Uploaded by victor.verga

Niwa, J., Choi, I. C., & Tanabe, T. (1995). Analytical Study on the Shear Resisting Mechanism of Reinforced Concrete Beams. Doboku Gakkai Ronbunshu, (508), 79–88

advertisement
土 木 学 会 論 文 集No.
508/V‑26,
79‑88,
1995. 2
鉄 筋 コ ンク リー トは りのせ ん 断耐 荷 機 構 に
関 す る解 析 的研 究
二 羽 淳 一 郎1・ 崔
益 暢2・ 田 辺 忠 顕3
1正会員 工博 名古屋 大学 助教授 工学部土木工学科(〒464ー01名 古屋市 千種区不老町)
2正会員 工修 名古屋大学大学 院 工学研究科(〒464‑01名
古屋市千種区不老町)
3正会員 工博 名古屋大学教授 工学 部土木工学科(〒464‑01名
古屋市千種 区不老 町)
せん断力を受 ける鉄筋 コ ンク リー トは りの斜あひび割れの発生, せん断補強筋 の降伏, ウェブコンク リー トの
破壊までの一連 の耐荷機構 の変化 に追 随 し, かっマ クロ的な耐荷機構 モデルの構築 に役立 っ簡易な解析手法 とし
て格子モデルを開発 した. 本研究 は, 格子 モデルの適用可能性 を既存 のせん断耐荷力算定式 や実 験デー タによ り
検証 した後, 各種 の試算 を行 い, 従来 の修正 トラス理論 の妥当性 と問題点 を明 らか にす る ものである.
Key Words: shear resisting mechanism, shear strength, lattice model, modified truss
analogy
1.
序
論
分 は 無視 さ れ て い る. ま た, せ ん 断補 強筋 の 降伏 を前 提
と して い るた め, 連 続 繊 維 補 強材 の よ うな弾 性 一 脆性 破
土 木 学 会 コ ン ク リー ト標 準 示 方 書 に は, せ ん 断 力 を受
壊 材 料 に対 して は, vyを 定 め る こ とが で きな い.
コ ン ク リー ト貢 献 分Ycは,
け る鉄 筋 コ ン ク リー トは りの せ ん断 耐 荷 力 を修 正 トラ ス
具 体的 にはせん断補強筋
理 論 に基 づ いて 算 定 す る こ とが規 定 さ れ て い る. す な わ
の な い は りのせ ん断 耐 荷 力 相 当分 とさ れ て い る. 斜 め ひ
ち, せ ん断 耐 荷 力vyは
せん断
び割 れ の発 生 以 後, ひ び割 れ の進 展, ひ び割 れ 幅 の拡 大,
和 と して 与 え ら
お よ び変 形 の増 加 に伴 い, こ の コ ンク リー ト貢 献 分 は減
コ ン ク リー ト貢 献 分Ycと
補 強 筋 に よ る トラ ス機 構 の抵 抗 力Ysの
れ て い る.
少 して い く と考 え る の が 自然 で あ る と思 わ れ る が, 設 計
45度 の 圧 縮 斜 材 角 を仮 定 した トラス機 構 の み で は, 実
で は斜 め ひ び割 れ の発 生 以 後 終 局 に至 る ま で, Ycは 一 定
際 に得 られ るせ ん 断耐 荷 力 を過 小 評 価 す る こ とか ら, こ
値 を保 っ とされ て い る.
この よ うな修 正 トラ ス理 論 に基 づ く設 計 方 法 に含 まれ
れ を補 正 す るた め に, 修 正 トラス理 論 に は コ ン ク リー ト
貢 献 分 が 加 算 さ れ て い る の で あ る. ACIのBuilding
る問 題 点 に対 処 し, さ らに ど の よ うな補 強 材 を用 い た場
Code(318‑89)に
合 で も統 一 的 に適 用 可 能 なせ ん 断 耐 荷 力 の算 定 方 法 を示
も基 本 的 に同 様 な 手 法 が 示 さ れ て い
る. これ に対 して, CEB‑FIP
ラ ス の圧 縮 斜 材 角 を45度
Mode
lCode901)に
は, ト
す こ とが せ ん 断 設 計 法 にお いて 急 務 と な って い る ので あ
に固 定 しな い方 法 が 示 さ れ て
る.
い る. た だ し, この方 法 は設 計 者 が 圧 縮 斜 材 角 を制 限 内
佐 藤 らは, 非 線 形 の 有 限 要 素 解 析 に基 づ き, 作 用 せ ん
で 任 意 に選 択 して, 各 トラ ス構 成 要 素 の 抵 抗 力 を 算 定
断 力 レベ ルの 変 化 に伴 う コ ン ク リー トとせ ん 断 補 強 筋 の
し, 作 用 力 との比 較 に よ り安 全 性 を照 査 す る もの で あ っ
せ ん 断 力 分 担 率 の 変 化, 補 強 筋 の 剛 性 変 化 が せ ん 断 耐 荷
て, せ ん 断耐 荷 力 自体 を直 接 算 定 す る もの で は な い.
力 に 及 ぼす 影 響 等 を 詳 細 に 検 討 した 結 果 を 報 告 して い
修 正 トラ ス理 論 に よ る設 計 手 法 は, 過 去 の豊 富 な実 績
る2). しか しな が ら, 連 続 体 と して モ デ ル 化 した コ ン ク
に よ り, わ が 国 に お い て幅 広 く受 け入 れ られ て い る. し
リー トは り中 の 力 の 流 れ を あ らた あ て離 散 的 に 処 理 す る
か しな が ら, い くっ か の問 題 点, 疑 問 点 を含 ん で い る こ
際 に, 客 観 性 が 失 わ れ て い く可 能 性 が あ る. また 現 実 的
と も事実 で あ る.
に こ の よ うな 離 散 化 に はか な りの 困 難 を 伴 う もの と思 わ
れ る.
例 え ば, vyは せ ん 断耐 荷 力 と称 さ れ て い る が, 実 際 に
は, せ ん 断 補 強 筋 の 降 伏 に 対 応 す る せ ん 断 抵 抗 力 で あ
Schlaichら
の 提 案 す る ス トラ ッ トータ イ モ デ ル3)は,
る. 実験 的 に は, せ ん 断 補 強 筋 の 降 伏 以 後, 配 置 され た
支 点 付 近 や デ ィ ー プ ビー ム等 の不 連 続 領 域 の設 計 に適 用
せ ん 断補 強筋 量 に よ って は, さ らに抵 抗 力 が 増 加 す る領
す る こ とを 念 頭 に置 い た もの で あ り, せ ん 断耐 荷 力 自体
域 が 存在 す る こ とが知 られ て い るが, この 耐 荷 力 の増 加
を 算 定 す る もの で は な い が, 部 材 を ス トラ ッ トと タイ に
79
図‑1
斜 め ひ び割 れ の発 生 した コ ン ク リー トは り
図‑2
は り中 の微 小 コ ンク リー ト要 素 の応 力 状 態
図‑4
格子 モデル にお けるはり断面の区分
単位 せ ん 断 力 に 対す る
ポ テ ンシ ャル エ ネル ギ ー(N‑mm)
‑コ
ンク リー ト部 材、‑補
‑ア
ー チ部 材、
図‑3
●節
強 材部 材
点
格子 モデルの概念図
離 散 化 して い るの で, 力 の 流 れ が 限定 さ れ, 計 算 結 果 の
ポ ス トプ ロセ ッシ ングが 容 易 で あ る.
本 研 究 で は, 計 算 結 果 の 処 理 に客 観 性 が あ り, か っ せ
ん断 耐 荷 機 構 を明 快 に表 現 す る とい う要 件 を満 たす もの
図‑5
比 率tの 変 化 に伴 う ポ テ ンシ ャル ェ ネル ギ ーの変 化
と して, コ ン ク リー ト部 材 を格 子 状 の トラス の集 合 体 に
モ デ ル化 す る手 法 を検 討 した4). 変形 の適 合 条 件, 力 の 釣
軸 の圧 縮‑引 張 応 力 が 作 用 す る こ と にな る(図 一2)
ヴ ェ ブ コ ン ク リー トに 図 一2の よ う な圧 縮‑引 張 応 力
合条 件, お よ び材 料 の 応 力 一 ひ ず み 関係 の非 線 形 性 を 考
慮 した この 格 子 モ デル は, 耐 荷機 構 を トラス要 素 のみ で
が 作用 す る こ とを 念 頭 に お い て,
図 一3の よ うな格 子 モ
構 成 して い るた め に, 有 限 要 素 解 析 に比 較 す れ ば, 節 点
デ ル を 設 定 した. す な わ ち, 連 続 体 で あ る鉄 筋 コ ンク
変 位 の総 自 由 度 も相 当 に 少 な い簡 便 な 解 析 手 法 で あ る
リー トは りを トラ スの 集 合 体 に置 き換 え る.
が, 後 述 す る よ う に コ ン ク リー トは りの斜 め ひ び割 れ 発
コ ン ク リー トは, 曲 げ 圧 縮 部 材, 曲 げ引 張 部材, 斜 あ
生, せ ん 断補 強 筋 の降 伏, ウ ェ ブ コ ン ク リー トの破 壊 に
圧 縮 部 材, 斜 め引 張 部 材, ア ー チ部 材 に, 補 強材 は水 平
至 る ま で の一 連 の 耐 荷 機 構 の変 化 を ほ ぼ妥 当 な精 度 で 追
部 材 と垂 直 部 材 に モデ ル化 され る. こ こで, コ ン ク リー
トの斜 め引 張 部 材 を 考 え て い るの が, 従 来 の トラス モ デ
随 で き る.
本 研 究 は, 格 子 モ デル に よ る解 析結 果 に基 づ き, 斜 め
ル との大 き な違 いで あ り, これ に よ り斜 め ひ び割 れ発 生
ひ び割 れ発 生 以 後 の変 形 の 増加 に 伴 うは り内部 で のせ ん
前 後 の せん 断 耐 荷 挙 動 を 精 度 良 く表 現 して い くこ とが可
断力 分 担 性 状 を 明 らか に し, これ に基 づ い て修 正 トラ ス
能 とな る.
理 論 の妥 当性 を 評 価 して い く もの で あ る
図‑3中
の太 い実 線 は コ ン ク リー トの ア ー チ部 材 を表
して い る1格 子 モ デ ル で は トラス の 斜 材 角 は45度
2.
格子 モデル
に固
定 して い る が, こ の ア ーチ 部 材 を考 え る こ と によ り, せ
ん 断補 強筋 降 伏 以 後 の 各部 材 に お け る応 力 の 再分 配 を表
(1)
図‑1
格子 モデルの概要
現 す る ことが で き る. アー チ 部 材 は格 子 モ デ ル の載 荷 点
と支 点 を両 端 の節 点 とす る フ ラ ッ トで 細 長 い部 材 と し
は 斜 め ひ び割 れ の 発生 した コ ン ク リー トは りの
た.
模 式 図 で あ る. ひ び 割 れ面 に沿 うせ ん 断応 力 を無 視 す る
と, 図 中 に示 す 斜 め ひ び 割 れ と平行 な微 小 要 素 に は, 2
80
れ らの コ ン ク リー ト水平 部 材 の 厚 さ の仮 定 は, 計 算 され
るせ ん 断 耐 荷 力 の 大 き さ に あ ま り影 響 を 与 え な い こ と
が, 試 算 の結 果, 確 認 され て い る.
格 子 モ デ ル の高 さ は, は りの 有 効 高 さ4に 一 致 させ て
い る. した が って,
トラス の 斜 材 と ア ー チ部 材 は, 断 面
の上 縁 と曲 げ補 強 筋 の 図心 位 置 とを 結 ぶ よ うに 配 置 さ れ
る. ま た, 垂 直 部 材 の 水 平 方 向 間 隔 は水 平 部 材 間 距 離
(=は
りの有 効 高 さ)の1/2と
して い る. したが って, は
り側 面 か ら見 た 場 合 の トラ ス斜 材 の 幅 は4/2・sin45.
図‑6
と
な る. ま た, は り側 面 か ら見 た ア ー チ 部 材 の 幅 は4
1/4引 張 軟 化 モ デ ル
sinθと な る. た だ し, θは ア ー チ の傾 斜 角 で あ る.
(2)各
部 材 の モ デ ル化
図 一4は 格 子 モ デ ル に お け る は り断 面 の 区 分 の概 念 図
で あ る.
(3)各
ウ ェ ブ コ ン ク リー トを図 一4に 示 す よ うに コ ン
a)コ
部 材 の応 力‑ひ ず み関 係
ン ク リー ト引 張斜 材
アーチ
コ ン ク リー トの 引張 斜 材 は, せ ん 断 力 か ら生 じる主 引
部 分 に区 分 す る. 網 掛 け した部 分 を ア ー チ の 幅 に, 残 り
張 応 力 に 抵 抗 す る. 引 張 強 度 到 達 以 前 は弾 性 体 とす る
を コ ンク リー トの トラス部 分 の幅 と考 え る. こ こで, は
が, ひ び割 れ発 生 以 後 は軟 化 挙 動 を示 す と考 え られ る.
り断 面 の コ ア部 分 に ア ー チ部 分 を仮 定 し, か ぶ り側 に ト
した が って, 引 張 強 度 到 達 以 後 に っ い て は, コ ンク リー
ク リー トの トラ ス部 分(圧 縮 お よ び 引張 斜 材)と
ラ ス部 分 を 仮定 した の は,
トラス機 構 の形 成 に はせ ん 断
補 強 筋 の 存 在 が不 可 欠 で あ る の で,
トの 引張 軟 化 曲 線 を適 用 す る こ と に した. 使 用 した軟 化
トラス部 分 はせ ん 断
曲線 は図‑6に
示 す1/4モ
デ ル で あ る. 図 一6に 示 す ひ
補 強 筋 の 存 在 す る側 に 仮 定 す べ き で あ る とい う考 え か
び割 れ 幅 ω を 引 張 斜 材 の長 さLで
ら, この よ うに 区分 した もので あ る. 図 一4に お い て,
した. コ ンク リー トの破 壊 エ ネ ル ギ ーGfは100N/mと
ア ー チ部 分 の幅 が 占 め る割 合 を
と して お く. この
の
除 して ひず み に 変 換
して い る. した が って, コ ン ク リー トの 引 張 強 度 が3
値 は以 下 の よ うに して, 個 々 の鉄 筋 コ ンク リー トは り ご
MPaな
と に定 め る.
b)コ
らば, ω=0.025mm,
ω2=0.167mmと
な る.
ン ク リー ト圧 縮 斜 材 お よ び ア ー チ 部材
対 して 微 小 な強 制
コ ンク リー ト圧 縮 斜 材 と ア ー チ部 材 は いず れ も斜 あ圧
変 位 を 作用 さ せ, 弾 性 解 析 に よ り各 部 材 の ひず み エ ネ ル
縮 力 に抵 抗 す る部 材 で あ る. 斜 め ひ び割 れ 発 生 以 後 の コ
す な わ ち, 仮 定 した(0<〈1)に
ギ ー を 計 算 す る. 作 用 さ せ た 単 位 せ ん 断 力 に よ る仕 事
ンク リー トの 圧 縮 軟 化 特 性 に は, Collinsら の モ デ ル を
(外力 仕 事)と
用 い た5). 軟 化 係 数 ηの評 価 に 必 要 とな る圧 縮 斜 材 と直
ひず み エ ネ ル ギ ー を構 造 全 体 に 加 算 した
ポ テ ン シ ャル エ ネル ギ ー が最 小 と な る よ う に
を決 定 す
交 方 向 の ひ ず み εtには, 当該 の圧 縮 斜 材 と直 交 す る引 張
る.
斜 材 の ひず み を 用 い た. ま た ア ー チ 部材 に つ い て は, ス
パ ン中 央 に位 置 す る引 張斜 材 の ひ ず み か ら, 軟 化 係数 を
は りに非 線 形 性 が現 れ て くる に伴 い, ポ テ ンシ ャル エ
ネ ル ギ ー の値 は変 化 して い くが, こ こで は第 一 近 似 と し
て,
この手 法 を用 いて い る.
ル エ ネ ル ギ ー の変 化 の一 例 を 図‑5に
合 で は,
評 価 した.
の 変 化 に伴 う ポ テ ンシ ャ
示 す.
使 用 した コ ン ク リー トの 圧 縮 応 カーひ ず み 関 係 は式
こ の例 の場
(1)の 通 りで あ る.
=0. 6と 設 定 す る こ とに な る.
(1)
ア ー チ部 材 の変 位 はそ の 両 端 で トラ ス部 材 の 変 位 と適
合 して い る が, 中 間 で は独立 と して い る. これ は平 面 応
た だ し,
力 場 を仮 定 しな い こ とを 意 味 す る もの で あ り, ウ ェ ブ コ
ン ク リー トに お け る ス タ ー ラ ップの 影 響 範 囲 を考 慮 した
εo=0.002
もの で あ る. 現 実 に は, 両 者 の 変 位 が 完 全 に独 立 とな る
c)垂
こ とは な い もの と思 わ れ るが, は りの 幅 が 相 対 的 に増 加
直 お よび 水 平 部 材
垂 直 お よ び水 平 部 材 を形 成 す る補 強 材 の 応 カ ーひず み
して い くにつ れ て, 通 常 行 わ れ る平面 応 力 場 の 仮 定 が 成
関 係 は完 全 弾 塑 性 と して い る
立 しな くな る こ と は十 分 に予 想 され る.
な お, 曲 げ 引張 側 の水 平 部 材 に は, コ ンク リー トと補
曲 げ圧 縮 領 域 の 厚 さ は, 曲 げ終 局 時 の コ ン ク リー ト圧
強 材 の付 着 を考 慮 して, 岡 村 らの テ ンシ ョ ンス テ ィフ ニ
縮 領 域 の厚 さ, す なわ ちx=(As・f)/(0.68f・b)と
ン グモ デ ル を加 算 した. ま た, 曲 げ圧 縮 側 の水 平 部 材 に
仮 定 した. ま た曲 げ引 張 領域 の厚 さは 曲 げ補 強筋 の 図心
は 曲 げ圧 縮 部 コ ンク リー トの効 果 を 加 算 して い るが, こ
位 置 か ら, は り下 面 まで の距 離 の2倍
の場 合 は圧 縮 軟 化 は考 慮 して いな い. す なわ ち, コ ンク
と した. な お, こ
81
表‑1
実 験 デ ー タの 諸 元
注)計 算 値1は 格 子 モデ ル, 計算 値2は 修 正 トラ ス理 論. ()内
は計 算 値/実 験 値
No. 4は 丁形 は りで, フ ラ ン ジ幅30cm, フラ ンジ厚7.5cm, ウ ェブ 幅15cm.
Newton‑Raphson法
3.
を用 い た.
格 子 モ デ ル の適 用 性 の検 討
(1)せ
ん 断補 強筋 の な い場 合
せ ん 断 補 強 筋 の な い コ ン ク リー トは り の せ ん 断 強 度
0c(MPa)の
算 定 式 と して, 式(2)が
提 案 され て い る6).
(2)
こ こで, fcは コ ンク リー トの圧 縮 強度(MPa),
図‑7
格 子 モ デ ル と式(2)に
鉄 筋 比(%)=1004/(b4),
よ る算 定 値 の比 較
ρwは 主
4は 有 効 高 さ(m),
o/4
はせ ん 断 スパ ン比 で あ る.
格子 モ デル/式(2)
格 子モ デル/式(2)
式(2)は
多数 の実 験 デ ー タ との検 証 よ り, そ の有 効
性 が 確認 され て お り, コ ン ク リー ト標 準 示 方 書 の基礎 式
と な って い る. そ こで, せ ん 断補 強 筋 の な い場 合 の格 子
モ デル の 解 析結 果 と式(2)に
よ る算 定 値 を比 較 す る こ
と に よ り, 格子 モ デ ル の適 用 性 を検 討 して み た.
図 一7は 格子 モ デ ル に よ るせ ん断 耐 荷 力 と式(2)に
よ るせ ん 断 耐 荷 力 と比 較 した もの で あ る. 解 析 の対 象 と
格 子 モ デ ル/式(2)
格 子 モ デ ル/式(2)
した は り は全 部 で81通
水 準, fc=20,
りで あ り, コ ンク リー ト強 度 を3
28, 35MPa,
主 鉄 筋 比 を3水 準, ρ=
1.36, 2.0, 3.096, 有 効 高 さ を3水 準, 4=30,
せ ん 断 スパ ン比 を3水 準, o/4=2.0,
40, 50cm,
3.5, 5.0に 変 化 さ
せ た もの で あ る. なお, 断 面 の幅 はbω=30cmに
て い る. 格 子 モ デ ル と式(2)に
固定 し
よ る せ ん断 耐 荷 力 を 比
較 した 結 果, 81個 の デ ー タ に 対 して, そ の 平 均 値 は
図‑8
0.953, 変 動 係数 は9.3%と
各パ ラメータの変化 に伴 うせん断耐荷力 の変化
な り, せ ん断 補 強 筋 の な い場
合 の格 子 モ デ ル に よ るせ ん断 耐 荷 力 の予 測 値 は, 平 均 と
リー トの応 力‑ひ ず み関 係 は式(1)で
η=1と
した もの
して式(2)を
で あ る.
や や下 回 る もの の, そ の ば らっ き は小 さ
く, ほぼ 妥 当 な もの で あ る こ とが確 認 さ れ た.
垂 直部 材 につ いて は, コ ンク リー トの 引 張 斜材 に お い
図‑8は
各 パ ラメ ー タ別 に, 格 子 モ デ ル に よ るせ ん 断
て ウ ェ ブ コ ンク リー トの引 張 抵 抗 を考 慮 して い るの で,
耐 荷 力 の 平 均値 と式(2)に
コ ンク リー トの影 響 は加 算 して いな い.
した もの で あ る. 格 子 モ デ ル に よ る予 測 値 の変 化 の傾 向
以 上 の よ う に して 構 成 した格 子 モ デル を 用 い, 変 位 制
は, 式(2)に
御 に よ り 増 分 解 析 を 行 っ た. な お, 収 束 計 算 に は
よ る傾 向 と完 全 に は一 致 しな いが, そ の
比 率 は い ず れ も0.9〜1.1程
82
よ る算 定 値 の平 均 値 を比 較
度 に収 ま って い る こ とが 認
CIarkの 供 試体(No. 2)の 格 子 モ デ ル
st1〜st6: ス タ ー ラ ッ プ,
s1〜s4:
図‑12
図‑9
t1〜t4: 引 張 斜 材
圧 縮 斜 材, a: ア ー チ
平均応 力を算 定 したせん断 スパ ン中央 の部材
実 験 デ ー タ と の比 較(No.2)
で あ る と判 断 さ れ る.
(2)せ
ん 断 補 強 筋 の あ る場 合
続 い て, せ ん断 補 強 され た コ ン ク リー トは りの せ ん 断
耐 荷 性 状 に関 して, 実 験 デ ー タを 基 に格 子 モデ ル の 適 用
可 能 性 を検 討 す る.
検 討 に用 い た 実 験 デ ー タの概 要 は表 一1に 示 す通 りで
あ る. 格 子 モ デ ル に よ れ ば, 作 用 せ ん 断 力 と変 位 の 関 係
のみ な らず, せ ん断 耐 荷 機 構 を形 成 す る各 部 材 の 応 力 状
態 の変 化 を容 易 に評 価 す る こ とが で き る. っ ま り, せ ん
断 耐 荷 機 構 の変 化, す な わ ち各 部 材 の せ ん 断 力分 担 の 変
化 を 客 観 的 に明 示 で き る の で あ る. この 点 が, 格 子 モ デ
図‑10
ル開 発 の大 き な理 由 と な って い る.
実 験 デ ー タ との 比 較(No.4)
a)作
用 せ ん 断 カー変 位 関 係
せ ん 断 補 強 さ れ た コ ンク リー トは りの せ ん 断耐 荷 性 状
に対 す る, 格 子 モ デ ル の適 用 可 能 性 を 明 らか に す るた め
に, 作 用 せ ん断 力 と変 位 の 関係 が 明 示 され て い るClark
の実 験 結 果8), Leonhardtら
の実 験 結 果9), お よ び大 内 ら
の実 験 結 果10)を用いて, 格子モデルによる解析結果と比
較 した.
図‑9はClarkの
実 験 結 果(表‑1に
お け るNo.
2, 以
下 同 様 に表 記 す る)と 格 子 モ デル に よ る解 析 結 果 と の比
較 で あ る. 実 験 で は ピー ク以 後 の 挙 動 が 得 られ て い な い
の で あ るが, 格 子 モ デ ル は, ピー ク まで の変 位 挙 動 を精
度 良 く捉 え て い る こ とが わ か る. ま た, せ ん断 耐 荷 力 に
図‑11
実 験 デ ー タ との 比 較(No.
つ い て も, 実 験 値 を 精 度 良 く予 測 して い る こ とが 認 め ら
5)
れ る.
あ られ る. 限 られ た 範 囲 で はあ るが, 4の 変 化 に伴 うせ
図‑10,
図‑11は
それ ぞ れLeonhardtら
ん 断 強度 の変 化, いわ ゆ る寸 法 効 果 にっ い て も, 式(2)
らの 実 験 結 果(No.
に よ る予 測 と同 程 度 で あ る こ とが 認 め られ る.
の場 合, 格 子 モ デル は, ピ ー ク まで の 範 囲 で 相 対 的 に高
な お, 格 子 モ デ ル に よ り予 測 され た破 壊 モ ー ドは, い
の比 較 で あ る. これ ら
め の 剛 性 を 与 え て い るが, ピー ク時 の 変 位 量 につ いて は
ず れ もコ ンク リー ト引 張 斜 材 の 破 壊 とな った が, これ は
選 択 したパ ラ メ ー タo/4の
4, No. 5)と
および大 内
実験 値 と同 程 度 とな って お り, 概 ね妥 当 で あ る.
な お, 図‑10に
範 囲 か ら考 え て, せ ん 断 補 強
示 すLeonhardtら
の実 験 デ ー タ(No.
の な い は りにお いて 観 察 され る斜 め引 張 破 壊 モ ー ドに対
4)はT形
応 して い る も の と考 え られ る. 以 上 の こ とか ら, 格 子 モ
コ ン ク リー ト斜 材 の 幅 の合 計 は ウ ェ ブ幅 と等 しい と仮 定
デ ル に よ る斜 あ引 張 破 壊 耐 力 の 予 測 は, 概 ね 妥 当 な もの
して い る. 格 子 モ デ ル で は, Y=60kN程
83
は りの デ ー タで あ る. この場 合, ア ー チ部 材 と
度 で 勾配 が 変化
有 限 要 素 法 に比較 す る と相 当 に簡 便 な解 析 手 法 で あ る
が, 今 回 開 発 した格 子 モ デ ル は, 以 上 を総 合 的 に見 れ ば,
せ ん断 補 強 され た コ ン ク リー トは りの せ ん 断挙 動 を ほ ぼ
妥 当 に予 測 しう る もの で あ る と判 断 さ れ る.
b)各
部 材 の 応 力状 態 の変 化
続 いて, Clarkの 実 験 デ ー タ(No.
2)を 対 象 に, 載 荷
点 変 位 の 増 加 に伴 う, コ ン ク リー トの 引張 斜 材, 圧 縮 斜
材, お よ び ス タ ー ラ ップ の 平 均 応 力, な らび に ア ーチ 部
(a)引張斜材応力‑載 荷点変位関係
材 の応 力 の変 化 を示 す. 図 一12はClarkの
2)を
供試 体(No.
格 子 モ デ ル に置 き換 え た もの で あ る. 図一12中 に
実 線 で 示 したせ ん 断 スパ ン中 央 の 各部 材 応 力 を平 均 化 し
て, 載 荷 点 変 位 の 増 加 に 伴 う変 化 を検 討 した.
図 一13(a)に
示 す よ う に斜 あ ひ び割 れ の 発 生後, コ ン
ク リー ト引 張 斜 材 の 抵 抗 力 は急 速 に 低 下 して い く. 逆
に, ス タ ー ラ ップの引 張応 力 と コ ン ク リー ト圧 縮 斜 材 応
力 は この後 急 速 に増 加 して い く(図 一13(b)(c)).
圧縮
斜 材 の応 力 は, ス ター ラ ッ プの 降 伏 開始 前 に低 下 を示 し
た 後, ス タ ー ラ ッ プ の 降 伏 開 始 に伴 って 上 昇 して い く
(b)圧縮斜材応力‑載 荷点変位関係
が, あ る程 度 の 上 昇 を示 した 後 は安 定 化 す る傾 向 を 示
す. な お, ス タ ー ラ ッ プ降 伏 前 の 圧縮 斜 材 応 力 の低 下 に
っ い て は, ス タ ー ラ ッ プ, 引 張 斜 材, ア ー チ部 材 との 総
合 的 なせ ん断 力 の 分 担 か ら, この よ うな現 象 が生 じた も
の と判 断 され る.
ス ター ラ ップ につ い て は, そ の 降伏 開始 後 も平 均 応 力
と して の ス タ ー ラ ップ 応 力 は変 位 の増 加 と と もに漸 増 し
て い く. ま た, アー チ部 材 の 応 力 は ス ター ラ ップ の降 伏
開始 以 後 も増 加 を示 す が 最 終 的 に ア ー チ部 材 の コ ン ク
リー トが 圧 縮 軟 化 を 示 す こ と に よ り, 終 局 を迎 え る(図
一13(d)).
す な わ ち, 解 析 的 に得 られ る破 壊 形 態 は, ス
(c) ス ター ラ ップ応 力‑載 荷 点変 位 関 係
ター ラ ップ降 伏 以後 の アー チ 部 材 の圧 縮 破 壊 に よ るせ ん
断 破 壊 で あ る. これ はClarkの
実 験 結 果 と も一 致 して い
る. な お, 格 子 モデ ル に よ り予 測 さ れ た最 終 的 な破 壊 形
態 は, No. 4, No. 5も 同 様 で あ り, いず れ も実 験 結 果 と
対 応 して い る.
4.
(d)アーチ部材応力‑載 荷 点変位関係
図‑13
各 部 材 の せ ん 断 力分 担
土 木 学 会 の コ ン ク リー ト標 準 示 方 書 に規 定 さ れ て い る
変 位 の 増 加 に伴 う各 部 材 応 力 の変 化(No.
修 正 トラ ス理 論 に よ るせ ん 断耐 荷 力 の算 定 式(式(3))
2)
で は, コ ンク リー ト分 担 分 が, 斜 あ ひ び割 れ の発 生 以 後
して お り, これ は斜 あ ひ び割 れ の発 生 に対 応 して い る も
も一 定 値 を 保 つ と仮 定 され て い る.
の と考 え られ る が, 実 験 値 に は 明瞭 な勾 配 の 変 化 は認 め
Yy=Yc+Ys
られ な い. た だ し, ピー ク値 お よ び ピー ク時 の変 位 量 に
1. で 述 べ た 通 り, この コ ンク リー ト分 担 分Yが,
っ いて は実 験 値 に ほ ぼ一 致 して い る.
ク リー トの 引 張抵 抗 の み に 由来 す る とす れ ば, は りに斜
コン
あ ひ び割 れ が 発 生 した後 は, ひ び割 れ の進 展, ひ び割 れ
大 内 らの デ ー タ は, 高 強 度 コ ンク リー トを 用 い た もの
で あ る. この場 合, 実 験 にお け るY‑300kN程
(3)
度 で の勾
幅 の 拡 大, お よ び変 形 の 増 大 と と も に, Ycは 低 下 して い
配 の変 化 を解 析 的 に も捉 え て い る こ とが わ か る. な お,
くと考 え る方 が 自然 で あ る.
ピ ー クの 予 測 値 は実 験 値 よ り若 干 大 きめ で あ る.
格子 モ デ ル で は, せ ん断 耐 荷 機 構 を形 成 す る各 部 材 の
84
μst: ス タ ー ラ ップ の 引 張力
C:
ア ー チ の圧 縮 力, T:
図‑14
コ ンク リー トの 引 張 斜 材 力
格 子 モ デル の フ リー ボ デ ィ と各 部 材 力
図‑16
せん断補強量 に伴 うせん断耐荷力 の変化
破線 は式(2)に
よ るYcの
計 算 値 と45度
トラス を仮 定
し た ス タ ー ラ ッ プ に よ るせ ん 断 抵 抗 分Y=A/sを
加算 した もの で あ る.
コ ンク リー ト貢 献 分 で あ るYcは
コ ンク リー ト引 張 斜
材 に よ る抵 抗 力 と ア ー チ の抵 抗 力 か ら構 成 さ れ る. ス
ター ラ ッ プの 平 均応 力 が0に 近 い 場 合 は, この う ち引 張
斜 材 の 抵 抗 力 の 比 率 が 高 い が, ス タ ー ラ ップ平 均 応 力 の
(a)格 子 モ デル によ る せ ん 断力 の分 担(No. 3)
増加 に 伴 い(す な わ ち 変形 の 増加 に 伴 い), 引 張 斜 材 の 抵
抗 力 は 単調 に 減 少 して い く. しか し, これ を 補 う よ う に
ア ー チ 部材 の 抵 抗 力 が 増加 して い くた め, 結 果 的 に, お
お よ そY相
当 の コ ン ク リー ト貢 献 分 が 保 持 され て い る
こ とが わ か る. 修 正 トラ ス理 論 に お け るYcの
根拠 を コ
ンク リー トの 引張 抵 抗 の み と見 な さ ず, この よ うに ア ー
チ の負 担 分 と合 わ せ て考 え て い く こ とに よ り, 斜 め ひ び
割 れ の 発 生 以 後 もYcが 保 持 され る こ とが 説 明 で き る の
で あ る.
図‑15よ
り, ス ター ラ ップ の貢 献 分 は ス ター ラ ップ が
降伏 す る ま で は45度
加 して い く と見 なす こ とが で き る. しか し, ス ター ラ ッ
(b)格 子 モ デル に よる せ ん 断力 の分 担(No. 4)
図‑15
の トラ ス機 構 に基 づ い て 単 調 に 増
プ の降 伏 以 降 は, ア ー チ の負 担 分 が急 増 す る(図 一15中
格子 モデルによ るせん断力の分担評価
の●印 が ス ター ラ ッ プ降 伏 開 始 点).
アーチ部材抵抗 力
応 力 を 基 に, 各 部 材 が分 担 す るせ ん断 力 を評 価 で き るの
の急 増 点 が ス タ ー ラ ップ の降 伏 開 始 点 に対 応 して い る.
で, これ を 用 い て各 部 材 のせ ん断 力 の分 担 を評 価 す る こ
ス タ ー ラ ップが 破 断 しな いか ぎ り, ス タ ー ラ ップ の 引張
と に した.
抵 抗 力 は保 持 され る ので, 最 終 的 なせ ん 断 耐 荷 力 は ア ー
試 算 を行 う例 と してLeonhardtら
の実 験 デ ー タ(No.
チの 破 壊 に支 配 され る こ と にな る. 図一15(a)に
3, No. 4)を 取 り上 げ る. 図 一13に 示 した各 部 材 の応 力
はアー
チの 軟 化 状 態 が 明 確 に示 され て い る. こ の場 合 は, ア ー
状 態 か ら考 え て, は り の せ ん 断 耐 荷 機 構 を 支 配 す る の
チの 軟 化 が 比 較 的 早 い段 階 で 起 きて い る ため, 格 子 モ デ
は, コ ン ク リー トの 引 張 斜 材, ア ー チ 部 材, お よ び ス
ル に よ るせ ん 断 耐 荷 力(132kN)と
ター ラ ップ の抵 抗 力 で あ る と判 断 され る. したが っ て,
るせ ん 断 耐 荷 力q31kN)は
図一14に 示 す よ うに, せ ん 断 スパ ン中 央 で格 子 モ デ ル の
考 え られ る(表‑1参
フ リー ボ デ ィ を考 え, こ こで の各 部 材 力 よ り, 作 用 せ ん
図‑15(b)で
図 一15(a),
(b)は そ れ ぞ れLeonhardtら
同 程 度 とな って い る もの と
照).
は, ス タ ー ラ ッ プの 降 伏 開 始 が 遅 く, こ
の た あ ア ーチ 部 材 抵 抗 力 の 急 増 点 の 出 現 も遅 れ て い る.
断 力 の分 担 の程 度 を評 価 す る こ と と した.
タ(No.
修 正 トラ ス理 論 に よ
の実 験 デ ー
図‑15で
3, No. 4)に 対 して, 格 子 モ デ ルか ら得 られ る
は横 軸 を ス タ ー ラ ッ プ の平 均 応 力 と して い る
た あ, 明 瞭 な ア ー チの 軟 化 が 図‑15(b)中
せ ん断 力 の分 担 状 況 の変 化 を示 した もので あ る. 図 中 の
には現れてい
な い. しか しな が ら, この 場 合 は ス ター ラ ップ の 降 伏 以
85
(a)A点 にお け る1次 の 固有 モ ー ド(固 有 値=12525.8)
図‑17
せ ん断 カ ー 変 位 関 係 の 解 析 結 果(No.
6)
(b)B点 にお け る1次 の 固 有 モ ー ド(固 有 値=‑5851.4)
(a)A点 に お け る変 位 増 分
(c)C点 に お け る1次
の 固 有 モ ー ド(固 有 値=‑2207551.6)
(b)B点 にお け る変 位 増 分
(d)C点 にお け る2次 の 固 有 モ ー ド(固 有 値=‑529350.1)
図‑19予
測 され る固 有 モ ー ド(No.
6)
は りの せ ん 断 耐荷 力 は, 最 終 的 に ア ー チ部 材 の圧 縮軟 化
に支 配 され る と予 測 さ れ た. ア ー チ部 材 の軟 化 が ス ター
(c)C点 に お け る変 位 増 分
図‑18
予 測 さ れ る変 位 増 分 形(No.
ラ ッ プの 降伏 以 後, 比 較 的 早 期 に起 これ ば, せ ん 断耐 荷
6)
力 は修 正 トラス理 論 に よ る値 に近 くな り, アー チ の軟 化
後, ア ー チ部 材 抵 抗 力 の増 加 に よ り, さ らに せん 断 耐 荷
が遅 れ る場 合 に は, せ ん 断 耐 荷 力 は修 正 トラス 理論 に よ
力 が上 昇 す る た め, 格 子 モ デル に よ るせ ん断 耐 荷 力(117
る値 よ り も増 加 して い く.
kN)は,
修 正 トラ ス理 論 に よ る もの(98kN)よ
り大 き くな った(表‑1参
な お, 図 一15(a)で
り もか な
修 正 トラス理 論 は, ス タ ー ラ ッ プ降伏 以後 の せ ん断 耐
照).
荷 力 の上 昇 を 考 慮 彩て お らず, この点 で は安 全 側 の評 価
は載 荷 の 初期 に ス ター ラ ップの 平
均 応 力 が圧 縮 とな って い るが, 図一15(b)で
な っ て い る. 図‑5(b)は7形
で あ る と言 え るが, 例 え ば, 連 続繊 維 補 強材 の よ うな降
は引張 と
伏 現 象 を 示 さな い 材料 に対 して は, ス タ ー ラ ップ の降 伏
断面 は りの 場 合 で あ り,
そ の もの が 存 在 しな い わ け で あ り, 適 用 が困 難 で あ る
この場 合 は フ ラ ン ジ幅 と同 じ幅 の矩 形 断 面 に比 較 して,
通 常 の 鋼 材 を せ ん 断補 強 筋 に用 い た場 合, せ ん 断 補 強
コ ンク リー トの 引張 斜 材 の断 面 積 が 相 対 的 に小 さ い こと
の程 度 が 少 な い と, 修 正 トラス理 論 に よ る値 を大 き く上
か ら, この よ う に 引 張 応 力 が 発 生 した もの と考 え られ
回 る場 合 が あ る こ とが 定 性 的 に知 られ て い るが, この点
る.
を 定 量 的 に 明 らか にす る た め, 大 内 らの は り(No.
5)を
対 象 に 格 子 モ デ ル に よ り試 算 を 行 っ た. 試 算 に お い て
5.
せ ん 断 補 強 の 程 度 とせ ん 断 耐荷 力
は, せ ん断 補 強 筋 の 断 面積Aω以 外 は, No. 5の 諸 元 に一
致 さ せ て い る. 試 算 の結 果 を 図一16に 示 す.
格 子 モ デ ル に よれ ば, せ ん 断補 強 さ れ た コ ンク リー ト
図‑16
86
に示 され るよ うに, せ ん 断補 強筋 の 断面 積 を0
か ら3.5cm2(せ
0.31%)ま
ん 断 補 強 筋 比r=A/(bs)で0か
ら
7.
結
論
で 変 化 させ た 結 果, 場 合 に よ って は修 正 トラ
ス理 論 に よ る せ ん 断耐 荷 力 を10数%上
回 る ケ ー ス が認
本 研 究 で 示 した 格 子 モ デ ル は, せ ん 断 力 を 受 け る鉄 筋
め られ た. コ ン ク リー ト標準 示 方 書 に は棒 部 材 の最 小 せ
コ ン ク リー トは りを, 格 子 状 の トラ ス と ア ー チの 集 合 体
ん 断 補 強 筋 比 と して0, 15%が 規 定 さ れ て い るが, r=
に置 換 え, 構 成 材 料 の 非 線 形 性 を 考 慮 した増 分 解 析 を 行
0. 15%に 対 して 本 例 の場 合 で は 約10%の
せん断耐 荷力
う もの で あ る. 従 来 の トラ ス理 論 と は異 な り, モ デ ル の
の増 加 が見 込 まれ る. 修 正 トラ ス理 論 値 か らのせ ん 断 耐
中 に コ ン ク リー トの 引 張 斜 材 とア ー チ 部 材 を 組 込 ん だ 点
荷 力 の 増 加 分 は, 図‑16に
に 特 徴 が あ る. 有 限 要 素 法 に比 較 す れ ば, 節 点 変 位 の総
示 さ れ る よ うに 一 定 で は な
く, せ ん断 補 強 筋 比 に依 存 して 変 化 して い く.
自由 度 が 相 当 に 少 な い簡 略 化 され た 解 析 手 法 で あ り, ま
た ア ー チ 部 材 と コ ン ク リー ト斜 材 の 幅 の 比 率 の設 定等,
6.
ポ ス トピー ク領 域 にお け る格 子 モデ ル の挙 動
計 算上 の 仮 定 も含 ん で は い るが, 実 験 デ ー タ との比 較 に
よ れ ば, せ ん 断 耐 荷 性 状 の 予 測精 度 はそ れ ほ ど低 い もの
せ ん 断破 壊 の本 質 を数 学 的 に考 察 す る た あ, 格 子 モ デ
で はな い. せ ん 断 補 強 され て い な い は りの 斜 め 引張 破壊
ル か ら得 られ るせ ん 断 耐 荷 力 の 周 辺 にお いて, 固 有 値 解
耐 荷 力 の 予 測精 度 は, マ ク ロ的 な せ ん 断 耐 荷 力算 定 式 と
析 を行 い, ポ ス トピー ク領 域 に お け る格 子 モ デ ル の挙 動
ほぼ 同等 で あ り, また せ ん 断 補 強 され た は りの挙 動 もか
に つ い て 検 討 す る こ と と した. 計 算 の 対 象 と した もの
な りの 精 度 で 予 測 可 能 で あ る.
格子
特 に, 耐 荷機 構 を形 成 して い る部 材 を離 散 化 して い る
モ デ ル に よ り得 られ た作 用 せ ん 断 力 と載 荷 点 変 位 の関 係
は, 大 内 らの 実 験 デ ー タ(No.
こ とか ら, 解析 結 果 に 基 づ い て, 客 観 的 に は り内部 で の
を示 して い る. ピー ク以 前 の 図 中 のA点
で は, 格 子 モ デ
せ ん 断 力 の分 担 を 明 らか に す る こ とが で きる. せ ん断 補
ル の接 線 剛 性 マ トリク ス の固 有 値 はす べ て 正 と な って い
強 筋 比 の 変 化 に 伴 うせ ん 断耐 荷 力 の 変化 も予 測 して い く
た が, ピー クに対 応 す るB点
6)で あ る. 図‑17は
こ とが で き る. 格子 モ デ ル に よ る解 析 の結 果, 得 られ た
に お い て, 接 線 剛 性 マ ト リ
ク スの最 小 の固 有 値 が 初 めて 負 と な っ た. ま た, 作 用 せ
ん 断 力 の急 激 な低 下 が 観 察 され た 直 後 の 図 中 のC点
結 論 は以 下 の通 りで あ る.
で
(1)修
は, 複数 の負 の固 有 値 が 得 られ た.
図一18は,
点A,
B,
正 トラ ス理 論 で は, コ ンク リー ト分 担 分Yc
は, 斜 め ひ び割 れ の発 生 以 後 も一 定 値 を保 っ と仮 定 さ れ
Cに お け る変 位 増 分 を示 して い
て い る が, これ は コ ン ク リー トの 引 張 抵 抗 に 加 え て,
る. 図 中 の太 い実 線 が 得 られ た変 位 増 分 で あ り, 細 い実
ア ー チ の圧 縮 力 を考 慮 す る こと に よ り説 明 で きる. 斜 め
線 はNo. 6の は りの 格 子 モ デ ル の 初 期 状 態 で あ る. 点
ひ び割 れ の発 生 以後, 変 形 の増 大 に伴 い, コ ンク リー ト
A,
の 引 張斜 材 の抵 抗 力 は減 少 して い くが, ア ー チ部 材 の圧
Bの 変 位 増 分 の形 は ほ ぼ同 様 で あ って, 載 荷 点 付 近
で卓 越 した変 位 増 分 が 観 察 され る. 予 測 され る破 壊 モ ー
縮 抵 抗 が こ れ を補 って い くた め に, お お よそYc相
ドが ア ー チ部 材 の軟 化 に支 配 され て い る た め, ピー ク に
コ ン ク リー ト貢 献 分 が斜 め ひ び割 れ の発 生 以 後 も保 持 さ
至 る載 荷 過 程 で ア ー チ部 材 が 圧 縮 され, これ に伴 って 発
れ て い く.
生 す る載 荷 点 の沈 下 が 認 め られ る. これ に対 して 複 数 の
(2)ス
当の
ター ラ ップ に よ るせ ん 断 抵 抗 機 構 は, 斜 め ひ
で は, 変 位 増 分 が は りの
び割 れ の発 生 後 に顕 著 とな る. こ れ に よ る抵 抗 力 は, 45
全 体 に お い て発 生 して お り, 変 形 が は り全 体 に及 ん で い
度 の トラ ス機 構 に基 づ い て 評 価 す る こ とが で き る. ス
負 の 固有 値 が 存 在 して い るC点
る こ とが わ か る.
図 一19は,
ター ラ ップ の 降伏 開始 以 後 は, ア ー チ の負 担 分 が 増 加 し
固 有 値 解 析 か ら得 られ る点A,
B, Cに お
て い き, 最 終 的 に ア ー チ の圧 縮 軟 化 に よ り, せ ん 断 抵 抗
け る固 有 モ ー ドを 示 した もの で あ る. この場 合, 点A,
Bの1次
力 は ピー ク を迎 え る.
の固 有 モ ー ドは 載 荷 点 付 近 に お い て か な り異
(3)せ
ん断 補 強 筋 比 に よ って は, 修 正 トラ ス理 論 に
な った形 状 を示 して い る. 変 位 増 分 につ いて は, 図 一18
よ るせ ん 断 耐 荷 力 の 予 測 値 を10数%上
に示 した よ う に ほ ぼ同 様 で あ った が, 最 小 固 有 値 が 負 に
力 を示 す こ とが あ る. こ のせ ん 断 耐 荷 力 の 増 加 分 を 無 視
転 じた影 響 が 固 有 モ ー ドに現 れ た もの と予 測 され る. 点
す る こと は安 全 側 の近 似 で あ る こ と は間 違 いな いが, 安
Cに お け る1次 の固 有 モ ー ドは点Bに
全 性 の マ ー ジ ンは せ ん断 補 強 筋 比 の 変 化 に伴 って, 変 化
お け る もの と ほ
ぼ同 様 で あ る. 一 方, 2次 の 固 有 モ ー ドは は り全 体 に お
回 るせ ん 断 耐 荷
して い く こ とに留 意 す べ きで あ る.
い て大 きな 変 化 を 示 して お り, この傾 向 は変位 増 分 に お
(4)固
い て観 察 され た 状 況 と類 似 して い る.
有 値 解 析 に よれ ば, 解 析 的 に得 られ るせ ん 断
カ ー変 位 関 係 の ピー ク点 は, 格 子 モ デ ル の接 線 剛 性 マ ト
リク ス に お け る負 の固 有 値 の 出 現 に対 応 して い る. 複 数
の負 の固 有 値 が 出現 した後 の 変位 増 分 の 形 は, 1次 モ ー
ド以 外 の固 有 モ ー ドに追 随 して い く可 能性 が あ り, これ
87
‑June,
は不 安 定 な軟 化 経 路 の存 在 を示 唆 して い る.
4)崔,
こ こ に示 した格 子 モ デ ル は, 補 強 材 の種 類 が 変 化 して
5)
維 補 強 材 を ス ター ラ ップ に 用 い た場 合 で は, せ ん 断 補 強
筋 の 降 伏 に対 応 した せ ん 断耐 荷 力 な ど は あ り えず, した
6)二
が って 修 正 トラス理 論 を適 用 して い くこ と 自体 が 問 題 で
ス タ デ ィ」 と検 証 実 験 に よ り, 今 後, 連 続 繊 維 補 強 材 を
7)
使 用 した場 合 の せ ん 断設 計 に役 立 つ資 料 を呈 示 し亡 い き
8)
た い と考 え て い る.
9)
参考文献
CEB: CEB-FIP Model Code 1990, Bulletin dInformation, No. 213/214, 437pp., 1993.
10)大
No. 484/V‑22,
pp. 51‑60,
羽,
山 田, 横 沢,
岡 村:
せ ん断 補 強 鉄 筋 を用 いな いRC
Anderson, N. S. and Ramirez, J. A.: Detailing of Stirrup Reinforcement,
ACI J., pp. 507-515, 1989.
Clark, A. P.: Diagonal Tension in Reinforced Concrete Beams, ACI J., pp. 145-156, 1951.
Leonhardt, F. and Walther, R.: Beitrage zur Behandlung der Schubprobleme
im Stahlbetonbau,
4. Fortsetzung des Kapitals II: Versuchsberichte,
Beton and
Stahlbetonbau, pp. 161-173, 1962.
内, 高 橋, 谷 口, 山 下1高
強 度 コ ン ク リー ト ・高 強 度鉄
筋 を 用 い たRCは
りの せ ん 断 実 験, 土 木 学 会 第46回 年 次
学 術 講 演 会 講 演概 要 集, V‑341, pp. 698‑699, 1991.
藤, 上 田, 角 田: 有 限要 素 解 析 に よ る連 続 繊 維 補 強 コ ン
ク リー トは りの せ ん 断 耐 荷 性 状 の 定 性 的 評 価, 土 木 学 会 論
文集,
3)
Vecchio, F. J. and Collins, M. P.: The Modified Compression Field Theory for Reinforced Concrete Elements Subjected to Shear, ACI J., pp. 219-231, 1985.
は りの せ ん 断 強度 式 の再 評 価, 土 木 学 会 論 文 集, No. 372/
V‑5, pp. 167‑176, 1986.
あ る と考 え る. 格 子 モ デ ル に よ る広 範 なパ ラ メ ト リッ ク
2)佐
り のせ ん 断 性 状 の 解析
的 評 価, コ ン ク リー ト工 学 年 次 論 文 報 告 集, Vol. 16, 1994
年6月.
も適 用 可 能 で あ る. 例 え ば, 降伏 性 状 を示 さ な い連 続繊
1)
1987.
二 羽1格 子 モ デ ル に よ るRCは
1994
(1994. 6. 13受 付)
Schlaich, J., Schafer, K. and Jennewein, M.: Toward a
Consistent Design of Structural Concrete, PCI J., May
ANALYTICAL
REINFORCED
STUDY
ON
CONCRETE
Junichiro
THE
SHEAR
Ik Chang
CHOI
RESISTING
MECHANISM
BEAMS
NIWA,
To capture
the shear
resisting
diagonal
cracking,
the yielding
construct
a practical
macroscopic
simplified
analytical
model,
has
examined
by proposed
equations
model,
the validity
and problems
and
Tada-aki
TANABE
mechanism
of reinforced
concrete
beams,
such
as the occurrence
of
of shear
reinforcement,
and
the crush
of web
concrete
and
also
shear
resisting
model, the lattice
model, that can be considered
as a
been
newly
developed.
The
applicability
of the lattice
model
is
and existing
experimental
data. After the verification
for the lattice
of the modified
truss analogy
are examined
using the lattice
model.
88
OF
Download