i(qん− l)ri の固有状態である.即ち,マクドナルド対称、関数 Pcsr)(x; q, t)
に対応する.
(4.378)からわかるように,マクドナルドの差分作用素の中には負
式
η 主 0 )のみが含まれています.特異ベクトルは,正モード
でないモード Tn (
Tn(n 三 1)で消されて,また To の国有状態ですから,
証明.
4.5 変形ピラソロ代数の自由場表示 1 9 1
Elxr,s)
= ̲ 2 ̲ ̲ lwo九_ p‑lq‑2f3ao ー I Ilxr,s)
=
t‑ 1 L
J
̲2̲̲1P一1/2q
(qsf2trf2 + q 一内− r/2)
t 一1 L
(4.379)
一p V 一
(
=
一
!
_
_
_
_ lqs + t r
t‑ 1 L
t γ
−1JIlxr,s),
となります.(簡単のために p = q/t と書いたことに注意してください.)一方,
差分作用素 E のマクドナルド対称関数 P 入に対する固有値 L:i(q入i ‑ l)ri を
入= (sr )の場合に計算すれば
乞(q入z 一山− i =玄 (qs ー収包
i=l
= (qs ‑ 1)
乞t
も
(4.380)
i=l
l ‑ r r
= (qs ‑ 1)一一一
t‑1
= ̲2̲̲(qs
+ r r ‑ c γ −1),
t ‑ 1、 ノ
となります.
口
4.6 まとめ
我々は,ピラソロ代数や変形ピラソロ代数の表現論の入り口周辺を旅して来
ました.必要な道具はピラソロ代数や変形ピラソロ代数の母関数 T(z)の自由
場表示だけでしたが,不思議なことに,ジャック対称関数やマクドナルド対称、
関数と出会うことができました.
第 3 章ではカロジェロ・サザランド模型の波動関数を表すジャック対称多項
式の美しい類似理論としてマクドナルド対称、多項式を説明しました.また,本
章では場の理論の共形対称性を記述するビラソロ代数の理論に類似するものと
して変形ビラソロ代数を導入しましたが,それについて物理的な背景はほとん
ど説明できませんでした.マクドナルド対称多項式や変形ピラソロ代数の数学
的構造には興味を持って頂けたかもしれませんが,物理的な意味や応用に関し
ては謎のままなので,そこを不満に感じる読者が多いかと思います.
変形ピラソロ代数は,古典統計物理学の二次元可解格子模型や,一次元の量
子スピン鎖模型等を本来の住処としているようです.変形ピラソロ代数は,い
まだ解決されていない様々な謎を醸し出しながら我々を「量子可積分系」へと
導いてくれています.量子可積分系において変形ピラソロ代数が見せてくれる
この不思議が渦巻く世界を是非とも説明したいと思いながら筆を進めてきまし
192
第 4 章不思議な出会いーピラソロ代数
たが,ここまでの道程が大分長いものになってしまいましたから本書ではこれ
以上お話ししないことにしましょう.マクドナルド対称多項式や変形ピラソロ
代数を物理学に深く関連する数学的構造として少レ心に留めておいて頂ければ
著者としてこれほど嬉しいことはありません.いつの日か読者の皆さんによっ
て量子可積分系の謎が解決されることを祈ります.
演習問題
共形場の理論とピラソロ代数の表現論について調べよ.
4.2 なぜビラソロ代数はジャック対称多項式を知っているのだろう?なぜ変形ピラ
ソロ代数はマクドナルド対称多項式を知っているのだろう?
4.1
演習問題
193
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198 参考文献
索 引
149
4, 44
155 167, 182
特異ベクトル
81
ドミナンス半順序
中心拡大
ア
調和振動子
138, 163
ウイツクの定理
う
2
運動方程式
47
エルミート多項式
ナ
カ
ノルム
46
181
14
可積分性
156, 182
カッツ行列式
ガウス分布
/¥
可解格子模型
64
143
87
分割数
120
最高ウエイト
差分作用素
作用素積
151, 181
109, 121, 125, 134
142, 164, 187
31
99, 169
72
ジャック対称多項式
98
シューア対称関数
57
シューア対称多項式
121, 186
自由場表示
163
自由ボゾン場
44
シュレディンガ一方程式
72
準粒子
53
スレータ一行列式
137
正規Jil真序化
45
生成・消滅演算子
130, 132
積分表示
ジャック対称関数
精円代数
タフゃロー
153
167
59
171
11
ポアソン括弧
14, 136, 180
ポアソン代数
14, 29, 31
包合
ベき和対称関数
マ
マクドナルド対称関数
マクドナルド対称多項式
ダンクル作用素
90
75
モノミアル対称多項式
ヤ
149, 173
55
ヤング図形
ヤコピ律
フ
6
ラグP ランジ、アン
リ一代数
80, 96, 167
8, 28
181
86
103, 189
118
60, 88
密度演算子
ラックス形式
タ
楕円関数
121, 164, 188
148
べき和対称多項式
変形ピラソロ代数
サ
対称関数
56
白
フォック空間
プライマリ一場
コストカ多項式
射影法
ピラソロ代数
ファンデルモンド行列式
173
コストカ数
ハミルトニアン
フェルミ面
クライン・ゴルドン方程式
結合律
17
146
共形変換
45
10
145, 149
ハイゼンベルグ代数
145
共形場の理論
54
ノTーティション
カロジェロ・サザランド模型
カロジェロ・モーザ一系
70, 99, 100, 103, 118
量子群
23
149
178
量子サイン・ゴルドン理論
量子スピン鎖模型
ロドリゲスの公式
181
48
181
著者暗 歴
白
石
リ川
日
同
R日
Hゅん
d
1995 年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了
理学博士
1995 年 東京大学物性研究所甲元研究室助手
1999 年 東京大学数理科学研究科助教授
現在に至る
専門 量子物理学.今は量子可積分系を楕円関数に付随する代数構造等を手がかりに研究している.
臨時別冊・数理科学 S G C ライブラリ− 2 8
『量子可積分系入門 Lectures o n Q u a n t u m Integrable Systems.]
著者白石潤ー
2003 年 11 月 25 日 初 版 発 行
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臨時別冊・数理科学( S G C ライブラリー 22: for Senior & Graduate Courses)
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その本質のやさしい理解のために
清水明著
本体 1819 円
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著者の講義経験がもとになっ危う量子論の新しいえ安ィルの入門
門書にはない画期的な構成により,量子論の本賓が
のλ
来
従
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明解に提示されていて,一読すれば初学者のみならず;::ザ討乙学
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日
第 O 章抽象化された自 然観への序説
第 1 章古典物理学の 破綻
第 2 童基本的枠組み
第 3 章閉じた有限自由 度系の純粋状態の 量子論
第4 章正準量子化
第 5 章 1 次元空間を運動する粒子の量子論
第 6 章時開発展につ いて
第 7 章場の量子化
場の量子論入門
第 8 章ベルの不等式
第 9 章基本変数による 記述のまとめ
サイエンスネ土
臨時別問・数理科学 2 0 0 3年 1 1月
i 事関雪イヲ到膏調|
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汀l‑111 Q
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