線形代数第 1 回 沢辺 俊 2024/04/16 質問・コメント等 1 Q 1. 直積集合がよくわからなかった. (+2) A 1. 定義は講義中述べた通りですが,具体例を挙げた方がよかったかもしれません.例えば X = {1, 2, 3},Y = {a, b} とすると, X × Y = {(1, a), (1, b), (2, a), (2, b), (3, a), (3, b)} のように 3 × 2 = 6 個の元からなる集合になります.また,[0, 1] を閉区間とすると,直積集合 [0, 1] × [0, 1] は平面内の大きさが 1 × 1 の正方形を表します.また,n 個の集合 X1 , . . . , Xn の直 積は X1 × · · · × Xn = {(x1 , . . . , xn ) | xi ∈ Xi (i = 1, . . . , n)} と定義します.例えば各学年に 2 つずつ丁度 40 人の生徒からなるクラスを持つ中学(または高校) があるとします.このとき学年の集合を Y = {1, 2, 3},クラス番号の集合を C = {1, 2},出席番号 の集合を N = {1, 2, . . . , 40} とすると,直積集合 Y × C × N の元はこの学校の生徒を表している ことになります.例えば元 (1, 2, 34) は 1 年 2 組 34 番の生徒と対応します.このように複数のデー タから定まるものは,数学的にはある直積集合の元とみなすことができます.ちなみに,デカル ト積という用語の英訳に出てくる形容詞 Cartesian は,デカルト(René Descartes)のラテン語名 Renatus Cartesius からきているそうです. Q 2. 直積集合に関して,X × Y = Y × X となる例は X = Y 以外にありますか. (+3) A 2. A,B ,C および D を空でない集合とします.一般に直積集合の包含関係に関して,次の主 張が成り立ちます. A × B ⊂ C × D ⇔ A ⊂ C かつ B ⊂ D. この命題を用いると X × Y = Y × X となるのは X = Y のときに限ると分かります. 一般に「P ならば Q」という形の命題に対して,その逆「Q ならば P 」は成り立つとは限りま せん.従って「逆も成り立つのか」を考えることは数学を学ぶ上で重要な視点であるといえます. この類の命題が出てきたらその都度考えてみてください. 2 その他(一部抜粋) ○ 病気を治すことは数学の問題のように具体的な解を持つものだと思いますか. 1 ― 今現在確立されている治療法も「具体的な解」といえるような気もしますが, 「数学の問題の ように」という前置きがあるということは, 「問に対して絶対的な,あるいは普遍的な解が存 在するか否か」を問うているということでしょうか.普遍性に関しては,患者ひとりひとり あらゆる体質(アレルギー・持病等)があるので万人に適用できる治療法を確立するのは難 しいように思います.また一人の患者に対しても,ある治療法で病気が治ったとして,それ 以外の方法で臨んだときにどうなったのかを知る術はないので,その治療法が正解だと断定 するのは難しいと思います(もちろん,治ったもん勝ちとみるのもありますが).ただ,な るべく多くの患者に対して適用できて,効果もある程度保証されているような標準的な治療 法があると現場の負担的にも有益だと思うので,治療法の研究に励む人たちが目指している のはそのようなところなのではないでしょうか. (いかにも素人の意見ですみません. ) ○ 理屈がわかってないと使いこなせないと思う. ― おっしゃる通りです.概ね理論的な部分までわかっておきたい人が多いようですが,数学を ツールとして使うに留まる人もある程度仕組みがわかっていれば覚える量を減らせたりしま す.あと個人的には仕組みがわかった時の方が勉強してて楽しいかなとも思います. ○ 私も日能研に通っていました! ― 私,くるくるマルチクロック持ってたんですよ. (今通ってる子たちももらえるんでしょうか?) ○ エピソードトークが聞きたいです. ○ (前略)これからもボケてください. ― 努力します(笑) 皆さんの興味ある分野,やりたい勉強の話等興味深く拝読しました.一年間よろしくお願いします. 2