607 資 (色 料,59 料 〔10〕 607‑617. 1986) 染 料 の 昇 華 性 に つ い て 西 田 健 三* よ る詳 しい 報 告 が あ る。 1. 緒 言 後 述 す る よ うに 著 者 らは 気 体 流 通 法 に よっ た5)。 また 染 料 の昇 華 あ る い は気 化 の しや す さ を正 確 に とら え る こ の方 法 は 清 水 ら6)によっ て詳 細 に報 告 され て い る。 に は,染 料 の蒸 気 圧 を測 定 す る こ とが 一 つ の有 効 な手 段 比 較 的 最 近McDowell7)に とな る。 染 料 の昇 華 は,サ ー モ ゾル染 色 とか,染 料 の昇 Mc Dowell7)は,染 料 蒸 気 を直 接,分 光 光 度 計 で測 定 し, 華 を利 用 した熱 転 写(昇 華 転 写)捺 染 あ る い は最 近 の情 蒸 気 圧 を 求 め る方 法 を 併 せ て 行 って お り,興 味 深 い。 乾 報 記 録 との 関連 で の カ ラー コ ピー な ど工 業 的 に重 要 で あ 燥 染 料 の数mgを10cm気 るが,他 面 分 子 と分 子 の相 互 作 用 を論 ず る上 に お い て, ま で減 圧 に してか らセ ル を 溶 融 シー ルす る。 こ の セ ル を 溶 媒 な どの影 響 か らあ る程 度 離 れ て考 え る こ とが で き る 電 気 炉 に入 れ る。 炉 の 左 右 の 両端 は 窓 に な って お りこの とい う意 味 で大 へ ん好 ま しい系 で もあ る。 部 分 を分 光 光 度 計 の ビー ムが 透 過 す る よ う に な って い 染 料 の 昇 華 に 関連 して 蒸気 圧 測 定 法 の一 部 と筆 者 らの よ る報 告 も あ る。 体 セ ル に 入 れ る。1mmHg る。 こ の方 法 で染 料 蒸 気 の濃 度 を 測 定 し,蒸 気 圧 を 算 出 結果 を 含 め た 実験 結果 の簡 単 な 紹 介 お よび そ の応 用 の若 す る。McDowellは 干 に つ い て 述 べ させ て い た だ く。 か ら気 相 に スペ ク トルが 移 る と きは,相 当 程 度 に 浅 色 化 2. す る こ と。 こ の現 象 は 固 体 か ら溶 液 に ご染 料 が 移 る時 に起 染料の蒸気圧測定法 こ る浅 色 シ フ トに類 似 して い る。 こ の こ とは,一 般 に は 染 料 の蒸 気 圧 測 定 に は 分 子 流 出法(e丘usionmethod) と気 体 流 通 法(gas且0wmethod)が 一般 的に ご利 用 さ れ てい る。Jones1・2,3》 らの報 告 に よる と,1コ 次 の興 味 あ る結 果 を得 て い る。溶 液 の 流 出 口を 溶 媒 との相 互 作 用,会 合 性 な ど で説 明 され てい る。 さ らに こ の分 光 学 的 な蒸 気 圧 測 定 の 結 果 と,Jones ら2)の結 果 を比 較 検 討 した 。 分 光 学 的 方 法 は,分 子流出 もち,染 料 の 蒸 発 に と もな う重 量 減 か ら蒸 気 圧 を 測 定 す 法 や気 体 流 通 法 に比 較 して迅 速 に測 定 を行 い うる こ とお る方 法 と2コ の流 出 口を もち,流 出 に よ るね じれ角 か ら よび染 料 の分 解 が チ ェ ッ クで き る こ との利 点 を指 摘 して 染 料 の蒸 気 圧 を決 定 す る流 出 回 転 法 とい わ れ る2方 法 で い る。 ま た 染 色 ポ リエ ス テ ル を 同様 に炉 中 にお くこ とで 実 験 を行 っ て い る。 ね じれ 角 か ら求 め る方 法 は,分 子 量 脱 着 曲 線 を 求 め て い る。 を直 接 用 い て,蒸 気 圧 を算 出 す る必 要 が な い た め に2方 著 者 らの用 い た方 法 は次 の 通 りで あ る8)。染 料 は あ ら 法 を併 用 して気 相 中 で の染 料 の会 合 数 を 求 め る こ とが で か じめ十 分 に精 製 を す る必 要 が あ り,減 圧 下 で昇 華 精 製、 き る。 を 行 った 。 ま た 昇 華精 製 が十 分 に利 用 で き な い折 は,通 これ ら の両 者 に比 較 して気 体 流 通 法 は,著 者 ら の経 験 常 の再 結 法 な ど も併 用 した。 蒸気 圧 の測 定 は気 体 流 通 法 に よれ ぽ比 較 的 実 験 操 作 が 簡 単 で あ り,装 置 自身 も比 較 に ごよ った 。 硬 質 硝 子製 の 装 置 は 外管 と内管 よ り構 成 され 的 丈夫 で作 りや す い特 長 を も っ て い る。 て い る。 内 管 は 取 り出 す こ とが で き る。 加 熱 に は 電気 炉 表 一1にJonesら に よる6種 の染 料 の 測 定 結 果 を示 す2)。気 相 中 にお い て1.5〜4.7の 会 合 度 を示 して い る。 分 子 流 出 法 に よ る蒸 気圧 測 定 の 例 と して は,小 島4)に 昭 和 61.4.2 Sublimation けんぞ う 〔 現 職 〕 東 京 農… 工大学工学部工業 化学科教授 昭 和22年 受理 of Dyes 〔 趣 味 〕 釣 り,写 真 。 東工大染料化学卒。山 形 大 学 講 師,助 教 授,農 工 大 学 助 Kenzo NlsHIDA * 東京農工大学工学部 東 京 都 小 金 井 市 中 町 2‑24‑16 〔 氏 名 〕 に しだ 教 授 を経 て現 在 に至 る。 この間 学 生 部 長,繊 維 学 会 副 会 長 。 (〒184) 〔10〕 25 色 材, 染 料 の 昇 華性 に つ い て 608 Table 1. Mean degree of association of saturated 59(1986) vapour2). を 使 用 し,測 定 温 度 は100〜300。 ±0.5。Cに 温 度 調 節 し は(2)のClausius‑Clapeyron式 た 。内 容物 と外 管 お よび 内管 は,必 要 とす る温 度 に達 す る 計 算 した。 を用 い て蒸 気 圧 か ら ま で 加 熱 す る。試 料 の一 定 量 を秤 量 し,ボ ー トに入 れ る。 窒 素 ガ ス の 流 量 は,染 料 部 属 ご とに そ れ ぞ れ の測 定 値 が 一 定 に な る範 囲 に設 定 した 。 図 一1は160。Cに お い て, Disperse Orange3め 窒 素 ガ ス の流 量 に対 して,一一定 の 蒸 気 圧 の 得 られ る範 囲 を示 した 。この 結果 よ りDisperse Orange 3に つ い て の 流速 は,28.8m1/minと も の で,良 好 な直 線 関 係 が え られ る。 この こ とは,窒 素 ガ ス の流 速 量 の取 り方 の正 しい こ とを示 して い る も の で 実 験 後 の染 料 の減 量 よ り(1)式 あ る。 (N2)は で蒸 気 圧 を求 め たQ 通 過 さ せ た 窒 素 ガ ス の全 量, Pは 染 料 の蒸 気 圧, 窒 素 ガ ス と染 料 の蒸 気 圧 の和,ルfは 量,7Vは 気 体 定 数,1,987Calde9―1mole―1,Tは 内管 の 温 度 で あ る 。 得 られた 結 果 を さ ら に確 認 す る た め 清 水 ら7)の 測 定 例 と比 較 し,一 3. 3.1 致 す る こ とを 認 め た 。 蒸 気 圧 測定 の結 果 分 散染 料 表 一2にご標 準 昇 華 熱+HOsubお 数Cと よ び(2)式 に こお け る 定 標 準 エ ン トロ ピ ー 変 化+80、ubを13種 の ア ン トラ キ ノ ン 系 分 散 染 料 に つ い て 表 示 し た8)。+HOsubは (1) Poは Rは した 。図 一2 は 分 散 染 料 につ い て温 度 の逆 数 に対 して蒸 気 圧 を とっ た あ る。 実 験 誤 差 は最 大 で約 ±6%で (2) 染 料 の分 子 実 験 後 の染 料 重 量 の減 少 量 で あ る。標 準 昇 華 熱 料 の 極 性,分 子 量 と 分 子 容 で 変 化 す る。 染 料4)と5) の4HOsubは,1)と2)と3)の 染 料 の そ れ よ り一 層 に 小 さ い 。Stuart‑Brigelbの 検 討 す る と,分 染 モ デ ル で立 体 障 害 につ い て 散 染 料 中 のNH2基 の 距 離 を 増 大 し,分 は,染 料 一染 料 分 子 間 子 間 水 素 結 合 に よ る寄 与 を 弱 め る こ と が 予 想 さ れ る 。 こ の こ と か ら4)と5)の+HOs。b が2)と3)よ り小 さ くな っ て い る こ と を 説 明 で き る 。 7)の+Hosubは,Pachevaら9)に 22.2kcal/moleの Fig. 1. Plots of vapour pressure of C. I. disperse orange 3 against velocity of gasiflow at 160.C 26 〔10〕 よっ て 得 ら れ た 値 に よ く一 一致 し て い る 。 し か Fig. 2. Plots of -log P(mmHg)against C. I. disperse orange 3 し この 103/T for 色 材, 609 染料の昇華性に こつ い て 59(1986) Table Table 3. 2. Thermodynamic Thermodynamic properties properties of disperse of C. I. coupling dyes components 値 が 比較 的大 き い の は末 端 基 間 の水 素結 合 す な わ ち 染 体 状 態 で非 常 に弱 く,そ の結 果+HO、 。bと+SO、 。bの値 料 一染 料 問 の 相 互 作 用 に お い て 分 子 間 水 素 結 合 が 起 こ っ が 小 さ い0 て い るた め と 推 定 され る。6)と9)の と+so、 』bの 値 は,他 染 料 の+HOsub の 染料 よ り相 当 に低 い。 他 方 気 相 中 で の 染 料 の 会 合 の 問 題 もGreenら2)に よっ て指 摘 さ 3.2 ナ フ トールAS類 ナ フ トー ルAS類(以 下AS類 と略 称)を 熱 転 写 捺 染 す る報 告 が あ り10),ま たAS類 使 用 して が どの程 度 の れ て お り,気 相 中 で の 吸 収 スペ ク トル の 測 定 な どの方 法 蒸 気 圧 を も っ て い るか とい う問 題 は,基 礎 的 な 問 題 と し で,こ て も大 変 興 味 が あ る。 筆者 らは 川 先 に述 べ た 気 体流 通 の問 題 もい ず れ 解 明 しな け れ ば な ら な い。 染 料 6)と9)は 昇 華 に よっ て精 製 した とき,粉 末 状 で しか 得 られ な い。 これ ら の染 料 の 染 料 一染 料 間 の 相 互 作 用 が 固 法 に よ って8種 類 のAS類 〓HOsubと の蒸 気 圧 測 定 を行 い,さ らに 」50subを 求 め た。AS類 の精 製 は 酸 とア ル 〔10〕 27 610 染 料 の昇 華 性 に つ い て Dye Dye DYe 1, 4, DYe Dye 7, 色 材,59(1986) Dye 2, Dye 5, Dye Fig.3. 3, Dye 8, Dyes used 6, 9, in present study カ リに よ る再 沈 殿 法 に よ って 行 い,試 料 が 測 定 の折 に 分 い こ と を 示 し て い る 。 ま た300。C付 解 してい な い こ とを 赤 外 お よび 一 部 は マ ス スペ ク トル に と 高 く,著 よ り確 認 した 。 表 一3にそ の結 果 を 示 す11)。AS類 の蒸気 圧 は ア ン トラキ ノ ン系 分 散 染 料 よ り相 当 に 低 い。 しか し 温 度 の上 昇 と共 に 増 大 し,約200。C付 近 にな ると ア ン トラキ ノ ン系 分 散 染 料 の 蒸 気 圧 とほ ぼ 等 し くな る。 一 般 にAS類 の 分 子量 は ア ン トラキ ノ ン系 分 散 染 料 よ りも大 き く 」Ho、ubも 大 で あ る。 ま た大 約30kcal/moleと ほ ぼ一 致 した 値 を 示 す の は分 子 内 水 素結 合 に よる。 3.3 た綿 繊 維 へ の適 用 性 の可 否 な ど考 えれ ぽ,建 染 染 料 の蒸 気 圧 測 定 は実 際 的 な意 味 にお い て も,大 変 興 圧 測 定 を行 い+110、ubと+SO、ubを 関係 IndigoとIndanthrene染 一 部 につ い て ,+丑0、 と ナ フ ト ー ルAS類, 料 お よ び モ ノ ア ゾ分 散 染 料 の 。bと+SO、ubの 関 係 を 図 一4に 示 した12)。 い ず れ の 染 料 の 場 合 に つ い て も 直 線 関 係 が 存 在 して い る。 これ ら の結 果 は 染 料 分 子 間 の 相 互 作 用 の 本質 料の部属が異な る と別 の直 線 上 に集 ま る。 建 染 染 料 は ア ル ミニ ウム な どへ の熱 転 写 捺 染 が 可 能 で 味 あ る問 題 で あ る。 図 一3に示 す9種 4石ro、ubと480、ubの ア ン トラキ ノ ン 系 分 散 染 料 的 な 問 題 に か か わ りを 持 っ て お り,染 建 染 染 料12) あ るが,ま 3.4 近 の蒸 気 圧 は 意 外 し く 昇 華 を す る。 の建 染 染 料 の 蒸 気 求 め た 。 染 料 の精 製 は先 と同 様 に 行 った 。 そ れ か ら 計 算 さ れ た+HO、 。b と+So、ubを れ 表 一4示す12)。+丑o,ubと+So、ubは,そ 図 一4に お い てIndigo系 染 料 は,直 る 。 しか る にIndanthrene系 る 。横 軸 の+Ho、 Sos。bを 線群 の 右側 に 来 建 染 染 料 は よ り右 側 に 移 。bが34kcal/moleの 比 較 す る と,Indigo系 あ りIndanthrene系 処 で各 建 染 染 料 の 染 料 で は35e.u.で + 染 料 で は 大 約8e.u.でIndigo系 り小 さ い 値 と な る。+Eo、ubが40kcal/moleの す る とIndanthrene系 染 色 料 は38e.u.で よ 処で比較 あ りIndi‑ ぞ れ 染 料 の昇 華 に ともな う,エ ン タル ピー とエ ン トロ ピ ー変 化 で+Ho 、ubの値 は大 約30〜40kca1/moleに あ る go系 が,Indigo系 合 す るた め で あ る。 染 料 が 気 相 で集 合 す る こ とに つ い て 染 料 は 一 般 に 小 さ く,Indanthrene系 は 大 きい 。 また こ の2群 に別 れ る。 理 由 はIndigo系 りIndanthrene系 の値 よ 染 料 の 平 面 性 が 良 好 な こ とに起 因 す る。 す な わ ち,結 晶 状 態 に お け る分 子 間 相 互作 用 の大 き 28 〔10〕 染 料 よ り も20e.u.小 さ い 。 こ れ ら+SOsubが 小 さ い 値 を 示 す の は 昇 華 した 状 態 で 染 料 が 気 相 に お い て 集 は 多 く の 報 告 が あ る2・5・7)。 結果が一つの直線上にないの は,な ん らか の 配 列 が 気 相 中 で 加 わ っ て い る こ と に ょ る。 す なわ ちそ れ ぞ れ の染 料 に よ って この 直 線 関 係 に ず 色 材, 611 染料 の昇 華 性 につ い て 59(1986) Table4. * Dye structure Thermodynam三c is shown in Figure properties of some vat dyes 3. Indigo系 染料1),2),3)と4)5),6)の に差 が あ る の は4),5),6)の 塩 素,メ 染料 の間 染 料 が か さ高 い 臭 素, チル とエ トキ シル 基 を もつ た め で,結 果 的 に こ れ ら4),5),6)の フ ァ ンデ ル ワー ル ス カ を 弱 め て お り 〓HO、ubは 一 層 低 くな る。7),8)と9)の る と,そ の 差 は 立 体 障 害 に よ る よ りも,8)の 染 料 を比 較 す 染料 のもっ て い る置 換 塩 素 分 子 の極 性 の差 に部 分 的 に よっ て い る。 4. 染料の昇華あるいは気化開始温度 と 減 圧 度 の関 係 4.1 測 定 方 法13) 上 記 の方 法 で 染 料 の 蒸 気 圧 を測 定 し,そ の値 か ら昇 華 あ るい は 気 化 の しや す さ を 求 め,染 料 を選 び 出す こ とは 大 変 な 時 間 と手 数 が か か る。 そ こ で示 差 熱 分 析 装 置(理 学 電 気 標 準 型)を 使 用 して昇 華(融 合 は 気 化 とい うが,以 点以 上 で気 化 す る場 下 で は 区別 をせ ず 昇 華 と の み い う。詳 細 は デ ー タを み て判 定 して欲 しい)開 始 温 度 の測 定 を 行 った。 電 気 炉 に試 料 を入 れ 上 部 か ら 肉眼 に よ っ て Fig.4. Enthalpy‑entropy plots れ の生 ず る理 由は,染 料 分 子 間 に 働 く相 互 作 用 が,分 子 観 察 す る。 ま た 炉体 を蔽 っ て い る硝 子 鐘 の壁 に付 着 す る 染料 の量 か ら昇華 の しや す さ を直 接 確 か め る こ とが で き る。 の平 面 性 に部 分 的 に依 存 す るた め で あ る。 建 染 染 料 の よ 4.2 うに強 くフ ァ ンデ ル ワ ー ル スカ の働 く分 子 は,気 相 で の 結果 を 表 一5に 示 す,染 分 散 染 料 の 昇 華 開 始 温度14) 料 の昇 華 開 始 温 度 は 熱 転 写 捺 分 子 の集 合 体 中 に 密 につ め 込 まれ てお り,Indanthrene 染 と密接 な 関係 に あ る。 また 減 圧 度 を下 げ るほ ど昇 華 の 系 染 料 に お い てそ れ が 一層 に 密 であ る こ とを 示 す 。 従 っ 開 始 温 度 は低 下 し,従 来 常 圧 で使 用 で きな か った 染 料 も て 図 の左 側 に直 線 関 係 が 移 る染 料 ほ ど,集 合 体 の 生 成 が 減 圧 で の使 用 が可 能 に な る。 また 減 圧 度 と昇 華 開 始 温 度 少 な い か,粗 な 合 会 体 で あ る と推 定 され る。 の間 に は ほ ぼ 直線 関 係 が成 立 す る。 〔10〕 29 染 料 の 昇華 性 に つ い て 612 Table 5. Initiation and reduced temperature pressure. 1; Poor, 2 ; Moderate, * Unpublished structure 4.3 of sublimation or vaporization 色 材, of disperse under atmospheric 3 ; Good カチ オ ン染 料 の 昇 華 開 始 温 度15) 表 一6に結 果 の 一 部 を 示 す。 後 述す る よ う に カ チ オ ン 建 染 染 料 は200。C付 近 では 余 り昇 華 しな い が,し か し前 述 の よ うに300。C以 る。 こ こ で もIndigo系 そ ん な に 正確 な もの で は な い。 ア ル カ リの添 加 が 昇 華 開 昇 華 しや す い。 上 に な る とか な りの 程 度 昇 華 す 染 料 は 一 部 分解 す る可能 性 もあ り,こ れ らの値 の精 度 は 始 温 度 を 低下 させ る とい う事 実 は大 変 興 味 あ る結 果 で あ る。 染 料 の 分 子 量 と昇 華 開 始 温 度 の 関 係 を 図 一5に 示 す 。 極 性 基 の存 在 は 昇 華 を 防 害 す る。 4.4 dyes 59(1986) 不 溶 性 ア ゾ染 料 の 昇 華 開 始 温 度16) 不 溶 性 ア ゾ染 料 の 昇 華 開 始 温 度 と昇 華 の程 度 を 表 一7 5. の方 がhdanthreneよ りも幾 分 カ チ オ ン染 料 の 耐 熱 性 カ チオ ン染 料 は 耐 熱 性 が 悪 く,昇 華す る と同 時 に熱 分 解 す る場 合 が 非 常 に 多 い17)。表 一9には,分 散 染 料 の熱 的 性 質 につ いて さ らに 検 討 す るた め に表 に ま とめ て み た。 に 示 す 。 減 圧 下 のデ ー タで あ る。 昇 華 開 始 温度 も比 較 的 分 散 染 料 に は 昇 華 す る もの と気 化 す る2種 の タ イ プが 存 低 く,し か も十 分 昇 華 す る。 在 す る こ とお よび 昇 華 が300。C付 4.5 建 染 染 料 の 昇 華 開 始 温 度16) 表 一8に 建 染 染 料 の 昇 華 開 始 温 度 と昇華 の程 度 を示 す 。 30 〔10〕 近 の高 温 ま で に わ た っ て起 こ って い る。 また これ らの 染料 で は 昇 華 とい う よ り気 化 す る場 合 の多 くあ る こ とが 判 明 す る。 ま た ア ゾ型 色 材, 染 料 の 昇華 性 に つ い て 59(1986) Table 6. Initiation temperature for sublimation (sub) dyes under atmospheric or reduced pressure. * Sodium carbonate (Molar equivalent 1 ; Poor, 2 ; Moderate, weight) 613 or vaporization (yap) of cationic is added to sample . 3 ; Good の 染 料 で もか な り良 好 な 昇 華(特 に チ ア ゾ ール 系)を 示 す 。No.15の 染 料 は反 応 基 と してClが 働 くた め か,昇 華 しな い の に 転 写 が 十 分 起 こ る場 合 もあ る。 C.I.BasicBlue1に 6. 紙 へ の 昇華 転 写 プ リンタ の利 用 が 広 が る と共 に 紙 へ の転 写 の 問 題 が 着 つ い て無 添 加 の とき と添 加物 と し 目され る よ うに な った 。 昇 華 型 の染 料 を 利 用 す る方 式 は て簡 単 な 無機 お よび有 機 物 を添 加す る と カセ イ ソー ダお 精 密 な画 像 が え られ る とい う利 点 が あ る。 しか しな が ら よび重 炭 酸 ソー ダで は,発 熱 ピー クが高 温 度側 に移 動 し 残 念 な こ とに先 に示 した 染 料 のい ず れ の 利 用 も,ポ 明 らか に 耐熱 性 が 改善 され て い るが18),正 確 な理 由 は よ ス テ ル を主 とす る合 成 繊 維 に 限 られ て い る。 で は この方 リエ くわ か らな い。 対 イ オ ンを交 換 した とき は余 り大 き い効 式 が 天 然 繊 維 に適 用 で きな い理 由 は な に か。 合成 繊 維 は 果 は認 め られ なか った 。 しか し ラ ク トン環 の生 成 は著 し 比 較 的 低 い ガ ラ ス転 移 点 を も って お り,加 熱 に よっ て非 く耐 熱 性 を 改善 す る。 ラ ク トン環 は立 体 配 置 を して い る 晶 領 域 の高 分 子鎖 は 激 し く分 子運 動 を し,溶 融 軟 化 して こ とが 報 告 され て お り19》,この こ とか ら考 え て も立 体 障 む しろ 液 体 に 近 い 状 態 に な る。 こ こに 昇 華 あ る い は気 化 害 と分 極 率 の減 少 が 分 子 ― 分 子 間 の相 互 作 用 を弱 く し, した 染 料 が 激 しい速 度 で飛 び込 む 。 冷 却 に よっ て染 料 分 昇 華 しや す く して い る と考 え られ る。 子 は 非 晶 領 域 に埋 め られ た よ うな状 態 に な り閉 じ込 め ら れ る20)。アセ テ ー トは195〜303。Cの 範 囲 で溶 融 軟 化 し た 状 態 を と る。 綿 の よ うな天 然 繊 維 で は溶 融 軟 化 せ ず 褐 〔10〕 31 色 材, 染 料 の昇 華 性 につ い て 614 Table Molecular 59(1986) 7. Initiation temperature of sublimation (sub) or vaporization (yap) under reduced pressure with insoluble azo dyes. Weight Fig. 5. Relationship between initiation temperature for sublimation (or vaporization) and molecular weight of C. I. Basic Yellow 11 having various counter ions. 1 ; Poor, 2 ; Moderate, AS ; Naphtol AS-E ; Cl 3 ; Good AS 変 し固 形 の ま ま で炭 化 を続 け る。 天 然 繊 維 で は た とえ繊 維 の 内 部表 面(ミ セ ル表 面)に 染 料 が到 達 して も非 晶領 域 が溶 融 軟 化 あ るい は膨 潤 の状 態 を と らな い限 り染 色 さ Vapor phQse れ た状 態 に は な らな い(図 一6)。合 成 繊 維 の場 合 図一6に 示 す よ うに 気 相 か ら合成 繊 維 の非 晶 領 域 に飛 び込 ん だ染 Melted IGyer Crystal region 料 分 子 は,結 晶 領 域 に は侵 入 しな い が,熱 に よっ て激 し く運 動 して い る非 晶 領 域 に 飛 び込 み,分 子鎖 に 結 合 す る21)。こ の時 非 晶 領 域 に お い て 染 料 は 水 に 溶解 した と き と同 様 な染 料 本 来 の発 色 を す る(天 然 繊維 の 転 写 捺 染 で は,ス チ ー ミン グな どの 操 作 を しな け れ ぽ 染 料 本 来 の 色 相 を 示 さな い)。 す な わ ち 昔 考 え られ た 固 溶 体 説 と 類 似 の こ とが 起 こ っ てい る のか も しれ な い 。 染 料 分 子 は 高 Fig. 6. Mechanism of heat transfer printing. 分 子 鎖 の ラ ソ ダ ム コ イ ル の中 に 完 全 に 取 り入 れ られ,そ い は反 応 性樹 脂 な どで処 理 す る な どの工 夫 を しなけ れ ば の 環 境 の影 響 を 完 全 に 受 け る こ とに よ り溶 解 に 近 い 状 態 な らな い 。1例 に あ る と考 え られ るが,筆 者 も これ 以 上 の 適 確 な 解 答 は 紙(本 州製 紙 の 瀬 田 氏 よ り提 供)に 分 散 染 料 の転 写 紙 で な い。 天 然 繊 維 あ るい は 紙(通 常 圧 で180。Cで30秒 常 のパ ル プ よ り作 ら れ と して ア ル キ ド樹 脂 で コー テ ィ ン グ した 転 写 す る と鮮 明 な 画 像 が 得 られ た)に 乾 式 転 写 を行 うには,繊 維 あ るい は 紙 の 表 面 の一 一 る。 繊 維 用 の 分 散 染料 で 紙 を 転写 す るに は,染 料 自体 の 部 を改 質 して合 成 繊 維 の よ うな 性 質 を もた せ るか,あ 昇 華 性 を改 善 す る必 要 が あ る。 32 〔10〕 る 色 材, 染 料 の昇 華 性 につ い て 59(1986) Table 8. Initiation temperature of sublimation reduced pressure with vat dyes. 1;Poor,2;Moderate,3;Good (sub) or vaporization 615 (yap) under 〔10〕 33 染料の昇華性について 616 Table 34 〔10〕 9. Summary of thermal 色 材, data 59(1986) 色 材, 617 染 料 の昇 華 性 に つ い て 59(1986) * Diphenylamine 1 ; Poor, 2 ; Moderate, 3 ; Good 9) 7. 昭 和45年 お わ り に 頃 よ り染 料 の 昇 華 の 問 題 の 検 討 を 始 め た。 まだ 明 瞭 Sublistatic,特 K. Nishida, Y. Ando, M. Betsusho and A. Koukitu : J. S. D. C., 99, 60 (1983) K. Nishida, Y. Ando, S. Sunagawa, A. Ogihara, I. Tanaka and A. Koukitsu : ibid., 102, 19 (1986) K. Nishida, T. Takeuchi and K. Shimizu : ibid., 89, 406 (1973) K. Nishida, T. Ohtsu, T. Hotsuta, H. Toda, K. Minekawa : Amer. Dyestuff. Rept., 65, No. 2, 62 (1976) K. Nishida, T. Katoh, T. Toda, T. Hotsuta, H. Iwamoto and H. Toda. : ibid., 88, No. 1, 48 (1977) K. Nishida, Y. Ando, T. Katoh, H. Iwamoto, H. Toda, K. Minekawa, H. Katoh, and T. Koiso : ibid., 89, No. 2, (1980) K. Nishida, K. Kuribayashi, T. Ohtsu, T. Hotsuta, H. Toda, K. Minekawa : ibid., 83, No. 2, 32 (1974) K. Nishida, Y. Ando : ibid., 68, No. 2, 36 (1979) K. A. Klein, Friedrich W. Hafner : Chem. Phys. Letter, 43, 14 (1976) 12) 13) 本 研 究 につ い て は東 洋 イ ンキ製 造 株 式 会 社 の絶 大 な御 援 助 を えた 。 また 東 洋 イ ンキ製 造K.K.,凸 K.と の 協 同 研 究 と して 昭 和52年 版 印刷K. 市 村 賞 功 績 賞(産 の 部)を 受 賞 した 。 昭 和49,51,53,56,57,58年 14) 業 度 15) 文 部 省 科 学 研 究 費 の授 助 を受 け た 。 文 1) 2) 3) 献 16) R. S. Bradley, C. L. Bird and F. Jones : Trans. Faraday Soc., 56, 23 (1960) H. S. Green, F. Jones : ibid., 63, 1612 (1967) 目 本 化 学 会 編:実 17) 験 化 学 講 座,5,362,363,356 4) (1958),丸 善 鶴 岡,小 島:繊 5) 西 田:繊 学 誌,36,P.64(1980) 6) 清 水,大 久 保:学 18) 学 誌,24,25(1968) 術 振 興 会120委 員 会 年 次 報 告, 19) 15,71(1963) 7) 8) W. McDowell : J. S. D. C., 89, 177 (1973) K. Nishida, E. Ishihara, T. Osaka and Koukitu : J. S. D. C., 93, 52 (1977) A. kim., 45, 152 11) で な い こ とが 余 りに も多 い。 今 後 の大 き い研 究 課 題 で あ ろ う。 priklad. 10) や っ と結 果 ら しい も のを 得 る こ とが で きた が,気 相 中 で 染 料 分 子 が どん な 状 態 に あ るか につ い ては,い Pacheva et al. : Zhur. (1972) 20) 西 田:染 21) J.Aihara, A4mneγ. 許 昭54‑19516 色 と 加 工,29,Nα1,1(1986) K. Dツestu∬ Nishida Rept.,64, and M. Miyatake: No.2,46(1975) 〔10〕35