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MES2012(第 22 回マイクロエレクトロニクスシンポジウム)2012 年 9 月
2C3‑5
プリント基板上に形成したワイヤレス電力伝送用スパイラルコイルの
結合係数の向上の検討
Investigation of Coupling Factor
between Spiral Coils Formed on a PCB for Wireless Power Transfer
今野 宗一郎
山本 隆彦
越地 耕二
S.Konno
T.Yamamoto
K.Koshiji
東京理科大学 理工学研究科 電気工学専攻
Department of Electrical Engineering, Graduate School of Science and Technology
Tokyo University of Science
These days, there have been increased interests in wireless power transfer technologies. These technologies
enable us to easily charge electric power without connecting the cable. Using the spiral coils formed on a printed
circuit board, we have been studying the wireless power transfer. This paper reports on estimating and improving the
coupling factor and the power transfer efficiency between the coils, and investigating the transfer characteristics
against the misalignment of coil axis, using two models of spiral coil.
1
まえがき
整した.
近年,ワイヤレス給電技術に注目が集まっている.こ
の技術を利用することで,ケーブルに接続することなく
容易に給電することができる[1][2].しかしながら,結合
係数の算出方法,コイルの薄型化,形状についての
検討が不十分である.
本検討ではオープン構造のコイルの結合係数算出
方法について検討を行った.また,プリント基板上にス
パイラルコイルを形成し,コイルの内径の有無による,
軸ずれが発生したときの結合係数および電力伝送効
率について電磁界解析を用いて検討を行った.
2
スパイラルコイル
2.1
Fig. 1 Spiral pattern of
Fig.2 Spiral pattern of
model 1
model2
スパイラルコイルモデル
Fig.1 および Fig.2 に提案する両面プリント基板上に
形成されたスパイラルコイルモデルとその各部の寸法
2.2
を示す.これは効果的に磁束が発生するようにスパイ
スパイラルコイルの等価回路
Fig.3(a)にスパイラルパターンの等価回路を示す.こ
ラルを逆方向に巻いている.ここでプリント基板の縦,
こで,Z0 は電源インピーダンス,L はスパイラル部分の
横の長さを D = 110 mm とし,また基板の誘電体の厚
インダクタンスの和,C はスパイラル間の寄生容量,r
さを h = 1.6 mm,比誘電率を FR4(Flame Retardant
は導体の抵抗である. Table 1 に Model 1, 2 の L, C, r
Type 4)を想定しr = 4.7 とした.また導体幅を w = 2
および直列共振周波数 fs を示す.
mm とした.導体の厚さを 16 m,導電率は銅を想定
し 5.8×107S/m とした.Model 1 は内径を 0 mm とし巻
2.3
数を 8,pitch = 6.625 mm とした.Model 2 は軸ずれが
電力伝送時の等価回路
スパイラルコイルを用いて,Fig.3(b)のように送電コイ
生じたときの結合係数を向上させるために,内径  =
ルから受電コイルへ電力を伝送するときの等価回路を
30 mm とし,巻数 6,pitch = 6.333 mm と Model 1 とイ
Fig.3(b)に示す.本検討においては送電側,受電側に
ンダクタンス,直列共振周波数が近い値をとるように調
同一仕様のコイルを用いたため,それぞれのインダク
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MES2012(第 22 回マイクロエレクトロニクスシンポジウム)2012 年 9 月
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タンス,寄生容量,抵抗は等しい.また M は相互イン
ダクタンスであり,負荷 RL = Z0=50 とした.
Fig.3(b)を用いて S21 を導出すると式(1)となる.式(1)
より電力伝送効率21 は式(2)となる.また相互インダク
タンスは結合係数 k およびコイルのインダクタンス L を
用いて式(3)となる.これより,電力伝送効率 21 は結
(a) Spiral coil
(b)Transmitting and
合係数 k の関数となる.Table 1 の値を用いて Model 1,
receiving coils
2 の周波数を変化させたときの結合係数に対する最大
Fig.3 Equivalent circuits
伝送効率を Fig.5 に示す.ここで伝送効率がピークと
なる周波数は 2 つあり,式(4), (5)で表わされる[2].
Fig.5 より Model 1, 2 は一致した傾向を示し,k ≦0.20
では,結合係数 k の減少とともに徐々に電力伝送効
率が減少するのに対し,結合係数 k ≧0.20 以上にお
いては 90%以上の高い効率が得られることが分かる.
よって,電力伝送効率を高くするためには結合係数 k
を大きくすることが重要である.
3
Fig. 4 Coil arrangement for wireless energy transfer
結合係数の検討
3.1
S 21 
結合係数の算出方法
2 jMZ 0

M   Z 0  r 

2
本節では結合係数の算出について,Table 1 に示し
た Model 1 の値を用いて検討を行った.従来のいくつ
21  S21
かの文献[2]では,結合係数の算出に式(6)が用いられ

ている.ここで,fe, fm は Fig.6 の実線で示される伝送効
率がピークとなる 2 つの周波数を示している.ここでは
1 

j  L 

C 

2
2
(1)
2
2MZ0 2
2
2
2


1 
1 


2
2
2
  M    4 L 
 Z 0  r 
Z 0  r    L 
C 
C 




(2)
一例として k = 0.30, 0.15 のときの周波数と伝送効率の
M  kL
関係を表している.Fig.6 の破線のように結合係数 k が
(3)
小さいとき fe,fm が近づき,結合係数の算出が困難と
なる.そこで本検討ではオープン構造のコイル[2]をシ
2 L  CZ 02  4M 2  Z 04 C 2  4 LCZ 02
ョートし,式(7)を用いて送電コイルと受電コイルの間の
2( L2  M 2 )C
fe 
結合係数を算出した. V1 は Fig.7 における一次側コイ
2
(4)
ルの電圧,V2 は二次側コイル開放時の電圧である.L1,
2 L  CZ 02  4M 2  Z 04 C 2  4 LCZ 02
L2 は一次側,二次側のインダクタンスである.本検討
では一次側,二次側に同じコイルを用いるため L1 =
2( L2  M 2 )C
fm 
L2 = L としている.
Table 1 Parameters of spiral coils
Model
1
2
L [H]
4.77
4.42
C [pF]
70.8
68.1
r []
1.3
1.3
f s [MHz]
8.66
9.17
k
226
(5)
2
k
f m2  f e2
f m2  f e2
(6)
k
V2
V1
(7)
L1
L2
4M 2  C 2 Z 04  4 LCZ 02
2 L  CZ 02
(8)
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式(4), (5),(6)からわかるように電源インピーダンスや
負荷インピーダンス Z0,共振のための静電容量 C に
依存しているのに対し,式(7)で算出される結合係数 k
はこれらの定数に依存せずに決定されるためである.
次に式(2), (6), (7)を用いて算出される伝送効率と,
電磁界解析により得られる伝送効率の比較を Fig. 10
に示す.同図において,式(6)を用いた場合は,s≧
25.0 mm では伝送効率を算出することが不可能である
が,式(7)から算出される伝送効率は電磁界解析と比
Fig. 5 Coupling factor vs. efficiency
較して若干の差異があるが,ほぼ一致した傾向を示す
ことがわかる. よって,式(7)を用いた結合係数算出方
法が有効であると言える.
Fig. 8 Coil arrangement for wireless energy tranfer
Fig. 6 Efficiency in case of k = 0.30, 0.15
Fig. 7 Equivalent circuit for calculating coupling factor
3.2
式(6), (7)を用いた結合係数算出の比較
Fig. 9 Comparison of coupling factors calculated by Eq.
電磁界解析の結果を用いて式(6), (7)の結合係数
(6) and Eq. (7)
の比較を行った.式(7)を用いる際,負荷を 1 Mとし
て開放とみなし,結合係数の算出を行った.Figのよ
うにコイル間距離 d = 30 mm において,軸ずれ s
[mm]を変化させたとき,式とを用いてodelの
結合係数を算出した.それぞれの結果を Fig. 9 に示
す.式 (6)は s ≦ 12.5 mm までは k > 0 となる値を得ら
れている.しかしながら,s ≧25 mm においては k = 0
となっている.これは,Fig.6 に示す fe, fm が近づき,式
(6)において結合係数 k ≒0 と算出されるためである.
対して,式(7)を用いると,s≧25.0mm においても結合
係数 k > 0 となり有効な値が得られる.ここで,s < 25.0
Fig.10 Comparison of efficiencies estimated by
mm においても,両式による結合係数の算出結果に差
がみられる.これは,式(6)で算出される結合係数 k は,
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simulation, Eq.(6) and Eq.(7)
MES2012(第 22 回マイクロエレクトロニクスシンポジウム)2012 年 9 月
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2C3‑5
Model1 および 2 の軸ずれ特性の比較
4.1
結合係数の比較
Model 1 および 2 の軸ずれが発生したときの結合係
数の変化について電磁界解析を用いて比較検討した.
Fig.8 のように送電および受電コイルが平行な状態で,
コイル間距離 d = 30 mm において,軸ずれ s [mm]に
対する結合係数 k を算出した.その結果を Fig. 11 に
示す.軸ずれ s [mm]に対し Model 2 の結合係数の方
が Model 1 に比べてわずかに大きい.これはコイルの
中心部に開孔(内径)を設けたことにより,鎖交する磁
Fig. 11 Misalignment vs. coupling factor
束が増加したためと考えられる.よって内径の検討に
より結合係数を向上させられる.
4.2
電力伝送効率の比較
次に,Model 1 および 2 について軸ずれが発生した
ときの電力伝送効率の変化について比較検討を行っ
た.コイル間距離 d = 30 mm において,軸のずれ s
[mm]に対する電力伝送効率21 を算出した.その結果
を Fig. 12 に示す. Model 1 と比較して Model 2 は電
力伝送効率がわずかに高いことが分かる.これは,内
径を大きくしたことにより,鎖交する磁束が大きくなり,
Fig. 12 Misalignment vs. efficiency
結合係数が増加したためと考えられる.
よって,内径の検討により伝送効率の向上が可能で
ある.さらにインダクタンスを増加させることで,伝送効
参考文献
率の改善が可能である.
[1] Hao Wang, Zhi-Hong Mao, Qi Xu , Mingui Sun. “Relay
effect on wireless power transfer using resonant coupling”
Bioengineering Conference (NEBEC), 2012 38th Annual
Northeast, 16-18 March 2012
[2] 居村 岳広,岡部 浩之,内田 利之,堀 洋一” 等価回路から
見た非接触電力伝送の磁界結合と電界結合に関する研
究 : 共振時の電磁界結合を利用したワイヤレス電力伝送”
5
まとめ
プリント基板上に形成したスパイラルコイルについて,
コイルの軸ずれに対する結合係数の算出方法,コイル
間距離に対する結合係数,伝送効率の検討を行った.
電気学会論文誌. D, 産業応用部門誌 D, 130(1), 84-92, 201001-01
[3] Imura, T. Okabe, H , Uchida, T. ; Hori, Y. “Study on open
and short end helical antennas with capacitor in series of
wireless power transfer using magnetic resonant couplings”,
Industrial Electronics, 2009. IECON '09. 35th Annual
Conference of IEEE, 3-5 Nov. 2009
従来の結合係数算出方法では,コイル間距離が大き
い場合,結合係数が算出できなかった.対して,本検
討の方法ではコイル間距離が大きく,結合係数の小さ
い場合であっても結合係数を算出できることを示した.
連絡先
伝送効率向上のために,一般にインダクタンスおよび
連絡先氏名
所属機関
結合係数を上昇することが有効であるが,ここでは,軸
ずれが発生する場合,インダクタンスを増加するだけ
所在地
ではなく,コイルの内径の検討が必要であることを示し
た.結合係数の大きくなる内径を決定し,インダクタン
TEL
FAX
E-mail
スを増加することで位置ずれが発生しても高い伝送効
率を維持することができる.
今後は,内径と軸ずれとの関係について検討する
予定である.
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今野 宗一郎
東京理科大学 理工学研究科
電気工学専攻 越地研究室
〒278-8510
千葉県野田市山崎 2641
04-7124-1501 (代表)*3743
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