本書は著作物であり,著作権法により保護さ れています. 本書の一部,または全部を著作権者に断りな く,複製または改変し他人に譲渡すること, インターネットなどに公開することは法律に より固く禁止されています. 違反した場合は,民事上の制裁および刑事罰 の対象となることがあります. カラー・プリビュー 水道手元ライト 水道水でペルトン水車を回し LED を点灯させた (第 10 章) 水 (b)水車の構成部品 (a)水道水の圧力で高輝度 LED を点灯 地域のシンボル 「おかえり」看板 (c)LED の駆動基板 地域住民と一緒に設置した 40W 水車で「おかえりなさい」と LED を点灯させる.水車は山の中腹で住民や古里を離れた人達を待ち続ける(第 14 章) (b)地元住民の協力を得て完成 (a)40W 水車 (c)帰省,帰宅する人を温く迎える カラー・プリビュー 温度差発電で聞くAMラジオ たき火で沸かしたお湯でコーヒーを飲みながら ラジオを聞いた(第 15 章) この下に 炭火コンロがある ペルチェ素子 が挟んである (b)基板 ラジオ (a)温度差から電力を得るラジオ 田んぼの水位見張り器 (a)水位を観測 (c)予備実験…地熱で高輝度 LED を点灯させてみた 水位センサで計測した値にあわせて LED の点滅パターン が変わる(第 19 章) (b)LED の点滅で水位を知らせる みそ造り装置 みそを適温に保ち発酵を促す(第 22 章) (a)米を一晩水に漬け,水を切る (c)蒸した米をもち箱に入れる (b)米 2 升を約 45 分蒸す (d)市販される麹菌 (e)出来上がった麹 ゴルフ・トレーナ (f)麹室で発酵中 電磁誘導を利用してヘッド・スピードや飛距離を予想する(第 4 章) 太陽電池 スイングの 速さをLED で表示 (a)外観 (b)裏から 負電圧生成 コンパレータ OPアンプ タイマ (c)基板 (d)人工芝の裏側に取り付けたコイルで速度を検出 カラー・プリビュー 山間向け揚水装置 湧き水を 5m 高いタンクに持ち上げ,給湯器に必要な水圧を 確保した(第 18 章) (a)水圧を確保するため 5.6m 高い場所に設置した給水タンク (b)落ち葉などをろ過する石 (c)給湯器が使えるようになった (d)全自動洗濯機が使えるようになった 街灯 水車出力は 10W! 街灯を夜通し点灯できる(第 13 章) (b)地元住民と一緒に水車を設置 (a)夜道を照らす街灯 (c)ハブダイナモ式 10W 水車 (d)発電中の水車 2 次電池の充電器 リムダイナモ 3 個で作る 0.2W 風車から電力を取り出す(第 8 章) 倍電圧整流回路 ダイナモ (a)3 基の風車を搭載した風力発電機 DC−DC コンバータ (b)リムダイナモを風車に取り付ける ための金具 (c)充電コントローラ ビニル・ハウス内の温度伝送装置 手作り微弱無線装置を 15m 間隔で複数設置.複数点の温度を一気に把握できる(第 20 章) (a)ビニル・ハウス内の温度を均一にしたかった (c)温度管理がしっかり出来たため形の良いデコポンができた (b)無線伝送装置を手作りした ビニル・ハウス内 の温度表示装置 複数点の温度を 1 画面に表示す る(第 21 章) カラー・プリビュー ミニ植物工場 405 個の高輝度 LED やエアコン,50W の土壌ヒータで作る(第 7 章) 太陽電池 (a)保温効果の高い省エネ工場を手作りした (b)苗を育てる LED 照明 (c)LED 駆動回路 (d)どんどん育つ苗 電子番犬 電力を電気二重層キャパシタに蓄えボイス・レコーダで鳴き声を再生した(第 1 章) 焦電センサ OPアンプ 電気二重層 キャパシタ フレネル・ レンズ (a)電子番犬の住むソーラ・ハウス カラス撃退器 (b)フレネル・レンズで検出距離を 2 → 5m に (c)犬の声を増幅するパワー・アンプ 回路 音声録音・再生 IC に記録した警戒音をトランペット・スピーカで鳴らす (第 2 章) 音声録音再生IC タイマ ⅠC555 太陽電池 スピーカ (a)外観 (b)春を待つぶどう園と主人 (c)メイン基板 キャンプ用汎用電源 河原でテレビを観たりパソコンを使ったりした(第 11 章) (a)数 W 水車 (b)キャンプで使用中のようす 人力による 2 次電池充電器 走行中に充電し,夜間はテール・ランプを明 るく光らせる(第 17 章) コンパレータ LEDによる テール・ランプ スイッチング・ レギュレータ 充放電制御回路と 発電状況表示部 コンパレータ (b)発電のようすがわかる LED バー表示回路 OPアンプ (a)自転車に取り付けた充電器とテール・ランプ (c)倍電圧整流回路と充電量検出回路 風で光る LED 看板 磁束密度が高く極数が多いステッピング・モータを 利用して作った 1W 風車(第 9 章) ステッピング・ モータ (b)市販のステッピング・ モータを発電機として 利用 整流 LEDによる メッセージ (a)1W 風車で LED を光らす (c)基板 10000μF電解コンデンサ 74本の LEDへ カラー・プリビュー 降雨警報機 結露センサを使って手作りした降雨センサで雨を知らせる(第 3 章) コンパレータ 太陽電池 DC−DC コンバータ (b)結露センサ 降雨センサ タイマ ⅠC556 (c)基板 (a)物ほし竿に取り付け,雨が降るのを待つ 終夜灯 自動車用バッテリに蓄え,夜間パワー LED や蛍光灯を点灯させる(第 5 章) コンパレータ (b)使用したパワー LED インバータ回路 照度検出回路 (c)基板 (a)蛍光灯モードで点灯中 燃料電池で聞くAMラジオ エタノール燃料電池や水素燃料電池の実力を確か めた(第 16 章) エタノールと水 AMラジオ 電気2重層キャパシタ 太陽電池,水車,風車,火,人力を 利用してエネルギーを自給自足 作る自然 エレクトロニクス 漆谷 正義 著 本書は月刊「トランジスタ技術」2005 年 8 月号〜 2006 年 10 月号に連載した「自然エネルギーの活用にチャ レンジ」と,2009 年 8 月号〜 2010 年 1 月号に連載した「電気で農業と農村生活を快適に!」,2010 年 2 月号〜 2010 年 6 月号に連載した「エコ時代の自然エネルギ活用日記」の記事に加筆・修正を加えたものです. 3 はじめに ● エネルギーを自給自足できる本書の特徴 ① 部材はすべて個人で購入できる 製作するために使用したほとんどの材料は,個人で購入できるものを利用しています.筆者も実際に, ネット通販とホームセンターで材料を揃えました. ② マイコン要らず,学生やアマチュアにも作れるシンプルな回路 本書は自然エネルギーを利用した装置や省エネルギーを実現する装置を,自分の手で作ることによっ て,自然エネルギーの性質,利用方法,電気との相性,省電力の大切さなどを理解していただくことを 念頭に置いています.本書の読者には,学生やアマチュアも対象としているので,巻末の応用製作編 (第 5 部)以外はマイコンを利用していません. ③ 発電用デバイスが目白押し 自然エネルギーには,太陽の光と熱,風力,水力,地熱などたくさんあります.広い意味では燃料電 池,人間の力などの無公害パワーを自然エネルギーと考えることもできます. 本書ではこれらのエネ ルギーを電力に変換するために,太陽電池や自転車用発電機を利用します.また,本来は発電用のデバ イスではない模型用モータやステッピング・モータ,CPU の冷却に使われるペルチェ素子などといっ た電子部品も利用します. ● エネルギー利用の変遷 人類はエネルギーという宝を,さまざまな技術を駆使して引き出してきました.原始時代は生きるた めに薪を燃やして暖を取ることから始まりました.古代では奴隷労働により生産を確保していました. そして中世では馬の力や風車,水車という永い時代を経て,ようやく 19 世紀になって石炭エネルギー を蒸気機関で動力に変えるという一大事業を成し遂げました.これにより生産力が飛躍的に増大し,人 口も増加しました.そして,20 世紀は石炭に代わって石油の時代となり,内燃機関が発達し,自動車 と飛行機によって全世界が一つになりました. 外燃機関である蒸気機関や,内燃機関であるガソリン・エンジン,ターボ・ジェットなどを熱機関と 言います.熱機関は,高熱源から低熱源に熱を移動させてエネルギーを取り出すことが特徴です.この 低熱源側では,熱の排出が原理的に避けられません.従って,効率は 50 %以下になります(カルノー効 率と言う).そして悪いことに排ガスが発生するのです. 21 世紀は,人口増に伴うエネルギー過剰消費と,排ガスなどに起因する地球温暖化を食い止めて, 人類の生存を保証するという新たな課題が生まれました.熱機関に代わるものとしては電気を使った モータが有力です.そのエネルギー源として,第 3 のエネルギーである自然エネルギーそのものの活用 の時代に入ろうとしています. 4 はじめに ● エネルギーの有効利用は人類の責務 地球温暖化によって,このままでは人類の生存さえ危うくなっています.石油は枯渇の危機を迎え, 原油価格の高騰は止まりません.数十年前に起こった最初の石油危機のときに叫ばれた「省エネ,省資 源」は,今では定着して時代の流れになりました.21 世紀初頭の現在,これを一歩進めて,自然エネル ギーを有効活用することが人類の責務となりつつあります. 本書により,一人一人がエネルギーの大切さを実感し,自然エネルギーの活用と省エネルギー化へ の移行を起こしていただければ,これ以上の喜びはありません. 2011 年春 漆谷 正義 5 目 次 はじめに ――――――――――――――――――――――――――――――――― 3 ●エネルギーを自給自足できる本書の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ●エネルギー利用の変遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ●エネルギーの有効利用は人類の責務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 イントロダクション エネルギー 放置してたら もったいない ――――――― 15 ●太陽エネルギー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水のエネルギー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●風のエネルギー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●地熱は地球内部に蓄えられたエネルギー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●燃料電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●生物エネルギー(バイオマス) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●海洋エネルギー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●省エネと自然エネルギー活用は車の両輪 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ コラム エネルギーとは何だろう ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第1部 第1章 1-1 1-2 1-3 16 17 20 22 22 22 22 22 16 太陽光を活用編 3.2W 太陽電池,電気 2 重層キャパシタ,市販 IC レコーダで作る 電子番犬 ――――――――――――――――――――――――――― 25 餌代や散歩の手間がかからない犬が欲しい ――――――――――――――――― 25 ●必要な電力を電気 2 重層キャパシタに蓄える ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 番犬の回路を作る ―――――――――――――――――――――――――――― 26 ●曇天でも動作するように中型の太陽電池モジュールを選ぶ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●焦電センサ・ユニットの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●焦電センサ部の回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●電気 2 重層キャパシタの充電中は動作を停止する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ボイス・レコーダの入手とインターフェース方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●犬の吠え声を録音する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●パワー・アンプ部の設計とスピーカの選択 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 26 27 28 28 29 29 基板組み立てと犬小屋の製作 ――――――――――――――――――――――― 30 ●基板の組み立てとパターニング ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 ●犬小屋の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 第2章 2-1 2-2 2.4W 太陽電池,音声録音再生 IC,タイマ IC555,トランペット・スピーカで作る カラス撃退器 ――――――――――――――――――――――――― 33 カラスが巨峰をついばんでしまう ――――――――――――――――――――― 33 ●行列のできるぶどう園を訪ねる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 ● 1 年の労働を台なしにするカラス被害 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 ●仲間に警戒を呼びかける害鳥撃退器を作る! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 カラス撃退器の作り方 ―――――――――――――――――――――――――― 35 ●メイン回路(音声増幅回路を除く) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 ●鳴き声の間隔はタイマ IC で作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 6 目 次 2-3 ●音声増幅回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 ●鳴き声の録音方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 ●基板の製作とケースへの組み込み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 撃退器の成果 ―――――――――――――――――――――――――――――― 39 ●予定通りカラスは逃げた ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 ●およそ 500m 以内の犬が一斉にほえだした ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 第3章 3-1 3-2 3-3 0.4W 太陽電池,結露センサ,タイマ IC555,ニッケル水素蓄電池で作る 降雨警報機 ―――――――――――――――――――――――――― 40 ふとんを干しつつ昼寝をしたい ―――――――――――――――――――――― 40 結露センサと太陽電池を使う ――――――――――――――――――――――― 40 ●カタログ表記から太陽電池の出力を推定する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 ●結露センサを使って降雨センサを作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 ●雨を確実に検出するために結露センサを箱に入れる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 回路の製作と実装 ―――――――――――――――――――――――――――― 42 ●回路を駆動する 5V の電圧は DC−DC コンバータで得る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●抵抗値の測定はブリッジ回路で ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●警報はエッジ動作にしてセンサの乾燥を待つ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●警報音はタイマ IC で作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●部品のレイアウトと配線 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●大型の洗濯ばさみで警報器を固定する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第4章 4-1 4-2 4-3 第5章 5-1 5-2 42 42 43 43 44 44 1.6W 太陽電池,手作りコイル,ピーク・ホールド,3 秒タイマで作る ゴルフ・トレーナ ――――――――――――――――――――――― 46 スイング速度が定量的にわかれば素振りも楽しくなる ――――――――――― 46 電磁誘導を利用してヘッド・スピードを予測 ―――――――――――――――― 47 ●ゴルフ・ボールの飛距離はヘッド・スピードから予測できる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ピックアップ・コイルを人工芝に埋め込む ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●コイルの出力電圧は磁石の移動速度に比例する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ゴルフ・クラブに磁石を埋め込む ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 47 48 48 ●アナログ回路はレベル設計から始める ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●太陽電池を直列にして使うときの注意 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ピーク・ホールド回路とコンパレータを組み合わせる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●一定時間表示してから待機状態に戻す ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ユニバーサル基板を使って回路を組み立てる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ケースの製作と回路基板の収納方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 49 49 51 51 52 回路の検討と製作 ―――――――――――――――――――――――――――― 48 70W 太陽電池,パワー LED 3 個,自動車用バッテリ 4 個で作る 終夜灯 ―――――――――――――――――――――――――――― 54 入手性が良くなった大型パネルで屋外灯を作りたい ――――――――――――― 54 LED と太陽電池,蓄電池の選択 ――――――――――――――――――――― 54 ●門灯や街灯は終夜灯でなければならない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●パワー LED を使ったハイブリッド照明で消費電力を削減 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ソーラ・ハウスに使われている太陽電池を使用する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●大型ソーラ・パネルの設置と取り扱い上の注意 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●エネルギーの収支のバランスを取ることがポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●自動車用のバッテリは不向きだが使えないことはない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●蓄電池の容量設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 54 55 56 57 57 57 目 次 5-3 5-4 5-5 7 架台の製作 ――――――――――――――――――――――――――――――― 58 ●架台はソーラ・パネルとマッチしたデザインにする ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 ●太陽電池の最適角度は緯度によって異なる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 ●パワー LED を蛍光灯ブラケットに取り付ける ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 点灯制御回路の検討 ――――――――――――――――――――――――――― 61 ●太陽電池は高感度な照度センサになる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●照度検出回路はコンパレータで構成する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●蛍光灯は負性抵抗をもった放電管 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●インバータ用トランスを作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●トランスの巻き方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●トランジスタの選択 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●タイマ回路はCR で実現する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●全体の回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 62 62 63 65 65 65 66 基板の製作と実装 ―――――――――――――――――――――――――――― 66 ●回路の防水と架台への設置方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 ●市販のインバータ回路を使ってもよい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 ●消費電力低減が成功の秘訣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68 第6章 6-1 6-2 6-3 75W 太陽電池,高輝度 LED 60 個,300W ニクロム線 7 本で作る 育苗器 ―――――――――――――――――――――――――――― 69 農業の必須アイテムを安く作りたい ―――――――――――――――――――― 69 ●個人で植物工場を作ってみたい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 ●市販品は数十万 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 育苗器の作り方 ――――――――――――――――――――――――――――― 70 ● LED 照明で発芽と生長を促進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●土壌保温ヒータを作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●容器にヒータと土を入れる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●育苗器の電子回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●次世代型 CIS 太陽電池を使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 72 73 73 74 育苗器の成果 ―――――――――――――――――――――――――――――― 76 ●厳冬期でも 2 日で発芽! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 第7章 7-1 7-2 7-3 80W 太陽電池,高輝度 LED 405 個,エアコンで作る ミニ植物工場 ――――――――――――――――――――――――― 77 育苗器の成功を経て大きなものに挑戦したくなった ――――――――――――― 77 ●エアコンや LED 照明,太陽電池を取り付けた ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 ●育苗箱は 50W の土中ヒータだけで苗がすくすく ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 ● LED 照明はいろいろな波長を出せる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 ミニ植物工場の作り方 ―――――――――――――――――――――――――― 79 ●骨組みは木材で ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●断熱材を入れる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● LED をパルス駆動する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●太陽電池を LED 照明に利用した ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 80 81 82 ミニ植物工場の成果 ――――――――――――――――――――――――――― 83 ●省エネ達成… 1 ヶ月の電気代は約 2,800 円 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 83 ● LED は育苗に合う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 83 第 7 章 Appendix 7A-1 太陽電池のしくみと使い方 太陽電池を直列/並列接続する ――――――――――――― 84 ―――――――――――――――――――――― 84 8 目 次 7A-2 7A-3 7A-4 7A-5 7A-6 ●直列… 3 個つなぐと電圧が 3 倍に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 ●並列… 3 個つなぐと電流が 3 倍に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 太陽電池には日影対策が必要 ――――――――――――――――――――――― 85 ●直列…陽が当たらないと 0V に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 ●並列…電流は減るが電圧は減らない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 ●直列では出力がゼロにならないようにバイパス・ダイオードを入れる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 短絡電流と開放電圧と最大出力 ―――――――――――――――――――――― 86 ●短絡 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●開放 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● I −V 特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●太陽電池の出力はパネル面積に依存する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 86 86 86 太陽電池の出力の見定め方 ―――――――――――――――――――――――― 87 ● 30W 未満 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87 ● 30W 以上 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 太陽電池の特性を乾電池と比較する ―――――――――――――――――――― 89 ●電池の I −V 特性は直線的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 ●太陽電池は内部抵抗の値が変わる電池である ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 ●使い方によっては最大出力が得られない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 太陽電池の電力を 2 次電池に充電する ――――――――――――――――――― 90 ● 2 次電池を使えばいつでも電力供給可能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●バッテリ充電の際の注意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●容量が大きく安価な鉛蓄電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ニッケル・カドミウム電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ニッケル水素電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●リチウム・イオン電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●バッテリへの充電ノウハウ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ブースト充電とフロート充電とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●所望のパネルが入手できないとき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●太陽電池の購入先 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ コラム パルス充電に対応した鉛蓄電池充電コントローラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 91 91 92 92 92 93 93 94 96 94 第 2 部 風力を活用編 第8章 8-1 8-2 8-3 0.2W 風車,リムダイナモ 3 個,倍電圧整流回路で作る 2 次電池充電器 ―――――――――――――――――――――――― 97 ●実際の風力発電設備は巨大で出力も大きい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 0.2W 風車の製作 ―――――――――――――――――――――――――――― 98 ●小型風車の発電パワーはとても小さい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 ●工作に必要な工具をそろえよう ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 ●発電機に風車を取り付けるためのフランジを作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 ●自転車発電機を台座に取り付けられるように改造する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99 ●羽根のピッチを決めるひねり金具を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100 ●プラスチック・ダンボールで羽根を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101 ダイナモで回転エネルギーを電力に換える ―――――――――――――――― 102 ●自転車のダイナモには 2 極のものと 4 極のものがある ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ダイナモに風車を取り付けたときの回転数と出力は? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●電池を充電してみる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● 2 次電池の充電回路を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 102 102 104 104 三つのダイナモの交流出力を足し合わせる整流回路 ―――――――――――― 104 目 次 8-4 8-5 9 ●ダイナモの内部抵抗は無視できないほど大きい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 104 ● 3 基のダイナモの出力を直流に変換してから加算する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105 ●交流を低損失で直流に変換できる整流回路を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105 充電コントロール回路の検討 ―――――――――――――――――――――― 107 ●倍電圧整流回路とダイナモによる内部抵抗を求める ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●内部抵抗による損失を低減する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● DC−DC コンバータの検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●実際の回路と使用部品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 充電してみよう! 107 107 108 109 ――――――――――――――――――――――――――― 109 ●動作確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109 第9章 9-1 9-2 9-3 1W 風車,ステッピング・モータ,電圧検出器で作る LED 看板 ―――――――――――――――――――――――――― 112 低速回転でも発電できるステッピング・モータのしくみ ―――――――――― 112 ●なぜステッピング・モータを使うのか…効率が 5 倍に UP! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●使用したステッピング・モータの仕様 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●実際にはどんなステッピング・モータが良いのか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●モータの交流出力を直流に変換する方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112 114 114 115 ●発電機に羽根を取り付けるためのフランジを作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●フランジに取り付ける円板を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ベニヤ板で風車の羽根を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ひねり金具の製作と羽根の取り付け ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ステッピング・モータとパイプの連結ユニットを作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●尾翼を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●各パーツを組み合わせて風車を仕上げる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 116 116 117 117 117 119 ● 74 本の LED で電飾看板を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●少ない発電パワーでいかに明るく点灯させるか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● LED 点滅の動作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● LED 点滅回路を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ コラム 電圧検出器の動作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119 121 121 122 124 1W 風車の製作 ―――――――――――――――――――――――――――― 115 LED 電飾看板の製作 ―――――――――――――――――――――――――― 119 第 3 部 水力を活用編 第 10 章 10-1 10-2 数百 mW 水車,DC モータ,高輝度 LED で作る 水道手元ライト ―――――――――――――――――――――― 125 水道水からエネルギーを取り出し LED を点灯したい ――――――――――― 125 ●上下水道のもつエネルギーはもっと有効に使える ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水車の羽根に向けてジェット水流を吹き付けるペルトン水車 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●高速な水流を作るノズルの穴径は実験で決める ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●アルミ板で水車の羽根を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●アルミ・パイプや丸棒を使ってノズルを作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●モータと水車の羽根を連結するジョイントの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水道や雨樋の配管材料を使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125 125 126 126 127 128 128 使用するモータと LED 点灯回路 ―――――――――――――――――――― 130 ●モータは入力電圧が高く,回転数が遅いものを選ぶ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130 ●水車と組み合わせる高輝度 LED 駆動回路を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130 10 目 次 第 11 章 11-1 11-2 11-3 11-4 11-5 11-6 第 12 章 12-1 12-2 12-3 12-4 数 W 水車,ハブダイナモ 2 台,DC−DC コンバータ,市販インバータで作る キャンプ用屋外電源 ―――――――――――――――――――― 133 河原で小型テレビやラジカセを使いたい ―――――――――――――――― 133 ●日本は山国! 水力発電に向いている ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 134 ●水力発電所を見学して刺激を受ける ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135 ハブダイナモのしくみ ―――――――――――――――――――――――― 136 ●構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 136 ●出力特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137 水車の製作 ――――――――――――――――――――――――――――― 137 ●アルミ板を使って水車の羽根を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● 2 個のハブダイナモを長ねじで固定する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水車の支持台を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● 2 個のダイナモの出力を加算する方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●整流,加算回路の製作と取り付け ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●テスト運転 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●実地テスト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137 137 139 139 139 140 140 ● 3 端子レギュレータのように手軽に使える LM2575 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●出力電圧設定用抵抗の値の決め方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●インダクタの値を求める ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●出力コンデンサ,ダイオードを選定する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 143 143 144 144 ●バッテリを使う理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●満充電までに要する時間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●密閉型鉛蓄電池を使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●鉛蓄電池の寿命を縮めないために ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●サイン波でない交流の電圧値は通常のテスタでは測れない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ コラム インバータの出力波形と実効値の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 145 145 146 146 146 147 汎用電源の組み立てと配線 ―――――――――――――――――――――― 141 DC−DC コンバータ周辺回路の検討 ―――――――――――――――――― 143 バッテリの選び方と使い方 ―――――――――――――――――――――― 145 D フリップフロップ,コンパレータ,パワー MOSFET など個別部品で作る 100V 交流インバータ ――――――――――――――――――― 148 河原でパソコンや扇風機を使いたい ―――――――――――――――――― 148 ●市販品にはデメリットがある ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 ●市販インバータは AC100V 負荷の突入電流を大きくとれない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 149 ●負荷変動に強い回路を製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 149 交流インバータの製作 ―――――――――――――――――――――――― 149 ●利用したのは歴史あるバイブレータ電源 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●できるだけ正弦波に近い波形を作りたい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●三角波の傾きを利用してスイッチング・パルスを作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●フリップフロップとゲート回路により 25%のデューティ比を得る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●トランスは端子の表示電圧通りには使えない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●外部直流出力用の電源も用意した ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基板製作と動作確認 149 150 151 152 152 153 ――――――――――――――――――――――――― 153 ●大電流回路と小信号回路を分離する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 153 ●パワー MOSFET のゲートを GND に落としてチェック ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 ●正弦波でない AC100V の電圧はテスタではわからない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 100V 交流インバータの成果 ――――――――――――――――――――― 154 ●屋外でパソコンやテレビが使えた! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 目 第 13 章 13-1 13-2 13-3 次 11 10W 水車,ハブダイナモ 4 台,自転車用ランプで作る 街灯 ―――――――――――――――――――――――――――― 156 用水路の水なら充分街灯を点灯できる ――――――――――――――――― 156 ●日本の地形と気候は水力発電に向く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●農業用水路のエネルギーを利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水量豊富な平尾台から流れ出る水を利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●小規模水力発電には地元住民の協力が不可欠 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156 156 157 157 ●落差が小さいときは昔ながらの水車が良い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水車の羽根の枚数,寸法,形状を選ぶ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● 4 個のハブダイナモを使った 2 連水車の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●農業用水路の枡に設置する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●落差があると得られる電力は大きい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ハブダイナモ発電機を設置する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●電気系統の設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 158 158 159 160 160 160 161 10W 水車の製作 ――――――――――――――――――――――――――― 158 街灯の成果 ――――――――――――――――――――――――――――― 161 ●自転車用ランプを夜どおし点灯できる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 161 第 14 章 14-1 14-2 14-3 40W 水車,ステッピング・モータ,高輝度 LED 236 本で作る 地域のシンボル「お帰り」看板 ―――――――――――――――― 163 水車で地域を活性化したい ―――――――――――――――――――――― 163 ●トラ技を持った主婦が訪ねて来た ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 163 ●地域の宝である水力をアピールしたい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 163 ●水車の建設では地元住民の気持ちが一つに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 163 40W 水車の製作 ――――――――――――――――――――――――――― 163 ●早速集まって仕様を決めた ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●木製の水車を設計する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●自転車のリムを側板に取り付ける ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水車の出力を予測する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水車の架台を設置する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ステッピング・モータを発電機として使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●プーリー機構を設計する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●導水路には施工が容易なポリエチレン・パイプを使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●高輝度 LED を使ったメッセージ・ボードの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● LED 制御回路の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ステッピング・モータ発電機出力の整流回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 看板の成果 163 165 166 166 167 167 168 169 169 169 170 ――――――――――――――――――――――――――――― 170 ●地域の人に「夢が実現した」と喜ばれる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 170 ●今回のはテスト機,2 号機はもっと本格的に! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 171 第4部 温度差,燃料,人力を活用編 第 15 章 温度差発電で聞く AM ラジオ ―――――――――――――――― 172 15-1 ペルチェ素子 10 個,20mV から動作する昇圧コンバータ,ワンチップ・ラジオ IC で作る ペルチェ素子は温度差発電を可能にする ―――――――――――――――― 173 ●地熱の宝庫 九重連山を訪ねる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ペルチェ素子で地熱発電に挑戦する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●発電のしくみ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●電力を取り出す基本回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 173 173 174 175 12 目 15-2 15-3 次 構造部と回路の製作 ――――――――――――――――――――――――― 177 ●ペルチェ発電機を組み立てる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 ●七輪収納ボックス兼スピーカ・ボックスの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 ●ラジオ回路を組み立てる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 温度差発電ラジオの使用方法と結果 ―――――――――――――――――― 180 ●炭火を起こすこつ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 180 ●高温側と低温側の温度は時間とともに一定になる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 181 ●炭火で聞くラジオの音もまた格別 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 181 第 16 章 16-1 16-2 16-3 16-4 16-5 ラジオ IC,エタノール型燃料電池,電気 2 重層キャパシタ 4 個で作る 燃料電池で聞く AM ラジオ 燃料電池の発電のしくみ ――――――――――――――――― 182 ――――――――――――――――――――――― 182 ●燃料電池は電池ではなく発電機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 182 ●熱の代わりに電気エネルギーが出てくる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 182 水素を燃料とするタイプで実験 ―――――――――――――――――――― 184 ●固体高分子型燃料電池の構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 184 ● 5cc の水素で約 30 秒間運転できる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 184 ●水素ガスの取り扱いに注意 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 185 メタノールを燃料とするタイプで実験 ――――――――――――――――― 185 ●ダイレクト・メタノール型燃料電池を組み立てる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 185 ●最大出力が得られるポイントがある ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 185 ●メタノール燃料電池の取り扱い上の注意 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 185 昇圧回路の検討と製作 ―――――――――――――――――――――――― 186 ●電子機器を動かすには昇圧電源が必要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 186 ● MAX757 を使ったスイッチング電源を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 188 ●燃料電池を回路の工夫で使いこなそう ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 188 エタノールを燃料とするタイプで実験,AM ラジオを聴く ―――――――― 189 ●得られる出力は 1mW ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 189 ●電力を取り出す基本回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 190 ●製作例…ラジオを 8 分程度動かした ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 190 第 17 章 17-1 17-2 ハブダイナモ,高輝度 LED 26 個,3 端子レギュレータで作る 人力による 2 次電池充電器&テール・ランプ ――――――――― 192 自転車をこいで 2 次電池を充電したい ――――――――――――――――― 192 ●発電しているようすがわかると元気が出る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●エネルギーの収支を計算する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●アナログ回路が向いている ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● 2 次電池のバラスト抵抗を電流検出素子に流用する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● 4 個のレベル・インジケータのスレッショルドを決める ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 192 193 193 193 194 ●積分回路の後段には CMOS タイプの OP アンプを使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●夜間の検出にフォト・トランジスタを使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●多数の LED の駆動は高電圧で行うのが効率的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●高輝度 LED を多数使って視認性を良くする ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● 2 次電池の人力充電器としても使える ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 194 195 197 197 198 回路の検討と製作 ―――――――――――――――――――――――――― 194 目 第5部 応用製作編 第 18 章 山間向け揚水装置 18-1 18-2 18-3 次 13 フロート・センサ,マグネット・ポンプ,パワー・リレーで作る ――――――――――――――――――――― 201 わき水では洗濯機やボイラへの水圧が足りない ――――――――――――― 201 ●電子技術者が農業に携わる時代が来た ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 201 ●山間部のわき水に異変? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 202 ●少ない水量でも貯めれば十分な量となるが加圧しないと洗濯機やボイラに使えない ・・・・・・・・ 202 揚水装置の製作 ――――――――――――――――――――――――――― 203 ●エネルギー消費が少ない揚水装置の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●マグネット・ポンプは低騒音で長寿命 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水位を検出するフロート・スイッチ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●基礎実験…揚水の過程と水圧確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●出来上がった揚水装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●システムの電気回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●タンクとホースは藻の発生に注意が必要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●活性炭と自然石を使った浄化装置を追加 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 揚水装置の成果 203 203 204 204 205 206 206 207 ――――――――――――――――――――――――――― 208 ●一変した生活スタイル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 208 ●電気の流れと水の流れは似ている ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 208 ●揚水装置はかんがいにも使える ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 208 第 19 章 19-1 19-2 19-3 手作り水位センサ,PIC マイコン,3 色 LED で作る 田んぼの水位見張り器 ――――――――――――――――――― 210 離れた場所から水田の水位を見張りたい ―――――――――――――――― 210 水位見張り器の製作 ――――――――――――――――――――――――― 210 ●水田の土は多層構造となっている ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水位センサの原理…水位を容量で検出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水位センサはスライド構造とする ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●全体の構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● LED は点滅式として電池の寿命を延ばす ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●製作した回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●水位計のソフトウェア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●回路の実装方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 水位見張り器の成果 210 211 212 212 213 214 215 216 ――――――――――――――――――――――――― 216 ●今後の応用に期待 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 216 ●イルミネーションとしても楽しい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 217 第 20 章 20-1 20-2 手作りループ・アンテナ,PIC マイコン,温度センサで作る ビニルハウス内の温度伝送装置 ――――――――――――――― 218 広いビニルハウス内の複数点の温度を把握したい ―――――――――――― 218 ●耶馬溪のデコポン栽培農家を訪ねる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 218 ●ビニルハウスとは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 219 ●甘さ満点の「デコポン」の栽培と温度の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 219 温度伝送装置の製作 ――――――――――――――――――――――――― 221 ●通信距離が短い微弱無線を使いこなす ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●測定データの伝送 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●装置の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●温度測定・伝送装置の送信回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 221 221 221 222 14 目 次 ●温度測定・伝送装置の受信回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●温度データの処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ケースへの組み込み方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ビニルハウスに設置する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第 21 章 21-1 21-2 21-3 21-4 224 224 225 225 キャラクタ液晶モジュール,PIC マイコン,インバータ IC で作る ビニルハウス内の温度表示装置 ――――――――――――――― 226 複数点の温度を一つの画面に表示したい ―――――――――――――――― 226 ●農地に信号線を張り巡らせるとトラクタで切ってしまうことも ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 226 ●微弱無線でデータをリレーするワイヤレス装置を作った ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 226 温度の表示部を作る ――――――――――――――――――――――――― 226 ●ポケットに収納できバッテリ動作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 226 ●回路… PIC マイコンや超再生検波回路からなる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 227 温度表示装置の成果 ――――――――――――――――――――――――― 227 ●ビニルハウスの内部に設置,60m 先のデータを取得 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 228 ●温度測定器の本格的な稼働は春 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 228 ●水位の測定など応用範囲は広い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 229 温度伝送・表示のためのソフトウェア ――――――――――――――――― 230 ■プログラムを制作する前に決めたこと ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 230 ●通信フォーマットは RS−232−C を使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ● ID 信号は HELLO ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●温度データの RAM への格納方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●インサーキット・シリアル・プログラミングでソフトウェアをアップグレードする ・・・・・・・・ 230 230 231 231 ■温度測定・伝送装置のプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 231 ●受信ルーチン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 231 ●送信ルーチン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 232 ■温度表示器のプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 233 ●割り込みを許可して無限ルーチンで測定データを待つ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 233 ●液晶表示のデザイン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 234 ●液晶表示ルーチン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 234 第 22 章 22-1 22-2 22-3 トライアック,PIC マイコン,7 セグメント LED,サーミスタで作る みそ造り装置 ――――――――――――――――――――――― 235 みそ造りは温度管理が命 ――――――――――――――――――――――― 235 ●農家のみそ造りのカレンダ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●みそ造りの第 1 ステップ…麹を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●みそ造りの第 2 ステップ…大豆とまぜる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●自動化が望まれる部分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 235 235 236 237 ●木製の麹室を作る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●ヒータを制御する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●トライアックによる制御原理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●温度検出はサーミスタを使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●マイコンに搭載する仕様とアルゴリズム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●回路設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 237 237 238 239 240 241 麹室温度コントローラの製作 みそ造り装置の成果 ――――――――――――――――――――― 237 ――――――――――――――――――――――――― 242 ●納豆やヨーグルトの発酵にも使える ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 242 索引 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 244 著者略歴 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 247 15 イントロダクション エネルギー 放置してたら もったいない 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 自然から得られるエネルギーは,ほとんどが太陽から得られると言って良いのですが,これを大きく, 部 ① 過去,地球に蓄えられたもの(化石燃料やウラン) 第 5 ② 現在,太陽から降り注いでいるもの(光や熱) 部 に分けることができます.風力発電は太陽熱と地球の自転によるもので,②に入ります.川の水の流れ を利用した水力発電も②です. ①は投資が少なく,経済メリットはありますが,将来は資源が枯渇するという致命的な問題がありま す. ②は日々降り注ぐ太陽エネルギーのことで,自然界では植物と動物があまねくその恩恵を受けており, 一つの自然エネルギー活用システムが出来上がっています.しかし,発電との相性は実に悪く,ダムに れいめい よる水力発電以外は,技術的にはまだ黎明期にあります. 写真 0-1 は風力発電機の一例です.年間を通じて風の強い壱岐島に設置されているもので,発電機も 低回転で効率の良い多極型として,増速機構によるロスをなくしています.風力発電は,実用への第一 歩を踏み出した感があります. また,水力発電は日本でも総発電量の 11 %をまかなっており,その技術は完成領域にあります.太 陽光発電は 0.2 %,風力発電は 0.001 %とわずかですが今後の伸びが期待されます.ここでは身の回りに あるエネルギーの実力を見つめ直したいと思います. 写真 0-1 電機 風力発電用の多極同期発 壱岐芦辺風力発電所,750kW,年間平 均風速 6.8m/s 16 イントロダクション エネルギー 放置してたら もったいない ● 太陽エネルギー 太陽の中心部では核融合によって水素がヘリウムに変換されています.これが太陽エネルギーの源で す.従って地球上で核融合が実現できるようになれば,人類は真に究極のクリーンなエネルギー源を得 ることになります.これは現在,研究が進んでいますので将来の楽しみに置いておきましょう.なお, このエネルギーはよく知られている公式, E =mc 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(0−1) ただし,E :エネルギー[ J] ,m :質量[kg] ,c :光速[m/s] で表すことができます.太陽はエネルギーを放射することで質量を減らしているわけで,まさに身を ◆エネルギーとは何だろう ● 宝はどこにでも隠れている エネルギーとは何でしょうか.「仕事(work)を する能力」と言うのが,物理学的な答えです.仕事 と言うと,道路工事や新聞配達,あるいは会社に 行ってするような仕事を思い浮かべます.仕事をす るには,ごはんを食べてエネルギーを蓄えないとで きませんね.これに似た概念です. 物理学で言う仕事とは,物体に加えた力 f[N]と, その物体の移動量 s[m]との積で表される物理量で す.仕事の単位は J( ジュール)や N・m(ニュート ン・メートル),kgf・m(キログラム・フォース・ メートル)などで表されます. 図 0-A のように,荷物に力 f[N]を加えて s[m] 持ち上げると,フォークリフトや人間は f × s[N・ m]の仕事をして,荷物にはそれだけの位置エネル ギーが蓄えられたことになります. エネルギーとは,このような仕事をすることがで きる「能力」のことです.フォークリフトは石油の がどこに蓄えられているかを探すことが,自然エネ ルギー発見の第一歩です.宝探しのようですね. ● 省エネルギー設計が大前提 自然エネルギーを利用した製作を通じて,皆さん が自然エネルギーを自分の手で得ようとするとき, わずかなエネルギーを得るのにも,本当に苦労され るでしょう.また,わずかなエネルギーを有効利用 するためには,省電力装置の設計ノウハウが求めら れます.白熱電球を高輝度 LED に置き換える,バ イポーラ素子を CMOS 素子に置き換えるなどして 電力を減らすのです.そうすれば,発電機の電力が 小さくても同じ効果が得られます.従って機構や電 子回路の省エネ,省電力設計は,自然エネルギー利 用の大前提といえます. エネルギーを使い,人間は食物のエネルギーを使っ て仕事をしているわけです.この場合,その能力は 石油や食物に宿っています. しかし,エネルギーは石油や食物のようにどこか 力f に蓄えられたものだけではないのです.例えば,水 車や風車の力を使うと,粉ひきや発電と言った仕事 ができます.これは水や風の運動エネルギーを取り 出したものです. このようにエネルギーには,運動エネルギー,速 度エネルギー,熱エネルギー,電気エネルギーなど のたくさんの種類(形態)があります.エネルギー 持ち上げ 高さs f s 図 0-A エネルギーは仕事をした結果生ずる 17 削っているわけです. 太陽からは 1m 2 あたり 1kW のエネルギーが地表に降り注がれています.地球全体では 127 兆 kWh で あり,これは世界全体の年間総エネルギー 100 兆 kWh よりも大きな値です.1 時間で 1 年間の世界のエ ネルギーをまかなうことができるわけです.太陽の寿命はあと 50 億年と言われているので,人類に とっては永遠に近く,最も安心のできるエネルギー源です. 太陽光エネルギーの波長分布は,図 0-1 の破線のように,大気圏外では,ほぼ黒体輻射注 1 とみなさ れますが,地表では大気中の水や酸素に吸収されて図の黒線のようになります. 人間の眼は 0.4μm から 0.8μm の範囲の光をとらえることができます.これが太陽エネルギーのピー クに一致するのは驚きであるとともに,人間の生物としての長い歴史を思い起こさせるものです.太陽 電池の波長感度は,当然ながら図 0-1 のピーク部分に合わせたものが多いです. 太陽のエネルギーを電気に変えるには,光を直接,電気に変えることのできる太陽電池が現在最も有 力です.この他に太陽熱を利用して水を沸騰させタービンを回すなどの方法があります.表 0-1 はこれ をまとめたものです.太陽電池の効率の良さが実感できると思います.写真 0-2 は太陽電池を使った信 号機です.太陽光を利用した製作例を第 1 章〜第 7 章で紹介します. ● 水のエネルギー 水の持つエネルギーは,位置エネルギー,運動エネルギー,圧力エネルギーに分類されます. 放射強度[W/(cm 2・μm)] 2.5 2.0 大気外での 放射量 1.5 1.0 0.5 地表での 放射量 0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0 波長 λ[μm] 2.4 2.8 3.2 図 0-1(1) 太陽エネルギーの波長分布 可視光近辺にエネルギーのピークがある 写真 0-2 太陽電池を利用した移動式信号機 バッテリに充電して夜間や降雨時も動作する 表 0-1 太陽エネルギーの電気変換効率 太陽電池の効率が最も良いことが分かる 方 法 効率 鏡で光を集め,水を沸騰させてタービンを回して発電する 5% 太陽エネルギーで成長した樹木を燃やし,これで発電する 0.3 % 太陽エネルギーを起源とする川の水をせきとめてこれで発電する 太陽電池で発電する 0.002 % 20 % 注 1s 黒体から放射される光や熱を言う.黒体とは,全波長のエネルギーを放射・吸収できる物体のこと.太陽はこれに近い. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 18 イントロダクション エネルギー 放置してたら もったいない 落差 h[m] 落差 h[m] 落差 h[m] 流速 v[m/s] 断面積 A[m 2] 重さW[N] 圧力 p[N/m 2] (a)位置エネルギー (b)運動エネルギー (c)圧力エネルギー 図 0-2 水の持つエネルギーの三つのかたち 位置エネルギー,運動エネルギー,圧力エネルギーからなる 写真 0-3 落差をエネルギーに変える水路式水力発電所 九州電力天ヶ瀬発電所(大分県日田郡天ヶ瀬町) s 位置エネルギー 図 0-2 において落差 h[m]の水の位置エネルギー Ee[J/m 3]は,水の密度を 1 とすると, Ee = gh ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(0−2) と表されます.ここで g = 9.8[m/s 2]は重力加速度で定数です.水の単位重量 1kg・W あたりでは,式 (0−2)をg で割って, 位置ヘッド= h[m]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (0−3) つまり,落差そのものが位置エネルギーとなります.水力発電ではこの落差を利用しています(写真 03).なお,ヘッド(hydraulic head)とは,水の持つ速度や圧力エネルギーを,高さ(落差),つまり位 置エネルギーに換算した値のことで,単位は[m]です. s 速度エネルギー 次に落差 h[m]のところの水をパイプで引いてきて流出させたときの水の速度を v[m/s]とすると, 速度v[m/s]のときの速度エネルギー Ek[ J/m 3]は, Ek = v 2/2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(0−4) となります.水の速度エネルギー E k は,位置エネルギー E e が形を変えたものですから,式(0 − 2)と (0−4)は等しくなります.すると, v = 2gh ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(0−5) という関係式が導かれます. 一方,水の単位重量あたりでは,式(0−4)をg で割って, v2 速度ヘッド= ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (0−6) 2g が運動エネルギーとなります. s 圧力エネルギー 次に落差 h の位置に断面積 A[m 2]の筒があり,重量 W[N]のおもりで釣り合っている場合,圧力 p [N/m 2]は, p =gh =W/A ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(0−7) 19 第 1 部 スパウト 1 羽根車が回転して発電 第 2 部 2 発電された電力を蓄電 発電ユニット コントローラ 写真 0-4 電磁弁 落差をエネルギーに変える発電用上掛け水車 自転車のリムを V プーリに利用している,左が発電ボックス 給水 図 0-3(2) 水道水からエ ネルギーを得る自動水栓 機能部 3 蓄電された電力を使用して制御 (センサ感知と電磁弁の開閉) で表されます.これをg で割ると, 圧力ヘッド= p /g ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (0−8) となります. エネルギー保存の法則により,この三つのヘッドは一定になります. v2 h+ +p /g =一定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (0−9) 2g この式はベルヌーイの定理と呼ばれています. 以上より水の持つエネルギーを利用するには, ① 落差を利用する ② 流速を利用する ③ 水圧を利用する という三つの方法があることが分かります. ①は上掛け水車のように,高所で水をバケツに受けてその重量で水車を回します(写真 0-4).②はペ ルトン水車のように,ノズルから水を高速で小さな水車の羽根にぶつけます.③は水車の羽根を大きく して,水圧で水車を回します.①,②,③を組み合わせる方法もあります. 黒部ダムの発電量は 95000kWh と膨大ですが,水車の直径はわずか 2.5m です.これは上記②のペル トン水車を使っているからです.さて,水力エネルギーは身近に小さな河川がある田舎でしか利用でき ないのでしょうか.そんなことはありません.第 10 章の製作例では,水道水の圧力を利用した照明器 具を紹介しています. 実際に図 0-3 のような商品が販売されています.これは洗面所の自動水栓の電源を,水道の水の流れ を使った水車(羽根車)から得ているものです.水回りに AC100V を引いてくることは,感電の危険が 第 3 部 第 4 部 第 5 部 20 イントロダクション エネルギー 放置してたら もったいない 表 0-2(3) 風力と対応する風速,現象 極循環 ビューフォート風力階級と呼ばれる.これはその一部 風力 北極 フェレル循環 北半球 ハドレー循環 赤道 図 0-4 地表の空気の流れ 風速[m/s] 現 象 0 0 〜 0.2 煙がまっすぐ昇る 1 0.3 〜 1.5 煙がたなびく 2 1.6 〜 3.3 木の葉がゆれる 3 3.4 〜 5.4 小枝がゆれる 4 5.5 〜 7.9 砂埃が立つ 5 8.0 〜 10.7 葉のある木が揺れる 6 10.8 〜 13.8 木の大枝が揺れる 7 13.9 〜 17.1 大きな木の全体が揺れる 8 17.2 〜 20.7 小枝が折れる 9 20.8 〜 24.4 屋根瓦が飛ぶ あるので避けたいものです.水からエネルギーを得るのはこの点で当を得ています.水力を利用した製 作例を第 10 章〜第 14 章で紹介します. ● 風のエネルギー 風は地表の空気の流れであり,その源は太陽エネルギーです.図 0-4 のように太陽熱により地表が暖 められて対流が起こります. 図 0-4 を見るといくつかの流れがあります.これに地球の回転が加わって複雑な流れとなります.ま た,地表の局所的な温度差により,低気圧,高気圧が発生し,これも風の原因となります. 風の吹き方は地形で大きく変わります.海陸風や山谷風は毎日定期的に発生します.また,周囲の樹 木や建物の影響を受けて,ほとんど風の吹かない場所もあります. s 風速と風力の違い 風速は図 0-5 のような風速計を使って測定します.単位は[m/s]です.天気予報で「風速○ m」と言っ ているのはこのことです. 一方,風の強さ,つまり風による影響は風力として表され,表 0-2 のような段階があります.ビュー フォート風力階級と呼ばれます. 年間を通じて風速 10m/s 以上の風の吹く回数が多いのは,室戸岬,大島,寿都(北海道),八丈島, 浦河(北海道)の順です.島嶼と北海道が圧倒的に風が強いです(3). s 風車には水平軸型と垂直軸型がある 風のエネルギーは,風車を利用して得ることがほとんどです.風車は大きく,水平軸型と垂直軸型に 分けることができます.水平軸型は風車の回転軸が地面に対して水平になるタイプです.写真 0-5 に一 例を示します.水平軸型は風車の方向を常に風の方向に向ける必要があります. 写真 0-6 は垂直軸型風車の例です.風車の回転軸が地面に対して垂直となるタイプで,重い発電機を 地面に設置できます.また,風向によって向きを変える必要がなく,強風に対してもメンテナンスが容 易です.しかし,あまり効率が良くないのが難点です. 世界最大の風車は,ハワイのオアフ島に建設された MOD-5B です.水平軸型で,直径 100m の 2 本の プロペラにより出力 3.2kW を達成しました.現在は経済的理由により撤去されています.風力を利用 した製作例を第 8 章,第 9 章で紹介します. 21 ① 風が当たる ② 風杯が動く 第 1 部 ① 風が当たる 軸が 回転する 軸が 回転する 電磁誘導の 法則により コイルに 起電力が 発生する 第 3 部 ② ③ スリットのある 円盤が回転する プロペラが 回る ⑤ ④ N SNS 磁石が 回転する LEDの光の透過が 断続する ⑥ 起電力が 発生する 出力波形 (a)風車その1 図 0-5 第 2 部 (b)風車その2 風速計の原理(左:風杯型,右:プロペラ型) 電磁誘導による発電,LED とスリット板などを利用する 写真 0-5 水平軸型風車の例 Air-X(米国 Southwest Windpower, ノースパワー扱い),ローター直径 1.17m,定格出力 400W(12.5m/s) 写真 0-6 垂直軸型風車の例(ジャイロミル型) くじゅう花公園(大分県久住町) 第 4 部 第 5 部 22 イントロダクション エネルギー 放置してたら もったいない ● 地熱は地球内部に蓄えられたエネルギー 地熱とは,地球内部にあるマグマだまりで暖められた高温の水蒸気のエネルギーです.火山地帯では 写真 0-7 のように噴火口や岩の間から熱湯や水蒸気が噴出しています.地熱を発電に利用するにはボー リングで地下の水蒸気を取り出し,タービンを回して復水し,地下に戻すという大規模な装置が必要で す. 水蒸気の温度は 200 ℃以上ですが,写真 0-7 のように地上に噴出したときには 100 ℃以下になって, お湯になってしまいます.従って,これを利用して地熱発電をすることは,効率的にまったく割が合い ません.しかし,湯ですから温度差があることは間違いなく発電は可能です.第 15 章では温度差発電 に挑戦しています. 地熱発電の発電量は米国,特にカリフォルニア州が世界一です.次いでフィリピンで,国内発電量の 1/4 を地熱発電で賄っています.日本は世界第 6 位ですが,それでも国内発電量の 0.2 %にすぎません. 温度差,燃料,人力を利用した製作例を第 15 章〜第 17 章で紹介します. ● 燃料電池 化学反応(燃焼)によって電気を取り出す電池です.燃やすと言っても炎を出さずに燃えることが特 徴です.化学エネルギーから電気エネルギーを直接取り出すことができるので,熱機関のような効率の 限界がありません.また,公害物質も排出しませんし,騒音や振動もありません.月に行ったアポロ宇 宙船に燃料電池が搭載されていたことを覚えておられる方もいるでしょう.当時は高価なものでしたが, 現在では電気自動車の有力なエネルギー源とされています. しかし触媒として白金のような高価な希少金属を使うため,コスト面ではまだまだ手の届くところに はありません. ● 生物エネルギー(バイオマス) 化石資源以外の,生物に由来する有機物資源のことです.有機物ですから燃焼すると CO 2 が発生し ます.この CO 2 は数億年前ではなく,ほんの少し前に生物が光合成によって大気中から取り込んだも のなので,新たに CO 2 を発生させたわけではないと考えられます.光合成ですから太陽エネルギーが 起源です. バイオマス燃料の種類は,薪,炭,バイオマス・エタノールなどたくさんあります.間伐材を燃料と することもバイオマスの利用と言えます.石油の代わりに菜種油を使った耕運機を作れば,CO 2 の増加 はないことになります. ● 海洋エネルギー 波力発電,海洋温度差発電,潮流発電など,海や湖に蓄えられたエネルギーを取り出す方法です.こ のうち,波力発電は個人レベルでも実験が可能でしょう(写真 0-8). ● 省エネと自然エネルギー活用は車の両輪 従来,あまり意味が無いと思われていた,身の回りの小さな温度差,廃熱,振動,電波などがエネル ギー源として注目され始めました.これは環境発電とかエネルギー・ハーベストなどと呼ばれています. この背景には電気を消費する側の回路が,ミリ・アンペアの時代からナノ・アンペアの時代に入った 23 第 1 部 第 2 部 第 3 部 写真 0-7 地表に噴出した地下の熱水と水蒸気 写真 0-8 大分県湯布院町塚原高原 海岸に打ち寄せる波にもエネルギーがある 黒津崎海岸(大分県国東市国東町) 第 4 部 第 5 部 ことがあります.同じ機能が少ない電力で実現できれば,発電電力が増えたことと同じことになります. 回路設計においても,低電力素子を選ぶだけでなく,モータ駆動回路やトランジスタによる回路の低 消費電力化が求められます.本書では自然エネルギー活用と併せて,省エネ回路の製作事例も取り上げ ます. B 引用文献 B (1)村井 潔三;太陽エネルギー読本,1975 年,㈱オーム社. (2)水力発電技術,TOTO ㈱. http://www.toto.co.jp/docs/auto̲eco/index.htm (3)国立天文台編;理科年表 2010,2010 年 10 月,丸善㈱. 第1部 25 太陽光を活用編 第1章 3.2W 太陽電池,電気 2 重層キャパシタ, 市販 IC レコーダで作る 電子番犬 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 1− 1 餌代や散歩の手間がかからない犬が欲しい セキュリティ機器の一つに「ダミー・カメラ」というものがあります.これは,監視カメラの形をし たもの(中味はカラ)を取り付けておくことで不審者が近づかないようにするものです.犬を飼わずに, 犬小屋だけを置いておくのも同じような効果があります.このダミーの犬小屋を,人が近づくと「ウー, ワン・ワン」と吠えるようにすれば,より効果的です.バックアップ電池を使わず,ソーラ・パネルだ けで動かせば,犬と同じくらいの寿命(10 〜 15 年)も期待できます.餌や散歩の手間もなく,自然の力 で働いてくれます(写真 1-1) . ● 必要な電力を電気 2 重層キャパシタに蓄える 電子番犬の仕様は,①昼間だけ吠える,②吠え声は実際の犬と同等程度の音量(出力 2W),③メンテ ナンス不要とするため 2 次電池を使わない,④屋外放置可能,とします. ①は,太陽電池を使えば自然にそうなります.②は録音した犬の声を使い,これをパワー・アンプで 増幅し,犬小屋をスピーカ・ボックスにします.③は,吠え声に必要な瞬時電力を電気 2 重層キャパシ タ(写真 1-2)で得ます.④は,犬小屋を利用して回路素子を風雨から防護します. 写真 1-1 電子番犬の住むソーラ・ハウス 写真 1-2 いろいろな電気 2 重層キャパシタ(左下のもの を使用) 第 5 部 26 第1章 電子番犬 140 焦電センサ 電流[mA] 120 フレネル・レンズ 100 80 60 40 20 0 0 図 1-1 特性 5 10 電圧[V] 15 20 使用した太陽電池モジュールの出力電圧−出力電流 写真 1-3 1− 2 焦電センサ(左)とフレネル・レンズ 番犬の回路を作る ● 曇天でも動作するように中型の太陽電池モジュールを選ぶ 犬小屋の屋根は,太陽電池を設置するには好適な場所です.今回は 25 × 25cm の大きさで,カタログ 値 12V,250mA のシリコン単結晶モジュールを選びました. 図 1-1 に,使用した太陽電池モジュールの実測特性を示します.色温度 5500K のレフランプ(500W) から 30cm の距離で測定しました.直射日光下の最適条件では,この 2 倍くらいの出力電流が得られま す. 太陽電池のカタログ値は「開放電圧,短絡電流」という,実際の使用条件とは異なる表記がされてお り,選択と設計にあたってはカタログ値に対して十分な余裕を見ておくことが必要です.特に曇天時や 朝晩には,図 1-1 の半分程度の電流になります.よって,12V,60mA あたりを最低動作点とします. ● 焦電センサ・ユニットの製作 人体は一種の熱源ですから,体の表面からは赤外線が放射されています.赤外線を物体に照射すると, 物体には熱が発生して温度が上昇します.ある種の誘電体では,これによって電荷の量が変化しますが, これを焦電効果と呼びます.焦電センサとは,焦電効果を利用した赤外線(熱)検出器のことです. 写真 1-3 は,焦電センサの外観と,これに使用するフレネル・レンズです.焦電センサの内部には, 焦電体板,高抵抗と低雑音 FET が内蔵されています.焦電素子の検出距離は 2m 程度なので,レンズを 使って集光する必要があります.写真 1-3 の右側のプラスチック板には格子縞が入っており,光の回折 によりレンズの働きをします.これをフレネル・レンズと呼んでいます.このレンズを使うと検出距離 を 5m 以上にすることができます. フレネル・レンズは図 1-2 のように,レンズの焦点距離(この場合は 30mm)を半径とする円周上に設 置します.ここでは,写真 1-4 のような,直径 60mm 程度の容器を使って取り付けてみましょう. 左側は,使い終わった化粧品の容器 A(プラスチック製),右側は綿棒の収納容器 B で,容器 A の内 側に押し込むことができる寸法です.A と B の側面にフレネル・レンズより一回り小さめの角穴を空け 1-1 仕様の検討と回路の設計 27 第 1 部 容器B 容器B 焦電センサ 容器A 容器A エレメント 第 2 部 30mm フレネル・レンズ 図 1-2 フレネル・レンズの取り付け位置 写真 1-4 容器 センサの取り付けに手頃な直径 6cm の I C1bの出力信号 焦電センサ 1 V 2 CC 1 V 3 CC 0V フレネル・ レンズ I C1cの8ピン出力 図 1-3 写真 1-5 完成 焦電センサの出力信号の処理方法 容器の中央に焦電センサを取り付けて ます.次に,フレネル・レンズを入れ,B で内側から挟みます.寸法を調整するために,B にはスリッ ト(切れ込み)を入れています. 焦電センサは,ユニバーサル基板に取り付けて,アルミのアングルで固定します.5m 程度の対象物 の場合は,センサとフレネル・レンズ間の距離は,焦点距離(30mm)より短くしたほうが感度が良いよ うです.完成したセンサ部の外観を写真 1-5 に示します. ● 焦電センサ部の回路 焦電センサの出力信号は,図 1-3 のように人体の熱の移動に反応した低周波波形です. センサ回路は,図 1-4 のようになります.IC1a のゲインは,ほぼ R 5/R12 = 330 倍,IC1b は R13/R 9 = 150 倍で,合計で約 90dB 増幅します.感度が高すぎて風で誤動作する場合は,このゲインを下げて対 処します.IC1b の動作点は,R 2 と R 6 で決まり,VCC の 1/2 で,無信号時のレベルに相当します.IC1c は コンパレータとして働き,比較レベルは R 3 と R14 の比で決まり,VCC の 1/3 です. 図 1-3 で,信号の振幅が VCC /3 より低くなった時点で,IC1c の出力が H となり,断続的なパルス波 形となります.これを C 9 に蓄えて,持続した人体検出信号を IC1d の 14 ピンから得ます.この信号で Tr1 を ON して,音声ボードの再生を開始し,パワー・アンプでスピーカを駆動します. 第 3 部 第 4 部 第 5 部 28 第1章 電子番犬 センサの電源用ノイズ・フィルタ 焦電センサ R1 SEN1 RE210 (日本セラ ミック) C1 100μ C2 R7 10k R 10 R2 C8 0.1μ C 8 , C 6 , C 5 は高域 ノイズ除去用 R 5 3.3M C 4 0.01μ 47μ 4.7μ 100k C5 LM324 3 4 C 7 4.7μ0.01μ 1 0.01μ R 9 10k 2 11 R 12 10k I C1a, I C1bで約 C 12 100dB増幅する 4.7μ C6 充電完了表示 D4 LED D6 8.2V 1N5348B C 13 0.47F R 24 1k R 16 10k R 15 R 20 330Ω R 21 2.7k Tr4 2SC1815 逆流阻止ダイオード 電圧制限用 (VZ = 11V) は太陽電池に内蔵 C 27 R 13 1.5M R 14 C 10 56k C 11 0.01μ 10μ R 11 C9 22μ D2 1N4148 200k パルスの積分回路 C 13の充電中にセンサ Tr1 ZVP2106 (Zetex) 回路を停止する I C2 L78L05ACZ 0.1μ Tr2 (STマイクロエレ 2SC1815 クトロニクス) C 28 3 33k Vin Vout 1 R 22 センサ回路用+5V作成 +B R 17 10k R 19 1k G 2 C 15 C 14 1.5μ 1.5μ 5.6k VCC ≧8.2VでON 人検出 コンパレータ 0.1μ I C1d R3 パルス出力 R 4 LM324 100k 1 27k (ナショナル VCC 1 2 VCC I C1c セミコンダ I C1b 3 LM324 クター) 10 D 8 1 5 LM324 R 8 15k 12 9 7 14 6 13 1N4148 R6 I C1a 電気2重層 D5 キャパシタ 1N5344B 図 1-4 C3 AC増幅する SO1 太陽電池 C 26 100k 0.1μ 高域を減衰 させる 47k VCC 33k Tr3 2SC1815 (東芝) R 18 10k パワー・アンプ 部へ R 23 10k G 人を感知したら,パワー・アンプ の電源をONする 焦電センサまわりと電源の回路 ● 電気 2 重層キャパシタの充電中は動作を停止する 吠え声の出力とともに,電気 2 重層キャパシタの端子電圧が低下していきます.C 9 と R11 の時定数で 決まる時間(10 秒)後に,IC1d の出力は L となり,Tr1 が OFF して,パワー・アンプと音声ボードの 電源を切断します. この状態で回路の消費電流は IC1 だけとなり,負荷抵抗が大きくなるので,C13 は充電状態に入りま す.天気状態によりますが,数十秒後に C13 の電圧が 8.2V 以上となると,LED が点灯し,Tr 4 が ON, Tr 2 が OFF となって,センサ回路が動作しはじめます. ● ボイス・レコーダの入手とインターフェース方法 10 秒程度の音声を記録再生できる IC レコーダを使います.今回は,電子工作キットとして格安(千 円程度)で販売されている,写真 1-6 のようなものを使いました.なお,次章で紹介する音声録音・再 生 IC(APR9600)も使えます. コンデンサ・マイク入力,ダイナミック・スピーカ出力となっているので,犬の声はマイクで入力し, スピーカ端子の片方からアンプに接続します.このスピーカ端子は,インピーダンスが 8 Ωと低いので, 出力電圧はそれほど大きくはなく,後段のアンプに直接接続してもひずみは発生しません. 1-1 表 1-1 仕様の検討と回路の設計 29 第 1 部 パワー・アンプの仕様 項 目 出力電力 記 号 PO max 値 2W 負荷インピーダンス RL 3Ω 電圧ゲイン Gv 30 dB 入力インピーダンス Rin 15 kΩ以上 写真 1-6 市販されている IC レコーダ基板の例 (AVIOSYS 社) ● 犬の吠え声を録音する 近所の犬に吠えてもらうか,インターネットのフリー音声ファイルを使います.下記に一例を示しま す. http://www.arcanewolf.com/wizard/sounds/ bark2.wav など, bark がキーワードとなります.単一の吠え声を Windows 付属の「サウンドレコー ダー」で編集して合計 10 秒としました.パソコンの出力をオーディオ・アンプなどにつないで,スピー カ経由で上記の付属マイクを使って音声を拾います.ライン入力が可能なボードの場合は,直結するほ うが良いことはもちろんです. ● パワー・アンプ部の設計とスピーカの選択 迫力のある大型犬の声を再生するには,低音域で十分なゲインがあることが望ましく,フィードバッ ク量の大きい,図 1-5 のようなコンプリメンタリ SEPP 方式を使います. 表 1-1 にパワー・アンプの仕様を示します. 図 1-6 のように波形を定義すると, VS = 2 2 ×Po max RL = 6.9V となります.コレクタ電流の最大値 I C max は, VS 6.9 I C max = = ≒ 1.1A 2RL 2×3 となります.V1 = 1.8V,V2 = 2.1V 程度ですから, VCC = 6.9 + 1.8 + 2.1 ≒ 11V となります.上記の考察から,低い電源電圧で大きなパワーを取り出すには,スピーカのインピーダン スを低くすることが重要であることがわかります. パワー・トランジスタ Tr 6,Tr 8 は,IC max が定格(0.8A)を少々越えますが,hFE のカーブ(1A まで) を見ると,10 秒間なら使えそうです. 電圧ゲインは,R 31/R 37 で決まります.したがって音量は,帰還量を決める R 37 で調節するのが簡単 です.R 37 の抵抗値を大きくすると音量が下がります. 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 30 第1章 電子番犬 音声ボード用+5V電源 +B B級SEPP方式(電力増幅回路) I C3:L78L05ACZ(STマイクロエレクトロニクス) C 25 3 Vin 1.5μ Vout 1 GND 2 +5V C 18 1.5μ C 16 VCC Tr5 2SA1015 PLAY 遅延 R 25 R 33 100k C 24 1.5μ 47μ PLAY 10k R 36 OUT GND 56k R 30 R 31 5.6k 音声出力 C 22 R 34 C 23 10μ 15k 音声再生ボード D8 1N4148 Tr7 2SA1015 (東芝) 220μ R 37 180Ω R 35 Tr9 2SC 1815 R 32 1Ω LS1 スピーカ Tr8 2SA950 (東芝) 1.2k 音量は R 37 で調整する この部分は音声ボードの仕様により変わってくる 図 1-5 Tr6 2SC2120 (東芝) 1N4148 R 29 47μ D7 (フェアチ 1Ω ャイルド) C 21 470μ 33k アクティブHの 再生開始信号 Tr10 2SC 1815 R 28 220Ω C 19 C 20 +B ON G R 26 C 17 0.1μ 33μ R 27 220Ω 27k Z =3〜6Ω ボイス・レコーダ基板周辺とパワー・アンプ回路 VCC V1 VCC VS V2 図 1-6 2 GND SEPP 方式の出力電圧波形 写真 1-7 1− 3 ソーラ番犬の基板の外観 基板組み立てと犬小屋の製作 ● 基板の組み立てとパターニング 写真 1-7 にユニバーサル基板に組んだ回路基板を,図 1-7 にパターン図を示します. ● 犬小屋の製作 スピーカを前面に向けると,雨がスピーカのコーンにかかるので,小屋の内部に傾けて取り付けま す.天井を低くして下を向けてもよいでしょう.桧の荒材を束売りしていたので,これを構造材にし 1-3 回路基板の組み立てと犬小屋の製作 G R8 C 11 C1 D1 D C5 R3 R 14 C 27 R2 I C1 14 R 11 − R7 C8 C 4 R 12 R 10 C 15 C7 R 18 C 28 R2 1 I C2 R 19 1 R 21 Tr5 I C3 C 18 LED− D5 R 33 LED+ D6 Tr10 C 25 2 3 PLAY C B R 15 R 16 図 1-7 G R 17 Tr4 E SO+ S G D 2 3 R 23 R 20 R 24 C 12 Tr1 C 14 Tr3 第 4 部 + R9 D2 第 3 部 C 13 R5 1 R4 第 2 部 R1 C6 Tr2 C2 C 26 R 13 C 10 C9 第 1 部 SO− C3 R6 31 R 25 A IN R 36 C 24 C 22 Tr6 R 26 C 17 SP R 28 C 20 R 30 +5V R 27 C 16 C 23 D7 R 31 D8 R 37 R 34 E B C Tr7 C 21 R 29 R 32 R 35 Tr9 B C E Tr8 ボイス・レコーダ基板周辺とパワー・アンプ回路 ました.接合は,木ねじ(コーススレッド)で行いました. 壁だけで強度をもたせるよりも,柱を組んだほうが頑丈であり,作りやすくもなります.スピーカの 背面は,密閉空間とする必要があります.これは,スピーカの前面の音と背面の音が,特に低音域で キャンセルして減衰し,音量が小さくなるからです.屋根裏に回路を収めるので,片側から開くように しておけば取り付けが容易です.センサの角穴を入り口のアーチの上に空けます.回路基板は屋根裏に 組み込みました. 表 1-2 に部品の一覧を掲げます. * 録音した吠え声を聞いていると,実際に犬を飼っているような感じです.家族,来客の区別なく,猫 にも反応して吠えていますが,もちろん本来の防犯の出番はないに越したことはありません. おそらく回路基板を作るより,犬小屋を作るほうに時間がかかるでしょう.また,この犬小屋を見て, ワイフが犬の置物を買ってきたので,最終的にはこの犬が住むことになりました.犬小屋だけよりは心 第 5 部 32 第1章 表 1-2 ソーラ番犬の電子部品一覧 参照番号 電子番犬 品名 (メーカ) 型名,値 個数 参照番号 C 2,C 8,C 27,C 28 品名 (メーカ) 型名,値 個数 積層セラミック・ コンデンサ 0.1 μF 4 1.5 μF 5 C 5,C 6 セラミック・ コンデンサ 0.01 μF, 50 V 2 C 4,C 11 ポリエステル・フィ 0.01 μF, ルム・コンデンサ 50 V 2 IC1 OP アンプ(ナショナル セミコンダクター) IC2,IC3 3 端子レギュレータ (ST マ L78L05ACZ イクロエレクトロニクス) 2 Tr1 Nch MOSFET (Zetex) ZVP2106 1 2SC1815 5 R 29,R 32 1Ω 2 2SC2120 1 R 37 180 Ω 1 Tr2,Tr3,Tr4, NPN トランジスタ Tr9,Tr10 (東芝) Tr6 Tr5,Tr7 Tr8 PNP トランジスタ (東芝) D 1,D 2 ,D 7 , 小信号ダイオード D8 (フェアチャイルド) 1 LM324 C 14,C 15,C 18,C 24,C 25 2SA1015 2 R 28,R 26 220 Ω 2 2SA950 1 R 15 330 Ω 1 1N4148 4 R 19,R 24 1 kΩ 2 R 35 1.2 kΩ 1 D4 発光ダイオード,赤 LED 1 R 21 2.7 kΩ 1 D5 定電圧ダイオード, 8.2 V 1N5344B 1 R 22,R 31 5.6 kΩ 2 D6 定電圧ダイオード, 11 V,5 W 1N5348B 1 R 7,R 9,R 12,R 16, R 17,R 18,R 23,R 33 10 kΩ 8 太陽電池モジュール, 12 V,250 mA 15 kΩ 2 SO1 SM250 − 12 V 1 R 4,R 27 27 kΩ 2 R 1,R 20,R 30 33 kΩ 3 R 10 47 kΩ 1 R 14,R 36 56 kΩ 2 R 2,R 3,R 6,R 25 100 kΩ 4 SEN1 LS1 焦電型赤外線検出器 (日本セラミック) ダイナミック・ スピーカ,φ 10 cm R 8,R 34 1 RE210 カーボン抵抗, 1/6 W 3 Ω〜 6 Ω 1 0.47 F,11 V 1 R 11 200 kΩ 1 C 3,C 7,C 12 4.7 μF,50 V 3 R 13 1.5 MΩ 1 C 10,C 22 10 μF,50 V 2 R5 3.3 MΩ 1 C9 22 μF,16 V 1 C 17 33 μF,16 V 1 C 13 C 19,C 20,C 26 電気 2 重層キャパシタ (NEC トーキン) 電解コンデンサ 47 μF,16 V 3 C1 100 μF,25 V 1 C 23 220 μF,6.3 V 1 C 21 470 μF,25 V 1 がなごみますが,雨の日に中に入れてやる手間が増えてしまいました.その後,庭先に現れた迷い犬を 飼い始め,その子供も産まれました.我が家には可愛いい番犬が 3 匹も居ます. B 参考文献 B (1)久保 大次郎;トランジスタ回路の簡易設計,1977 年 3 月,CQ 出版社. (2)センサ応用回路の活用ノウハウ,トランジスタ技術 SPECIAL No.66,2004 年 6 月,CQ 出版社. 33 第2章 2.4W 太陽電池,音声録音再生 IC,タイマ IC555, トランペット・スピーカで作る カラス撃退器 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 2− 1 カラスが巨峰をついばんでしまう 「鳥の鳴き声でカラスを撃退しているが,音が届かない」と言う話を聞きました.仮に鳴き声が届い たとしても,本当に「鳥の鳴き声」でカラスが逃げるのでしょうか. 筆者の住んでいる町には,ぶどう(巨峰)を栽培する果樹園があります.カラスが収穫間近の果樹を ついばんで被害を与えているようです. 百聞は一見にしかず,早速この農園を訪ねてみました.その結果,鳥の天敵の鳴き声,あるいはこれ に対する警戒を意味する鳴き声を流すと,カラスなどの害鳥がかなりの確率で逃避することがわかりま した.しかし,広い農園では全体に音が届かないために,何台も同じ撃退器を用意する必要があり,経 済的に割が合わないようです. そこで,スピーカをトランペット型として,かつ出力を大きくすれば遠方まで届くはずです.さらに, このような音声による撃退器を太陽電池と組み合わせると,電力を食わない,エコ時代にふさわしい装 置が出来上がりそうです.早速,製作してみました(写真 2-1). 太陽電池 写真 2-2 春を待 つぶどう園と主人 写真 2-1 スピーカ 製作したカラス撃退器 特徴は三つ.カラスの声で危険が迫っていることをカラスに知らせる音 を再生する,トランペット・スピーカを利用することで広範囲に鳴き声 が伝わる,太陽電池を搭載しており電源が不要 第 5 部 34 第2章 カラス撃退器 12月 11月 10月 1月 シーズン・ オフ 肥料散布 2月 (露地) 9月 8月 1年間の 流れ 収穫 (ハウス) 盆向け 出荷 カラス被害発生! 7月 図 2-1 樹液が落ちる ビニール張り 3月 芽が出る 芽かぎ,誘引 摘穂(花切り) 4月 ビニール 適粒(間引き) 除去 5月 袋掛け 6月 写真 2-3 最も効果のあった害鳥撃退器の外観 バードガード社(米国)製 A120 型,代理店アルト ぶどう園における 1 年間の仕事の流れ ● 行列のできるぶどう園を訪ねる 目ざすぶどう園は,杉の防風林に囲まれた 1.7 ヘクタールの広大な敷地に,人の背丈ほどの果樹棚が, 所狭しと軒を連ねていました.訪ねた時期は冬季(2 月)であり,実も葉もなくなって枝だけとなった姿 は,あたかも春を待ってエネルギを蓄えているようにも見えます(写真 2-2). ここのご主人は 2 代目に当たりますが,開拓者として入ったお父さんの時代は,機械など一切なく, 人手だけで荒野を切り開いたとのことです.その苦労を見て育ったご主人が,ひと言では表せない,と 感慨深く語っていたのが印象的でした. この農園はスーパーなどには出荷せず,もっぱら口コミで販路を開いて来たそうで,評判に違わず, 収穫期には行列ができるほどの繁盛ぶりです.この人気のポイントは,図 2-1 の摘穂(花切り),適粒 (間引き)と言う作業にあるようです.簡単に言えば,一房当たりの粒数を減らす作業で,この結果, 粒が大きくなります. ● 1 年の労働を台なしにするカラス被害 ぶどう園は,露地とビニール・ハウスに分かれていますが,これは盆の需要に間に合わせることと, 出荷時期をずらして作業を分散させるという目的があります.カラスの被害は 6 月のビニール除去から, 7 月中旬に粒が黒く色づくころに集中します.袋を掛けた上からつつかれ,この後はブヨが発生し商品 になりません. ご主人の話では,カラスを撃退するための方策として,カラスの置物や光るテープのたぐいはほとん ど効果がないそうです.結局,唯一効果があったのが,カラスの鳴き声を流す装置だそうです.このほ かに,鉄砲のような大きな破裂音を出す装置も市販されていますが,音が大きすぎて近所迷惑な上,単 純な音なのでカラスも慣れてしまうそうです. 写真 2-3 の装置は,農業雑誌の広告で知ったものだそうですが,使用歴は 20 年で,現在は数台を保有 しておられます. 2-2 カラス撃退器の作り方 35 ● 仲間に警戒を呼びかける害鳥撃退器を作る! 写真 2-3 の装置のすごい点は,鳥が危険を察知したときに,仲間に警戒を呼びかける声が収録されて いることです.鳥の種類もカラスのほかに,スズメ,ヒヨドリ,ムクドリ,タカ,オナガの鳴き声が収 録されており,苦労とノウハウがかいま見えます.開発の発端は,米空軍の鳥獣被害の対策研究だそう で,これでは効果があって当然かもしれません. s 市販品は効果はあるが使用範囲が限られる 第 1 部 第 2 部 第 3 部 あれば良いのですが,増設スピーカは 1 個までなので,いきおい,同じ装置を多数買う必要があります. 増設分を自作できれば,とても助けになりそうです. 第 4 s オリジナルの警戒音を集めるのも楽しみの一つ 部 この商品の音声には当然,著作権があるので,これを直接録音して利用することはできません.しか 確かにこの装置の効果は非常に大きいのですが,声が届かない所や,牛舎のファンなど,ほかの機械 の騒音がある場所では,音がかき消されて被害が出てしまうとのことでした.増設スピーカがたくさん し,カラスの声は森や市街でも収録できるので,タカなどの飛来を待って,そのときの,カラスの警戒 音や,そのほか非常時の声を収録すれば,同様な装置を作ることができます.また,似たようなカラス の鳴き声や犬のほえ声などは,ネットからもフリーで入手が可能です.カラスの被害に困っておられる 方は,入手可能な種々の音源を試して見てはどうかと思います. 2− 2 カラス撃退器の作り方 ● メイン回路(音声増幅回路を除く) s 音声録音再生 IC,APR9600 を使う カラスの鳴き声の継続時間は通常,10 秒以下ですから,タカなど,ほかの鳥の声を入れてもせいぜ い 20 秒です.しかし,鳥の声は人間の声よりかなり高い周波数を含むので,高域の音質は重要です. 現在,秋月電子通商では,音声録再用の APR9600 と言う IC を単品とキットで販売しています.デー タシートも完備しており,これに従ってサンプル周波数を高く設定すれば使えます. 図 2-2 は本装置の主要部分です.録再 IC は上記の APR9600 を再生専用で使っています.R12 はサンプ リング・クロックの設定用で,大きな値にすれば録再時間は伸びますが,周波数特性は劣化します.鳥 の鳴き声の場合,20kΩ程度が適当です. s 太陽電池 太陽電池は,同じく秋月電子通商で入手可能な,SM−170−12V−2WAY(Everstep 社,開放電圧 18V, 短絡電流 170mA)を使用しました.12V の鉛蓄電池を最大効率で使えるように設計されています. s 蓄電池 今回は充電用電池として NiMH 電池(1.2V,1300mAH 程度)を 10 個直列として 12V としています. s 日暮れ検出回路 Tr1 は日暮れ検出用で,夜間に鳴き声を止めるために使用します.夜間も鳴き声を出したい場合は SW2 を ON にします. ● 鳴き声の間隔はタイマ IC で作る 鳴き声の間隔はタイマ IC(IC1,NE555)で決めています.555 は,2 個入りの 556 とともにタイマ IC 第 5 部 36 第2章 カラス撃退器 AMP VCC リニア・レギュレータ I C3 XC6202 (トレックス・セミコンダクター) 1 3 D1 1S4(PANJI T) Vin SW1 電源 C1 1.5μ Vout GND 2 R5 C2 SC1 太陽 電池 蓄電池 12V R1 Tr1 2SC1815 (東芝) 10k R4 1.5μ Tr4 2SJ377 (東芝) D2 1N4148 (フェアチャイルド SUN セミコンダクター) Tr3 2SC1815 Tr2 2SC1815 C6 VR 1 D3 1N4148 1M R2 タイマI C 555 100k R9 220k R 11 D4 1N4148 510k I C1 8 VDD R10 27k C3 0.1μ C4 47μ 7 5 4 6 2 DSCHG 3 OUT CV RST THRES TRG GND C5 1 0.01μ NE555 (テキサス・インス ツルメンツ) R 12 20k I C2 C7 0.1μ 音声録音再生I C 1 VCC D 28 M1 2 27 RE M2 3 26 ExtClk M3 4 25 Msel-2 M4 5 24 Msel-1 M5 6 23 CE M6 7 22 OscR Strobe 8 21 AnaOut M7 9 20 Ana I n M8 10 19 AGC Busy 11 18 MicRef BE 12 V D 17 SS Mic I n 13 V A 16 SS VCC A 14 15 SP− SP+ C9 10μ D5 BUSY SW2 夜間も利用ならON 100μ 100k R8 820Ω R7 1k 10k R3 10k R6 10k R 13 100k C 8 0.1μ APR9600-DIP28 (APLUS) AUDI O 図 2-2 カラス撃退器の回路(音声出力回路を除く) の定番で,他社からも互換品(LM555 など)が出ています.アステーブル(非安定)動作,つまりトリガ は自分でかける,マルチバイブレータとしての動作です.IC 2,APR9600 の 1 番ピンを L とした場合, 再生が開始するので,この L 時間を 1 秒に設定します.データシートから tL は, tL = 0.693R10C 4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2−1) ですから,tL = 1 秒,C 4 = 47μF とした場合,R 10 ≒ 30kΩとなります.そこで,入手しやすい 27kΩと しました.この場合,tL = 0.88s となります.一方,tH は, tH = 0.693(RA + R10)C 4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2−2) ただし,RA = VR1 + R11 従って, VR 1 = 1MΩ, R 11 = 510kΩとして,鳴き声の最小間隔を, t Hmin = 0.693(510 × 10 3 + 27 × 2-2 カラス撃退器の作り方 37 AMPVCC C 10 C 11 0.1μ 33μ R 18 220Ω R14 27k C 15 47μ C 12 V R15 47μ 音声出力 33k C14 17.5〜50s 0.88s 図 2-3 t C13 100μ 10μ タイマの出力波形と音声出力時間の関係 R 16 AUDI O 220Ω D6 1N 4148 R 19 5.6k R 22 1Ω Tr7 2SC2120 (東芝) C16 470μ D7 1N 4148 Tr5 2SA 1015 (東芝) R 23 1Ω Tr8 2SA 950 (東芝) LS1 8Ω ホーン・ スピーカ Tr6 2SC 1815 15k VR2 10k R17 180Ω 図 2-4 R21 R 20 1.2k 音声増幅回路 10 3)× 47 × 10−6 = 17.5s とします.なお,最大間隔は,tHmax = 0.693(1510 × 10 3 + 27 × 10 3)× 47 × 10−6 = 50s です.図 2-3 はタイマの出力波形です. ● 音声増幅回路 図 2-4 はパワー・アンプ部の回路です.Tr 7 と Tr 8 は,最大定格に余裕を持たせたい場合,2SC2060 と 2SA934 の組み合わせが適当です.この組み合わせのトランジスタは現在では廃品種ですが,在庫部 品としてネットでは入手可能です(松本無線パーツなど). 電圧ゲインは R19 /R17 = 5600/180 = 31 より,約 30dB です. スピーカは,10W,8 Ωのトランペット・スピーカ(秋月電子通商扱い)を使用します.低音域は必要 ないので,鳥の鳴き声には好適です.インピーダンスが 4 Ωのスピーカだと出力が大きくなりますが, 実際に使用するのは高音域なので,8 Ωでも十分な音圧が得られます. ● 鳴き声の録音方法 録音するには,秋月電子通商から 60 秒電子録音・再生モジュール K01 − A として販売されている, APR9600 を使ったキットを利用します.録音後,IC を取り外して撃退器の IC ソケットに取り付けます. ただし,キット付属のマイク回路では,鳥の鳴き声の録音はゲイン不足で無理です.また,AGC の アタック・タイムも音質を劣化させます.そこで APR9600 の 20 ピンと 21 ピンの間に入っているカップ リング・コンデンサを外し,20 ピン(ANAIN)に,収録に使ったオーディオ・レコーダのライン出力を 接続して録音します.なお,このカップリング・コンデンサは,再生時には 21 ピン(ANAOUT)に接 続しておく必要があります.もちろん,録音回路は APR9600 を使って自分で作ることも可能です.回 路例を図 2-5 に示します. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 38 第2章 カラス撃退器 0.1μ 100μ D32 REC I C31 APR9600-DIP28 R 31 1k SW31 C 32 C 31 D31 BUSY BT31 6V 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 REC/PLAY ON R 32 20k M1 M2 M3 M4 M5 M6 OscR M7 M8 Busy BE VSS D VSS A SP+ VCC D RE ExtClk Msel-2 Msel-1 CE Strobe AnaOut Ana I n AGC MicRef Mic I n VCC A SP− 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 R 37 4.7k R 33 1k SW32 再生 録音 C 37 R 38 22μ 4.7k R 34 100k C 33 0.1μ M31 マイク C 34 0.1μ C 35 0.1μ R 35 82k C 36 4.7μ 3 2 1 外部入力 J31 R 36 220k LS31 8Ωスピーカ 図 2-5 録再 IC APR9600 に音声を書き込む回路 APR9600 VR 1 NE555 VR 2 (a)表面 写真 2-4 (b)裏面 製作したカラス撃退器の基板 ● 基板の製作とケースへの組み込み 回路はユニバーサル基板を利用して,写真 2-4 のように組み立てました.ケースに組み込みやすいよ うに,周辺部分を空けておくと取り付け時に融通が効きます.はんだ面は部品のリード線の切れ端を 使って配線し,すべてはんだめっきしておきます. 2-3 撃退器の成果 39 スピーカ 太陽電池 第 1 部 第 2 部 第 3 部 写真 2-5 スピーカ,基板,電池 をケースに組み込んだところ 写真2−4に示した基板 写真2 写真 2−4に示した基板 写真 2-5 はケースに組み込んだところです.トランペット・スピーカは,防水シートで周囲を覆って います.太陽電池パネルからの引き込み線やスイッチ類は,雨が内部にしみ込まないよう,たるませた り,シールするなどの配慮が必要です. 2− 3 撃退器の成果 ● 予定通りカラスは逃げた ぶどう園は図 2-1 のように,2 月中はシーズン・オフですから,カラスが食べる実はありません.そこ で,自宅の庭に設置したところ,スピーカから音が出た途端,カラスが 1 匹,どこからか飛び立ち,遠 くへ飛び去って行きました.7 月になり,ぶどう園に本機を 2 台設置しました.音声出力が大きいので, 効果は抜群で,カラス被害は激減したとのことで,大変喜んでもらえました.また,雨天続きだとバッ テリが空になることがあり,自動車用の外部バッテリの接続端子を追加したことを付記しておきます. ● およそ 500m 以内の犬が一斉にほえだした 同時に周囲 500m 内にいる犬が一斉にほえだしたのは,日ごろ聞き慣れないカラスの叫び声だったか らでしょうか.近くで聞くと耳をつんざくような音量で,耳をふさがないと鼓膜が張り裂けそうになり ます.遠くの犬でもこれでは仰天します.鳥の声だけに,誰もスピーカからの音とは気付かないようで した. この撃退器は,ごみ捨て場で残飯をあさるカラスにも効果があるでしょう. B 参考文献 B (1)APR9600 データシート Ver2.2,APLUS INTEGRATED CIRCUITS INC. (2)LM555/NE555/SA555 Single Timer データシート,Fairchild Semiconductor Corporation,2002. B 取材協力 B 平田芳 氏(福岡県京都郡みやこ町在住) 第 4 部 第 5 部 40 第3章 0.4W 太陽電池,結露センサ,タイマ IC555, ニッケル水素蓄電池で作る 降雨警報機 3− 1 ふとんを干しつつ昼寝をしたい 筆者はよく留守番を頼まれますが,たいてい「○○を干しているから,雨が降ったら取り入れてね」 との附言が付きます.これでは昼寝もできません.これが今回の製作の動機です. しかし,警報器はあるが,動作しなかった…では役に立ちません.この最大の心配は電池切れです. 警報器が電気を食うことも問題です.電池が消耗していると思うともったいなくて,雨音に注意してい たほうがましです.太陽電池を使えば,洗濯と相性が良く経済的です. また,このセンサを洗濯物に密着させると,逆動作の「洗濯物乾燥センサ」にすることも可能かもし れません. 小型の太陽電池モジュールを使って,雨が降ってきたことを検知する降雨警報器を作ってみましょう (写真 3-1). 3− 2 結露センサと太陽電池を使う ● カタログ表記から太陽電池の出力を推定する 電子部品店で入手可能な小型の太陽電池は「250mA,2.0V」のような表記がされています.これは多 くの場合,「直射日光(1kW/m2)下での短絡電流,開放電圧」を表します.実際には短絡や開放で使う ことはなく,また必ずしも晴天とは限りません. 図 3-1 に,ほぼ同一面積の,2 種類の太陽電池の特性を実測した結果を示します.縦軸の電流値は, 入射光の強度によって変わります.しかし,曲線の形は電流値(光強度)が違っても同じです. 図 3-1 は,白熱電球から一定の距離に太陽電池を置いて,今回の回路が動作するほぼ最低の光強度で 測定した出力特性です.効率が最大となる点は,図の★点で,開放電圧の約 80 %が目安になります. ①は電圧が高く,②は電流が多く取れますが,今回のように,DC−DC コンバータを使う場合は,どち らを使っても大差ありません. ● 結露センサを使って降雨センサを作る 写真 3-2 は,VTR の回転ドラムなどの露付きを検出するための結露センサです.これは,湿度セン 3-2 100 結露センサと太陽電池を使う 2 1.4V,410mA 太陽電池パネル 電流[mA] 物ほし竿 1 2V,250mA ETM250-2V 60 第 1 部 効率が最大と なる動作点 8A6K-G6EC 80 41 ★ 第 2 部 ★ 40 20 0 0 結露センサを使って 手作りした降雨センサ 図 3-1 写真 3-1 0.5 1 1.5 電圧[V] 2 2.5 使用する太陽電池の実測特性(低照度時) 太陽電池で動作する降雨警報器 φ2.8mm ビス 2.6mm×6mm 4か所 窓 11mm アルミ板 t =1.5mm 20mm×20mm 木綿布 20mm×20mm 写真 3-2 結露センサ(左:松下電工製,右:北陸電工製) チャンバ 12mm2 105 104 抵抗値[kΩ] 2月 103 102 25℃ 全国の月別相対湿度分布 ゴム・シートt =3mm 20mm×20mm 結露センサ (両面テープ で接着) max min typ 1 図 3-2 7月 スレッショルド設定点 10 10−1 60 ステンレス・ メッシュ 20mm×20mm 線径0.26mm, ピッチ0.6mm 程度 70 80 相対湿度[%RH] 90 100 結露センサの特性 水抜き穴 M2.6 タップ (ねじ切り) 4 か所 図 3-3 アルミ板t =2mm 20mm×20mm 降雨センサの製作方法 サの一種で,図 3-2 のような特性をもっています. 湿度が 90 %を越えると急激に抵抗値が増加します.図中に示したように,大気の湿度は,全国デー タで 2 月が最低 55 %(前橋),7 月が最高 92 %(根室)です.湿度が 90 %を越える場合は霧か雨と考えら れますが,逆は真ならず,晴天でも雨が降ることはあり,湿度だけで雨を検出することはできません. 第 3 部 第 4 部 第 5 部 42 第3章 降雨警報機 写真 3-3 完成した降雨センサの外観 ● 雨を確実に検出するために結露センサを箱に入れる 湿度センサに雨滴が付いただけでは,表面張力ではじいてしまうので,雨を検出するには不十分です. そこで図 3-3 のように,結露センサを小さな部屋 (チャンバ) に入れます.雨滴は木綿布で受け止められ, 布の糸目に拡がった水分が,チャンバの中を高湿の状態にします.メッシュはセンサの防護と,布のた るみを防止するためのものです. 写真 3-3 は,完成した降雨センサの外観です.この構造により,雨の場合にチャンバの中は 90 %以上 の湿度となり,降雨の検出が可能になります. 3− 3 回路の製作と実装 ● 回路を駆動する 5V の電圧は DC−DC コンバータで得る 雨が降りそうなときは,たいてい曇天で太陽電池の出力は数分の 1 です.また,小型の太陽電池モ ジュールは 1 〜 2V のものが入手が容易です.このような条件から,入力電圧を低く見積もり,曇天時 のバッファとして 1.2V の 2 次電池を入れることにします.そして,これを DC−DC コンバータを使って 5V に昇圧することにします. 製作した回路を図 3-4 に示します.図の下段が電源回路です.IC 4 の MAX757 は,入力電圧が 0.7V か ら動作するので好適です.使用した部品の一覧を表 3-1 に示します. ● 抵抗値の測定はブリッジ回路で しきい 図 3-2 で,スレッショルド(閾 値)を 22kΩに設定しました.抵抗値はブリッジで検出すると確実で, 設計も容易です. 図 3-4 の IC1a は,ブリッジの平衡点を検出するための電圧コンパレータです.雨が降ると,抵抗値が 上昇し,図 3-2 の 22kΩの点を越えます.すると,IC1a の出力(オープン・コレクタ)は L から H に 変わります. LED1 は通常は点灯しており,警報器が正常に待機していることを示しますが,雨が降ったり,セン サが濡れているときは消灯します. 3-3 乾燥状態で点灯 C2 22μ 180k R2 22k R6 1M R4 LED1 R3 22k 3 2 1k 8 1 R8 D3 R 10 R 21(Panjit) + 10Ω D1 SBT1 逆流防止 太陽電池モジュール OFF 2V,250mA SW1 POWER BT1 R 12 0.1μ 220k I C1b LM393 R 13 C6 1M 47μ I C2 NE555 (フィリップス) 7 3 DSCHG OUT R 14 5 CV 47k 4 RST 6 R 15 C 10 THRES 2 47k 1μ TRG 8 VCC GND C7 1 C C9 0.01μ 8 0.1μ 22μ タイマ周期 設定 断続周期設定 立ち上がり 検出(微分) C 16 5.3V 1.2V L1 22μH I C4 MAX757 (マキシム) 5 8 1.2V 100μ LBI LX 3 6 REF OUT 4 2 LBO FB 1 SHDN ON C 14 GND 0.1μ 7 R 16 4.7k D2 R 17 13 11 10 12 8 10k C 12 1S4 C 13 0.7Vから動作する昇圧型DC-DCコンバータ 図 3-4 I C3a NE556 (フィリップス) 1 5 DSCHG OUT 3 CV 4 RST 2 THRES 6 TRG 14 VCC GND 7 7 100k 100k 22k I C1a LM393 SENS1 (NS) 1N4148 ブリッジに組む 降雨センサ: 結露センサを利用 ニッケル水素 充電電流制限用 1S4 2次電池 1M R 11 5 6 C1 220p 4 R5 R9 100k 10k R 21 C3 C 5 0.1μ R1 43 警報音を 断続させる 降雨 C 4 0.01μ ヒステリ シスをも たせる 立ち上がりでタイマをスタートする 50秒 電源立ち上がり時の誤動作防止 (リセット) センサの電流は 小さく設定 回路の製作と実装 C 11 R 20 330k R 19 100k 0.01μ I C3b NE556 100μ 9 R 22 DSCHG OUT 100Ω CV RST THRES TRG 0.1μ C 15 100μ 出力電圧設定抵抗 Tr1 2SC 1815 (東芝) R 18 33Ω SP1 警報音 警報音周波数設定 NS:ナショナル セミコンダクター 製作する降雨警報器の回路 ● 警報はエッジ動作にしてセンサの乾燥を待つ IC 2 は,警報音の持続時間を決めるタイマです.警報を鳴りっぱなしにすると留守のときなど近所迷 惑になるので,降雨検出後スイッチを OFF にしない場合は,約 50 秒で警報音を止めるようにしました. IC 2 は,2 番ピンのトリガ端子が H → L となったときにタイマがスタートします.そこで, C 1, R 8 と IC1b により,このエッジ・パルスを生成します.センサが一度雨で濡れると,次に使用するには 木綿布の乾燥を待つ必要があります.この乾燥時に,逆方向で 22kΩのスレッショルド点を通過したと きには,IC1b はパルスを発生しないので,自動的に次の降雨に備える動作に入ります. ● 警報音はタイマ IC で作る 図 3-4 の IC 3 は,警報音の発生回路です.NE556 は NE555 が 2 個入った IC で,内部回路はすべて同じ ですが,IC 2 がモノステーブル・マルチバイブレータ(単安定)として R 13 と C 6 の時定数で単発動作させ ているのに対して,IC 3 はアステーブル・マルチバイブレータ(無安定)として,R 14,R 15 と C 10 の時定 数でパルスを作っています. IC 3b は警報音の周波数,IC 3a は警報音の断続周期のパルスを生成しています.NE555(オリジナルは 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 44 第3章 表 3-1 降雨警報器の電子部品一覧 降雨警報機 結露センサの入手先:㈱ビックス http://www.vics.co.jp/ 参照番号 部品名 仕様など セラミック・ コンデン 220 pF サ 数量 参照番号 部品名 仕様など 数量 22 μF 2 0.1 μF 5 R 4,R 6,R13 R 8,R 9,R 10, R 19 R 17,R 11 カーボン抵抗 1/6 W 10 kΩ 2 R 12 カーボン抵抗 1/6 W 220 kΩ 1 0.01 μF 3 R 15,R 14 カーボン抵抗 1/6 W 47 kΩ 2 R 16 カーボン抵抗 1/6 W 47 kΩ 1 1 R 18 カーボン抵抗 1/6 W 33 Ω 1 R 20 カーボン抵抗 1/6 W 330 kΩ 1 電解コンデンサ 100 μF ショットキー・バリア・ 1S4 ダイオード 3 R 21 カーボン抵抗 1/6 W 1 kΩ 1 R 21 カーボン抵抗 1/6 W 10 Ω 1 カーボン抵抗 1/6 W 100 Ω 1 D3 シリコン・ダイオード 1N4148 1 R 22 SBT1 太陽電池モジュール 2V,250 mA 1 IC1 コンパレータ IC LM393 1 IC2 タイマ IC NE555 1 BT1 ニッケル水素蓄電池 単 3 型,1.2 V, 0.2 A 1 IC3 タイマ IC NE556 1 SENS1 結露センサ 北陸電工製 1 IC4 DC − DC コンバータ IC MAX757 1 SP1 スピーカφ 57 mm 8 Ω,0.2 W 1 C1 C 9,C2 C 3,C 5,C 8, C 12,C 14 C 4,C 7,C 11 C6 C 10 C 13,C 15,C 16 D1,D2 電解コンデンサ 積層セラミック・コ ン デンサ セラミック・ コンデン サ 電解コンデンサ 47 μF 積層セラミック・コ ン 1 μF デンサ 1 1 2 カーボン抵抗 1/6 W 1 MΩ 3 カーボン抵抗 1/6 W 100 kΩ 4 LED1 発光ダイオード φ 3 mm 赤色 1 SW1 トグル・スイッチ 1 回路 2 接点 1 L1 パワー・インダクタ 22 μH 1 Tr1 トランジスタ 2SC1815 1 R1 カーボン抵抗 1/6 W 180 kΩ 1 基板 ユニバーサル基板 70 mm × 95 mm 1 R 2,R 3,R 5 カーボン抵抗 1/6 W 22 kΩ 3 電池ボックス 基板用,単 3 × 1 本 BH − 311P − 1 1 旧シグネティックス社)は,筆者の記憶では数十年のロングセラーで,タイマとして定番の IC です. ● 部品のレイアウトと配線 アクリル・ケース内にスピーカを配置すると,マグネット部分がじゃまになり,図 3-5 のように回路 基板の中央に穴が開きます.BT1 の近くに電源回路を配置し,信号の流れに沿って部品を配置すると, うまくパターンニングできます.警報音回路が動作すると大きな電流が流れて電源電圧が変動するので, これを考慮して配線します. 写真 3-4 は完成した基板です.IC のソケットは必須ではありません. ● 大型の洗濯ばさみで警報器を固定する 物干し竿に取り付ける大型の洗濯ばさみに本機を取り付けて,どこでも使えるようにしました(写真 3-1).ベランダの手すりに取り付けることもできます.図 3-6 のように,「毛布・マット用ピンチ」とい う強力な洗濯ばさみを利用しました. アクリル・ケースは,「CPU 固定ブロック」という,パソコンやプリンタが落下しないように固定す るマジック・テープ(面ファスナ)の付いた耐震用品を使うと,ピンチの曲面にも容易に取り付けるこ とができます.太陽電池の背面は紙フェノール基板なので,アクリル・ケースには両面テープで十分な 強度で接着できます. 回路基板以外での使用部品を表 3-2 に示します. 3-3 25 D3 R9 C2 R 11 LED1 C3 C5 10 SW-OFF C9 R 13 C 13 R 16 C 12 C6 R 22 C7 C 10 5 10 太陽電池 モジュール アクリル・ケースに 両面テープで接着 BT1 L1 C 8 SP+ I C3 アクリル・ケース と接着剤または 両面テープで接着 D2 R 17 R 14 図 3-5 C 15 C4 5 C 11 R 15 R3 R2 R1 R6 R 21 C 1 I C2 R 12 SENS C 16 Tr1 I C4 SP− R 18 R 21 D1 R 19 R 20 C 14 SOLAR+ 15 20 25 45 降雨センサ SW- SW-ON − CT SOLAR− SW1 R4 R5 I C1 20 15 SENS-G R 10 R8 回路の製作と実装 + アクリル・ ケース蓋 本体に取り付け後, 周囲をテープで固 定する 回路基板 スペーサ 15mm×3 アクリル・ケース 本体 30 スピーカ周囲 を両面テープ でアクリル・ ケースに固定 する 降雨センサ基板のパターン(部品面) 両面テープ SW1 マジロック×2 CPU固定ブロック(L) マジック・ テープ×2 毛布・マット用ピンチ 写真 3-4 製作した回路基板 表 3-2 図 3-6 降雨警報器の組み立て方法 降雨警報器の機構部品一覧 ステンレス・メッシュは灰汁取り(台所用品)から切り出してもよい 部品名 型名,仕様 アクリル・ケース SK−5(90 × 70 × 24) アルミ板 t = 1.5 mm,t = 2 mm 数量 1個 各 20 × 20 mm ゴム・シート (t = 3 mm) GS − 09 木綿布 木綿のハンカチ 20 × 20 mm ステンレス・メッシュ 線径 0.26 mm,ピッチ 0.6 mm 20 × 20 mm 20 × 20 mm ビス M2.6 mm × 6 mm,なべ 大型洗濯ばさみ 毛布・マット用ピンチ 4 1 CPU 固定ブロック(L) コクヨ EAS − TS2 1 B 参考文献 B (1)特集 太陽電池応用製作への誘い,トランジスタ技術,2005 年 9 月号,CQ 出版社. (2)特集 やってはいけない! 電子回路設計,トランジスタ技術,2005 年 11 月号,p.171,CQ 出版社. (3)結露センサ HDP−07 仕様書.s http://www.hdk.co.jp/ 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 46 第4章 1.6W 太陽電池,手作りコイル,ピーク・ホールド, 3 秒タイマで作る ゴルフ・トレーナ 4− 1 スイング速度が定量的にわかれば素振りも楽しくなる なぜか,技術畑の若い人でゴルフを楽しむ人はあまり多く見かけません.筆者の場合も同様で,管理 職になって暇になってから,練習場に通うようになり,一通り指導も受けました.しかし,同じように 振っても,飛ぶ方向が確定しません.素振りの練習が不足しているからです. とは言っても,素振りほど面白くないものはありません.定量的に結果がわかるような機械があれば 練習も楽しくなります. 本機は庭に放置しておくことができ,メンテナンス不要です.使わないときは思い切り光って,練習 を催促してくれます.天気の良い日にはスポーツで汗を流すのが健康の一番の秘訣です.これを機会に ゴルフでもやってみませんか? 太陽電池は手軽に入手できますが,いざ応用を考えると意外に用途が限られます.その理由は天候に 左右されることにあります.このための対策としては,蓄電池に充電することで電力の需要と供給のバ ランスを取ります.しかし,蓄電池の寿命は電子機器の部品の寿命に比べて一般に短く,太陽電池応用 機器にとってネックとなります.それでは,太陽電池だけで動くものを作れないでしょうか? というわけで,屋外での使用頻度が高い,ゴルフのスイング(素振り)練習機を,太陽電池だけを 使って製作してみましょう(写真 4-1) . 写真 4-1 芝生に埋め込んだゴル フ・スイング・トレーナ 4-2 電磁誘導を利用してヘッド・スピードを予測 47 第 1 部 高さ[m] 30 20 第 2 部 vB = 10 31m/s 第 3 部 vB 0 0 図 4-1 45° 20 60 40 距離[m] 80 100 空気抵抗を無視した場合のゴルフ・ボールの飛跡 4− 2 写真 4-2 付ける 人工芝の裏側にピックアップ・コイルを取り 電磁誘導を利用してヘッド・スピードを予測 ● ゴルフ・ボールの飛距離はヘッド・スピードから予測できる ゴルフ場のスタート点からホールまでの距離は,50 〜 500 ヤード(1 ヤード≒ 0.9144m)とさまざまで す.したがって,スイング動作と飛距離の関係をつかんでおかないと,正確にホールにアプローチする ことができません. ゴルフ・クラブの初速度(ヘッド・スピード)と飛距離には一定の関係があります.打ち出し角が 45 ° のときに飛距離が最大になりますが,空気抵抗を考慮すると,これよりやや小さくなります.打ち 出し角を 45 ° とすれば,飛距離 L は, vB 2 L[m]= vB :ボールの初速度[m/s] :重力加速度(9.8m/s 2) となります. 図 4-1 に速度 31m/s で打ち出したときの軌跡を示します.空気抵抗を考慮すると,飛距離は 60 %ほ どになりますが,ボールの初速度 vB はヘッド・スピード vH の 1.4 倍くらいはありますから,結局,概 略の飛距離 L は, 2 0.6 × (1.4vH ) 1.2vH 2 L[m]= ≒ と表せます.飛距離が,ヘッド・スピードの 2 乗に比例することに注意してください. ● ピックアップ・コイルを人工芝に埋め込む ゴルフ・クラブに磁石を埋め込み,人工芝の裏側中央(ボール位置の真下)にピックアップ・コイル を設けて,電磁誘導の法則でクラブの速度を検出します. ピックアップ・コイルは写真 4-2 のように,φ 0.2 〜 0.3mm の銅線を,直径 32mm の円形に 50 回巻い たものです.巻き枠は 35mm フィルムの容器が適当です.周囲を糸で縛り,人工芝の裏側に糸でくくり 第 4 部 第 5 部 48 第4章 ゴルフ・トレーナ コイルの誘起電圧[mVP-P] 450 図 4-2 ピックアップ・コイルの出力波形(vH = 10.5m/s, 間隔: 18mm,100mV/div,1ms/div) 400 350 300 250 200 150 100 50 0 0 5 10 15 磁石の速度[m/s] 20 25 図 4-3 磁石の速度とコイルの誘起電圧の関係(巻き数: 50 ターン,間隔: 15mm) つけます. ● コイルの出力電圧は磁石の移動速度に比例する ピックアップ・コイルの出力波形は,図 4-2 のようなもので,正と負のピークの間隔 T は磁石の直径 に対応します.磁石の直径を d[m]とすれば,vH = d /T となります.図 4-2 の場合,d = 0.018m,T = 1.72ms ですから,vH = 10.5m/s となります. 磁石のスピードとコイルの誘起電圧は,図 4-3 のように比例関係となります.これは,磁束の時間的 変化が,起電力に相当するという電磁誘導の法則にほかなりません. 以上の結果から,コイル誘起電圧を測定すれば,磁石の移動速度(つまりゴルフ・クラブの先端の速 度)を求めることができます. ● ゴルフ・クラブに磁石を埋め込む 磁石をゴルフ・クラブ(ドライバ)に固定する方法は,いくつか考えられます.一つは,クリップで シャフトに固定する方法です.この場合,コイルとの距離が離れるので,誘起電圧が下がります.これ はアンプで増幅すれば解決できます.しかし,ボールに当たる部分(フェース)から離れるので,デー タの信頼性は落ちます.また万一外れると危険です. これに対し,ドライバの中に磁石を埋め込む方法は,信号強度,ボールとの位置関係,安全性の点で 好都合です.難点は,高価なゴルフ・クラブに傷を付けてしまうことです.この点,リサイクル・ ショップで安く入手したものであれば,気が楽です.写真 4-3 のようにドリルで穴を空けて,円形磁石 を埋め込みます. 4− 3 回路の検討と製作 ● アナログ回路はレベル設計から始める 全体の回路を図 4-4 に示します.ゴルフ規則では,球の速度は 76.2m/s 以下と定められています.し たがって,ゴルフ・クラブのヘッド・スピードは,76.2 ÷ 1.4 = 54m/s が最大値と考えられます.ここ 4-3 回路の検討と製作 49 第 1 部 第 2 部 第 3 部 (a)カバーを外して磁石が入る穴を空ける 写真 4-3 (b)円形磁石を入れて接着剤で固定する (c)元どおりカバーをかぶせて完成 ドライバの中に磁石を埋め込む では,最大 40m/s として設計します. 図 4-3 を外挿すると,40m/s では,コイルの誘起電圧は 840mVp − p となります.プラス側をピーク・ ホールドすれば 420mV です.コンパレータに入力する最大電圧を 4.5V とすれば,アンプ IC 2a のゲイン は 4.5/0.42 = 10.7 倍となります.ゲインは,(R 2 + SVR 1)/R 4 で決まりますから,R 4 = 10kΩとすれば R 2 + SVR 1 = 107kΩです. 実際の間隔(コイルと磁石の距離)は図 4-3 の 15mm より大きいので,余裕をみてゲインを 12 〜 22 倍 としました.最終的には,スイングしてみて R 2 の値をカット&トライで決定します. ● 太陽電池を直列にして使うときの注意 太陽電池モジュール(ETM250 −2V,リンクマン)を 4 個直列にしました.定格は 2V,250mA とあり ますが,2V は無負荷時であり,250mA は短絡電流です.3 個でも動作しますが,影の影響を軽減する ために 4 個としました.影の影響とは,プレイヤの影がモジュールの一部を覆う場合で,影に入ったモ ジュールは高抵抗の負荷となり,回路電流が流れなくなります.これを防止するために,モジュールご とにバイパス・ダイオードを入れる必要があります. 太陽電池を直列にして使うときのもう一つの注意事項は,直列にして電圧が 2 倍となるのは,無負荷 のときだけという点です.負荷があるときは,ある個数以上直列にしても電圧は上昇しません.消費電 流によって,最大電力が取り出せる電圧,つまり最適個数が決まります.本機の消費電流は約 50mA で, 最適個数は 3 〜 4 個です. ● ピーク・ホールド回路とコンパレータを組み合わせる IC 3 で構成されるピーク・ホールド回路は,ゲインが 1 なので,ピーク値がそのままホールドされま す.この電圧を IC 5,IC 6 のコンパレータ回路で判別し,レベルに応じて LED を点灯します.−端子の 電圧が,それぞれの+端子の電圧を越えると,該当する LED が点灯します. この仕様だと,本機が待機状態にあるときは,LED がすべて消えています.そこで,待機状態では 第 4 部 第 5 部 50 第4章 図 4-4 ゴルフ・スイング・トレーナの回路 ゴルフ・トレーナ 最大電圧を5Vに制限する SO+ D1 D5 SB1 C 11 HZ5C-1 ETM250 1N4148 100μ (ルネサス -2V×4 (フェア エレクトロ チャイルド) I C1 ニクス) D2 8 1 SB2 V+ FC 1N4148 7 2 CAP+ OSC C1 6 3 LV G 10μ 5 4 CAP− OUT D3 SB3 1N4148 ADM660 (アナログ・ デバイセズ) D4 SB4 1N4148 正電圧に等しい SO− 負電圧を作る 逆流防止ダイオード プレイヤ影の影響をなくす R6 2.2M 2Vの太陽電池を 4個直列にする C9 1.5μ 表示時間タイマ (約3秒) 必要なレベルに増幅する C4 R2 OUT C 14 100μ C 15 C2 10μ 0.1μ R 18 1.8k R 19 1.8k R 20 1.2k R 21 LLSB 1.2k R 22 1.2k R 23 1.2k R 24 1.2k R 25 1.2k R 26 1k 保持電圧 I C3a TL082 リセット (テキサス・ インスツル D7 メンツ) 8 1N4148 1 100k 8 C6 22μ Q Q C7 33μ 10k 13 4 I C4b 9 A 10 B Q Q 6 CEXT 7 REXT/CEXT C 10 0.1μ 表示3秒 11 0.27μ 10k 0.1μ ホールド・コンデンサ (フィルム・タイプを 使う) 10k R6 C8 R7 R8 C 12 0.1μ CLR 74HC123AP OSHR5161P D 8 ×18 LSB D9 SVR 1 2 1 3 IN 4 I C 2a 4 Tr1 LM358 1.5μ 2SC1815 R3 R 4 (ナショナル L1 9.1k 10k セミコンダクター) 2 3 C3 トリガ表示 +5V D6 1N4148 0.1μ ピックアップ・ 120k コイル 14 CEXT 15 REXT/CEXT 3 R 1 10k C5 22μ C 13 I C4a 1 A 2 B ピーク・ホールド回路 5 12 リセット・パルス 1ms幅 リセット・パルス (約1ms)を作る CLR 74HC123AP (a)計測部 スピード表示 D10 D12 D14 D16 D18 D20 D22 D24 D11 D13 D15 D17 D19 D21 D23 D25 I C5d LM339 (ナショナル セミコンダクター) 11 R 27 13 10 68Ω I C5c LM339 R 9 28 14 8 68Ω I C5a LM339 R 7 29 1 6 68Ω I C5b LM339 R 5 30 2 4 68Ω I C6d LM339 R 11 31 13 10 68Ω I C6c LM339 R 9 32 14 8 68Ω I C6a LM339 R 7 33 1 6 68Ω I C6b LM339 R 5 34 電圧レベルに応じてLEDを点灯 2 4 させるためのコンパレータ回路 68Ω (b)表示部 MSB 4-3 写真 4-4 待機状態での LED 表示(左端がトリガ,その右 が LSB,右端が MSB) R 13 15k I C2b 6 5 7 R 11 5.6k 6 5 第 1 部 Tr4 2SA1015(東芝) OUT R 15 10k TL082 51 +5V トリガ電圧を作る I C3b 回路の検討と製作 R 16 2.7k LM358 7 待機時にLED を全点灯させ る 第 3 部 R 35 R 12 1k 10k R 17 第 4 部 10k LLSB R 10 10k R9 Tr2 2SC1815 68Ω R 18 10k 第 5 部 Tr3 2SC1815 (東芝) R 14 10k 表示とリセットの シーケンス・トリガ 第 2 部 写真 4-5 完成した基板の外観(部品面) すべての LED を点灯し,左端の LED をトリガ表示(信号の有無を示す)とします.派手に光らせておけ ば誤って踏んでしまうこともないでしょう(写真 4-4). なお,表示されるのは飛距離ではなく,ヘッド・スピードです.表示が 2 倍になれば,飛距離は 4 倍 と換算する必要があります.飛距離の平方根を表示していると考えてもよいです. ● 一定時間表示してから待機状態に戻す 信号が入ったら,レベルを点灯 LED の個数で表示し,3 秒後にリセットして待機状態に戻します.こ のシーケンスは,タイマで作ります.今回は,数秒の時間が簡単に作れるマルチバイブレータでタイマ を実現します. マルチバイブレータの動作については,参考文献(1)を見てください.タイマ時間 T[秒]は,T = RC で決まります.IC 4a は 3 秒のタイマですから,C 9 = 1.5μF が手元にあるとすれば,3 = R × 1.5 × 10−6 から,R = 2MΩとなります.ここでは手持ちの 2.2MΩを使いました. 3 秒経過したら,C 8 をショートして,ホールド電圧を 0V にします.このためのパルス(リセット・パ ルス)を IC 4b で作成します.パルス幅は,C 8 の電荷が,Tr 1 の ON 抵抗(数十Ω)を通って放電するとき の時定数以上に設定すればよく,十分な余裕をみて 1ms とします. ● ユニバーサル基板を使って回路を組み立てる 図 4-5 のように部品を配置します.写真 4-5 は完成した基板です. 52 第4章 ゴルフ・トレーナ R 18 R 27 MSB SO+ R 19 D5 R 28 C 15 I C5 R 29 R 30 R 31 R 32 L E D へ R 22 R 23 C 14 R 26 R 15 R8 C2 E C B R7 SO− C8 C6 R 25 I C4 R5 R6 R 18 C7 R1 C C 10 B C 13 D6 E R 16 C9 Tr1 I C1 I C3 LSB C 12 R 21 R 24 I C6 R 33 R 34 C1 C 11 R 20 Tr4 C4 R 13 R 17 B C E Tr3 R 35 R9 C5 Tr2 R 11 R 12 D7 R3 I C2 R 10 R 14 R4 R2 SVR 1 C3 IN コイル LLSB 図 4-5 ユニバーサル基板上の部品配置とパターン(部品面視) (a)セットの裏面 写真 4-6 (b)セットの表面 製作したゴルフ・スイング・トレーナの外観 ● ケースの製作と回路基板の収納方法 プラスチック製の B5 書類ケースに収まるように,写真 4-6(a)のような木枠を組み,(b)のように表 面にアクリル板 t = 1.5 〜 2mm を張り,太陽電池モジュールと高輝度 LED を取り付けます.直射日光下 でも LED が見やすいように,LED 部分には黒色のつや消しアクリル板を使用しました. ケースの上蓋をかぶせたあと,周囲をパテなどの充填剤を使って防水処理しておきます.踏まれる心 配がある場合は,表面をさらに厚手の透明プラスチックで覆います.表 4-1 は,今回使用した部品の一 覧です. 4-3 表 4-1 53 回路の検討と製作 ソーラ・ゴルフ・スイング・トレーナの部品一覧 参照番号 品 名(メーカ) 型 番 個数 SB1,SB2,SB3,SB4 太陽電池モジュール,2 V 250 mA (リンクマン) ETM250 − 2V 4 IC1 電源 IC(アナログ・デバイセズ) ADM660 1 IC2 OP アンプ IC (ナショナル セミコンダクター) LM358 1 IC3 OP アンプ IC (テキサス・インスツルメンツ) TL082 1 IC4 ロジック IC (東芝) 74HC123AP 1 IC5,IC6 コンパレータ IC (ナショナル セミコンダクター) LM339 2 Tr1,Tr2,Tr3 NPN トランジスタ (東芝) 2SC1815 3 Tr4 PNP トランジスタ (東芝) 2SA1015 1 高輝度 LED/ 赤(オプトサプライ) OSHR5161P 18 D1,D2,D3,D4,D6,D7 小信号ダイオード (フェアチャイルド) 1N4148 6 D5 5 V 定電圧ダイオード (ルネサス エレクトロニクス ) HZ5C − 1 1 C8 ポリエステル・フィルム・コンデンサ 0.27 μF ,50V 1 C 1,C 2 10 μ,10 V 2 C 4,C 6 22 μ,10 V 2 100 μ,10 V 1 D8,D9,D10,D11,D12,D13,D14,D15,D16 D17,D18,D19,D20,D21,D22,D23,D24,D25 C 11 電解コンデンサ C 12 33 μ,10 V 1 C 14 100 μ,10 V 1 1.5 μ 2 0.1 μF 4 C 3,C 9 C 5,C 7,C 10,C 13,C 15 SVR 1 積層セラミック・コンデンサ 半固定抵抗器 1/10 W 100 kΩ 1 R 1,R 4,R 6,R 7,R 8,R 10,R 12,R 14,R 15,R 17,R 18 10 kΩ 11 1 R2 120 kΩ R3 9.1 kΩ 1 R5 2.2 MΩ 1 R9 68 Ω 1 R 11 5.6 kΩ 1 15 kΩ 1 R 16 2.7 kΩ 1 R 18,R 19 1.8 kΩ 2 R 20,R 21,R 22,R 23,R 24,R 25 1.2 kΩ 6 R 26 1 kΩ 2 R 27,R 28,R 29,R 30,R 31,R 32,R 33,R 34 68 Ω 8 R 13 カーボン抵抗 1/6 W 1 ユニバーサル基板 72 × 95 m 人工芝(システム・ターフ) 30 × 30 cm(ワタナベ工業) ST − 30 グリーン クリア・ケース(書類ケース) 27.7 × 19.7 × 3 cm B5 サイズ 銅線 φ 0.2 〜 0.3 mm 円形マグネット φ 18 mm, t − 8.5 mm,保磁力の大きいもの 1 1 6m 掲示物固定用 1 B 参考文献 B (1)大幸 秀成;基本・ C-MOS 標準ロジック IC 活用マスタ,トランジスタ技術 SPECIAL,No.58,CQ 出版社. (2)岡村 廸夫; OP アンプ回路の設計,1974 年 5 月,CQ 出版社. (2)本多 光太郎;新制物理学本論(上) ,1955 年 1 月,内田老鶴圃. (3)ゴルフ規則,1996 年 1 月, (財)日本ゴルフ協会. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 54 第5章 70W 太陽電池,パワー LED 3 個,自動車用バッテリ 4 個で作る 終夜灯 5− 1 入手性が良くなった大型パネルで屋外灯を作りたい ソーラ・ハウスの普及とともに,大型のソーラ・パネルも容易に入手できるようになりました.そこ で本章では,この大型の太陽電池モジュールを使って,終夜点灯の屋外灯を製作します(写真 5-1).門 灯や庭園灯,看板照明などにも使えます.光源には効率の良い蛍光灯とパワー LED を組み合わせます. 昼間は太陽電池でバッテリを充電し,夜間は昼間に蓄えた電力を使って蛍光灯やパワー LED を駆動し ます. 大型のパネルを屋外に設置する場合は,風雨に耐える構造にしなければなりません.そこで,ホーム センターで簡単に入手できる木材(角材)で製作でき,強度が十分な自立型のソーラ・パネル架台の製 作方法も紹介します. 5− 2 LED と太陽電池,蓄電池の選択 ● 門灯や街灯は終夜灯でなければならない 門灯や街灯は,足もとを照らすという用途だけでなく,防犯の目的があり,街路に面した各戸の門灯 は周囲を明るくするという公共照明の役割もしています.暗闇をなくすことが目的ですから,一晩中明 るく点灯していなければなりません.また,雨や曇天が続いても点灯し続ける必要があります. しかし,この要求を実現するためにはかなり大きなソーラ・パネルが必要になり,蓄電池(バッテリ) も大容量のものが必要です.今回は大型パネルを使うと同時に,最近進歩が著しいパワー LED ランプ を併用し,消費電力を削減することでソーラ終夜灯の実現に挑みます. ● パワー LED を使ったハイブリッド照明で消費電力を削減 消費電力を削減するため,人が往来する夜 10 時ごろまでは蛍光灯で点灯し,その後,明けがたまで はパワー LED で駆動することにします.これにより,太陽電池で蓄えたパワーが有効に活用され,あ る程度の明るさで終夜点灯が可能になります. 写真 5-2 は,今回入手したパワー LED ランプです.特性を表 5-1 に掲げます. ともに Lumileds 社の製品で,左側が 1W クラスの LXHL −MW1B,右側が 3W クラスの LXHL−LW3C 5-2 55 LED と太陽電池,蓄電池の選択 第 1 部 第 2 部 LXHL− LXHL LXHL−MW1B −MW1B 写真 5-2 写真 5-1 蛍光灯モードで稼働中のソーラ門灯 表 5-1 型 パワー LED ランプの外観 第 4 部 パワー LED ランプの主な特性 名 色 色温度 光束 最大順電流 [K] [lm] [mA] 順電圧 [V] LXHL− MW1B 白 5500 25 350 3.42 LXHL− LW3C 白 5500 65 1000 3.7 (a)20W 型蛍光灯 表 5-2 使用する太陽電池モジュール の出力特性(NE−70A1T,シャープ) 項 目 最大出力 最大出力動作電圧 (b)パワー LED(1W × 3 個) 写真 5-3 第 3 部 LXHL LXHL− LXHL−LW3C −LW3C 蛍光灯とパワー LED の輝度比較 記号 公称値 Pm 70 W Vpm 15.81 V 最大出力動作電流 Ipm 4.43 A 開放電圧 Voc 20.40 V 短絡電流 Isc 4.87 A です.蛍光灯のブラケットの内部に実装する場合,最低 3 個は必要ですが,LW3C だと 3W × 3 = 9W と, やや消費電力が大きく,価格も高いので,写真左側の MW1B を 3 個使うことにしました. 写真 5-3 は,20W 蛍光灯(消費電力 24W)とパワー LED を 3 個配置した場合のブラケット表面の輝度 比較です.パワー LED は,3 個合計でわずか 2.4W(蛍光灯の 10 %)の電力しか消費しません.それでも, 蛍光灯(75lm/W)には及びませんが,終夜灯として何とか使用可能な明るさを確保できます. ● ソーラ・ハウスに使われている太陽電池を使用する 使用した太陽電池モジュールは,NE− 70A1T(シャープ)です.広く出回っている機種で,インター ネットを通じて安く入手できます.一般的な多結晶シリコン構造で,12V のバッテリ充電用に適したモ ジュール構成となっています. 充填材料は EVA ラミネート,フロント・カバーは白板強化ガラス,バック・カバーは耐候性白色 フィルムを使っています.モジュール寸法は 530 × 1200 × 35mm,重量は 8.5kg です.表 5-2 に主な仕 第 5 部 電流 800W/m2 4 35 7 100 30 6 80 600W/m2 3 120 60 2 40 1 20 0 0 電力 5 10 15 電圧[V] 20 VOC 20 4 3 15 10 0 25 (a)電圧・出力電流・電力特性 図 5-1 5 25 2 ISC 1 5 0 0 ISC[A] 出力電流[A] 放射照度 2 1000W/m 5 短絡電流 6 終夜灯 開放電圧 VOC[V] 第5章 電力[W] 56 200 400 600 放射照度[W/m2] 800 0 1000 (b)開放電圧・短絡電流の照度依存性(25℃) 使用する太陽電池モジュールの特性 様,図 5-1 に特性を示します. ● 大型ソーラ・パネルの設置と取り扱い上の注意 太陽電池モジュールは,太陽電池の単位セル(最大起電力 0.5V 程度)を複数,直列または並列に接続 し,耐候性の容器に封入したものです.太陽電池モジュールの公称出力は,JIS で規定されている下記 の条件で発生する電力です. ¡太陽電池モジュール温度: 15 〜 35 ℃(25 ℃基準) ¡放射照度: 1000 ± 50W/m 2 ¡測定光源: JIS で規定するシミュレータ(AM1.5,全天日射基準太陽光) 実際の太陽光下でのふるまいは,これより複雑です.出力が日射強度に依存するのは当然ですが,モ ジュールの温度によっても変化します. パネルの一部が影で覆われると,その部分の起電力が小さくなり,回路的には負荷となって発熱し, 得られる電力が減少します.NE − 70A1T は各セルにバイパス・ダイオードを内蔵することで,影部分 でのロスを抑えています. NE − 70A1T の引き出し線にはコネクタが付いていますが,これはモジュールを直列にして使うため のもので,今回のように単独で使う場合は切断してもかまいません.また,プラスが黒線,マイナスが 白線です.これは家屋の電気配線と同じ基準(白が接地側)です. 夜間など太陽電池の出力がないときに,バッテリ側から太陽電池へ逆流しないように,ダイオードを 直列に挿入しなければなりません.この逆流防止ダイオードは,バッテリの近くに取り付けたほうが漏 電の場合に安全です.使用するダイオードは最大電圧に耐え,最高温度で最大電流が流せるものを選び ます.太陽電池に落雷した場合,回路側を保護するには,サージ・アブソーバなどの保護素子を入れま す. 太陽電池モジュールを使った装置で,回路電圧が 30V 以上になると,電気事業法により電気工作物, 具体的には「小出力発電設備」とみなされ,設置には電気工事士の免許が必要になります.太陽電池の 接地は,電圧が高い場合には必要で,これも電気設備技術基準に定められています (今回は該当しない). 5-2 LED と太陽電池,蓄電池の選択 57 ● エネルギーの収支のバランスを取ることがポイント バッテリ電圧は 12V とします.入手性とコスト面からソーラ・パネルをはじめに決めてしまったの で,計算はここからスタートします. まず,太陽電池の最大出力動作電流 4.43A に,効率(太陽電池とバッテリを含めた効率)0.8 を掛けま す.すなわち,4.43 × 0.8 = 3.5A が,3.5 時間(日本の平均日照時間)取り出せると考えます.すると, 得られる電力は,12V × 3.5A × 3.5h = 147Wh となります.収入はこれだけです. 次に支出です.蛍光灯負荷が 12V 2A,パワー LED 負荷が 12V 0.2A です.蛍光灯を 4 時間駆動すると 24W × 4h = 96Wh,パワー LED 2.4W を 8 時間駆動すると 19Wh,合計すると 96 + 19 = 115Wh < 147Wh であり,収支面ではやや余裕がありますが,冬場の日照時間の少なさを考えると,この程度に しておくのが無難です. ● 自動車用のバッテリは不向きだが使えないことはない 今回のように,バッテリの充電と放電を交互に繰り返す使いかたをサイクル利用といいます.サイク ル利用には,ディープ・サイクル仕様のバッテリを使うのが本筋ですが,高価です. これに対し,自動車用のバッテリは充電しながら放電するのでフロート利用と呼んでいます.自動車 用は安価ですが,エンジンの始動用に設計されたもので,深い充放電を繰り返すと,寿命や容量の点で カタログどおりの性能が出ず,メーカ保証の範囲外となります.しかし,この点を承知のうえであれば, まったく使えないわけでもありません. 自動車用バッテリは 40B19L などと表記されていますが,40 は 5 時間率容量 28Ah にクランキング性 能係数 1.4(1.2 〜 1.5)を掛けたもの,B は寸法(幅と高さ)ランク,19 は長さ 19cm,L は端子配置を示し ます. ● 蓄電池の容量設計 蓄電池の容量は,次式で計算します. Nd Wavg Bc = Ub ここで,Bc :蓄電池容量[Ah],Nd :無日照日数[日],Wavg : 1 日当たりの消費電力[Ah/日], Ub :蓄電池放電深度[%] Nd = 5 日,Ub = 50 %とします. Wavg = 115Wh ÷ 12V = 9.6Ah/日 なので, Bc =(5 × 9.6)÷ 0.5 = 96Ah となります.バッテリの容量は 5 時間率で表記されており,今回は最初の 5 時間にほとんどの電力を消 費するので,5 時間率を適用すべきです.すると,表 5-3 から,130F51 が該当します. 表 5-3 を見ると,大型のバッテリは容量に比べて価格が高く,寿命を考えると割が合いません.そこ で,28Ah の 38B19 を 4 個並列で使用することにしました.この方法は,寿命の差などによる内部抵抗 のばらつきに起因して,相互に放電し合うことがあるので,定期的にバッテリの電圧を調べるなどの注 意が必要です. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 58 第5章 終夜灯 表 5-3 自動車用バッテリの容量と 価格比率(価格は同一店舗 での比較) 電池形式 5 h 容量 [Ah] 価格比率 電池形式 5 h 容量 [Ah] 価格比率 38B19 40B19 28 1 105D31 64 11 28 1.5 115D31 72 13 46B24 36 4 120E41 88 13 55D23 48 6 130F51 96 11 80D26 55 5 155G51 120 22 95D31 64 6 180G51 128 28 5−3 架台の製作 ● 架台はソーラ・パネルとマッチしたデザインにする 電柱や鉄製のアングルは,木造家屋の庭や玄関先には少々不似合です.ソーラ・パネルは斜めに設置 しますから,これを屋根と例えた木造建築のようにすると安定感があり,優しい感じになります.木造 架台の製作は,基礎工事,柱の組み合わせと固定方法,防腐,防水など注意点が多くありますが,それ ほど難しいものではありません.架台の組み立て方法を図 5-2 に示します. ソーラ・パネルの重さは 8.5kg もあり,落下すると危険ですから,パネルと同一寸法の木枠を作り, これにボルト 6 本で固定しました.この木枠と支柱との位置関係は図 5-3 のようになります. 強風時には前後と上下方向に思わぬ力が働くことがあるので,絶対に倒れないように,基礎と下部構 造をしっかり設計する必要があります.また,頭をぶつけないように,パネル部は人の頭より高くしな ければなりません.このため,図 5-2 と写真 5-4 のように,下部はブロックを 3 段積み,下の 2 段を地中 に埋没させ,上 1 段で高さを稼いでいます.基礎のブロック工事はコンクリート・ブロック塀の作りか たを,柱の組み合わせ方法は木造建築の工法を参考にしました. 強度を確保するため,柱材は釘を使わず,すべてボルトで固定しました.完成後は下部に防腐剤(ク レオソート系)を塗り,乾いたら全体を好みの色で塗装します.塗装は防水の目的ですが,ボルトのさ び止めにもなります.塗装後にパネルを取り付けたようすを写真 5-5 に示します. ● 太陽電池の最適角度は緯度によって異なる ソーラ・パネルの設置場所は,冬の昼間に直射日光が当たる場所を選べば間違いありません.太陽電 池の方向は真南とし,仰角θ(水平面からの角度)は設置場所の緯度よりやや小さい角度にすると年間 発電量が最大になります. 筆者の場合,緯度が 33 ° ですので,約 30 ° で年間発電量が最大になります.しかし,独立型の場合は, 日照条件の悪い時期(冬場)を基準にすべきであり,θ= 40 °に設定しました.関西以北で 50 °,東北以 北で 60 °と考えてよいでしょう(図 5-4) . 門灯として使う場合,門が南向きでない場合には,写真 5-1,図 5-3 のような方向に蛍光灯を付ける ことができません.北向きであれば架台の反対側に,東西を向いていれば側面に照明器具を付けます. その他の方向の場合は架台と照明器具を分離させるか,門から少し入ったところに設置して南の方向を 向けるなどします.いずれにせよ,雲ひとつない晴天がまれな日本では,太陽の方向にあまり神経質に なる必要はありません. 5-3 φ10mm,6か所 パネル固定用 ボルト1/2×65mm 逆側羽子板ボルトを ナット締め 8カ所 架台の製作 幅89,厚さ38mm,ランバ材 長さ1200mm×2本 (特記ない場合,すべてこの材料) 長さ448mm×4本 ボルト1/2×100mm 8か所 すべて角座金をはさ むこと 角座金 40×40×12mm t =4mm θ ボルト1/2×100mm 4か所,ナット締め 長さ L ,2本 L= 448cosθmm 長さ1800mm ×2本 羽子板ボルト 12mm×280mm,4か所 ボルト1/2×100mm 4か所,ナット締め 羽子板ボルト 12mm×280mm 20W蛍光灯 ブラケット取り付け板 長さ800mm 電線貫通穴φ15mm コース・スレッド 90mm 8か所 長さ1800−448sinθmm×2本 長さ800−(38×2)mm2本 ボルト1/2×65mm 4か所,ナット締め 長さ L ,2本 ボルト1/2×200mm 4か所,ナット締め 下部は防腐 塗装する アンカ・ボルト 長さ300mm 水準器で水平 を確かめる 羽子板ボルト 12mm×280mm,4か所 90mm×90mm角材 長さ600mm 2本 90mm×90mm角材 長さ800−(38×2) mm 2本 ボルト1/2×120mm 4か所,ナット締め 鉄筋,長さブロック段数ぶん 8か所,コンクリートを流し込む ボルト・ナット 12mm×150mm 図 5-2 架台の組み立て方法 コンクリート・ブロック 幅15cm,長さ39cm,高さ19cm 段数×4個 最下段は地中に埋める (砂利を敷き,コンクリートを流 し込む) 59 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 60 第5章 終夜灯 ソーラ・ パネル 夏 冬 冬は太陽高度 が低い 288 ソーラ・パネル 太陽光がソーラ・パネル面に垂 直の場合に出力が最大となる 仰角θ 真南 θ=40° 343 図 5-3 写真 5-4 [単位:mm] 図 5-4 ソーラ・パネルの設置方向と仰角 支柱の上部形状 基礎はブロックを使用した LED-POS H1 H2 写真 5-5 塗装後にソーラ・パネルを取り付ける (a)全体 R1 10Ω D1 LXHL-MW1B FL1 FL20SS-D/18 H3 H4 LED-NEG 図 5-5 D2 LXHL-MW1B D3 LXHL-MW1B 蛍光灯ブラケットの回路 (b)パワー LED ランプの取り付け方法 写真 5-6 蛍光灯ブラケットの内部 5-4 表 5-4 点灯制御回路の検討 61 ソーラ終夜灯に使用する部品(機構部分) 品 名 仕様など 型 番 個数 メーカ,入手先 太陽電池モジュール 70W NE−70A1T 1 シャープ周,ネット通販 蛍光灯ブラケット 20W1灯,防雨・防湿型 LBW−2166 1 丸善電機図,DIYショップ パワーLEDランプ 1W,Luxeon Star/C LXHL−MW1B 3 LumiledsLighting,RS ランバ材 幅89mm,唇さ38mm,1.8m長 2×4( インチ) 8 DIYショップ,材木店 柱材(杉) 90mm×90mm,長さ3m 1 DIYショップ,材木店 羽子板ボルト φ12mm,全長280mm 12mm×280mm 16 DIYショップ,建築金物店 φ8〜9mm,パネル固定用 8/3×100mm 6 DIYショップ,建築金物店 φ12.5mm,長さ65mm 1/2×65mm 8 DIYショップ,建築金物店 φ12.5mm,長さ100mm 1/2×100mm 16 DIYショップ,建築金物店 φ12.5mm,長さ200mm 1/2×200mm 4 DIYショップ,建築金物店 φ12mm,長さ150mm 12mm×150mm 4 DIYショップ,建築金物店 角座金 一辺40mm, t =4mm 40×40×12mm 1袋 DIYショップ,建築金物店 アンカ・ボルト φ12mm,長さ30cm 4 DIYショップ,建築金物店 コース・スレッド 木造建築用木ねじ,長さ90mm 半ねじW90 8 DIYショップ,建築金物店 鉄筋 異形丸鋼Φ9〜10mm,定尺4m DB10mm 1 DIYショップ,建築金物店 コンクリート・ブロック 幅15cm,長さ39cm,高さ19cm ボルト・ナット 8〜12 DIYショップ ● パワー LED を蛍光灯ブラケットに取り付ける 蛍光灯ブラケットは 20W の直管型で,防雨/防湿構造のものを選びます.安定器とグロー・ランプを 外し,図 5-5 のように配線します.写真 5-6(a)のように蛍光灯/パワー LED ランプを取り付けます.パ ワー LED ランプを取り付けるようすを写真 5-6(b)に示します.パワー LED は発熱するので,熱をブ ラケットの金具に逃がすようにします.シリコーン・グリスを塗布してビス止めするか,熱伝導両面 テープで貼り付けます.ビス止めする場合は,裏側から水が入らないように,プラスチック・ワッシャ を入れるか,裏側のビスの頭をラッカで塗装しておきます. 表 5-4 に使用した部品を示します. 5−4 点灯制御回路の検討 日暮れになると,まず蛍光灯を点灯させます.そして人通りが少なくなる 22 時ごろに,パワー LED ランプに切り替えて消費電力を削減します.夜明けになると消灯し,ソーラ・パネルからバッテリに充 電が始まります. 日暮れの検出はソーラ・パネルの出力電圧を利用します.タイマはアナログ回路で作ります.蛍光灯 は 12V のバッテリを電源とするインバータ回路で駆動します.また,簡単にするため,パワー LED ラ ンプはバラスト抵抗で定電流駆動します.以上の機能をマイコンを使わずに実現してみましょう. ● 太陽電池は高感度な照度センサになる 一般の街路灯は,硫化カドミウム(CdS)照度センサ(とバイメタル)を使って昼夜を判別しています. 夜明けに周囲が明るくなっても点灯し続けている街灯をよく見かけます.CdS センサは明るさの検知精 度が悪く,屋外環境下で光−抵抗値特性が劣化していくという欠点があります.また,有害物質である 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 62 第5章 終夜灯 3 OFFになる バイメタル 2 発熱する 抵抗 CdS セル AC100V I C1a 1 光が当たる と抵抗値が 下がる ランプ 図 5-6 街灯に使われている CdS セ ンサの回路 3 入力 2 基準電圧 +10V VR 1 ヒステリシス設定用 R 5 1M ソーラ・パネルから LM393 1 コンパレータ 出力 昼 夜 日暮れ検出レベル 図 5-7 日暮れを検出するコンパレータ回路 のに廃棄管理が難しく,代替手段が求められています.しかし,CdS センサ回路は図 5-6 のように非常 に簡単に済むものなので,代替手段もコスト的に見合うものでなければなりません. 太陽電池は CdS 照度センサの置き換えになり得るものです.実際,超小型の太陽電池セルを直列に 接続し,MOSFET を直接駆動できる素子が CdS 代替手段として開発されています.今回は,太陽電池 をエネルギー源としているので,これを照度センサとして使うことができます.太陽電池は,周囲が やっと見えるほどの薄明かりでも,十分な出力電圧(このモジュールでは 1V 程度)が得られ,CdS セン サの性能をはるかに凌駕しています. ● 照度検出回路はコンパレータで構成する 日暮れ時の太陽電池の出力は 1V 以下ですから,低い電圧を比較検出できるものでなければなりませ ん.図 5-7 の IC1a LM393 は,単電源動作で,入力レベルがグラウンド・レベル近辺でも使える(つまり 同相入力範囲が広い)コンパレータです. 日暮れになり,3 ピンの電圧が 2 ピンの基準電圧より低くなると,出力端子 1 ピンが H → L となり ます.R 5 により検出電圧にヒステリシスを設けて,切り替わり時のばたつきを防止しています. 実際の回路は図 5-8 のようになっています.IC1a の 1 ピンが L になると,R 7 と R 11 を通じて Tr 3 の ベース電流が流れ,Tr 3 が ON して,インバータの発振が始まり,蛍光灯が点灯します. 太陽電池の出力は,図 5-8 のバッテリ BT 1 を外した場合には 20V 以上になりえます.したがって, ツェナー・ダイオード D2 により,コンパレータへの入力電圧が 10V を越えないようにしています.逆 流阻止ダイオード D1 があるので,太陽電池の電圧がバッテリの電圧(12 〜 14V)以下になると太陽電池 の出力電圧が D1 のアノードに直接現れます.これを R 2 と R 3 で分割(0.9 倍)して,IC1a の 3 ピンに入力 しています.一方,2 ピンには D3 の電圧(10V)を,R 2 と(R 4 + VR 1 )で分割した約 0.74V が入力されま す.これが検出レベルで,VR 1 により調整できます. ● 蛍光灯は負性抵抗をもった放電管 蛍光灯は,水銀蒸気を含む低圧の混合気体における放電を利用したものです.まず,放電を開始する のに気体の絶縁を破る高い電圧が必要です.いったん放電を開始すると,電極両端の電圧は低くなり, 負性抵抗(電流が増えると抵抗が小さくなる)を示します(図 5-9). したがって,内部抵抗の低い電源につなぐと,電流が増加するにつれて抵抗値が下がるので,電流は 5-4 逆流阻止ダイオード( IF =16A) 比較用の基準電圧を発生する(VZ =10V)VCC(12V)L1 D1 MBR1645 SOLAR + (フェアチャイルド) (黒) F1 5A 日暮れ検出電圧 1N5347B オン・セミコ ンダクター 22μ D3 R2 10k D2 4×38B19L/ 12V 8 R9 2.2k R 20 150k R 17 10k Tr1 2SC1815 (東芝) R 16 10k LEDをON R 18 100Ω バラスト 抵抗 R 22 1M R 19 3.3M タイマ用コンデンサ 5 6 I C1b Tr3 2SA950 7 放電安定化用. 容量が小さいほど 出力が減少する C4 4700p 1.25kV R 12 1.5k R 13 1.5k 蛍光灯を ON/OFF する R 14 18Ω 蛍光灯 をON 3.3M C 5 4700μ R 15 R 11 4.7k R 7 4.7k C 5の充電抵抗 過電圧保護 図 5-8 (東芝) LEDを ON/ OFF する R 5 1M 1 2 I C1a 4 R 4 LM393 R 3 300Ω 10k 蛍光灯が VR 1 点灯する 1k 照度の設 定 R 24 1k 1W 28Ahの自動車用 バッテリを2〜4 個並列にする 100μH C2 1000μ R 8 R 10 Tr2 25V 1k 470Ω 2SA950 R6 1.8k 3 BT1 SOLAR GND (白) C1 1k 1N5347B F2 5A R 23 10Ω Tr5 D6 2SC3709A LXHL-MW1B (Lumileds)×3 パワーLEDランプ 3個直列にする C3 0.068μ 250V 20W直管式 蛍光灯ランプ I C1a,I C1bは コンパレータI C ソーラ・ハイブリッド屋外灯の回路 さらに増加し,暴走に至ります.一般の蛍光灯は,放電開始時に管両端にあるフィラメントを予熱して 水銀蒸気を発生させます.今回は回路を簡単にするため,フィラメントを予熱せず,トランス 2 次側の 電圧を上げることにより,放電を開始させます.この方法は,フィラメントを傷めるので,管の寿命が 短くなりますが,消費電力を小さくできるメリットがあります.蛍光灯の寿命は,管の両端が黒ずんで くることで判断できます. ● インバータ用トランスを作る トランスの設計手順は,概略次のようなものですが,難しいと思われる方は,この項は読み飛ばして 計算結果だけ使うか,または後述する市販品を流用するなどしてください. ① コアの選定 トランスのコア・サイズは,出力電力 30W 程度の場合は EI28 が妥当です.今回は巻き線を容易にす るため,大きめの EI35(60W 程度)を使いました.フェライトの材質は入手が容易な TDK の PC40 材と しました(写真 5-7) . ② 平均入力電流の算出 効率を 90 %とし,損失の 1/2 がトランジスタのコレクタ損失 PC だとすると, 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 FL1 FL20SS-D/18 (松下電器) D7 蛍光灯の点灯時間を設定する T1 VC 1 LED時に Tr4 2SC3709 蛍光灯を A(東芝) OFFする D5 R 21 LM393 27k ナショナル セ ミコンダクター VR 2 100k 63 突入電流を制限する D4 1N4148 R1 ソーラ・パネルから 点灯制御回路の検討 第 5 部 第5章 終夜灯 1k 800 600 1.0 0.8 0.6 インピーダンス 400 0.4 200 0.2 電流 100 80 60 0.1 0.08 0.06 40 0 図 5-9 電流[A] インピーダンス[Ω] 64 5 10 15 電力[W] 20 0.04 25 蛍光灯(FL20)の特性 PC = 1 − 0.9 0.9 × 20W × 写真 5-7 インバータ・トランスに使うフェ ライト・コア・キット 1 2 ≒ 1.11W 平均入力電流 IC は, P 20W IC = = ÷ 0.9 ≒ 1.85A VCC 12V ③ コレクタ−エミッタ電圧のピーク電圧 コレクタ−エミッタ間のピーク電圧VCEP は, VCEP = 12V × 2 × 2 ≒ 33.9V よって,入手の容易な 2SC3709A(VCEO = 50V)でも使用可能です.なお,2 次側負荷のインピーダンス が誘導性だと,このピーク電圧が上昇します. ④ コレクタ巻き線の巻き数 コアの断面積は,EI35 の場合は 1cm2 です.スイッチング周波数は 16kHz です.電圧 VC [V] ,巻き 1 数 N[ターン] ,コレクタ電流の流れる時間 t[秒],コアの断面積 A[cm2],磁束密度 B[ガウス]とする 1 と, 2N1AB = VC 1t × 10 8 が成り立ちます.従って, VC 1t N1 = × 108 = 18750/B ターン 2AB となります. B を飽和磁束密度にとると,PC40 材のカタログの 390mT = 3900 ガウス(100 ℃)を使って, N1 = 18750 ÷ 3900 ≒ 5 ターン で,5 ターン以上となります. 一方,2SC3709A の I C(max)= 12A から, 12 − 1.85 = 10.15A がコレクタ巻き線を流れる電流の最大値となります.電流 I[A],コアの磁路長 [ l cm],ギャップを lg 5-4 点灯制御回路の検討 65 [cm]とすると, N1 I = 0.795B(l /μ+ lg ) が成り立ちます.透磁率μ= 2300,l = 11cm,lg = 0 とすると,B = 2669N1 から,N1 = 3 ターンで,上 の条件に合いません.従って,ギャップ lg = 0.3mm を入れて,B = 285N1 から,N1 = 7 ターンを得ます. ⑤ ベース巻き線の巻き数 ベース回路の抵抗を 18 Ωとすれば,スペックから I B = 0.2A(@12A)なので, N 2 = 7 × 18 ×(0.2 ÷ 12)= 2 ターン ベース巻き線は,漏れ磁束を考慮して,10 %程度多めに巻きます(2.5 ターンとする) . ⑥ 2 次巻き線の巻き数 20W 直管蛍光灯の放電電圧は 60V 程度ですが,ヒータを予熱しないので,放電開始には 300V 程度必 要です.低温(10 ℃以下)では起動しにくいので,これを考慮して 350V としました. N 3 = 7 × 350V ÷ 12 = 204 ターン ● トランスの巻き方 巻き線(ポリウレタン線)の太さは,5ARMS/mm2 で計算します.2 次電流は,図 5-9 から 0.35ARMS で すから,φ 0.3mm となります.1 次電流は最大 0.8ARMS 程度ですから,φ 0.45mm となります.フィー ドバック巻き線は作業性からφ 0.3mm を使いました. はじめに一番巻き数の多い 2 次巻き線を巻きます.層間はセロテープを巻きました.2 次巻き線を巻 き終えたら,ビニル・テープで周囲を絶縁します.次に 1 次巻き線を巻き,同様に絶縁します.最後に フィードバック巻き線を巻きます.絶縁テープは,専用のものを入手できればそれに越したことはあり ません. EI コアのすきまに,0.3mm のスペーサを入れます.身の回りにある固いプラスチック・シートで代 用できます. ● トランジスタの選択 図 5-8 の形式のインバータを,定電流プッシュプル方式といいます.スイッチング素子は,エピタキ シャル・プレーナ型のトランジスタを選びます.飽和損失が少ないので,発熱がほとんどなく,ヒート シンクを小型にでき,省電力につながります. このタイプで高耐圧のものは国産ではほとんどありませんが,50V 程度のものは容易に入手できます. コレクタ飽和電圧が低い 2SC3709A や 2SC5000 が使えます. ● タイマ回路はCR で実現する C(4700μF) を R 17(3.3MΩ)を通じて充電すると,C 5 には徐々に電荷が蓄積され,電圧が上昇してい 5 きます.C 5 両端の電圧を VC とすると, VC = 6 ×(1 − exp(−t /R 17 C 5 )) [V] となります.これをプロットしたものが図 5-10 です.VR 2 により,図の矢印の範囲で検出レベルが変 わり,蛍光灯点灯時間を約 1.5 〜 8 時間の範囲で変えることができます. OP アンプを一つ追加すれば,C 5 の値を小さくすることもできますが,今回は一番わかりやすく,簡 単な方法を選びました. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 66 第5章 終夜灯 C 5 両端の電圧 EC [V] 6 図 5-10 タイマ・コンデンサ の充電カーブ 5 4 検出レベル 3 2 1 0 0 0.5 1 1.5 時間 t(時定数の倍数,τ=CR = 4.3h) 2 ● 全体の回路 図 5-8 に全体の回路を示します. C 4 はトランジスタ Tr 4,Tr 5 から見た負荷を容量性にして安定化し,コレクタ・ピーク電圧を減少さ せる効果があります.C 4 の値を小さくすると消費電力を減らすことができます.C 4 = 8200pF(トラン スはこの値で設計)だと入力電流が 1.6A ですが,4700pF にすると 1.2A 程度になります.やや暗くなり ますが,消費電力の点では有利です. 5− 5 基板の製作と実装 基板のパターンを図 5-11 に,製作した基板の外観を写真 5-8 に示します.写真 5-8 では,C 4 として, 手持ちの高耐圧セラミック・コンデンサを使いましたが,少々発熱するので,ここはフィルム・コンデ ンサのほうが良いでしょう. ● 回路の防水と架台への設置方法 に ごうます 「弐合升」と称する木の箱が 100 円で入手できます.密閉性が良いので,外面をラッカで塗装すれば水 は入りません(写真 5-9).電線の引き出しは,電工材料のボックス・コネクタを下向きに付けて雨水が 入らないようにしましたが,エアコン工事用パテで電線周囲を塞いでもよいでしょう. 雨水や露が,電線を伝って回路ボックスや蛍光灯ブラケット内に入らないよう,電線を引き込む前に 外部で U 字形にたばねておきます.また,夏場は虫がたくさん集まってきますから,頑丈に密閉する に越したことはありません.幸い,回路が動作するのは夜間であり,放熱にそれほど気を遣う必要はあ りません. ● 市販のインバータ回路を使ってもよい トランスの製作が面倒と思われる場合は,写真 5-10 のような市販の 12V 蛍光灯用インバータ(共立電 子産業 http://eleshop.kyohritsu.com/,FL − 2012)を改造する方法もあります.ベース・バイアス抵抗 を,図 5-8 の Tr 3 のコレクタに接続します. 今回使用した部品の一覧を表 5-5 に示します.バッテリの個数は日照条件,消費電力,収納スペース に応じて,前回の計算式を参考にして 2 〜 4 個の範囲で決定します. 5-5 GND +12V a b c d e LED+ 基板の製作と実装 f 30 67 SOLAR+ F1 c 25 R 23 D1 FL+ C2 Tr2 L1 C4 20 d D4 R9 b BATT+ R 24 D2 R8 D3 R3 T1 15 Tr4 R 13 R 12 R 17 R 19 1 図 5-11 10 15 C1 VR 1 SENS R22 R21 Tr5 5 R18 Tr1 20 25 R20 第 5 部 R4 I C1 R16 R 10 5 1 R6 R 11 C3 R 14 R1 R 15 VR 2 e T I ME C5 5 10 インバータ回路(左),照度検出回路(右)のパターン図(部品面視) C4 ボックス・コネクタ 写真 5-8 ユニバーサル基板に回路を組む 写真 5-9 回路基板をますで囲んで防水する 木製のます 第 3 部 第 4 部 R2 R5 f a Tr3 10 第 2 部 F2 R7 第 1 部 68 第5章 終夜灯 表 5-5 ソーラ・ハイブリッド屋外灯の回路部品(制御回路) ロケーション 番号 IC1 部品名 コンパレータ IC Tr1 Tr2,Tr3 トランジスタ Tr5,Tr4 型 番 LM393 個数 1 2SC1815 1 2SA950 2 2SC3709A 2 D1 45 V,16 A シ ョ ッ ト MBR1645 キー・ダイオード 1 D3,D2 10 V 定電圧ダイオード 1N5347B 2 D4 小信号ダイオード 1N4148 1 C1 22 μF 1 C2 電解コンデンサ 1000 μF/ 25 V 1 4700 μF 1 1 週間続けて太陽を見ない日が続くこともありま 1 した.この場合,充電電流は終日 0.5A 以下です C5 C3 C4 0.068 μF/ ポリエステル・フィル 250 V ム・コンデンサ 4700 pF/ 1.2 kV 1 写真 5-10 市販の DC 12V 蛍光灯インバータ ● 消費電力低減が成功の秘訣 運用開始が 1 月だったので,日照時間が短く, (陽が射した場合は 3 〜 3.5A) . また,当初はインバータの形式を蛍光灯のフィ L1 パワー・インダクタ 100 μH/2 A 1 VR 1 半固定抵抗 1/10 W 1 kΩ 1 VR 2 半固定抵抗 1/10 W 100 kΩ 1 フィラメントに数 W を消費していました.この R 23 金属皮膜抵抗 1/2 W 10 Ω 1 場合の蛍光灯の消費電力は 26W にもなり,持続 R 24 金属皮膜抵抗 1 W 1 kΩ 1 R 1,R 10 1 kΩ 3 時間を 1 〜 2 時間に制限する必要がありました. R 2,R 3, R 15,R 16 10 kΩ 4 灯への入力電力は 15W 程度です.現在,バッテ リ 2 個並列,4 時間を蛍光灯,その後を LED で運 R4 300 Ω 1 R 22,R 5 1 MΩ 2 R6 3.9 kΩ 1 R 7,R 11 4.7 kΩ 2 R8 470 Ω 1 R9 2.2 kΩ 1 R 12,R 13 1.5 kΩ 2 R 14 18 Ω 1 R 17,R 19 3.3 MΩ 2 R 18 100 Ω 1 R 20 150 kΩ 1 カーボン抵抗 1/6 W R 21 27 kΩ 1 T1 フェライト・コア・ キット EI28 〜 EI35 1 BT1 自動車用バッテリ 38B19L 2〜4 F1,F2 ガラス管ヒューズ, ヒューズ・ホルダ 5A 2 ラメントを 2 次側に接続する 4 線式としたため, 図 5-8 の回路はこれを改善したもので,蛍光 用しています.パワー LED がかなり明るいので, 深夜〜早朝はこれで十分だと感じています. B 参考文献 B (1)高田 直人;太陽光発電による夜間照明装置 の製作,トランジスタ技術,1999 年 4 月号, CQ 出版社. (2)塚本 勝孝,延原高志;太陽電池の選び方, トランジスタ技術,2005 年 9 月号,CQ 出版社. (3)主婦と生活社編;新版 家庭大工百科,1994 年,㈱主婦と生活社. (4)尾上 孝一;図解 木造建築の技術,2001 年, ㈱理工学社. (5)雨宮 好文;電源回路,昭和 43 年,日刊工業新聞社. (6)山崎 浩;省エネ照明用インバータ電源入門,2004 年 7 月,日刊工業新聞社. (7)伊藤 信一郎;パワー・フェライトによるコイル&トランスの設計,トランジスタ技術,2005 年 6 月 号〜 2006 年 2 月号,CQ 出版社. 69 第6章 75W 太陽電池,高輝度 LED 60 個, 300W ニクロム線 7 本で作る 育苗器 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 6−1 農業の必須アイテムを安く作りたい ● 個人で植物工場を作ってみたい 「植物工場」という言葉を頻繁に耳にするようになりました.肥料や水だけでなく,温度,照度など も管理できる箱の中で農産物を栽培すれば,非農地や栽培不適地,都会の空き地,さらには室内でも農 業を営むことができます.また,季節や干ばつ,冷害などに影響されない農業が実現できます. 昔から農家でも小屋の中で,ヒータの上にわらを敷いて土を被せ,種から苗を生育させていました. これを電気と電子の力を借りて,より精度の高いものにしてみましょう.また,省エネルギのために, ソーラ・パネルを使い,LED 照明と組み合わせます.さらに低消費電力ヒータと培養土の発酵熱を利 用することで,さらなるエネルギ節減に挑戦します. 農作物の栽培は,種まきから始めるはずですが,多くの農家では苗を育苗施設から購入しています. これは田植え機のような機械移植が普及し,土付き苗を容器やマットの上に整然と整列させる必要があ るからです. 野菜の場合,春植え野菜は冬場にまとめて育苗します.このとき病害虫の被害の少ない強い根(台木) に,味や形状の良い枝(穂木)を接ぎ木しています.接ぎ木にはロボットが使われています. 現在では IT 化した植物工場や育苗装置は,農業の必須アイテムです.このような苗の大量生産は, もちろん時代の流れですが,農家にとっては,できれば一貫生産したいところです. ● 市販品は数十万 一般に,種をまいて苗まで生長させるための装置を育苗器と呼んでいます.保温のために断熱した壁 で囲み,電気ヒータやスチーム・ヒータを使って,土壌の温度を 20 ℃程度に上げています.さらに人 工的な照明を施し,夜間でも明るくして植物の生長を速めます.また,換気扇によって湿度や温度を一 定範囲に保ちます. 育苗器は発芽を目的とするので,ある程度芽が出たら露地またはビニール・ハウスに移します.その まま生育を続ける場合は,より大きな箱が必要です.これが植物工場です. 市販の育苗器は小型のもので数万,ちょっと大きいものになると数十万円と高価です.そこで,今回 はヒータや照明,制御回路などをすべて自作することで,コスト・ダウンを図ります. 第 5 部 70 第6章 育苗器 ソーラ・パネル ソーラ・パネル 仰角θ° ガラス窓 LEDランプ 苗 天井にLED照明 天井にLED 天井に LED照明 照明 換気扇 苗用の土 回路BOX 保温用培養士 ドレン 写真 6-1 ソーラ・パネルを電源とした LED 照明を備え る育苗器を製作 LED 照明はソーラ・パネルを電源としている 図 6-1 ヒータ 鉛蓄電池 製作したソーラ育苗器の構造 壁は保温材を挟んで二重構造とした 育苗は,稲作と野菜作りでは規模や装置がかなり異なります.今回は野菜作り用の育苗器を作ります (写真 6-1). 育苗専用の土をセル(ポット)やトレー(セルの集まり)に入れ,種をまきます.種をまくと数日で芽 が出てきますが,これには地温が約 17 ℃以上であることが条件です.図 6-1 は,今回製作したソーラ育 苗器の構造です. 6− 2 育苗器の作り方 ● LED 照明で発芽と生長を促進 s 点灯時間は日暮れ後,3 時間 芽が出ると,日照によって光合成が行われ緑化していきます.このとき太陽光を当てても良いのです が,冬場の不安定な太陽光よりは,照度を確保できる LED を使った方が生育は進みます. その後,苗はセルの中で根を張りめぐらせます.このような状態になるとセルからの抜き差しも簡単 で,容易に定植できます. 発芽には水分,温度,酸素が必要ですが,光は必要ではありません.育苗器で発芽させると太陽の光 が当たっていないので,白っぽい芽になります.1cm 程度に生長したら,弱い光を当てると黄ばんでき ます.急に強い光を当てると苗が傷むことがあります.4cm ほどになって光を強くすると,1 週間程度 で緑化します. 以上より,LED の点灯時間は日暮れ後,3 時間程度として,日照時間を延長させるだけとします.ま た,日中は温度と湿度が高すぎる場合もあるので,換気扇を付けています. sLED 照明は光合成に向いている 育苗器の光源には従来,高圧ナトリウム・ランプが使われてきましたが,高電圧を必要とし,また青 色成分が少ないという欠点がありました.LED を使うと低電圧で動作し,光合成に必要な波長に合わ せることも可能になります.光合成は間欠(パルス)照明によって増大しますが,LED だとこれも簡単 6-2 表 6-1 育苗器の作り方 71 第 1 部 光合成に必要な光の色と量 赤色と青色が適度に配合されている必要がある 光合成に必要な 必要な光量 波長域[nm] (相対値) 色 LED の例 ピーク波長 [nm] 赤色 640 〜 690 10 GaAIAs 660 青色 420 〜 470 1 GaN 450 写真 6-2 高輝度白色 LED を使う ロームのパワー LED SMLK15WBFPW1 表 6-2 白色 LED SMLK15WBFPW1 の絶対最大定格 (TA = 25 ℃) 材料は InGaN(インジウム・ガリウム窒素)である 項 目 記号 仕 PD 許容損失 写真6-2のLED 様 注1 IF 180 mA ピーク順方向電流 IFP 350 mA 注 2 逆方向電圧 VR 5V 動作温度 topr − 40 ℃〜+ 100 ℃ 保存温度 tstg − 40 ℃〜+ 100 ℃ 写真 6-3 60 個の高輝度 LED を基板に取り付ける 放熱のため銅はくの面積を 大きくしている 注 1:基板実装条件の考慮が必要 注 2:デューティ 1/10 以下,パルス幅 10 ms 以下 白色 LED の電気的光学的特性(TA = 25 ℃) 発光色は白色,カッコ内は参考値 項 目 記号 順方向電圧 VF 光度 IV 色度 x 条 件 IF = 150 mA y 第 3 部 第 4 部 774 mW 順方向電流 表 6-3 第 2 部 最小値 標準値 最大値 − (3.9 V) 4.3 V 3.5 cd − 8.7 cd − 0.29 − − 0.27 − 写真 6-4 LED 基板に通電した ところ 反射板は取り付 けていない に実現できます.照明の色は,光合成を行うために,表 6-1 のような成分が必要とされています. LED は点光源であり,図 6-1 のように苗全体を照明するには,多数の LED を使用する必要がありま す.照度も平均的な太陽光と遜色ない程度に確保する必要があります. s すべての波長を含む白色 LED を採用した 上記のように赤色と青色で構成する代わりに,今回はロームの白色 LED,SMLK15WBFPW1(略 称: PSML2)を選びました.中電流域では 7cd@100mA と,中電流クラス No.1 の輝度を誇ります(写真 6-2).表 6-2 に絶対最大定格を,表 6-3 に電気的特性の一部を掲げます. sLED 実装基板の製作 パワー LED は発熱するので放熱設計が必要です.面実装タイプの LED では,はんだ面が唯一の放熱 経路ですから電極部分の銅はくの面積を大きくします.今回は,写真 6-3 のような基板をエッチングに よって製作しました.15cm × 20cm,厚さ 1.6mm の片面基板で,材質は FR − 4(ガラス・エポキシ材) です.ランド部分をマスクしてグリーン・コート剤(レジスト)を塗布しました. 写真 6-4 は上記の LED 基板に通電したところです.基板面(緑色)は散乱光を吸収してしまうので, 写真 6-5 のように厚さ 2mm の発泡塩ビシートに丸穴を空けた反射板を被せます. 第 5 部 72 第6章 育苗器 LED+ 写真 6-5 白色の反 射板を取り付ける 図 6-2 写真 6-6 LED 照明が点灯したところ R8 82Ω R7 120Ω R6 82Ω R5 120Ω R4 82Ω R3 120Ω R2 82Ω R1 120Ω プリント基板のままだ と散乱光が吸収される LED− LED 照明パネルの回路 シリーズ抵抗の発熱は暖房に利用している 日暮れから 3 時間程度点灯させて日照時間を延ばす 図 6-2 は照明パネルの回路です.電源電圧は最大 40.5V です.また,表 6-3 から LED の順方向電圧は 3.9Vtyp です.そこで 60 個の LED を八つの駆動系統に振り分けました. 駆動系統一つ当たりの電流は, (40 − 8 × 3.9)/82 = 107mA または, (40 − 7 × 3.9)/120 = 106mA となります.直列に入ったバラスト抵抗は,一見損失が大きいように見えますが,この発熱分は,育苗 器の室温を上げる効果があり,損失とはなりません. 写真 6-6 は,夜間に LED 照明が点灯したところです. ● 土壌保温ヒータを作る 春植え野菜の育苗は冬場に行うので,気温は 10 ℃以下であることが多く,このままでは土の温度も 10 ℃以下に下がってしまい発芽しません.従って,土を暖めて地温を 15 〜 20 ℃程度に保つ必要があり ます. 土壌加温用ヒータは,オーソドックスな土の下に敷くタイプを製作することにしました.写真 6-7 が 内部構造です.ホームセンタで入手できる 300W ニクロム線を 7 本直列にしました.この両端に 100V をかけると,電力は 300/7 ≒ 43W になります.300W のままではニクロム線が赤熱し,温度が高くなり すぎます.ニクロム線自体が手で短時間触ってもやけどをしない程度の温度 (100 ℃くらい) が適当です. 写真 6-8 は,石こうボードで蓋をしたところです.全体はねじ止めしています. 6-2 育苗器の作り方 73 第 1 部 第 2 部 第 3 部 写真 6-7 製作した土壌加熱用ヒータの内部 300W のニクロム線を 7 本直列にした 写真 6-8 第 4 部 完成した土壌加熱用ヒータの外観 全体を石こうボードで囲みねじ止めした 40 第 5 部 土壌温度[℃] 35 30 25 20 15 10 5 0 写真 6-9 ヒータをビニールで包み,容器の底に置く 底部にはドレン(排水パイプ)を取り付けた ● 容器にヒータと土を入れる 図 6-3 1 2 3 4 5 6 7 時間[h] 8 9 10 11 12 ヒータを入れたときの地温の変化 43W のヒータでも十分な温度上昇が期待できる かくはん 写真 6-9 のようなセメントを撹拌するための容器(桶)の底に穴を開けてパイプを取り付け,水抜き (ドレン)としました.この容器の底に,先ほど製作した土壌加熱用ヒータを,防水のためビニールに 包んで入れます.ヒータはビニールが融けるほどの温度にはならないので心配ありません. まず,一面に培養土を入れて温度上昇を測定しました.図 6-3 は測定結果です.7 〜 8 時間かけて 徐々に温度が上昇して行きます. 昼夜にまたがっているので外気温は大きく変動しています.しかし,図 6-3 ではその影響はあまり現 れていません.43W という極めて少ない電力にもかかわらず,地温は 37 ℃にも上昇しています.これ は培養土の発酵が原因でしょう.つまり,培養土をうまく使えば暖房効果が倍増することを期待できま す.そこで写真 6-10 のように,育苗ポットや育苗トレーを培養土で囲むことにしました. 育苗には専用の土を使うので,培養土に直接,種まきすることはできません.また,ポットやセルの 中で育苗することで強い根となり,取り出しも容易になります. ● 育苗器の電子回路 図 6-4 は育苗器の電子回路です.ソーラ・パネルからの電圧は,逆流防止用ダイオード D 1 を経て鉛 74 第6章 育苗器 C 5 積分コンデンサ Tr1 IC1コンバータ Tr2 Tr3 D1 逆流防止 ダイオード VR 1 日暮れ検出感度調整 LED点灯時間調整 VR 2 LED点灯時間調整 写真 6-10 育苗ポットとトレーに種をまく 周りを培養土で囲み暖房効果を倍増させる 写真 6-11 IC2 12 Vレギュレータ Vレギュレータ LED 育苗器の基板 育苗器の電源ボックスに収納する 蓄電池(12V × 3 = 36V)に接続しています. IC1A は,ソーラ・パネルの出力電圧を利用した日暮れ検出回路です.また,IC1B は LED 照明が点灯 後,3 時間程度で照明を OFF するためのタイマです.この二つの判別信号の OR を取って,Tr 3 によっ て照明を ON/OFF しています.写真 6-11 は基板の外観です. ● 次世代型 CIS 太陽電池を使う s 効率は 12 〜 18%でシリコンと遜色なし LED 照明の電源にはソーラ・パネルを使用します.ソーラ・パネルの選択に当たっては,必要な電 力が第一条件となりますが,これ以外に必要な出力電圧も重要です.今回は出力電圧が 40.5V と高い, 昭和シェル石油の SC−75A を使用しました. CIS 型は 2007 年から量産に入った新しい太陽電池です.CIS は,銅(Copper) ,インジウム(Indium) , セレン(Selenium)の頭文字の略で,薄膜化合物半導体で作られています.製造工程が全く異なるので, 従来の結晶シリコン系太陽電池で問題となっている, ① 結晶製造に複雑なプロセスが必要(コスト高) ② 結晶製造に大きな電力が必要 ③ 原料不足問題 などの問題が発生しません.特に①のコストが安いという点は,今後の普及の大きな要因となるでしょ う.効率は 12 〜 18%でシリコンと遜色ありません. 表面は,黒一色の落ち着いた感じで,従来のキラキラした多結晶シリコンとはまた違った落ち着いた 雰囲気となります. s 使用した CIS 型太陽電池パネルの特性 表 6-4 に SC−75A の出力特性を示します.AM はエアマスともいいます.太陽光のスペクトルを表し, 赤道直下で 1,日本では 1.5 程度の値です. 図 6-5 は,電流対電圧(I −V )および電力対電圧(P −V )特性の測定例です.基準状態では 40.5V にお いて最大電力が取り出せること,そのときの電流は 1.85A であることがわかります. 6-2 R 24 1 C6 I C2 L78M12 Vin 22μ 50V Vout +12V 3 GND 2 C1 R1 1k 1N5347B オン・セミ BATT+ コンダクタ など D2 1N5344B 8.2V GND SC1 オン・セミ ソーラ・ コンダクタ セル など R2 2 − 300Ω 1k 感度 調整 R 18 10k 育苗器の回路 R 19 3.3M 出力値 公称最大出力 Pm 75[W] 公称最大出力動作電流 Ipm 1.85[A] 公称最大出力動作電圧 Vpm 40.5[V] 性 能 90 % 以上 電流[A] 基準状態(25 ℃,AM1.5,放射照度 1kW/m2 )での値 記号 R 21 7 LM393 (ナショナル セミコンダクター) 27k LED点灯後,3時間程度で 消灯させるためのタイマ 時間調整 150 電流 最大電力点 2.0 CIS 太陽電池 SC−75A の出力特性 目 2.2k I C1b VR 2 2.5 項 − 1.5 60 電力 0.5 公称短絡電流 Isc 2.20[A] 90 % 以上 公称開放電圧 Voc 55.5[V] ± 10 % 0 0 図 6-5 120 90 1.0 30 10 20 30 40 電圧[V] 50 第 2 部 第 3 部 第 5 部 + 100k 日暮れ検出回路と深夜切断タイマからなる 表 6-4 R 22 1M 第 1 部 第 4 部 R8 6 C 5 2200μ 図 6-4 R 10 10k 1N4148 (ロームなど) 5 100Ω R 16 4 I C1a LM393 150k 3.3M LED− LED パネルへ D Tr3 2SK 2231 S (東芝) 10k 1 R 20 R 17 10k G R 7 2SC1815 8 日暮れ検 出用のコ ンパレー タ VR 1 Tr1 2SC1815 (東芝) 1k + R4 10k R 12 Tr2 3 R 15 10k 10k R3 R 11 R 5 1M 3.3k 1W BT1 38B19L, 36V 車用バッテリ 3個直列 0.1μ 1.8k 10V D3 C7 R6 22μ 電力[W] D5 1N5353B 16V オン・セミ コンダクタなど D1 MBR1645 75 育苗器の作り方 0 60 太陽電池 SC75−A の出力特性測定例 端子電圧 40.5V で最大電力となる 冬の晴れ間に実測すると,開放電圧 54V,短絡電流 1.58A という値となりました.一般に開放電圧は 照度にあまり依存しませんが,短絡電流は照度にほぼ比例するので,基準状態に対して 1.85/2.2 = 84% 程度の出力であると判断できます. s 太陽電池は鉛蓄電池と相性が良い 太陽電池には MPPT(Maximum Power Point Tracking)が必須と思われがちですが,鉛蓄電池と組 76 第6章 育苗器 30 地温[℃] 25 20 昼 15 10 5 0 図 6-6 昼 朝 朝 種まき 1日目 朝 (5℃) 昼 (17℃) 朝 発芽 2日目 3日目 4日目 1 5 9 13 17 21 1 5 9 13 17 21 1 5 9 13 17 21 1 5 9 時間[h] 種まきから発芽までの地温の変化 約 2 日で発芽とまずは順調.カッコ内は外気温 写真 6-12 真冬に発芽した苗(発芽後 2 日目) 極寒の冬場でも 2 日で発芽した み合わせる場合,必ずしも必要というわけではありません.つまり,蓄電池の電圧を最適動作電圧(こ の場合は 40.5V)に一致させれば,常に最適動作点にあることになります.なお,MPPT とは太陽電池 の最適動作点を追従する制御のことです. 鉛蓄電池は 12V 品であれば,満充電で 13.5V の端子電圧となります.これを 3 個直列にすれば, 13.5 × 3 = 40.5V となります.従って,今回は 12V の自動車用バッテリを 3 個直列としました. 鉛蓄電池の並列接続は,端子電圧の違いにより,食い合い(お互いの充放電)が始まるので好ましく ありませんが,今回のように直列接続とした場合,そのような現象は発生せず,充電電流もすべて同じ になります. 6− 3 育苗器の成果 ● 厳冬期でも 2 日で発芽! 苗としてニンジン,キュウリ,春菊,オクラ,スナックえんどう,アサガオを選びました.果たして 発芽するかどうか,温度データを取りながら見守りました.図 6-6 は種まきから発芽までの地温の変化 です.発芽まで 2 日と少ししかかかっていません.種まきの際にヒータを OFF にしていたのでやや地 温が低いですが,ヒータ ON 後は,18 ℃を切ることはありませんでした. 地温のピークが 16 時〜 17 時であり,寒い日にはピークは見られません.これは室温(外気温に比例) の影響を受けているものでしょう.写真 6-12 は,発芽したニンジンの苗です. 次章では冬場にこの苗を定植するための,保温を主体とした温室の製作にチャレンジしたいと思いま す. B 参考文献 B (1)CIS 太陽電池モジュール SC75−A 仕様書,昭和シェルソーラー㈱,2007 年 6 月. (2)山崎 弘朗ほか編;インテリジェント農業,㈱工業調査会,1996 年 7 月. B 取材協力 B 小澤 正人氏(福岡県行橋市) 77 第7章 80W 太陽電池,高輝度 LED 405 個,エアコンで作る ミニ植物工場 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 前章では,太陽電池を使った育苗箱を作りました.その後,育苗箱からはたくさんの苗が育ちました. 部 しかし夏野菜は冬季には露地栽培ができませんから,温室が必要になります.温室は電気や電子とあま 第 5 り関係ないように見えますが,照明や暖房を考えると,多くのテーマが出てきます. 部 温室は,最初はビニール・ハウスにする予定でしたが,地面から熱が逃げるために,ビニールを 2 重 にしても保温効果が完全でなく,暖房費がかさむことが問題です.これに加え夏場には温度を下げて冬 物野菜を作りたいこと,最終的には,今はやりの植物工場にしたいことなどを勘案し木造建築としまし た.この結果,写真 7-1 のような建物が出来上がりました. 7−1 育苗器の成功を経て大きなものに挑戦したくなった ● エアコンや LED 照明,太陽電池を取り付けた 写真 7-1 のように入り口と窓は 2 重ガラスになっており,屋根には保温材を挟んでいます.さらにコ ンクリート床の下に保温材を挟み,地面への熱の流出を防いでいます.もちろん,壁にも保温材を入れ ているので,全体は冷蔵庫のような保温ボックスになっています. 冷暖房には,石油や電熱に比べて熱効率の良いエアコン(原理はヒートポンプ)を使います.近い将来 は,温室も自動車と同じように,灯油から電気,特にヒートポンプに転換すると筆者は確信しています. 窓の近くは太陽光を利用し(写真 7-2),窓から遠い部分は LED 照明としました(写真 7-3).LED 照明 は植物の生育,特に光合成を促進する効果のあるパルス点灯とします. 人工照明のため昼でも LED を点灯する必要があり,この電源はソーラ・パネルから取ることにしま した.なお夜間は交流電源に切り替えます. ● 育苗箱は 50W の土中ヒータだけで苗がすくすく この温室のアイディアは,前章で紹介した育苗箱が予想以上の効果を発揮したので,その理由を調べ る中で生まれました.図 7-1 は,育苗箱を冬季 3 カ月にわたって運用したデータです. わずか 50W の土壌ヒータを入れただけで,図 7-1 のように土壌温度と外気温との差は 15 ℃以上あり, 土壌温度は寒い日でも 15 ℃を切ることはありませんでした.この結果,写真 7-4 のようにいろいろな夏 野菜が元気に育ちました. LED 照明で日照時間を伸ばしているので,葉の色も青々としています.ここで注目すべきは,図 7-1 78 第7章 ミニ植物工場 80Wソーラ・パネル 80Wソーラ・パネル 計405個のLED 計 405個の 405 個のLED LED 赤色LED 赤色LED 2重窓 2重窓 (a)外観 写真 7-1 保温効果の高い省エネ工場を手作りした 壁はもちろん,屋根,床すべてを断熱構造とした.電気代は 1 月が 3,760 円(温室なし),2 月が 6,539 円(温室あり)だった. 差し引き 2,779 円が 1 カ月の電気代 写真 7-3 苗を育てる LED 照明 405 個の高輝度 LED をパルス点灯した.周囲の壁はアルミはくを 張って光を反射させる.OSWT3166B(白)27 × 12 = 324 個, SLI−560UT(赤)27 個,OSDR3133A(赤)27 × 2 = 54 個.手持ち の LED を総動員した結果,こうなった 温度[℃] 40 30 20 10 0 12/16 地温はおよそ20℃以上をキープ 1/1 温度[℃] 40 写真 7-2 窓の近くの苗は太陽光を利用 1/10 1/20 2/1 2/10 時間[月/日] (a)地温 2/20 3/1 なかなか20℃を超えない 30 20 10 0 12/16 1/1 1/10 1/20 2/1 2/10 時間[月/日] (b)室温 2/20 3/1 温度[℃] 40 20 10 0 12/16 写真 7-4 冬季にソーラ育苗箱で育った各種の夏野菜 土壌の温度を上げるだけで苗は元気に育つ 外気はおよそ10℃以下 30 1/1 1/10 1/20 2/1 時間[月/日] (c)外気温 2/10 2/20 3/1 図 7-1 3カ月間の育苗箱の土壌温度と気温(屋内外)の変化 地温は最低でも 15 ℃を切ることはなかった 7-2 ミニ植物工場の作り方 79 第 1 部 LM193 VR 2 74HC14 VR 1 第 2 部 T1 2SK2232 第 3 部 第 4 部 7805 第 5 部 2SJ329 DTC114E (b)ケースに取り付けたLEDの駆動回路 の室温です.室温は地温ほど高くはないのですが,成長にはそれほど影響を与えているようには見えま せん.つまり,土壌の温度をまず管理する必要があるということです. 写真 7-2 は,育苗箱で育った苗を今回作った温室に移したところです.写真のように,土は地面から は完全に隔離されています.部屋の全体はエアコンで暖房しているので,土壌は室温(20 ℃に設定)と 同じ温度になります. ● LED 照明はいろいろな波長を出せる 今回の目玉は LED 照明です.写真 7-3(a)のように中央に赤,周囲に白の LED を合計 405 本,5cm 間 隔で配置しました. 周囲はアルミはくを貼って,LED の光を反射させて光効率を上げています.奥に蛍光灯が見えます が,これは,昼間に照度を上げるための補助用です.夜間は LED だけで照明しています. 今回,太陽光に近づけるために,白色 LED を使用しました.しかし,白色 LED は,青色 LED を蛍光 体で覆ったものであり,太陽光とはスペクトル分布が全く異なります.また,高温,大電流に弱く,む しろ赤,青,緑の LED を組み合わせて白色を作った方が良いでしょう.LED は電線を保護・固定する ためのモールに取り付けたので,モールごと簡単に交換できます.いろいろな波長を試すには好適だと 思います. 7− 2 ミニ植物工場の作り方 ● 骨組みは木材で 図 7-2 に製作するミニ植物工場の構造を示します.温室を木材で作る話はあまり聞きません.日本家 80 第7章 ミニ植物工場 ソーラ・パネル トタン 断熱材 LED照明 蛍光灯 蛍光灯 LED照明 扉(2重) エアコン 蛍光灯 窓(2重) LED照明 鉄筋 コンクリート 散水器 写真 7-6 さらに天井には断熱材も張った 屋根からの熱の出入りは冷暖房の最大のロスとなる 断熱材 コンクリート 図 7-2 上水道 下水 保温性の高いミニ植物工場の構造 周囲をすべて断熱することがポイント 写真 7-5 屋根に保温材を張る 熱の出入りは屋根からが一番大きい 写真 7-7 床面にも断熱材を敷き詰めた さらにこの上に鉄筋入りのコンクリートを打つ 屋は昔から木造が多いのですが,塗り壁,雨戸,ふすま,障子,畳などの組み合わせで保温効果を上げ ています.この構造を温室に応用すると,空間が多く必要になり,いきおい家を建てるようなことにな ります. ● 断熱材を入れる 日本家屋は天井裏と床下に空間を設けます.これが保温効果を発揮します.しかし温室は,採光の必 要性から天井裏に広い空間を作ることが難しく,また,地面がむき出しになっています. この欠点を根本的に見直して,まず写真 7-5 のように屋根に保温材を入れますが,このため天井側か ら採光することを止めます.太陽光は南向きの窓から入れ,内部は主に LED や蛍光灯などの人工照明 にします. 断熱材は,写真 7-6 のように壁だけでなく天井にも張ります.夏場にエアコンをいくら入れても温度 が下がらないのは,天井からの熱の流入があるからです.温室には天井裏を設けるゆとりはないので, 写真のようにしっかり断熱することがコツです. 温室の床は通常,土がむき出しですが,これでは冷暖房の熱が熱伝導により逃げてしまいます.温室 は水まきが必要ですから,床をコンクリートにして排水をよくしなければなりません.しかしコンク 7-2 D1 D3 1N5362B 1N4002 I C3 T1 (オン・セミ (オン・セミ 78M05 トランス コンダクター) コンダクター) 1 3 I N OUT 20V 470μ C GND 1 C 3 R 15 1A 50V 2 CN1 10k 1μ F1 470μ AC C 2 D4 100V 1A 50V D2 緑(AC電源ON) パルス駆動周波数調整 1N4002 1 C4 1μ SO1 太陽 電池 VR 1 1k 10k 2 C5 4 I C2a 74HC14 D7 MBR1645 (オン・セミコンダクター) R 13 R8 22k 39k D8 赤 (太陽光 あり) 図 7-3 C7 I C2b 3 太陽光パネル ONのしきい 値決め 47μ R 14 0.47μ R 3 1.2k R 10 C6 100μ R5 1k R 12 VR 2 1M OSWT3166B:18Ω SLI-560UT:18Ω OSDR3133A:33Ω Rn 18Ω I C2d 6 9 8 R11 1k 3 8 13 1 D6 2 R9 SUN 4 I C1a MTZ5.1B 4.7k LM193 (ローム) (ナショナル セミコンダクター) I C2f Tr3 DTC114E R4 G 100Ω R 16 D Tr 1 2SK2232 (東芝) S 1k D9 黄 Tr4 (太陽光ON) DTC114E (ローム) 12 SUN 405 個の高輝度 LED をパルス駆動する回路 昼間は太陽光を利用し,夜間は AC100V を利用する リートが地面と接しているのでは,熱が逃げます.そこで,写真 7-7 のようにコンクリートを張った上 に断熱材を入れ,さらにその上にまたコンクリートを打ちます. しかし柔らかい断熱材の上にコンクリートを張ると,室内の重量物の重さが不均等に加わった場合な どにコンクリートが割れてしまいます.そこで,上部のコンクリート(厚さ 10cm)の内部には鉄筋を入 れて補強しました. ● LED をパルス駆動する 図 7-3 は製作した LED 駆動回路です.使用する CIS 型ソーラ・パネルの出力電圧は約 41V です.普通 のシリコン系ソーラ・パネルに比べて端子電圧が高いのが特徴です.これは多数の LED を直列接続す る場合に有利です. 図 7-3 の回路には二つの役割があります.一つは照明用 LED をパルス駆動する機能です.もう一つ は昼夜を検出し,夜になってソーラ・パネルの出力が低くなったら,商用電源(AC100V)駆動に切り替 えることです. s 直流 41V は電源トランスから得た 商用電源で動作させる場合は,LED ストリングにソーラ・パネルと同じ約 41V の直流電圧を加える 必要があります.直流 41V を得るにはスイッチング・レギュレータが妥当ですが,簡単のため, 100V : 20V の電源トランスの出力電圧を倍電圧整流しました. 第 1 部 第 2 部 G D5 1SS106E (ルネサス エレクトロニクス) 1k 1k 15k +5V I C2c 5 81 LEDストリング. Tr2 2SJ329 (ルネサス エレクトロニクス) 1列は27個 S D SW1 電源 R1 ミニ植物工場の作り方 第 3 部 第 4 部 第 5 部 82 第7章 ミニ植物工場 表 7-1 項 使用した LED の絶対最大定格と電気的特性 目 記号 DC 順電流(最大) IF パルス順電流 (最大) IFP OSWT3166B SLI − 560UT OSDR3133A 25 mA 50 mA 30 mA 100 mA 200 mA 100 mA 逆電圧(最大) VR 5V 9V 5V 消費電力(最大) PD 120 mW 125 mW 72 mW DC 順電圧(typ) VF 3.4 V 1.9 V 2.2 V 輝度 (min) IV 1500 mcd@20 mA 広がり角(50%) (typ) 2θ 発光色 300 mcd@20 mA 500mcd @ 20mA 60° 40° 30° 白 赤 赤 s 駆動周波数は約 400Hz LED のパルス駆動周波数は約 400Hz です.相手が植物だけに,どの周波数が最適であるかは一概に はいえません.むしろこれから実験でつかんでいくべきものです.50 〜 60Hz では電灯との間でちらつ きが出ますし,高すぎても植物が反応しません. s パルス駆動の波形 LED をパルス駆動する場合は,絶対最大定格の「パルス順電流」を参考にします.使用した白色 LED OSWT3166B の場合は 100mA です(直流の場合は 25mA).ただし,パルス幅は最大 10ms,デューティ 比は最大 10 %となっています.つまり周期は 100ms,つまり 10Hz が最低周波数です.このパルスは, 図 7-3 の C 5 と R 3 の時定数によって決まります.もしもデューティ比が一瞬でも 100 %(つまり直流)に なると,たちまち LED は破壊します.従って,パルス駆動回路の動作はフェイル・セーフになってい なければなりません. 例えば今,何らかの原因で IC 2a の発振が停止したとすると,IC 2c の 5 ピンは L となり,9 ピンは H となります.従って 8 ピンは L となるので,Tr 1 は OFF となり,電流は流れません. 写真 7-3(b)は図 7-3 の LED 駆動回路をユニバーサル基板に組んで,ケースに収納したところです. s 定格電流で使用したときの LED の寿命は案外短い 使用した LED を表 7-1 に示します.OSWT3166B は最大定格 25mA ですが,添付されているカタログ によると,「定格電流 20mA で使うと 500 時間程度で明るさが 50 %になる場合がある」と書かれていま す. 500 時間といえば,連続使用で 20 日あまりですから,これでは使えません.この指摘はむしろ良心的 で,実際のところ,LED の寿命について明記している仕様書は見かけません.今回はパルス駆動です から寿命はいくらか伸びるでしょう. ● 太陽電池を LED 照明に利用した 使用した太陽電池の特性を表 7-2 に示します.前に育苗箱で使用した SC75−A より若干出力が大きく なっていますが,形状は同一です.薄膜化合物半導体で作られた CIS 型です.公称開放電圧が 56.5V と 非常に高いので,LED 駆動回路は耐圧への配慮が必要になります. 図 7-4 は出力特性です.図を見ると最大出力は出力電圧 41V(開放電圧の 72 %)の時が最大となって います. 7-3 CIS 太陽電池 SC80−A の出力特性 2.5 目 記号 出力値 性能 公称最大出力 PM 80 W 90 %以上 公称最大出力動 作電流 IPM 1.95 A − 41 V − 公称最大出力動 VPM 作電圧 公称短絡電流 ISC 2.26 A 90 %以上 公称開放電圧 VOC 56.5 V ± 10 % 2.0 電流[A] 項 150 電流 基準状態(25 ℃,AM1.5,放射照度 1kW/m 2)での値 120 最大出力点 1.5 90 電力 1.0 60 0.5 30 0 0 図 7-4 10 20 30 40 電圧[V] 50 電力[W] 表 7-2 83 ミニ植物工場の成果 0 60 CIS 型太陽電池 SC80−A の出力特性 端子電圧 41V(開放電圧の 72%)で最大電力となる 7−3 ミニ植物工場の成果 ● 省エネ達成… 1 ヶ月の電気代は約 2,800 円 電気代は 1 月が 3,760 円(温室なし,育苗箱あり),2 月が 6,539 円(温室あり,育苗箱あり)でした.差 し引き 2,779 円が温室の電気代です. 製作した温室は予想通り保温性が良く,20 ℃に設定したエアコンは,冬場で外気が 0 ℃近くであって も,5 分間隔で 2,3 分間しか動作しません.従って電気代も気にならず,冷暖房には保温がいかに重要 か思い知らされます.エコとは我慢することではなく,損失を減らして楽しむことだと実感しました. ● LED は育苗に合う LED 照明は,まるでプラネタリウムを見ているようで,一種独特の雰囲気があります.特に夜間は 田舎の寂しさを忘れさせてくれます.省電力であることが気持ちを楽にしてくれます. 肝心の苗のその後ですが,さして明るくはない LED の光でも十分に育っており,何より虫が来ない, 雑草が生えないという点が非常に助かります. * 前章の育苗箱の中で元気に育つ苗を見ていると,このまま捨てるのはかわいそうで,ついつい温室を 作ってあげたくなりました.冬場ですから腫れ物に触るように扱ってやらないと,すぐしおれてしまい ます.しかし,可愛がってやると,元気に育つので,まるでペットを相手にしているような気持ちにな ります. B 参考文献 B (1)CIS 太陽電池モジュール SC80−A 仕様書,昭和シェルソーラー㈱,2007 年 6 月. http://www.etech-japan.com/product/dokuritu/img/solar/shell̲cis/SC80-A.pdf 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 84 第 7 章 Appendix 太陽電池のしくみと使い方 7A− 1 太陽電池を直列 / 並列接続する ● 直列… 3 個つなぐと電圧が 3 倍に 太陽電池を直列に接続するとどうなるのでしょうか.並列に接続した場合はどうでしょうか.図 7A1(a)は太陽電池を直列に接続した場合です.太陽電池の起電力をV とすると,負荷 R の両端の電圧は, V +V +V = 3V です.しかし,電流 I は閉回路(1 周する経路)ではどこも同じなので,負荷 R にも I だけ電流が流れま す.太陽電池の出力 P[W]は負荷 R で消費される電力に等しいので, P = 3VI となります. ● 並列… 3 個つなぐと電流が 3 倍に 図 7A-1(b)は太陽電池を並列に接続した場合です.負荷 R の両端の電圧は,太陽電池の出力電圧V と 同じです.電流 I[A]は, I +I +I = 3 I となります.従って太陽電池の出力 P[W]は, P = 3 IV となります. Ⅰ + 3Ⅰ V − Ⅰ + Ⅰ + V − R 3V + V − Ⅰ + V − V − + V 図 7A-1 太陽電池の直列接続と 並列接続 いずれも得られる電力は同じ − (a)直列接続 (b)並列接続 R V 7A-2 85 太陽電池には日影対策が必要 従って太陽電池を直列にすると,電圧は太陽電池の個数倍となり,電流は同じです.また,太陽電 池を並列にすると電流が太陽電池の個数倍となり,電圧は同じであることがわかります.いずれも得 られる電力は同じです. 7A− 2 第 2 部 太陽電池には日影対策が必要 何だ,電池と同じじゃないか,と思われるでしょう.その通り,電池を接続した場合とまったく同 じです.しかし,場合によっては大きく異なる点があるのです.図 7A-2 を見てください. ● 直列…陽が当たらないと 0V に 図 7A-2(a)のうち,一つが木の影に入って陽が当たらなくなったとします.電池のように考えると, 起電力が 0V ですから,V + 0 +V = 2V となります.しかし,太陽電池の場合はそうはなりません.こ の太陽電池は電流 I を通さなくなるのです.従って,負荷 R の両端の電圧は 0 です(厳密には,完全に 遮光しないと 0 にはなりません) . ● 並列…電流は減るが電圧は減らない 図 7A-2(b)のうちの一つに陽が当たらない場合はどうでしょうか.電池のように考えると,この電 池の起電力が 0 となるので,ほかの二つの電流はこの電池に流れ込み,負荷 R の両端の電圧は 0 になる と思われます.しかし,そうはなりません.太陽の当たらない太陽電池は電流を通さないので,ほか の二つの太陽電池の電流は,この太陽電池には流れ込みません.従って,負荷 R の両端の電圧は V,電 流は 2 I となります. ● 直列では出力がゼロにならないようにバイパス・ダイオードを入れる 太陽電池は,並列の場合は単に影に隠れた面積分の出力が減るだけです.しかし,直列の場合は一 つでも影に隠れると全体の出力が 0 になってしまいます.そこで,図 7A-3 のようにバイパス・ダイ オードを入れて影の部分をバイパスします.なお,モジュールとして売られているものは最初から対 策されているので心配ありません. 0 + V − 2Ⅰ + 0 R 0 0 Ⅰ + − + V − Ⅰ + V + V 0 − − − 図 7A-2 太陽電池の 1 セル が影に隠れた場合 (a)直列接続 第 1 部 (b)並列接続 R V 第 3 部 第 4 部 第 5 部 86 第 7 章 Appendix 太陽電池のしくみと使い方 Ⅰsc Ⅰ Voc + V − + + 0 R − + − 2V − + V − 図 7A-3 日影対策としてバイパス・ダイ オードを追加する (a)短絡 図 7A-4 (b)開放 太陽電池の短絡電流と開放電圧 ここまで読むと,太陽電池を並列で使いたくなりますが,並列にすると直流電圧が,例えば 0.5[V] と低いままなので,後段の DC−DC コンバータの変換効率が低くなりがちです. 7A− 3 短絡電流と開放電圧と最大出力 ● 短絡 小型の太陽電池は短絡しても壊れることがありませんが,発熱はします[図 7A-4(a)].このとき直 列に電流計(内部抵抗 0 Ω)を入れると,得られる最大の電流を測ることができます.ただし電圧は 0 な ので,負荷をつなぐとこれ以下の電流になります. ● 開放 図 7A-4(b)は,太陽電池に負荷を接続しないときです.ここに電圧計(内部抵抗∞)を入れると,得 られる最大の電圧を測ることができます.このときの電流は 0 です.負荷をつなぐとこれ以下の電圧に なります. ● I − V 特性 太陽電池に負荷を接続したときは,一般に図 7A-5 のような I −V(電流−電圧)特性となります.太陽 電池の出力端子を短絡したときは電圧が 0V で,短絡電流 ISC が流れます.また,出力端子をオープン にしたときは電流は 0 で,両端の電圧は開放電圧VOC となります. 負荷があるときは,I −V 曲線に沿って電流と電圧が変化します.電圧V と電流 I の積が得られる電力 ですから,この四角形の面積が最大になれば,取り出せる電力も最大になります.この点は最適動作 点(最大出力点,Maximum Power Point とも言う)と呼ばれ,このときの電圧を最大出力動作電圧VOP , 電流を最大出力動作電流 I OP と言います. ● 太陽電池の出力はパネル面積に依存する 太陽電池パネルは複数個のセル(太陽電池の最小単位)を直列,または並列にしたものです.直射日 7A-4 Ⅰ 太陽電池の出力の見定め方 87 短絡電流 ⅠSC 最適動作点(最大出力点) ⅠOP 電流 最大出力動作電流 公称最大出力 開放電圧 最大出力動作電圧 図 7A-5 太陽電池に負荷を 接続したときの特性 0 電圧 VOP VOC V 光(100mW/cm2 )の下では,Si 系のセル 1 個当たりの起電力は 0.5[V]くらいです.太陽電池の電圧は直 列にしたセルの個数で決まります.一方,流せる電流はセルの面積で決まります.変換効率を 15 %と すると,100mW × 0.15 = 15mW/cm2 ですから,電流は, I = P /E = 15/0.5 = 30mA/cm2 となります. セルの面積を S cm2 とし,セルの個数を n 個とした場合,すべて直列の場合,得られる電力 P[W]は, P =EI =(0.5 × n )×( S × 0.03) です.また,すべて並列の場合は, P =EI = 0.5 ×(n ×S × 0.03) であり,いずれも同じです.つまり,太陽電池の出力は効率が同じであればパネルの面積だけで決ま り,セルを直列にするか並列にするかは関係ありません. 7A− 4 太陽電池の出力の見定め方 ● 30W 未満 ここでは面積 0.5m2 未満で出力 30W 未満の太陽電池モジュールを小型太陽電池と呼ぶことにします. 小型太陽電池の仕様は 12V,250mA のように表記される場合がほとんどです.そしてたいてい,どの ような条件で測定したのかは明記されていません.この場合,電圧は開放電圧 VOC ,電流は短絡電流 I SC である場合が多いです. 開放電圧と短絡電流しかわからない場合,実際の出力 POP[W]は次式で推定できます. POP = 0.8 ×VOC × I SC 例えば,VOC が 12V,I SC が 250mA の太陽電池の出力は, POP = 0.8 × 12 × 0.25 = 2.4W となります.小型太陽電池でも,出力○ W と表示されていることもあります.測定条件が明記されて いない場合は,最大出力動作電圧 VOP と最大出力動作電流 I OP の積だと考えて良いでしょう.例えば, VOP = 20.5V,I OP = 0.48A であれば,出力 POP[W]は, POP = VOP × I OP = 20.5 × 0.48 ≒ 9.8 と表記されます.表 7A-1 と表 7A-2 に小型太陽電池の仕様の一例を掲げます.表 7A-1 は秋月電子で入 手できる 1.5V,250mA の小型太陽電池です.出力は最適動作点で, 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 88 第 7 章 Appendix 太陽電池のしくみと使い方 B 0.4W C 0.2W D 0.8W E 0.5W 240mm 240mm A 約2.4W F 2.4W 写真 7A-1 出力数 W の小型太陽電池の例 写真 7A-2 Ⓐ SM250-12V,12V,250mA,ⒷETM250-2V,2V,250mA, ⒸETM500-0.5V,0.5V,500mA,ⒹETM500-2V,2V,500mA, Ⓔ1.4V,410mA,ⒻSM-170-12V,18V,170mA 腕時計に内蔵されているものを取り出した 出力数 mW の小型太陽電池 表 7A-1 300 0.6 Ⅰ−V 曲線 発電素子 0.5 200 0.4 P −V 曲線 150 0.3 100 0.2 シリコン単結晶 公称開放電圧 VOC 1.5V 公称短絡電流 I SC 250mA 寸法 電力[W] 電流[mA] 250 小型太陽電池の仕様例 ETMP250-1.5V (Goldmaster & Everstep Development,秋月電子通商扱い) 表 7A-2 68 × 80 × 4mm 小型太陽電池の仕様の一例 (SKD-6,京セラ) 50 0.1 発電素子 シリコン多結晶 公称最大出力 Pm 3W 公称最大出力動作電圧 Vpm 17.6V 公称最大出力動作電流 I pm 170mA 図 7A-6 小型太陽電池(1.5V,250mA)の I − V 特性 を実測した 公称開放電圧 VOC 20.8V 公称短絡電流 I SC 190mA 秋月電子 ETMP250-1.5V 寸法 0 0 0.5 1.0 電圧[V] 1.5 0 2.0 160 × 240 × 17mm POP = 0.8 × 1.5 × 0.25 = 0.3 と見積もることができます.図 7A-6 の実測データ(100mW/cm2 時)とほぼ一致します. ● 30W 以上 主に,太陽光発電システムをターゲットとして作られた太陽電池モジュールを大型太陽電池と呼ぶ ことにします.表 7A-3 〜表 7A-5 にタイプ別大型太陽電池の仕様の一例を掲げます. 「公称」とは,JIS C8918 という共通の測定方法によって得た値ということです.同一測定条件なので 相互に比較ができます.また,最適動作点で使えば表記通りの出力を得ることができます. 表 7A-3 〜表 7A-5 を見ると,同じような電力の太陽電池でも得られる電圧と電流が大きく違うことに 気がつきます.また,公称最大電力は常に得ることのできる電力ではありません.測定条件はほぼ快 晴に近いので,実際にはこの 80 %以下と考えた方が良いでしょう. 7A-5 表 7A-3 太陽電池の特性を乾電池と比較する シリコン多結晶太陽電池の仕様の一例 表 7A-4 (STP135-12Tb,サンテックパワー) 発電素子 89 第 1 部 シリコン単結晶太陽電池仕様の一例 (NT-84L5H,シャープ) シリコン多結晶 発電素子 シリコン単結晶 公称最大出力 Pm 135W 公称最大出力 Pm 84W 公称最大出力動作電圧 Vpm 17.5V 公称最大出力動作電圧 Vpm 17.42V 公称最大出力動作電流 I pm 7.71A 公称最大出力動作電流 I pm 4.83A 公称開放電圧 VOC 22.3V 公称開放電圧 VOC 22V 公称短絡電流 I SC 8.20A 公称短絡電流 I SC 5.40A 表 7A-5 第 2 部 第 3 部 CIS 系太陽電池仕様の一例 (SF80-A,昭和シェル石油) 発電素子 公称最大出力 Pm 80W 公称最大出力動作電圧 Vpm 41.0V 公称最大出力動作電流 I pm 1.95A 公称開放電圧 VOC 56.5V 公称短絡電流 I SC 2.26A 1.6 A 1.4 第 5 部 太陽電池の近似 Ⅰ B 1.2 電流Ⅰ[A] 第 4 部 CIS(薄膜系) Ⅰ−V 曲線 1 0.8 1Ω 電力 0.6 VE 0.4 1.5V 0.2 0 0 図 7A-7 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 C 1.6 電圧VE[V] 普通の乾電池の I − V 特性 7A− 5 負荷 太陽電池の特性を乾電池と比較する ● 電池のI − V 特性は直線的 図 7A-7 は内部抵抗 1 Ω,起電力 1.5V の乾電池に可変抵抗を接続して,抵抗を変えたときの端子電圧 VE と回路電流が変化するようすです.電圧と電流の関係は,オームの法則により直線になります.こ の直線の傾きが内部抵抗を表します. ● 太陽電池は内部抵抗の値が変わる電池である 太陽電池はオームの法則に従わないのですが,その I −V 特性を A − B − C の線で近似すると,A − B 部 分と B −C 部分では,おのおのオームの法則を適用できます.その結果,高電圧・小電流領域 B−C では 内部抵抗が小さく定電圧特性であり,低電圧・大電流領域 A −B では内部抵抗が大きく定電流特性です. 90 第 7 章 Appendix 太陽電池のしくみと使い方 Ⅰ ⅠSC Ⅰ1 最適動作点 ⅠOP 電流 Ⅰ1 ×V 1 Ⅰ2 ×V 2 Ⅰ2 0 図 7A-8 V2 V1 電圧 VOP VOC V 太陽電池の最適動作点から外れたときの電力 写真 7A-3 密閉型鉛蓄電池 WP5-12,WP9-6A(Kung Long Batteris Indutstrial 製,秋月電 子通商扱い) つまり,太陽電池は内部抵抗の値が変わる電池である,と言って良いでしょう. ● 使い方によっては最大出力が得られない 図 7A-5 を見ると,最大電力となるのは,最適動作点のただ 1 点です.これ以外の電圧,あるいは電 流で使う場合は得られる電力は小さくなります.これは普通の乾電池の場合(図 7A-7)でも言えること で,内部抵抗に等しい負荷のときに最大電力が取り出せます. 乾電池との最大の違いは,乾電池からはその容量の電力しか取り出せませんが,太陽電池は光があ れば無限にエネルギーを取り出せることです.これは,水筒に入れた水と,水道の水のような関係で す.水筒の水は必要な量だけ少しずつ飲めば良いのですが,水道の水をくむときは,最短時間で容器 に入るように流量を調整します. 図 7A-5 において,開放電圧 VOC の 1/5 くらいのところで使うときを考えましょう.図 7A-8 を見てく ださい.このときの電圧を V1 とした場合,電流は I 1 となります.電力は V1 × I 1 ですから,これは明ら かに最適動作点の電力VOP × I OP よりは少ない値です. 次に,電流 I SC の 1/5 くらいのところで使う場合を考えます.このときの電流を I 2 とした場合,電圧 は V2 となります.電力 V2 × I 2 も最適動作点よりずっと小さな値になります.つまり,太陽電池から電 力を取り出すときには,最適な電圧と電流の値があり,それが VOP ,I OP だと言うわけです. 7A− 6 太陽電池の電力を 2 次電池に充電する ● 2 次電池を使えばいつでも電力供給可能 太陽電池の電力の用途としては,日射時間だけ利用する方法と,ニッケル水素電池や鉛蓄電池など の 2 次電池に蓄えて,夜間だけ,あるいは昼夜を問わず使用する方法とがあります. 前者は時間や天気に左右されるので,商用電線に送り込む売電や,昼間だけ使用する用途(本書で紹 介するゴルフ・トレーナや降雨警報器など)に限られます. 後者はバッテリに充電するので,電力はいつでも使えるようになります. 7A-6 13.0 端子電圧[V] 91 第 1 部 20℃ 表 7A-6 12.0 密閉型鉛蓄電池の公称容量 放電条件により容量が異なる 11.0 10.0 15A 9.0 8.0 太陽電池の電力を 2 次電池に充電する 1 2 10A 4 6 810 分 3A 2A 5A 20 1A 0.475A 0.25A 放電電流 40 60 2 4 6 810 時間 20 種類 放電電流 終止電圧 容量 20 時間率 0.25A 10.5V 5Ah 10 時間率 0.5A 10.5V 4.75Ah 5 時間率 0.85A 10.2V 4.25Ah 1C 5A 9.6V 2.25Ah 3C 15A 9.6V 1.75Ah 図 7A-9(1) 密閉型鉛蓄電池 WP5-12 の放電特性例 ● バッテリ充電の際の注意点 太陽電池の出力からバッテリに充電する際に注意することは次の 2 点です. 1.バッテリの充放電容量のバランスを取る 2.バッテリを過充電しないこと このほかに電池の特性に合った充電電流や充電時間を選ぶことも大事です.特にリチウム 2 次電池の 場合は,決められた充電電流と充電時間を守らないと重大な事故につながります.手軽で安全なのは, 鉛蓄電池とニッケル水素電池です. 上記 1 の充放電のバランスとは,充電した容量以上の電力は取り出せないという当たり前の原理です. 電力は P =EI で,バッテリの場合に E は,例えば 12V など一定ですから,電流×時間で容量を表すこ とができます. ● 容量が大きく安価な鉛蓄電池 鉛蓄電池は,自動車に必ず装備されている 2 次電池です.容量が大きく容量当たりの値段が安いので, 電力用としても使えます.欠点としては,充電中に水素ガスが発生するため,密閉した室内に置くと 発火する危険があることです.また,希硫酸の飛散や液漏れにより周囲の機器や床を腐食させる可能 性もあります.さらに,電解液が減少するので補給する必要があります. これを改良したものが密閉形鉛蓄電池です(写真 7A-3).機器の内部に実装できるので,バックアッ プ電源にも利用されています.電池寿命も密閉形の方が長いようです.セルの電圧が 2V と比較的高い こと,使用温度範囲が広いこと(− 20 ℃〜+ 50 ℃程度)も特徴です. 過充電により性能が低下するので,少なくとも定電圧回路は必要です.定電圧回路の出力電圧を満 充電電圧に設定して充電すると,バッテリ電圧の上昇に伴って充電電流が減少し,満充電電圧になる と充電電流は 0 になります. 鉛蓄電池のうち,特に深放電(過放電)に強く作られたものはディープ・サイクル・バッテリと呼ば れて,ソーラ街灯やバッテリ駆動車などに使われています.図 7A-9 は密閉鉛蓄電池の放電特性,表 7A-6 はいろいろな条件での容量です.この鉛蓄電池は 30 秒以下であれば 100A という大電流を流すこ とができますが,このような使い方をすると取り出せる容量は半分以下になってしまいます. 図 7A-10 は鉛蓄電池の充電時間と端子電圧の関係です.この図は定電圧充電ではなく,定電流充電に より端子電圧の上昇傾向を見たものです.満充電状態では端子電圧が急に上がります.このまま充電 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 第 7 章 Appendix 端子電圧[V] 92 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 太陽電池のしくみと使い方 逆流防止ダイオード 太陽電池の最適 動作点電圧に合 わせる ニッケル・カドミウム 電池 0 図 7A-10 2 4 6 8 10 12 14 充電時間[h] 図 7A-11 ニッケル・カドミウム電池の充電回路 鉛蓄電池の充電時間と端子電圧の関係 満充電になると端子電圧が急上昇する を続けると電池の寿命が著しく短縮します. ● ニッケル・カドミウム電池 三洋電機(現在はパナソニック)が初めて世界に送り出した,実用的な 2 次電池です.しかし,カドミ ウムが環境汚染物質であることから,環境保護のために次に述べるニッケル水素電池に急速に置き換 わりつつあります. 長所は大きな電流を取り出せること,500 回以上充放電を繰り返すことができること,使用温度範囲 が広いことなどです. 短所は自己放電がやや大きいこと,メモリ効果があることです. 充電には 10 時間以上かかりますが,30 分で充電できる急速充電用もあります.ニッケル・カドミウ ム電池を太陽電池につなぐときは図 7A-11 のようにします. ニッケル・カドミウム電池のセル当たりの電圧は 1.2V です.満充電では 1.35V くらいになるので,10 個直列にして充電するときは,最大出力動作電圧が 13.5V 程度の太陽電池を選ぶと良いでしょう. メモリ効果とは,電池容量全部を使い切らずに充電を行うと,その容量が満充電容量として記憶(メ モリ)されてしまうことです.この場合,容量全部を放電させると回復することが多いです.原因は はっきり解明されていません. ● ニッケル水素電池 ニッケル水素電池は,ニッケル・カドミウム電池を改良したもので,その特性もよく似ています. 容量はニッケル・カドミウム電池の 2 倍以上です.充電回数や自己放電特性はニッケル・カドミウム電 池と同じです.図 7A-12 はニッケル水素電池の充電特性です.満充電で温度上昇とわずかな電圧上昇が あります. ● リチウム・イオン電池 ニッケル水素電池よりも体積当たりの容量が大きな,扱いやすい電池です.携帯電話やカメラ・レ コーダなどに使われています.扱いやすいと言っても充電しやすいと言う意味ではありません. 長所は 1 セル当たりの電圧が 3.6V なので,電池の必要本数が約 1/3 になること,コンパクトにできる 7A-6 1.8 60 1.6 50 充電電圧 1.4 1.2 0.8 図 7A-12 40 30 温度 1.0 0.6 20 0.3 400W/m 2 200W/m 2 暗い 0 0 10 電圧[V] 20 24 図 7A-13 太陽電池でバッテリを充電する場合は最適 動作点の左側で動作させる R3 R2 8.2k Tr7 2SK2231 (東芝) 図 7A-14 バッテリ・チャージャ回路 満充電時は太陽電池をショートする 91k R7 R5 3 R1 1k D21 BZX79-C3V9 560k 3.3k R6 3.3k R4 27k 8 2 4 1 IC1a 第 3 部 第 4 部 第 5 部 D1 1N4002 第 1 部 第 2 部 600W/m 2 0.2 0.1 ニッケル水素電池の充電特性 12Vバッテリ 充電領域 1000W/m 2 800W/m 2 0 1.5 0.5 1.0 充電時間[h] 明るい 0.4 10 電池内圧 0 0.5 電流[A] 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 70 充電:1lt 温度:20℃ 電池温度[℃] 電池内圧[MPa] 電圧[V] 2.0 93 太陽電池の電力を 2 次電池に充電する BT1 +12V LMC662 (ナショナル セミコン ダクター) ことです. 短所は大電流の放電に向かないことです.放電特性は,乾電池のようにリニアに端子電圧が下がっ ていくので,電池の残量は検出しやすいです. ● バッテリへの充電ノウハウ 鉛蓄電池の場合は,太陽電池の I −V 特性の最適動作点が満充電電圧になればベストです.図 7A-13 において,12V バッテリの充電領域を斜線の範囲にします.すると,満充電電圧を越えてバッテリ端子 電圧が上昇した場合,充電電流は急激に低下します.このようにすれば,太陽電池を直接鉛蓄電池に 接続して充電できます. 小型の太陽電池は出力を短絡できます.図 7A-14 はこれを利用したシャント(分流)型のソーラ・ チャージャです.この回路は太陽電池をショートさせるので,大型の太陽電池だと発熱が多く危険で もあり,使用できません.この回路では,12V 鉛蓄電池を想定して,充電終了電圧を 17V に設定してい ます.電池電圧が 6V などと異なる場合は分割抵抗 R 3 ,R 4 の値を変更してください. ● ブースト充電とフロート充電とは 鉛蓄電池の充電にはブースト充電とフロート充電があります.フロート充電は,バッテリの電力を 使う機会が少ない場合に,自然放電による容量の減少を補うために行います.例えば非常灯の場合, 94 第 7 章 Appendix 太陽電池のしくみと使い方 通常は AC100V で動作していますが,停電時はバッテリで動作します.停電はめったに起こらないの で,自然放電を補うためにフロート充電を行います.フロート充電は,やや低い電圧で充電すること で過充電を防止します.フロート充電によりバッテリは常に満充電状態を保持します. フロート充電は充電電流を監視し,満充電電圧に近づくと充電電流を減少させます.また,端子電 圧が下がると充電電流を増加させます. ブースト充電は短時間に大きい電流で急速充電するモードです.大電流で放電してバッテリの残量 が少なくなったときに行います.停電で非常灯が数時間点灯した場合が該当します.セルあたり,2.35 〜 2.4V で充電します.そして,バッテリ電圧が上昇したらフロート充電 2.25V に移行します. 満充電かどうかは実際に放電して見ないとわかりません.上記のフロート充電のような定電圧では なく,定電流電源を使って鉛蓄電池を充電すると,最終的には端子電圧は 1 セルあたり 2.7V くらいまで 上昇します.従って,これを終止電圧とする場合もあります. ● 所望のパネルが入手できないとき 例えば,12V,250mA のパネルが入手できなかった場合,12V,1000mA のパネルでも代用できるの でしょうか. 結論から言えば,より容量の大きいものを使えば代用は可能ですが,応用回路によっては最適動作 点から外れてしまうことがあるので注意が必要です.図 7A-15 を見てください.これは入射強度が同じ ときの,2 種類の太陽電池の I −V 特性を並べて書いたものです.①は 2V,250mA,②は 1.4V,410mA の太陽電池です.この場合,電圧が違うので,最適動作点は異なります.従って同じ充電回路は使え ません. 代替パネルを探すときは,同じ公称最大出力動作電圧であって,電流だけが大きなものを選ぶよう ◆パルス充電に対応した鉛蓄電池充電コントローラ 鉛蓄電池は,一定電流で充電するよりは,パルス 電流で充電した方が深く充電できると言われます. これは図 7A-A のように,電圧をかけた瞬間は大き な電流を吸い込んでくれるのですが,時間がたつと すぐに充電電流が減ってしまうという性質を逆手に バッテリの端子電圧は通常 13.6V ですが,パルス 的に 15.5V まで上昇しています.平均充電電流はパ ルスの間隔(パルス周波数)で変化させています. 出力端子はバッテリに直接接続します.直列に抵抗 やダイオードを入れると電流は変化しません. 取って,効率良く電力を送り込もうと言うものです. パルス充電に対応したソーラ・チャージャを写真 7A-A に示します. 自作する場合は図 7A-B を参考にしてください. 図 7A-B では,前に述べたブースト充電とフロート 突入電流 が大きい 充電のモードをアナログ回路で実現しています. ジャンパの設定を変更すれば 12V 以外の電池にも 使えます.充電電流が流れない場合は,直列ダイ オード両端の電圧< 0 となるので,充電電流パルス は停止します.写真 7A-B は充電波形です. Ⅰ 休止区間 図 7A-A パルス充電の効果 鉛蓄電池は電圧を印加した瞬間に大き な電流が流れる 7A-6 太陽電池の電力を 2 次電池に充電する 95 第 1 部 第 2 部 第 3 部 写真 7A-A 写真 7A-B ソーラ・チャージャの充電波形(10V/div, 2V/div,50ms/div) ソーラ・チャージャで鉛蓄電池を充電する CM04-2.1(Phocos AG 製,秋月電子通商扱い) 上がバッテリの端子電圧,下が充電電流パルス R 27 820k D9 R 60 R7 C5 R 67 1.5M 2 IC1a 4 LM224 1 820k 5 7 6 Tr3 2SC1815 R 55 22k R 13 6.8k R 11 100μ 100Ω R 50 82k 11 C2 R 44 82k 1000p 3 10k R9 68k 1N4148 R 40 Tr6 2SA1015 1M C1 0.1μ IC1b LM224 12 14 D8 13 R 42 1N4148 150k IC1d LM224 (ナショナル セミコンダクター) R 43 68k R 2 15k R 57 Tr7 2SC1815 (東芝) R 48 RV1 SAS-470KD10 100k D2 BZX84C 6V8 Tr4 2SA1015 (東芝) 82k R 63 C 16 LED5 1000p 3.3k L1 BT1 +12V D3 D20 1N4148 100k SR54 図 7A-B 鉛蓄電池充電コントローラの回路 写真 7A-A のチャージャと同じ機能を持つ R 34 100k D1 1N4002 2.2μH R 47 10k J1 82k R 49 R 33 C3 Tr12 2SK2231 Tr14 2SK2231 R 72 6.8k 47μ R 32 5.6k J2 R 31 22k J3 R 30 68k R 29 150k J4 C 11 0.1μ 第 4 部 第 5 部 96 第 7 章 Appendix 太陽電池のしくみと使い方 100 ② 1.4V,410mA 8A6K−G6EC 電流[mA] 80 図 7A-15 仕様の異なる 2 種類の 太陽電池の比較 最大出力電圧点の異なるものは代用 できない ① 2V,250mA 60 ★ ETM250−2V ★ 40 20 0 0 0.5 1 1.5 電圧[V] 2 2.5 にしてください.そうすれば動作点が同じであたかも入射強度が強いように扱うことができます. ● 太陽電池の購入先 s 小型 小型のパネルは秋月電子通商が安くて種類も豊富です. http://akizukidenshi.com/catalog/default.aspx 千石電商にも模型用や折りたたみ式の小型のものがあります. http://www.sengoku.co.jp/index.htm マルツパーツ館には工作に向く各種の小型太陽電池が揃っています. http://www.marutsu.co.jp/index.php 共立電子産業は模型用を中心として小型の太陽電池を扱っています. http://eleshop.jp/shop/default.aspx s 大型 大型のパネルは安川商事が品揃え豊富です.サンテック(中国),昭和シェル,京セラ,ICP(米国), シャープなどを扱っています. http://www.rakuten.co.jp/yasukawa/ 日本イーテックは昭和シェル系のケー・アイ・エス,ソーラフロンティアや日天(中国),京セラの パネルを販売しています. http://www.etech-japan.com/susume/ 電菱は大・中・小の太陽電池に加え充電コントローラも販売しています.主に法人向けですが,個 人でも問い合わせは可能です. http://www.denryo.com/products/solar̲panel/index.html B 参考・引用*文献 B * RECHARGEABLE SEALED LEAD ACID BATTERY,Kung Long Batteries Industrial. (1) http://akizukidenshi.com/download/WP5-12.pdf (2)ニッケル水素電池特性水素電池技術資料,パナソニック㈱. http://industrial.panasonic.com/www-ctlg/ctlgj/qACG4000̲JP.html 第2部 97 風力を活用編 第8章 0.2W 風車,リムダイナモ 3 個,倍電圧整流回路で作る 2 次電池充電器 本章の前半では小型の風車を使った発電機を製作します(写真 8-1).そして,後半ではこれに 2 次電池 ● 実際の風力発電設備は巨大で出力も大きい 写真 8-2 は,西日本最大級といわれる風力発電設備(ウインド・ファーム)です.撮影した当日は幸い にも風が強い日で,10 基の風車が力強く回っていました. タワーの高さ 65m,羽根の長さ 30m と巨大です.出力は,1 基 1500kW なので,総計 1.5 万 kW となり, まかな 約 1 万世帯分を賄える電力です.出力電圧 575V を 22kV に昇圧し,さらに変電所で 66kV にして,九州 電力に給電しています. カットイン(動作開始)風速は 3m/s で,稼働率は 29 %(冬から春)〜 9 %(夏)とのことです.この稼 働率が低いことが風力の泣き所ですが,商用電力路に給電することで十分実用的なものとなっています. 今回のように,電池に充電することも同じような効果(エネルギーの積分,つまり蓄積)となります. 3基の風車 尾翼 写真 8-1 製作する 3 基の風車を搭載した風力発電機 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 の充電回路を取り付けます. 回路収納BOX 第 1 部 写真 8-2 風力発電設備(ウインド・ファーム,北九州市 若松区) 風車は 10 基,タワーの高さ 65m,羽根の長さ 30m,電力は総 計 1.5 万 kW,稼働率は 29 〜 9 % 98 第8章 2 次電池充電器 次章で紹介する 大型風車 今回紹介する 小型3連風車 ステッピング・ モータを使った 発電機 (b)ステッピング・ モータ (a)自転車用発電機「ダイナモ」 写真 8-3 写真 8-4 次章で紹介する大型風車とステッ ピング・モータによる発電機 製作する風力発電機用に準備した発電機 8− 1 0.2W 風車の製作 ● 小型風車の発電パワーはとても小さい 小型の風車に使用できる発電機を写真 8-3 に示します.写真 8-3(a)の自転車用発電機を使った,小 型風車を製作します. 皆さんをがっかりさせないために初めに断っておきますが,通常の風力ではこれらの発電機の定格 出力をフルに出すことは無理です.台風や突風の場合は別ですが,台風では羽根が壊れる可能性があ ります.写真 8-2 の風力発電所でさえ,風速 25m/s 以上では停止しているのです. もちろん,ギアやベルトで回転速度を上げれば定格に近づけることはできますが,この場合は大き な駆動トルクが必要になるので,羽根の直径を大きくしなければならず,やや大掛かりになります. そこでダイナモの軸に直接風車を取り付け,羽根の直径を小さくして回転数を上げ,必要な電力を 得るために,風車の数を増やすことにします.風車は写真 8-1 のように 3 連としました.1 基だけのも のも作れるようにしています.さらに,写真 8-3(b)のステッピング・モータを発電機として使った, 羽根が大きくて出力の大きい風車(写真 8-4)を紹介します. ● 工作に必要な工具をそろえよう バイス(万力),電気ドリル(刃は 2 〜 6.5mm 各種),スパナ,センタ・ポンチ,金のこ,タップ(刃は 3 〜 4mm),ペンチ,やすり,のこぎり,カッタ,ハンマが必要です.この他,リーマ,ボックス・レ ンチ,金切りばさみ,プライヤ,クランプがあれば便利です.六角レンチが必要な場合もあります. 本書の工作では,板金や木材加工など工作の知識がある程度必要になります. ● 発電機に風車を取り付けるためのフランジを作る 風車の羽根を発電機の回転軸にしっかりと固定するために,フランジが必要になります.フランジ 8-1 0.2W 風車の製作 99 第 1 部 100mm 外したランプ 第 2 部 (a)加工前 写真 8-5 φ6mm×4 中心軸穴φ5mm ナットA フランジ 写真 8-6 第 5 部 切断 ワッシャを1〜2枚入れる ダイナモ ナットB ナットA,Bでフランジを 締め付ける (a)切断前 図 8-1 第 4 部 ダイナモからランプを外す フランジを の方向に引っ張り すきまを0.5mm確保する 18mm 38mm (b)加工後 アルミ板からフランジを切り出す φ6mm×4 第 3 部 フランジの取り付け方法 写真 8-7 (b)切断後 ダイナモの泥よけを切り落とす は真鍮むく棒などを旋盤で加工するのが理想ですが,旋盤は高価で使いかたも簡単ではありません. 本書では,誰でもできる板金加工で製作を進めます. 100 × 100mm,厚さ 2mm のアルミ板[写真 8-5(a)]から,直径 100mm の円板を切り出します.まず, 四隅を金のこで切り落とし,8 角形にします.次に,やすりをかけてほぼ円形に仕上げます[写真 8-5 (b)].その後,図 8-1 を参考にしてドリルで羽根の取り付け穴を開けます.中央の穴は直径 5mm です. ● 自転車発電機を台座に取り付けられるように改造する ① ランプを取り外し泥除けカバーを切り取る ダイナモ裏側のランプ接続部のハトメをやすりで削り,ランプ部分を引っ張ると外れます(写真 8-6) . 次に,泥よけカバーを金のこで切り落します(写真 8-7). ② L 型金具を組み合わせて平板に取り付けられるようにする ダイナモの品種によっては,いくつかの L 型金具を組み合わせる必要があります(写真 8-8).金具は 既製の直角折金具を利用しますが,利用できない場合は,アルミ板 2mm 厚を加工して作ります.ダイ ナモの先端のローラをバイスかプライヤで挟み,ナットをボックス・レンチかスパナで外します. 100 第8章 2 次電池充電器 ダイナモ取り付け金具 ダイナモ 平板 この平板に三つの ダイナモを取り付 ける L型金具 写真 8-8 ダイナモに L 型金具を組み合わせて平 板に取り付ける 尾翼を取り付ける パイプを挿入 パイプ 写真 8-10 風車 3 基構成の場合は平板に風車を 並べて取り付ける 要はダイナモとパイプが このようにほぼ真っすぐ に取り付けられれば間の 金具の形状は問わない 写真 8-9 風車 1 基構成の場合の平板取り付け方法 ③ 平板金具を取り付ける 1 基構成の場合は,写真 8-9 のように組み立てます.ステンレス・パイプは,パイプ用ソケットを利 用して取り付けます.ソケットとパイプとはビスで固定します. 3 基構成の場合は,写真 8-10 のように組み立てます. ● 羽根のピッチを決めるひねり金具を作る 風車の羽根は,風の方向に対し,垂直方向からやや傾けなければなりません.これをピッチ角と呼 んでいます.10 °〜 30 °が普通です.ここでは 15 °程度とします.ピッチ角が大きいと発生トルクが大 きくなり,小さいと回転数が上昇します. 写真 8-11 のような一文字継手 A(長さ 100mm,幅 18mm)の a 点をバイスで挟み,b 点をペンチで掴 んで 15 °ほどひねって B のようにします.Aαと Bαは横から見たようすです. 8-1 およそ18mm プラダン b 10cm 0.2W 風車の製作 101 第 1 部 カッタ・ ナイフ 長手方向 16cm a A Aα B 切り出した羽根 Bα A, Bを横から見たようす 写真 8-11 羽根を取り付ける金具一文字継手の曲げ方 写真 8-12 カッタ・ナイフでプラダンから 羽根を切り出す 尾翼 プラダン,30cm×35cmくらい 45×12×1000mm板材 防水のためラッカで塗装 する 回路収納用BOX 尾翼は一文字金具 で固定する ポール先端φ6mm ハンガ用パイプφ25mm長さ35cm フランジ ハンガ・パイプ用ソケットで, 平板に取り付ける 羽根 10cm×16cm ダイナモ プラダン ダイナモの軸にフラン ジをφ5mmのナットで 取り付ける 図 8-2 風車 3 基による 0.2W 出力の発電機 パラソル,テント用ポール φ6mmビス・ナット 強く締め付けないこと ひねり金具で 羽根を両側か ら挟む ● プラスチック・ダンボールで羽根を作る 幅 10cm,長さ 16cm の羽根を 1 基につき 4 枚,切り出します(写真 8-12).筋の入った方向を長手方向 とします.3 連構成にするための横木には木材を使用しました. 図 8-2 を参考にして,各部品を組み立ててください.胴体のパイプにポールの先端が貫通する φ 6mm の穴を開けます.穴位置は重心,つまり風車にできるだけ近い位置とします.尾翼は図 8-3 を 参考にして組み立ててください.表 8-1 に,製作に必要な機構部品をまとめておきました. 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 102 第8章 2 次電池充電器 表 8-1 風力発電機の製作に必要な機構部品 品名 仕様 個数 入手先 自転車発電ランプ 6 V,2.4 W ブロック・ダイナ 3 DIY ショップ,自転車店 アルミ・スクリュー・ポール M−9221,2500 ×φ 30 mm 1 DIY ショップ,スポーツ店 三脚スタンド(ペグ付き) M−9233,φ 19 〜φ 35 mm 1 DIY ショップ,スポーツ店 ステン巻きパイプ φ 25 mm,35 cm 1 DIY ショップ,金物店 NK ソケット φ 25 mm 1 DIY ショップ,金物店 アルミ板 厚さ 2 mm,100 × 300 mm 1 DIY ショップ,金物店 木材 4.5 × 12 × 100 cm 1 DIY ショップ,材木店 金折れ金物 ユニクロ,1 辺 4.5 cm 幅 16 mm 厚さ 3 mm 3 DIY ショップ,金物店 プラスチック・ダンボール プラダン,600 × 900 × 4 mm 1 DIY ショップ 一文字継ぎ手 100 mm,厚さ約 1 mm 24 DIY ショップ,金物店 UK 六角ボルト 3/8 inch (9.52 mm) × 30 mm 1 DIY ショップ,金物店 六角ボルト・ナット 5 × 30 mm 4 DIY ショップ,金物店 打ち込みアンカ P コーン,φ 25 mm,ナット付き 1 建築金物店 鍋小ネジ 6 × 15 mm 鉄,ユニクロめっき 51 DIY ショップ,金物店 鍋小ネジ 5 × 20 mm 鉄,ユニクロめっき 3 DIY ショップ,金物店 鍋小ネジ 4 × 20 mm 鉄,ユニクロめっき 21 DIY ショップ,金物店 鍋小ネジ 3 × 10 mm 鉄,ユニクロめっき 5 ビニール並行電線 銅線径 0.8 mm ケース 12 × 8 × 3 cm くらい 8−2 3m 1 DIY ショップ,金物店 DIY ショップ,パーツ店 DIY ショップ,雑貨店 ダイナモで回転エネルギーを電力に換える ● 自転車のダイナモには 2 極のものと 4 極のものがある 自転車の発電機の仕様は JIS C 9502 で細かく決められています.ダイナモの定格は,自転車の速度が 15km/h のときで決められており,2.4W,3W,6W の 3 種類がありますが,通常入手できるものは 2.4W です.速度 5km/h で,定格の 41 %以上,30km/h で 133 %以下を出力すると決められています. しかし,ダイナモの内部構造は規定していないので,2 極[図 8-4(a)]と 4 極[図 8-4(b)]のものが存 在します.上側の波形は,1 回転に 1 パルスが出るように,羽根の一つにマグネットを貼り付けて, 1mH のインダクタで拾ったものです.したがって,センサ・パルスの間隔がダイナモの 1 回転を表し ており,この間にダイナモ出力電圧波形がそれぞれ 2 個,4 個あることがわかります. ● ダイナモに風車を取り付けたときの回転数と出力は? 上記 2 種類のダイナモの回転数と出力電圧を測定したものが図 8-5 です.出力電圧は,JIS では「正確 な実効値を示す低消費型の電圧計」で測定するよう決められていますが,テスタの AC レンジ(整流式で 内部抵抗 8kΩ/V 程度)で測定しても大差ありません.なお,ピーク・ツー・ピーク電圧 VPP と,実効値 A の関係は,VPP = 2 2 A となりますが,これはサイン波の場合で,図 8-4(b)のような波形の VPP は これより大きくなります. 図 8-5 では,負荷のある場合(JIS が規定している部分)は,どちらもほぼ同じカーブとなっています 8-2 ダイナモで回転エネルギーを電力に換える 103 第 1 部 メーカ名,発売元,その他 ㈱福栄商会,㈱サギサカなど パール金属㈱ http://www.captainstag.net/home/ プラスチック製 ナット 打ち込みアンカ, ナット付き 一文字金具をL字型に折る ステンレス・ パイプφ25 モリ工業㈱,ハンガ用パイプ ハンガ用パイプ部品 ハンマで 打ち込む ㈱光 http://www.osaka − hikari.co.jp/ 6cm バルサ材,ベニヤ板でもよい 一文字金具 120mm 18cm 第 3 部 18cm 第 4 部 22cm 16cm 防水のためラッカ・スプレで塗装する 六角ボルト φ5穴×3 16cm 第 5 部 22cm ㈱トヨバックス,ストレートコーン ナット付き ビス5×10mm ナット付き ナット付き 図 8-3 ナット付き テール(プラダンから切り出す) 図 8-2 に示した発電機の尾翼部分の組み立て方 ドア・ベル用電線など,ダイナモ配線用 回路収納用,弁当箱でも良い 326ms 360ms 120mV 回転センサ出力 120mV 回転センサ出力 ダイナモ出力 ダイナモ出力 2V 163ms 2V 90ms (a)2極の場合 図 8-4 第 2 部 (b)4極の場合 ダイナモの出力電圧波形 ダイナモ 1 回転中にダイナモ出力電圧波形がそれぞれ 2 個,4 個あることがわかる が,無負荷の場合は 4 極(最近はこのタイプが多い)のほうが高速時の電圧が高くなっています.この特 性図は DC−DC コンバータを設計する際に参考にします. ところで,実際に風車を取り付けたときは,どの程度の出力が得られるのでしょうか.家庭用扇風 機の風速は最大で約 3m/s ですが,この場合は発電機軸の回転数は 5rps くらいになりました.このとき の出力電圧は無負荷で 0.8VRMS,15 Ω負荷で 0.6VRMS です.風速 3m/s は,戸外では木の葉が揺れ,旗 104 第8章 2 次電池充電器 25 無負荷・4極 出力電圧[VRMS] 20 無負荷・2極 15 倍電圧整流回路 製作した風車で 扱える範囲 2次電池 2次電池 10 15Ω負荷・2極 5 0 0 図 8-5 15Ω負荷・4極 20 40 60 80 100 回転数[rps] 120 140 160 ダイナモに風車を取り付けたときの回転数と出力 DC−DCコンバータIC DC− DC −DC DCコンバータ コンバータIC IC 写真 8-13 製作した充電コントローラ がなびき出す程度の風速です.風速 10m/s では傘がさしにくくなるほどですから,普通の風で使おう とするなら,図 8-4 の 20rps 以下の部分が動作領域になるでしょう. ● 電池を充電してみる 風車を 3 基構成にすれば,0.6 × 3 = 1.8VRMS となります.負荷 15 Ωに流れる電流は 120mA ですから, 電力は 0.2W 程度です.心もとない値ですが,3V で 60mA ほど取れますから,ニッケル水素電池 2Ah を 2 個,30 時間で充電できる計算になります.風車の稼働率が 20 %ならば,1 週間で充電完了となります. 気の短い人にはとても耐えられる話ではありませんが,風が充電した電池を使うのもまた風流(?)では ありませんか.待っていれば良いのですから. ● 2 次電池の充電回路を作る 実際には整流ダイオードの電圧降下やコンバータの損失があり,前項の値を実現するのも簡単なこと ではないのです.3m/s より弱い風もあり,このときはさらに電圧が落ちます.逆に 3m/s 以上の風も吹 き,10m/s を越える突風もあります.この場合は発電機の電圧が上がりすぎて,許容値以上の電流を電 池に流してしまうことになります.そこで次項では,DC−DC コンバータを使って,電力のコントロー ルができる 2 次電池充電回路を作ります. 8− 3 三つのダイナモの交流出力を 足し合わせる整流回路 ● ダイナモの内部抵抗は無視できないほど大きい 写真 8-13 に示す充電コントローラは,整流回路と DC−DC コンバータから構成されます. 整流回路には倍電圧整流回路を使い,DC −DC コンバータには降圧型のゲーテッド・オシレータ方式 の IC を使います. 発電機の出力電圧は,磁束の強さと回転数の積に比例します.磁束の強さは内部の磁石で決まってい 1基当たりの出力電圧[VRMS] 8-3 三つのダイナモの交流出力を足し合わせる整流回路 105 第 1 部 5 風速3m/s 4 r 3 無負荷 15Ω 2.13V 4.25V 2 15Ω負荷 1 0 r= 0 図 8-7 20 ダイナモの内部抵抗の求め方 ダミー負荷 15 Ωを付けて電圧降下を測った 風車の回転数と出力電圧の関係 電圧 図 8-6 10 風車の回転数[rps] 4.25−2.13 ×15=15Ω 2.13 平滑コンデンサの放電カーブ このぶんしか生かせない 平均出力電圧 Vout VF 時間 半サイクルの電力は 捨てられる 図 8-8 半波整流は平均出力電圧が低く効率が悪い るので,回転数が高いほど大きな出力が得られます. 図 8-6 は図 8-5 の 20rps 以下の部分を拡大したものです.発電機の等価回路は図 8-7 のように,電圧源 と内部抵抗で表すことができます.無負荷時の電圧が電圧源の電圧ですから,20rps で 4.25V です.15 Ω負荷時の電圧が 2.13V なので,図 8-7 のように内部抵抗は 15 Ωと計算できます.実に発生電力の半分 はダイナモ内部で熱となっているわけです. ● 3 基のダイナモの出力を直流に変換してから加算する 発電機は,回転エネルギーを磁束の変化に変え,これをコイルで電流として取り出すものです.した がって,その出力は交流です. 交流の加算には同期関係が必要です.ところが,三つの風車はそれぞれ独立に回っているので,ダイ ナモ出力電圧の周波数と位相はそろっていません.つまり,同期していないので,ダイナモの出力を直 列や並列にして電圧や電流を加算すると,互いに打ち消し合う 0 から最大 3 倍まで,不規則に大きく変 動して使えません.そこで,各ダイナモの出力を整流して直流に変換し,その後加算するようにします. ● 交流を低損失で直流に変換できる整流回路を作る s 半波整流回路も全波整流回路も効率が悪い 整流回路で一番簡単なのは,ダイオード 1 個の半波整流回路です.図 8-8 はこの場合の出力波形です. 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 106 第8章 2 次電池充電器 VF VF Vin Vin −VF 2 RL Vin −2VF RL Vin VF 図 8-9 整流電流が半サイクルに 2 回ダイオー ドを通る全波整流回路(これも効率が低い) Vin −VF 1 図 8-10 ダイオード のVF の影響を軽減で きる倍電圧整流回路 2Vin −2VF VF 順電流 IF [A] 20 10 6 4 2 1N5818 (SBD) 1S1887 (Si) 1 0.6 0.4 0.2 0.1 0.06 0.04 0.02 Tc =25℃ 0.1 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 順電圧 VF [V] 1.6 1.8 2.0 図 8-11 整流ダイオードには VF の低いショットキー・バリア・ ダイオードを使う マイナス側の半サイクルが使われないので,その間,コンデンサに蓄えられたエネルギーを使うこと になり,図のように平均出力電圧が低下します.また,ダイオードの電圧降下VF も無視できず,得ら れる電圧Vout はさらに低くなります. 全波整流の場合はどうでしょうか.図 8-9 において,電流はプラスの半サイクルでダイオードを 2 回 通ることになり,得られる電圧は最大でも Vin − 2VF となり,Vin = 1.8V の場合,VF = 0.3V とすると, 1.8 − 2 × 0.3 = 1.2V となります.したがって,ダイオードの電圧降下 VF の影響が大きく,好ましくあ りません. s 倍電圧整流回路によってダイオードのVF の影響を軽減する 図 8-10 は倍電圧整流回路と呼ばれるもので,ダイナモのプラスの半サイクルでは, 1 の方向に電流 が流れ,下のコンデンサは Vin − VF に充電されます.次のマイナスの半サイクルでは の方向に電流 が流れ,上のコンデンサも Vin − VF に充電されます.結果として負荷 RL の両端には 2Vin − 2VF の電圧 が得られ,Vin = 1.8V の場合,2 × 1.8 − 2 × 0.3 = 3V となり,VF の影響は 20%に軽減できます. s 整流ダイオードにはVF の低いショットキー・バリア・ダイオードを使う 図 8-11 に通常の整流用シリコン・ダイオード(Si)1S1887 と,整流用ショットキー・バリア・ダイ オード(以降,SBD)1N5818 の順方向電圧 VF −順方向電流 IF 特性を示します.図 8-11 は 25 ℃のときの データです.高温でVF は低下します. 今回は順電流 50mA 程度ですから,シリコン・ダイオードですとVF = 0.9V となり,倍電圧整流回路を 使ってもVF の影響は 50%と大きいです.SBD を使えば,VF = 0.26V ですから欲しい特性が得られます. 8-4 ダイナモ3台ぶんと 整流回路の合成抵抗 225Ω 消費電力 5W! 55mA 47Ω 風速3m/s 時のダイナ モ開放電圧 充電コントロール回路の検討 225Ω 2次電池 1.2V×2 NiMH 2.6V 15V 56mA 15V 特にこの値で なくても良い (a)ダイナモ3台ぶんと整流回路の内部抵抗を 求める (b)(a)のダミー負荷を外し 2次電池をつなげば I =56mAで充電できる 図 8-12 ダイナモと倍電圧整流回路の内部抵抗を求めたあと 2 次電池を充 電してみる 消費電力 0.36W 内部 抵抗 225Ω 風速10m/s 時の起電力 107 36V 149mA 2次電池 1.2V×2 NiMH 図 8-13 図 8-12(b)の回路のままでは 内部抵抗でほとんどの電力を消費して しまう 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 8− 4 充電コントロール回路の検討 ● 倍電圧整流回路とダイナモによる内部抵抗を求める 倍電圧整流回路を使えば,風速 3m/s のとき,1 基で 3V の直流出力が得られることがわかりました. 3 基で 9V です.実際には,ダイナモ(15 Ω× 3 基= 45 Ωの内部抵抗)を倍電圧整流回路と負荷に接続す ると,電圧が大きく低下します.それは倍電圧整流回路にも内部抵抗があるからです. 風速 3m/s のとき,倍電圧整流回路の開放電圧を実測すると約 15V です.ダイナモの定格負荷 15 Ω× 3 = 45 Ω≒ 47 Ωを接続したところ,電圧は 2.6V に落ちました.したがって電流は,2.6/47 = 55mA と なります.内部抵抗は,(15 − 2.6)/0.055 = 225 Ωであることがわかります.これが倍電圧整流回路と ダイナモ 3 台ぶんの内部抵抗に相当します[図 8-12(a)]. この回路に負荷として 2 次電池をつなげば,2 次電池を充電できます[図 8-12(b)].電池両端の電圧 を 2.4V とすれば,得られる電流 I は,I =(15 − 2.4)/225 = 56mA です. 風速が 10m/s(約 16rps)になると,図 8-6 から 1 基当たりの無負荷電圧は 3VRMS,3 基で 9VRMS,ピー ク値は約 18V,倍電圧整流回路の出力は 18 × 2 = 36V となります.この場合でも,充電電流を計算する と I =(36 − 2.4)/225 = 149mA であり,電池が壊れるほどではありません.しかし,満充電になった後 も定電流を流し続けるので過充電となる可能性はあります. ● 内部抵抗による損失を低減する 前項を読めば,「別に電力制御はいらないじゃないか」と思われるでしょう.このような小型システ ムでは,これでも動くのですが,上記の過充電の問題以外に,エネルギー・ロスの問題があります. 風速 10m/s のとき,図 8-12(b)に示した 2 次電池の場合,充電自体には P = 2.4V × 0.149A = 0.36W しか消費していません.しかし,内部抵抗 225 Ωでは,P =(36 − 2.4)× 0.149 = 5W もの電力を消費し ています(図 8-13).これは不要電力ですから捨てれば良いのですが,直列に挿入する抵抗のサイズも 大きくなり,放熱対策も必要です.それにダイナモ自体も発熱します.不要な熱を捨てるという考えか 108 第8章 2 次電池充電器 入力 整流回路から ref FB リファレンス 電圧 R3 24kHz発振器 A1 発振ON/OFF 制御端子 1.245V 図 8-14 コンパレータ パワー・スイッチとして使用 Tr1 NPNトランジスタ ドライバ・ アンプ D7 1N5818 (オン・セミコ 出力端子が1.245Vとなるように, ンダクター) 制御するための帰還ループ L1 47μH C7 出力 2次電池へ R2 15k 100μ R1 10k ゲーテッド・オシレータ方式の DC−DC コンバータの動作 たも,エコロジーの観点からは好ましくありません. sDC−DC コンバータで電力変換 そこで DC −DC コンバータの登場です.DC −DC コンバータを使えば,必要な電力だけを取り出すこ とができ,余分な電力を熱として放出することがありません.DC−DC コンバータは,電力変換器とし ての性質ももっています.例えば,6V/25mA を 3V/50mA に変換できます(効率 100%として).今回の 場合は風速 10m/s のとき,36V/5mA を 3.2V/56mA に変換します.5W も捨てていた電力は,5mW ま で軽減できました.もちろん,過充電の心配もありません. ● DC−DC コンバータの検討 s 仕様決め ニカドとニッケル水素蓄電池の端子電圧は満充電で 1.4V くらいですから,2 個で 2.8V,保護用ダイ オードの電圧降下が 0.3V で合計 3.1V となります. したがって DC − DC コンバータの出力電圧は 3.1V に設定します.構成は定電圧電源ですが,供給側 の電源の内部抵抗が大きいので,実際には定電流に近い動作をします.なお,供給側の電源(電池や定 電圧電源)の内部抵抗が小さい場合は定電圧動作となるので,充電回路としては不向きです.この動作 を理解するためには降圧型の DC−DC コンバータの原理を知る必要があります. s 動作 図 8-14 にゲーテッド・オシレータ方式の DC−DC コンバータの構成を示します. フィードバック信号 FB が 1.245V より小さいとき,コンパレータは 24kHz 発振器を ON します.ドラ イバ・アンプは,この出力をパワー・スイッチ用トランジスタ Tr 1 を駆動できるだけの電圧に増幅しま す.Tr 1 は 24kHz で ON/OFF され,L 1 と C 7 によって出力電圧が上昇します.すると R 1 と R 2 で分割さ れた FB の電圧も上昇します. FB がリファレンス電圧である 1.245V より大きくなると発振回路は OFF して,Tr 1 も OFF します. 出力端子の電圧が低下すると発振回路が ON して,この動作が繰り返されます. 出力電流は入力を Tr 1 で ON して得られるのではなく,Tr 1 が ON して,いったん L 1 にエネルギーが 蓄えられ,Tr 1 が OFF してから,このエネルギーが出力電流として放出されます.負荷を駆動するた めに必要最小限のエネルギーしか蓄えないので,エネルギーのむだがありません. 8-5 ダイナモの出力は 低周波交流 ダイオードの電圧降下 の影響を最小限にする ための倍電圧整流回路 D1 1N5818 C1 1000μ 6.3V G1 ダイナモ D2 1N5818 G2 ダイナモ G3 ダイナモ C2 1000μ 6.3V I C1 LT1173 (リニアテクノロジー) 2 3 Vin SW1 4 8 SW2 C4 FB R 3 100Ω 6 1 1000μ I LI M AO D4 7 6.3V SET 1N5818 GND I C内のトランジスタ・ 5 スイッチに流れる電流 D5 1N5818 を制限し,トランジス タの破壊を防ぐ C D3 1N5818 C3 1000μ 6.3V リプル除去(平滑)用 コンデンサ. リプル除去はDC-DC コンバータで行うの で,大きくする必要 はない C6 D6 1N5818 順方向電圧降下を小さく するために,ショットキ ー・バリア・ダイオード を使用する TP3 R6 1Ω TP4 1次電流 チェック用 抵抗 L 1 の逆電圧で,SW2 端子が負方向にドラ イブされるので,こ れを防止し,かつ, スイッチがOFFにな ったときの C 7への充 電パスを形成する. スピードが速く,電 圧降下の小さいショ ットキー・バリア・ ダイオードを使う必 要がある 第 1 部 L 1 に蓄えられたエネルギーの蓄積と, リプル除去用のコンデンサ.抵抗,イ ンダクタンス成分が小さい,有機半導 体アルミ電解(OSコンなど)を使う I C1のスイッチがONの ときに,エネルギーを 磁束の形で蓄積する. 電流によりコアが飽和 せず,DC抵抗が小さ いものを選ぶ 電池から回路側への 逆電流阻止用 SW2端子 L1 47μH C7 D7 100μ 1N5818 6.3V OSコン I C1のVin が0Vのとき SW2端子に電流が流 入するのを防ぐ D8 1N5818 R 5 2.7Ω R2 15k BT1 2次 電池 TP1 CURR CHK 5 1000μ 6.3V 1000μ 6.3V 図 8-15 ゲーテッド・オシレータ方式の DC-DCコンバータ I C. 基準電圧源,電圧比較器,発振 器,トランジスタ・スイッチで 構成される 109 充電してみよう! 誤差電圧検出用OPアンプ の入力につながるフィー ド・バック経路. 出力電圧は, Vout = 1+ = 1+ R2 ×1.245V R1 15k ×1.245V 10k =3.1V R1 R4 1Ω 10k TP2 充電電流チェック 用端子.1Ωの両端 電圧をテスタで測 れば,ミリ・アン ペアで直続できる 製作した充電コントローラの回路図 ● 実際の回路と使用部品 図 8-15 が全体の回路図です.出力電圧は 3.1V に設定しています.電流を制限するためのバラスト抵 抗 R 5 は,非常に小さい値にしています.整流器側の内部抵抗が大きいので,一定電流以上は流れない からです.また,出力電圧が 3.1V と低いので,充電完了とともに充電電流が減り,過充電を防ぐこと ができます. ユニバーサル基板で作ったパターンを図 8-16 に示します.部品面から見た図です.写真 8-14 は,部 品実装後の基板です.表 8-2 に使用した部品を示します. 8− 5 充電してみよう! ● 動作確認 s 充電特性を確かめる 製作した回路は,充電完了とともに充電電流が減少するように設計しています.これを確かめるた 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 110 第8章 2 次電池充電器 整流回路 DC−DCコン −DC DCコ コン DC DC− バータ回路 バータ回路 図 8-16 写真 8-14 図 8-15 の配線図(部品面視) 表 8-2 製作した充電コントローラ基板 充電コントローラの部品表 リファレンス番号 品名 型名・仕様 個数 メーカ名 IC1 DC−DC コンバータ IC LT1173 1 リニアテクノロジー オン・セミコンダクター D1 〜 D7 ショットキー・バリア・ダイオード 1N5818 7 L1 スイッチング電源用インダクタ 47 μH,744−561−47 1 Wuerth Elektronik C7 有機半導体アルミ電解コンデンサ 100 μF/6.3 V 1 三洋電機 C1〜C6 電解コンデンサ 1000 μF/6.3 V 6 ニチコン BT1 電池ボックス 単 3 × 1 本用,BH−311P−1 2 1 片面ユニバーサル基板 AE−2(70 × 95 mm) IC ソケット DIP8P 8P 1 R1 カーボン皮膜抵抗 10 k,1/6 W 1 R2 カーボン皮膜抵抗 15 k,1/6 W 1 R3 カーボン皮膜抵抗 100 Ω,1/6 W 1 R 4,R 6 カーボン皮膜抵抗 1 Ω,1/6 W 2 R5 カーボン皮膜抵抗 2.7 Ω,1/6 W 1 め,扇風機を使って連続充電を行いました.図 8-17 がこの結果です.1600mAh のニッケル水素蓄電池 を完全放電させてから,風速約 3m/s で充電したものです.最初の 5 分で急激に 5mA ほど減少し,420 分(7 時間)経過後から緩やかなカーブで充電電流が下がり続けています. 実際には,風は吹いたり吹かなかったりを繰り返しますから,図 8-17 のように連続的に充電される とは限りません.そこで,間欠的に充電を行った結果が図 8-18 です.一つは充電を 8 時間止めた後, 一つは充電を 1 時間止めた後,もう一つは充電を 1 分止めた後,10 分間充電を行ったときのデータです. 8 時間止めた後は自然放電のため,最初の充電電流がやや増加していますが,図 8-17 の初期ほど大きな 値ではありません.1 時間止めた後と,1 分止めた後はほぼ同じ値で,前回風を止めたときの電流値で 充電が継続されることがわかります. s 本当に充電されたか確かめる 実際に充電されたかどうかを確かめたのが,図 8-19 です.6 時間充電の場合に充電電力量は, 8-5 60 40 緩やかに下がり続ける 40 30 20 10 0 8時間止んだ後 35 充電電流[mA] 充電電流[mA] 50 111 充電してみよう! 第 1 部 1時間止んだ後 30 1分止んだ後 25 第 2 部 20 15 10 5 0 図 8-17 200 400 600 時間[分] 800 0 1000 製作した回路の充電電流特性(連続充電時) 0 図 8-18 1 2 3 4 5 6 時間[分] 7 8 9 10 製作した回路の充電電流特性(間欠充電時) 500 放電電流[mA] 第 4 部 第 5 部 600 400 6時間充電 14時間充電 300 200 100 0 第 3 部 0 図 8-19 20 40 時間[分] 60 80 製作した回路で充電した 2 次電池の放電特性 40mA × 6 = 240mAh になります.放電電力量は 450mA × 0.5h = 225mAh です.14 時間充電の場合, 充電電力量は 600mAh,放電電力量は 525mAh です.いずれも蓄積された電力の 90%程度の電力が取り 出せています. * この風車は,風速 1m/s 程度で回り始め,電池への充電電流も流れ始めます.気まぐれな風でも吹く たびに充電電流は積み重なり,かつ満充電近くでは,充電電流が減少するように設計しています.です から,放置しておいても電池を傷めるようなことがありません.また,強風での発熱もありません. ダイナモが規格いっぱいに利用できないことが幾多の困難をもたらしましたが,3 連風車とすること で何とか実用レベルに達しました.風車の数を増やせば,さらに応用の可能性が拡がるでしょう. B 参考文献 B (1)清水幸丸;風力発電技術,1990 年 3 月,㈱パワー社. (2)牛山 泉;風力発電マニュアル(2005) ,日本自然エネルギー㈱. (3)三野正洋;マイクロ風力発電に挑戦,㈱パワー社. (4)自転車用発電ランプ,JIS C 9502,1998 年,日本工業規格. 112 第9章 1W 風車,ステッピング・モータ,電圧検出器で作る LED 看板 風力発電に使う発電機は,自転車の発電機(以降,ダイナモ)のように,本来発電機として作られた ものを利用する以外に,DC モータを使う方法があります.そこでロボットなどの位置制御でおなじみ のステッピング・モータを発電機として利用してみましょう. そもそも,ステッピング・モータは発電機として作られたものではありませんし,発電機として使 う場合,位置精度は必要ありません.それに,できるだけ少ない電流で駆動できるように設計されて いますから,コイルの線径が細く,大きな電流が取り出せません. しかし,低い回転数で高い電圧が取り出せるので,高電圧,小電流の負荷を接続すれば良いマッチン グが取れます.DC−DC コンバータを使えば,低電圧,大電流にも変換できるので,用途が拡がります. ステッピング・モータは駆動トルクが大きいため,風車の羽根の直径を大きくしなければなりませ ん(写真 9-1).風車の機構部はフランジを含め,全部自作できるように配慮しました. 9−1 低速回転でも発電できるステッピング・モータのしくみ ● なぜステッピング・モータを使うのか…効率が 5 倍に UP! 前章で製作した 3 連風車では,ダイナモを利用しました.図 9-1 は,その内部構造です.左側が固定 ステッピング・モータ 尾翼 写真 9-1 ステッピング・モータを使った風力発電に挑戦 前章で製作したダイナモを使った 3 連風車の出力は約 0.2W(風速 3m)だった.今回製作するステッピング・モータを使った風車の出 力は約 1W(風速 3m) 回路収納BOX 9-1 t =1.0mmの ユニクロ鉄板 b a ボビン径13mm φ0.32を213回 低速回転でも発電できるステッピング・モータのしくみ 113 φ=28mm,t =18mmのフェライト・マグネット N a 回転軸 S b N a b a 固定子 図 9-1 b S N 回転子 前章で発電機として利用したダイナモの内部構造 子(ステータ),右側が回転子(ロータ)です. 発電の原理は,「コイルを貫通する磁束の時間的変化が誘導起電力になる」という,電磁誘導の法則 そのものです. 固定子は a と b の短冊形の鉄板でできており,a と b は嵌め合いで接合されています.回転子は,N 極 と S 極を対として数える 4 極の磁極をもっており,回転すると,a と b の対には N または S が相対するこ とになります.したがって,磁路は a → b と b → a が繰り返され,これによってコイルを貫通するため 起電力が得られるのです.さて,この場合の起電力VE[V]は, VE =KΦf sin2 πf t ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9−1) 周波数 f[Hz]は, f =pN /2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9−2) 電流 I[A]は, I =VE /RC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9−3) ただし,Φ:コイルを通る磁束[Wb],p :極数,N :回転数[rps],RC :巻き線抵抗[Ω],K : 比例定数 となります.したがってダイナモから大きな電圧を取り出すなら, ① 磁石を強くする ② 回転数を速くする,または極数を多くする ことが考えられます.また,大きな電流を取り出すなら, ③ コイルの巻き線の線径を太くして RC を小さくする ことが考えられます.以上が,大きな電力を取り出すためのポイントとなります. 整流回路の平均出力電圧は,周波数が低いと低下します.自転車のダイナモでは 20Hz 程度と低く, 効率が良くありませんでした.少なくとも商用交流の 60Hz 程度は欲しいところです.そこで,周波数 を高くしようとすれば, ④ 回転数を速くする ⑤ 極数を多くする ことが考えられます.ステッピング・モータは磁束密度が高く,極数が多いので,上記の①,②,⑤ に合致します. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 114 第9章 LED 看板 写真 9-2 今度は市販のステッピ ング・モータを発電機として使う (TS3103N124,多摩川精機) 固定子 磁極 各50歯 ベアリング シャフト 巻き線8か所 1 COM 2 赤 白 鉄芯 歯と一体 緑 ベアリング 図 9-2 磁極 青 3 回転子 今回発電機として利用した HB 型ステッピング・モータの内部構造 黄 4 図 9-3 ステッピング・モー タの内部結線図 ● 使用したステッピング・モータの仕様 ステッピング・モータは,入手性とコストの点で,多摩川精機の TS3103N124 を使いました(写真 92).図 9-2 は内部構造です.回転子に溝があり,この 1 本 1 本が永久磁石になっていて,全部で 100 極 あります. 定格は 12V,140mA で,コイルの抵抗は 1 相当たり 86 Ωです.発電機として使う場合,コイルの抵 抗が小さいことが望ましいのですが,86 Ωは小さいとはいえず,応用回路側で工夫が必要です. 軸を指で回してみると,かなり力がいります.これを駆動トルクが大きいといいます. モータからは 5 本の線が出ています.図 9-3 にモータの内部結線を示します.図 9-3 を見ると,中点 のあるコイルが 2 組あります.これを 2 相駆動といいますが,発電機としても 2 相の出力が得られます. 写真 9-3 の上の波形(1−COM 間)に対して,下の波形(3−COM 間)は 90 °位相が遅れています. 図 9-3 の 1 相に着目し,発電機として使ったときの回転数と出力電圧を測定したものが,図 9-4 です. 1rps が 50Hz となります.風速 3m/s で,0.6rps 程度です.無負荷では回転数とともに電圧が比例的に増 加しますが,100 Ω負荷では,3 〜 4rps 以上では出力電圧が飽和傾向にあります. ● 実際にはどんなステッピング・モータが良いのか 一般的には,どんなステッピング・モータが発電機に向くかというと,式(9−1),式(9−2),式(9−3) から, 9-2 90° 1−COM間 1W 風車の製作 115 第 1 部 35 出力電圧[VRMS] 30 3−COM間 3−COM COM間 間 25 20 無負荷 第 2 部 100Ω負荷 第 3 部 15 10 5 0 写真 9-3 2 相駆動のステッピング・モータを発電機として 使ったときの出力波形(20V/div,5ms/div) 0 0 50 1 100 2 150 3 200 周波数[Hz] 4 回転数[rps] 図 9-4 ステッピング・モータを発電機として使ったとき の回転数と出力電圧 第 4 部 第 5 部 ¡コイル抵抗が小さい ¡磁束が大きい(トルクで判断できる) ¡極数が多い の 3 点が重要であることがわかります.また,形式としては,今回使用したハイブリッド(HB)型より は,PM 型のほうが適しています.VR 型は使えません. ● モータの交流出力を直流に変換する方法 巻き線から直流を得る方法としては,中点タップがあることを利用して,図 9-5 のように各相につい て両波整流すると,全電力を利用できます. このステッピング・モータは出力電圧が高いので,特に倍電圧整流回路にする必要はありません. あえて倍電圧を得たい場合は,図 9-3 において中点タップが内部で接続されていないタイプ,またはユ ニポーラ型でなく,中点のないバイポーラ型を選ぶと,各相の電圧の加算が容易です. 3 連風車にして,複数のステッピング・モータの出力を足し合わせる場合は,前章で説明したように, 各モータの出力を図 9-5 のように整流した後で直列にすれば,3 倍の電圧が取り出せます.並列にして 3 倍の電流を取り出すことは,各モータの出力電圧が等しいとき以外は,全電力を利用できないのでお 勧めできません. 9− 2 1W 風車の製作 ● 発電機に羽根を取り付けるためのフランジを作る ステッピング・モータの軸にはねじ切りが施されていないので,前章のように板金でフランジを作 るのは困難です.写真 9-4(a)のように,アルミのむく棒から切り出して作ります.旋盤があれば最も 良く,せめてボール盤は欲しいのですが,ぜいたくはいえません.電気ドリルと金ノコで作ってみま す.図 9-6 の寸法を参考にして円柱ブロックを切り出しますが,この際,軸に垂直に切ることが大切で す.写真 9-4(b)はできあがったフランジの外観です. 116 第9章 LED 看板 赤 +V 白 GND 青 緑 (a)フランジの母体を素材から切り出す 図 9-5 ステッピング・モータの出力 を整流する方法 (b)図 9-6 を参考に作ったフランジ 写真 9-4 φ6 45° 図 9-6 を参考にフランジを作る φ6 2-M3P0.5 86 45 30 20 φ9.5 加工寸法は 図9−6を参照 図9−6を参照 100 黄 4-M4P0.7 3 単位[mm] 図 9-6 10 5 30 フランジと円板の寸法 写真 9-5 アルミ板から切り出した羽根取 り付け用の円板 中央の軸穴が円柱の中心軸からずれると,羽根がぶれを起こします.ボール盤がない場合は,φ 3mm の穴を両側から中心に合わせてトンネルを掘るように開けます.後は 4mm,5mm …と,穴を大 きくしていき,最後に 9.5mm のドリルで貫通させます.周囲 4 か所とサイド 2 か所の穴は,タップでね じを切ります.穴径は,タップの説明書にしたがってください. ● フランジに取り付ける円板を作る 厚さ 3mm のアルミ板から,図 9-6 の寸法で,羽根取り付け用の円板を作ります(写真 9-5).図 9-6 に おいて,4−M4P0.7 とあるのは,「周囲 4 か所,メートルねじ,4mm 径,ピッチ 0.7mm」の意味で,これ が使うタップのサイズとなります. ● ベニヤ板で風車の羽根を作る 羽根は厚さ 3mm のベニヤ板から,幅 10cm,長さ 60cm のものを 4 枚切り出します(写真 9-6).防水 のため,ラッカで塗装します. 9-2 117 1W 風車の製作 ベニヤ板で作った羽根 ベニヤ板 フランジ 円板 写真 9-6 ベニヤ板で風車の羽根を作る 写真 9-7 フランジに羽根を固定する t =2 mm (a)組み立て前 写真 9-8 (b)組み立て後 ステッピング・モータとパイプの連結ユニット ● ひねり金具の製作と羽根の取り付け 今回は羽根が長いので,ひねり金具も大き目の幅 20mm,長さ 120mm の一文字金具を使います.前 章の 3 連風車の記事を参考にして,ピッチ角 25 °を目安に,ペンチとバイスでひねってください.この ひねり金具を使って,写真 9-7 のように羽根をフランジ金具に固定します. ● ステッピング・モータとパイプの連結ユニットを作る ハンガ用のパイプ(φ 25mm)に,ステッピング・モータを取り付けるための取り付けユニットを, 写真 9-8 を参考に製作してください.寸法は適当でかまいません. ● 尾翼を作る 尾翼は厚さ 3mm のベニヤ板から,30 × 40cm 程度の外寸で,図 9-7 のような形状に仕上げます.写真 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 118 第9章 LED 看板 テール ステッピング・ モータ ステッピング・ モータ支持具 回路収納BOX テール支持金具 止め具 (ツマミ) LEDボード(次回製作予定) ポール先端φ6mm 羽根取り付け用 円板 羽根 ひねり金具 ポール 図 9-7 ステッピング・モータを使った風車の構成 くぎ穴付きプレート P Pコーン コーン 写真 9-9 材料 尾翼取り付け用の 3/8六角ボルト 3/8 六角ボルト 9-3 表 9-1 LED 電飾看板の製作 119 製作した風車の部品表 品名 仕様 個数 ステッピング・モータ 2 相ユニポーラ,TS3103N124 入手先 メーカ名,発売元,その他 1 ㈱秋月電子通商 多摩川精機㈱ アルミ丸棒 φ 30 × 300 mm 1 DIY ショップ,ネット http://www.rakuten.co.jp/noise/ ステン巻きパイプ φ 25 mm,60 cm 1 DIY ショップ,金物店 モリ工業㈱,ハンガ用パイプ NK ソケット φ 25 mm 1 DIY ショップ,金物店 ハンガ用パイプ壁側固定用 厚さ 2 mm,100 × 300 mm 1 DIY ショップ,金物店 ㈱光,モータ支持金具用 厚さ 3 mm,100 × 300 mm 1 DIY ショップ,金物店 同上,フランジ円板用 厚さ 1 mm,100 × 300 mm 1 DIY ショップ,金物店 LED ボード,回路 BOX 固定用 アルミ板 ベニヤ板 厚さ 3 mm,90 cm × 40 cm 1 DIY ショップ,材木店 防水のためラッカーで塗装する アクリル板 つや消しマット黒,300 × 450 × 1 mm 1 DIY ショップ,模型店 アクリサンデー㈱ 六角ボルト・ナット 5 × 50 mm ナットは 3 × 4 = 12 個必要 4 DIY ショップ,金物店 1 DIY ショップ,パーツ店 VHS− C カセット・ケースでも可 4 × 10 mm 10 DIY ショップ,金物店 ソケット,回路 BOX 固定用 4 × 15 mm 8 DIY ショップ,金物店 モータ固定,フランジ固定用 プラスチック・ケース 10 × 6 × 3 cm くらい 鍋小ねじ,ナット 3 × 10 mm 15 DIY ショップ,金物店 LED ボード固定用 6 × 15 mm 16 DIY ショップ,金物店 羽根固定用 3 × 15 mm 2 DIY ショップ,金物店 フランジ・モータ軸固定用 4 × 30 mm 1 DIY ショップ,金物店 尾翼部−P コーン・パイプ間固定用 注 s アルミ・スクリュー・ポール,三脚スタンド(ペグ付き),尾翼取り付け金具(一文字金具)は第 8 章の部品表を参照のこと 9-9 は尾翼取り付け用の材料で,上から,くぎ穴付きプレート(一文字金具でも良い),P コーン,3/8 六角ボルトです. P コーンはパイプに打ち込んだ後,φ 4 × 30mm のねじでパイプに固定します. ● 各パーツを組み合わせて風車を仕上げる 図 9-7,表 9-1 を参考に,今までに作った各パーツを組み合わせてください.ポールの先端は,軸径 6mm の電子機器のつまみなどを使って外れを防止します. 次に,この風車に多数の LED を使った電飾看板を取り付けます.LED は間欠駆動として,電力が少 なくても明るく見えるよう工夫します. 9− 3 LED 電飾看板の製作 ● 74 本の LED で電飾看板を作る ここでは写真 9-10 に示す LED 電飾看板を製作します.LED を使った看板は,今ではどこでも見かけ ます.どこでも見かけるから簡単だと思いがちですが,いざ自分で作るとなると,結構やっかいなもの です.今回は作りやすさに重点を置いて製作します. 電飾看板の表面に文字以外のもの,例えばビスやボルトがあると,見栄えが悪くなります.また, LED の周囲は,反光沢面にして,反射のないようにします.そこで素材はアクリルのつや消しマット 板を使います.LED の取り付け方法と,電飾看板のパイプへの取り付け方法を図 9-8 に示します. LED74 本は全部並列に接続します. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 120 第9章 LED 看板 ステッピ ステッ ピング ング・モータ モータ 製作する電飾看板, 裏にはLED 裏には 裏にはLED点滅回路 LED点滅回路 点滅回路 (a)電飾看板を取り付けたようす (b) (a)の電飾看板を拡大 写真 9-10 ステッピング・モータを使った発電機に取り付けた電飾看板 ステンレス・パイプ φ25mm 裏ぶた,アクリル板, 厚さ2mm アクリル用接着剤 で接着する 厚さ0.8mm 幅20mmの鉄板を加工 回路ボードへ LEDはすべて並列にする. ニッケルめっき線で配線する スペーサ,幅10mm, 厚さ2mmのアクリル 板を2層に重ねる 図 9-8 電飾看板の構造と風車への取り付け方法 厚さ2mmの アクリル板 LEDは,瞬間接着剤 で固定する LEDの直径と同じ寸法の穴をあける.電気ドリル では速すぎて割れるのでハンド・ドリルを使う 9-3 コンデンサの電圧 ステッピング・モー タの各相について 両波整流する M2 D2 1N5818 W Y R ポジスタ: 200mAで遮断する 図 9-10 R1 0Ω M4 D4 1N5818 C 1 10000μ 1 RXE010 6.3V (タイコ エレクトロニクス レイケム) PSW1 COM 第 2 部 時間 充電期間 放電期間 第 3 部 時間 M3 D3 1N5818 B W コンデンサ からLEDに 一気に電流 が流れる 1N5818 オン・セミ コンダクター M1 D1 1N5818 G 121 第 1 部 充放電電流 図 9-9 コンデンサを長時間充 電し,短時間で放電することで ある程度大きな電流を流す LED 電飾看板の製作 第 4 部 ダイナモの電流容量が大きい場合はこの抵抗値を大きくする Tr1 A D5 1N5340B オン・セ ミコンダ クター 3 R2 B 390k 4 Tr2 VR 1 100k R7 2 2 Vin D79 LED 74個のLEDを並列に接続する.輝度 のばらつきが発生するが,あらかじ め同一輝度のものを選別して使用する TC54VN2702EZB I C1 (TelCom Semiconductor) 2SC 1815 1 Vout GND 3 Tr3 2SC1815(東芝) Tr4 2SC1815 D6 LED … R 3 100k R4 100k LED点滅 周期を調 整する 強風時に電圧が異 常上昇するのを防 止するための,6V, 5Wツェナー・ダ イオード 3.9k R6 1M C OUT 2SA950 (東芝) R 8 1M 電圧検出器. Vin が2.7Vより大きければ Vout をオー プンにする. Vin が2.7Vより小さければ Vout をグラ ウンド・レベルにプルダウンする LED 点滅回路 ● 少ない発電パワーでいかに明るく点灯させるか ステッピング・モータを使っても,風速 3m/s 程度のそよ風では,そんなに大きなパワーは期待でき ません.特に LED の数が多いときは,全体に暗くなってしまいます.そこで,いったんコンデンサに チャージして,これを放電させることで大きな電流を間欠的に取り出すようにします.眼の残像効果の 助けを借りて,同じパワーでも明るく見せることができます. 図 9-9 のように,コンデンサを小さな電流で比較的長い時間充電し,充電電圧が飽和したとき,つま り,ダイナモの起電力(約 5V に設定)に等しくなったときに LED に接続します.すると,図 9-9 の下側 の波形のように,コンデンサに蓄えられたエネルギーによって,一瞬,LED に大きな電流が流れます. つまり,高輝度で発光します.電流が大きいので,コンデンサの電圧は一挙に下がり,LED は消灯し ます.しかし,人間の眼の残像時間は長い(数十 ms)ので,実際の発光時間以上に眼に留まり,明るく 見えます. ● LED 点滅の動作 図 9-10 は,この原理を具体化したものです.図中の番号に沿って動作を説明します. 第 5 部 122 第9章 LED 看板 モータから 整流用ダイオード 74本のLEDへ 10000μF の電解コンデンサ 写真 9-11 図 9-10 の回路を実装した基板の外観 M1 M2 M3 M4 COM Tr1 D1 D2 E C B R (0Ω) 1 D3 D5 R4 D4 PSW1 R 2R R6 C1 Tr2 VR 1 3 I C1 G Vout R 7 Vin Tr3 OUT C E B CB E R8 GND C B Tr4 E 図 9-11 図 9-10 のパターン図(部品面視) 1 コンデンサ C 1 の充電が始まります.最初はもちろん 0V です. コンデンサの電圧が約 5V になると,電圧検出器 IC 1 の入力 B 点の電圧が R 4 + VR 1 と R 7 で分割され, 2.7V になります.すると IC 1 の出力ピン(1 ピン,オープン・ドレイン)がオープンになり,R 3 から Tr 2 へ電流が流れ,Tr 2 が ON します. Tr 2 が ON することで Tr 1 が ON し,LED が点灯します.さて,次がポイントです.LED は C 1 に蓄え られた電荷で点灯するので,瞬時に大きな電流が LED に流れ,十分な輝度になります.普通ならこ れで何も起こりませんが,前述したように,ダイナモの内部インピーダンスが大きいため,A 点の電 圧は次第に低下していきます. Tr 4 は最初は OFF ですが,C 点に電圧が出ると ON し,ついで Tr 3 が OFF します.これによって, B 点は A 点と同電位になります(IC 1 の入力電流が無視できるため) .やがて A 点( B点)の電位が 2.7V まで低下した時点で,IC 1 の出力ピン 1 は,グラウンド・レベルにプルダウンされます.これに より,Tr 2 が OFF,Tr 1 も OFF になり,C 点は 0V となります.Tr 4 は OFF し,Tr 3 が ON するため, IC 1 の検出レベルは元の約 5V に戻ります.C 1 の充電が再び始まり,以後,1 〜 の動作を繰り返し ます. ● LED 点滅回路を作る 写真 9-11 ができあがった LED 点滅回路の基板です.図 9-11 にパターン図(部品面視)を示します. 9-3 LED 電飾看板の製作 123 第 1 部 第 2 部 LED点滅回 LED 点滅回 路 を 収 納し 路を収 納し たS-VHS たS-VHSの S-VHSの の カセット・ケ カセッ ・ケ ース ース 電飾看板の 電飾看板の 裏側 第 3 部 写真 9-12 製作した LED 点滅回路と電飾看板を風車に取 り付けたようす 表 9-2 第 4 部 LED 点滅回路の部品表 部品番号 IC1 Tr1 Tr2,Tr3,Tr4 品 名 電圧検出器 IC トランジスタ 型名・仕様 TC54VN2702EZB, Vth=2.7 V 数量 1 メーカ名 マイクロチップ・テクノロジー 2SA950, 30 V,0.8 A 1 東芝 2SC1815GR 3 東芝 D1,D2,D3,D4 ショットキー・バリア・ダイオード 1N5818,30 V,1 A 4 オン・セミコンダクター D5 ツェナー・ダイオード 1N5340B,6.0 V,5 W 1 オン・セミコンダクター D6 〜 D79 発光ダイオード 赤, φ 3 mm 74 C1 電解コンデンサ 10000 μF,6.3 V 1 VR1 半固定抵抗 100 kΩ 1 R2 3.9 kΩ,1/6 W 1 R3,R4 100 kΩ,1/6 W 2 1 M Ω,1/6 W 2 390 kΩ 1 RXE010 1 R6,R8 カーボン被膜抵抗 R7 PSW1 ポジスタ (ポリスイッチ) ニチコン タイコ エレクロトニクス レイケム㈱ 回路収納 BOX は,適当な大きさのプラスチック・ケースを選び,収納後,防水処理を施します.ワイ ヤの貫通穴は,ケース底面側に設けると,ワイヤを伝ってくる雨水の浸入を防げます. 風車のパイプには,写真 9-12 のように取り付けます.ケースは S−VHS のカセット・ケースです.エ アコン工事用のパテをケースのすきまに充填して防水しています. 表 9-2 は電子部品の一覧です.電圧検出器は,検出電圧が 2.4 〜 2.7V のタイプを使います.当初はト レックス・セミコンダクターの XC61AN2401 を使っていましたが,入手性を考慮して表 9-2 のものに 変更しました.マイコンのリセット用の IC も使えます. * 大きな羽根をもつ風車は,堅牢なマストやタワーの建設が必要ですし,強風時の管理が大変です.今 回の風車は,私たちアマチュアが気軽に扱える限界の大きさだと思います. 羽根がやや大きいので乱流が発生し,尾翼がゆすられることがあります.この問題は尾翼までの距離 を長くすることで対処しました.この安定性の点では,前章で紹介した 3 連風車のほうが予想外に良い のです.したがって,小さな羽根の風車を多数設置するほうが,強風にも,微風にも対応でき,コスト 第 5 部 124 第9章 LED 看板 ◆ 電圧検出器の動作 電圧検出器(IC 1 )の内部は,図 9-A のようになっ て います.コンパレ ー タ の プ ラ ス 入 力 に , ツ ェ ナー・ダイオードで構成された定電圧源が接続され ています.マイナス入力には, V in が抵抗分割に よって接続されています.したがって,検出電圧は, Vdet =(1 + R 1/R 2)Vref となります. コンパレータは,動作を安定させるため,Vdet に 対し 5 %程度のヒステリシスをもたせてあります. 図 9-A から,Vin > Vdet のとき,コンパレータの出 力は L となり,出力 FET が OFF となるので, Vout 端子(ピン 1)は,オープンとなることがわかり ます. CMOS 出力タイプの IC では,図 9-A の破線の回 路により,出力は H(Vin と同レベル)となります. また,Vin < Vdet のときには,コンパレータの出力 が H となって,出力 FET が ON し, V out 端子が L (VSS レベル)となります. 電圧検出器の電源端子は,入力端子(ピン 2)と共 用ですので,低い入力電圧でも出力レベルが保証さ れていることが大切です. CMOS出力タイプの場合 2 Vin R1 コンパレータ Vout Vref を作るため 1 の定電流源 定電圧源 Vref オープン・ ドレイン 出力 R2 VSS 3 図 9−A 電圧検出器の内部ブロック図 もかからず良いシステムになると感じました. 風の状態(風況)の良いところを探す必要もありました.住宅地は一般に風が不安定ですが,高台の 公園などでは信じられないくらい強く安定した風が吹いています.このシリーズでは,伸縮式のマスト と,ペグ固定式の架台を使っていますから,アウトドアで運用ができます.私も近くの池のある自然公 園で,散歩がてら実験をしています.これを機会に風に親しんでいただければと思います. B 参考文献 B (1)TC54 シリーズ VOLTAGE DETECTOR 仕様書,TC520-10,TelCom Semiconductor,Inc. 第3部 125 水力を活用編 第10 章 数百 mW 水車,DC モータ,高輝度 LED で作る 水道手元ライト 水と言えば,家庭では水道がまず頭に浮かびます.水道水には圧力がかかっているので,エネルギー を取り出せる可能性はあります.しかし,水量が少ないので,そのまま水車の羽根に当てても高い回転 数は得られません. 庭で水撒きをするとき,ホースの先をしぼませると,水が遠くに飛んでいきますが,今回はこの方法 を利用します.つまり,水圧を速度のエネルギーに変換して,水車を高速に回す方法を試みます. 得られた電気は,高輝度 LED で洗面の手元を照らしたり,プールや庭園の撒水イルミネーション, 風呂の水位警報など,水回りの用途に使うと良い組み合わせとなります(写真 10-1). 10−1 水道水からエネルギーを取り出し LED を点灯したい ● 上下水道のもつエネルギーはもっと有効に使える 水道の水圧は,ポンプで加圧されたものですが,これはビルや丘陵地などの高所に水を持ち上げるた めのもので,本来,高低差があれば,加圧しなくても水圧は得られます.事実,貯水池は山の上にあり ます. また,都市部であっても,高台から低地への上下水道の流れも当然あり,これを発電に利用しようと いう計画があります(東京都).このように,水道の水圧は,低所では捨てられているエネルギーだと も言えます.私たちも,このエネルギーの有効利用を考えてみようではありませんか. ● 水車の羽根に向けてジェット水流を吹き付けるペルトン水車 水力発電に使われる水車にはいくつかの種類があります.図 10-1 は,ペルトン(Pelton)水車と呼ば れるもので,四隅に見えるのは水圧管の先に取り付けられたノズルです. 流水の圧力はノズルによってジェット噴流となり,水車の羽根(バケット)に衝突します.位置のエ ネルギー→水の圧力→運動エネルギーとエネルギーが形を変えています.ノズルの先には針弁があり, 出口の断面積を変えることにより,水車の出力を加減しています. 実はペルトン水車は,回転速度(特有速度)が遅いため,有効落差が 100m 以上ないと実用にならない のですが,水車の直径を 10cm くらいに小さくすれば,水道の水圧は十分な落差に相当するようになり ます. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 126 第 10 章 水道手元ライト ノズル 水車の羽根 図 10-1 ノズルからのジェット水流を利用するペルトン水車 水勢(上方飛距離)[m] 5 4 3 2 1 0 写真 10-1 水道水の圧力で高輝度 LED を点灯する 2 図 10-2 5 10 ノズル径[mm] 15 ノズルの内径と水の飛距離との関係 ● 高速な水流を作るノズルの穴径は実験で決める ホースの先を細くしていくと,水の飛距離はどんどん伸びていきますが,あまり細くすると逆に飛 ばなくなります.つまり,ノズルの内径には最適値があることになります. 図 10-2 は,これを実測したものです.水流は,ほぼ垂直方向に飛ばして,その高さを測りました. 図から,ノズル径はφ 3.5mm に選びます. ● アルミ板で水車の羽根を作る この工作で一番面倒なのは水車の羽根の製作で,一番難しいのはモータと羽根を連結するジョイン トの製作です. 水車の羽根は,図 10-1 のペルトン水車の実物を参考にします.写真 10-2 に羽根の 1 枚を,図 10-3 に 展開図を示します.羽根の数は全部で 12 枚,開き角は 30 °です. 材料は 0.5 〜 0.8mm 厚のアルミ板を使います.切断は大きめの NT カッタで 3 〜 4 回切れ目を入れ,バ イスで挟んで 2 〜 3 回折り曲げると切れます.金切ばさみでもかまいませんが,少々曲がりますので, かなとこ 鉄床の上に置き,木槌でたたいて平面に戻します. 直角曲げ加工はバイスで短い辺をつかんで曲げます.a 部分は,いったん 0 °まで畳みます.このとき, a 部分に隙間がないようにバイスで締めます.畳んだままで,中央の丸穴を空け,マイナス・ドライバ の先で 30 °まで開きます.3mm のビス・ナットで,写真 10-3 のように組み立てます.間にドライバは 入らないので,ラジオ・ペンチでボルトを締めます. 図 10-4 に組み立て寸法を示します.羽根の中央にφ 4 〜 6mm のシャフトが通るように組みます.水 10-1 127 水道水からエネルギーを取り出し LED を点灯したい 35 30° 第 1 部 5 35 φ3.5 35 25 a 第 3 部 5 30° 75 t =0.8 [材質:アルミ,単位:mm] 図 10-3 写真 10-2 羽根(1 枚)の展開図 水流 30° 15 88 98 φ6 水流 80 写真 10-3 12 枚の羽根を組み立てる 図 10-4 [単位:mm] 水車の羽根の組み立て寸法 流の経路は,図 10-4 の矢印の方向に 2 か所設けます.後述の DV 異形ソケットの内周から,5mm 以上 離れていることを確認します. ● アルミ・パイプや丸棒を使ってノズルを作る ホースの先を細くすると水が遠くへ飛んでいくので,初めから細いホースを使えば良いように思え ますが,細いホースは水流に対して抵抗となり,水圧が落ちてしまいます.これは,電気における, 電圧,電流,抵抗の関係と同じです. 図 10-5 はノズルの寸法です.これはアルミ丸棒から切り出す場合ですが,径の異なるパイプを重ね ても作れます. ノズル断面はテーパ(円錐状)にするのがベストですが,作りやすくするためにφ 6/φ 3.5 の 2 段にし ました. 第 4 部 第 5 部 製作するペルトン水車の羽根の 1 枚 75×50 異形ソケット 第 2 部 128 水道手元ライト 3.5 6 15 第 10 章 異形ソケット [材質:アルミ,単位:mm] 15 水道用の パイプを 継手でつ ないだ 25 羽根に当たる部分を削る 図 10-5 ノズルはアルミ丸棒から作る モータ・シャフト径+0.2 15 6 2.2 2-M3P0.5 モータ 支持板 遮水板 5 5 10 図 10-6 20 3-M3P0.5 [材質:アルミ,単位:mm] 写真 10-4 水車 小型ペルトン水車の構成部品 モータと水車をつなぐジョイントの寸法 ● モータと水車の羽根を連結するジョイントの製作 上述のノズルは,電動ドリルでも何とか作れます.しかし,高速で回転する羽根をモータの軸に固 定するジョイントは,ボール盤(電気ドリルを垂直に固定したもの)でないと精度が出ません.ボール 盤がない場合は,手持ちのモータ軸の寸法に合わせて,図 10-6 のような図面を作り,近くの鉄工所に 作ってもらうと良いでしょう(この場合の材質は真鍮にする). ジョイントの精度が悪いと芯ぶれを起こし,ケース全体が振動します.モータ軸に固定するビスは, 直角に 2 か所以上必要です.羽根についても,ぶれを起こさないよう何回も手で回してみて形状の調整 が必要です. ● 水道や雨樋の配管材料を使う 水回りの工作には,上下水道の配管材料を使うのが,耐水性,安全性,入手性,価格の点で有利な 方法です.写真 10-4 が,今回製作するペルトン水車の構成部品です.左上に見えるのが,雨樋に使う 異形ソケット(DV 継手インクリーザとも言う),右のパイプは水道用の塩化ビニル製パイプを各種継手 でつないだものです. ノズルまでの配管はできるだけ太くするように配慮しています.水道水の圧力に耐えるよう,パイ プは塩ビ用接着剤で固定します.左中央はモータ支持板,左下はモータに水がかからないようにする 遮水板です.右下はモータに取り付けた羽根です. 全体の組み立て図を図 10-7 に示します. 10-1 水道水からエネルギーを取り出し LED を点灯したい ホースなど接続部 塩ビ・パイプφ13mm 塩ビTS継手 エルボ13mm 塩ビ・パイプφ13mm 長さ40mm 塩ビTS継手 チーズ13mm 20mm 20mm 塩ビTS継手 エルボ13mm 切断 食品用プラケース を切って使う (半透明) 防水パテ,ホット スティックで接着 スペーサ 4個 回路基板 塩ビ・パイプφ13mm 長さ80mm DC モータ 塩ビ・パイプ φ13mm 長さ80mm 2mmタップねじ 塩ビ・ケースに 固定する モータ支持板 φ60mm モータを 固定する 塩ビ・パイプの切断は パイプカッタを使う 塩ビ・パイプ φ13mm 長さ10mm 10mm 注水口2か所φ15mm 塩ビTS継手 エルボ13mm 塩ビDV 異形ソケット 隙間があるときは, 水道用パイプ・シ ールを巻き,打ち 込む ノズル φ13mm ジョイント バケット(羽根) φ6mmの長ねじ. 長さ50mmを中央 に通し,ボルトで 固定する 遮水板,モータに水が かかる場合に追加する 羽根の落下防止金具. 必要ならば追加する 図 10-7 小型ペルトン水車を使った ライトの組み立て方法 第 1 部 第 2 部 切断 塩ビ・パイプ用 接着剤を使う 129 第 3 部 第 4 部 第 5 部 130 第 10 章 水道手元ライト 14 出力電圧[V] 12 10 無負荷 8 動作点 6 40Ω負荷 4 2 0 図 10-8 表 10-1 20 0 40 60 回転数[rps] 80 100 DC モータの回転数と発電出力電圧 小型ペルトン水車の発電機に使える DC モータの例 メーカ 電圧範囲 定格電圧 無負荷回転数 定格回転数 電流 出力 FK − 130SH − 09450 型 名 マブチモーター 6 〜 24 V 12 V 7200 rpm 5680 rpm 0.11 A 0.66 W FF − 260PA − 07890 マブチモーター 13 〜 36 V 30 V 6200 rpm 5260 rpm 0.056 A 1.02 W 10−2 使用するモータと LED 点灯回路 ● モータは入力電圧が高く,回転数が遅いものを選ぶ 発電機に使うモータは,DC モータでブラシ式のものを使います.定格電圧が 12V 以上,定格回転数 (効率が最大となる回転数)が 6000rpm 以下のもので,出力 1W 程度のものを選びます.太陽電池用の モータや模型用の低トルク/低電圧のものは適しません.今回使用したモータの回転数と出力電圧の関 係を図 10-8 に示します. 使用したモータはカセット・デッキ用の 15V のものですが,市販品では表 10-1 のような仕様のモー タが相当します. ● 水車と組み合わせる高輝度 LED 駆動回路を作る 図 10-8 において,水車の回転数は 40rps 程度ですので,複数の高輝度 LED を駆動するには昇圧およ び定電流回路が必要です. 図 10-9 は,リニアテクノロジー社の LT1932 を使った LED 駆動回路です.LED は 3 個使います. LT1932 は,表面実装用のパッケージしかないので,写真 10-5 のように,エッチング用の銅張基板に 三角刃の彫刻刀で切れ目を入れます. 寸法は,参考文献(2)のパッケージ寸法図を参考にしてください.写真 10-6 は,実装後の基板です. 簡単なパターンですから,写真 10-5,写真 10-6 を見て作れると思います.表 10-2 に使用部品の一覧を 示します. 10-2 入力電圧 1〜10V D1 L 1 4.7μH MOTOR− C1 10μ 図 10-9 131 6000mcd 白色高輝度LED スイッチング周波数が1.2MHzと 高いので,小型のコイルでよい MOTOR+ ペルトン水車 の発電機より 使用するモータと LED 点灯回路 6 1 Vin SW 5 2 SHDN GND 4 3 RSET LED HRW0503A (ルネサス テクノロジ) D2 OSWT5161A C2 1.5μ R1 I C1 1.5k LT1932 (リニア テクノロジー) この抵抗でLED電流を設定する D3 OSWT5161A D4 OSWT5161A 18mA 小型ペルトン水車と組み合わせる高輝度 LED 駆動回路 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 写真 10-5 LT1932 を実装する方法 写真 10-6 部品実装後の高輝度 LED 駆動回路基板 * この小型ペルトン水車は,ジョイントの寸法精度と,羽根の組み立て精度が良ければ,水道の蛇口 をいっぱいに開けても極めてスムーズに回り,高輝度 LED が明るく輝きます. 水車の羽根は小さいほど回転数が上がります.表 10-1 のモータなら,もっと羽根を小さくしたほう が良いです.したがって水道の蛇口に取り付ける「小さな光る蛇口」を作ることも可能だと思います. B 参考文献 B (1)福田 節雄;発電工学(上) ,標準電気講座,電気書院,1966 年 7 月. (2)LT1932 仕様書,定電流 DC/DC LED ドライバ,ThinSOT,リニアテクノロジー,2001 年 7 月. 132 第 10 章 表 10-2 水道手元ライト 使用部品の一覧 品 名 仕 様 DC モータ FF-260PA-07890 DV 異形ソケット 塩ビ TS 継手 塩ビ・パイプ アルミ・パイプ アルミ板 鍋小ねじとナット 個数,長さ 入手先など 1 マブチモーター 75mm × 50mm 1 DIY ショップ エルボ 4 DIY ショップ チーズ 1 DIY ショップ 内経 13mm 50cm DIY ショップ 直径 13mm 10cm DIY ショップ 直径 15mm 10cm DIY ショップ 30cm × 30cm,t = 0.8mm 1 DIY ショップ M4 × 10mm 8 DIY ショップ M3 × 6mm 23 DIY ショップ 長ねじ M6 × 150mm 1 DIY ショップ ナット M6 2 DIY ショップ ビニル・ホース 内径 17mm 銅張基板 紙フェノール片面,t = 1.6mm 1 ユニバーサル基板 46mm × 72mm,t = 1.6mm 1 白色 LED OSWT5161A 3 D2,D3,D4 IC LT1932 1 IC 1,リニアテクノロジー L 1,ミツミ電機 1m DIY ショップ サンハヤト パワー・インダクタ C5-K3L シリーズ,4R7 1 ショットキー・バリア・ダイオード HRW0503A 1 D1,ルネサス エレクトロニクス 10μF/25V 1 C1 1.5μF/25V 1 C2 1/6W,1.5kΩ 1 R1 セラミック・コンデンサ カーボン抵抗 133 第11章 数 W 水車,ハブダイナモ 2 台,DC−DC コンバータ, 市販インバータで作る キャンプ用屋外電源 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 11− 1 河原で小型テレビやラジカセを使いたい 本章では,自転車の前輪の車軸に取り付ける発電機として知られるハブダイナモを使って,数 W 出 力の水力発電機(写真 11-1)を作ります. 後半では,渓流や水路に置くだけで発電できる携帯型の水力発電機を製作し,この発電機の出力で バッテリを充電し,バッテリから一般的によく使われる,直流 3V,6V,9V,12V を取り出せる,アウ トドア向け電源ユニット(写真 11-2)を作ります.さらに市販のインバータを組み合わせて,交流 100V も出力できるようにしました. 写真 11-3 は,渓流の近くにキャンプして,試作した電源を利用しているところです. 液晶テレビ,ノート・パソコン,扇風機,電気蚊取り,充電式シェーバ,蛍光灯スタンドなどを もって渓流を訪ねました.水力発電機からは,30m のコード・リールで引き込んでいます.充電電流は 整流,加算回路入りBOX 整流,加算回路入りBOX ハブダイナモ 2 2個 個 写真 11-1 製作した 水力発電機 第 5 部 134 第 11 章 キャンプ用屋外電源 電圧切り替えスイッチ SW2 メイン・スイッチ SW1 交流出力 写真 11-2 製作した汎用電源装置 ノート・パソコン 液晶テレビ 製作した汎用電源 (a)水力発電した電力をキャンプで使用中 写真 11-3 (b)テントの内部 製作した汎用電源や水力発電機を使い河原でキャンプをしてみた 0.2A 程度でした.合計 100W くらいまでの家電製品を同時に使うこともできました.実際には冒頭で述 べたように充電と放電のバランスを考える必要がありますが,用途次第では十分な実用性があること を実感しました. ● 日本は山国! 水力発電に向いている 日本は国土面積の大半が山間部で,島国であると同時に山国でもあります.したがって山間部に蓄 えられる水量が豊富で,河川は大小合わせて 35,000 もあります.川の水は,太陽エネルギーが位置のエ ネルギー(ポテンシャル)に形を変えたもので,日本は自然エネルギーの宝庫といえます. 水の位置エネルギーを利用する水車は,風車とともに,古くから農耕などの日常生活に利用されて きました.中でも水力発電は地下資源の乏しい日本に適しています.原子力と火力が主流の今でも, 11-1 河原で小型テレビやラジカセを使いたい 135 第 1 部 水の通るパイプ 第 2 部 第 3 部 発電所 (b)栗木野発電所(取水量: 0.750m3/s,電力: 60kW) 第 4 部 第 5 部 (a)橋詰発電所(取水量: 0.420m3/s,電力: 150kW) 写真 11-4 筑後川支流の隈上川沿いにある九州電力の小規 模な水力発電所 写真 11-5 今回使うハブダイナモ HB−NX20QR(シマノ) 地道に働いている水力発電所は少なくありません. ここでは水の位置エネルギーを水車でダイレクトに取り出してみます.まずは渓流や水路に置くだ けで発電できる携帯型の水力発電機を製作しましょう(写真 11-1). ● 水力発電所を見学して刺激を受ける 小さな水力発電所を見学することは,小型水車を自作するうえで刺激になります.ダムとはいえな いような,川の高低差だけを利用した小さな発電所がたくさんある福岡県南部の町を訪ねました.3 連 水車(かんがい用)でおなじみの浮羽郡うきは町です. 写真 11-4(a)は,筑後川支流の隈上川沿いの,九州電力の小規模な水力発電所です.出力は 150kW と小さなものですが,川沿いの集落の一部に建てられ,地域の景色と一体化していることが印象的で した.建物背面のパイプは思ったよりも細く,「水量が少なくても高低差があればエネルギーは得られ るのだなあ…」と,実感しました. 136 第 11 章 キャンプ用屋外電源 接地側端子 N S N S 接地側引き出し線 a b S NS N S N 活性側端子 S N S N S N a b a ハブ体 b S S N N S NS 活性側引き出し線 磁石ケース (回転子) ハブ体と共に回転する 磁石(破線は磁化方向) ハブ軸 固定子 aとbは鉄板,内部に単巻きコイルがある (φ0.6mm-334T) 図 11-1 の構造 ハブ体は 回転する ハブダイナモ 11− 2 ハブダイナモのしくみ ● 構造 ハブダイナモの仕様は,JIS −C −9502 で規定されています.写真 11-5 は今回使うハブダイナモ[㈱シ マノ,HB−NX20QR]です. 内部を図 11-1 に示します.これまでに使った発電機と違って,内部のコイル部分が静止していて, まわりの磁石が回転しています.つまり,ハブ体と磁石の円筒は,ねじ込み式で一体となっており, これが回転します.内部の固定子は,互い違いに噛み合った短冊状鉄板 a,b と,この内側のコイル, 全体を支えるハブ軸から構成されています. 短冊状鉄板 a,b は,コイルの内側の鉄板を重ねたコアに接触しており,これにより a,b 間の磁路が 形成されています.短冊 a,b の総数は 28 で,外周を回る磁石の極数(N と S の総数)も 28 です.つまり 1 回転で 14Hz です.コイル巻き線の片方はハブ軸(ハブ体も同電位)に,もう一方はハブ軸側面の溝を 通って,活性側端子に引き出されています.接地側端子はハブ軸につながっています. 発電の原理はリム・ドライブのダイナモと同じですが,極数が多いのが特徴です.ステッピング・ モータと同じように,回転数が低くても高い出力と高い周波数が得られます.また,自転車用ですか ら防水は完全で,まさに水車にうってつけです. 今回のように,ハブダイナモを対向させて使う場合は,回転方向が互いに逆になります.ところが, HB − NX20 は,回転方向が指示されています.しかし内部構造(図 11-1)には方向性はありませんし, 問題なく使えています.この点がどうしても心配な方には,逆転方向の性能が保証されたグリーンパ 11-3 水車の製作 137 第 1 部 出力電圧[VRMS] 6 無負荷 第 2 部 4 15Ω負荷 2 第 3 部 0 0 図 11-2 0.5 1 回転数[rps] 1.5 ハブダイナモの出力特性 2 写真 11-6 ハブダイナモの無負荷時の出力波形(5V/div, 50ms/div) ワー㈱の GPHUB−05 をお勧めします. ● 出力特性 JIS によれば,定格電圧 6VRMS,定格出力 2.4W が得られるのは,自転車が 15km/h で走行していると きです.ハブダイナモでは,自転車のタイヤの直径(呼び寸法)が 26 インチ(≒ 66cm)の場合となって いるので,これから計算すると,定格回転数は,2rps となります.測定は定格負荷 15 Ωで行うと規定 されており,この条件で回転数 2rps 以下での出力特性を実測したものが図 11-2 です. 流速 1m/s で,回転数は 1rps 程度となるので,実際には図の中央あたりで使うことになります.今回 は,このハブダイナモを 2 個対向させて取り付けます.出力波形は,写真 11-6 のようになります.こ の二つの波形の位相関係は,ダイナモの取り付け角度により変わってきますが,直流に変換して使う ので,気にする必要はありません. 11− 3 水車の製作 ● アルミ板を使って水車の羽根を作る 機構部の部品表を表 11-1 に示します.一辺 30cm,厚さ 2mm のアルミ板(写真 11-7)から,直径 30cm の円板を 2 枚切り出します.ハブダイナモのつばに合わせて中央に直径 71mm の穴を空けます. 次に一辺 12mm,厚さ 1mm のアルミ・アングル(写真 11-8)を,長さ 10cm に切断したものを 16 本作 ります.これは側板に羽根を固定するための支持金具です.写真 11-9 は,このアングルを側板に取り 付けたところです.寸法は図 11-3 を参考にしてください. 厚さ 0.8mm 〜 1mm のアルミ板を 100 × 213mm に切ったものを 8 枚用意します.アルミ・アングルを 通して図 11-3 の要領で側板に取り付けます. ● 2 個のハブダイナモを長ねじで固定する ハブダイナモは,外側のハブ体が回転するので,ハブ体のスポーク穴を使って,2 個のハブダイナモ 第 4 部 第 5 部 138 第 11 章 表 11-1 製作した水力発電機の部品表 キャンプ用屋外電源 品 名 ハブダイナモ 仕 様 個数,長さ 入手先 メーカ名,発売元,その他 HB-NX20QR,36H 2 厚さ 0.8mm,100 × 213mm 厚さ 2mm,300 × 300mm 両面棚受け 100 × 200mm,厚さ 4mm アルミ・アングル 一辺 12mm,厚さ 1mm アングル 鉄,一辺 20mm,厚さ 3mm 3.5m DIY ショップ,金物店 丸パイプ 鉄,Φ 19 30cm DIY ショップ,金物店 ISO,3 × 15mm 98 DIY ショップ,金物店 ナットも同数必要 ISO,5 × 15mm 8 DIY ショップ,金物店 ナットも同数必要 M5 × 40mm 2 DIY ショップ,金物店 アルミ板 なべ小ねじ ボルト・ナット 自転車店,通販 http://www.takizawa-Web.com/ 8 DIY ショップ,金物店 http://www.osaka-hikari.co.jp/ 2 DIY ショップ,金物店 http://www.osaka-hikari.co.jp/ 2 DIY ショップ,金物店 地震対策用の棚固定金具 2m DIY ショップ,金物店 長ねじ M5 × 285mm 4 DIY ショップ,金物店 ナットが計 16 個必要 アジャスタ・ボルト 8 × 50mm 4 DIY ショップ,金物店 ナットが 4 個必要 ワッシャ 外径 22mm,内径 10mm 6 DIY ショップ,金物店 クイック・レリーズ取り付け用 防水コンセント WA3219K,15A,125V 1 DIY ショップ,電気店 松下電工,対応防水プラグ WF7215K 防水ケース 90 × 60 × 25mm 1 100 円ショップ ケーブル VVR2.0-2C,外径 10mm 差し込み型コネクタ 2 本用(QL2) 写真 11-7 30cm DIY ショップ,電気店 防水コンセント接続用 2 DIY ショップ,電気店 ㈱ニチフ,ケーブルと回路の接続用 アルミ板から円板を 2 枚切り出す 写真 11-9 切り出した円板にアルミ・アングルを取り付 け側板にする 写真 11-8 1 辺 12mm,厚さ 1mm のアルミ・アングル を連結すれば,水車の車軸を作れます.長さ 275mm の長ねじ 1 本につき,ボルトを 4 個用意し,写真 11-10 のように連結します.全長は図 11-3 の羽根の寸法に合うように決めます.転がしてみて,ぶれ がないようにボルト位置を調整します. 11-3 アルミ・アングル 12×12,厚さ1 長さ100 水車の製作 139 第 1 部 M3ビス×24個 M3ビス×24個 クイック・ レリーズ・ レバー 50 羽根 8枚 35 200 第 3 部 45° 35 M3ビス×9個 66 φ71 厚さ0.8 φ300 100 側板 第 4 部 213 厚さ2 30 第 5 部 側板 支持金具 100 厚さ4.5 図 11-3 [単位:mm] 水車の各部の寸法と組み立て方法 ● 水車の支持台を作る 水車の回転軸を支持する金具は,写真 11-11 のような,棚を壁に固定する地震対策用の金具が便利で す.一辺 20mm,厚さ 3mm の鉄の黒アングルを図 11-4 の寸法で切断し,5mm のビス・ナットで固定 します.取っ手の部分は,スチールの丸パイプを使います. ● 2 個のダイナモの出力を加算する方法 ハブダイナモの出力端子の片方(接地側)は,シャフト(回転軸)やハブ体に接続されているので,2 個のハブダイナモの接地側は水車の羽根を通じて接続されることになります.ここをむりやり分離, 絶縁すると,水車を触って感電することにもなりかねません.したがって,2 個のハブダイナモの接地 側は接続することを前提とします.すると,図 8-9 のような倍電圧整流回路 (全波倍電圧整流回路) では, 得られた直流電圧を直列接続できません.そこで図 11-5 のように,グラウンド側を共通にできる半波 倍電圧整流回路を,2 組直列に接続することにします. ● 整流,加算回路の製作と取り付け 基板を 30 × 72mm の大きさに切って,図 11-6 のように配線します.次に,写真 11-12 のように防水 ケースの中に組み込みます.線を引き出す箇所は充てん剤を流し込んで防水します.写真 11-1 を参考 にして,図 11-4 の支持枠の側面に固定します.出力の引き出しには,AC100V 用の防水コンセントを 使いました. 第 2 部 140 第 11 章 キャンプ用屋外電源 スチール丸パイプ φ19 280 回転軸 430 写真 11-10 水車の車軸を作るため 2 個のハブダイナモを 長ねじとボルトで連結する 182 m 0m 20 3mm 2 18 264 20 支持金具 mm 400 272 アングル 厚さ3 写真 11-11 [単位:mm] 水車の回転軸を支持する金具 図 11-4 地震対策用の金具を利用した C1 D2 ハブ ダイナモ 1N5818 C2 (STマイクロ 1000μ エレクトロニクス) 25V ハブ ダイナモ V2 D3 1N5818 図 11-5 D4 4700μ 10V 1N5818 I N1 10 C1 5 GND C4 1000μ 25V 2 個のダイナモ出力の整流,加算回路 水車支持枠の寸法 5 +OUT 4700μ 10V D1 V1 1N5818 C3 アジャスタ・ ボルト φ8×50 10 I N2 C3 15 D2 D1 D3 D4 20 25 C2 +OUT C4 −OUT −OUT 図 11-6 整流,加算回路の配線パターン(部品面) ● テスト運転 簡単な回路ですから,間違えることもないと思います.手で回してみて直流 10V 以上の電圧が出れ ば正常に動作していると考えて良いです.きちんと調べたい場合は,写真 11-13 のように,電動ドライ バの軸と,水車の外周をゴムひもで結べば,水車を回転させられます. ● 実地テスト 山間部の渓流は岩が多く,本機のアングル底部が河床にうまくひっかかります.写真 11-1 のような 岩場に対して,写真 11-14 のように少々落差があって,滝のようになっている部分では出力が 2 倍くら い大きく取れます. 11-4 整流・加算回路 汎用電源の組み立てと配線 141 第 1 部 充てん剤 第 2 部 第 3 部 写真 11-12 整流,加算回路を防水ケースの中に組み込む 第 4 部 電動ドライバ 発電機 写真 11-13 テストのため電動ドライバで水車を回した 11− 4 写真 11-14 使用場所を選べば大きな出力が得られる 汎用電源の組み立てと配線 今回製作した汎用電源の回路図を図 11-7 に,部品表を表 11-2 に示します.配線パターンを図 11-8 に 示します.部品実装後は,写真 11-15 の破線内のようになります. 写真 11-16 は,ケースに組み込んだ状態です.左側にトランス,その下に MOSFET が見えますが, これは AC100V インバータを自作する場合の部品なので,この部分を写真 11-17 の市販品インバータと 置き換えます. 図 11-7 の上段の回路は,ビニル線を使って配線します.その際,バッテリとインバータの間は, 10A 以上の電流が流れますから,断面積が 1.25mm2 以上の電線を使ってください.ケースは前章の水車 の羽根に使った,アルミ・アングルと,羽根のアルミ板の残りで作りましたが,市販のケースを使う と簡単です. 今回は図 11-7 中の SW3 の機能を,SW2 にもたせているので,写真 11-2 に示すパネルに SW3 は付い ていません. 第 5 部 142 第 11 章 表 11-2 キャンプ用屋外電源 製作した汎用電源装置の部品表 リファレンス番号 品 C 10 名 型名,仕様,メーカ名 電解コンデンサ C 11 D 5,D 9 ショットキー・バリア・ダイオード D 10 IC 5 レギュレータ IC R 18 1 220μF,16V 1 1N5818 2 1N5822 1 LM2575T-ADJ,ナショナルセミコンダクター 1 2.7kΩ 1 R 20 1kΩ 1 R 21 5.1kΩ 1 カーボン抵抗 1/6W R 22 1.3kΩ 1 R 23 470Ω 1 R 24 1kΩ 1 220μH 1 L1 パワー・インダクタ J2 標準 DC ジャック パネル取り付け型 MJ-10 1 SW2-A,SW2-C ロータリ・スイッチ 2 回路 6 接点 1 D 6,D 8 LED ブラケット 緑,赤 2 BT1 小型シール鉛電池 PXL12072,日本電池 1 CN 1,CN 2 ターミナル φ11mm 2 F1,F2 ヒューズ・ホルダ AC250V,10A 2 SW2,SW3 埋め込み連用タンブラ・スイッチ AC300V,15A 2 P1 アナログ・パネル・メータ AC150V 1 J1 埋め込み連用型コンセント AC125V,15A 1 連用取り付け枠 松下電工 1 金属ケース 300 × 90 × 150mm 1 ユニバーサル基板 AE-B2,秋月電子通商 1 平型(ファストン)端子 バッテリ端子用メス 2 逆接防止 ここに水車 の出力を接 続する CN1 CHG I N R 18 2.7k CN2 CHG GND D5 1N5818 D6 チャージ 容量15A必要 F2 10A BT1 バッテリ 12V SW1 SW3 メイン・ スイッチ 交流 100V シール型鉛蓄電池 12Vまたは ほかの出力 切り替え R 20 1k SW2-A 2P-6W OFF 3V 6V 9V 12V AC D8 パワー C 10 スイッチング・ レギュレータ 図 11-7 個数 100μF,25V 100μ I C5への逆流防止 AC100Vインバータ 市販品を利用する +12VDC AC100V DC-AC インバータ GND AC100V バッテリまでは AWG#16で配線する D9 1N5818 P1 交流 V 150V 直流出力電圧設定 パワー・ インダクタ I C5 LM2575T-ADJ OFF (ナショナル セミコンダクター) 3V 2 1 6V Vin OUT 9V 4 L 1 FB C 12V SW2-C 11 5 220μH ON/OFF AC 220μ 2P-6W GND D10 ショットキー・バリア・ 3 1N5822 ダイオード 直流 3/6/9/12V と交流 100V を出力する汎用電源の回路図 水力発電機や太陽電池からの電力をいったんバッテリに蓄える J1 AC100V 出力 F1 1.5A 交流出力 端子 J2 DC OUT R 21 5.1k R 22 1.3k R 23 470Ω R 24 1k 直流出力 端子 11-5 R 21 D10 143 第 1 部 図 11-8 図 11-7 に 示した回路の配線 C 11 D9 DC−DC コンバータ周辺回路の検討 第 2 部 R 22 L1 R 23 第 3 部 I C5 R 24 C 10 1 写真 11-15 汎用電源 5 製作した 図11-7を実現したもの 破線内が該当 第 4 部 第 5 部 写真11-3に 写真11-3 写真 11-3に に 示した基板 写真 11-16 MOSFET トランス バッテリ 製作した汎用電源装置の内部 11− 5 写真 11-17 市販のインバータ CD-150(大自工業) 入力電圧: DC12V,出力電圧: AC100V,変換効率: 90 %,定格出力: 130W DC−DC コンバータ周辺回路の検討 ● 3 端子レギュレータのように手軽に使える LM2575 通常の 3 端子レギュレータは,入力電圧と出力電圧の差と消費電流の積がそのまま熱になって消費さ れます.これに対し,コイル,ダイオード,そしてコンデンサを使ったスイッチング・レギュレータ は,電力がそのまま変換されると考えてよく,熱が発生することもありません. LM2575 は外付け部品点数がたった 4 個ですみます.今回は,入力電圧範囲が最大 40V と広い LM2575T を使いました.T は TO-220 パッケージを意味します. ● 出力電圧設定用抵抗の値の決め方 図 11-7 中の D 9 は,出力が 12V(バッテリ出力)のときに,IC 5 への逆流を防止するものです.このダ イオードでの電圧降下を見越して,IC 5 の設定電圧はそれぞれ 0.5V ほど高くしています. 出力電圧から R 21,R 22,R 23,R 24 の値を求めてみましょう.データシートから,図 11-9 の条件で, Vout = 1.23(1 +Ry /Rx )が成り立ちます.Vout は IC 5 の出力電圧を指します. 144 第 11 章 キャンプ用屋外電源 200 L1 150 125 ET 値[Vμs] 220μH Ry C 11 220μ I C5 4ピン へのフィー Rx ドバック H2200 H1500 100 H1000 H470 ここ! 70 L680 50 40 L470 L330 30 図 11-9 スイッチング・レギュレータ LM2575T の出力電圧を定めるための 抵抗 Ry ,Rx を計算から求める H680 20 0.2 図 11-10 0.3 L220 0.4 0.5 最大負荷電流[A] L150 L110 0.7 1.0 最大負荷電流とET 値からインダクタの値を求めるグラフ この式を使うと,9V,6V,3V 各電圧について,次のように求まります. R 21 + R 22 + R 23 9 + 0.5 = 1.23 1 + R 24 6 + 0.5 = 1.23 1 + 3 + 0.5 = 1.23 1 + R 21 + R 22 R 24 + R 23 R 21 R 22 + R 23 + R 24 R 24 = 1kΩとして,この連立方程式を解くと,R 21 = 5kΩ,R 22 = 1.26kΩ,R 23 = 0.46kΩとなります. それぞれ,5.1kΩ,1.3kΩ,470Ωを使うことにします. ● インダクタの値を求める 少々面倒なのは,外付けのインダクタやコンデンサ,ダイオードの定数計算と部品選定です.デー タシートに計算方法があるので,これにしたがって計算してみましょう. まず,ET 値[Vs]というものを求めます.ET 値は,インダクタが蓄えるエネルギーに相当します. 1 ET =(Vin −Vout )Vout × Vin f ただし,Vin :入力電圧(12V),Vout :出力電圧(12/6/3V の中間の 6V とする),f :スイッチング 周波数(52kHz) 上式から, ET =(12 − 6)6/(12 × 52 × 10 3 )= 57.6 × 10−6 となります. 図 11-10 は,最大負荷電流と,上で求めた ET 値からインダクタの値を求めるグラフです.最大負荷 電流は 1A なので,ET 値= 57.6Vμs との交点は,図の黒丸の位置になります.したがって,L220 の範 囲内にあり,220μH を使えば良いことがわかります. ● 出力コンデンサ,ダイオードを選定する レギュレータは帰還ループがあるため,発振するなどの不安定動作が起こる可能性があります.出 11-6 電圧 電流 AC100 V 1 A DC12 V バッテリ直接 DC9 V 1A DC6 V 1A DC3 V 1A 145 第 1 部 200 充電電流[mA] 表 11-3 汎用電源装置の 目標仕様 バッテリの選び方と使い方 1.5rpsで 約200mA 第 2 部 100 0 0 図 11-11 1 回転数[rps] 2 水車の回転数とバッテリの充電電流の関係 (実測値) 力コンデンサ Cout[F] (= C 11 )は,次の計算値の下限値よりも十分に大きなものを使う必要があります. Cout ≧ 7785Vin max /(Vout L) Vin max は,入力電圧の最大値で,バッテリ充電時に発生する可能性のある最大値として,16.5V を設 定します.Vout はもっとも条件の悪い 3V とします.L は 220μH です. Cout ≧ 7785 × 10−12 × 16.5/(3 × 220 × 10−6 )= 194μ 上式から,C 11 は 220μF とします. ダイオード D 10 の定格電流は,最大負荷電流の 1.2 倍以上でなければならないので,1A × 1.2 = 1.2A 以上となります.また,定格逆電圧は,最大入力電圧の 1.25 倍以上でなければならないので,16.5V × 1.25 ≒ 25V 以上のものを選ぶ必要があります.余裕をみて 1N5822(3A,40V)を選びました. 11− 6 バッテリの選び方と使い方 ● バッテリを使う理由 水力発電機の出力は,水流の強さに依存するので一定ではありませんし,取り出せる電力も大きく はありません.したがって,いったんバッテリに充電し,この出力を利用すれば,電力の取り出しに 柔軟性が出てきます.例えば,夜間など電力を使用しないときに充電しておき,昼間に蓄えた電力を 使用したり,短時間に大きな電力を取り出したりすることが可能になります. 製作する汎用電源は,水力発電機に限らず,太陽電池や商用電源を使って充電すれば,非常用電源 としても使えます.表 11-3 は目標仕様です.直流 12V はバッテリの電圧をそのまま出力することにし ます. ● 満充電までに要する時間 図 11-11 に水車の回転数と,バッテリ(12V)の充電電流の実測結果を示します.1.5rps で約 200mA ですから,内蔵の電池(12V × 7.2Ah = 86Wh)を,空の状態から満充電にするには,(7.2/0.2)× 1.2 = 43h,つまり,2 日弱かかる計算になります.1.2 の係数は後述します. したがって,この水車と組み合わせる場合,夜間 12h 充電できるとして,12h × 0.2A = 2.4Ah ≒ 30Wh 程度の電力消費量とすれば,長期の運用でもバランスが取れます. 第 3 部 第 4 部 第 5 部 146 第 11 章 キャンプ用屋外電源 写真 11-18 密閉型鉛蓄電池 PXL12072(日本電池) 公称電圧: 12V,定格容量: 7.2Ah, 1C 放電: 42min,質量 2.7kg ● 密閉型鉛蓄電池を使う ここでは充電時に発生する成分を内部で吸収し,希硫酸の飛散の恐れがなく,電解液の補充も不要 な密閉型(シール)鉛蓄電池を使います(写真 11-18) . 電解液を補充するタイプは安価ですが,次の理由から,組み込み用途には向きません. 鉛蓄電池の保証寿命は通常 2 年です.鉛は公害物質なので,ごみとして廃棄することはできませ ん.しかし,自動車の必需品でもあり,リサイクル体制が整っています.電池の販売店,ガソリ ン・スタンドなどのリサイクル・マークが表示されている店で引き取ってくれます.また,過充電 時に水素ガスが発生するので,密閉した場所で使うことは避けなければなりません. 以上の点に注意すれば,自然エネルギーの貯蔵手段として大きな力を発揮します. ● 鉛蓄電池の寿命を縮めないために 鉛蓄電池の取り扱い上の注意点を列挙しておきます. ① 定電圧充電が基本.12V 電池の場合 14.5V くらい. ② 急速充電の場合(1CA 程度)は,1 時間程度で打ち切る.電池側面を手で触って熱く感じたらすぐ 切断する.放置すると電池の寿命が短くなる.0.3CA 以下で充電するのが無難.なお,CA とは, C が蓄電池容量(7.2Ah など) ,A はアンペア.0.3CA なら 0.3 × 7.2 = 2.2A 流すという意味. ③ 容量が「7.2Ah」とは,20 時間率を意味する.つまり,20 時間で電池電圧が空(端子電圧 10.5V)に なる電流値を,1 時間に換算したものとなる.これよりも短時間,例えば 5 時間で放電させれば, 容量は表示値よりも小さくなる. ④ 充電は容量の 1.2 倍程度行わないと満充電とならない. ⑤ 端子電圧は満充電で 12.7V 以上,50 %で 12.1V,0 %で 10.5V 程度. ⑥ 鉛蓄電池は満充電状態で保存する.空で放置すると寿命が縮まる. ● サイン波でない交流の電圧値は通常のテスタでは測れない 図 11-7 中のメータ P 1 は,市販のインバータを使った場合,使わなくても良いです.このメータにし ても,通常のテスタの AC レンジにしても,ダイオードで整流して直流に変換して表示しています.こ の場合,サイン波以外は正しい値を示しません.写真 11-7 で示したインバータを使うと,75VRMS くら 11-6 バッテリの選び方と使い方 147 ◆ インバータの出力波形と実効値の関係 ● インバータ出力はサイン波が理想だが インバータについては,電力を利用するうえで 知っておいたほうが良いと思われるので,少し説明 します.交流 100 V を作るインバータは,サイン波 を出力するのが理想ですが,高価ですし,自作する にしても複雑になり,ちょっと手が出ません.交流 波形は,矩形波で作るのが一番簡単ですが,少々問 題があります. 図 11-A の灰色で塗りつぶした波形は,黒色実線 のような電圧が抵抗負荷R に加わったときの,瞬時電 力を示します.電力 (正確には平均電力) は,この瞬時 電力を 1 周期 T にわたって積分したものになります. s サイン波 図11-A (a) のサイン波の場合,電圧は e =Emsinωt, (Em/R) sinωt です. 抵抗 R を流れる電流は,i = e/R = ω= 2πf,f は周波数です.したがって瞬時電力は, P = ei =(Em2/R)sin2 ωt となります.電力はこれを 1 周期 0 〜 T で積分して,P = Em2/2 R となります. s 矩形波 図 11-A(b)の矩形波の場合はどうでしょうか.電 瞬時電力 P 振幅 Em の矩形波の瞬時電力 面積 の総 和は 面積はEm Em 2 2R Em 圧の振幅が同じ Em ですと,電力は,P = E m2/R と 2 倍になってしまいます.例えば,20 W の電球が 2 倍の明るさの 40 W になります.このため,電圧を 1/√ 2 = 0.7 倍と低くしなければなりません. s サイン波と同じ消費電力となる矩形波 負荷は電球だけではありません.整流回路のよう な,コンデンサ・インプット型の負荷は,ピーク電 圧で動作するので,Em を低くすることはできませ ん.図 11-A(c)は,同じ矩形波でありながら,ピー ク電圧 E m を保持したまま,(a)のサイン波と同じ 消費電力が得られる波形です.言い換えれば, E m の実効値がサイン波と同じ 1/√2 になるように,パ ルスのデューティを狭くしたのです. ● 市販のインバータは矩形波 市販のインバータの大半は,図 11-A(c)の波形で す.本文中の汎用電源で使うなら,バッテリの容量 から 150 W 以下のインバータ(写真 11-17)が良いで しょう.シガレット・ライタの部分を切断し,平型 端子を使ってバッテリに接続します. 面積はEm 2/R 面積 の総 和は 2/ 2 R Em 時間 Em 2 2R Em 0.7Em 0 振幅 Em の階段波の瞬時電力 0 時間 0 T /2 3T /4 T 時間 電圧(電流も同位相) (a)サイン波 図 11-A (b)矩形波 (c)階段波 インバータの出力波形と消費電力の関係 いしか示しません. B 参考文献 B (1)川と水の質問箱,河川局ホームページ,国土交通省. shttp://www.mlit.go.jp/river/ (2)LM2575 SIMPLE SWITCHER 1AStep − Down Voltage Regulator,2004,ナショナル セミコンダ クター ジャパン㈱. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 148 第12 章 D フリップフロップ,コンパレータ, パワー MOSFET など個別部品で作る 100V 交流インバータ 鉛蓄電池の出力(12V)から AC100V を生成する装置を製作しました(写真 12-1).どんなところへで も容易に運搬できる電源装置があれば,キャンプ地や農地のような交流電源のないところでも交流機 器を使うことができますし,自然災害などの非常時の電源としても役立ちます. 12− 1 河原でパソコンや扇風機を使いたい 前章では水力発電機と組み合わせて使う汎用電源装置を紹介しました.その際に AC100V を出力す る電源には市販のインバータを利用しました. ● 市販品にはデメリットがある 車のシガレット・ライタから AC100V を作るインバータが,容易に入手できるようになりました. 従って DC−AC インバータを自作するメリットは少ないように思えます.しかし,市販のインバータは, 水力発電機の電圧が 0V から徐々に上昇したり回転が大きく変動したりすると,起動しなかったり出力 が不安定になったりすることがあります.また,インバータをブラック・ボックスとしてしまうと, フィードバック 25kHz PWM波形 発生回路 ① 蓄電池 12V 図 12-1 写真 12-1 蓄電池の DC12V を AC100V に変換する DC − AC インバータを製作 DC 整 140V スイッ チング 流 回路 スイッ チング 回路 T 60Hz PWM波形 発生回路 ② 一般的な DC−AC インバータの原理 AC 100V フ ィ ー ド バ ッ ク 12-2 交流インバータの製作 149 可動接点 昇圧トランス 12V S2 a RL b 蓄電池 S1 T 第 1 部 第 2 部 第 3 部 バイブレータ・コイル 図 12-2 バイブレータ動作による DC−AC インバータ パワー・エレクトロニクスの技術やノウハウがほとんど身に付きません.そこで自作に挑戦しました. ● 市販インバータは AC100V 負荷の突入電流を大きくとれない 市販の DC − AC インバータの構成例を図 12-1 に示します.鉛蓄電池の電圧を 25kHz でスイッチング して,100V × 2 ≒ DC141V を作ります.次に,この電圧を 50/60Hz でスイッチングすることで, AC100V(実効値)を作り出しています.DC12V を昇圧するときに,そのスイッチング周波数を高くす ればトランス T の寸法を小さくできます.この方法により,市販インバータの小型軽量化を実現でき ています. さて,この回路は PWM 波形発生回路が図 12-1 中の①と②の 2 個,スイッチング回路が 2 カ所と,回 路規模はかなりのものとなります. この方式は,(1)AC100V 負荷の突入電流が大きく取れない,(2)入力電圧が徐々に上昇したときに 起動しにくいなど,水力発電機や太陽電池と組み合わせたときに正常に動作しない可能性があります. ● 負荷変動に強い回路を製作 (1)と(2)の理由から,今回はトランス T をバイブレータ・コイルによって 50 または 60Hz で駆動する 方法(図 12-2)を採用することにしました.トランスの容積が大きくなりますが,次の利点があります. ¡負荷回路とスイッチング回路が絶縁され安全 ¡スイッチング周波数が低くノイズの発生が少ない ¡急激な負荷変動や大きな突入電流に耐える また,同じ回路を使って,MOSFET とトランスを変更するだけで,数 kW 規模のインバータに改造す ることもできます. 12− 2 交流インバータの製作 ● 利用したのは歴史あるバイブレータ電源 DC12V や 24V の鉛蓄電池から交流電圧を得る装置は,昔はバイブレータ電源と称して,バスや列車 の蛍光灯などの電源として広く使われてきました.図 12-2 にこの原理を示します. 第 4 部 第 5 部 150 第 12 章 100V 交流インバータ 電磁石を使ったベル(電鈴)は,電磁石に切片が吸い付くと接点が開き,離れると接点が閉じる構造 です.バイブレータも同じ原理で,図 12-2 の S 1 がこの接点に相当します.この切片に連動した可動接 点 S 2 は,S 1 と同じように a 側と b 側を往復します.すると,鉛蓄電池の直流電圧は,トランス 1 次側の a と b に交互に電流を流し,電磁誘導により 2 次側に起電力が発生します.1 次側に対し 2 次側の巻き数 を増加させれば,12V を昇圧した交流電圧が得られます.出力波形は方形波です. この目的に使う可動接点コイルをバイブレータと呼んでいましたが,今ではトランジスタに置き換 わり,姿を消しました.バイブレータ方式の出力電圧変動率は 20%程度で,出力波形は負荷の大きさに よって変わります.周波数は 100 〜 125Hz が用いられていました. ● できるだけ正弦波に近い波形を作りたい 電力(正確には平均電力)は,瞬時電力を 1 周期 t にわたって積分したものです.図 12-3(a)の正弦波 の場合は,電圧は v = Vm sinωt ,抵抗 R を流れる電流は,i = v/R =(Vm /R )sinωt です.電力はこれを 今回はこれ (a)正弦波 図 12-3 (b)方形波1 (c)方形波2 (階段波) DC−AC インバータの交流電圧の出力波形 C 1 の放電時定数を短くしてパルスのデューティ比を変更する I NV D1 1N4148 フェアチャイルド 22k セミコンダクター +12V R4 R3 68k VR 1 50k 470k R 2 470k C 1 0.047μ 3 2 7 1 + − 4 I C1 方形波 6 5 無安定 マルチ R 5 100k TL081CP テキサス・インス ツルメンツ 47μ 0.1μ R8 3 10k 2 + − 4 3角波 I C2 D2 1N 4148 7 5 8 6 C2 Tr2 2SA1015 (東芝) 0.1μ I C3a 2 コンパレータ R9 2.2k R 11 VR 2 100k 50k 出力電圧 設定 9 R 13 C3 68k 4.7μ R 14 100Ω I C3c R 15 100Ω 10 Tr4 2N7000P /TO TC4093BP 正負波形 選択パルス 6 C9 8 GND 7 TC4093BP (東芝) 5 1 3 Tr3 BS250P /TO 0.1μ 100μ VDD 3.3M 1 C8 I C4a TC4013BP (東芝) 1 5 Q D 2 3 Q CLK 4 R 6 S 14 R 12 DC12V から AC100V を作るインバータ回路 図 12-2 に示したバイブレータ方式による 47μ R 7 1M CA3140E (インターシル) Tr1 2SC1815 (東芝) 3角波の切り出し レベルを変えて パルス幅を変化 させる 図 12-4 C6 CMOS出力回路 C7 電源投入時ソフト スタート回路 発振周波数 設定用 C5 R1 1/2カウントダウン 4 I C3b TC4093BP D3 BZX85C12 オン・セミ コンダクタ Tr5 BS250P/TO (Zetex) 12 13 R 16 100Ω 11 R 17 100Ω I C3d TC4093BP ピーク・パルス D1 1N4148 Tr6 2N7000P /TO フィードバック・ ループ レベルシフト用 12-2 交流インバータの製作 151 積分して,P = Vm 2/2R となります. (b)の方形波の場合はどうでしょうか.電圧の振幅が同じ Em だと,電力は,P = Vm 2/2R と 2 倍に なってしまいます.このため,電圧を 1/ 2 = 0.7 倍と低くしなければならず,整流回路を持つ AC 機器 などでは電圧不足です. (c)は,同じ矩形波でありながら,ピーク電圧 Vm を保持したまま,(a)の正弦波と同じ消費電力が 得られる波形です.今回はこのような波形を発生させます. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 図 12-4 が DC − AC インバータの回路です.12V の鉛蓄電池電圧を,周波数 60Hz(または 50Hz), デューティ比 25%の方形波でチョップ(断続)し,トランス T 1 で昇圧し 100VRMS を得ています. 第 4 図の中央より左側が,図 12-3(c)の階段波発生回路に相当します.IC 1 の OP アンプ回路は,D 1 がな い場合,デューティ比 50%の方形波を発生する無安定マルチバイブレータそのものです.D 1 により, 部 ● 三角波の傾きを利用してスイッチング・パルスを作る OP アンプの出力が L のときの C 1 の放電時定数を短くしています.これによって,C 1 両端の波形は元 きょしじょうは の三角波から鋸歯状波になります. 写真 12-2 に各部の波形を示します.IC 1 の②ピンに現れる鋸歯状波のスロープを IC 1 の⑥ピンのパル スが H の期間の一定範囲だけ切り出します.この切り出し幅は Tr 1 のベース電圧で変えられます. ベース電位が上昇すると,IC 2 の⑥ピンのパルス幅が狭くなります.IC 1 の発振周波数は 100Hz(または 120Hz)で,C 1,R 3,VR 1 の値により決まります.C 1 はセラミック・コンデンサではなく,温度特性と Tr7 H7N0308CF ルネサス エレクトロニクス トランスで100VRMS に昇圧する IC1②ピン F1 T1 9V Tr8 H7N03 08CF 図12-4中の IC1⑥ピン スイッチング用 パワーMOSFET 110V 9V 1.5A M1 AC150V V J1 AC100V OUT IC3C⑩ピン 75W 本文参照 F2 10A SW1 メイン・ スイッチ C4 1000μ IC2⑥ピン BT1 12V シール型 鉛蓄電池 逆接続防止用 BAT +12V D5 1N5818 オン・セミ コンダクタ D6 CHARGE CN1 R 18 2.7k 写真 12-2 DC−AC インバータ各部の波形(10V/div,5ms/ div.ただし IC1 ②ピンの波形は 5V/div) CHG IN スイッチング回路 CN2 CHG GND ここに水力発電機 の出力を入力する 12V 図 12-5 図 12-4 の昇圧部 には市販のトラ ンスを利用する 12VP-Pなので, 実効値は8.5V →9V×2を選ぶ RL 100VRMSで なくてはならない 第 5 部 152 第 12 章 100V 交流インバータ DC/AC出力 切り替え SW2a 2P-6W 蓄電池 +12V R 20 1k OFF 3V 6V 9V 12V AC Tr9 2SA1020 (東芝) D11 1N5818 R 25 300Ω 220Ω 150μH パワー・ インダクタ 1N5818 オンセミ コンダクタ R 27 MC34063A (テキサス・インスツルメンツ) 5 1 COMP SWC 2 SWE 3 TCAP VCC 100μ I NV+12V C 14 220μ 8 DC 7 PK 6 12Vより低い場合と 高い場合がある C 12 AC100V インバータ回路 の安定化+12V I C6 0.22Ω 図 12-6 D12 R 23 13k R 26 D8 POWER L2 C 13 510p R 28 1.5k GND 4 昇圧,降圧兼用 スイッチング・レギュレータ 図 12-4 に示したインバータ回路に必要な 12V 電源を生成する回路 漏れ電流の点でフィルム・コンデンサの方が適しています. ● フリップフロップとゲート回路により 25%のデューティ比を得る IC 2 はパルス幅,つまりデューティ比を決めるための回路で,これによって出力電圧の実効値が決ま ります.トランジスタ Tr 1 は,トランス T 1 の 1 次側から,ダイオード D 3,D 4 を通してフィードバック 信号を得ています.これは,出力電圧を一定にするためで,このフィードバック信号で IC 2 のパルス幅 を変えることで制御しています.これは,誘導性負荷や容量性負荷による実効値の上昇を抑える効果 もあります.帰還量はレベルシフト・ダイオード D 3 のツェナー電圧で調整しています. IC 4a は D フリップフロップで,③ピン CLK 端子に IC 1 の⑥ピンのパルス(120Hz)を入れることで 1/2 にカウント・ダウンし,AC100V のプラス側の波形とマイナス側の波形を識別するための信号を作って います.これを IC 3c,IC 3d に供給して,前述の IC 2 からのピーク・パルスをゲートしています.Tr 3 〜 Tr 6 は Tr 7,Tr 8 の容量性のゲートを十分駆動できるように,CMOS 構成としています. ● トランスは端子の表示電圧通りには使えない 電源トランスは自分で巻いた方が,自由度があります.今回は手間を省くため,市販の電源トラン スを流用しました(図 12-5).このとき注意が必要なのが昇圧比です.1 次側は 12V をトランスの中点に 加えて,他方を交互に GND に落としているわけですから,12V × 2 : 100V のトランスで良いように思 えますが,これは間違いです.図 12-3 のように,1 次側はピーク・ツー・ピーク(P−P)の 12V で,2 次 側は実効値(RMS)100V です. 12VP − P は実効値では,12/ 2 = 8.5V です.これを 9V に選ぶと,8.5 : 100 = 9 : x で,x = 106V です. 市販品で必ず備わっている 110V 端子を使えば好都合です.HT243 は,0/6/12/15/20/24V の端子があ 12-3 基板製作と動作確認 153 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 図 12-7 図 12-4 と図 12-6 の回路を搭載した基板の配線パターン(部品面視) るので,15V をセンタにして 6V,24V の端子を使います.もちろん 9V × 2 のトランスが入手できれば 最良です.75VA 程度のものを選んでください. ● 外部直流出力用の電源も用意した 図 12-6 はインバータの信号回路用の+12V と,外部で利用するための各種 DC 電圧を発生させる回路 です.入手しやすいスイッチング・タイプの IC を選びました. この回路は,DC12V から DC12V を作る回路で,入力電圧は 12V より大きいことも,小さいこともあ り得ます.IC 6 はこのような昇圧,降圧の双方に対応できる IC です.図 12-5 の L,C,R の値の計算方 法は,参考文献(2)に掲載されています. 12− 3 基板製作と動作確認 ● 大電流回路と小信号回路を分離する 信号回路と,直流定電圧回路は,図 12-7,写真 12-3 のようにユニバーサル基板に組み込みます.こ 2 れに対して,トランス端子周辺,特に 12V 側の配線は,基板には組み込まず,1.25mm(AWG # 16)く らいのビニール線で配線します.パワー MOSFET は,触ってわかるほどには発熱しませんが,念のた めケースに取り付けました(写真 12-4).ケースは水車の羽根に使ったアルミ・アングルと,羽根のア ルミ板の残りで作りましたが,市販のケースを使う方が簡単です. 154 第 12 章 100V 交流インバータ トランス IC4:TC4013BP :TC4093BP :TC4013BP IC3:TC4093BP IC6:MC34063A :MC34063A 基板 IC1:TL081CP :TL081CP 写真 12-3 IC2:CA3140CE :CA3140CE パワーMOSFET 部品実装後の基板(部品面) 写真 12-4 製作した DC−AC インバータの内部 基板(左),トランス(中央),MOSFET(下) ● パワー MOSFET のゲートを GND に落としてチェック 1 次側と 2 次側のヒューズ,F2,F1 はこの回路の唯一の安全装置です.特に鉛蓄電池側の F2 は重要で す.鉛蓄電池はショートすると配線が溶融するほど威力がありますから,回路が燃えるだけでなく, やけどや火災の危険があります. パワー MOSFET である Tr 7,Tr 8 のゲートを GND に落として,Tr 7,Tr 8 を確実に OFF にした後, 前段のゲート・ドライブ波形をチェックします.周波数は VR 1 で 60Hz に調整します.オシロスコープ がない場合は,テスタで見て,上記のゲート・ドライブ電圧が+ 4V 程度であれば合格,12V か 0V なら 不合格です.VR 1 は,通常は中央にしておけば良いでしょう. ● 正弦波でない AC100V の電圧はテスタではわからない AC100V 出力の電圧は,VR 2 でメータ M 1 を見ながら 100V に合わせます.100V 出力波形は,20W 負 荷で写真 12-5 のように 270VP − P くらいあります.0V への遷移波形に,逆起電力によるシュートがあり ます.無負荷の場合はこれがもっと大きくなり,トランスが少しうなります.うなりが気になる場合は T 1 の 100V 側にフィルム・コンデンサ 0.82μF(250V,AC)と 390 Ω 0.5W の抵抗を直列に入れてください. メータ M 1 も通常のテスタも,AC レンジはダイオードで整流しています.従って正弦波以外は正し い値は得られません.写真 12-5 のピーク・パルスの幅で,ほぼ正弦波と同じ実効値を示しますが, ピーク・パルスの幅がこれより狭いと,指示値は正しい値の 70%くらいしか示しません.最終的にはオ シロスコープで波形を確認しないと,間違った電圧に設定する恐れがあります. 12− 4 100V 交流インバータの成果 ● 屋外でパソコンやテレビが使えた! 写真 12-6 はキャンプ地で AC 機器を動作させたようすです.パソコンや液晶テレビなど AC アダプタ 12-4 100V 交流インバータの成果 155 扇風機 パソコン 液晶テレビ 第 2 部 270VP-P,こ れが正弦波 の144Vに相 当する実効 電力をもつ 写真 12-5 DC−AC インバータからの AC100V 出力波形 (負荷 20W 時,50V/div,5ms/div) 第 1 部 第 3 部 製作した −AC AC電源 電源 DC− DC DC−AC電源 写真 12-6 DC−AC インバータを実際に使っているようす 水力発電機で充電しながら AC100V 機器を動作させた で動作する機器は,鉛蓄電池などの外部電池から DC 電圧で動作させるより,AC100V で動作させる方 が接続が簡単なので実用的です.写真のように扇風機(誘導電動機)も動作しました.合計電力はトラ ンスと MOSFET により決まります.今回のトランスの仕様は 75W ですが,100W 程度までは問題なく 使えました. 通常は市販の 12V 用鉛蓄電池充電器で 2 カ月に 1 回程度,補充電して保管しています.秋に台風で停 電したときには,20W 蛍光灯をいくつか点灯させることで照明を確保でき,重宝しました.そのほか 屋外での実験やはんだ付けなど,折りに触れて活躍しています. 一番心配なシール鉛蓄電池の寿命ですが,5 年後の現在も健在であり,液漏れも発生していません. B 参考文献 B (1)Power Inverters 12V to 230V,1999. http://www.qsl.net/dg5sga/inverter.htm (2)Theory and Applications of the MC34063 and uA78S40 Switching Regulator Control Circuits, ON Semiconductor Application Note,AN920/D,2002. 第 4 部 第 5 部 156 第13 章 10W 水車,ハブダイナモ 4 台,自転車用ランプで作る 街灯 13−1 用水路の水なら充分街灯を点灯できる ● 日本の地形と気候は水力発電に向く 日本の農村は水田地帯が多いため,水が比較的豊富です.これに加えて,起伏に富んでいて落差が ある地域が多く,小規模の水力発電(以下,ピコ水力発電)に向きます.得られる数十 W のエネルギー は,照明,電撃柵,揚水ポンプ,散水器,集虫灯,防虫灯など多くの用途があります.ここでは出力 10000kW 〜 1000kW を小水力,1000kW 〜 100kW をミニ,100kW 〜 1kW をマイクロ,1kW 以下を小型 またはピコ発電とします. ● 農業用水路のエネルギーを利用 ここではハブダイナモ方式の発電機を,農業用の用水路に設置した事例を紹介します(写真 13-1). この設備は山間地の常夜灯として働いています. 写真 13-1 薄暮に浮かび上がる発電機と照明灯 写真提供:中島清次氏 写真 13-2 白川谷地区(福岡県)の農村風景 カルスト台地の景勝地,平尾台のふもとにあたる 13-2 10W 水車の製作 157 第 1 部 (a)上掛け (b)胸掛け 第 2 部 第 3 部 (c)前掛け 写真 13-3 農業用水路における基礎実験 プレート・ファン水車両端に 2 個の発電機がある 図 13-1 (d)下掛け 開放型水車の種類 羽根に水を当てる方法によって 4 種類に分かれる ● 水量豊富な平尾台から流れ出る水を利用 発電機を設置した場所(写真 13-2)は,大正時代に造られた白川水力発電所(落差 52m,発電機はドイ ツ製,昭和 37 年閉鎖)の遺跡のある風光明美な山村です.水源はカルスト台地の景勝地,平尾台の山並 みに発しています. 白川水力発電所は,ダムを使わない水路式発電所で,約 360 戸の電灯用電力(30W × 487 個= 15kW) を供給していました.当時の電球は平均 16W 程度ですから,白川村の夜は都会に匹敵する明るさで あったことでしょう. 今回紹介する,ハブダイナモ発電機による常夜灯設備は,この白川発電所を,私費をはたいて創設 した,故 柏村虎松医師をしのぶモニュメントでもあります.この発電所の建設に当たっては,関係官 庁への許可申請が何度も却下されており,それでも初志を貫いた氏と地元住民の底力には感嘆させら れます.写真 13-3 は農業用水路における基礎実験のようすです. ● 小規模水力発電には地元住民の協力が不可欠 一般にダムを建設しない小規模水力発電は,地球温暖化に与える影響が軽微です.昭和 37 年までは, 火力発電より水力発電の方が多かったことを考えると,水力発電がもっと見直されて良いはずです. 実際,ダムを使わない 1000kW 以下の水力発電は,風力や太陽光と同じく,法律で「新エネルギー」に 位置づけられており,国を挙げて推進する方向です. なお,今回のような,ピコ水力発電であっても,河川や水路に設置する場合は,国土交通省や自治 体の許可が必要です.特に農業用水の場合は水利権が関係するため,地元住民の協力なしには実現し ません. 第 4 部 第 5 部 158 第 13 章 街灯 ハブダイナモ4個 発電出力 P [W] 25 水管 20 15 水車 10 5 0 0 図 13-2 10 20 30 40 流量 Q [ /s] 50 60 70 水車 水車 2 基,発電機 4 個からなる 農業用水路の流量と発電出力の関係 13− 2 図 13-3 ハブダ イナモ方式 2 連水 力発電機の構造 整流板 10W 水車の製作 ● 落差が小さいときは昔ながらの水車が良い 水車は,電動機や石油エンジンが普及するまでは,稲作農家にはよく設置されていました.その主 用途は,脱穀や粉ひきでした.当時でも,この水車に小型の発電機を取り付ければ,住居の照明に使 えたはずです.しかし,インフラ(小型発電機,増速機,ベアリング,シャフトなど)が整っていな かったため,実現されませんでした.現在では小型発電機が簡単に入手でき,コイルを巻いて自分で 作ることもできます.この点でも水車を見直して良い時期だと思います. 低落差で使われる水車における水の流れには,図 13-1 のような種類があります.上掛け水車(a)は, 水車の羽根に水受けがあり,水の重量によって回転させます.胸掛け水車(b)は,水の重量に加えて, 水の衝撃力(速度)も利用します.前掛け水車(c)と下掛け水車(d)は,流れている水に羽根を当てるこ とが特徴です. 低落差での効率η[%]は,(d)がほかより 10%程度高くなります.これは羽根の受水面積を小さくで きるので,水の切れが良いためです. 水のエネルギーは,位置,圧力,速度の三つのエネルギーが含まれます.農業用水路では,このう ち,速度のエネルギーがほとんどであり,発電出力 P[W]は次の式で表すことができます. P =η・ v 2 ・Q ただし,η:水車の効率[%] ,v :流速[m/s] ,Q :流量[l/s] 図 13-2 はη= 70%としたときの,流量と発電出力の関係です.農業用水路の流量は 50[l/s],つまり 毎分 3000 l 程度であり,発電量としては 15W 程度を期待できることがわかります. ● 水車の羽根の枚数,寸法,形状を選ぶ ピコ水力発電には,図 13-1(a), (b)のようなバッフル・タイプの羽根よりも,(c), (d)のような平面 羽根の方が効率が良いので向いています.一般に小型発電機は,高回転数・低トルクで使う方が,低 回転数・高トルクで使うより効率が良くなります. 従って羽根の周辺での流速が落ちないような構造,つまり羽根にぶつかって流速を失った水を瞬時 に排出できる機構とすべきです.この構造は,羽根が平面で良いので比較的製作しやすく,ピコ水力 13-2 10W 水車の製作 159 第 1 部 第 2 部 第 3 部 (a)水車にハブダイナモを取り付けた ところ 写真 13-4 (b)水車を側面から見たところ (c)完成したハブダイナモ方式 水力発電機 水車にハブダイナモを取り付けたところ 第 5 部 羽根は回転板のスリットに嵌め込んでかしめる 写真 13-5 一般的な農業用水路の構造 発電機を設置するには少々狭い 第 4 部 写真 13-6 枡と水管を大きなものに変える 工事には地元住民の多大なる協力があった 発電にとっては幸いなことです. このほか,水車の直径,羽根の寸法にも条件に応じて最適値が存在します.また,ギアやベルトで 回転数を落とす場合は,ベルトよりはギアの方が 2 倍くらい効率が良いので留意する必要があります. ● 4 個のハブダイナモを使った 2 連水車の製作 図 13-3 に,今回のハブダイナモ方式による水力発電機の構造を示します.水車の直径は 28cm,羽根 は 12 枚構成です.羽根は平板で,プレート・ファン水車とも呼ばれています.整流板は水車の羽根に 水流の中心が当たるように調整するもので,最大出力が得られるように角度を調整します. 写真 13-4(a)は,水車にハブダイナモを取り付けたようすです.写真 13-4(b)は,側面から見たよう すです.写真 13-4(c)は,完成したハブダイナモ方式水力発電機の外観です.アクリル板は,展示して 構造がわかるように透明にしたもので,通常は金属の板や L 型構造材でもよいです. 160 写真 13-7 第 13 章 街灯 完成した発電機用枡 写真 13-8 改造した枡に発電機を設置する 整流板によって水車の羽根に均等に水が当たる ます ● 農業用水路の枡に設置する 農業用の用水路は,写真 13-5 のように直径 25cm 程度の塩ビ管が,縦,横それぞれ 65cm,深さ 70cm 程度の枡に接続され,必要個所に用水を分配するしくみになっています. この枡は発電機の設置にはちょうど良い構造です.塩ビ管からの流水を水車のプレート・ファンで 受ければ良いからです. s 発電機に合わせて枡を作り直す 製作した発電機は,従来の枡に設置するには少々大きすぎます.そこで発電機に合わせて枡を作り 直すことにしました.写真 13-6 のように新しい枡は,一辺 90cm,深さ 83cm です.この枡は規格外で あり市販品がないため,地元の石材店の協力で作られたものです.また,水管の直径も 30cm と大きな ものと交換しました.写真 13-7 は完成した大型の枡です. ● 落差があると得られる電力は大きい 白川滝用水路の場合,流量は最大 1300 l/分(220 l/s)ですが,枡には約 30cm 程度の落差があります. 得られる電力[kW]は, P = k ・g ・h ・Q ただし,k :効率(k =水車効率η×発電機効率γ) [%],g :重力加速度 9.8[m/s 2],h :落差[m], Q :流量[m 3/s] 落差 0.3m,η= 0.7,γ= 0.8 の場合, P = 9.8 × 0.3 ×(1.3/60)×(0.7 × 0.8)≒ 35.7W と予測できます. ● ハブダイナモ発電機を設置する 写真 13-8 は発電機を枡に設置したところです.流水は整流板の作用で,上側の水車と下側の水車の 羽根に均等に当たります. 昼間は照明は不要ですから,遮へい板を入れて水を逃がしています.これは,ハブダイナモのベア 13-3 R4 R3 100k Tr1 2SC1815 (東芝) R1 270k 10k Tr2 2SA1015 (東芝) 1000p C3 47μ 1S4 (PANJI T) R5 C1 CDS1 CDS D3 R2 10k ハブダイナモ DH-2N71 (シマノ) Tr3 2SK2231 (東芝) 街灯の成果 161 LP1 LAMP 6V 2.4W Tr4 2SK2231 10k R6 270k R7 100k C2 4.7μ D2 1N4148 第 2 部 第 3 部 第 4 部 D1 1N4148 図 13-4 第 1 部 ハブダイナモを利用した常夜灯の回路図 第 5 部 写真 13-9 電柱に取り付けた常夜灯 写真 13-10 夕暮れになり自転車用ランプが点灯したところ 昼間は CdS センサにより自動的に消灯する 写真提供:中島清次氏 リングの摩耗を考慮してのことで,現在は人手によって開閉しています. ● 電気系統の設計 照明灯はハブダイナモ付きの自転車に付いているランプを 4 個使いました.ハブダイナモに付属する ランプは,図 13-4 のように,CdS によって夜間だけ点灯するようになっており,好都合です MOSFET 2 個により,ハブダイナモの交流電圧の両波とも通過するようにしています. 13− 3 街灯の成果 ● 自転車用ランプを夜どおし点灯できる 照明灯は,自転車用のランプを 4 個点灯させています.写真 13-9 は,そのうちの 2 個を電柱に取り付 けたところです. 162 第 13 章 街灯 4個の発電機の電圧を加算する 4個の発電機の 電流を加算する + + + + − − − − +OUT +OUT GND G1 G2 G3 G4 F F F F −OUT F 発電機出力の一方は フレーム・グラウンド G1 G2 F 絶縁トランス (1:1) G4 F F 発電機出力の一方はフレーム・グラウンド (a)半波整流 図 13-5 G3 F (b)全波整流 発電機出力電圧の加算方法 発電機端子の一方がフレームに接続されていることに注意する ハブダイナモの発電出力は,定格で 2.4W ですから,合計 10W の発電をしていることになります.写 真 13-10 は夕方になり,照明灯が点灯したところです.街路を明るく照らしています. 4 個の発電機の出力は,別個に 4 個の自転車用ランプに接続しました.電気柵などの用途で複数のハ ブダイナモの出力を加算する場合は,構造上,ハブダイナモのシャフトや筐体が発電出力電圧の一方 の端子となるので注意が必要です.また,出力電圧の周波数と位相が,発電機ごとに異なるので,電 力の加算は少々面倒です.図 13-5 に加算方法の一例を示します. 写真 13-1 は夜間,発電機と街灯が動作しているところです.手前に,枡と発電機,前方に設置した 街灯が見えます. * 西日本工業大学には,全国でも珍しい,「河川研究所」があり,実験河川を用いていろいろな研究を 行っています.同大学と地域との結びつきには実績と歴史があり,今回の設備設置に地域住民の大き な協力が得られたこともその反映だと思います. B 参考文献 B (1)甲斐雄也;小水力発電の可能性に関する研究,西日本工業大学大学院工学研究科修士論文,2009 年 3 月. (2)高城実ほか;地域と連携した小水力発電に関する研究,西日本工業大学紀要 第 39 巻,2009 年 7 月. (3)高城実ほか;産業遺跡「白川水力発電所」に関する研究,西日本工業大学紀要 第 39 巻,2009 年 7 月. B 取材協力 B 西日本工業大学 高城研究室 http://www.nishitech.ac.jp/˜takajo/index.htm 163 第14 章 40W 水車,ステッピング・モータ,高輝度 LED 236 本で作る 地域のシンボル「お帰り」看板 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 14− 1 水車で地域を活性化したい ● トラ技を持った主婦が訪ねて来た 休日でのんびりしていると,トランジスタ技術を携えた主婦とおぼしき方が 2 名,訪ねて来ました. 「わたしたちの地域に水車を作りたいのです!」と唐突ながら熱心に語り始めました.役場にトラ技ファ ンが居て,そこから紹介されたらしいのですが,そもそも何のために水車を作るのでしょうか. 筆者の住む町では水道用のダム建設が進んでいます.ダム湖に水没する地域の住民はすでにほかの 地域に移転していますが,訪ねて来た方はこのダム湖上流の水没を免れた地域の住民でした. ● 地域の宝である水力をアピールしたい 一般に,ダム上流には至る所に小さな河川があり,落差も急で,いわばエネルギーの宝庫です.二 人はここに注目して,このエネルギーを電柵や照明に使えないかと考えたのです.しかし,いきなり 住民や町に訴えてもなかなか理解してはもらえません. この地域では年に 1 回,中学校の校庭にある丈の高いメタセコイアの木に LED 電球を掛けてお祭り を楽しんでいます.このツリー用 LED 電球を水車で点灯させれば,水の力を視覚的に理解できるので は…と考えたようです. ● 水車の建設では地元住民の気持ちが一つに これは大変なことだとは思いましたが,企画そのものは大変魅力的です.結局,地域住民や学校な ど,多くの人の協力が得られることを前提に引き受けました.写真 14-1 は 2 週間という短い期間に, わずかな費用で完成した水車です. 写真 14-2 に LED 制御基板,写真 14-3 に発電機整流基板の外観を示します. 14− 2 40W 水車の製作 ● 早速集まって仕様を決めた 早速,地域の区長と中学校の先生方に集まっていただき,話し合いを行った結果,図 14-1 のような 第 5 部 164 第 14 章 地域のシンボル「お帰り」看板 LEDによる LEDによる メッセージ・ボード 導水路 (a)全景 LEDの各ストリングを 駆動するパワーMOSFET Vベルト Vベルト (b)水車部を拡大 写真 14-1 完成した水車と発電機 V ベルトを使って発電機に連結した パルス生成の定番. タイマIC 555で駆動パルスを生成 写真 14-2 フォトトランジスタ LED 制御回路の基板 59 の LED ストリングを 3 個のパワー MOSFET で駆動している 構想で水車を作ることになりました. 水車と架台,発電機は筆者と協力者 1 名で製作し,整地,取水,導水,排水工事,および水車の設置 作業は地元の方々の協力をあおぐことにしました. 14-2 40W 水車の製作 165 第 1 部 山の斜面 山 取水ます 沢 写真 14-3 水車に設置するので防水ケースに収納した ホテ(側板) 底板 バケット 水車 タナ板 1400mm 400mm 校庭 排水路 ゴコウ (アーム) 斜面 軸 図 14-1 フェンス 山間地の学校に設置する水車の構想図 発電した電力は,電飾や照明に利用する ゴコウ受け 図 14-2 ヌキ 上掛け水車の設計図 第 3 部 第 4 部 第 5 部 掛樋 発電機は 裏側にある 発電機の整流回路基板 導水路 ポリエチレンの単管. 直径20cm 5m×5=25m 支柱 斜面 発電機の交流出力をショットキー・ バリア・ダイオードで整流する 第 2 部 350mm 各部には古式ゆかしい名前がある 一番の問題は水利権ですが,この川は町が管理しており,地域,町ともに問題ないとのことでした. 山の地主も快諾して,工事にも参加してくれました.また,校庭の利用は中学校と教育委員会の了承 を得て無事建設の運びとなりました. ● 木製の水車を設計する 図 14-2 は,水車の設計図です.水車は古くから揚水,粉ひきなどに利用されており,各部の構造に も昔ながらの呼称があります.中心の軸板はゴコウ受けと呼ばれ,厚さ 4cm のケヤキの板を 8 角形に切 り出しました.各辺に溝を切ってゴコウと呼ばれるアームを 8 本伸ばし,これにヌキと呼ばれる支持板 を渡して補強します. ゴコウ受け以外はすべて杉材です.木材は山間地にはいくらでもあり,コスト要因にはなりません. 166 第 14 章 地域のシンボル「お帰り」看板 水車軸 リム (a)上掛け (b)逆掛け (c)中掛け 胸壁 写真 14-4 (d)胸掛け 完成した水車 自転車のリムを側板に取り付けた 図 14-3 (e)前掛け (f)流し掛け 水車のいろいろ 流し掛けよりも上掛けの方が効率が良い 水車は全体として 8 角形となりますが,これをさらに 2 分して全部で羽根を 16 枚としました.羽根はタ ナ板とも呼ばれ,底板と側板(ホテ)を張ってバケツのように水がたまるようにします.写真 14-4 は完 成した水車です. ● 自転車のリムを側板に取り付ける V ベルトを掛けるプーリーには自転車のリムを使いました.リムはステンレス製なので,水がかかっ てもさびることがありません.側板にねじで取り付けるために,リムに厚手のステンレス板を溶接し ました.リムが薄いので溶接が難しく苦慮していたところ,幸いにも都会から U ターンした機械の専 門家が来て,溶接を快く引き受けてくれました.21 世紀の田舎は水だけでなく,人材の宝庫でもあり ます. ● 水車の出力を予測する s 水車の種類 水車には図 14-3 のような種類があります.水車は水の位置エネルギーを使う重力水車と,水の速度 エネルギーを使う衝動水車の二つに分けられます.図 14-3 で,前掛けと流し掛けタイプは衝動水車で, これ以外は重力水車です. 計画(図 14-1)では,せきにより水をせき止めることはしません.水をそのまま引いているので,水 の速度エネルギーは大きくありません.一方,斜面が急なので,落差は容易に得ることができます. 従って,図 14-3 の上掛け水車が適しています. s 上掛け水車の出力計算式 上掛け水車の出力 Pout[W]は, Pout =Φ1 L × 6 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (14−1) ただし,Φ1 :水車直径[m] ,L :水の流量[l/s] 例えば水車直径 1.4m,流量が 10l/s の場合, Pout = 1.4 × 10 × 6 = 84W ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (14−2) 14-2 表 14-1 項 製作する水車の仕様 目 仕 40W 水車の製作 167 第 1 部 水車 様 直径 1.4 mm 羽根の数 16 枚 増速機構 ベルトとプーリー 発電機 ステッピング・モータ 予想出力 40 W シャフト 第 2 部 架台 プーリー機構 図 14-4 発電機 動力の伝達方法 ベルトとプーリーにより増速する となります.一方,下掛け水車の場合は次のようになります. Pout = 0.6 × v 2 L ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (14−3) ただし,v :流速[m/s] 例えば,流速が 1m/s,流量が 50l/s の場合, Pout = 0.6 × 12 × 50 = 30W・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (14−4) です.上掛け水車は,この式でわかるとおり出力が大きいので,今回はこの形式を選びました. s 動力の伝達にはプーリーと V ベルトを使う 表 14-1 はこの水車の設計仕様です.流量を 10 l/s とすると,式(14 −2)のように水車の出力は 84W と なります.しかし,ベルトの摩擦や発電機の効率が出力低下の原因になります.水車の動力伝達機構 は,図 14-4 のようなものです. s 計算結果に伝達効率 50%を掛ける 動力の伝達効率は良いものから並べると,歯車,チェーン,タイミング・ベルト,V ベルト,平ベル トの順になります.発電機も一定回転数以上にならないと,有効な電力は発生しません.以上の困難 を見込んで効率を 50%とすると,84W × 0.5 = 42W となります. ● 水車の架台を設置する 水車が木材なら,架台も木製にして全体をレトロで柔らかな感じに仕上げたいものです.架台には 水車だけでなく,掛樋,発電機,排水溝なども組み込めるよう一体構造としました.写真 14-5 は作業 のようすです.皆が「早く水車が回るのを見たい」一心で,まるで小学生に返った気分になり,楽しく 作業できました. ● ステッピング・モータを発電機として使う 図 14-4 のような増速機構は,ベルトのスリップが発生するので,あまり高い回転数は期待できませ ん.できるだけ低回転数で所望の出力が得られることが好ましく,このためには多極構造の発電機が 唯一と言ってよい選択肢です. 例えば,自動車のダイナモは 1 回転で正弦波が一山しか出ないので,1500rpm 程度が必要です.これ に対してハブダイナモやステッピング・モータは,磁極数だけの波数が出るので,そのぶん回転数は 第 3 部 第 4 部 第 5 部 168 第 14 章 表 14-2 項 地域のシンボル「お帰り」看板 ステッピング・モータの仕様 目 仕 様 ステップ数 200 コイル抵抗 約1Ω 駆動電流 3A×2 サイズ 56.4 × 56.4 × 71 mm リム① 水車 ドライブ方式 ユニポーラ 電源電圧 Vベルト② 24 V シャフト④ 水車軸 小プーリー③ 大タイミング・ プーリー⑥ ベアリング タイミング・ ベルト⑦ 鉄製シャーシ⑩ ベアリング⑤ 図 14-5 写真 14-5 水車の架台の組み立て作業 ステッピング・ モータ⑨ (発電機) 小タイミング・ プーリー⑧ 出力を増加させる方法 ステッピング・モータを複数駆動する みんな小学生に返った気分で 低くて済みます. 表 14-2 に,秋月電子通商から入手した内部抵抗の低いステッピング・モータの仕様を示します.こ れはモータとしての仕様ですが,発電機として使う場合も参考になります.また,トルク曲線(回転数 とトルクの関係)も参考になります.これによれば 400Hz のとき,つまり 400(Hz)/200(ステップ)= 2rps のときが最大トルクです.2rps で使えば,効率が最も良くなります.一方,発電電力は回転数に 比例するので,回転数が高いほど出力は大きくなりますが,損失(発熱)も大きくなります.従って, 2 〜 6rps 程度が寿命の点では最良でしょう. ● プーリー機構を設計する 出力を増加させるには,ステッピング・モータの回転数を上げるのが効果的ですが,上述のように 損失や寿命の点であまり回転数を上げることはできません.そこで,図 14-5 のようにステッピング・ モータを複数駆動すればモータの数だけ電力が増加します. なお,今回は実験の意味でモータは 1 基だけとしました.従って,水車の出力の一部だけを取り出す ことになります.写真 14-6 はプーリー機構です.水車の回転数 0.5rps を 8 倍して 4rps としています. 出力は 12W 程度です.水車のベルトの張力を大きくして,すべりをなくしています.ステッピング・ モータの軸はこの応力に耐えられないため,この力を逃がすために,ベルトは 3 段としました.この機 14-2 40W 水車の製作 169 第 1 部 (a)表示1 第 3 部 ベルト ステッピング・モータ 写真 14-6 水車の動力を伝えるプーリー機構 水車のベルトのテンションを逃がすために 3 段構成とした 第 2 部 (b)表示2 写真 14-7 山の中腹で輝くメッセージ・ボード 合計 236 個の高輝度 LED を使った 構の製作にも近くの鉄工所の全面的な協力がありました. ● 導水路には施工が容易なポリエチレン・パイプを使う 沢から水を引くには,排水工事で使うポリエチレン製のドレンシングル管(直径 20cm,内面スト レート・タイプ)が便利です.塩ビに比べて耐衝撃性に優れ,腐食に強く,軽く,弾力性があるので敷 設作業が容易です.5m ごとにソケットで接続できるので,重機がなくても人手だけで設置できます. また,ある程度の曲げに耐えるので,水源まで必ずしも直線である必要はありません.水が流れるた めには取水口と排水口の間に,ある程度の傾斜が必要です.取水口に落ち葉がたまるので,枡やフィ ルタを設けるなどの配慮が必要です. ● 高輝度 LED を使ったメッセージ・ボードの製作 発電した電力は,お祭りの LED 電球のほかに,地域の人を励ますメッセージ・ボードにも使いたい との要望が出ました.そこで「おかえりなさい」と「おつかれさま!」の,二つの文字列を高輝度 LED で 大きく表示することにしました(写真 14-7) . 1 文字は 9 × 9 ドットで構成します.メッセージは二つだけですから,LED をすべて敷き詰める必要 はありません.二つの文字列の必要ドット総和は「おかえりなさい」が 154,「おつかれさま!」が 147 で すが,共通部分が多いので,LED の総数は 236 個で済みます. LED は暖かい感じのする赤色の希望が多いので,最大定格 100mA の OSHR5161P を選び,4 個ずつ直 列にして 10mA で駆動しました.これは寿命を考慮してのことです. ● LED 制御回路の製作 メッセージは,夕方から夜間にかけての内容ですから,日暮れ検出回路が必要になります.図 14-6 に LED 制御回路と,ステッピング・モータ発電機の整流回路を示します.日暮れになるとフォト・ト ランジスタ PT1 の光電流が減少し,Tr 4 が ON となって文字列の共通部分の LED ストリングを ON しま す.同時にタイマ IC(IC 1)が動作して,Tr 5 と Tr 6 を交互に ON して二つのメッセージを約 3 秒ごとに 第 4 部 第 5 部 170 第 14 章 地域のシンボル「お帰り」看板 MG1 ステッピング・ モータ 1 2 3 1N5822×4 (オン・ セミコンダクター) Tr1 2SJ377(東芝) R6 R8 6 5 4 4.7k C4 2200μ R7 1k R5 4.7k R 10 1k I C2 1k GND C6 C3 100μ 0.1μ R2 8.2k R1 100k C2 47μ 図 14-6 D9 D4 D8 D12 236 個 Tr6 DTC114 I C1 LM555 R3 10k (ナショナル セミコンダクター) 7 3 DSCHG OUT 5 CV 4 Tr7 6 RST DTC114 2 THR TRG C 1 8 VCC 0.01μ 1 PT1 TPS615 (東芝) GND 0.1μ D5 78L05(新日本無線) VCC OUT C7 Tr5 DTC114 D1 OSHR5161P 2200μ Tr4 DTC114 (ローム) R 15 330Ω R 11 (Opto Supply) C5 1N5822×4 R 14 330Ω 330Ω R9 4.7k BT1 12V, 8Ah Tr3 2SJ377 (東芝) Tr2 2SJ377 Tr8 2SC1815 (東芝) R4 10k Tr9 DTC124 (ローム) R 12 2.7k R 13 4.7k Tr10 DTC124 発電機の整流回路と LED 制御回路 高輝度 LED ボードに二つのメッセージを交互に表示する 切り替えます. ● ステッピング・モータ発電機出力の整流回路 ステッピング・モータには互いに位相が異なる二つの巻き線があるので,図 14-6 のように別個にブ リッジ回路で整流します.ダイオードは,電圧降下の小さいショットキー・バリアが適しています. 昼間は点灯しないので,余剰電力でバッテリ(12V,8Ah)を充電します.もちろん,バッテリがなくて も看板は正常に点灯します.写真 14-2 に LED 制御基板,写真 14-3 に発電機の整流基板の外観を示しま す. 14− 3 看板の成果 ● 地域の人に「夢が実現した」と喜ばれる 水車の建設は事前に個別部品を作っておいたので,1 日で終わりました.完成して水車が最初に回っ 14-3 看板の成果 171 たときには一斉に歓声が上がり,発案した女性はじめ住民の皆さんは目を輝かしてその成果を見守り ました. 運用して 1 週間,「水車が回っているだけで癒やされる」など多くの感想が寄せられました.前が国道 だけに,車を止めて見る人が絶えません.住民も,知人や遠くの親族に伝え,「早く帰省して見てみた い」など地域としての楽しみが増えたと,とても喜んでもらえました.写真 14-1 は,LED 表示板点灯 の日のひとこまです.「すごく明るい」,「元気が出る」などの声があがり,筆者も苦労が吹き飛んだ瞬 間でした. ● 今回のはテスト機,2 号機はもっと本格的に! 今回の 1 号機はテストが目的で,鉄砲水による増水,渇水の影響,水車と発電機の寿命などを調べる 予定です.この成果をもとに,お祭りに向けた 2 号機を設計しています.うまく行けば双子か親子水車 として地域の名物となることでしょう. 「いろいろなメッセージを発信したい」,「もっと大きな電力が欲しい」などの要求と夢が膨らんでい ます. B 取材協力 B 田中末美氏(福岡県みやこ町)および地域の皆さん 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 172 第4部 温度差,燃料,人力を活用編 第15 章 ペルチェ素子 10 個,20mV から動作する昇圧コンバータ, ワンチップ・ラジオ IC で作る 温度差発電で聞く AM ラジオ これまで,自然エネルギーとして,風,水,太陽光を取り上げてきました.次は熱エネルギーです. 人類が火を自由に使いこなし始めて以来,熱と生活は切り離せないものになりました.さらに自然界 には,太陽熱,地熱のような熱源もあります.このエネルギーは,ソーラー温水器,地熱発電のよう な形で利用されています.熱エネルギーを電気に変えるには,水蒸気の形でタービンを回すのが一般 的です. これに対し,熱源から直接的に電気を発生させる方式を,直接発電と言います.直接発電に使える 身近な素子として,ペルチェ素子があります.今回はペルチェ素子を使って,温度差発電に挑戦しま しょう.熱源としては地熱と炭火を使います.写真 15-1 は熱源に炭火を使った温度差発電機です. このアルミ 板の下にコ ンロがある 石膏ボードと 放熱器の間に ペルチェ素子を 挟み込んである AMラジオ 写真 15-1 炭火を熱源にしたペルチェ 発電機で動作するラジオ 15-1 ペルチェ素子は温度差発電を可能にする 173 第 1 部 LED ペルチェ素子 第 2 部 第 3 部 第 4 部 写真 15-2 九州電力八丁原地熱発電所 15− 1 写真 15-3 地熱で高輝度 LED を点灯させてみる ペルチェ素子は温度差発電を可能にする ● 地熱の宝庫 九重連山を訪ねる 大分県の九重町に入ると,いたる所に立ち昇っている噴煙と九重連峰の美しさが,鮮やかなコント ラストで目に入ってきます.ここには日本最大,世界でも屈指の規模の地熱発電所があります. 八丁原地熱発電所は九重連山の中腹に位置する筋湯温泉のすぐ近くにあります.地熱は,マグマで 熱せられた地下 1500m の地熱貯留層から,蒸気と熱水の形で,井戸を掘って取り出しています. 写真 15-2 の右側の二つの塔は,蒸気と熱水を分離する気水分離器です.得られる蒸気温度は約 250 ℃です.フラッシャー(写真 15-2 の左下の円形のもの)で,汲み上げた熱水からも蒸気を再生して 効率を上げています. このようにして得られた高温蒸気を,低温側の復水器で冷やすことで圧力差を作り,この力でター ビンを回して発電します.残りの水は地下に戻して地層の状態を安定させます. 復水器の温度は約 40 ℃なので,結局 200 ℃近くの温度差で発電をしていることになります.2 基合計 で出力は 11 万 kW,約 4 万世帯ぶんの電力に相当します.現在は,より温度差が小さくても可能な発電 を研究中とのことで,九州の企業はチャレンジ精神が旺盛です. ● ペルチェ素子で地熱発電に挑戦する 八丁原地熱発電所のすぐ近くには,小松地獄と呼ばれる,熱水と蒸気が噴出している地域がありま す.このような自然エネルギーは,古くから温泉や暖房,タケノコ蒸しなど,電気以外の形で使われ てきました. 写真 15-3 は,噴き出した熱水に,後述のペルチェ発電機の高温側熱伝導板を浸して,高輝度 LED を 点灯させているところです.LED 駆動回路は,参考文献(3)と同一のもの(LT1932)を使用しました. 熱水の温度は約 83 ℃で,出力電圧は 1V 程度でした.蒸気が噴出している場所では,水温は 95 ℃近 第 5 部 174 第 15 章 温度差発電で聞く AM ラジオ 金属A 金属A 電流Ⅰ 発熱 電流Ⅰ 金属B 加熱する こちらは常温 金属B 吸熱 電圧が発生する 電圧を加える 図 15-1 ペルチェ効果 図 15-2 異種の金属の接合部からは発熱と吸熱が起こる 低温 ゼーベック効果 異種の金属の接合部を加熱すると起電力が発生する 低温 金属 N型 半導体 低温側金属(銅板) 金属 負 荷 P型 半導体 電 流 負 荷 電 流 電流 金属 高温 金属 図 15-3 P型 半導体 − 高温 (a)N型 N型 半導体 (b)P型 半導体のゼーベック効果 高温側金属(銅板) 図 15-4 電流 + 高温側金属(銅板) 半導体型ペルチェ素子の構造 くあります.蒸気自体はさらに高温ですが,本機は構造上,水蒸気雰囲気中では温度差が得られない ので,写真 15-3 のように熱水に漬ける方法になります. ● 発電のしくみ ペルチェ素子はペルチェ効果という物理現象を利用したものです.ペルチェ効果とは,図 15-1 のよ うに異種の金属を対にして接合したものに電流を流すと,接合部で熱の発生と吸収が起こるという現 象です.このようにペルチェ素子は,電流を熱に変えることができるので,主に吸熱作用を利用した 電子冷蔵庫や CPU の冷却などに使われます. それでは図 15-1 の接合部に熱を加えて,ほかの接合部との間に温度差を作るとどうなるでしょうか. すると図 15-2 のように,電圧計の針が振れて起電力が発生したことがわかります.これはゼーベック 効果と呼ばれ,熱電対などに利用されています. ペルチェ効果とゼーベック効果の原理は同じで,異なる金属や半導体中のポテンシャル・エネル ギーあるいは,仕事関数が異なることに起因します.従ってペルチェ素子に温度差を与えれば,起電 力が発生します. 図 15-3(a)において,上側が低温,下側が高温であるとします.N 型半導体の高温側では低温側より も電子が多く存在しています.このような電子の不均一は拡散によって均一になろうとする傾向があ ります.この結果,高温側では電子が不足し,低温側では電子が過剰になります.従って負荷をつな ぐと矢印の方向に電流が流れます.(b)の P 型半導体の場合は電子の役割を正孔が行うため,電流の向 きは(a)とは反対になります. 15-1 ペルチェ素子は温度差発電を可能にする 175 第 1 部 第 2 部 第 3 部 写真 15-4 使用したペルチェ 素子の外観(TES1−12705) PE1 ペルチェ素子 + − T1 1:100 C1 220μ 第 4 部 C 2 0.001 C 3 330p ⅠC1 LTC3108 (リニアテクノロジー) 13 14 C1 C2 R 1 510k 15 10 11 2 VOUT VOUT2 Vout2EN VLDO SW VS2 VS1 VAUX PGD VSTORE GND 4 5 8 2.2V C7 7 3 9 C4 C5 470μ 6 1μ 図 15-5 3.3V 5.25V 2.2μ C6 0.1F/6.3V ペルチェ素子から高い電圧を取り出す回路 間欠動作をする送信機などの用途に適する 実際のペルチェ素子は図 15-4 のような構造となっています.N 型と P 型の半導体を直列にしたもの で,上を低温側,下を高温側として温度差を表裏に持たせることができて便利です. 写真 15-4 のペルチェ素子は,このカップルが 127 個直列になっています.写真 15-4 のペルチェ素子 から得られる電力は,温度差 50 ℃で 0.23V,15mA と極めて小さく,本章では 10 個を直列に接続してい ます. ● 電力を取り出す基本回路 ペルチェ素子は熱電発電機(TEG)とも呼ばれています.ペルチェ素子の出力電圧は高温側と低温側 の温度差に比例します.従って温度差が数℃と小さいときには,数十 mV と小さな起電力しかありませ ん.しかし電流駆動能力は大きく,発電していることに変わりありません. 図 15-5 は,20mV から動作する昇圧電源回路です.主にペルチェ素子をターゲットとして開発され た LTC3108 または LTC3108-1(リニアテクノロジー)を使っています.マイコンや OP アンプを駆動可 第 5 部 176 第 15 章 温度差発電で聞く AM ラジオ PE1 ペルチェ素子 + − T1 1:100 ① C in C1 ③ C2 ② 5.25V Cb Z1 5.25V D1 ④ SW D2 ④ C2 Tr1 ⑤ R1 図 15-6 0.数 V と低い電圧向け昇圧コンバータの構成 発振回路とチャージポンプ回路で構成される 図15-6中の④点 (2V/div) 出力電流 (Vout =0V) 1200 出力電流[μA] 1000 図15-6中の②点 (50mV/div) 70 C 1 =1000pF 800 50 効率 (Vout =4.5V) 40 30 600 出力電流 (Vout =4.5V) 400 図 15-7 0 昇圧電源回路の発振波形 Vin = 20mV,1:100 トランスを利用 20 10 200 10μs/DⅠV 60 効率[%] 1400 0 100 200 300 400 0 500 入力電圧Vin[mV] 図 15-8(4) LTC3108-1 入力電圧-出力電流特性 入力電圧が大きくなると効率が下がる 能な 2.2 〜 5.25V の電圧を発生します. この回路の動作を,図 15-6 により説明します.ペルチェ素子 PE 1 の出力電圧は直流です.従って, そのままではトランスにより昇圧できません.そこで Tr 1 によって,この電圧をスイッチングします. しかし,ペルチェ素子の出力電圧は,数十 mV と極めて低く,直接 Tr 1 を駆動できません.そこで巻き 数比が 1:100 と大きいトランス T1 を介してゲートのスレッショルド(数 V)以上の電圧を発生させます. T1 の 1 次側①は,コンデンサ C in により交流的に接地されています.また,2 次側の④も接地されて いますが,図 15-6 のような巻き線方向(・が巻き始め)のため,③に発生する電圧は②とは位相が反対 です.Tr 1 のゲートとドレインは位相が反対ですから,全体として正帰還つまり発振回路になります. これによって図 15-7 のような定常的な発振波形が得られます.発振周波数は約 50kHz です.この出力 波形は,正の半波では D 2 により C b を充電し,負の半波では D 1 により C 1 を充電します.なお,C 2 は発 振用のコンデンサであり,電荷の充電には関係ありません. 図 15-6 は全体として倍電圧整流回路ですが,この回路を多段にしたものが一般にチャージポンプと 15-2 構造部と回路の製作 177 呼ばれることから,この回路もチャージポンプと言って良いでしょう.出力電圧は一定とはならない ので,ツェナー・ダイオード Z 1 によって 5.25V に制限します. 入力電圧対出力電流特性は図 15-8 にようになります.このように出力電流は 1mA 以下であり,後述 する製作例のようなイヤホンで聴くラジオでは連続的に使えますが,マイコン回路や温度テレメータ のような数十 mA が必要な用途では工夫が必要です.そのポイントは間欠駆動です.数十秒に 1 回,短 時間だけ動作するような回路,例えば風車電力を利用した LED 電飾看板の製作例のように構成するの です.なお,図 15-8 の効率のピークは巻き数比に関係します.入力電圧が数百 mV と大きいときは, 巻き数比を 1:50 や 1:20 などと低くすると効率を改善できます. トランスは LPR6235-752SML(Coilcraft 製)が適しています.この IC を使った類似の回路が共立電子 から,トランスと周辺回路の基板付きで販売されています. 15− 2 構造部と回路の製作 ● ペルチェ発電機を組み立てる 40 ℃くらいの温度差での,素子 1 個当たりの起電力は 0.2V 程度ですから,ラジオを鳴らす最低電圧 である 1.5V を得るためには,10 個程度を直列にする必要があります. 接続には圧着型の連結端子を使います.高温側はアルミ板,低温側(放熱側)は,アルミ・ブロック のヒートシンク(熱抵抗 1 ℃/W 以下)を使います.ペルチェ素子の両面には熱伝導テープを貼り,その 上にシリコーン・グリスを塗布します.また,高温側の熱がヒートシンクに直接逃げないような構造 にするために,断熱材を使います. せっこう 組み立ては図 15-9 を参考にしてください.断熱材は,天井に張る石膏ボードを使いました.のこぎ りで簡単に切断でき,価格も安く,ホーム・センタで入手可能です.石膏ボードをビスで固定すると きは,アルミ・アングルを使ってボード全面に力が分散するようにします.写真 15-5 は,完成した発 電ユニットです. ● 七輪収納ボックス兼スピーカ・ボックスの製作 熱源として炭火を使うので,コンロとしては七輪が適当です.そこで,炭焼料理に使うミニ七輪を 使うことにします(写真 15-6) . 七輪の上に発電機のアルミ板を固定するための台座は,スピーカ・ボックスを兼ねた木製の火鉢に します.炭火と木枠の間の断熱材には,前述の石膏ボードを使い,木の部分が七輪の火で焦げないよ う配慮します.図 15-9 に組み立て図を示します. ● ラジオ回路を組み立てる 市販されているペルチェ素子は発電用に作られたものではないので,得られる電力も限られます. したがって図 15-10 に示す程度の小電力回路が負荷として適当です. ラジオ回路には,入手が容易なワンチップ・ラジオ IC LMF50 1(ミツミ電機)を使います.中波ラジ オ放送の周波数は 535k 〜 1605kHz ですから,この範囲を受信できるように設計しなければなりません. したがって,通常は少なくとも 515k 〜 1650kHz をカバーするようにします.また,同調周波数は, 1 /(2π L 1VC 1 )です.L 1 はバー・アンテナでインダクタンス 620μH,VC 1 はポリバリコンで最大容量 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 178 第 15 章 温度差発電で聞く AM ラジオ ペルチェ素子の両面に熱伝導シート30×30 を貼り付け,その上にシリコーン・グリス を塗布する 上側断熱材 218×48×9 石膏ボード 熱伝導板(高温側) (280+80)×155×1.5 t アルミ板 下側断熱材 218×48×9 石膏ボード ペルチェ素子×10個 直列接続 ヒートシンク 159×(70〜100) アルミ ※アルミ・アングル 200mm, 12mm幅,1t 上下2か所 素子固定用断熱材 200×70×9 石膏ボード スピーカ取り付け板 200×150×12 合板(接着) ※ ※ スピーカ上下板 175×40×12(2枚) 固定ビス L=50mm M3 スピーカ 側板 128×40 ×12 2枚 スピーカ裏板 200×128×9 石膏ボード 仕切り板 200×128 ×17 桧板 上側板 270×75×9 石膏ボード 下側板 270×40×9 石膏ボード 仕切り板断熱材 200×128×9 石膏ボード 図 15-9 七輪トレイ 200×176×9 石膏ボード トレイ取っ手 176×37×9 176×15×9 接着 ラジオ基板取り付け材 198×25×2 t アクリル板 放熱器固定枠 200×130×1 t アルミ・アングル12mm幅 下板 350×200×17 桧板 [単位:mm] ペルチェ発電機とラジオ付き炭火コンロの作りかた 180pF(トリマ最大時)です. トリマは最大 15pF ですから,トリマ中央で 180 − 8 = 172pF のとき,487kHz が下限周波数になりま す.また, VC 1 の最小容量は 7pF ですから,トリマが 8pF とすれば合計 15pF となり,上限周波数は 1650kHz となります. IC 1 のゲインは 70dB と極めて高いため,パターン設計に気を付けないと発振します.しかし若干の 正帰還はゲイン・アップになる(再生方式)ので,発振音(ピー音)がある程度残っても同調点で消えれ 15-2 構造部と回路の製作 179 第 1 部 第 2 部 第 3 部 発電側 写真 15-5 写真 15-6 温度差発電ユニットを組み立てる 使用したミニ七輪(径 15cm,高さ 12cm) ペルチェ素子を10個直列にする 表 15-1 使用したペルチェ 素子の仕様 項 目 定格電圧 4 〜 16.8 V 電流 5 Amax 吸熱量 44 Wmax 温度差 70 ℃max 150 ℃max カップル数 127 外径 3 × 3 cm 厚さ 3.8 mm LC 1 I C1 R1 C1 R4 R3 I C1 LMF501 L1 620μH (ミツミ電機) C 3 3 C1 VC 1 180p 0.01μ 0.1μ 1 2 100k C2 0.1μ 電圧増幅 C6 R6 1.5k 0.1μ C4 0.01μ Tr1 2SC1815 R 4 (東芝) 270Ω 電流増幅 Tr2 2SC2120(東芝) SP1 8Ω ポリバリコン ダイナミック・ スピーカ ラジオ部の回路 +V R3 R5 R6 Tr1 LC 2 R5 8.2k バー・アンテナ R2 C3 R 2 1k ワンチップ・ラジオ I C 図 15-10 C2 100μ R 1 100k 12 V 使用温度 C5 AGC設定用 AGCループ 電圧範囲 第 5 部 PE1 PE2 PE3 PE4 PE5 PE6 PE7 PE8 PE9 PE10 値 SP− SP+ Tr2 C4 C5 C6 GND 図 15-11 基板のパターン図(部品面視) 写真 15-7 部品実装後のラジオ基板の外観 ば良しとすべきです.IC 1 のような回路はストレート方式と言って,聞いていて疲れない自然な音質が 魅力です. 図 15-11 にパターン図を,写真 15-7 に完成した回路基板を示します. 第 4 部 180 第 15 章 温度差発電で聞く AM ラジオ バー・アンテナ ポリバリコン ラジオ基板 写真 15-8 表 15-2 製作したラジオ・ブロックの外観 使用した電子部品の一覧 参照番号 品 消し壷 名 値 個数 IC1 ワンチップ・ラジオ IC (ミツミ電機) LMF501 1 Tr1 トランジスタ(東芝) 2SC1815 1 Tr2 トランジスタ(東芝) 2SC2120 1 L1 バー・アンテナ 620 μH 1 VC 1 ポリバリコン(+ツマミ) 180 pF SP1 ダイナミック・スピーカ (φ 3 インチ) 1 8Ω 1 0.01 μF 2 C 1,C 4 セラミック・コンデンサ C 2,C 3,C 6 積層セラミック・コンデ 0.1 μF ンサ 3 C5 電解コンデンサ 100 μF 1 R 1,R 3 100 kΩ 2 R2 1 kΩ 1 270 Ω 1 R5 8.2 kΩ 1 R6 1.5 kΩ 1 30 × 30 mm 1 R4 PE1 〜 PE10 カーボン抵抗,1/6 W ペルチェ素子, 5 A タイプ バーナ 火起こし 写真 15-9 炭火起こし器具(バーナ,火起し,火消し壺) 基板,バー・アンテナとポリバリコンを写真 15-8 のようにアクリル板に取り付けて完成です. 表 15-2 に電子部品の一覧を掲げます. 15− 3 温度差発電ラジオの使用方法と結果 ● 炭火を起こすこつ 電気やガスに慣れた人は,炭火をやっかいなものと思いがちですが,写真 15-9 のような火起こし道 具を使えば,簡単に着火/消火できます.炭火の上をアルミ・プレートで覆うので,外部で最初によく 火を起こしてから装着します. 七輪下部の空気窓で火力を調節します.一酸化炭素中毒を防ぐために,室内で使うときは,換気が 必要です. 15-3 温度差発電ラジオの使用方法と結果 120 181 第 1 部 3 高温側温度 出力電圧(150Ω負荷) 80 2 60 放熱器温度 40 1 出力電圧[V] 温度[℃] 100 20 0 0 図 15-12 2 4 6 8 10 時間[分] 12 14 0 16 各部の温度と出力電圧の推移 ● 高温側と低温側の温度は時間とともに一定になる 上記の要領で炭火を起こし,七輪をセットしたあとの高温側(アルミ板のペルチェ素子直近)と低温 側(放熱器)の温度を測定したものが図 15-12 です.高温側と低温側は最初は同じ温度ですが,アルミ 板のほうは炭火で熱せられるとともに上昇していきます.低温側(放熱器)は温度が上昇してほしくな いのですが,熱抵抗があるため徐々に上昇します.しかし,その上昇スピードは時間とともに緩慢と なり,ある点で平衡状態になります. 最終的な温度差は約 50 ℃です.高温側は 110 ℃で安定しており,表 15-1 の最高使用温度 150 ℃に対 して余裕があります. 高温側は,炭火の温度に比べて十分に低くなっています.これは,アルミ板自体に放熱があること と,アルミは銅板に比べて熱伝導特性が悪いことが功を奏しています.また,温度差 70 ℃ max という仕 様もクリアできています. ● 炭火で聞くラジオの音もまた格別 地熱は火山地帯でないと得られないことから,地熱については実験だけにとどめ,装置の熱源とし て炭火を代用しました. 一連の実験は,熱エネルギーとともに,ペルチェ(ゼーベック)効果や,熱伝導,再生ラジオなどの 原理を考える良い機会となります.特にペルチェ効果は,電子のポテンシャルや金属原子の熱振動エ ネルギーに関係しており,熱と電気の関係を理解するうえで好材料です. B 参考・引用*文献 B (1)ラジオ用ワンチップ IC,LMF501 データーシート,㈱ミツミ電機. (2)川上正光;電子回路・Ⅴ,p.241,昭和 42 年,共立出版㈱. (3)漆谷正義;パワー LED 駆動用 IC の特徴と動作実験,トランジスタ技術,2006 年 2 月号,p.154,CQ 出版社. (4)* LTC3108-1 データーシート,超低電圧の昇圧コンバータおよびパワーマネージャ,㈱リニアテク ノロジー. 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 182 第16 章 ラジオ IC,エタノール型燃料電池, 電気 2 重層キャパシタ 4 個で作る 燃料電池で聞く AM ラジオ 燃料電池は公害物質を発生しないクリーンなエネルギーです.また,熱を介しない直接発電なので, 無駄な熱を放出することもありません.しかし,燃料電池はプラチナやパラジウムのような貴金属を触 媒として使うため,いちから製作するには費用がかさみます.また,硫酸や塩酸のような薬品を扱うた め,化学実験のできる環境も必要です. そこで,比較的容易に入手できて,腐食性薬品も使わない,固体高分子型の燃料電池のキットを利用 することにします.燃料電池の出力電圧は 1 個が 0.5V 程度であり,電子回路を動かすには低すぎます. かと言って,多数直列にして使えるほど廉価なものではありません.そこで,専用の昇圧電源回路を製 作して,数個の燃料電池でも電子回路を動かせるように工夫してみましょう(写真 16-1,写真 16-2). 16− 1 燃料電池の発電のしくみ ● 燃料電池は電池ではなく発電機 燃料電池は,電極の構造などは電池に似ていますが,初めからエネルギーを蓄えているわけではなく, 水素などの燃料を供給してはじめて電気が出てきます.したがって,電池というよりは,発電素子と言 うべきものです.反応は,例えば, 2H2 + O2 → 2H2O のように,水素が燃焼して水になるという簡単なものです.この際,石炭の燃焼, C + O2 → CO2 のように公害物質である二酸化炭素が発生しません.これがクリーンと言われる理由です. ● 熱の代わりに電気エネルギーが出てくる 水素を燃やすと熱が出ますが,燃料電池は熱エネルギーの代わりに電気エネルギーが得られます.燃 焼といっても触媒の作用による,炎の出ない燃焼です.燃焼ですから,やはり熱も出ます.このとき, 余分な発熱が少ないほど効率の良い燃料電池です.電気が出てくるメカニズムは次のようになります. マイナス極(水素側)の反応は, 2H2 → 4H++ 4e− であり,プラス極(酸素側)の反応は, O2 + 4H++ 4e−→ 2H2O 16-1 燃料電池の発電のしくみ 183 第 1 部 第 2 部 第 3 部 PEM−004DM 第 4 部 J2115 メタノール燃料電池 昇圧回路 写真 16-1 使用したメタノール燃料電池の出力電圧は約 0.65V.電子回路を動作させるためには後段に昇圧 回路が必要 昇圧回路 水素ボ 水素 水素ボンベ ボンベ PFC-ED2F 写真 16-2 使用した水素燃料電池の定格は 2V だった.昇圧 回路を介して電子ペットを動かした です.陽子を内部の透過膜に通すことで電位差(電子の数の偏在)が発生します.したがって,外部回 路に電流(つまり電子)を流すことで,電子がマイナス極から出て,プラス極に入ります.すると,プ ラス極では,酸素と水が電子と反応して水酸化イオン OH−になります.これが透過膜から出てきた陽 子と結合して水 H2O になります. 第 5 部 184 第 16 章 燃料電池で聞く AM ラジオ + − 3 2.5 パージ・バ パージ バルブ ルブ 電圧[V] 水素を 水素 水素を注入する を注入 注入す する 負荷68Ω 2 1.5 1 負荷6.8Ω 0.5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 時間[秒] 図 16-2 出力電圧の時間的変化 写真 16-3 水素を使用する燃料電池 PFC−ED2F の外観 (中村理科工業) −電極 +電極 O2 H2O Oリング ゴム板 MEA ゴム・ リング ゴム板 ガイド・ パイプ H2 パージ・ バルブ Oリング ボルト ナット 図 16-1 補強板 端子板 酸素 端子板 取り入れ板 補強板 ナット 燃料電池 PFC−ED2F の構造(1 枚セルの場合) 16− 2 水素を燃料とするタイプで実験 ● 固体高分子型燃料電池の構造 写真 16-2 の実験では,水素を燃料とする燃料電池として,固体高分子型の PFC − ED2F(中村理科工 業)を使いました.これは,写真 16-3 のように,セルが 3 枚直列になっています.左側から水素が入っ て来て,右側へパージ(注 1)します.定格は 2V,0.6W です.構造は図 16-1 のようになっています.構造 材,電極,パッキンなどを除くと,実質は MEA であることがわかります. MEA とは,膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly)の略で,電解質である固体高分子膜(ナ フィオン膜とも言う)の両側に白金の触媒を塗布し,さらにその上に多孔質で導電性のガス拡散層を貼 り付けたものです. ● 5cc の水素で約 30 秒間運転できる 図 16-1 を見ると,右端にパージ・バルブというものが付いています.これは常時閉じています.左 (注 1)パージ:燃料電池に入っている燃料以外の気体を外部へ排出すること 16-3 メタノールを燃料とするタイプで実験 185 側から水素を送っても,燃料電池内部には最初は空気が入っているので,起電力は発生しません.パー ジ・バルブを押して空気を押し出すと,発電を開始します.図 16-2 は,パージ・バルブを開いたあと の出力電圧の変化です.負荷 6.8 Ωでほぼ定格電力となります.この場合,約 30 秒で発電終了となりま 第 1 部 第 2 部 3 ると,約 1.7cm(= 1.7cc)です.圧力が 3 気圧として,1.7 × 3 = 5cc の水素によって,約 0.6W で 30 秒, つまり 5mW/h の発電をしたことになります. 第 3 連続的に使うには,水素を循環させるメカニズムが必要になります. 部 した. 水素ボンベのバルブは一瞬開くだけですから,燃料はビニル・ホースの容積だけです.これを計算す ● 水素ガスの取り扱いに注意 水素というと,昔の気球船が事故で燃え落ちる光景を思い浮かべてしまい,非常に危険な印象を受け ます.しかし,毒性もなく無臭であり,都市ガスなどよりある意味安心です. 水素ガスは,専用の「小型燃料電池用水素」 (写真 16-2 右)を使います.このボンベは,0.3MPa(注 2)の 圧力(大気圧の約 3 倍)で 2 リットル封入されています.したがって,高圧ガスではないので比較的安全 ですが,可燃性ガスであることに変わりはなく,火気は厳禁です.室内にある一定の範囲の濃度で混入 すると火気により爆発するので,換気が必要です. 16− 3 メタノールを燃料とするタイプで実験 ● ダイレクト・メタノール型燃料電池を組み立てる 水素ガスの取り扱いは上に述べたように少々面倒です.そこで,扱いの容易な液体燃料を使う燃料電 池キット PEM − 004DM(ケミックス)を使ってみましょう.燃料としては,メタノール(メチル・アル コール)を使います.ダイレクト・メタノール型燃料電池(以下,DMFC)と呼ばれるものです. 写真 16-4 は使用する部品です.これを写真 16-5 の順序で組み立てていきます.部品を扱うときは, ゴム手袋をはめ,素手では触らないようにします.特に MEA は不純物に弱いので注意が必要です. MEA には極性があり,アノードと書かれた面が燃料極(マイナス)です.セパレータはカーボン製で, 落とすと割れるので注意を要します. ● 最大出力が得られるポイントがある (注 3)を上部の燃料供給穴から注入します.タンクの容量は約 スポイトで,メタノール水溶液(3wt %) 1cc です.燃料を注入したあと,図 16-3 のように徐々に電圧が上昇していきます. 電流−電圧特性は図 16-4 のようなものです.太陽電池と同様に,最大出力が得られる電流というもの があります.このときの電圧は約 0.3V です. ● メタノール燃料電池の取り扱い上の注意 メタノールとその蒸気は有毒物質です.皮膚や目に触れたり,飲んだりすると健康に支障をきたす恐 れがあります.したがって,実験中は換気を十分に行う必要があります.また,引火性があるので,火 気に気を付けます. メタノール燃料電池は短絡すると故障します.負荷を接続して,端子電圧が 0.2V 以下になるような (注 2)MPa :メガ・パスカル.圧力の単位.1 気圧≒ 100kPa = 0.1MPa である (注 3)wt %: weight %.溶液を混合するときに,体積ではなくて,重量で量って混ぜ合わせること 第 4 部 第 5 部 186 第 16 章 燃料電池で聞く AM ラジオ リア プレー 燃料極クリ 燃料極ク ア・プ レート 空気極アク リル プレー 空気極 空気極ア アクリ ル・プ レート 締め付けボル 締 め付けボルト ゴム栓 ゴ ム栓 コーン ガスケッ (B) シリコ ーン・ガ スケット ( B) 空気極カーボン 空気極 空気極カ カーボン・ セパレータ セ パレータ 写真 16-4 燃料極カーボン 燃料極 燃料極カ カーボン・ セパレータ セ パレータ 膜電極接合体 (MEA) ( MEA) MEA ) コーン ガスケッ (A) シリコ ーン・ガ スケット ( A) DMFC 型燃料電池 PEM−004DM の部品(ケミックス) 場合は過負荷です.0.1V 以下は短絡と考えられます. メタノール水溶液の濃度を高めると出力は上昇しますが,濃度は 5 %以下を厳守します.これ以上の 濃度になると,アノード側からカソード側へ,ナフィオン膜を通してメタノールのクロス・リークが発 生し,MEA 電極が侵されます.また,通常の濃度でもリークがわずかながらあるので,数日放置して おくと燃料タンクは空になります. 出力は 10m 〜 50mW で,温度に依存します.60 ℃で最大となります.燃料のメタノールがなくなる と出力は急速に低下しますが,タンクにはまだ水溶液が残っています.これは水ですので,次の燃料を 注入するまえに抜き取ります. 16− 4 昇圧回路の検討と製作 ● 電子機器を動かすには昇圧電源が必要 燃料電池の出力電圧は,セル当たり 0.3 〜 0.7V と低いので,通常の電子機器に接続するには昇圧回路 が必要です. 低電圧でも動作する昇圧型のスイッチング・レギュレータ IC としては,MAX757(マキシム)が比較 的入手が容易です.カタログでは,入力電圧 0.7V から動作すると書かれていますが,仕様をよく見ると 「起動後は 0.7V でも動作する」という意味のようです.しかし,燃料電池との組み合わせでは 0.7V でも起 動するようなので問題ないと思います.ただし,0.7V 以上を得るためには,最低 2 個のセルが必要です. 16-4 昇圧回路の検討と製作 187 第 1 部 第 2 部 (a)空気極セパレータの取り付け (b)ガスケット A1 の取り付け 第 3 部 (c)MEA の取り付け 第 4 部 第 5 部 (d)ガスケット A2 の取り付け (e)燃料極セパレータの取り付け (f)ガスケット B の取り付け (g)クリア・プレートの取り付け (h)仮り締め (i)増し締めして完成 DMFC 型燃料電池 PEM−004DM の組み立て手順 0.7 出力 0.5 0.5 電圧[V] 出力電圧[V] 0.6 0.4 0.3 0.2 30 0.4 電圧 0.3 20 0.2 10 0.1 0.1 0 40 0.6 0 5 10 15 20 25 30 0 0 時間[分] 図 16-3 メタノールを注入後の端子電圧(負荷なし) 50 100 電流[mA] 図 16-4 DMFC の電流−電圧特性 150 0 出力[mW] 写真 16-5 188 第 16 章 燃料電池で聞く AM ラジオ パワー・インダクタ. 直流抵抗の低いもの を選ぶ D1 1N5817(STマイクロ エレクトロニクス, など) ショットキー・バリア・ダイオード. VF の低いものを選ぶ 1 8 SHDN LX 2 7 FB GND 3 6 REF OUT 4 5 LBO LB I C3 L1 15μH 入力電圧 1〜2V Vin C1 100μ コンバータ I C.0.7Vか ら動作する 図 16-5 C2 I C1 MAX757 (マキシム) 0.1μ R3 100k R1 75k R2 56k 100μ Vout 出力電圧 3〜5V 出力電圧設定用 ここの電圧が 1.25Vになるよ うに制御される 出力電圧が 0.3 〜 0.7V と低い燃料電池用の昇圧電源回路 ● MAX757 を使ったスイッチング電源を作る 図 16-5 に,燃料電池と組み合わせる昇圧電源の回路を示します.入力電圧は 1 〜 2V で設計しました が,0.7V でも動作します.ただし,1V 以下ではレギュレーションは低下します(負荷が増大すると出 力電圧が低くなる). 出力電圧は R 3 で調整します.多回転ポテンショメータを使うと調整がしやすくなります.出力電圧 Vout は,R 1 + R 3 = R とすれば, Vout[V]= 1.25(R + R 2 )/R 2 で計算できます.L 1 は,入力電圧が低い場合は小さな値が適しています.ここでは 15μH としましたが, 10μ〜 22μH であれば大差ありません.直流抵抗の小さい,パワー・インダクタを使います.また,D1 も順電圧降下の小さいものを選択します.起動しないときは,入力電圧がそのまま出力に出てくるので 判断できます. 写真 16-6 はユニバーサル基板に組んだようす,図 16-6 はパターン図(部品面視)です.グラウンド・ ラインが IC の下を通るようにパターンを引くのがポイントです. 表 16-1 に使用部品の一覧を掲げます.燃料電池は,次のメーカのものを購入しました. (1)燃料電池実験セット B 型および水素缶:㈱ナリカ shttp://www.rika.com/(代理店からの購入にな る.学校向け教材店で取り扱っている) (2)燃料電池組立キット PEM −004DM :㈱ケミックス shttp://www.chemix.co.jp/[代理店からの購入 になる.例えば,西日本ラジオ㈱ TEL : 092−263−0177] (3)メタノール燃料電池セル J2115(写真 16-1,現在は F111 として販売):㈱メガケム shttp:// megachem.co.jp(ネット通販) ● 燃料電池を回路の工夫で使いこなそう 固体高分子型燃料電池の中味は,実質的には MEA です.また,水素タイプもメタノール・タイプも 構造はあまり変わりません.したがって,この種の燃料電池を組み立てることには,さほど意味はない かもしれません. しかし,燃料電池を使ってみると,いろいろと面白い現象が出てきます.昇圧電源と組み合わせると, 16-5 エタノールを燃料とするタイプで実験,AM ラジオを聴く 189 第 1 部 Vin C1 D1 C3 Vout L1 8 I C1 GND GND 1 R3 R2 C2 R1 V -Adj 写真 16-6 昇圧電源回路基板(部品面) 図 16-6 パターン図(部品面視) 表 16-1 電源回路の部品一覧(ユニバーサル基板は半分に 割って使う) 参照番号 IC1 C 1,C 3 C2 D1 L1 R1 部品名 値 ス イ ッ チ ン グ・ レ ギ ュ MAX757 レータ IC 電解コンデンサ 100μF,25 V 個数 セラミック・コンデンサ 0.1μF,50 V ショットキー・バリア・ 1N5817 ダイオード パワー・インダクタ 15μH 1 カーボン抵抗 R2 R3 ― 1 2 1 1 75 kΩ,1/6 W 1 56 kΩ,1/6 W 1 多回転ポテンショメータ 100 kΩ 1 ユニバーサル基板 72 × 47 mm 1 1V 程度の電圧でも意外とスイッチング・レギュレータの起動が良いのも驚きです.また,2V 出力の水 素タイプで 4.5V,120mA の電子ペットが元気に動きます.このような低電圧タイプの昇圧電源を使っ て,燃料電池の実験や工作の可能性を拡げていただけたら幸いです. 16− 5 エタノールを燃料とするタイプで実験, AM ラジオを聴く さらにクリーンでバイオ燃料として注目され,経済的なエタノールを燃料とする,ダイレクト・エタ ノール型燃料電池(DEFC)があります.エタノールは水素を多く含んだ液体で,メタノールよりもエ ネルギ密度が高く,燃焼により公害物質を発生することがありません.写真 16-7 に DEFC 型燃料電池 の外観を示します. ● 得られる出力は 1mW 出力は 1mW 程度とごくわずかです.図 16-7 に DEFC の電流−電圧特性を示します.エタノールの濃 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 190 第 16 章 燃料電池で聞く AM ラジオ 電圧[V], 出力[mW] 1.5 電力 1 0 0 混合液 排出 電圧 0.5 5 電流[mA] 25 出力電圧[V] 図 16-7 エタノール型燃料電池 FCJJ −22 の 電流−電圧特性 混合液 注入 写真 16-7 エタノール型燃料電池 FCJJ − 22(Horizon Fuel Cell Technologies)の燃料燃焼部 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 代理店はテクノエキスプレス(http://www.xpress.co.jp/)など 2 4 時間[min] 6 図 16-8 エタノール型燃料電池 FCJJ−22 にエタ ノールを注入した後の端子電圧(無負荷) 度は 10%程度です.例えば,エタノール 6cc +水 54cc = 60cc 混合液とします.写真 16-7 の左側のパイ プからこの溶液を流し,右上のパイプから排出します.一定量流したら,排出側のパージ・バルブを 閉じます.これで 5 〜 6 時間動作します.燃料を注入した後,図 16-8 のように徐々に電圧が上昇してい きます.定常電圧になるまでに約 3 分かかっています. 燃料のエタノール溶液は,燃料を使い切ると,上記の反応により,酢酸とアセト・アルデヒド溶液 となります.これはパージ・バルブを開けて排出し,新しいエタノールを供給します. エタノールの濃度は 5 〜 15%とします.しかし,濃度を高くしても出力の著しい上昇は期待できませ ん.これはイオン交換膜の触媒能力に限界があるためです.また,20%以上の濃度では電極が侵されて 使用不能となるので注意が必要です. 出力は温度に依存します.温度が上昇すると,触媒による化学反応が加速し,また,電解質膜も活 性化して水素イオン交換が活発になるからです. ● 電力を取り出す基本回路 得られる出力電圧は直流ですから,DC モータを接続すればファンを回すことができます (写真 16-8). 約 300rpm 回転時の電池電圧は 0.28V,電流は 4.4mA 程度です. 図 16-7 を見ると最大出力となる端子電圧は 0.3 〜 0.4V です.従って電子回路を動作させるには,最低 でも 4 〜 5 個の燃料電池を直列に接続する必要があります.このようなタイプの商品は燃料電池スタッ クと呼ばれています.一方,取り出せる電流は燃料電池の電極表面積に比例します. ● 製作例…ラジオを 8 分程度動かした DEFC 型燃料電池は,小型のものでも一般に高価です.従って燃料電池 1 個で動作するように,昇圧 16-5 191 エタノールを燃料とするタイプで実験,AM ラジオを聴く 第 1 部 受信回路 第 2 部 第 3 部 混合液 蓄電用キャパシタ 写真 16-8 エタノール型燃料電池 FCJJ−22 でモータを回しているようす 100k 写真 16-9 エタノール型燃料電池 FCJJ−22 で AM ラジオを 8 分動かすことができた ロータリ・スイッチ 1k Y AMラジオ 受信I C I C1 LMF501 620μH (ミツミ電機) 3 1 2 180p 0.1μ 0.01μ 図 16-9 0.1μ 10k 10F 2.5V X X 10F 2.5V 10F 2.5V 100k 0.1μ Y Tr1 2SC1815 (東芝) 10F 2.5V クリスタル・ イヤホン 270Ω + 燃料 − 電池 電気二重層キャパシタ 4個を使った昇圧回路 エタノール型燃料電池で動作するラジオ回路 回路を追加したラジオの回路です(図 16-9) .写真 16-9 はその外観です. ロータリ・スイッチを X 側から Y 側にむけて切り替えて行きます.燃料電池 FUEL1 の両端にテスタ (ディジタル)を接続しておき,電池電圧(つまり電気二重層キャパシタ 1 個当たりの電圧)が 0.3V に なったら次の接点に切り替えて行きます.5 段目に切り替えるとラジオを聞くことができます.聴取時 間は 8 分程度です.このときの混合液使用量は 0.5 〜 1cc でした. B 参考文献 B (1)燃料電池実験セット B 型取扱説明書,B10−2051,中村理科工業㈱. (2)小型個体高分子形燃料電池組立キット,PEM−004DM,㈱ケミックス. (3)早瀬雅彦;燃料電池の発電のしくみと実際,トランジスタ技術,2005 年 8 月号,CQ 出版社. (4)MAX756/757 仕様書,19−0113,Rev.2,1/95,Maxim Integrated Products, Inc. (5)FCJJ − 22 エタノール燃料電池(バイオエネルギキット)ユーザマニュアル,Horizon Fuel Cell Technologies[日本代理店はテクノエキスプレス㈱] 第 4 部 第 5 部 192 第17 章 ハブダイナモ,高輝度 LED 26 個,3 端子レギュレータで作る 人力による 2 次電池充電器&テール・ランプ モータとエンジンを積んだ「ハイブリッド・カー」は,減速時にエネルギーを回収しているようすが パネルに表示され,乗っていてとても楽しいと聞きます.これを回生ブレーキと呼びます.電車に回生 ブレーキが使われて久しいのに,自動車にはようやく採用されはじめたところです.自転車に乗ってい るときも,下り坂で摺動式のブレーキをかけるのは,何かもったいない気がします. 最近は,自転車の発電機にハブダイナモを使ったものを多く見かけます.ランプには光電素子が入っ ていて,夜間だけ点灯するようになっています.昼間にこの出力を利用すれば,下り坂はもちろん, へいたん 平坦な道でも電力を取り出せることは容易に推測できます.そこで今回は,このエネルギーを昼間は 2 次電池に蓄えておき,夜間に高輝度 LED を使ったテール・ランプに利用します(写真 17-1). 17− 1 自転車をこいで 2 次電池を充電したい ● 発電しているようすがわかると元気が出る リム・ドライブの発電機にくらべて,ハブダイナモは摩擦による損失が少ないので,自転車のハブ (タイヤの軸)に取り付けて常時回転させておくことができます.定格負荷がある場合,どの程度余分 な力がいるのかと言えば「やや重いかな?」と感じる程度です.筆者の場合,その差はほとんどわかり 充放電制御回路と 充放電制御回路 と LEDバ LED LEDバー表示部 バー表示部 LEDに LED LEDによる による テ テール ール・ラ ランプ ンプ 写真 17-1 発電のようすが バー・グラフで表示される 2 次電池充電器&テール・ ランプ 17-1 表 17-1 自転車をこいで 2 次電池を充電したい 運転状態と充電電流 運転状態 + 速 度 充電電流 [km/h] [mA] 頑張ってこぐ 20 220 ふつうにこぐ 16 180 上り坂で遅い 10 110 図 17-1 充電電流の検出方法と グラウンド・レベル ハブ ダイナモ 倍 電 圧 整 流 回 路 193 第 1 部 レギュ レータ 2次 電池 − 自転車の車体 電池の マイナス端子 R 0V近辺 の入力 OPアンプ VCC まで出 力したい 回路のグラウンド 充電電流の検出用抵抗 ませんでした.人間は 1 〜 2W の発電は苦もなくできるのかもしれません. しかし,負荷があることは間違いありませんから,発電していることを(できれば積算電力も)表示 すれば,自転車をこいでいても元気が出ますし,健康のためにサイクリングに出かけてみようという気 にもなるでしょう. ● エネルギーの収支を計算する 実験の結果,2 次電池の電圧を 6V にしたときの充電電流は表 17-1 のようになりました. 自転車を通勤に使う場合は,往き(明るいと仮定)と帰り(暗いと仮定)で乗車時間はふつうは同じで す.従って,発電量と消費量のバランスを取るためには,消費電流を平均充電電流と同じに設定しなけ ればなりません.なお,夜間だけしか乗らない場合は充電ができないので,このシステムは使えません. 不定期に乗る場合は,昼間の使用時間のほうが長ければ問題ありません. ● アナログ回路が向いている 仕様をまとめると次のようになります. (1)自動点灯/自動消灯とする (2)瞬時発電量を表示する (3)積算発電量を表示する 操作を簡単にするため,スイッチや押しボタンをいっさい設けないことにします.上記の仕様なら, マイコンの手を借りなくてもアナログ回路で実現できます. 低速走行時,自転車用ハブダイナモの発電出力は非常に低い周波数の交流で,電源電圧の変動が大き く,マイコンの電源として適当ではありません.その点では,アナログ回路は電源のレギュレーション 悪化に対する耐性が強く,シビアな環境に向いています. ● 2 次電池のバラスト抵抗を電流検出素子に流用する 充電電流の検出は,図 17-1 のように,2 次電池に直列に小さな値の抵抗 R を入れて,この抵抗の両端 の電圧降下から割り出す方法が簡単です.2 次電池の充電には,直列にバラスト(安定)抵抗が必要です から,これと兼用すれば一石二鳥です. さて,この電圧は非常に小さな値ですから,バー表示や後段の積分回路に必要な数ボルトのレベルま 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 194 第 17 章 人力による 2 次電池充電器&テール・ランプ 3 4 3.5 LED4個 点灯 2.5 2 3個 点灯 1.5 1 1個 点灯 0.5 図 17-2 出力電圧[V] Vout [V] 3 0 0 放電特性 充電特性 2.5 100 200 2個 点灯 300 400 500 Vin [mV] 600 700 800 LED4個 点灯 2 1.5 2個 点灯 1 0.5 積分 コンデンサ 0 C =1000μF 0 330μF 0 1個 点灯 瞬時充電電流を表示するためのレベル区分 図 17-3 3個 点灯 50 17 100 33 時間[分] 150 50 充電電流の積分値を表示するためのレベル区分 で増幅する必要があります.直流信号の増幅には OP アンプを使うのが常道ですが,使用する OP アン プ IC の選択に注意が必要です.特に今回のようにマイナス電源を使用しない場合は,0V 近辺でゲイン があるかどうかが問題です.また,出力電圧もできれば VCC 近くまで欲しいところです.このような要 求を満たす OP アンプは,レール・ツー・レールと呼ばれます. 図から明らかなように,電池のマイナス端子は回路のグラウンドではありません.ついでながら,ハ ブダイナモの片方の極は自転車の車体に接続されています.図の整流回路には倍電圧整流回路を使うた め,この二つのグラウンドには電位差があります.従って回路の筐体やテール・ランプのグラウンドを 車体に接続することはできません. ● 4 個のレベル・インジケータのスレッショルドを決める 図 17-1 の抵抗 R の両端の電圧を横軸に,OP アンプの出力を縦軸に取った特性が図 17-2 です.R の値 は 2.7 Ωとしたので,横軸の値を 2.7 で割れば充電電流になります. 積算発電量は図 17-2 の縦軸の電圧を電流に変換して,コンデンサに充電する積分回路で実現します. 充電電流の積分値の目安として,図 17-2 の 3V(222mA 相当)の一定値が加わったときの,時間に対す るコンデンサ C の電圧(図の縦軸はこれを増幅した OP アンプの出力)を図 17-3 に示します.C は 1 日に 乗る時間で決めます.1 日乗って LED を 3 〜 4 個点灯するようにします.この時間 T は, T[s]= 0.36RC で計算できます. 電解コンデンサの放電による積分保持値が減少するようすは,図 17-3 のとおりです.このように, しばらく乗らずにいると値が減少してしまいますが,もともと電池の絶対的な蓄積容量を表示している わけではないので,あまり気にはなりません. 17− 2 回路の検討と製作 ● 積分回路の後段には CMOS タイプの OP アンプを使う 基板は実装の都合から,PCB1 と PCB2 の 2 枚に分けました.図 17-4 に整流回路,電源スイッチ回路, 17-2 R3 10k 倍電圧整流回路 R4 前照灯へ (昼夜スイッチ付き) 3 V Vout 1 in C5 C6 GND 100μ 0.1μ C4 2 100μ BT1 I NST-POWER I C1b NiMH LM358 ×5 5 7 I C2a 6 R 13 NJU7096 2.7k R 12 27k R 11 6.8k 10k R 15 10M Tr6 2SC1815 NL 夜間 L 充電電流 検出用抵抗 図 17-4 3 2 積分用 コンデンサ 夜間に リセットする PT1 TPS615 (東芝) 明暗 検出 第 1 部 度 CMOS OPアンプ R 20 8 4 100k 5 6 1 R 19 第 2 部 R 21 VR 1 500Ω Tr2 2SC1815 (東芝) 夜間検出用 フォト・トランジスタ +5V R 16 100Ω D2 1N5818 1k Tr1 2SJ533 (ルネサス エレクトロ ニクス) I C3 78L05 BATT+ C 7 330μ M1 R2 D3 1N5818 充電電流に 比例した出力 R 14 300Ω LAMP ニッケル水素 2次電池5個直列 R 10 2.7Ω GEN D1 1N5818 R 1k 1 C 2 10000μ C 1 10000μ LAMP 夜間は充電しない ようにOFFする D4 1S4 ハブ ダイナモ 195 回路の検討と製作 7 180k 4.7k R 23 1k R 24 R 22 NH 100Ω 100k 3 2 R 18 10k 夜間 H I NTEG-POWER I C2b NJU7096 R 17 (新日本無線) 積算充電量に 比例した出力 100k 81 4 I C1a LM358 (ナショ ナル セミコ ンダク ター) 倍電圧整流と積算充電量および夜間検出の回路(PCB1) 電流検出回路,電力積算回路,夜間検出回路を示します.これを PCB1 とします. バッテリ電圧は,ダイナモの定格実効値出力電圧と同じ 6V としました.それ以上の充電電圧が必要 となるため,倍電圧整流回路としました.この倍電圧整流回路の GEN 点での電圧は,47 Ωの負荷を つないで 8 〜 9V となります.少し自転車を動かしただけでも 5 〜 6V あり,最大では 10V 程度でした. このときの電流は 10 ÷ 4.7 ≒ 200mA です. 積分回路は C 7 の充電最大電圧をできる限り小さくすることがポイントです.このため,R13 と R14 で 電圧を分割し,高抵抗の R15 を通じて C 7 を充電します.C 7 に接続される OP アンプは CMOS タイプで ある必要があります.これは微小なバイアス電流が OP アンプから漏れ出して,C 7 を勝手に充電してし まうからです.特に単電源動作のときにこのリーク電流が問題になりますが,レール・ツー・レールの CMOS タイプを選ぶことで回避できます. ● 夜間の検出にフォト・トランジスタを使う 自動点灯は夜間を検出することで実現できます.従来,CdS(硫化カドミウム)を使うとこのような 回路を簡単に設計することができました.しかし現在では,カドミウムは公害物質として種々の規制が 始まっています.そこで今回は,明暗の検出にフォト・トランジスタを使ってみました.図 17-5 は, 秋葉原や日本橋の販売店で手軽に入手できる TPS615(東芝)と,従来の CdS セルの分光感度特性を比較 したものです. CdS セルの特性は人間の眼の比視感度とほぼ同じです.これに対して TPS615 は近赤外にピークがあ り,人間の眼の特性とはかなり異なっています.それでは日暮れの検出に使えないかというと,そんな ことはありません.日没とともに 800nm の近赤外線も急速に減衰していくので,立派に使えます.た 第 3 部 第 4 部 第 5 部 196 第 17 章 人力による 2 次電池充電器&テール・ランプ 紫青緑黄橙赤 100 80 相対感度[%] CdS TPS615 60 40 20 図 17-5 フォト・トランジス タと CdS セルの分光感度特性 の違い 0 0 200 400 600 800 波長 λ[nm] GEN D5 1N4148 D6 IN4007 Tr3 2SC1815 R8 C3 470μ R5 5.6k 100k Tr5 2SC 1815 発電出力 (走行中) R7 +5V R8 1.5k 10k R9 100k R 25 NH R 26 R 27 C 10 L1 220μH C 11 R 46 100μ 11 10 1.5k 28V R 47 図 17-6 R 48 47Ω 47Ω R 28 1.5k VCC 0.1μ I NTEGPOWER R 30 LM339 3 LED1 13 R 35 積算電力 R 31 LED2 14 R 36 270Ω LM339 R 12 270Ω R 33 LM339 5 LED4 2 R 38 4 270Ω I C4B LM339 (ナショナル セミコンダクター) R 43 100k Tr7 瞬時充電電流を 表示する テール・ランプは高輝度 LEDを26個使用する 7 6 LED6 14 R 40 270Ω LM339 1 I C5A 5 4 R 34 270Ω 12 I C5C 1.5k 1.5k LM339 3 LED5 13 R 39 9 8 1k R 37 LED3 1 I C4A 11 10 1k I C4C 7 6 I C5D 5.1k 270Ω 12 9 8 1.5k LED1 LED14 10 COLL ANODE 8 ⁝ ⁝ R 29 EMI T CATH 1.5k BASE R 44 BSDR 27k CLS LED LED13 LED26 CMPI N ×26 FCON SU-560UT(ローム) I NHBT R 45 C 12 SUBSTRT GND 1.2k 330p 5 スイッチング・レギュレータI C. I C6 TL497AC (テキサス・インスツルメンツ) 28Vに昇圧する 7 6 11 12 13 1 3 2 4 C9 I C4D 3.9k 夜間 H 220μ35V 1Ω 22μ POWER 充電電流 コンパレータ I C C8 I NST- Tr2 夜間 L 2SC 1815 NL 夜間かつ走行中(停車後5分以内を 含む)にテール・ランプを点灯する 1200 コンパレータ I C 停車後5分以内であることを検出する BATT+ 1000 R 41 LED7 270Ω LM339 LED8 2 R 42 I C5B 270Ω LM339 2SC1815 (東芝) 積算充電電力を 表示する 5分以上停車する場合は 表示を消す テール・ランプ用レギュレータと LED バー表示の回路(PCB2) だし実際に製品に使えるかというと,これは JIS などの規格と関係してきますので使えるとは限りませ ん. なお,ハブダイナモを搭載した自転車のランプ部分には日暮れになると自動点灯するスイッチが入っ ていますが,ここには CdS セルが使われています. 17-2 R 19 Tr1 R 12 R 18 C5 Tr6 I C2 I C1 C7 R 16 R 15 R 13 R 14 R 20 R 24 R 23 R 22 VR1 C1 DY2 Tr2 R3 2 3 D1 C4 C2 DY1 D2 I C3 GND R 35 R 25 R 26 R 36 I C4 R 37 R 29 I NST-PW 図 17-7 R1 R2 C5 1 BATT− I NST-PW R 28 G D3 R 17 R 27 D C6 第 1 部 S R 11 R 10 D4 197 回路の検討と製作 R 38 GND GND PH+ PH− GEN NH NL C 11 LE1 R 46 R8 L1 D5 LE2 LE4 R7 R 45 D6 R 44 GND LE6 LE7 Tr2 C 10 C 12 LE5 Tr5 R6 R5 C3 I C6 LE3 Tr3 BATT+ LED GEN NH R9 NL GND I NTEG-PW R 39 R 30 R 31 R 40 R 32 I C5 R 41 Tr7 +5V R 34 R 33 LE8 R 42 BATT+ R 43 I NTEG-PW +5V GND パターン図(上: PCB1,下: PCB2,いずれも部品面視) ● 多数の LED の駆動は高電圧で行うのが効率的 図 17-6 に PCB2 の回路を示します.ここには充電電流とその積算量をバー表示する回路,テール・ ランプの LED(全部で 26 個)を駆動するためのスイッチング・レギュレータ,フルオート操作とするた めのトランジスタによるロジック回路を実装しています. LED の駆動は定電流動作とすることが基本です. 今回,テール・ランプには 26 個の高輝度 LED を搭載しています.LED をバッテリ電圧 6V で駆動す る場合,バッテリの電圧降下や LED のVF のばらつきを見込むと 2 個が限界です.この 2 個にバラスト 抵抗を付加したものを合計 13 個用意する必要があります.つまりバラスト抵抗が 13 個必要です. これに対して,図 17-6 のように電圧を 28V に上げれば,バラスト抵抗は 2 個で済みます.このバラ スト抵抗は余分な電力を消費するので,できるかぎり減らしたほうが良いのです.スイッチング・レ ギュレータを電流検出タイプのものにすればベストですが,入手性の点で今回は定電圧タイプのもの を使用しました. 図 17-7 にパターン図(部品面視),写真 17-2 に基板実装のようすを示します. ● 高輝度 LED を多数使って視認性を良くする 自転車専用の道路はまだまだ少なく,自動車と同じ道を走ることがほとんどです.自転車は左側通 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 198 第 17 章 人力による 2 次電池充電器&テール・ランプ (a)PCB1 写真 17-2 (b)PCB2 部品の実装状態 テール テール・ランプ ランプ 発電量の 発電量 発電量のレベル表示 のレベル表示 写真 17-3 テール・ランプ基板の実装状態 写真 17-4 積算充電量の 積算充電量の レベル表示 レベル表示 各基板をケースに収納したようす 行ですから,後ろからの視認性を良くしないと非常に危険です.特に高速で走る車からは 100m 手前で はっきりと視認できる必要があります. 自転車には反射板がありますが,反射板というものは至るところにあり,運転者の注意が散漫になり がちです.みずから発光し,しかも自動車のテール・ランプなみに明るくすればかなりの注意を惹くも のと思われます.写真 17-3 は,LED の配置のようすです.ケースには,100 円ショップで販売されて いる乾電池式 LED テール・ランプの外装を利用しました.自転車に取り付けるようにできており,加 工も容易です. 写真 17-4 は,回路基板をケースに収めたようすです.右の本体ケースは葉書の収納ケース(スチロー ル製)を流用しています.2 次電池用ケースがこの中に入っていますが,これも 100 円ショップで見つけ たものを使っています. 表 17-2 に回路部分の部品表を示します. ● 2 次電池の人力充電器としても使える 自転車は乗用車に比べて非常に振動が大きいため,板の上にバラックで作った試作回路とテスタが, 前かごの中で上下に飛び跳ねます.実験しているときに回路が煙を噴いたこともありました.回路と一 緒にバウンドするテスタが 200mA を示し,これはいけると喜んだことがつい昨日のようです.ともあ れ,ようやくケースに収納できました. 17-2 表 17-2 回路の検討と製作 回路部分の部品表 参照番号 IC1 IC2 品 名 OP アンプ 値,型名など LM358 数量 1 NJU7096 1 IC3 3 端子レギュレータ 78L05 1 IC4,IC5 コンパレータ(4 回路入り) LM339 2 IC6 スイッチング・レギュレータ TL497AC 1 Tr1 P チャネル,パワー MOSFET 2SJ533 1 Tr2,Tr3,Tr5,Tr6,Tr7 小信号トランジスタ 2SC1815 5 PT1 フォト・トランジスタ TPS615 1 BT1 ニッケル水素電池 (単 3) 1.2 V 5 C 1,C 2 10000 μF,6.3 V 2 C7 1000 μF,10 V 1 470 μF,25 V 1 220 μF,35 V 1 C 5,C 4,C 11 100 μF,25 V 3 C8 22 μF,10 V 1 2 C3 C 10 電解コンデンサ C 6,C 9 積層セラミック・コンデンサ 0.1 μF,50 V C 12 セラミック・コンデンサ 330 pF,50 V 1 L1 パワー・インダクタ 220 μH,1 A 1 D1,D2,D3 ショットキー・バリア・ダイオード 1N5818 3 D4 整流用ショットキー・バリア・ダイオード 1S4 1 D5 小信号ダイオード 1N4148 1 D6 整流用シリコン・ダイオード 1N4007 LED1 〜 LED26 高輝度 LED(赤色,50 mA) LE1 〜 LE8 発光ダイオード (赤色) VR 1 半固定抵抗 R 46 R 10 金属皮膜抵抗(1 W) 1 26 8 500 Ω 1 1Ω 1 2.7 Ω 1 R 47 27 Ω 1 R 46,R 22 100 Ω 2 R 35 〜 R 42 270 Ω 8 R 14 300 Ω 1 R 1,R 2,R 23,R 31,R 32 1 kΩ 5 R 45 1.2 kΩ 1 R 7,R 26,R 27,R 28,R 29,R 33,R 34 1.5 kΩ 7 R 13 2.7 kΩ 1 R 25 3.9 kΩ 1 4.7 kΩ 1 R 30 5.1 kΩ 1 R5 5.6 kΩ 1 R 11 6.8 kΩ 1 R 3,R 4,R 8,R 46 10 kΩ 4 R 12,R 44 27 kΩ 2 R 6,R 9,R 17,R 20,R 24,R 43 100 kΩ 6 R 19 R 15 180 kΩ 1 10 MΩ 1 R 21 カーボン皮膜抵抗 (1/6 W) 199 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 200 第 17 章 人力による 2 次電池充電器&テール・ランプ 250 可採期間[年] 200 150 100 50 0 石油 図 17-8(3) 天然ガス 石炭 ウラン 世界のエネルギー資源の埋蔵量 近くの公園に大きな池があり,この周囲 4km ほどが格好のサイクリング・コースです.表示器の 4 段 目の LED が点くかどうか猛スピードでダッシュしたり,積分電力量の新記録にトライしたりしていま す.おかげで肺活量も増え,健康体に復帰しつつあります. 筆者の場合,夜間の利用はあまりないので,充電した電池を取り出してデジカメなど他の用途に利用 しています.つまり人力充電器というわけですが,巷の健康器具もこのようにしてエネルギーを回収す るのが得策ではないかと思いはじめています. * 最後に,エネルギーについてもう一度考えてみたいと思います. 図 17-8 は,現在のエネルギー資源が今の採掘量のままだと今後何年で枯渇するかを示したものです. 図から,現在の主要エネルギー源である石油やウランは,今後 100 年はもたないだろうと推測されま す.しかしそれ以前に,現在のエネルギー大量消費による環境劣化により,人類の生存自体が危うく なっています.ここで今,私たち電子技術者がなし得ることの一つは,機器のエネルギー効率を上げる ことです.効率が悪いということは,エネルギーを消費するだけでなく,地球環境に熱を放出すること になるからです. 筆者としては,自然に興味をもち,エレクロトニクスを通じてエネルギーの効率の良い利用を考え, 大きなところでは世界的に問題となっているエネルギー問題や自然環境破壊を解決してくれる若者が 育ってくれることを期待しています. B 参考・引用*文献 B (1)東芝フォトトランジスタ TPS615(F)仕様書,2004−01−06,東芝. (2)TL497AC,Switching Voltage Regulators, SLVS009C −JUNE 1976 −Revised AUGUST 1995, Texas Instruments. (3)*総合エネルギー統計,平成 10 年,経済産業研究所. 第5部 201 応用製作編 第18 章 フロート・センサ,マグネット・ポンプ, パワー・リレーで作る 山間向け揚水装置 農業には難しいことがたくさんあります.例えば,種をまく時期を見極めたり,ビニル・ハウスの温 度や湿度を管理したり,低い所にある水路から水田に水をくみ上げたり,害獣や害虫を撃退したりなど, 挙げればキリがありません. 筆者は電気・電子回路の専門家ではありますが,農業の専門家ではありません.そこで第 5 部では筆 者の周りの農家を訪ね,教えを請いながら,農家で困っていることや改善したいことを聞き,この難問 を電気を使って解決しようとチャレンジします. 問題を解決するための装置や回路は,実はホームセンタや電子部品店で違う目的のために売られてい たりします.それを農業に利用するために改造を加えます.市販品がなければ,筆者(あるいは協力者) が製作することもありますが,できるだけ多くの人に手がけてもらえるように,簡単に作れることを目 指します. 18−1 わき水では洗濯機やボイラへの水圧が足りない ● 電子技術者が農業に携わる時代が来た 衣食住と言いますが,この優先順位は食,衣,住であることは誰しも認めるところでしょう.携帯電 話や地デジはこの中には入っていません. このように農業は,「食糧を生産する」という一番大事な産業であるにもかかわらず,テレビなどで は,専業農家はなかなか成り立たないなどと伝えられています.わが国は農業に携わる人が約 299 万人 で,うち 65 歳以上が 60 %を占めています(2008 年農業白書).高齢化による耕作放棄も現実に起きてい ます. そんな中,「不況により就農を目指す若者が増えた」,「自分で食べる野菜は全て自給自足でまかない たいという人が増えている」など,農業にとっては明るい話題も耳にします. 考えてみると,これまでの農業には電子機器を利用しようと考える人が少なかったように思います. 今は高機能なマイコンや FPGA,センサが数個から買える時代です.これらを利用すれば,農業は快適 になるかもしれません. 筆者もメーカに勤めていた頃は,大都市に住んでいました.今は周りが田畑と山だけという田舎に住 むことになりました.この地域でも時代の流れに呼応して若い人達が移り住み,知恵を働かせて新しい 事業を試みています.自然に戻ることは生活の原点に戻ることでもあり,得るところは少なくありませ 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 202 第 18 章 山間向け揚水装置 岩盤があり井戸 を掘れない わき水が唯一の 生活水となる 農家 ポンプが 持ち上げ る高さ パイプ 農業用 水タンク (黒くスプ レした) わき水 農業用水タンク (黒くスプレした) 上センサ わき水 岩盤 図 18-1 わき水が唯一のライフ・ライン 地下には厚い岩盤があって井戸は掘れない 下センサ 屋内へ 図 18-2 揚水高 ポンプ わき水の揚水システム(原理図) 小型のポンプで実現でき停電にも強い ん.この機会に,私達電子技術者も何か腕を振るおうではありませんか. ● 山間部のわき水に異変? さて,山間部の農家では,生活用水を今でもわき水に頼っている地域があります.わき水は,ふつう 図 18-1 のように山から引いており,昔は竹を二つに割った掛樋が裏山から農家まで設置されていたも のです.今ではビニルや塩ビのパイプに変わっていますが,水源が山のわき水であることは,昔と同じ です. ところが最近,わき水の量が少なくなるという現象が起きているのです.数百年の歴史ある地域であ り,今までは安定していた水源です.この原因は,最近の大型台風や,山林の放置による森林の疲弊だ と言われます. ● 少ない水量でも貯めれば十分な量となるが加圧しないと洗濯機やボイラに使えない 「それでは井戸を掘れば良いのでは?」とは誰でも考えます.しかし,相談を受けた地域は地下に厚 い岩盤があり,井戸は掘れないとのことでした(図 18-1). わき水を貯めることが唯一の解決策ですが,ためおきの水は圧力がないので,ポンプで加圧しないと, 洗濯機やお風呂のボイラには使えません. 住民の方もいろいろと考えておられたようで,筆者が最初に相談を受けたときの内容はかなり整理さ れており,おおむね次のようなものでした. ① 水を何 m 上げたら,水道水並みの圧力になるか ② 信頼性があって廉価な水位センサはないか ③ 電気だけに頼らない方法はないか(停電が多い) ①は逆に考えて,一般の水道の水がノズルの先から何 m 上がるかを調べれば,エネルギーの保存則 により概略の値は分かります.実験では 6m 程度でした. ②は電子部品販売業者から当たると,安くて良いものが見つかりそうです.水回りの業界経由だと 1 けた値段が違います.この価格差は業界の違いもありますが,主に量産数量の違いから来ています. 18-2 揚水装置の製作 203 第 1 部 水 マグネット 第 2 部 水 写真 18-1 使用したマグネット・ポンプPMD −571B (三相電機) 摺動部分がないので騒音がなく長寿命である モータ インペラ 図 18-3 マグネット マグネット・ポンプの構造 モータの回転はマグネットで羽根車につながる ③は現在,加圧ポンプは設置しているものの,わき水の量が少ないため,家屋全体に配管できず,停 電にも対処できないということです.解決策として,高所にタンクを設けておけば,停電時もこのタン クの中の水は備蓄水となり,かつ加圧水として使えます. 18− 2 揚水装置の製作 ● エネルギー消費が少ない揚水装置の概要 上記の条件を考慮したものが図 18-2 のようなシステムです.わき水は最初に下側タンクに貯めます. タンクが一杯になったら上センサによってポンプを ON します.ポンプの力で上側タンクに給水し,上 側タンクとの落差による圧力で屋内に水を送ります. これ以外に,タンクは平地に設けてポンプによって加圧する方法があります.この方法は,強力なポ ンプを必要とするため,コスト高になるばかりか停電によって瞬時に生活用水が止まってしまうという 欠点があります.また,山間部では住居近辺に大型タンクを設置できるような平地を確保することは一 般に困難です(これは現地を見て初めて分かったことです) . 前述の揚水タイプは,わずかな水量に見合った小型小電力のポンプで間に合うので,ソーラ・パネル と組み合わせた場合でも,無理のないシステムを実現できます. ● マグネット・ポンプは低騒音で長寿命 鍵となる部品はポンプと水位センサです.わき水が少ないことから,水量よりも揚程(水を持ち上げ る高さ)が重要になります.これに適したポンプは,写真 18-1 のようなマグネット・ポンプです.マグ ネット・ポンプの構造は図 18-3 のようになっています.ピストンやダイヤフラムを使わないので,騒 音がなく長寿命です. 磁石を組み込んだインペラ(羽根車)を,モータ軸に取り付けた磁石によって駆動しています.ポン プ部にシャフトやシールがなく,直接水に触れる部分はすべて樹脂製であり,オイルが混入する心配が ありません. 第 3 部 第 4 部 第 5 部 第 18 章 表 18-1 山間向け揚水装置 マグネット・ポンプの種類と仕様 使用する地域の電源周波数に応じて,持ち上げ高さ と流量から品種を選ぶ 型 番 最大流量 / 分) 最高揚程 (持ち上げ高さ,m) 50 Hz 60 Hz 50 Hz 60 Hz RMD − 151 16 19 2.4 3.4 RMD − 201 27 31 3.1 4.3 RMD − 301 32 38 3.8 5.4 RMD − 401 45 52 4.6 6.5 RMD − 551 60 70 5.6 8.2 RMD − 701 86 97 6.7 9.7 RMD − 1001 120 135 8.6 11.9 12 揚程[持ち上げ高さ,m] 204 RMD-1001 10 701 8 401 551 6 301 4 201 2 0 0 図 18-4 151 20 40 60 80 流量[ /min] 100 120 マグネット・ポンプの性能曲線 s ポンプの選択方法 (1)が入手しやすいです.観賞魚を扱う店などが販売 マグネット・ポンプは,RMD シリーズ(イワキ) しています.この場合,表 18-1 のような機種があります.どのポンプを選ぶかは,揚程と,流量(単位 時間当たりの水量)によります.このタイプのポンプは,水を吸い上げるのではなく持ち上げるもので す.吸い上げ時はオプションの自吸タンクを使用しますが,高さは最高 1.2m 程度にすぎません. 表 18-1 の最大流量と最高揚程は,両方の値が同時に得られるわけではありません.揚程と流量の間 には図 18-4 のような関係があり,揚程を高くすると流量は減少します.今回の場合は,必要な揚程が 6m ですから,あとは流量に応じてポンプを選ぶことになります. わき水量は 200 l のタンクが 30 分で満杯になることから,200 ÷ 30 = 6.7l/分です.従って,RMD − 401 を選べば,18l/分であり,十分余裕があります.なお,筆者は手持ちの関係から他メーカの RMD− 301 相当品を使用しました(写真 18-1) . ● 水位を検出するフロート・スイッチ 水位センサは,最初は光の屈折を利用したものを自作するつもりでしたが,調べているうちに写真 18-2 のようなフロート・スイッチが安く入手できることが分かりました (RS コンポーネンツより入手) . 内部構造は,図 18-5 のようになっており,磁石とリード・スイッチの簡単な組み合わせです.図の ように取り付けると,水位上昇によって磁石がリード・スイッチに近づいて回路が ON となり,水位低 下で OFF となります.また,上下を逆に取り付けると,逆に水位上昇で OFF となります. ● 基礎実験…揚水の過程と水圧確認 基礎実験は筆者の自宅で行いました.写真 18-3 のように 20 l のタンクを,はしごを使って 6m の高さ に持ち上げ,最高揚程 6.5m のポンプで揚水するのにどの程度の時間がかかるのか,また,得られる水 圧はどれくらいかを調べました. 装置は図 18-2 の形式で,ポンプと回路は写真 18-4(a)のように鉄板の上に組んでいます.ポンプと 基台の間には,防振のためにゴム・シートを挟みました. 結果は 20 l の揚水に 3 〜 4 分かかりました.これは筆者の使用したポンプが揚程 5.4m の RMD−301 相 当品であることが原因です.しかし,流量はわき水の量と同程度であり,最高 6m までは使えることが 18-2 揚水装置の製作 205 第 1 部 写真 18-2 水位センサ に使用したフロート・ス イッチ RSF43Y050QF (英国 CYNERGY3 社) 第 2 部 写真 18-3 揚程と水圧 の確認実験 構造が簡単で,信頼性・ コスト面ともに問題ない はしごを利用して 6m の高 さにタンクを持ち上げた 第 3 部 O(オー)リング 中にフロート・スイ ッチが入っている リード・スイッチ 引き出し線 締め付け ボルト 第 5 部 磁石 フロート(浮き) 図 18-5 フロート・スイッチ RSF43Y050QF の構造 中にパワー・リレ ーが入っている マグネット・ ポンプ (a)ポンプと周辺回路 パワー・リレー 写真 18-5 水圧の確認実験 水道と同じくらいの水圧が得 られる 第 4 部 専用ソケット (b)パワー・リレー HL2−H−AC100V−F(パナソニック) 写真 18-4 ポンプとパワー・リレー パワー・リレーはプラスチック・ケースに入れた 分かりました. 6m まで揚水したときの水圧は,自宅の井戸ポンプと同程度であり,洗濯機や温水器も問題なく使え そうです.写真 18-5 のように蛇口から勢いよく水が出ることを確認しました. ● 出来上がった揚水装置 以上の実験結果をもとに,現地において図 18-6 のような装置を製作・施工しました.上側タンクは 206 第 18 章 山間向け揚水装置 上側タンク 500 わき水 電気配線 上側タンク 500 水道水 パイプ 電 源 接 続 約5m ゴミ 除去装置 温水器 上 器へ 屋根 温水 太陽 風呂 電気回路 ボックス 下側タンク 200 ポンプ オーバフロー水 タンク オーバフロー水 ポンプ 写真 18-6 池へ 高所に設置した上部タンクの全景 電気回路の保護と冬季凍結対策として屋根を設けた 家事用へ接続 図 18-6 出来上がった揚水システムの全体図 上側タンクには 1000 の水を蓄えられる 500 l × 2 = 1000 l,揚程 5m,下側タンクは 200 l です.これで風呂以外の家屋の生活水をすべてまかな うことができます. やぐら 上側タンクは,わざわざ図 18-2 のような櫓を組むこともなく,山の斜面に設置することで高さを確 保できました(写真 18-6) . 風呂の配管は,屋上の太陽熱温水器を経由しているため,別途ポンプを使って持ち上げています.こ こは特に水圧が必要ではないので,オーバフロー水を利用しました.最終的なオーバフロー水は,鯉の 泳ぐ池に逃がしており,これも有効利用しています. ● システムの電気回路 電気回路を図 18-7 に示します.下側タンクが満杯でポンプのモータが ON し,リレーの自己保持回 路が動作します.下側タンクが空になるとリレーの自己保持が解除され,モータが OFF します.さら に上側タンクが満タンになったときもポンプを切るようにしています. フロート・スイッチの仕様は,AC240V/0.6A ですから,直接はモータ(約 100W)を制御できません. しかし,トランジスタ回路を組むほどのことはなく,図のようにパワー・リレーを使えば,信頼性が高 く寿命の長い回路となります.接点の火花消去は入れた方が良く,モータ回路の接点間にバリスタを入 れています. ● タンクとホースは藻の発生に注意が必要 写真 18-6 は上側タンクで,もとは黄色の農業用タンクを黒色に塗って,藻の発生を防いでいます.2 18-2 AC 100V 黒 タンブラ・ スイッチ パワー・リレー AC100V 2極 HL2-H-AC100V-F (パナソニック) コンセント ネオン・ ランプ 白 接地側 ヒューズ 2A バリスタ TNR5V271K 300Ω 図 18-7 7 8 3 4 5 6 フロート・センサ RSF43Y050QF フロート・センサ RSF43Y050QF マグネット・ (Cynergy3社) ポンプ M ON 〜 下側タンク 揚水装置の製作 207 第 1 部 OFF 上側タンク 第 2 部 ON 第 3 部 フロート・センサ RSF43Y050QF バリスタ TNR5V271K(日本ケミコン) 300Ω 第 4 部 揚水システムの電気回路 トランジスタを使わずリレーで構成した 第 5 部 浄化水 玉砂利 浄化材 (フィルタ) やしがら活性炭 わき水 ごみ ごみ排出栓 図 18-8 写真 18-7 自然石を利用した浄化装置 浄化装置の断面 活性炭とフィルタを固定するために玉石を載せる 下部には活性炭とフィルタがある 基で 1000 l の水を蓄えられます. 配管用のホースも同じで,農業用の黒いビニル・パイプを使用し,管内で藻が発生しないように配慮 しました.また冬季の凍結防止のため,タンクには屋根を,ホースには断熱材を設けています. ● 活性炭と自然石を使った浄化装置を追加 これまではわき水を,フィルタを通さずそのまま使っていたようですが,よく見ると浮遊物が含まれ ています.飲料水として使うには,ごみを除去しておいた方が良いでしょう.ポンプが詰まる心配もな くなります. 写真 18-7 は製作したフィルタの外観です.内部は図 18-8 のような構造です.こんなことは電気と関 係ないと思われるかもしれません.しかし,図 18-8 のごみ排出機構に着目すると,ここに電磁弁を設 けて自動化するというテーマがまた出て来るのです. 208 第 18 章 山間向け揚水装置 ポンプ・ ボックス (b)一部を拡大 (a)全景 写真 18-8 下側タンク(左)とポンプ・ボックス(右) ポンプは内部の水が抜けないようにタンクの下に置いた 写真 18-8 は完成した下側タンクとポンプ・ボックスの全景です.手前の塩ビ配管は万一のオーバー フロー対策です. 18− 3 揚水装置の成果 ● 一変した生活スタイル 上側タンクからの圧力水により,写真 18-9 のように洗濯機が使えるようになりました.また,家庭 用給湯器に接続することで,キッチンにおける炊事スタイルは都市部と変わらないものになりました (写真 18-10). ● 電気の流れと水の流れは似ている 落差を利用したシステムでは,配管に工夫が必要な場合があります.例えば,図 18-9(a)のように A 〜 B の本管から C の分岐を行うと,B 側の落差が大きい場合,C の水量は B よりもかなり少なくなりま す.これは施工中に分かったことです. この対策としては,図 18-9(b)のように,分岐点の前にわずかに段差を設けます.電気回路でいえば, ここに抵抗を入れるようなものです.直感的には B 側に抵抗を入れたくなりますが,A 側に抵抗を入れ ると,C 側に流れないときの B 側の水量を減らすことがなく,工事も簡単です. ● 揚水装置はかんがいにも使える 施工中にいろいろ改善を加えたことにより,最終的にはかなり大規模なシステムになってしまいまし たが,最初の基礎実験のように基本は簡単です. 18-3 揚水装置の成果 209 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 写真 18-9 全自動洗濯機も使えるようになった 写真 18-10 水圧と流量を十分確保できるため 2 台稼働させても問題ない キッチンでは水道も使えるようになった 温水も使用でき都市部の生活スタイルと変わらない A A B B C ほぼ同じ 水量が 少ない 抵抗を入れる C (a) 図 18-9 (b) 落差を利用したシステムの配管方法 電気回路で言えば抵抗を入れるようなもの 今回は山間地農家の水回り整備が目的でしたが,小電力で廉価な揚水装置として,高所にあり灌水が 不十分な水田や畑のかんがい用として利用できます.また,モータが 70W 程度で済むので,屋根用の ソーラ・パネル 1 枚とバッテリの組み合わせで,電気のない場所での運用も可能になります. B 参考文献 B (1)レイシー・マグネット・ポンプ「RMD シリーズ」 ,㈱イワキ. http://www.iwakipumps.jp/rei-sea/products/rmd.html B 製作・取材協力 B 小澤正人氏(福岡県行橋市)および住民の皆さん 第 5 部 210 第19 章 手作り水位センサ,PIC マイコン,3 色 LED で作る 田んぼの水位見張り器 19− 1 離れた場所から水田の水位を見張りたい 米は日本人の主食です.おいしい米を作るために,米作農家はいろいろな工夫をしています.一方, あいがも 消費者の要求も多様化しており,これに対応して合鴨農法や有機農法など,農薬や化学肥料に頼らない 安全な米が見直されています. かんがい 稲作には水が不可欠です.わが国では古くから灌漑が行われています.水田の水は,川や貯め池から 側溝を通して引いてきます.昔は上段の水田から下段の水田へと水を流していましたが,最近は側溝が 整備されて,水田ごとに水を引き入れています. せき 堰(水門)の開閉作業は,側溝に設けた水門を開けたり閉じたりして行います.従って水が入らな かったり,逆に入りすぎて苗が漬かってしまったりすることもあります.水田の水位を遠くからでも確 認できれば,水位調整の必要性をいち早く察知できるのではないでしょうか. 本章では写真 19-1 のような,水田の水位計を製作します.水位は LED の光の色で識別します.双眼 鏡を使えば遠くからでも確認でき,また,夜間は蛍が飛んでいるような風流さがあり,近隣の方に楽し んでもらえるものと思います. 19−2 水位見張り器の製作 ● 水田の土は多層構造となっている 水稲の成長の速さは驚くほどです.田植えから 4 カ月で収穫です.しかし水田を維持するには,年間 にわたる細かな配慮が求められます. 水田は長い年月の間に老朽化して行きます.その最大の要因は鉄分の流出です.これにより硫化水素 が発生し,根が栄養を吸収できなくなります.このような老朽田になると,稲が発育不良となり,収穫 量が減少し,やがてその土地は使えなくなります. 対策として,農地の保全が行われます.鉄分の補給だけでなく,粘土やケイ酸の補給,耕作法の工夫 など,その土地の性質に合った若返り法があります.これは何百年にもわたって,血と汗の上に積み上 げられて発展・継承されてきたノウハウです. たんすい 水田の中は図 19-1 のようになっています.5cm 程度の湛水の下には,柔らかい土があります.これ 19-2 水位見張り器の製作 211 第 1 部 水位計 水位を色で 示すLED 示すLED 水稲 たん 湛水 酸化層 還元層 すき床 図 19-1 水田の土層 心土 薄い酸化層と還元層か らできている 電子回路 ACコード センサ部 水に漬からない 部分 C 0 写真 19-1 水 製作した光点滅方式の水田水位計 A 水位に応じて,赤,青,緑,紫,白で点滅する 図 19-2 水位センサの原理 水に漬かった部分の容量が増 える.これを電圧に変換する ε0 B 水に漬かった 部分 CW 導体 (a)コードを水に漬ける 絶縁体 (b)コードの断面 は微生物が住む酸化層の部分と,酸素が少ない還元層に分かれます.鉄分は根の部分で酸化と還元を行 うキー・マテリアルとなっています.その下は硬い心土です.心土の上部はすき床と呼ばれ,これより 下部は,長年の耕作によって押し固められています.これが保水の役目を果たします.写真 19-1 の ポールは,この心土に深く突き刺すことはできません.従って埋め込み部分を短くします. ● 水位センサの原理…水位を容量で検出 水位センサは,製作が容易な静電容量式としました.原理はファラデーの法則そのものです.誘電体 を媒質とするコンデンサの容量は, C =ε・C 0 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (19−1) ただし,C ;容量[F],C 0 ;真空(空気もほぼ同じ)における容量[F],ε;電極間にある媒質の比 誘電率[倍]とする と表せます. 今,図 19-2(a)のように,AC コードの一端を絶縁して,水に漬けたとします.AC コードの静電容 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 212 第 19 章 田んぼの水位見張り器 45 40 容量C 容量[pF] 35 30 電流 i 25 信号源 周波数f 電圧v 20 15 負荷 R 電圧 V0 10 5 0 0 図 19-3 2 4 6 水位[cm] 8 10 12 水位と容量の関係 図 19-4 容量 C に交流電圧 v を加 えてその値から容量を検出する 容量は水に漬かった部分の長さにほぼ比例する 量は,水に漬からない部分の容量 C 0 については,周囲が空気(比誘電率≒ 1)であるため,それほど大 きくはありません.一方,水に漬かった部分の容量 CW は,水の比誘電率が約 76 ですから,単純に考え れば空気の 76 倍になります.しかし,図 19-2(b)のように,導体間の電気力線のうち,最も密な部分 A は誘電率の小さな絶縁体で囲まれています.一方,肝心の水を通る部分 B は電気力線がまばらである ため,実際の容量変化はそれほど大きくありません. なお,水の中で静電容量が増加する原理は,この電気力線に沿って水の分子の分極が起こり,電荷が 増えることによります.水位と容量の実測値の例を図 19-3 に示します.図 19-3 のように,水位と容量 はほぼ比例するので,逆に容量から水位を求めることができます. s 容量変化を電圧に変換 図 19-4 のように,周波数 f[Hz]の交流信号源を容量 C[F]に直列に接続すると,電流 i[A]は次式で 表されます. i = 2πf・C・v ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (19−2) 従って,負荷抵抗 R[Ω]の両端には, V0 = i・R = 2πf・C・v・R ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (19−3) のように,静電容量に比例した電圧 V[V] が得られます. 0 ● 水位センサはスライド構造とする 水田にポール(支柱)を打ち込むと,ポールと水面の位置は固定されてしまいます.従って水位セン サ(AC コード)を上下に移動して,先端部=水位 0cm を水底に一致させなければなりません.このため 水位センサをポール上で上下にスライドさせる機構が必要で,少し工夫がいります.そこで電気工事の 材料である電線保護用のモールを写真 19-2 のように取り付けて,スライドできるようにしました. ● 全体の構造 図 19-5 は全体の構造です.エアコン配管用のφ 22mm 塩ビ・パイプを全体の支柱とします.これに 長さ 50cm のモール基台をビスで取り付けます.センサと回路ボックスはモール・カバー側に取り付け ます.これにより前述のスライド構造を実現しています. 19-2 水位見張り器の製作 図 19-5 点滅式水田水位計 の全体構造 LED 213 第 1 部 10 パイプはポリ塩化ビニルなど 非金属とする 第 2 部 塩ビ・ パイプ φ22mm 45 第 3 部 第 4 部 モール 写真 19-2 水位センサのスライド機構 電材店で売っている電線保護用モールを利用した 125 回路 ボックス R 30 表 19-1 項 水位計の仕様 目 緑 仕 0 cm 〜 30 cm 点灯色 赤,青,緑,紫 (10 cm ごと) 電源電圧 4.5 V(単 3×3) 点灯周期 10 s 点灯時間 1s 電池寿命 50 赤 様 水位 回路電流 青 水位 センサ 10 G B 0 2 mA (通常) 17 mA (点灯時) 34 日 (アルカリ電池) 20 図 19-6 EP20XX−150RGB (PARA LIGHT ELECTRONICS) のピン配置図 照明用に開発されたパワーLEDである 丸棒 5 15 [単位:cm] LED ボックスは,最初は半透明の 35mm フィルム・ケースを使用しましたが,LED の光が暗くなる ため,後述の透明アクリル・パイプに変更しました. LED の配線はパイプの中を通し,回路ボックス上部でパイプに穴を開けて取り出します.回路ボッ クスがスライド機構により上下するので,配線はたるませる必要があります.たるみは U 字型にして 雨水の流入を防止します. ● LED は点滅式として電池の寿命を延ばす たんすい 水位計の仕様は,表 19-1 のようにしました.水田の湛水期間は約 2 カ月ですから,単 3 アルカリ電池 (2.9Ah@10mA)を使って平均電流を 2mA とした場合,約 60 日持つことになります.しかし,LED を 除く回路電流だけでも 2mA 流れるので,これは無理です.そこで電池寿命の目標は約 1 カ月としまし た.なお,単 2 電池を使えば約 2 カ月持たせることが可能です. 発光色は水位が 2cm 以下で赤色,〜 10cm で青,〜 20cm で緑,〜 30cm で紫,これ以上で白としまし た.図 19-6 は,使用した LED モジュール(秋月電子通商)のピン配置図です. 第 5 部 214 第 19 章 田んぼの水位見張り器 3色LED J1 VPP 1 VDD 2 Vss 3 R6 4 PGD 5 PGC 6 Aux BT1 1.5V ×3 I C4 RN5RZ33B (リコー) 2 I N OUT 3 5 CE C4 GND 10μ 1 C5 33μ C 6 0.1μ SW1 電源 C7 D3 RED EP20XX-150RGB (PARA L I GHT ELECTRON I CS) 書き込みの際に利用 100Ω I C1 PIC12F683 (マイクロチップ テクノロジー) 7 GP0/AN0 6 GP1/AN1 4 5 GP3/MCLR/VPP GP2/AN2 3 GP4/AN3 2 1V GP5 CC 8 GND R1 1k R2 74HCU04 14 1 2 13 I C2f 3 12 7 11 C 1 150p R 9 10k 図 19-7 I C2b I C2e 4 5 10 9 I C2c I C2d Tr2 Tr1 2SC1815 2SC1815 (東芝) R 3 3.3k Tr3 2SC1815 R 13 1k 6 1 2 1k R 15 1k R 4 3.3k 0.1μ 6 D2 5 RB721Q D1 8 R 14 R 5 3.3k C3 W1 水位センサ I C2a R8 100Ω R 12 100k 0.1μ R7 BLU 100Ω PI Cマイコン 100Ω GRN RB721Q (ローム) C2 R 10 1k R 11 − + 1.6k 8 4 OPアンプ 7 I C3a LM358 (ナショナル セミコンダクター) 0.1μ 水位計の回路 上がマイコンと LED 駆動回路,下がセンサ回路 ● 製作した回路 図 19-7 が製作した回路です.センサ回路の OP アンプは,マイナス電源を使わず,0cm 時のオフセッ ト電圧(約 1V)をマイコン内蔵の A−D コンバータで補正しました.オフセットのばらつきは,電源 ON 時にオフセット値をソフトウェアで学習させて,A − D 値から引き算することにします.従って電源 ON 時は,センサを空気中に引き上げておく必要があります.学習終了の合図として,緑 LED を 2 回点 滅させます. マイコンは,PIC の 8 ピン・シリーズで,A − D 変換機能を持つ PIC12F683 を選びました.デバッグ 用の ICSP 端子(J1)を出していますが,ライタ(書き込み器)を使ってマイコンに書き込む場合は不要で す.LED は前述の高輝度品を選び,電流は 1 個当たり 15mA としました. 図 19-8 は,水位計の CMOS 発振回路(IC 2 )の出力波形(上段)と,センサ通過後の波形(下段)です. 水位と OP アンプ出力電圧,つまり A − D コンバータ入力電圧の実測値を図 19-9 に示します.水位 10cm までは感度が低く,10cm 以上はリニアです.これは検波用ダイオード D1,D2 の順方向電圧降下 VF に起因します.従って,VF の低いショットキー・バリア・ダイオードを使っています. この感度差はマイコンのソフトウェアで補正します.図を見ると,このカーブは,低電圧対応でレー 19-2 水位見張り器の製作 215 第 1 部 2 センサ通過前 1.8 1.6 LM358 出力電圧[V] 1.4 水位センサ通過後 第 2 部 LMV358 1.2 1 第 3 部 0.8 0.6 0.4 0.2 0 図 19-8 水位センサ CMOS 発振回路の出力波形(1V/div, 200mV/div,1μs/div) 0 図 19-9 5 10 15 20 水位[cm] 25 30 水位と A−D 入力電圧との関係 水位が 10cm 以上でリニアである 上段は発振回路の出力,下段はセンサ通過後の波形 電源ON 電源安定待ち (1s) 0cmの水位を学習 緑LED 2回点灯 電源安定待ち 10s待ち 図 19-10 ソフトウェアの フローチャート 0cm の水位を学習し,センサ のばらつきを吸収する 2cm以下 〜10cm 〜20cm 〜30cm それ以上 赤点灯 青点灯 緑点灯 赤+青 赤+青+緑 ル・ツー・レール出力の LMV358 を使っても大差ないことがわかります.今回は,よく出回っている LM358 を使用しました. ● 水位計のソフトウェア 図 19-10 はソフトウェアのフローチャートです.LED 電流が大きいことから,LED 点灯,消灯の直 後には 1 秒間の電源電圧安定待ち時間を入れています. 0cm レベルのオフセットをソフトウェア側で吸収することにより,センサ回路を簡単化しています. 第 4 部 第 5 部 216 第 19 章 田んぼの水位見張り器 PIC12F683 LM358 74HCU04 写真 19-3 基板をケー スに実装したところ 雨水の流入に注意が必要 電池寿命を延ばすためには,10 秒待ち部分は,タイマとスリープ機能を使うべきですが,今回は開 発期間の関係から省略しました. ● 回路の実装方法 回路は,写真 19-3 のようにユニバーサル基板に組み,透明プラスチック・ケースに実装しました. 吹きさらしの環境で使用するので,ケースはビニル・テープで周囲を巻くなどして,防水する必要があ ります.電源スイッチはなく,電池の抜き差しでスイッチを代用しています.スイッチ部から雨水が流 入することを懸念したのと,そもそもスイッチが必要ないからです. 写真 19-4 は,回路をセンサと接続したところです.センサの AC コードと回路間は直結し,周囲に 金属部がないようにしなければなりません.従って,ポールを金属棒にすることはできず,代わりに塩 ビのパイプを使っています. AC コードは,30cm の物差しの上にボンドで固定しています. 19−3 水位見張り器の成果 ● 今後の応用に期待 実験の進行よりも稲の生育の方が速く,装置が完成したころには,近くの水田は水を抜いてしまって いました.そこで,田植えの時期が遅い農家を探し,実験を行いました. まずわかったことは,水田の底(土のある部分)は意外と浅く,硬いことです.従って,ポール(支持 棒)は,あまり深くは突き刺さらず,支持部(土に入る部分)は 15cm もあれば十分です. 次に,昼間は LED を相当明るくしないと視認できないことも判明しました.従って,LED 容器は半 透明よりは,透明の方が良く,指向性も一方向に限定しました.写真 19-5 は改良した LED ヘッドです. 市販のアクリル・パイプから切り出して作りました. 農家の方は頻繁に水田を見て回ります.従って,この装置が特に必要になることは少ないようです. しかし,農地が広くなり,せきを自動化するようになれば,このような装置の出番があると思います. 19-3 水位見張り器の成果 217 第 1 部 写真 19-4 回路とセン サをポールに取り付け たところ 第 2 部 水位センサの AC コードは 回路に接近させる 第 3 部 第 4 部 写真 19-5 LED ケース を透明にした 指向性があるが遠方からで も視認できるようになった 写真 19-6 水位計を設置した水田(福岡県築上町) 特に最近,冬季湛水(冬でも水田に水をはっておくこと)が見直されており,年間にわたり,水位監 視が必要になる可能性もあります. ● イルミネーションとしても楽しい 一方,若い人には光式水位計の必要性とロマンを感じてもらえました.蛍の少なくなった今日,水田 にほんのり光る LED により,少しでも米作りへの興味と,水田地帯(写真 19-6)への郷愁を持ってもら えれば幸いです. 電池の代わりに太陽電池を使えば,恒久的な設置が可能です. 余談になりますが,冒頭の写真 19-1 では,苗が縦横に規則正しく植えてあります.この農家の場合, 苗の植え付け誤差を± 2cm 以下にしているそうです.これにより,草刈り機の刃が稲の茎を切らずに 走行できるとのことでした. B 参考文献 B (1) 島田義人;静電容量型水位センサによる電子雨量計の製作,トランジスタ技術 2003 年 3 月号,p.119, CQ 出版社. B 製作・取材協力 B 中嶋春樹氏(福岡県築上町) ■ プログラムの入手方法 関連プログラムは CQ 出版社のウェブ・ページからダウンロードできます. http://toragi.cqpub.co.jp/ (編集部) 第 5 部 218 第 20 章 手作りループ・アンテナ,PIC マイコン,温度センサで作る ビニルハウス内の温度伝送装置 20− 1 広いビニルハウス内の複数点の温度を把握したい 車で田園地帯を走ると,大きなビニルハウスが並んでいるのを見かけます.冬場は石油ヒータやボ イラで暖房しているようですが,寒暖の差が激しい季節の変わり目にはどのような温度管理をしてい るのでしょうか. ハウスの中の温度分布を知るには,ハウス内の各所に温度計を設置しておけば良いと思いますが, 広いハウスの中を回って歩くのは大変です.また,天井近くでは温度計を見ることができません. こんなときに,離れたところで各所の温度をまとめて知ることができる,無線式の温度測定装置(写 真 20-1)があれば便利ではないかと考え,試作品を作ってハウス農家を訪ねました. ● 耶馬溪のデコポン栽培農家を訪ねる 「青の洞門」 (写真 20-2)で有名な,大分県の耶馬溪に足を伸ばしました.耶馬溪の山々は,紅葉の季 温度センサ (a)外観 写真 20-1 温度を測定し電波で伝送する装置の外観 温度センサの頭部は外部に露出させる (b)ケースを開けたところ 20-1 広いビニルハウス内の複数点の温度を把握したい 219 第 1 部 果樹 第 2 部 か 花き (観賞用植物) 野菜 写真 20-2 名勝「青の洞門」 ,手前は山国川(大分県) 菊池寛の小説「恩讐の彼方に」でも有名 図 20-1 ビニルハウスの用途 農林水産省の資料(平成 19 年度)から計算した まんまく 節には赤,黄,緑を織り交ぜた幔幕に覆われ,そこかしこにかいま見える奇岩と,山国川の清流が良 い調和を醸し出しています. そのふもとに,「デコポン」をハウス栽培する農家があります.デコポンはかんきつ類の一種で,図 20-1 の中の果樹に属します.果樹のハウス栽培は減少傾向にありますが,エレクトロニクスで貢献で きることがあるかもしれません. ● ビニルハウスとは 栽培用のビニルハウスは,主に冬場の寒気,霜を防ぎ,作物の葉と根に適度な温度を与えるための 設備です.図 20-1 のように,その用途は大半が野菜の栽培です.年度別に見ると野菜が増加し,花き (観賞用植物)の割合はあまり変わらないのに対し,果樹は減少傾向にあります. 一般にビニルハウスは厳冬期をのぞき,太陽熱による加温が期待できます.しかし,自然まかせで は温度が上がりすぎたり下がりすぎたりするので,温度管理が必要です.温度が高すぎる場合は換気 を行ったり,遮光幕を張ったりします. さらに,暖房のために,石油ヒータなどが設置されている場合が多々あります.暖房機で加温する 場合,ハウス全体を均一の温度にすることが求められます. ● 甘さ満点の「デコポン」の栽培と温度の関係 デコポンの正式な品種名は不知火(しらぬい)で,糖度が高く,香りの良いかんきつ類です.寒さに 弱いため,主産地の九州でも写真 20-3 のようにハウスで栽培します. 写真 20-3(b)のビニルハウス入り口上部の装置は換気扇です.内部の温度が一定温度になると自動的 に回り始めます.また,10 ℃以下になると,周囲のビニルの囲いが自動的に閉まるようになっていま す.さらに,降雨時には水分補給のために,自動的にビニルが開くようにもなっています. デコポン栽培に必要な年間作業は図 20-2 のようなものです.3 月ころ開花し,収穫時期は 12 〜 1 月で す.中でも開花後の数週間は厳しい温度管理が必要です.暖房と換気を自動化しても,ハウス内部の 第 3 部 第 4 部 第 5 部 220 第 20 章 ビニルハウス内の温度伝送装置 (a)外観 写真 20-3 (b)入り口 果樹を栽培するビニルハウス 温度 撮影時(10 月)は防虫網で覆われていた 11月 10月 ビニル 外張 12月 1月 剪定 ビニル内張 暖房開始 2月 収穫 昼35℃ 夜16℃ 発芽 9月 開花 枝の誘引 結実 暖房終了 内張除去 外張除去 6月 図 20-2 高すぎ 3月 17℃ 適温 長細い 丸い 4月 温度管理が必要 5月 低すぎ 偏平 デコポン栽培の歳時記 3 月〜 4 月の開花期は細やかな温度管理が必要 図 20-3 実のなる個所と果実の形状 との関係 ハウスの上部は温度が高く,下部は低い 温度を均一にすることは難しく,温度差があるために,図 20-3 のように,樹木の上部,中部,下部で 果実の形状が一定しません.写真 20-4 は,良い形状の例です. 従って,ビニルハウス各部の温度を知ることは非常に重要なことであるようです.このような事情 から,必要な時期に,どんな場所にでも設置できる,無線式の測定装置は非常に便利である,とのお 墨付きを得ることができました. 20-2 温度伝送装置の製作 221 A B 第 1 部 第 2 部 A B C D (a)リレー式 図 20-4 C D (b)相互通信式 遠隔温度測定装置におけるデータの伝送方法 リレー式と相互通信式が考えられる 写真 20-4 樹木の中程にできた形状の良いデコポン 温度のわずかな差で形状がいびつになる 20− 2 温度伝送装置の製作 ● 通信距離が短い微弱無線を使いこなす 無線を使った測定装置の最大の難点は,電波法の規制により放射電界強度を大きくできないため, 到達距離が 20m 程度と短いことです.従って広大な農地の中で,微弱電波を使って,温度などの情報 を伝送することは困難です. しかし,今回のように観測点が多数ある場合は,各観測ユニットが,自分のデータに加えて,ほか の測定情報をも次々とリレーして行けば,到達距離を飛躍的に伸ばすことができるはずです. ● 測定データの伝送 このアイディアを実現する方法は,大別して 2 通りあります.図 20-4(a)は,A のデータを B に送信 し,B は自分のデータに加えて,A のデータも送信します.C は A,B のデータに加えて C のデータを 送信します.これは,データを次々とリレーして行くので,リレー方式と呼ぶことにします. これに対して図 20-4(b)は,A のデータを B,C,D が共有し,B のデータを A,C,D が共有すると いうように,全部の測定装置が情報を共有するものです. 図 20-4(a)は,直線的にセンサが並ぶ場合に有利ですが,全体の情報が D に集まるため,D の近傍で しか情報を知ることができません.また,いずれかの測定装置が故障した場合,これより左側の情報 がすべて失われます. 図 20-4(b)は,どのセンサをどこに置いてもよく,受信がどこでもできるなど汎用性があり,情報共 有という点でインテリジェントなシステムです.そこで,今回は(b)の方式を採用することにしました. ● 装置の構成 s 温度測定・伝送装置 測定温度を伝送する装置は,図 20-5 のように受信回路と送信回路から構成されます.温度センサの 第 3 部 第 4 部 第 5 部 222 第 20 章 温度センサ ビニルハウス内の温度伝送装置 マイコン 送信回路 ループ・ アンテナ 受信回路 図 20-5 無線による温度測定装置の構成 受信回路を装備していることが特徴 液晶表示器(LCD) 受信回路 図 20-6 マイコン 温度表示端末の構成 どの遠隔測定装置からの情報も受信できる (a)表面 (b)裏面 写真 20-6 温度表示用受信機の外観 A 〜 D の温度と,温度上昇中/下降中という状態を矢印で表示 写真 20-5 温度測定・伝送装置の基板 A 〜 D の合計 4 枚を製作した 値は,定期的にマイコンで A −D 変換して保存します.受信回路には,近くに設置してあるほかの装置 からのデータが入って来るので,マイコンに保存すると同時に自分のデータを更新します.更新した データは,受信信号がないことを見計らって定期的に送信します.写真 20-5 は測定装置の基板です. 今回は A 〜 D の合計 4 個を製作しました. s 温度表示装置 温度の表示は図 20-6 のような端末で行います.受信回路は図 20-5 と同じものです.その出力には, すべての測定装置のデータが含まれているので,これをマイコンで処理して,キャラクタ液晶ディス プレイに表示します.写真 20-6 は温度表示用受信機の外観です. ● 温度測定・伝送装置の送信回路 図 20-5 の構成を具体化すると,図 20-7 のような回路になります.送信周波数は UHF 帯の 310MHz 20-2 223 温度伝送装置の製作 第 1 部 J1 1 VPP 2 VDD 3 VSS 4 PGD 5 PGC 6 Aux I CSP I C4 LM61BIZ (ナショナル TAR5S33(東芝) セミコンダクター) C 14 BT1 1μ 1.5V ×3 温度センサ Vout 2 330Ω LED PIC12F683 (マイクロチップ テクノロジー) 7 6 GP1 GP0 4 5 GP2 GP3 3 GP4 1 2 VCC GP5 8 GND 330Ω C 15 0.01μ R 18 Tr3 2SA1015 (東芝) R3 C 17 R 17 C 16 4p R8 L2 Tr2 2SC4043S L4 C9 10k 1μ R6 510Ω 9.1k 56k D1 1N4148 C6 10p ループ・ アンテナ C 2 3p 発振周波数調整用 R 11 R 14 1M 220k R 13 R 12 2 3 C 13 470k 1M 100p 1 L1 4 C 12 100p 5 6 1μ TC4069UBP (東芝) C7 39p CT 1 I C2 10p R7 Tr1 2SC4043S (ローム) R2 1N4148 C 10 R 10 L3 1.5μH 270Ω R1 4.7k CT 2 3.9μH R 20 20k D1 R9 47k 2200p 2p 330Ω 2.05V VR 1 1k 受信コイル 2200p 2200p 12k 0.1μ C4 1000p C 1 R 19 1k C 11 C5 C3 I C1 R4 1k D4 R 21 1 33μ GND VCC C5 3 SW1 電源 1 CNT 5 Vin 2 GND 4 Vout 3 NOZ I C3 第 2 部 C8 R 15 820p 受信 2200p 周波数 調整用 R 16 47k 13 12 D2 470k 11 10 1N4148 図 20-7 温度測定・伝送装置の回路 図 20-5 の構成を具体化したもの バンドを選びました.送信回路は Tr1 とその周辺で,変形コルピッツ回路を採用しています.L 1 は発振 コイルとアンテナを兼ねており,通常はプリント・パターンとします.ここでは図 20-7 のように銅線 を使った 1 ターンのコイルとしました.L 1 の仕様を図 20-8 に示します. CT1 は,発振周波数調整用のセラミック・トリマ・コンデンサです.発振周波数の調整にはスペクト ラム・アナライザを使用しましたが,測定器がなくても次のような方法で調整できます. s 周波数の調整 1 … 310MHz バンドの機器を使う方法 例えば,車のキーレス・エントリやドア・チャイムを利用します.最初に受信機を動作させて,受 信回路のトリマ CT2 を調整し,この機器の周波数に同調させます.次に,送信機を動作させて,送信 第 3 部 第 4 部 第 5 部 224 第 20 章 ビニルハウス内の温度伝送装置 線径1mm 5.08mm 内径 5mm 線径 0.56mm 内径18mm すず めっき線 端子間 2.54mm 図 20-8 送信ループ・アンテナ L 1 の巻き方 φ18mm のマーカ・ペンを巻枠にした 図 20-9 受信コイル L 2 の巻き方 φ5mm のドライバの柄を巻枠にした 回路のトリマ CT1 を,受信回路から出力パルス(マイコン 4 ピン)が得られるように調整します. s 周波数の調整 2 …広帯域受信機を使う方法 広帯域受信機があれば,受信周波数を 310MHz に合わせておき,CT1 を調整します.送信回路のトラ ンジスタ Tr1 は,f T = 600MHz 以上の UHF 帯用トランジスタを選ぶ必要があります. ● 温度測定・伝送装置の受信回路 Tr 2 とその周辺が受信回路で,超再生復調回路となっています.超再生方式は,L 4 と C 5 によるクエ ンチング(断続)発振により,復調振幅を非常に大きくできるという利点があります.受信コイル L 2 の 仕様を図 20-9 に示します. IC 2 周辺は復調信号をマイコンで処理できるレベル(3.3VP − P )まで増幅する回路です.温度センサ IC 4 については後述します. マイコンは 8 ピンの小型パッケージながら A − D コンバータを内蔵する PIC12F683 を使用しました. マイコンで扱う入出力信号は次のとおりです. ① GP5 :受信回路の電源制御(Tr 3 により ON/OFF する) ② GP4 :送信回路の変調(Tr 1 のベース・バイアスを ON/OFF してディジタル変調をかける) ③ GP3 :受信回路復調信号の入力(IC 2 の 10 ピン出力パルスを処理する) ④ GP2 : LED 表示(受信信号のあり/ なしを示す.消費電力の節約のため,設置後は使用しない) ⑤ GP1 : A−D 変換用基準電圧(2.048V,後述) ⑥ GP0 : A−D 変換入力(温度センサ IC 4 を接続) ● 温度データの処理 センサは,IC 化された温度センサ LM61BIZ(ナショナル セミコンダクター)を使用します.出力電 圧 Vout は電源電圧には依存せず,温度 T[℃]との関係は次の式で表されます. Vout =(10mV ×T )+ 600mV ビニルハウスの中が零下になることは少ないと思われるので,温度範囲は 0 ℃〜+ 99 ℃としました. 2 進数で扱いやすくするために,10 ビット A −D の最大値 1024 で 2.048V に正規化すると図 20-10 のよう 20-2 温度伝送装置の製作 225 第 1 部 センサ出力電圧[V] 2 1.8 1.6 第 2 部 1.4 1.2 1 第 3 部 0.8 0.6 300 400 0 図 20-10 25 700 800 500 600 マイコン上の値(10進数) 85 100 温度[℃] 900 温度(A−D 値)とセンサ出力電圧との関係 10 ビット A−D 変換器の最大値を 2.048V に対応させる 1000 写真 20-7 15m おきに設置した温度測定装置 無線方式なので,任意の場所に設置できる になります. すると 0 ℃〜 100 ℃は 300 〜 1024 に対応し,次の手順で温度に対応した 10 進数に変換できます. ① A−D 値から 300 を引く ② その値を 2 倍する 例えば 25 ℃では出力電圧は 0.85V ですが,これを 10 ビットで A −D 変換すると 425 となります.上の 手順により, ① 425 − 300 = 125 ② 125 × 2 = 250 つまり 25.0 ℃という 10 進数が得られます.このようにすればアセンブラ・プログラムがとても簡単に なります. 以上により,A−D 変換器の基準電圧 Vref は 2.048V としました. ● ケースへの組み込み方法 写真 20-1 のようなケースは,ホームセンターや電材店で,「露出用丸形ボックス」という品名で販売 されています.これに,電気配線用の「VE 管」という塩化ビニル・パイプを接続し,下部に丸棒を差し 込んで地面に突き刺します. 写真 20-1(b)は,ケースのふたをした状態で,センサだけは外部に頭を出すようにしました.この ケースは防水構造なので,センサの穴をパテなどで防水すれば,屋外(田んぼの中など)でも使用でき るはずです. ● ビニルハウスに設置する 写真 20-7 は,製作した温度測定装置をビニルハウス内に設置したところです.測定装置は 15m おき に設置しています.測定装置 D と受信端末との距離は 15 × 4 = 60m になります. B 取材協力 B 岩尾文明氏(大分県中津市本耶馬溪町) 第 4 部 第 5 部 226 第 21章 キャラクタ液晶モジュール,PIC マイコン, インバータ IC で作る ビニルハウス内の温度表示装置 21−1 複数点の温度を一つの画面に表示したい ● 農地に信号線を張り巡らせるとトラクタで切ってしまうことも 農作物の成長と周囲の温度との間には密接な関係があります.デコポン栽培において,果実の形状が 温室内の温度分布によって大きく変わることはその一例です. しかし,農地やビニルハウスは敷地面積が広大なので,各部の気温や地中温度などのデータを収集す ることは容易なことではありません.例えば,農地に信号線を張り巡らせると,トラクタや耕運機によ り切断される恐れがあります. ● 微弱無線でデータをリレーするワイヤレス装置を作った この点で,無線方式に軍配が上がる訳ですが,実際には電波法によって微弱無線しか使えないので, 到達距離が限られます.また,携帯電話などの公共回線は,通信料がかかることのほかに,機器が複雑 になって消費電力が大きくなるという欠点があります. 前章では,この解決方法として,微弱電波ではあっても,隣接した測定機器同士が通信して,結果と して長い距離の情報伝送を可能にする方法を紹介しました.そして,この方法を使って,4 台の送信機 を製作し,ビニルハウス(写真 21-1)に設置しました. 前章で紹介したのは温度を測定し,4 台の間で温度データを共有できる「温度測定・伝送装置」です. ここでは,温度測定・伝送装置から受け取った情報を表示するための,「温度表示器」 (写真 21-2)を 作ります. 21− 2 温度の表示部を作る ● ポケットに収納できバッテリ動作 温度測定・伝送装置 4 台(A 〜 D と名付ける)の温度データは,写真 21-2 のように 16 文字× 2 行の キャラクタ液晶ディスプレイに一括表示します.同時に温度変化のようすも矢印と−で表すようにしま した.温度上昇中を↑,下降中を↓,変化なしを−で示しています. さらに電波を受信すると LED が点灯するようにして,通信状態がわかるようにしました. 21-3 ビニルハウス 温度表示装置の成果 227 点灯で受信中 第 1 部 第 2 部 第 3 部 デコポン 写真 21-1 広いエリア各部の気温や地中温度の データを収集したい 写真はかんきつ類を栽培するビニルハウス.九州の名 産「デコポン」はお歳暮の人気アイテム 温度測定・伝送装置A 温度測定・伝送装置 温度測定・伝送装置A〜Dからのデータ A〜Dからのデータ 写真 21-2 温度の表示部を製作 ポケットに収納可.左上の LED 点灯で信号を受信していることを示す 電源は乾電池で動作するようにして,どこでも,また移動しながらでも結果がわかるように配慮して あります.さらにアンテナをなくして,ポケットに収納できる大きさにまとめました. ● 回路… PIC マイコンや超再生検波回路からなる 図 21-1 に温度表示器の回路を示します.受信回路は,温度測定・伝送装置と同じです.受信アンテ ナはありませんが,310MHz 帯はアンテナ効率が良いので,L 2 や配線がアンテナの役割をします. Tr 1 周辺は超再生検波回路で,IC 2 のインバータを高ゲインの増幅器として動作させて検波出力を増 幅しています.IC 2E の出力信号は,マイコン(IC 1)の RB0/INT 端子に入力しています. LED(D3 )は,受信信号が入ってきたときに点灯するようにしています. マイコン(IC 1)は,安価で入手性の良い PIC16F84A を使用しました.クロックは 10MHz のセラミッ ク発振子で作っています.また,マイコンのソフトウェアの入れ替えがフィールド(現場)でできるよ うに,ICSP 端子を設けています. キャラクタ液晶ディスプレイは,入手が容易な SC1602B を使っています.写真 21-3 は基板の外観で す.310MHz 帯では,受信回路とマイコンを写真のように隣接させても,高調波による干渉はありませ ん. キャラクタ液晶ディスプレイの電源電圧は 5V です.そこで単 3 乾電池 1.5V を 4 本直列にして 6V とし たあと,LDO レギュレータを利用して+ 5V を得ています.従ってニッケル水素電池(1.2V)は使えませ ん.受信回路はさらに LDO レギュレータを通して,+ 3.3V で駆動しています. 21− 3 温度表示装置の成果 製作した温度測定・伝送装置 4 台と温度表示器を並べます(写真 21-4).各温度測定・伝送装置は定 期的に温度データを送ってきます.一つが送信すれば,ほかのユニットと受信機の LED が一斉に点灯 します.点灯しないものがあれば,そのユニットの受信周波数を調整します.この後,距離を伸ばして 再調整します. 第 4 部 第 5 部 228 第 21 章 ビニルハウス内の温度表示装置 C 11 Tr1 2SC4043S (ローム) 2200p L1 R8 47k L 2 4.7k C5 R6 2200p R7 9.1k 510Ω C6 1 SW1 電源 GND 2 10μ R 19 330Ω J1 I CSP C 15 1 VPP 2 VDD 3 VSS 4 DATA 5 CLK 6 AUX 1 3 2 D3 10MHz 22p X1 22p 17 18 1 2 3 RB0/I NT RA0 RB1 RA1 RB2 RA2 RB3 RA3 RA4/TOCK1 RB4 RB5 16 RB6 15 OSC1/CLK I N OSC2/CLKOUT RB7 4 R 1 470Ω 0.1μ 14 MCLR VDD 11 VR 1 R 17 3.3k I C1 PIC16F84A マイクロチップ テクノロジー 10k D2 1N4148 6 7 8 9 10 11 12 13 6 I C2c 10 I C2e 受信中 0.1μ 5 1μ R 16 470k 12 I C2f R 14 220k C 13 100p C 12 4 R 15 47k C 16 47μ R2 C1 R 13 R 12 1M 470k 13 TAR5SB50 3 C 14 C 10 100p I C2a I C2b TC4069UBP(東芝) 2200p VCC OUT BT1 UM3×4 図 21-1 C9 1μ C8 C 7 39p 820p D1 1N4148 (ローム) I C4 R 10 10k CT 1 10p 1.2μH R 11 1M R9 10k CONT 検波出力 を増幅し たパルス R 18 220Ω I C3 TAR5S33 1 3 VCC OUT GND 2 C 17 10μ LCD1 SC1602 (Sunlike Display Tech) 1 V 2 DD V 3 SS V 4 cont RS 5 R/W 6 STB/E 7 D0 8 D1 9 D2 10 D3 11 D4 12 D5 13 D6 14 D7 キャラクタ液晶 ディスプレイ・モジュール 温度表示器の回路 低消費電力で単 3 乾電池 4 個で動作する ● ビニルハウスの内部に設置,60m 先のデータを取得 写真 21-5 のように,15m おきに温度測定・伝送装置を,ポール (エアコン設置用塩化ビニル・パイプ) を使って立てました.高さは果樹の真ん中あたりです. 手前のユニット A から最も遠くのユニット D までの距離は 45m で,この装置の到達距離約 20m を越 えています.A から 15m 手前の点(合計 60m)に受信機を持ってきて,すべての温度データを収集でき ました. ● 温度測定器の本格的な稼働は春 春になって果樹が芽を吹き,花が咲くようになると,細かな温度管理が必要になります.ビニルハウ スの暖房機は,写真 21-6 のようにハウスの入り口に設けてあるために,全体に均一な温度にするのは 21-3 アンテナ部 インバータIC インバータIC 温度表示装置の成果 229 第 1 部 温度測定・伝送装置 ICSP 端子 第 2 部 第 3 部 温度表示器 PIC16F84A 写真 21-3 温度表示器の基板(部品面) 受信回路とマイコンを隣接させても妨害は入らない 約15m 約15m 写真 21-4 製作した温度測定・伝送装置と温度表示器 第 5 部 4 台中の 2 台 約15m 約15m 重油タンク 写真 21-5 ビニルハウス内に 4 個の温度測定器を設置 温度測定器の間隔は 15m である 写真 21-6 へん… 第 4 部 ボイラ ビニルハウス全体の温度を均一にするのはたい 左は重油タンク,右の煙突が出たものが温風ボイラ 容易ではありません.ハウス上部と下部の温度になるとなおさらです.ハウス内の温度を均一にするた めにファンを設置するのですが,その設置場所を決めるためにこの温度測定器が活躍するでしょう. ● 水位の測定など応用範囲は広い 紹介したような近距離無線通信機器が,日常生活のあらゆる場所に登場するようになりました.これ は半導体技術と通信技術の進歩により,変調信号をコード化して混信や秘密保持に対処できるように なったことが主な要因です. この装置は,温度の測定だけでなく,湿度,日照量など,センサの交換とプログラムの修正だけで測 定対象を広げることができます.写真 21-7 は水田の水位計にこの無線伝送システムを応用する例です. このようにすれば,水田から自宅までの長い距離でも水位データを伝送することが可能になります. 230 第 21 章 ビニルハウス内の温度表示装置 水位データをワイヤレス伝送 スペース D0 マーク データ 8ビット ビ ス LSB先頭 ッタ トー ト ・ T0 1ビット幅 D7 アイドル MSB ビ ス ット トッ プ ・ T1 1〜2ビット幅 図 21-2 製作する装置の通信フォーマットは RS − 232 − C に準拠する 写真 21-7 本器は水田の水位計にも応用できる スタート・ビットとストップ・ビットで区切っている 15m おきにポールを立てると自宅までデータを伝送できる 21−4 温度伝送・表示のためのソフトウェア ■ プログラムを制作する前に決めたこと ● 通信フォーマットは RS−232−C を使う 通信フォーマットは,データ伝送用シリアル通信の定番である RS − 232 − C に準拠しました.図 21-2 のように 8 ビットのデータを,スタート・ビットとストップ・ビットで区切ることが特徴です. RS − 232 − C では,データ順序を LSB 先頭とするならわしであり,今回もこれに従いました.ボー・ レートは 4800bps としました.これは,送信機の変調周波数の上限が 5kHz 程度だからです. RS − 232 − C のデータは,基本的にキャラクタで構成されるので,温度のデータも 10 進キャラクタに 変換することにしました. 通信フォーマットを RS − 232 − C 準拠としたので,受信機で復調した信号をパソコンに接続すれば, 温度データをそのまま伝送することが可能になります.例えば,ハウスの配置と室内の作物の分布状態 を図形化して,この上に温度を表示するなどです. なお,受信機のマイコンへの入力としては,図 21-2 の MSB と LSB を反転したものが入ります. ● ID 信号は HELLO 通信プロトコルを図 21-3 に示します.データ列は,文字キャラクタで構成しますが,このままキャ ラクタ液晶ディスプレイが表示ができるように,ライン指定の制御コードを 2 カ所入れています.図の ように最初は HELLO というヘッダで始まっています. ヘッダを設ける理由は,データ列の途中から受信されることを防ぐためです.また,ほかの通信機器 との区別をするための ID コードの役割もあります. ライン指定信号や, (空白), ■ , A= などはなくてもかまわない信号ですが,受信エラーを 回避するためには有効です.つまり受信中にその都度,これらのキャラクタをチェックして,違ってい 21-4 ライン0 (13h) 温度データ23.4℃なら234 温度伝送・表示のためのソフトウェア 第 1 部 ライン1 (10h) シンボル名 図 21-3 231 4バイト temp̲A 2 5 6 ↑ temp̲B 2 8 4 − 図 21-4 温度データの RAM temp̲C への格納イメージ 2 2 9 ↓ 2 9 1 − 温度データ伝送のための通信プロトコル データは文字列のままで伝送する 10 進数のキャラクタで保存する temp̲D 4データ たらすぐ受信を中止し,再び HELLO を待つのです. さらに温度測定器が,ある信号を受信中に,この機器以外の測定器の電波が入って,二つの電波の混 信により目的の信号を受信できないことがあります.この場合,中途までの受信データは破棄した方が 良いでしょう. ● 温度データの RAM への格納方法 図 21-3 の***の部分には温度データが入ります.A−D 変換によって温度データは図 21-4 のような 配置でマイコンの RAM に格納します. 全部で 4 バイト× 4 データ= 16 バイトです.バイナリで格納すればもう少し少なくできますが,プロ グラムが複雑になります.今回のように,RAM に十分余裕がある場合は,開発効率を重視した方が良 いと思います. なお,温度データ RAM 領域 16 バイトは,RAM アドレスの末尾の部分に連続して設けて,間接アド レッシングを容易にしています. ● インサーキット・シリアル・プログラミングでソフトウェアをアップグレードする 今回のように多数の送受信機が相互に通信する場合,電波状態や混信によってデータ収集に不具合を 生じることが多々あります.例えば,(実験中には遭遇しなかったが)全部のユニットが同時に送信す る可能性もあり得ます.この場合,定期的に送信タイミングをランダムにずらすなどのルーチンを付け 加えると回避できます. 送信間隔や機器 ID の設定は,ディップ・スイッチに頼るのではなく,プログラム自体を書き換えて しまえば,回路と操作方法が簡単になります.また,各測定器が特定の相手とだけ交信するような設定 も可能です. このような場合,写真 21-3 のように基板に ICSP 端子を設けておけば,ノート・パソコンを使って フィールド(現場)でプログラムの書き換えやデバッグができます. ■ 温度測定・伝送装置のプログラム ● 受信ルーチン 図 21-5 に,温度測定・伝送装置の送信と受信動作のフローチャートを示します. 「スタート」と書いたメイン・ルーチンでは,レジスタやタイマの初期化の後,受信ループを繰り返 します.メイン・ルーチンの受信処理で HELLO を検出したら,割り込み禁止にして,受信処理中の 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 232 第 21 章 ビニルハウス内の温度表示装置 スタート タイマ1割り込み (tm1int) レジスタ設定 タイマ初期化 30s経過? no yes 受信回路ON HELLO を受信した? A-D (温度) データ取得 no 温度変化計算 yes 割り込み禁止 RAMに格納 LED ON 受信回路OFF ■A=など no データ列を 10回送信 yes 受信データを RAMに格納 データRAMを X で消去 受信回路 LED OFF 図 21-5 温度測定と送受信の フローチャート メイン・ルーチンで受信,タイ マ割り込みで送信する 割り込み禁止 リターン (a)メイン・ルーチン (b)温度測定・伝達ルーチン 送信をストップします.受信中は, A= などの冗長情報をエラー検出に利用しています.もし,あら かじめ決めた文字でなければ,受信処理はその点で中止します. 温度測定・伝送装置の ID コード(A 〜 D)は,アセンブル定義命令で指定しています.例えば,ユ ニット B の場合は, ID_CODE equ 'B' と指定します. ● 送信ルーチン 図 21-5(b)は,温度測定・伝送装置の送信ルーチンです.タイマ 1 割り込みを利用して,30 秒ごとに 温度データを送信します.この際に同じデータ列を 10 回送信します.混信などによる受信エラーがあ るかもしれないので,このように念押しを行います. A − D 変換後,温度変化を計算します.これは前のデータと今回のデータを比較し,温度が増減して いれば↑か↓の矢印を,変化がなければ−記号を付け加えるルーチンです.次に,この温度データを自 分の RAM 領域(自分が B なら temp̲B)に保存します. 送信するに当たって,まず受信回路を OFF します.これは受信回路と送信回路が同じ周波数を使用 21-4 スタート レジスタ設定 タイマ初期化 温度伝送・表示のためのソフトウェア 233 第 1 部 割り込み I NTER I NT割り込み no no 第 2 部 no 第 3 部 ? LCD初期化 矢印キャラ作成 yes HELLO を 受信した no タイマ0 割り込み? yes yes RAMを X で クリア LED ON 割り込み許可 ■A=など ∞ (a)メイン・ ルーチン 0.5s経過? yes 受信データを RAMに格納 LED OFF 図 21-6 温度表示器の フローチャート 二つの割り込みルーチン で,受信と表示を行う yes no ■A (B, C, D)= 表示 温度 (RAM内容) 表示 リターン (b)表示の更新と外部データ割り込みルーチン するいわゆる半二重通信だからです.また,受信回路を動作させたまま送信すると,受信回路が送信回 路の強電界により飽和してしまい,次の受信ができなくなります. 次に,RAM 領域にあるほかの温度データを含めて,データ列を送信します.送信が終了したら RAM 領域のデータはすべて破棄します.代わりに,文字キャラクタの X で埋めておきます.このよ うにすれば,受信時に X が温度データに含まれている場合,有効なデータがないことが判別できます. 最後に受信回路を ON しておきます. 機器のテストのために,連続して送信,または受信をしたい場合は,該当するアセンブル・スイッチ で切り替えます. ■ 温度表示器のプログラム ● 割り込みを許可して無限ルーチンで測定データを待つ 図 21-6 に温度表示器のフローチャートを示します. (a)のメイン・ルーチンでは,レジスタやタイマ の初期化,キャラクタ液晶ディスプレイの初期化などの後,割り込みを許可して無限ルーチンに入りま す. 使用した割り込みは 2 種類あります.一つは RB0/INT 端子の立ち下がりエッジでトリガされる外部 割り込みです.もう一つは,タイマ 0 割り込みです. RB0/INT 端子には,図 21-1 のように受信機の検波出力を増幅したパルスが入っており,図 21-2 の波 形を反転した波形が入ります.従ってスタート・ビットの,マークからスペースへの変化で割り込みが 第 4 部 第 5 部 234 第 21 章 ビニルハウス内の温度表示装置 前のデータより温度が上昇 していることを示す ① A = 2 5 . 6 ↑ B = 2 8 . 4 − C = 2 2 . 9 ↓ D = 2 9 . 4 − 図 21-7 上位データ 出力 下位データ 出力 上位 RB4〜RB7 R/W 表示画面のデザイン ⑤ 下位 (出力指定) 限られた文字数でもできるだけ読み取りやすくしたい RS 図 21-8 キャラクタ液晶ディスプレイ SC1602B のデータ表示制御方法 文字データ出力 ② E(STB) 4 ビットずつ分けて番号の順序で各信号を 送れば良い ③ ④ ⑥ ⑧ ⑦ 230ns以上 発生することになります. また,タイマ 0 割り込みはキャラクタ液晶ディスプレイ表示の更新間隔を作成します.ディスプレイ 表示の更新時間は,短すぎるとちらついて見苦しくなります.また,長すぎるとデータの更新に追いつ きません.ここでは 0.5 秒に設定しました. 図 21-6(b)の割り込みルーチンでは,INT 割り込みの場合,データの受信が開始されたとき, HELLO をチェックして正常なデータかどうかを調べます.正常であれば,受信した温度データを RAM に格納します. タイマ 0 周期を 25ms に設定して,ダウン・カウンタに, 25ms × 20 = 500ms = 0.5s から,20 を設定します.タイマ割り込みごとに,このカウンタをデクリメントして,0 になれば 0.5 秒 経過ですから,キャラクタ液晶ディスプレイに温度データを表示します. ● 液晶表示のデザイン 図 21-7 に液晶表示画面の表示デザインを示します.温度の変化は矢印を使うと一目でわかります. 矢印↑,↓は,キャラクタ ROM には準備されていないので,CGRAM の領域に自分で作ります. 表示文字列は, ■ A= のような固定データと,RAM から読み出した温度データから構成されます. 温度データは図 21-4 のように RAM に格納されています. ● 液晶表示ルーチン 使用したキャラクタ液晶ディスプレイ(SC1602B)はよく出回っているものなので入手は容易ですが, 添付のデータシートがやや難解で,使いこなすのに少々手間取ります.初期化ルーチンは,仕様書に例 が示されているので問題ありませんが,難解な表示ルーチンも,図 21-8 の順序でプログラムすればす ぐに動きます.E(STB)パルスの幅もマイコンの 1 命令実行時間よりは長いので,特にウェイトを入れ る必要もありません. B 取材協力 B 岩尾文明氏(大分県中津市本耶馬溪町) 235 第 22 章 トライアック,PIC マイコン,7 セグメント LED, サーミスタで作る みそ造り装置 本章では,農家で行われているみそ造りを学び,一部を自動化するという課題にチャレンジします. 22− 1 みそ造りは温度管理が命 最近は農家であっても,材料をみそ屋さんに持ち込んで造ってもらうか,あるいはスーパマーケット ででき合いの商品を買うようになりました.それは,みそ造りが結構手間のかかる作業だからです.み こうじ その原料である麹 造りには,きめ細かな温度制御が求められます.制御にはマイコンが必要で,いよ いよ皆さんの出番です. ● 農家のみそ造りのカレンダ みそは,大豆に塩と麹を混ぜて発酵させたものです.麹は米から作ります.米に麹菌を加えて 2 日く らい適温で寝かせると,麹ができます.これに大豆を混ぜて発酵させるとみそができます.…といって しまえば簡単ですが,実際は非常に手間と時間がかかり,各農家伝統のノウハウがあります.原料の米 は,古米やくず米でもよいのですが,やはり新米の方がおいしいみそになるようです. みそ造りには,図 22-1 のようなサイクルがあります.12 月から 2 月の「寒」の時期はみそ造りに最も 適した時期です.この時期の井戸水は「寒の水」と呼ばれ,雑菌が入らないので良いみそができます. みそには,米みそ以外に,麦みそや合わせみそがあります.麦みそ造りは,米みそとは反対に夏が適し ています.しかし,麦は表皮が硬いので,麹菌が入りにくく,やや難度が高いです.このほか小麦から 作ったみそは,「もろみ」と呼ばれ,しょうゆの原料となります. ● みそ造りの第 1 ステップ…麹を作る 農家におけるみそ造りの手順を示します. ① 米(例: 2 升)を一晩水に漬けて,ざるに上げ,水を切ります(写真 22-1).次にこの米を約 45 分蒸 します(写真 22-2) . ② もち箱(麹箱)に入れ,人肌(37 ℃)に冷やします.写真 22-3 は 2 升ずつ× 6 = 1 斗 2 升あります. ③ 麹菌(通称はハナまたはハナテ,写真 22-4)を入れます. ④ 水を加えて図 22-2 のような方法で混ぜます(5 〜 6kg の固まりになる) . むしろ ⑤ 袋に入れ,ふとんや筵で包みます. 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 236 第 22 章 みそ造り装置 12月 自動化 に向く 10月 9月 2月 完 食べ頃 熟 成 夏 梅雨 6月 図 22-1 みそ造りのカレンダ 写真 22-1 米を一晩水に漬け,水を切る 古米でもよいが,新米だとひときわおいしい 12 月〜 2 月の仕込み作業を自動化したい 蒸した米をもち箱に入れる このあと麹菌をふりかける 米 2 升を約 45 6 回繰り返し,1 斗 2 升分作る 図 22-2 写真 22-3 写真 22-2 分蒸す 写真 22-4 市販されている麹菌 白い無味無臭の粒状粉末である 米と麹菌をよく混ぜる むらがなくなるまで板の上で何回もひっ くり返す ⑥ 保温します.冬場なので,こたつの中に 12 時間入れます. ⑦ このあと 48 時間は適宜,図 22-2 の方法で混ぜます. このかたまりには「むら」が出てきますが,これは麹むらと呼ばれます.むらがなくなるように,何 回もひっくり返します.2 日で綿のように真っ白になります.ばらばらになった綿のような感じです. 写真 22-5 は出来上がった麹です. ● みそ造りの第 2 ステップ…大豆とまぜる 次はいよいよみそ造りです. ⑧ 大豆を洗って水に漬け,圧力なべで蒸してつぶします. ⑨ 麹と混ぜて塩を 10 〜 15 重量%加えます. ⑩ 図 22-3 のように,容器に入れて半年間熟成します. 漬物容器やタッパまたはプラスチックのばけつにビニル・シート(タッパ)を敷き,大豆と麹を混ぜ て入れ,和紙をかぶせ,塩を乗せて空気を抜きます.このまま半年ほど放置します.この間,大豆にカ ビが発生しやすいので注意します. 22-2 麹室温度コントローラの製作 237 空気 塩を乗せて 空気を抜く 和紙 写真 22-5 がった麹 図 22-3 方法 出来上 みその熟成 麹 カビに注意してこのま ま半年放置する 綿のように真っ白で きれいなものである ビニル ポリばけつ (漬け物容器) 春になると,一応賞味可能になりますが,まだ色が白く,この段階のものは,白みそと呼ばれます. 甘くて麹の香りがまだ残っています.このまま梅雨を越し,猛暑が納まったお盆過ぎまで熟成を続ける ● 自動化が望まれる部分 ⑥,⑦の間は,温度が上がり過ぎても,下がり過ぎても失敗します.温度が高過ぎると腐敗が始まり, べたついて酸っぱくなり,麹菌が死んで真っ黒になります.逆に温度が低過ぎると,麹菌が活動しなく なり,何の変化も起こらなくなります. 農家には麹造りのために特別な装置があるわけではありません.こたつやわらの中などに入れて,適 温かどうかを昼夜,監視します.この温度管理を自動化すれば,かなりの作業低減になり,勘に頼るこ となく均質なみそを作ることができるだろうとの感触を得ました. 麹室温度コントローラの製作 ● 木製の麹室を作る 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 と,9 月以降が最高の賞味時期となります(図 22-1). 22− 2 第 1 部 こうじむろ 早速,挑戦です.こたつの代わりに,図 22-4 のような,麹室(発酵室),平たくいえば箱を作ります. そして掘りごたつ用のヒータ(上向きに使うタイプ)を下部に取り付けます.ここまでは従来と何ら変 わりませんが,このヒータを人間の代わりにマイコンで制御して,温度を管理します. ヒータは横向けに取り付けます.底に置くのがよいように思えますが,底に取り付けると麹が乾燥し すぎたり,麹が落ちてきたりしてうまくいきません. 麹室には網目棚を設けて,麹箱が 6 個入るようにしました.中ほどに温度センサを取り付けておきま す.換気扇により,右側の通風路を通して全体の空気を循環させます.通風路の奥行きは約 30cm です. 箱の外側は断熱材で覆います. 写真 22-6 はこの麹室に麹箱を入れたところです.麹箱には,ぬれタオルをかぶせて湿気を与えてい ます. ● ヒータを制御する 前に述べたように,麹造りは温度管理がすべてです.温度が高過ぎる(48 ℃以上)と麹菌が死滅し, 低過ぎる(20 ℃以下)と活動しません.また,単に温度を一定に保てばよいというわけではありません. 238 第 22 章 みそ造り装置 換気扇 麹箱 網目棚 温度センサ 写真 22-6 温風の方向 断熱材 麹発酵室の断面図 こたつのヒータと温度センサを取り付けた 温度[℃] 40 ヒータ 図 22-4 稼動中の麹室 加湿するために,ぬれタオ ルを被せる 35 30 0 図 22-5 12 24 36 時間[h] 48 60 麹造りの最適温度曲線 最適と思われる温度カーブの一例を図 22-5 に掲げます.このデータは数え切れないほどの失敗の上 に出来上がった実績あるものです.麹を仕込んだ後,最初は 40 ℃に保つのですが,24 時間後には, 30 ℃に下げる必要があります.しかし,急に 10 ℃も温度を変えるのは麹菌にとってはやや過酷です. そこで最初の 24 時間は,徐々に温度を下げていきます.その後の 36 時間は 30 ℃一定に保ちます. なお,24 〜 60 時間の間は,麹を混ぜるために,麹箱の出し入れを適宜行います.この際に温度の急 激な低下が見込まれるので,これを補償するような制御回路の工夫(温度差が大きいときはヒータ電力 を大きくするなど)があれば最高です. たも これに加えて,湿度を一定に保てればよいのですが,加湿器が必要になるため,装置がやや複雑にな ります.今回は温度だけを制御しました. 最初は,サーミスタを既製品のシーケンサに接続してリレー回路で実験を行い,図 22-5 の基礎デー タを得ました.しかしシーケンサの制御は,目標温度を図 22-5 左の傾斜部分のようにきめ細かく設定 できません.また,ヒータの電力も掘りごたつのフルパワー(600W 注 1 )では少々大き過ぎます.失敗 要因の筆頭は,「短時間であっても温度が高すぎる場合」だからです. このような場合に,トライアックとマイコンを組み合わせると,ON/OFF だけでなく,所望の電力 に調整できます.これにより任意の温度カーブが実現できます.また,前に述べたように,温度差に応 じて電力を変化させることも可能になります. ● トライアックによる制御原理 トライアックは,交流電源制御用のスイッチング素子です.図 22-6 にトライアックの制御方法を示 (注 1)強,中,弱= 600,400,200W と切り替えができる機種もある.この場合は中か弱が適当. 22-2 麹室温度コントローラの製作 239 第 1 部 ゼロ・クロス点で自動的にOFFする 負荷電流 トリガ信号 によりON する 第 2 部 OFF ON OFF ON OFF ON 第 3 部 マイコンから の制御信号 図 22-6 ヒータの ON/OFF と電力制御方法 トライアックを使えば任意の位相で制御できる 図 22-7 トライアックによる位相角制御波形 上が入力 AC 電圧,下がトライアック出力電圧 します. 図のように正弦波位相の中ほどでトライアックのゲートにパルスを加えると,この位相で負荷に導通 させることができます.トライアックは,アノードとカソードの間の電圧が 0 になる点(ゼロ・クロス 点)で自然に OFF となる(消弧する)ので,次の半サイクルも同じ制御を続けることができます.この 部品を用いれば,ヒータの電力をゼロ(OFF)からフルパワーまで任意に変化させられます. 使用するトライアックの定格電流は,実効電流の 2 倍以上に選びます.今回は,6A × 2 = 12A 以上 となります.しかしヒータは赤熱状態での抵抗値が定格であり,室温ではこれより低い抵抗値になって いるので突入電流に配慮が必要です. 図 22-7 にトライアックによる位相角制御波形を示します.ヒータは抵抗負荷ですから,出力電流も 下の電圧と同じ波形となります.なお,この方法は急激な位相変化を伴うため,AM ラジオにノイズが 入ります. ● 温度検出はサーミスタを使う サーミスタは,ヒータを使った装置の温度制御に最も多く使われています.これは構造が簡単で信頼 性が高いこと,耐環境性が良いこと,価格が安いことなどが要因です.麹の発酵にはある程度の湿度が 必要であり,最近よく見かける IC タイプの温度センサは,電極のさびやマイグレーション,さらには 半導体内部への水分の侵入などの不安材料が多くあります. 図 22-8 は今回使用したサーミスタの特性(R −T 曲線)です.よく使われる NTC(温度係数が負)タイ プで,抵抗値は 10kΩです.この曲線は次の式で表されます. R =R 0 exp[B(1/T − 1/T0 )]・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (22−1) R [Ω] は温度 T[K] における抵抗値です.B はβ(ベータ)定数と呼ばれるサーミスタに固有の定数 0 0 です.図 22-8 の製品では B = 3917K です.R − T 曲線マッチング済みなので,個別の較正は必要ありま せん. 図 22-8 や式(22−1)を見てわかるように,温度と抵抗値は比例関係にはありません.従って,式(22− 1)で計算するか,表参照によって換算する必要があります. 第 4 部 第 5 部 240 第 22 章 みそ造り装置 35000 抵抗[Ω] 30000 25000 20000 15000 10000 5000 0 0 10 20 30 温度[℃] 40 50 使用したサーミスタ(10kΩ)の特性 図 22-8 EC95F103W(GE センシング)を使った 写真 22-7 デバッグ中のコントローラ 上に見えるこたつとサーミスタには蓋を被せる リセット・ スタート タイマ0 割り込み I NT-RB0 割り込み タイマ1 割り込み 初期目標温度 (40℃)設定 時計タイマ UP (分,時) ヒータOFF ヒータON 時刻タイマ ・ リセット A-Dスタート タイマ1 インターバル設定 (電力値) リターン yes リターン タイマ1スタート リターン A-D値から 現在温度を求める 図 22-9 I NT-RB0割り込み A-D変換 終了? 有効 電力 タイマ1割り込み no ダイナ ミック 駆動 I NT-RB0割り込み 表示更新 割タ りイ 込マ み1 有効 電力 麹室温度コントローラのフローチャート タイマ 0,タイマ 1,INT 割り込みを使う ● マイコンに搭載する仕様とアルゴリズム マイコンには次の仕様を盛り込みます. ① 時計 60 時間以上計測できる時計をタイマで作ります. ② 時間表示 経過時間を表示します.00 時間 00 分の 4 けた表示とします. ③ 温度表示 サーミスタのデータを基に,現在温度を表示します.小数点以下 1 けたまで表示します.温度表示範 囲は 0 ℃〜 50 ℃とします. 22-2 麹室温度コントローラの製作 241 第 1 部 第 2 部 (a)前面 写真 22-8 (b)後面 製作した温度コントローラ 左側の表示が経過時間,右が現在温度 ④ 温度目標値設定 最初の 24 時間は,設定温度を時計によって細かく下げて行きます.24 時間経過後は,設定温度を 30 ℃に固定します. ⑤ トライアック制御 電力設定値に従って,交流電源波形のゼロ・クロス点から一定時間後にトライアックを ON します. ⑥ ヒータ電力制御 目標温度と現在温度を比較し,ヒータを ON/OFF します. ⑦ 7 セグメント LED 制御 表示には,夜間,離れた距離から確認できる 7 セグメント LED を使い,ダイナミック駆動を行いま す.図 22-9 にフローチャートを示します. ● 回路設計 図 22-10 に全体の回路を示します.電源スイッチ SW1 を ON にするとヒータとタイマが作動し始める ので,ほかにスイッチ類は必要ありません(終了もスイッチを OFF) . A−D 分解能は,マイコンのVref 端子を使えば,10 ビットを目いっぱい使えますが,簡単にするため, 次の計算で 8 ビット幅で使うことにしました. 5V × 2 8 /2 10 = 1.25V(フルスケール) 1.25V の電圧は,シャント・レギュレータで作ります. トライアックのトリガは,非ゼロ・クロス型フォト・トライアック S21ME3 で制御します.これによ り,アノード・ファイア(Ⅰ−Ⅲモード)駆動となります. 交流のゼロ・クロス点の検出には,入手性からフォトカプラ TLP320 を選定しました. マイコンのクロックは 20MHz としましたが,時計の精度がもう少し必要な場合は 16.384MHz を選ぶ と良いでしょう. LED1 はトライアックの ON/OFF を監視するためのもので,デバッグ用です. ICSP 端子は,PICkit2/3 や ICD2(いずれもマイクロチップ テクノロジー)を使ってデバッグや書き込 みを行う端子です.写真 22-7 はデバッグのようすです. 基板は,テイシン電機製の通風孔付きのメタル・ケース TE − 316 にうまく収めることができました. 写真 22-8 に外観を示します. 第 3 部 第 4 部 第 5 部 242 第 22 章 みそ造り装置 J1 1 VPP 2 VDD 3 VSS 4 PGD 5 PGC 6 I CSP AUX SW1 電源 R2 C2 PLUG1 AC 100V I C2 S21ME3(シャープ) Tr1 SM12JZ47A(東芝) 180Ω 0.1μ F1 10A CN1 6 1 R5 I C3 2 470μ 0.1μ R8 3.3k (新電元工業) I N OUT C6 3 12V, 300mA 4 S1YB20 1 220Ω 470Ω TLP320 1 4 1 T1 3 C7 LED1 OSDR3133A R 6 180Ω D1 2 2 R4 68Ω R7 ヒータへ 4 3 C8 GND I C4 2 LM7805CV 100μ (ナショナル I C6 セミコンダクター) TL431A C9 0.1μ R9 470Ω (フェアチャイルド セミコンダクター) 写真 22-9 R 10 製作したコントローラを麹室に設置する J2 黒いボックスは最初に製作したシーケンサ サーミスタを接続 図 22-10 22− 3 30k 1 2 3 麹室温度コントローラの回路 みそ造り装置の成果 ● 納豆やヨーグルトの発酵にも使える このコントローラを麹室に設置し,早速,麹造りに挑戦しました(写真 22-9).写真 22-5 が出来上 がった麹です.うまく出来上がっていますが,これは図 22-5 の温度カーブ通りに動作するのですから 当然といえば当然です. 続いて,みそ造りに挑戦…と行きたいところですが,今回はここで終わりです.というのは,この コントローラは,麹の仕込みまでが出番で,みそ造りの段階では使わないからです. ここで製作した麹室は,プログラムの温度設定を変えることで,麹以外に,納豆(37 ℃),ヨーグル ト(25 ℃)の発酵などにも使用できます. B 製作・取材協力 B 小澤正人氏(福岡県行橋市) 22-3 I C1 2 3 4 5 6 7 R1 180Ω R3 21 22 23 24 25 26 27 28 1 470Ω C4 0.1μ 第 1 部 11 12 13 14 15 16 17 18 C0 C1 C2 C3 C4 C5 C6 dp 第 2 部 第 3 部 C 1 20p 10 X1 20p 20MHz C 3 9 第 4 部 MCLR/VPP /THV 20 C5 VDD 19 8 10μ C4 C5 C6 PI Cマイコン a b c d e f g dp Tr3 DTA 123E Tr2 DTA 123E LED2 LN516RA dp I C5 TD62381P(東芝) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 I1 I2 I3 I4 I5 I6 I7 I8 GND O1 O2 O3 O4 O5 O6 O7 O8 VCC 18 180Ω×6 17 16 15 14 13 12 11 10 10 9 8 7 6 g f co a b Tr4 DTA 123E (ローム) LED4 LN516RA LED3 (パナソ LN516RA ニック) 10 9 8 7 6 g f co a b e d co c dp 1 2 3 4 5 e d co c dp 1 2 3 4 5 10 9 8 7 6 g f co a b e d co c dp 1 2 3 4 5 LEDをドライブ Tr8 DTA123E C0 C1 Tr5 DTA123E 243 PIC16F873A (マイクロチップ テクノロジー) RA0/AN0 RC0/T1OSO/T1CKI RA1/AN1 RC1/T1OSI/CCP2 RA2/AN2/Vref − RC2/CCP1 RA3/AN3/Vref + RC3/SCK/SCL RA4/T0CKI RC4/SDI/SDA RA5/SS/AN4 RC5/SDO RC6/TX/CK RB0/INT RC7/RX/DT RB1 RB2 OSC2/CLKOUT RB3/PGM RB4 RB5 OSC1/CLKIN RB6/PGC RB7/PGD GND GND a b c d e f g みそ造り装置の成果 C2 Tr6 DTA123E Tr7 C3 DTA123E 10 9 8 7 6 LED5 g f co a b LN516RA e d co c dp 1 2 3 4 5 LED6 LN516 RA 10 9 8 7 6 g f co a b e d co c dp 1 2 3 4 5 LED7 LN516 RA 10 9 8 7 6 g f co a b e d co c dp 1 2 3 4 5 LED8 LN516 RA 10 9 8 7 6 g f co a b e d co c dp 1 2 3 4 5 第 5 部 244 索 引 索 引 【数字】 【あ・ア行】 0.2W 風車 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 アウトドア向け電源ユニット ・・・・・・・・・・・・・・・・ 133 10W 水車 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 157 インバータの出力波形と実効値の関係 ・・・・・・・・ 147 1W 風車 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 インバータ用トランス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 2 次電池の充電回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 音声録音再生 IC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 40W 水車 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 163 温度コントローラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 237 温度データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 224 【アルファベット】 温度表示器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 227 APR9600 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 CdS ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 【か・カ行】 CIS 系太陽電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74,89 開放電圧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 DC−AC インバータ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 蛍光灯点灯回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 DEFC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 189 携帯型の水力発電機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135 DMFC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 185 結露センサ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 I −V 特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 降雨センサ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 LED 駆動回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130 麹室 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 237 LED 照明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 広帯域受信機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 224 LED のパルス駆動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82 固体高分子型燃料電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 184 MPPT ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 索 引 245 ダイレクト・メタノール型燃料電池 ・・・・・・・・・・ 185 【さ・サ行】 短絡電流 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 サーミスタ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 239 小さな光る蛇口 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 131 自動車用のバッテリ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 地熱発電所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 173 市販の 12V 蛍光灯用インバータ ・・・・・・・・・・・・・・ 66 電圧検出器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123 浄化装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 207 電気 2 重層キャパシタ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 焦電センサ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 土壌保温ヒータ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72 ショットキー・バリア・ダイオード ・・・・・・・・・・ 106 トライアック ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 238 シリコン多結晶太陽電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 シリコン単結晶太陽電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 【な・ナ行】 人力充電器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 198 鉛蓄電池充電コントローラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94 水位センサ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 203,211 鉛蓄電池の取り扱い上の注意点 ・・・・・・・・・・・・・・ 146 水位見張り器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 210 ニッケル・カドミウム電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 水力発電機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 159 ニッケル水素電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 スイング練習機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 熱エネルギー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 172 ステッピング・モータ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112 熱電発電機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 175 ゼーベック効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 174 燃料電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 182 【た・タ行】 【は・ハ行】 太陽電池の購入先 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 倍電圧整流回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 104,139 太陽電池の最適角度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 バイパス・ダイオード ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 太陽電池を直列に接続 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 発酵 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 242 太陽電池を並列に接続 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 発酵室 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 237 ダイレクト・エタノール型燃料電池 ・・・・・・・・・・ 189 ハブダイナモ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133,192 246 索 引 パワー LED ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 ボイス・レコーダ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 パワー・リレー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 205 日影対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 【ま・マ行】 ピーク・ホールド ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 マグネット・ポンプ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 203 日暮れ検出回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 みそ造り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 235 日暮れの検出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 密閉型鉛蓄電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90,146 ピコ水力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156 メッセージ・ボード ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 169 微弱無線 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 221,226 フォト・トライアック ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 241 フォト・トランジスタ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 195 【や・ヤ行】 揚水装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 205 フランジ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 プレート・ファン水車 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 159 【ら・ラ行】 フレネル・レンズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 リチウム・イオン電池 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 フロート・スイッチ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 204 レベル・インジケータ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 194 ヘッド・スピード ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 ペルチェ効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 174 ペルチェ素子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 174 ペルトン水車 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125 【わ・ワ行】 ワンチップ・ラジオ IC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 著者略歴 著者略歴 漆谷 正義(うるしだに まさよし) 1945 年 神奈川県生まれ 1971 年 神戸大学大学院理学研究科修了 1971 年 三洋電機㈱入社,レーザー応用機器の開発やビデオ機器の設計などに携わる 2002 年 電子機器の受託設計や著述など「何でも屋」開業 2009 年〜 大分県立工科短期大学校非常勤講師,西日本工業大学非常勤講師 ● 著書 (1)ディジタル・オシロスコープ活用ノート,トランジスタ技術 SPECIAL No.99,CQ 出版社 (2)抵抗&コンデンサ活用ノート,トランジスタ技術 SPECIAL No.102,CQ 出版社 (3)通信技術・新訂版,実教出版,2009 年 2 月(共著) ● 趣味 仕事を趣味としてしまうので,結局,生涯を趣味で通している 247 ●本書記載の社名,製品名について ―― 本書に記載されている社名および製 品名は,一般に開発メーカーの登録商標です.なお,本文中では TM,(R), (c)の各表示を明記していません. ●本書掲載記事の利用についてのご注意 ―― 本書掲載記事は著作権法により 保護され,また産業財産権が確立されている場合があります.したがって, 記事として掲載された技術情報をもとに製品化をするには,著作権者および 産業財産権者の許可が必要です.また,掲載された技術情報を利用すること により発生した損害などに関して,CQ 出版社および著作権者ならびに産業 財産権者は責任を負いかねますのでご了承ください. ●本書に関するご質問について ―― 文章,数式などの記述上の不明点につい てのご質問は,必ず往復はがきか返信用封筒を同封した封書でお願いいたし ます.ご質問は著者に回送し直接回答していただきますので,多少時間がか かります.また,本書の記載範囲を越えるご質問には応じられませんので, ご了承ください. 作る自然エレクトロニクス 2011 年 5 月 15 日 初版発行 2011 年 9 月 1 日 第 2 版発行 2011 年 12 月 1 日 電子版 初版発行 (c) 漆谷 正義 2011 著 者 漆谷 正義 発行所 CQ 出版株式会社 編集担当 電子版担当 野村 英樹 中山 俊一