神経・生理心理学 第14回 レポート課題(認知症と脳) 答え合わせ 1. 以下の文章が正しければ「はい」、誤っていれば「いいえ」を選択して下さい。 (1) 認知症では、いったん正常に発達した脳の知的なはたらきが低下する。 (はい・いいえ) そんなに多くない。 (2) 認知症の有病率は、70~74歳で5割を超える。 4%くらい (はい・いいえ) (3) MCI を日本語に訳すと、 「重度認知障害」である。 M は Mild「軽度」 (はい・いいえ) (4) MCI の状態から、正常なレベルに回復することもある。 (はい・いいえ) (5) アルツハイマー病では、海馬の委縮がみられる。 (はい・いいえ) (6) 神経原線維変化が起こってから、老人斑の蓄積が開始される。 (はい・いいえ) 老人斑が先 (7) アルツハイマー病では、記憶は保たれる場合が多い。 (はい・いいえ) (8) パーキンソン病の患者は必ずレビー小体型認知症を合併する。 (はい・いいえ) 合併しないことも多い (9) レビー小体型認知症では、いるはずのないものを見る「幻視」がしばしば起こる。 (はい・いいえ) (10)レビー小体型認知症では、脳内のドーパミンが減少すると考えられている。 (はい・いいえ) (11)血管性認知症は、階段状に進行するといわれる。 (はい・いいえ) 2.スライド「アルツハイマー病の脳における異常構造物」 (アルツハイマー病の進行過程) のグラフを見ると、現在無症状の方でも、脳をチェックすることで将来認知症になりやすい かどうかを判断できるかもしれません。 もし、将来認知症になりやすいかどうかがわかるのであれば、あなたは知りたいですか?そ れとも、知りたくないですか?どちらか選択してください。 知りたい / 知りたくない ◆フィードバック この課題のねらいは、「脳の変化が症状に先んじることを実感していただくこと」でした。 有効回答数61名のうち、 「知りたい」が51名(84%)、 「知りたくない」が10名(16%)でした。 知りたい理由(文章は要約) (1) 対策できる/やれることがある 「何か対策が考えられる」 「早い段階で治療を始められる」 「周囲が手伝うことができる」 「自分のことをしっかり自覚できているうちにやりたいことをし、自分の考えなどを書き 残しておきたい。そして出来るだけ認知症の進行を遅らせるように健康管理をしながら生 活をして、認知症が治る薬が出るのを待ちたい。 」 「一人では抱えきれない問題になってくるから、将来一緒に住む子供だったり、旦那さんだ ったりに伝えることで対策できるし、出来なくなる前に旅行・趣味などを多くできる」 「覚悟を持って将来に備えることが出来る。自分の頭がしっかりしているうちに遺言など 様々な準備ができる。 」 「自分は脳や記憶に関することに関心があり、好奇心が高いタイプなので知りたい。それを 知っていたら記憶の改善方法や認知症を減速させる方法を調べる。」 「私の場合今もうすでに忘れっぽいので生活自体は変わらなそうですが、もし認知症にな るのなら大事な記憶は手紙にでも書いて保存しておきたいと思いました。 」 (2) 知ることで意識が変わる 「一時的に過度な不安や緊張を孕んだ生活になる可能性があるというデメリットはあるが、 知っていることによる認知症のケア、生活の改善への意識改革のメリットの方が大きい。」 「祖母が認知症で、同じ話を何回もしたり(中略)忘れてしまうことに対して辛そうにして いる姿を見たことがあります。私は自分の言動で家族に迷惑をかけなくないし心構えもし たいので、将来認知症になりやすいか判断できるのならば知りたいです。 」 「将来認知症になるという認識があれば多少はマシな態度を取れそうなので…多分。 」 「早い段階でわかれば、自分の将来について見直し、焦らず深く考える余裕が生まれる。人 生経験を振り返ることで脳機能が正常な現在の状況に感謝し、大切にする気持ちが生まれ るから。もちろん不安もあるがポジティブな思考に切り替えることが重要。 」 「後悔しないように今を生きようと思うから」 「認知症になったら、様々な人に迷惑をかけることになり最期に娘の顔もわからなくなっ たらきっと死んでも死にきれないので予防のためにも知りたいです。 」 知りたくない理由: 「私の身近には認知症の人がいなくて会ったこともなく、ドラマやドキュメンタリーで見 るくらいですが、自分も周りの人たちもつらいし、忘れることも忘れられるのも悲しいので、 もし自分がなりやすいとしても知りたくないです。 」 ――――――――――――――――――――――――――― 質問1.パーキンソン病は顔の表情に出やすいというような話を聞いたことがあるが、脳に 関係があるのであればなぜ顔の表情に出るのか気になった。 解答: パーキンソン病では仮面をかぶっているように無表情になりますね。 脳のドーパミン不足によって顔の表情筋がうまく動かず、無表情になると考えられていま す。第 15 回講義で抗精神病薬の副作用として出てきた「錐体外路症状」の一種と考えられ ています。 質問2.認知症は特定の年齢層にのみ影響を与えるものですか? 確かに認知症の患者さんの多くは60歳以上の高齢者ですね。認知症のかかりやすさは年 齢に比例しますので、認知症はおもに高齢者に影響を与えるといえます。 (ただ、少数ですが、40代~50代でアルツハイマー病にかかる方もいらっしゃいます。 まれな神経疾患では、20代の若さで認知症のような症状を呈する方もいます。 ) 質問3.MCI は、脳にアミロイド β などが蓄積されている状態なのにもかかわらず、治る ことがあるのはなぜでしょうか。 脳に老人斑が現れても、症状が出ない方がいます。例えば、死後に脳の解剖をしたらアルツ ハイマー病の脳だったのに、生前は認知症の症状を示さなかった方がいます(参考文献「100 歳の美しい脳」 ) 脳が委縮していても、それが認知症の症状として出るかどうかはまた別の因子が関与して いると考えられるため、もの忘れの症状がMCIレベルから改善することもあると思われ ます。 質問4. 認知症の予防にはどのような方法がありますか? 上記のように、脳内にアルツハイマー病変が存在していても、認知症を発症することなくも ちこたえることができる能力を「認知予備能」と呼びます。 まだ不明な点も多いですが、 「若い頃の認知機能(高いと認知症になりにくい)」 「教育歴(た くさん勉強すると認知症になりにくい) 」などが認知予備能の候補です。 また、認知症を予防できる因子としては、 「生活習慣病にならないこと」 、 「適度な運動」 、 「バ ランスのよい食事」 、 「社会参加」などが候補としてあげられています。 (参考:政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/1.html)