原子 力 発 電 所 にお け る タ ーボ 機 械 …(1) 1 〔展 望 ・解 説 〕 原 子 力 発電 所 にお け る ター ボ機 械 片 岡 秀 郎* 1.は じめ に この た び編集委 員会 の方 か ら執筆 の栄 を賜 り、 大変 名誉 な こ とと受 け止 め てお ります 。 これ も良 い機 会 と 管理 に携 わ ってい る当社 社 員 にア ンケー ト調 査 を行 い 飾 りの無 い意 見 を以下 の とお り抽 出 しま した。 3‑1タ ー ビン 発電 所 で用 い てい るター ボ機械 の種類、機 能 、性 能 、 (1)保 守性 ・原 子 力 タ ービ ンは蒸 気 条件 が悪 いため 、低圧 ター 並 び に保 守 運用上 の技術 的 課題 等 について忌 憚 の ない ビ ン翼 のエ ロージ ョン等 が あ り保守 に費用 がか か 考 え ま して電力 会社 とい うユ ーザ ーの立場 か ら原 子力 意見 を ま とめ ました。 当社 初 、9電 力会社初 の原 子 力 発電 所 で あ る美 浜発電所1号 機 が運 転開始 した のが 昭 和45年11月28日 で あ り昨 年 の11月 で25年 が 経 過 して お ります 。 この間、定期 的 な分解 点検、消 耗 部 品 の取 替 、補 修 は もとよ り経 年劣 化 が認 め られ る機 器 につ い ては新 設計 機 器への取 替 を行 い 、設備信頼性 を維 持 し て きてお ります。 これ ら保 守 管理 を行 って きた な かで 感 じてお ります点 につ き ま して以 下 に述べ させ て頂 き る。 (2)振 動 ・軸 振 動 につ いては その 機器 の特徴 が重 要 だ と思 う ので 、経 験が 必要 とな る。 (3)材 料 ・円板 の翼 溝部材 質が 強 度上 弱 い。 (4)寿 命診 断 ・応力 が集 中す る円板 翼 溝 の ス ンプ等 に よ り、 ロ ー タの寿命 診 断 を行 っ て いるが 、ロ ー タの 非破壊 検 ます。 査 で評価 出来 ない状 態 にあ る。 2.原 子 力発 電 所 に お け る ター ボ機 械 の 種 類. 機 能 ・性 能 当 社 の 原 子力 発電所 は 加 圧 水型 軽水炉(PWR)で あ り、放 射線 管理 区域 で あ る1次 系 と基本 的 に火 力発 電所 と同等 設備で ある2次 系 に分 か れます。 特 に 原子 力発 電所 で は品質管 理上 原子 力仕 様 と して機 器 を採用 して い る た め 信 頼 性 は 高 くな って い ま す 。 以 下 に PWRで 使 用 され てい る主 な ターボ機械 の 仕 様 を一覧 表 に ま とめ ま した。 (5)不 具 合事例 及 びそ の対 策(案) ・高 圧 ター ビン車 室 の 水平 継 手 面(グ ラ ン ド部 付 近)エ ロージ ョンに よ り、漏 えい箇所 が あ った た め 肉盛 補修 を実施 した。 ・ロ ー タ翼環 はめ合 い部 に応力腐 食割 れ等 が発 生 し たた め一体化 ロー タの採 用。 (6)経 済 性 ・ロ ー タの非破 壊検 査 で寿 命診 断が 出来 ない な らば 非 破壊 検査 を止 め規 定年 数 で翼 の抜 き取 り検 査 を 実 施 す る診 断方法 に切 替 、定期 検査 費 用の削 減 を 3‑原 子 力 発 電 所 に お け る タ ーボ 機 械 の 技 術 的 課 題 及び 今 後 期 待 す る点 先 に も述 べ ま した通 り、ユ ーザ ー として の忌 憚 の な い意 見 を述 べ させ てい た だ くため 、現場 で 実 際 に保守 *関 西 電 力(株)原 チ カ ・火 力 本 部 原 稿 受 付 日 平 成7年9月28日 した方 が 良いの で はな いか。 (7)制 御 性 ・現 在 、高圧EHガ バ ナ等 が主 流で あ るが古 い プ ラ ン トで は300lb油 圧 式 ガバ ナで制 御 され て お り微 妙 な油圧 変動 に左 右 され る。 ター ボ 機 械 第24巻 第1号 7 2 原子 力 発 電所 に お け る タ ーボ 機 械 …(2) 表1 表2 表3 8 1996年1月 原 子 力発 電 所 に お け る タ ー ボ機 械 …(3) 3 表4 3‑2デ ィーゼル 発 電機 (1)保 守性 ・機 器 の冷却水 系 に海 水 を使用 して い るため 、腐食 対 策が 問題 とな って い る。 (2)異 常 診断 ・過 給器 には異常 を早期 に検知 す るす べ が無 く、給 気 圧力 の低下 が発 生 してか らしか異 常 を発見 で き ない。 ・騒 音 、振動 、温度 が 高 いた め運転 中 に診 断 で きな いo (3)寿 命 診断 ・各 歯車 のバ ックラ ッシ ュ、軸 受 けの隙 間測定 に よ 好 ま しくな い。 ・作 業 スペ ー スが狭 くメ ンテナ ンス しに くい 。 (2)汎 用性 の拡 大 ・機 器 固有 の部 品が 多 く拡大 しに くい 。 ・原 子力用 に開発 され たポ ンプ を使 用 してお り汎用 性 が ない。 ・2次 系 ポ ンプは各発 電 所で仕 様が ば らば らで部品 の融通 が利か な い。 (3)振 動 ・固 有 のポ ンプに振動 の 問題 があ る。 ・基礎 台盤 ベ ースの健 全性 の確 認方 法 の確 立 が望 ま り診 断 して い るが 、 クラ ンク シ ャフ ト等 鋳物 で製 れ る。 ・振動 調整 を要 す るポ ンプが あ る。 作 してい る機器 の健全 性が確 認 されて い ない。 ・竪 型で頂 部 にな る程、 簡易診 断装 置 で異 常 を示す 3‑5ポ ンプ (1)保 守性 ・輸 入 ポ ンプにつ いて は 、 イ ンペ ラ と主軸 が隙 間 ば めで あ り定期検 査 ご とに取 り外 さな けれ ばな らず 、 分 解点検 に時 間 を要 す る。 ・1次 系 ポ ンプは 、 ほ とん どが 部屋 の中 に入 って い が 判断 で きないポ ンプがあ る。 ・試 運転 時 は ミニマ ム フ ローラ イ ンを使 用 す るが一 層振 動 が大 きくなるポ ンプがあ る。 (4)軸 受 け ・すべ り軸 受 けの メ タル剥離 が多 く発生 して いる。 ・各部 隙 間寸法 の管理 値 が厳 しい ため3回 程度 の分 るが ポ ンプの メ ンテ ナ ンス も同 じ部 屋 で行 って お 解 点検手 入れ を実施 す ると取 替基 準値 に なるため り非常 に狭 い。 ・充 て ん/高 圧 注入 ポ ンプ は内部 ケー シ ングが 串型 各 ポ ンプ主軸等 の取 替 が頻繁 とな る。 ・異常 の有 無 に関係 な く定期 的 に取 替 を実 施 してお で 作業 時間 を要 し、 ウエ ア リング部 の組 立調 整等 り長時 間運転可 能 な軸 受構造 で あれ ば分 解点検 イ で苦労 して いる。 ン ターバ ル を長 く出来 る。 また 、軸受 け は取 替回 ・付 属 配管 の位 置 が 悪 く作 業 性 が良 くな い。(軸 受 数 が多 くなる と軸受 箱 または軸 との は めあ いがな 冷 却水 配管 、軸受 潤滑 油 配管 等) ・メ カニ カル シー ル を多用 してい るが異常 の有 無 に くな り トラブルの元 にな る。 ・海 水系 のポ ンプで カ ッ トレス軸受 け の 内面 ゴムの 関係 な く定期 的 に取替 を実施 してお りコ ス ト的 に 剥離 が み られ る。 ター ボ 機 械 第24巻 第1号 9 原子 力発 電 所 にお け る タ ー ボ 機 械 …(4) 4 表5 10 1996年1月 原子 力発 電 所 に お け る タ‑ボ 機 械 …(5) 5 表6 ター ボ 機 械 第24巻 第1号 11 原 子 力発 電 所 に お け る ター ボ機 械 …(6) 6 (5)材 料 ・海水系 のポ ンプ は何 れ も主軸 や イ ンペ ラに海 水 に 数多 く実施 して い る。 キ ー溝 寸 法が増 大 しないた よる腐 食が見受 け られるため 、海 水 の耐腐食 性を (10)設 計 ・輸入 ポ ンプ の イ ンペ ラ配列 は国 産品 とは違い セル 向上 させ る必要 が ある。 ・復水系 ポ ンプに て流速 の早い 多段 ポ ンプの インペ ラや案内羽根 に はエ ロー ジ ョンが 発 生す る。 .高 締付 け トル クの影響 に よ り、 ケ ー シ ングボ ル ト 用座 金に変形 及 び 内部ケ ーシ ング締付 け用六角 ボ ル トの穴部の 変 形が 発生 しや す い。 ・海水 ポ ンプ等 耐 海 水性 材料(SUS316)を 使用 し てい るが一部 腐 食 が発生 して い る。 ・海水ポ ンプの 保 護管 は頻繁 に取替 が 必要 であ り材 料 変更が必要 で あ る。 め にキ ーの みが摩 耗す るよ う改 良 して いる。 フバ ラ ンス に な ってお らず ス ラス ト力 はバ ラ ンス ス リー ブの みで 受 けてお り、高 い応 力が ロ ックナ ッ ト部 で 発生 してい る。 ・竪型 ポ ンプは振動 が高 い。 (11)経 済 性 ・竪型 ポ ンプは分 解点検 す る時必 ず モ ー タの取 り外 しが必要 とな るた め横 型 ポ ンプ に した方 が ポ ンプ 側 か らみれ ば コス ト低 減 にな る。 ・汎 用品 を多 用す れ ば コス トは下 が る。 (6)品 質管理 ・現 場での初 めて の 分解点検時 にボ ル トナ ット等 の (12)制 御性 ・ター ビ ン動 主給 水 ポ ンプは油圧 系統 で 制御 して い ね じ部での焼 き付 きが多い。 これ は、工 場組立 時 るが構造 が 複雑 な うえ 、制 御 用油圧 オ リフ ィスに ね じ山返 り除去 の 手入れ不足 に起 因す る不具合 が 異 物が 詰 ま った だけで ポ ンプ運 転 に支 障 を来す た 多い。 ・充て ん/高 圧 注 入 ポ ンプイ ンペ ラボ ス部 にクロム メ ッキが して あ り、PTを 行 う と線 状 指示 が 出 る ため欠陥指示 と区別 しに くい。 (13)放 射線 管 理 ・串型構 造 の ポ ンプは分解 点検 に作 業 時 間を要 し、 被ば く線 量 が 多 い。 (7)系 統の一部 と考 えた時 の問題 点 ・循環水管 に循 環 水 ポ ンプ用潤 滑 水 の取 り出 し配管 が接続 されて い るが 、取 り出 し口 に貝が多数付 着 、 4.ま とめ 21世 紀 を迎 え る に当た って電気 料金 制度 の改 正 に よ 潤滑水 の供給 に支 障 を来す事 例 が あ る。 プラ ン ト る インセ ンテ ィブ規制 の導 入、事 業規 制 の見直 しに よ 運転 中は循環 水 ポ ンプを停 止 出来 ず 、除貝作 業 に る独 立系 電 気事 業 者(IPP)の 危険 を伴 う。 だ電気事業 法 の改正 が予 定 され てお り、電 力業 界 を取 新 規参 入 等 を盛 り込 ん (8)異 常診断 ・簡易診断装 置 の導 入 に より、 ポ ンプの点検周 期 を り巻 く環境 は変革 期 を迎 えてい ます 。当社 といた しま 長 くしよ うと して いるが、簡易 診 断装 置の熟 練者 て取 り組 んで い る ところで あ り、原 子力 に おいて も例 が お らず診 断結 果 の信頼性 に欠 け る。 外 で はあ りませ ん。 その よ うな中で21世 紀 を展 望 して (9)不 具合事 例 及 び その対 策(案) ・竪型 ポ ンプの イ ンペ ラリングが 溶接 止 め されて い して も効率 化 に 向 けコス ト低 減努 力 を全社 一 丸 とな っ の ターボ機 械 に期 待 す る ところ と致 しま しては、 原子 力発電所特 有 の仕 様 を満足 し、 高 い信頼性 を維 持 しつ 陥 が発 見 され、 つ、 よ り低 価 格 化に努め てい ただ くこ とで あ ります 。 その都度溶 接 補 修 してい る。 ・イ ンペ ラキ ー はめ合 い寸法が 大 き くなるこ とに よ 原子力発 電所 は安定安 全運 転 を弛 まな く続 け るこ とが るが 、毎 回分 解 点検 す る とPT欠 り段付 きキ ー使 用 やイ ンペ ラ ・主軸 取替 の処 置 を 12 め、電気 制 御 の方 が良 い。 1996年1月 命題 とな って お り、協 力体 制 を一段 と強 化 して い きた い と考 えて お ります 。