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構造推定勉強会資料 02

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需要推定勉強会
横浜国立大学 花澤楓
2023 年 12 月 21 日
Steven T. Berry & Philip A. Haile (2021). Handbook of Industrial Organization, Volume 4, Chapter 1,
Foundations of demand estimation.
CONTENTS
1
Introduction
2
1.1
Why estimate demand? . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
1.2
Our focus . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
The challenges of demand estimation
2
2.1
The first fundamental challenge . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
2.2
The second fundamental challenge . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.3
Demand is not regression . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.4
A surprisingly difficult case: exogenous prices . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.5
Many common tools fall short . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
2
2.5.1
Controls, including fixed effects . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
2.5.2
Control function . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
2.5.3
Average treatment effects . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
2.6
Balancing flexibility and practicality . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
2.7
Demand or utilities? . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
Discrete choice demand
7
3.1
Random utility models . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
3.2
The canonical model . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
3.3
Why random coefficients? . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
Appendix.A
多項ロジットモデル:選択確率の導出
11
Appendix.B
多項ロジットモデル:IIA
13
3
1
1 Introduction
1.1 Why estimate demand?
経済主体の意思決定モデルを活用した実証分析のアプローチである構造推定は以下の手順からなる。
1. 分析したい経済事象に関する経済モデルを構築(economic model)
2. 経済モデル内のパラメタ(e.g., 需要関数・費用関数)を、データを用いて推定(econometric model)
3. 推定したモデルを用いて、反実仮想(counterfactual)シミュレーション
構造推定の強み:経済モデルを用いたシミュレーションができること。
• 例:ある政策の代わりに別の政策を行うとどうなるか
• 意思決定におけるあるメカニズム・チャネルを捨象したときにどうなるか
• 因果効果・政策効果の推定の一つの手段
• 経済学的に関心のあるアウトカム(経済厚生など)を見ることができる
構造推定の弱み:経済モデルに強く依拠していること。強い仮定を置く必要がある&実装コストが高い。
需要関数の推定は構造推定において非常に重要なパートの一つである。
1.2 Our focus
本勉強会(Chapter 1)では以下の基本的な問題に取り組む。
• 需要推定の識別問題
• empirical IO における基本的なモデル
• 操作変数の選択・役割
• 異なるデータタイプについて(micro data, panel data, ranked choice data, hybrid)
• nonparametric identification
2 The challenges of demand estimation
需要推定の識別問題は、需要に影響を与える観測されない要素(unobserved demand shocks)がある場合
(i.e., 価格の内生性)に難しくなる。
2.1 The first fundamental challenge
完全競争で財が 1 つの市場を考える。需要と供給は同時方程式から特徴づけられる。
Q = D(X, P, U )
(2.1)
P = C(W, Q, V )
(2.2)
ここで、
2
• Q : quantity
• P : price
• X : observable demand shifters
• W : observable cost shifters
• U ∈ R : unobserved demand shifters
• V ∈ R : unobserved cost shifters
価格と量のみが内生的であると仮定する。i.e., (X, W ) ⊥
⊥(U, V ).
もし、U がないとしたら、単に (X, P ) と Q の関係が需要を表すことになるが U はほとんど存在するので、識
別のための工夫が必要である。
この場合の需要のノンパラメトリック識別は、内生性を伴う回帰モデルの場合の識別と同じ操作変数条件から
導かれる。つまり、需要識別のためには操作変数から得られるような外生的な変動が必要。
2.2 The second fundamental challenge
どんな財の需要量も、1 つ以上の潜在的な需要ショック(latent demand shocks)に依存しており、興味の
ある財の需要は関連するすべての財の価格と製品属性に依存する。例えば、代替品や補完品の価格(または製
品属性)が変われば、需要は変化する。これらの要因はある財の需要から除外することはできないため、ある
価格の変化のような ceteris paribus を定義する際に固定される「他のすべて」の中に含まれる。
これは、識別のために需要関数に関する仮定を入れない限り推定できないことを示し、需要推定は標準的な
回帰分析として扱うことはできない。
2.3 Demand is not regression
マーケットに J 個の財があるとする。各財 j = 1, . . . , J に関する需要は
Qj = Dj (X, P, U )
(2.3)
ここで、X = (X1 , . . . , XJ ), P = (P1 , . . . , PJ ), U = (U1 , . . . , UJ ).
需要ショック(structural errors)U = (U1 , . . . , UJ ) はすべての財と相関するのでこれは回帰式(regression
equation)ではない*1 。また、Dj の推定のために、J 個の価格に関する良い操作変数を見つけてきたとして
もこれは十分ではない(we will see this formally in later sections)。同時方程式モデルから需要を識別する
ためには J 個の price と J 個の quantity に関する操作変数が J × J 個必要になる。
内生性と unobserved variables がある場合に weighted average responses (例:LATE)の推定をするが、
明らかにこれによって需要推定をすることはできない。
2.4 A surprisingly difficult case: exogenous prices
式(2.3)の右辺の需要ショック(構造誤差)による問題を理解するために以下の問題を考える。
多くの大きい市場(many large markets)t において、研究者がランダムに価格ベクトル (p1t , . . . , pJt ) を割
り当て、需要量 (q1t , . . . , qJt ) を観測できるとする*2 。この場合でも需要推定のための識別は難しいことを以
*1
*2
回帰式は、Y = f (X) + E として定式化される。
観察された数量は、外生的に設定された価格において供給された数量ではなく、需要された数量であると仮定していることに注意。
3
下で見る。
例えば、需要弾力性では他のすべてを固定したまま価格を変化させる必要があり、固定しなければならない
ものの中に需要ショックがある。価格がランダムに割り当てられているため、価格と需要ショックの間の相関
は無くなるが、需要ショックそのものを固定することはできない。価格のランダムな変動に伴う数量の観測さ
れた変動は需要ショックのベクトル(U1 , . . . , UJ )について積分することで LATE を計算できる。しかしこう
した平均値は、需要の弾力性を明らかにしないのでそこまで嬉しくない。価格への操作変数それ自体は需要の
識別には十分ではない。
よって、関心のある反事実(例えば、合併後の結果)に対する需要反応の定量化や、均衡価格条件を通じて
企業のマークアップを推論することはできない(We return to this issue in Section 2.5.3)。
関数形を仮定すると価格の内生性に対処することができる。式(2.3)の需要関数を以下のように仮定する。
Qj = Dj (X, P, U ) = Dj (X, P, Ej (U ))
(2.4)
ここで、Ej (U ) は U1 , . . . , UJ について線形のスカラーであり、∂Dj /∂Ej (U ) > 0 とする。
このとき、Qj |X, P の分布における τ 分位点は、その τ のもとで Ej (U ) を固定したときの需要 Dj (X, P, Ej (U ))
を表す (Matzkin (2003))。
以上より、需要関数の関数形として式(2.4)を仮定したとき、P ⊥
⊥ U 、もしくは P が外生変数と考えられ
る場合(もしくは J 個の P についての操作変数が得られる場合)には需要関数を識別することができる。し
かし、j 財に対する需要ショックが単調増加で、線形かつスカラー(Ej (U ))で与えられるとするのはとても
強い仮定のためより柔軟なモデルが必要。
2.5 Many common tools fall short
わざわざ複雑なモデルを使う必要があるのか?→財が 1 つの市場を考えたとしても通常の empirical tools
では需要を推定できないことをこの section では議論されている。
2.5.1 Controls, including fixed effects
観察できない変数の存在によって生じる内生性の問題には、これを取り除くような
controls を探すのが
自然なアプローチである。需要推定をするにあたってこのアプローチが上手くいくには controls について以
下の 2 つが満たされる必要がある。
1. 観察できない変数による需要への全ての効果を含む
2. controls は価格に関する全ての変動を含んではいけない(除外制約っぽいもの)
例えば、式(2.1)において全ての demand shifters を X が含むとすると、全ての (X, P ) において完全な需
要の fit/prediction をすることが可能だが、そんなことはあり得ない。
controls の候補として、固定効果が考えられる。固定効果は control for everything と解釈されるため。
固定効果においても controls として 2 つの要件を満たすこと必要である。つまり、需要に影響を与える全て
4
の要因について固定効果に含まれており、かつ価格に影響を与えるものは一切含まないこと。財ごと、もしく
は市場ごとのレベルでの潜在的な需要ショックの存在により、固定効果によるアプローチはこれらの観察で
きない要因について control するものと解釈される。しかし、product-level fixed effects は需要ショックが
product と market ごとに変動する場合には controls として十分ではない。
given market において全ての消費者にとって同じ財価格を考えても、それぞれの product×market ごとの固
定効果は価格の変動も含んでしまうため、需要推定ができなくなってしまう。つまり、supply-side の価格変
動を見るための追加的な要素が必要。
2.5.2 Control function
Control function
アプローチは 2SLS と似ていて、以下の式を考える。
T = F (Z, E1 ) : reduced-form equation
(2.5)
Y = G(T, E2 ) : outcome equation
(2.6)
ここで、
• T :内生変数(treatment)
• E1 , E2 :スカラーと仮定された誤差で、∂F/∂E1 > 0, ∂G/∂E2 > 0.
T を価格として需要量 Y を推定したくなる。完全競争の single-good economy を仮定してもこの形では(強
い仮定を入れない限り)需要推定できない。需要推定のときには、T を P で置き換えて、
P = R(X, W, U, V )
(2.7)
として、demand shock U と cost shock V の全ての構造誤差を含むものとして定式化する。U と V がスカ
ラーとして P に含まれていてかつ (X, W ) ⊥
⊥(U, V ) なら control function アプローチで需要推定が可能。し
かし、複数の財がある場合を考えると、ある財への需要は複数の内生的な価格やそれぞれの demand, supply
shocks に依存するので識別が困難になる。
2.5.3 Average treatment effects
LATE 等の平均的な反応を示す指標は需要推定にも使えるのか?→ In general, the answer is no.
式(2.1)、式(2.2)において、消費税 τ の均衡価格 P ∗ (X, W, U, V, τ ) への効果をみるとする。式(2.2)を
Q = S(W, P, V )
と書き換える。
∂P ∗ (X, W, U, V, τ )
=
∂τ
∂S(W,P,V )
∂P
∂D(X,P,U )
∂S(W,P,V )
+
∂P
∂P
(2.8)
定義より LATE は潜在的な変数全てに関する平均で、これはそれら全てを固定したものではないため LATE
ではない。よって、LATE アプローチは関心のある変数の量についての ceteris paribus counterfactual を生
み出せない。つまり、tax change の因果効果がわからない。
2.6 Balancing flexibility and practicality
需要推定が持つ課題として、
5
1. 結果に対する強い priori restriction を避けるために十分に柔軟で、
2. practical application を可能にするために簡略化された
empirical specifications を見つけることである。市場によっては、密接に関連する財の数が多くなることがあ
る。ある財の需要は、関連する財の特性と価格に依存するので、J 個の財を持つ demand system は、各点で
J 2 個の価格弾力性を持つ。つまり、原理的にはノンパラメトリック推定が可能であっても、実際には、利用
可能なデータに対して実用的な empirical model を得るために制約を課す必要がある。
2.7 Demand or utilities?
実証 IO で需要推定をモデル化する場合の最も一般的なアプローチは、消費者の効用を特定することから始
まる。需要推定の主な目的は、需要量が価格やその他の観測変数の ceteris paribus の変動にどのように反応
するかを定量的に表現すること。消費者の効用最大化を考えるアプローチの利点としては、比較的少数のパラ
メータで多くの財(したがって、多くの自他価格弾力性)の需要を表現できること(e.g., Berry (1994))。消
費者レベルでは、効用関数を通じてより容易に定式化できるような制約や対称性条件を課したいと考えること
が多い。
そのような制約の例としては、次のようなものがある。
• 与えられた財の集合に対する選好の異質性は、財の特性に対する消費者の嗜好の異質性から部分的に生
じるという仮定
• 財 j の特性の変動は、他の財に対する相対的な財 j の魅力を変えるが、他の財の組の相対的な魅力は変
えないという仮定
• 他のすべての条件が同じであれば、各消費者は、財の名称に関係なく、どのような財特性の組(e.g., 価
格と品質)の間でも、単一の限界代替率を持つという仮定
このようなタイプの制約は、ネガティブな側面もあるがそのシンプルさと柔軟性について適切なバランスを提
供する可能性がある。
6
3 Discrete choice demand
離散選択モデルではアウトサイドグッズを定義することが重要で、定義しないと需要の価格弾力性が常に 0
になってしまう。例えば、保険市場ですべての保険の価格が等しく 2 倍になった場合でも保険に契約する家計
の数には影響がない。
3.1 Random utility models
• 消費者 i にとって利用可能な inside goods を j = 1, . . . , Ji . j = 0 でアウトサイドグッズ。
• Xi を観察できる属性の集合とし、消費者 i について、利用可能な財について、市場について、また分析
者にとって観察できないような属性を含む
• 消費者の選択集合は Ji , Xi によって決定される
• 消費者 i が財 j を購入することから得られる間接効用を uij とする
• 消費者 i は全ての財に対する自らの効用を知っており、最も効用が高くなる財を選択すると仮定(顕示
選好)
選択集合 (Ji , Xi ) を所与としたとき、それぞれの消費者の効用ベクトル (ui0 , ui1 , . . . , uiJi ) は i.i.d. で Fu (· |
Ji , Xi ) に従うとする。
効用は序数的な概念で、その値自体には意味がない。そのため、一般性を失うことなくそれぞれの消費者の効
*3
用の location と scale を基準化することができる。(Only differences in Utility Matter)
また、uij = uik for j ̸= k がとなる確率は 0 と仮定する。
消費者 i の選択ベクトルを (qi1 , . . . , qiJi ) とする。ここで、
qij = 1{uij ≥ uik ∀k ∈ {0, 1, . . . , Ji }}
である。よって、消費者 i が財 j を選択する確率は以下の通り。
sij = E[qij | Ji , Xi ]
Z
=
dFu (ui0 , ui1 , . . . , uiJi | Ji , Xi )
Aij
ここで、
Aij = (ui0 , ui1 , . . . , uiJi ) ∈ RJi +1 : uij ≥ uik ∀k .
例えば、Ji = 2 で考える。財 j の価格を pj とすると、
uij = µij − pj for j > 0.
ここで、(µi1 , µi2 ) は分布 Fµ (·) から独立にドローされるとする。また、normalization のために ui0 = 0 とす
る(アウトサイドグッズの効用を 0)。
*3
Train (2009), p19-28. 参照
7
消費者 i による各財の選択確率は、Fu (·) によって各 region に割り当てられる確率(probability measure)
に対応すると考えることができる。
3.2 The canonical model
離散選択モデルでは、市場 t で消費者 i が財 j を消費することから得る効用関数形について以下の仮定を
おく。
uijt = xjt βjt − αit pjt + ξjt + ϵijt
for j > 0
(3.1)
ここで、
• j ∈ Jt :Jt は inside goods の集合
• xjt ∈ RK :xjt は財の属性 K 次ベクトル*4
また、
ui0t = ϵi0t
(3.2)
としてアウトサイドグッズ j = 0 からの効用を基準化する。
• 市場 t = 1, . . . , T は、時間的・地理的に分けられる
• 利用可能な財の数を Jt = |Jt | とする
• ξjt は消費者間で共通の、j に特有な属性を表していて、例えば、ブランド力や CM による企業イメー
ジなど
• 高い値の ξjt は市場 t の消費者にとって平均的な taste が高いことを示している
以下、xt = (x1t , . . . , xJt ,t ), pt = (p1t , . . . , pJt ,t ), ξt = (ξ1t , . . . , ξJt ,t ), Xt = (xt , pt , ξt ) とする。
通常、pt と ξjt は相関すると考えられる。なぜなら、市場 t の財 j の均衡価格は xt と ξt の全ての要素に依存
すると考えられるため。また、均衡価格は潜在的な限界費用へのショックによって影響を受け、これ(潜在的
な限界費用へのショック)は観察できない需要へのショックと相関すると考えられる。
*4
xjt の最初の要素は 1 で、ξjt の平均を捉えていると解釈できる。
8
財の属性 xt は外生だと仮定されるが、これは essential な仮定ではなく、良い操作変数があればいい(そんな
になさそう?)
。
ϵijt については、以下のような仮定が置かれる。*5
• i.i.d. draw from 第一種極値分布(ガンベル分布)*6 :mixed multinomial logit model を導出できる
• i.i.d. draw from 正規分布:mixed multinomial probit model を導出できる
mixed は、観察される・されない属性の間での限界代替率を反映するパラメータ αit , βit の、消費者間での
異質性を表現している。
mixed logit の場合、選択確率(マーケットシェア)を以下の式の通り得る。
Z
sjt =
exjt βit −αit pjt +ξjt
PJt x β −α p +ξ dF (αit , βit ; t)
it kt
kt it
kt
k=0 e
(3.3)
ここで、F (·; t) は市場 t における (αit , βit ) の同時分布で、消費者の選好パラメータ (αit , βit ) は random
coefficients と呼ばれる。
ランダム係数ベクトル βit のそれぞれの要素 k は以下の通り。
(k)
(k)
(k)
βit = β0 + βv(k) vit +
L
X
(l,k)
βd
dilt
(3.4)
l=1
ここで、
(k)
(k)
• β0 :xjt に対する全ての消費者で共通の選好パラメータ
• dilt :個人 i の属性で、これの分布は既知とする。i.e., dilt ∼ Ft (d).
(k)
• vit :pre-specified distribution(正規分布など)に従う確率変数。i.e., vi ∼ G(v).
(l,k)
• βd
(k)
(k)
(k)
and βv :異なる属性 dit or 異なる選好ショック vit を持つ消費者間での、製品属性 xjt に対
する選好の度合い
(k)
dilt と vit の違いは分布が既知であるかどうか。例えば、車への需要を考えた時に、家族がたくさんいる人は
より大きい車への選好パラメータの値が大きくなると考えられる。家族の数は公的データから入手できる場合
もあるのでそのときには分布が既知。こうした実際の分布は消費者間の潜在的な選好の異質性を捉えることが
できる。その一方で、車の燃費に関する選好パラメータ(の分布)は分析者にとってはわからない。そのた
(k)
め、この潜在的な選好の異質性は、なんらかの分布を仮定して、vit によって捉えると解釈する。
価格に関する個人 i ごとの選好パラメータ αit は以下の通り定式化される。
0
ln(αit ) = α0 + αy yit + αv vit
ここで、yit は所得などの、価格反応に影響を与えると仮定される消費者固有の尺度。yit は部分的に、もしく
はほとんど全てが dit と被っている。
*5
*6
ϵijt の独立性は mixed probit model で外される。
x−µ
第一種極値分布に従う確率変数 X の分布関数 F は、F (x) = exp{− exp{−( η )}} となる。
9
3.3 Why random coefficients?
ランダム係数 (αit , βit ) を用いるモチベーションは、ランダム係数ではない場合を考えてみることでわかる。
uijt = xjt β0 − αpjt + ξjt + ϵijt
(3.5)
δjt = xjt β0 − αpjt + ξjt
(3.6)
uijt = δjt + ϵijt
(3.7)
ここで、
とすると、
δjt は mean utility と呼ばれ、*7 個人間で異ならない効用の要素。財の選択確率は、平均効用のみに依存し
ていることがわかる。また同様に、価格弾力性が平均効用のみに依存している。
このモデルでは、財 j の自己価格弾力性が財 j の価格と選択確率のみによって決まり、財 l の価格 pl が変化
した時の財 j の交差価格弾力性は財 l の選択確率と価格だけに依存し、財 j の属性や選択確率には一切依存し
ない。また、同じ選択確率(マーケットシェア)の財は同じ価格弾力性で、同じマークアップ率で、交差価格
弾力性が全て同じになる。⇒ 財の間の代替性を捉えられていないため、とても問題があるのではないか。
ランダム係数のもとでは、マーケットシェアが同じ 2 つの財(例:トラックとミニバン)があったときに、
その財の属性を考慮することができるので、第 3 の財(ファミリー向けての SUV)に対する価格弾力性の予
測値も全く異なったものになる。したがって、ランダム係数は差別化された財の key dimensions に沿った消
費者の選好の異質性を捉えることができる。
In practical:
xt にどの変数を含めればいいか問題がある。めっちゃ多い数のランダム係数によって消費者の異質性を捉
えようとすると impricise な推定の可能性がある。Gillen et atl. (2014) と Gillen et al. (2019) は xt を large
data set から data-driven に選ぶ方法を提案している。Economic model から考えられる、消費者の代替パ
ターンを決定するのに重要な変数を選ぶことがよさそうである。ほとんどの場合で、観察される (xt , pt ) の全
ての要素を入れるのは適切ではない。操作変数と識別に関する議論をする section で再度この issue を考えて
いる。
*7
E[ϵijt ] ̸= 0 の時、E[uijt ] = E[δjt ] + E[ϵijt ] ̸= E[δjt ] となることに注意。必ずしも効用の期待値を意味するわけではない
10
Appendix.A 多項ロジットモデル:選択確率の導出
以下、Train (2009) に依拠。消費者 i が財 j を消費することから得る効用を
uij = Vij + ϵij
とする。ただし、簡単化のために市場 t のインデックスは落としている。Vij が分析者にとって観察できる要
因で、ϵij が観察できない要因。
ϵij が i.i.d. で第一種極値分布に従うと仮定すると、分布関数と確率密度関数は
F (ϵij ) = e−e
−ϵij
−ϵij
f (ϵij ) = e−ϵij e−e
となる。消費者 i が財 j を消費するとき、財 j から得られる効用が財の選択集合の中で最大になっているはず
(顕示選好の仮定)
。よって、消費者 i が財 j を選択する確率は以下の通り。
Pij = Pr(Vij + ϵij > Vik + ϵik ∀k ̸= j)
= Pr(ϵij < ϵij + Vij − Vik ∀k ̸= j)
ϵij を所与として考えると、この確率は ϵij の分布関数になっていて、Pij は exp(− exp(−(ϵij + Vij − Vik )))
を ∀k ̸= j について掛け算を取ったものとなる。ϵ は i.i.d. なので、ϵij が所与のとき、以下の式が成立する。
Pij | ϵij =
J
Y
exp(− exp(−(ϵij + Vij − Vik )))
k̸=j
もちろん ϵij は所与ではないので、ϵij の取りうる値について、密度で重み付けしたものを足し合わせる(積分
する)ことで、財 j の選択確率を計算することができる。*8
Z
Pij =

∞

−∞
Z
∞

exp(− exp(−(ϵij + Vij − Vik ))) f (ϵij )dϵij
k̸=j


=
J
Y
−∞
J
Y

exp(− exp(−(ϵij + Vij − Vik ))) e−ϵij e−e
Pij =
Z
∞


J
Y
−∞
k
−∞
∞
=
−∞
*8
なぜなら、Pij | ϵij =
−s
∞
∞

exp(− exp(−(s + Vij − Vik ))) e−s e−e ds
k̸=j
=
Z
J
Y
−∞
=
Z
dϵij
k̸=j
以下では、表記の簡単化のために s = ϵij とする。
Z
−ϵij
!
exp(− exp(−(s + Vij − Vik ))) e−s ds
exp −
J
X
!
e
−(s+Vij −Vik )
k
exp −e
P(Pij and ϵij )
f (ϵij )
−s
J
X
e−s ds
!
e
−(Vij −Vik )
e−s ds
k
∫
となるので、 Pij | ϵij f (ϵij )dϵij =
11
∫
P(Pij and ϵij )dϵij = Pij となるため。
dt
ここで、t = exp(−s) とおくと、 ds
= −e−s ⇔ dt = −e−s ds となる。
また、s が −∞ → ∞ のとき t は ∞ → 0 となる。以上より、
Z
Pij =
0
∞
Z
exp −t
!
e−(Vij −Vik )
k
∞
=
J
X
exp −t
0
J
X
(−dt)
!
e
−(Vij −Vik )
dt
k
#∞
PJ
exp(−t k e−(Vij −Vik ) )
=
PJ
− k e−(Vij −Vik )
0
1
= PJ
−(Vij −Vik )
k e
"
eVij
= PJ
.
Vik
k e
財集合にアウトサイドグッズを加え、全部で J + 1 個の財について考える。ここで、J + 1 個の選択肢のうち、
J 個が決まれば残りの J + 1 個目は自然と決まる。j = 0 を基準(アウトサイドグッズ)とし、上式の分母分
子を eVi0 で割ると、
Pi0 =
Pij =
1+
1+
PJ
1
Vik −Vi0
k=1 e
Vij −Vi0
e
PJ
k=1
eVik −Vi0
j = 1, . . . , J
となる。アウトサイドグッズからの効用は誤差項からのみ得られると仮定していたことを思い出せば、Vi0 = 0
なので、財 j の選択確率は以下の通りになる。
Pi0 =
Pij =
1+
1+
1
PJ
k=1
Vij
e
PJ
k=1
eVik
eVik
j = 1, . . . , J
例えば、Vij = xj β0 − αpj + ξj とすれば、消費者 i が財 j を購入する確率は以下の通りになる。
Pij =
exp(xj β0 − αpj + ξj )
PJ
1 + k=1 exp(xk β0 − αpk + ξj )
導出できた!
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Appendix.B 多項ロジットモデル:IIA
説明は、上武康亮, 祐太遠山, 直樹若森, 安虎渡辺 (2021). 『プライシングの真髄は代替性にあり』. 実証ビ
ジネス・エコノミクス. 日本評論社. に依拠。
財 j のマーケットシェア sj は、財 j の選択確率と等しい。そこで、マーケットシェアを
exp(δj )
s j = PJ
k=1 exp(δk )
と表現する。このとき、任意の財 j と l のマーケットシェアの比率は以下の通り。
exp(δj )
sj
=
sl
exp(δl )
これは、財 j と l を選ぶ比率は、他の第 3 の財や財の属性とは無関係になることを示しており、これを無関係
な選択肢からの独立性(independence of irrelevant alternatives; IIA)と呼ぶ。
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