SCEJ 70th Annual Meeting K208 マイクロチャンネルにおける固液二相流の Macroscopic Particle Model シミュレーション (東工大院理工)○(正)大川原真一*・(Fluent USA) Madhusuden Agrawal・ (Fluent AP) David Street・(東工大院理工)(正)小川浩平 緒言 マイクロチャンネルでは穏やかな層流条件でも極端に 大きな剪断速度が生じるので、剪断速度に起因して粒子 に作用する揚力がマイクロ分離分級器内のスラリー粒子 挙動を決める上で重要な役割を果たす 1)。しかし、一般に 数値計算で用いられるSaffman 揚力 2) は粒子レイノルズ 数と剪断速度の適用範囲が極めて狭く、その適用範囲を 拡張した Mei の修正式 3) でさえも十分でない。さらに、 多くの揚力モデルが無限に均一な剪断流動場を仮定して 導出されており壁面の影響を評価できないことや、各種 粒子追跡法では粒子を点として取り扱うことから粒子と 壁面の衝突を適切にモデル化できない等、既存の数値計 算手法には問題が多い。そこで本研究では、擬似的な直 接 数 値 計 算 手 法 と 見 な せ る Macroscopic Particle Model4,5) (MPM)のマイクロチャンネル内固液二相流に 対する適用性を検討した。 1.MPM およびその適用方法 MPM では、粒子運動をラグランジェ的に計算する。 各タイムステップで粒子境界内に含まれる有限体積法の 流体セルに、セル内を粒子が占める体積分率に応じて粒 子速度を設定することにより、セル内の流体に運動量が 与えられて粒子周りの流動が計算される。一方、該当す る全セルにおいて流体に与えられた運動量の総和をタイ ムステップで除したものの反作用として抗力が得られ、 運動方程式により粒子運動が計算される 4)。 したがって、 粒子の運動やその存在によって生じる粒子周りの流動が 粒子自身の運動に及ぼす影響(ここでは揚力)を直接計 算することが可能であると期待される。ここで、粒子は 少なくとも 2,3 個の流体セルを占める必要がある。 解析対象のマイクロチャンネルは、幅、深さ及び長さ が 200 µm、150 µm 及び 5 mm の矩形断面を有する直管 で、全領域あるいは面対象を仮定した半分の領域で計算 を行った。本研究で試みた4つの計算格子密度 [幅(x)× 深さ(z)×長さ(y)] はそれぞれ(a) 10×10×10 µm /mesh、 (b) 10×9.375×10 µm /mesh、(c) 8×7.5×8 µm /mesh、 (d) 6.667×6.25×6.667 µm /mesh である。粒子境界内に 含まれるセル数が多くなるほど計算精度の向上が期待さ れるが、本研究で用いた直径 20 µm(密度 1,190 kg/m3) 球状粒子の場合、それぞれ 4.2、4.5、8.7、15.1 cells /particle 程度となる。流体は常温の水(密度:1,000 kg/m3、 粘度:1 mPa・s)とし、その支配方程式は質量および運 動量の保存式である。入口における境界条件として 3.5 m/s の平坦な速度分布を与えた(Re = 600) 。非定常計算 -6 の時間刻みは 10 s とし、計算開始後、流体の速度分布 が十分に発達して定常状態になるのを待ってから粒子を 投入した。流路入口における粒子の初期条件として流体 と同じ速度を与え、初期位置(z=60 µm)からの軌跡を 求めた。なお、これらの計算は全て Fluent6.1 で行った。 2.結果及び考察 Fig.1 に、MPM によって予測されたチャンネル入口か らの流下距離 y [µm]と深さ方向位置 z [µm]の関係(実線) を示す。比較のため、定常計算に基づく粒子追跡法 (DPM)で Saffman 揚力を適用した場合としなかった 場合を破線で示した。いずれの場合も入口近傍で粒子が 壁面(z=75 µm)から遠ざかる方へ移動するのは、助走区間 における速度分布の発達に拠るものである。さらに流下 するにつれ、MPM では格子密度に関わらず粒子と壁面の 距離が大きくなっていることから、MPM は揚力の効果を 直接計算し得るものと思われる。また、MPM で予測され る揚力の効果は、Saffman 揚力を適用した DPM による ものより小さかった。適用範囲のより広い Mei の修正式 は Saffman 揚力よりも小さな揚力を予測するので、この 結果は妥当であるように思われる。今後、なんらかの方 法で妥当性をより定量的に検証する必要がある。 75 MPM-Mesh(a) MPM-Mesh(b) MPM-Mesh(d) DPM-Mesh(d) MPM-Mesh(c) DPM-Mesh(d) 50 25 0 0 1000 2000 3000 4000 5000 y [µm] Fig. 1 入口からの流下に伴う粒子の移動 1) Ookawara et al., ICMF-2004, Paper # 206, Yokohama, Japan (2004) 2) Saffman, J. Fluid Mech., 22, 385-400 (1965) 3) Mei, Int. J. Multiphase flow, 18, 145-147 (1992) 4) Agrawal, et al., AIChE 2004 Annual Meeting, Paper # 268b, Texas, USA (2004) 5) Ookawara et al., WCCE7, submitted, Glasgow, Scotland (2005) * Tel/Fax:03-5734-3035/2882; sokawara@chemeng.titech.ac.jp